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ジャズ娘乾杯!

宝塚映画製作の音楽映画。

雪村いづみと江利チエミが出ているので、一見、「美空ひばり」も加わった3人娘ものか?と思ってしまうが、「ジャンケン娘」と同じ年の公開ながら、こちらの作品の方が半年ばかり早い。

「プレ3人娘もの」とでも呼びたい作品で、その3人が、宝塚出身の寿美花代、朝丘雪路、それに歌手の雪村いづみが加わると言う、ちょっと異色の組み合わせになっている点が興味深い。

さらに、雪村いづみのスケジュールの関係だったのか、それとも、踊りメインの他の2人と、歌がメインの雪村とを区別するためか、物語の前半に、この両グループが別々の土地に別れてしまうと言う、3人娘ものとしてはちょっと奇妙な設定になっている。

とは言え、ここで登場するまだ見習い修行中の若者たちのキャストがすごく、シャンソン歌手で、後に「吸血鬼ゴケミドロ」の主役を演じた高英男や、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長こと中山昭二、「宇宙大怪獣ギララ」などでも知られる柳沢真一、「ウルトラの母」ことペギー葉山…と、後に特撮関係作品で有名になる歌手が総出演と言った感じである。

当然ながら、全員ものすごく若く、全員別人のように痩せている。

特に、フランキー堺は、最初の方で上半身裸になるシーンもあるが、頬などげっそりこけており、「モスラ」(1961)などの頃の丸々と太った面影は全くない。

特に、この頃の中山昭二はダンサーとして知られていた人のようで、本編中でも、寿美花代相手にダンスを披露してみせたりしている。

ただし、そのダンスが今の感覚で観て、さすがプロ!と感心するかどうかは微妙な所である。

朝丘雪路が劇映画などに出演しているのは何本か観た記憶があるが、踊る姿は初めて観たような気がする。

寿美花代に至っては、映画に出ているのを観ること自体珍しいような気がする。

この当時の寿美花代は、高嶋兄(高嶋政宏)に目元が似ているような気がする。つまり、高嶋兄弟は、両方とも母親似ナノだと言うことに気づかされる。

雪村いづみは、「オー・マイ・パパ」や「ブルー・カナリー」と言ったお馴染みの曲を披露してくれる。

ペギー葉山が、ジャングルの原住民風の扮装になって歌うシーンも興味深い。

当時はよほど、この手の「南方もの」が流行っていたと言うことだろう。

最初の方で、寿美花代と朝丘雪路が、流行りだったのか?顔を黒く塗って踊っているのも珍しい。

支配人のセリフから、女剣劇が人気だったらしい、当時の興行の状況も何となく垣間見える。

話自体は、昔良くあった「お涙頂戴パターン」の典型のようなもので、決してあか抜けた話とは言えないが、まだ音楽映画に慣れていなかった時代の作品のようなので、こう言った通俗ものに落ち着いたのだろう。

狙いとは言え、劇中で近江監督に扮したトニー谷らが発言する、「ねずみ小僧」とか「化け猫」とか「狸もの」等と言った企画自体が、今観ると、さすがに古くさい。

「ゴジラでも良いですが、金がかかりますから…」と言うトニー谷のセリフも興味深い。

「ゴジラの逆襲」が1955年の4月24日公開、この作品の公開が3月21日。

この作品の脚本を書いている時点で、「ゴジラの逆襲」を作っていることを知った上でのセリフだったのか、知らなかったのか…?

配給は同じ東宝だが、撮影所は別と言うこともあるし、当時の量産体制を考えると、どちらの可能性もあるように思える。

劇中に登場する「緑ヶ丘スタジオ」と言うのは、おそらく、この作品を撮っていた「宝塚映画撮影所」だろう。

ちらり登場する、その撮影所の外形なども珍しい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1955年、宝塚映画、高木史郎脚本、井上梅次脚本+監督作品。

ジャズ・オン・パレード…の文字

タイトル

大劇場では、今正に、女性たちのレビューが行われていた。

それを客席から眺める三姉妹長女高子(寿美花代)次女待子(朝丘雪路)末女美子(雪村いづみ)は、舞台が大好きだったので、夢中で拍手をしてショーを楽しんでいた。

同じ頃、小さな劇場の舞台で中国人に扮し曲芸を演じていたのは、3姉妹の父親である曲芸師タニマン(伴淳三郎)だった。

ガラガラの舞台を終え、楽屋に戻って来たタニマンは、芸人仲間から蕎麦が残っているので食わないかと勧められ、丼を観るとラーメンだったので、俺は舞台では中国人をやっても、中味は江戸っ子だよ。ラーメンなんか食えるかと虚勢を張る。

そこにやって来たのが、タニマンをオヤジさんと呼ぶドラマー志望の青年不フラ公こと堺としお(フランキー堺)だったので、タニマンは、支配人は何か言ってなかったか?俺をおっ放り出すんじゃないかと心配なんだと聞くが、ここの支配人とは友達なんでしょう?と呆れたフラは、その日の仕事を終えたタニマンと一緒に同じアパートへ帰って来る。

タニマンは、つくづく芸人が嫌になったよとぼやくが、あんなきれいな娘さんが3人も待ってて幸せだな~とフラ公はうらやましがる。

自分の部屋に入りかけたフラ公に、後でうちに飯を食いに来いよと誘い、部屋に入りかけたタニマンは、娘たちがいないことに気づく。

その頃、3人娘は、大劇場からの帰り道、すっかりレビューの魅力にハマってしまい、セリフを互いに言い合いながら自宅アパートに帰っている途中だったが、夜間パトロール中の警官に、どうしたの?と声をかけられ、僕もレビュー大好きなんですよと言われたので、嬉しくなった3人娘は、家に帰る坂道で得意の歌を歌い始める。

しかし、歌い終わった時、警官が、もう10時だよと時間を教えてくれたので、慌てて家に駈け戻る。

途中、フラさんがドアから顔をのぞかせ、怒ってるぞ!と3人娘に教える。

部屋に入った3人娘は、おかずを買いに行ったら、まっちんが急にお腹痛になってと噓を言い、待子がおなかを押さえて苦しがる芝居をするが、ベッドに腰掛けたタニマンはにこりともせず、胸に下げたロケットを広げて、亡くなった母の写真を見せながら、死んだ母さんの遺言を言ってみなと3人娘に問いかける。

人に噓を言うな…と3人娘が小さな声で答えると、正直に言ってみなさいとタニマンは言い、大劇場でレビィーを観ていたと娘たちが正直に答えると、あんなものは芸のクズだ。芸の苦労は父さんや母さんで十分です。絶対芸人にはさせん!と怒鳴ると、3人娘を後ろ向きにさせ、全員のお尻を叩くのだった。

その後、屋上でドラムの練習をしていたフラさんの所にやって来た3人娘は、父ちゃん、ぶつぶつ言いながらご飯食べたらすぐに寝てしまったと報告し、舞台に立ちたいわ…と言いながら踊ってみせる。

美子も、あの歌を歌いたいと目を輝かせるので、その様子を観ていたフラさんは、そんなに舞台に立ちたいのか?と聞く。

フラさん、何とかして!と訴える3人娘に対し、フラさんは、良し!一肌脱ごう!任しといて!と答える。

翌日、劇場にやって来たタニマンは、上半身裸で体操をしているフラさんを発見、どうしたんだ?と聞くと、薬飲んだら精力余っちゃってと言うので、うらやましいな…、最近目がしょぼしょぼして調子悪いんだと答える。

するとフラ公は、1服余っていると言いながら、ポケットから薬の包みを渡すと、タニマンはそれを飲み干す。

そんなタニマンにフラ公は、オヤジさんの嫌いだったのは蛇だったな?と確認した上で、今のは蛇の黒焼きなんだよと打ち明けると、タニマンはその場で気絶してしまう。

そんなタニマンを心配して駆け寄ったのは、こっそり劇場に来ていた3人娘らだったが、フラ公は、オヤジさんは大丈夫だから、今のうちだ!と3人娘に呼びかける。

すぐに、ステージが開き、タキシード姿に着替えた3人娘がステージに昇ると、歌と踊りを披露する。

袖でその晴れ姿を観ていた支配人は満足そうだったが、気がついたタニマンもやって来て、フラさんの計略に引っかかったことに気づく。

楽屋に戻って来た3人娘を待っていたタニマンは、誰に断って舞台に出たんだ!と叱りつけると、又、3人に後ろを向かせると、お尻を叩くのだった。

そこにやって来た支配人は、もう良いじゃないかとタニマンをなだめ、この3人を俺に預けないか?と申し出るが、娘たちを旅芸人にはしたくない。もう私には用がなくて、娘たちに食わせてもらえと言うのですか?とタニマンは機嫌を悪くし、今日限り辞めさせてもらう。お前たちも2度とこんな小屋に来ちゃいけないよと3人娘に言い残して先に帰ってしまう。

その日、タニマンは、夜、パジャマ姿の3人娘が待っていたアパートに酔って帰って来ると、高子が話があると切り出すが、タニマンはそれに耳を貸さず、次の仕事を決めて来た。北海道だ。旅費は向う持ち。お前たちも一緒だと言う。

しかし高子は、待ちに待ったチャンスで、これを逃すと、次はないかも知れない。お願い、父さん、舞台に立たせて!と願い出るが、親子の縁を切りたければ残れ。切りたくなければ付いて来い。一晩考えろ!と答えたタニマンはさっさと寝てしまう。

翌朝、荷物をまとめたタニマンは、高子に頼まれたフラさんが、北海道くんだりまで流れて行くことはないじゃないか!と止めるのも聞かず、アパートを後にする。

泣きながら、遠ざかって行く父親の姿を部屋の窓から見送っていた3人娘だったが、耐えきれず、彼女らも荷造りを始める。

しかし、末娘の美子が、私1人で行くわ、私が一番父ちゃんっ子だったし、姉ちゃんたちは歌ってと言い残し、1人父の後を追ってアパートを飛び出て行く。

タニマンと美子を乗せた機関車を、丘の上から見送る高子と待子。

残った高子と待子は、さっそく舞台に立つようになるが、顔を黒く塗って歌ってみても、客の入はイマイチだった。

フラさんや高子らがいた楽屋に来た支配人は、隣の女演劇に負けてね…。来週からストリップを入れることにした。スチリップ・ミュージックだ。君たちもストリップをやってくれないと、もうどこにも行く所はないよ。何せ赤字続きなんだから…と言い出す。

そんなことは出来ないと断った高子と待子だったが、支配人が立ち去ると、フラさんが、そうだ!昭ちゃんの所へ行こうと言い出すと、堺としお様と書かれた山中昭一が自分に寄越して来たハガキを取り出し、緑ヶ丘スタジオで監督をやっているんだと高子たちに教える。

すぐさま劇場を辞め、緑ヶ丘に向かう列車の中で、待子は北海道の父と美子に宛て、自分たちの近況を手紙に書く。

緑ヶ丘スタジオにやって来たフラさんと高子、待子は、入口の守衛室で山中監督に会いたい旨伝えるが、そんな監督いたかな?と守衛たちは首を傾げる。

仕方がないので、勝手にスタジオに入り、山中監督を捜すことにしたフラさんたちだったが、そのディレクターチェアに座っていたのは、人気女優夕暮時子(浦島歌女)主演の映画を撮影中だった、見知らぬ近江監督(トニー谷)だった。

山中監督のことを聞いたフラさんだったが、そんな監督はこの撮影所にいないよと、近江監督から迷惑がられる。

困ったフラさんが、ふと、カチンコを鳴らしている助監督に目をやると、それこそ幼なじみの昭ちゃん(中山昭二)であることに気づく。

その後、喫茶店「青い鳥」で昭ちゃんと会って事情を聞くことになったフラさんたちだったが、監督と言うのは、以前、あまりにフラさんが落ち込んでいたので、元気づけようと思って書いただけの噓だったことが分かる。

それを知った高子や待子はがっかりする。すでに所持金も全くない状態だったからだ。

昭ちゃんは、その内、プロデューサーに紹介してあげるから、取りあえずエキストラでもやりながら、僕たちのアパートに泊まると良いよ。みんなお金ないけど、人情熱いよ。みんな助手ばかりで暮らしているんだと言ってくれる。

その時、その仲間の助手たちが店にやって来て自己紹介をし始める。

振付師のバラ公(羽鳥永一)、フキカエの真ちゃん(柳沢真一)、キャメラ助手の寺さん(寺島正)、フメン屋の英さん(高英男)、スクリプターの夏ちゃん(ペギー・葉山)と言った若者たちだった。

フラさんと、谷待子、高子らも自己紹介し、昭ちゃんは、今日から僕たちのグループに入れてやるんだと言うと、全員意気投合し、歌いながら、スタジオセットの二階にある彼らの寝床に案内する。

その夜、みんなが屋根裏部屋のような場所で寝入った後、1人起きていた高子は、父と美子に手紙を書くが、見栄を持って、つい、近々、私もマッチンも山中監督の音楽映画に出させてくれるそうですと噓を書いてしまう。

その手紙を受け取った美子は、寝ている父の隣の布団の中で、姉たちからの手紙を読む。

その後、高子は、夕暮時子のスタンドインの仕事をもらい、橋の上から川に飛び込むよう指示される。

さすがに躊躇する高子だったが、監督の言うことを聞かないわけに行かず、とうとう川に飛び込み風邪を引いてしまう。

それでも、待子が書く父と妹に宛てた手紙には、私たちにもようやくチャンスが巡ってきました。高子姉さんが主役の代役をしましたら、主役以上だと褒められ。次回には、私たち主演の映画を撮ることになりましたなどと、又噓を書いてしまう。

美子は、いつものように、寝ている父の隣の布団の中でその手紙を読んでいたが、用事がある振りをしてその手紙を布団の上に起き部屋を出ると、それまで狸寝入りをしていたタニマンが、貪るようにその手紙を読みニコニコするのをガラス窓から嬉しそうに確認し、それを姉たちに手紙で書いて寄越すのだった。

高子は、その後も、私たちが住んでいるのは素晴らしいホテルです。いよいよジャズ映画を撮りますなどと噓を書いて北海道の父と美子に送っていたが、その手紙を楽屋で読んでいたタニマンは、美子が来ると、慌ててイスの座布団の下に隠し、舞台に出て行く。

その手紙をすぐに見つけ出した美子は、内容を読んで、私も行きたいな…と映画への憧れを呟くと、大きな鏡の前で、「オー・マイ・パパ」を歌い出す。

歌い終わった時、舞台から異変を知らせる騒動が聞こえ、タニマンが担架で運ばれて来る。

眼が悪くなったのが原因で舞台をしくじったのだった。診察の結果、手術しないと失明の恐れがあると言われたが、言うことを聞こうとしないタニマンはそのまま舞台を続け、仙台の大学病院に連れて行った時には、もう取り返しがつかないくらい白内障が悪化しており、すでに失明に近い状態だった。

そのことを美子の手紙で呼んだ昭ちゃんたちは同乗し、高子に父さんを呼んで上げなさいと勧めるが、高子は、父は大変な意地っ張りだから…と躊躇する。

一緒に話を聞いていた真ちゃんは、こちらに眼科の名医がいることにしたら?と提案するが、高子は、実はこれまで自分たちは、手紙で大スターになったと噓を書いて来たのだと打ち明ける。

その後、美子と父親を緑ヶ丘に呼び寄せ、駅に迎えに行った高子らは、「医は仁術にあらず 医は職業なり」と看板がかかった吉田医院と言う病院に連れて行く。

診察した吉田医師(藤原釜足)が、タニマンの症状を聞くと、しょぼしょぼし出したのが2年前、見えなくなったのは2ヶ月前とタニマンは答える。

待合室では高子らが美子に、私たち手紙で噓を付いていたのよと告白し、美子も、駅で会ったときからおかしいと思ってたと答える。

あんなヤブ医者に父ちゃんが直せるわけないし、私たちはしがないエキストラなのよ…と高子らは打ち明け、父さんに説明して欲しいと頼むが、美子は、私には言えない。父ちゃん、そんなに喜んでいたことか…。その夢をぶち壊すようなことで切る?と断る。

診察を終えた吉田医師は、この目は治らんね、ヤブ医者では治せんね。しかし私なら、手術して治してみせる自信がある。90%治る。ただし金がかかるぞ。5万かかり、前菌で頂きたい。大丈夫かいと言い出す。

それを聞いたタニマンは、娘たちは大スターですからと手術を承知するが、高子たちの表情は曇る。

自分たちの住まいがあるスタジオに父親を連れて来た高子たちは、そんな所だい?と聞かれたので、美子がとっさぬ、ステキな所よ。1階はロビーとテラスよ。天井にはシャンデリアが下がっていてなどと噓を伝える。

タニマンは、首からかけていたロケットを広げ、母親の写真にスタジオを見せると、俺には手に取るように分かると喜ぶ。

「青い鳥」に仲間たちと集まった昭ちゃんは、噓より何より、お父さんの目を年とかしなくては…と心配し、みんなの所持品を聞くが、若い彼らに金などあるはずがなく、芸達者が集まっているんだから、アルバイトで稼げば良いじゃないかと言う事になる。

さらに昭ちゃんは、明日の日曜日に、お父さんが撮影を観たいと言ってるんだと持ちかけると、日曜なら撮影は休みだから僕たちだけで芝居をすることが出来る事に気づく。

翌日、本職たちが誰もいない映画スタジオにやって来たタニマンに前で、待子が歌い、高子が踊ってみせる。

タニマンの心の中には、きれいなドレス姿の2人が見えていた。

それでも、嘘をついていることに耐えられなくなった高子は、途中で泣き出し、外に飛び出してしまう。

夜の無人の公園で1人ベンチに座り、遠くの夜景を見つめていた高子に近づいて来た昭ちゃんが、どうしたんだい?と聞くと、私、辛いのよ。私たちがやっていることは本当の親孝行なのかしら?この噓を誠にしないと、一生この噓に縛られてしまうような気がするのと高子は打ち明けるが、夢を信じてこそ、初めて実現するんだ。君には聞こえないかい?希望と言う足音が…と昭ちゃんは励ます。

最初は聞こえないと言っていた高子だったが、聞くんだよ、聞いてみせるんだ。あのメロディ、あのリズムと昭ちゃんから説得されると、聞こえるわ!と顔を輝かせる。

2人は踊り出すと、いつしか自然とキスしていた。

何とか手術台もたまり、いよいよタニマンは吉田医院で目の手術を受けることになる。

手術を終えた吉田医師は、2週間経てば、眼帯は取れるだろうと高子らに告げる。

その日は、12月24日のクリスマスだったが、「青い鳥」に集まった昭ちゃんらは、みんなすっからかん状態で、クリスマス気分ではなかった。

そこにやって来たフラさんは、みんなにプレゼントだと言い、黄色いマフラーを全員に渡す。

こんなもの、どこで手に入れたんだい?とみんな不思議がるが、意匠部に毛布の染め損なった奴があったんで、それを利用したんだと言う。

黄色いマフラーを巻いた仲間たちは、嬉しくなって歌い始める。

フラさんが歌い、夏ちゃんが歌う。英さんは高子と踊りだすが、あまりの楽しさに、自分たちだけでミュージカル映画を作ってみないか?とフラさんが提案する。

そんな「青い鳥」に入って来た見知らぬ女の子も一緒になり楽しむと、自分はアケミだと自己紹介し、仲間に入れてと頼んで来る。

歌えるのかい?と問いかけると、さっそくその場でアケミは歌い始める。

その巧さに惚れ込んだ真ちゃんは、今日から僕たちの仲間だと認める。

映画を自分たちで作るにしても、フィルムがあるのか心配されたが、撮影所中探したら、3000フィートも集まったと言う。

そうして1月6日になり、吉田医院で、いよいよタニマンの眼帯が外される日がやって来る。

包帯を外されたタニマンに、ゆっくり目を開いてと指示した吉田医師だったが、タニマンは何も見えない。やい、ヤブ医者!あんたは、金目的のヤブ医者だろう!インチキ野郎!と罵倒する。

それを知ったフラさんは、5万円がパーか…と、がっかりする。

又、スタジオ内の住まいに戻って来た彼らだったが、タニマンは、今日こそ、豪華な屋敷が観られると思ったんだがなぁ~…と嘆息を漏らす。

でも、心の目でははっきり見えるよ。こんな目は、二度と見えなくてもヘイチャラだよと言いながら、タニマンは1人で階段を上り、2階の寝室に上がって行く。

その頃、緑ヶ丘スタジオの会議室では、映画会社の永井社長(寺島雄作)を前に、監督やプロデューサーたちが、突然、来月の映画が間に合わなくなったので、その穴を埋める新企画がないかと話し合っていた。

近江監督は、浪曲映画で「ねずみ小僧 任侠編」のようなものを考えたのですが、新井プロデューサーが猫の方が良いだろうと言い出して…と説明する。

それを受けた新井プロデューサー(有木山太)は、ネズミより猫の方が強いので、「鍋島の化け猫騒動」の方が良いのでは?…と意見を述べる。

白石プロデューサー(山田周平)は、「娘十八狸林」を企画しましたが、世界プロの方から「アジアの虎」と言う作品を売り込みに来たので、それをかけたらどうかと思うと紹介する。

近江監督は、「ゴジラ」でも良いのですが、金がかかり過ぎますので…と解説する。

話を聞いていた永井社長は「アジアの虎」を観ましょうと言い出す。

助手仲間たちが自分たちだけで映画を撮っているスタジオに駆け込んで来たフラさんは、会社が独立プロの「アジアの虎」を社長に見せるらしいとの情報を教える。

夏ちゃんに、今まで撮影が終わった長さを聞くと、500フィートあると言う。

試写室では、永井社長を始め、近江監督やプロデューサーが、「アジアの虎」を観るため席についていた。

映写室にやって来たアケミは、困惑する映写が仮に自分たちのフィルムを映写するよう迫る。

いよいよ映写が始まるが、映し出されたのは「黄色いマフラー」と題されたミュージカル映画だったので、思わず近江監督などは映写をストップさせようとするが、何故か永井社長は気に入ったようで、止めるな!と命じる。

しかし、歌の途中で、オープンリールのテープが故障して動かなくなる。

すると、とっさにアケミがその場で歌い始め、一緒に観ていた仲間たちも、アカペラで歌い始める。

映写が終わった後、試写室の外にアケミを連れ出した近江監督は、こんないたずらをして!と叱りつけるが、長い社長は、これはわしの娘だと言い、もう「虎」は良いよ、近江君、あれで良いよ。作品を完成させなさいとアケミに伝える。

かくして、昭ちゃんは、監督デビュー作として本格的に「黄色いマフラー」の撮影を続行、主役に抜擢された3人娘たちは、晴れ姿を父親のタニマンに観てもらいたくて、スタッフに呼びに行かせる。

ステージでは、アケミや真ちゃんが、得意の歌を歌うシーンが撮影されていた。

いよいよ高子の出番となるが、そこに戻って来たスタッフが言うには疲れているから行きたくないと断られたと言う。

ステージでは、ジャングルの娘に扮した夏ちゃんが歌い始める。

昭ちゃんもそのステージでは得意の踊りを披露する。

その頃、1人、住まいのステージセットの階段を下りていたタニマンは、下に立っていた吉田医師の姿を発見、急に足取りがたどたどしくなると、水道の所でやかんに水を汲んで戻ろうとする。

そんなタニマンに、谷さん、私ですが…と吉田医師が声をかけて来るが、タニマンは、失礼ですが、眼が見えないもので…、どなたでしょうか?などと返事をする。

吉田医師は、あなたの眼が治らなかったののはわしの腕が悪いのだから責任を感じており、その償いとして、もう一度手術をさせてもらいたい。今度は痛くない、精神的な手術をしたいのだが…と申し込む。

しかし、タニマンは、心の目ではっきり見えますし…と言って断ろうとすると、吉田医師は、3人の娘さんがスターに抜擢されたと言いながら、持って来た新聞を渡す。

それを受け取ったタニマンは、無意識に新聞記事を探し、どこにもそんな記事は載ってないじゃないですか!と眼が見えていることを明らかにしてしまう。

それを知った吉田医師は、今から撮影中のスタジオに行って、あなたのお父さんは見えるのに見えない振りをしているだけだと行って来ましょうと言う。

すると、タニマンは見えるんですと謝罪し、娘にだけは見えないと嘘をついて下さいと頭を下げて来る。

ここへ来て2、3日すれば、ここの様子は大体分かります。ある夜、娘の寝言で、はっきり手紙に書いてあったことが噓だと言うことが分かりました。あなたにも人の情があるのだったら、娘たちの気持ちを考えてやって下さい。傷つけないでやって欲しいとタニマンは訴える。

それを聞いた吉田医師は、私も今度から看板を替えよう。わしも、眼帯を外した時から、あんたが見えていることは分かっていたよと言い、本当の新聞の方を渡す。

そこには、緑ヶ丘に三姉妹新生スター誕生と載っていた。

「黄色いマフラー」撮影中のスタジオでは、美子が「ブルー・カナリー」を歌い、高子と待子が踊っていた。

そこに、吉田医師とタニマンがやって来たので、娘たちは喜ぶ。

駆け寄って来た3姉妹に、タニマンは、見えるんだよ。元通りに見えるようになったんだよと笑顔で伝える。

娘たちは良かったねと泣き出す。

ステージでは、英さんが「黄色いマフラー」の歌を歌い、フラさんが踊っていた。

撮影の合間に挨拶に来た監督の昭ちゃんも、タニマンは、昭ちゃんだろう?と喜ぶ。

仲間たちが次々と挨拶する中、次のステージに向かいかけた高子は、何かを考えていたようで、タニマンの元に戻って来ると、父さんの目、手術の時から見えていたんじゃ?と聞く。

タニマンは、今見えるようになったんだと嘘を付き、吉田医師も、いつからなんてどうでも良いんだと返事をごまかす。

何となく、その返事から、自分たちがこれまで付いて来た噓がバレていたことを誘った高子は泣き出すが、本番前に泣く奴があるか!とタニマンに叱りつけられ、ステージに向かう。

椅子に腰掛け、撮影を見学し始めた吉田医師は、あんたは幸せなんだと隣に座ったタニマンに告げる。

ステージでは、フラさんが得意のドラムを披露していた。

スタジオ内には、永井社長も来ており、にこやかに撮影の様子を見つめていた。

タニマンは、旨のロケットを広げ、亡き妻の写真をステージに向けると、母さん、うれしいだろう?私とお前の子だな。蛙の子は蛙だねと呟く。

ステージでは、3姉妹や仲間たちが全員そろって「黄色いマフラー」の歌を合唱していた。