TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

栄光への5000キロ

石原プロモーションが「黒部の太陽」に次いで放った大作だが、記録映画としてはともかく、娯楽映画としてはきわめて退屈な作品になっている。

基本的にレースの場面ばかりで、ドラマと言えるものは、ひたすらレーサーである男を待ち続けるしかない女性たちの鬱屈した心理くらい。

優子を演じる浅丘ルリ子は、東京で元恋人のフランス人と再会し、一旦は彼に付いてフランスに向かう。もう一人のヒロインであるアンヌの方も、夫との仲が途中で悪くなり…と言った展開だが、特に女性映画として、彼女たちをメインに追っている印象でもないので、あまり彼女らに感情移入できない。

では、男たちの方に感情移入できるのかと言うと、こちらも、ほとんどレースに明け暮れていると言うだけで、その心理は捉えようがなく、車好き、レース好きな人ならともかく、一般客には何とも魅力に乏しい内容になっている。

さすがに、後半のサファリラリーのシーンは、多少、見応えがないではないが、全体としては単調と言うしかない。

さらにこの作品の印象を悪くしているのは、字幕の採用。

劇中、裕次郎やルリ子は、英語やフランス語をしゃべっているシーンが多いため、画面右側に白文字の字幕が出るのだが、これが実に読みにくい。

白文字であるため、背景の絵が暗い部分は読み取れるのだが、白っぽい背景になると文字が溶け込んでしまって全く判読不可能。

レース描写中心で、特に複雑なドラマではないので、セリフが分からなくてもチンプンカンプンと言うほどではないが、この読み辛さで、会話劇の大半が取っ付きにくいものになってしまっているのは否めない。

確かに、昔の字幕ってこんな風で読みにくかったな…と思い出したくらいで、海外マーケットを狙った作戦だったのかもしれないが、これでは国内での反応は芳しくなかったのではないかと想像してしまう。

日本の高度成長期、自動車産業が世界を舞台に飛躍し始めていた時代の華々しい記録が描かれているが、今となっては、海外でのロケーションを楽しむくらいしか見所はないような気がする。

三船敏郎、仲代達矢、伊丹十三と言った俳優がせっかく登場しているのに、顔見せ以上の活躍していると言う風でもなく残念。

裕次郎はかなり太っており、もう往年のシャプさはない。

ルリ子の方も、厚化粧が目立つばかり。

当時はまだ日本でも人気があったヨーロッパ映画のアンニュイな雰囲気を狙っているようにも感じるが、大成功していると言う感じではない。

日産のPR映画と割り切って観た方が良いかもしれない。

実際に走行している所はスタンドインだろうが、スタート地点やゴール地点などで、裕次郎とルリ子があたかも実際のレースの群衆にまぎれ、参加しているように見える所は合成ではなさそうだし、一体どうやって撮ったのか分からず、ちょっと感心した。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1969年、石原プロモーション、笠原剛三原作、山田信夫脚色、蔵原惟繕監督作品。

松竹映配ロゴ

どこかの国の朝焼けの海辺

アフリカ系を含む欧米人や東洋人のグループらしく、浜辺で女2人がたき火をしており、そこに集まって来た男らは、ボンゴを叩いたり、笛を吹いたりし始める。

日本人五代高之(石原裕次郎)は、ギターを弾きながら歌を歌い出す。

たき火の側に立っていたのは、世界中のレースからレースを渡り歩いている五代と共にトレーラーでジプシーのような生活を続けている坂本優子(浅丘ルリ子)だった。

タイトル

モンテカルロ・ラリー

五代は、雪が残るコースをひた走っていた。

途中、エンジニアチームが車を点検、ブレーキに不安があるものの、部品は次の地点で交換と言う事になり、レースに復帰。

その頃、優子と、ピエール・ルデュック(ジャン・クロード・ドゥルオー)の妻アンナ・ルデュック(エマニュエル・リバ)は、海が見えるホテルのベランダで、レースの状況を伝えるラジオ放送を聞いていた。

五代の車は山沿いの道を走っていたが、前方の道に岩が落下しているのを発見、急ブレーキをかけるが、スピンしてしまう。

そのラジオから、五代の車が事故にあったと言うニュースが聞こえて来たので、アンナからもらったコーヒーカップを持って立っていた優子は、思わず、コーヒーカップを床に落として割ってしまう。

優子は、重傷を追った五代の緊急手術が行われている病院へ駆けつけるが、少し遅れて、ケニア人ジュナ・マウラ(キナラ)もやって来て嘆き悲しむ。

その頃、レースはピエールの優勝で終了し、妻のアンナも表彰式にやって来て共に喜んでいた。

翌朝、五代と共に停めていたトレーラーに乗り込むピエールに、アンヌはジュナは来ないわよと告げ、ピエールは運転台に貼ってあった、ジュナや五代、優子らとの記念写真を破り捨てると、トレーラーを出発させる。

その様子を、ジュナはじっと街角から観ていた。

アンナはその後優子に電話を入れ、とにかくあなたも眠るようにと勧める。

そんなアンナにピエールは出発しようと誘うが、アンナは、1年中車の旅ばかり、平凡な生活がしたいわと呟く。

優子は五代に付きっきりで看病をしていた。

その後、五代と優子は、日本に帰国する。

羽田空港には、秘書課の山崎(内藤武敏)なる人物が車で迎えに来ていた。

その夜、クラブに来ていた五代は、マスコミ陣の取材を受けていた。

マスコミ陣の興味は、今回五代が参加する日本グランプリと、3年間も一緒に生活していながら、いまだに結婚しない優子との関係についてだった。

そんな中、優子の方は、フロアでゴーゴーを踊り出す。

そこに、又、山崎が迎えに来たので、五代は踊っていた優子に、ホテルまで送ろうと告げに来る。

優子は、日本グランプリの後はどこ?オーストリア、ベオグラード…、何にも変わってないわ、あなたも日本も…と五代に言う。

ホテルで1人サンドウィッチを食べる優子は、鏡に映る自分の姿を寂し気に見つめる。

五代は病院で精密検査を受けていた。

ホテルでテレビを観ていた優子は、かつての恋人、ファッションデザイナーのジャック・シャブロン(アラン・キュニー)が来日してインタビューに答えている様子に気づく。

山崎と共に、日産常務の高瀬雄一郎(三船敏郎)の部屋を訪れた五代は、精密検査の結果、どこにも異常なかった事を聞かされ、日本グランプリでは日産チームとして参加してもらえないだろうか?と打診される。

その後、ヘリコプターで日産の工場へ向かう事になった五代は、案内役の高瀬から、USCのチームにも、こうやって、ヘリコプターから今の日本の姿を見せたと聞かされる。

日産の工場に降り立った五代と高瀬は、日本グランプリに使うレースカーを見せられる。

グランプリチーム監督として紹介されたのは、五代も旧知の竹内正臣(仲代達矢)だった。

高瀬は、君を推薦したのは竹内だと言う。

さっそくレースカーに乗り込んだ五代は、コースを試走し始める。

竹内は、部下の江藤にタイムを計らせる。

その頃、東京の東急ホテルでは、シャブロンのファッション・ショーが始まろうとしていた。

その舞台裏で、モデルたちのチェックをしていたシャブロンは、ぜひ舞台に出て欲しいと頼む日本人スタッフの要請を断っていたが、その直後、優子が来ている事に気づき、驚きながらも喜び、その場で抱擁する。

なぜ日本に帰ったのか?ジプシー生活は辞めたのか?なぜ私から去ったのだ?とジャックは問いかけるが、優子は、五代と一緒について行く事を決心した日の事を思い出すだけだった。

ジャックは、優子のデザイナーとしての才能は枯れていないと説得する。

レースコースの傾斜部分に来ていた五代は、メカニックの江藤勉(笠井一彦)に、3年前、竹内と自分は同じレースで勝負をしていた仲だったと話し始める。

そのとき、自分の車のノズルが竹内の車にぶつかり、竹内の車はクラッシュし、彼の右手の神経は切断された。俺は走路妨害と判定され、チャンピオンシップを剥奪されたと言う。

俺はその後、ヨーロッパを3年間廻り色々なレースに出て来たが、そこで経験した走路妨害と言うのはあんなものじゃないと語る五代の話を聞いていた江藤は、なぜそんな話を私に?と不思議がるが、今日から君に俺の命を預けるからさと五代は答える。

優子が待っていたホテルの部屋に帰って来た五代は、シャワーを浴びるとすぐにベッドに入り、フロントに電話をして、今後の電話を断ると、明日のモーニングコールを頼んで寝ようとするので、横のベッドにいた優子は、自分は京都へ行こうと思うと打ち明ける。

五代は明日から合宿なのでこっちには帰って来ないと言う。

さらに優子は、自分の昔の恋人だったジャックが今来日している事も話すが、五代は特に反応を示さなかった。

日本グランプリに参加するUSCグループの1員としてピエールとアンナ夫妻も来日、久々の再会を喜んだアンナは優子に、五代とのその後のことを聞き、自分もピエールとの生活に12年も我慢していると打ち明ける。

ピエールは、マネージャーから、お前は日産チームの五代の事を良く知っているから、こちらのチームを勝たせるため、奴をマークしろと指示されていた。

富士スピードウェイにやって来た優子は、合宿中の五代にしばしの別れを告げ、京都に向かう。

レースコースの傾斜面を観ていた五代に、竹内が近づいて来る。

五代は、自分は竹内に怪我をさせて以来、ずっと亡霊に取り憑かれていると打ち明ける。

京都にはアンヌと2人で訪れ、女って退屈ねと話し合っていたが、そこにジャックがやって来て、優子に会うと、パリは君に目を見張るはずだと自分と一緒にパリへ帰る事を説得する。

日本グランプリがいよいよ始まり、USCチームのマネージャーは、日産のピット内の様子を望遠鏡で監視していた。

竹内は五代に、ピエールがマークして来るはずだから気をつけろと注意する。

京都では、ジャックが帰ったあと、アンヌが優子に、五代を愛しているの?と確認していた。

レース会場では雨が降り始めていた。

ピットインしたピエールは、五代をマークしろと再度命じられる。

コースに復帰したピエールは、五代の車の前に出るが、スピンしてコースを外れてしまう。

その際、ピエールは右手を負傷する。

レースとしては、USCチームが1位になり、日産は2位だったが、ゴールインした五代は、竹内に、俺はお前の亡霊を追い払ったと伝える。

レース後のパーティで、ピエールは悪酔いしていた。

そこにやって来たアンヌ、優子、五代。

ピエールは自ら頭から酒を浴びると、笑いながらその場に倒れる。

アンヌが助け起こそうと近づくが、俺に触ったら殺すぞ!とピエールから威嚇される。

アンヌは驚くが、そんなピエールを五代が助け起こしてやる。

ピエールはそんな五代に、君は何も知らん。俺が何をしたのか…と恥じ入り、優子は、何があったの?と立ち尽くす。

アンヌは、そんなピエールに別れ話を持ちかける、

私は、小さな平和な生活を望んだだけなの。あんな女になりたくなかったの…と、男たちと一緒に寄ってばか騒ぎしていた女を見つめる。

私は静かな生活を望んだわ。あなたはそれを許してくれなかった。子供を持つこもも…

そのとき、USCチームのマネージャーが呼びに来たので、五代と優子を残し、他の外国人選手たちは引き上げて行く。

ピエールと共に、アンヌは2人に別れを告げ帰って行く。

ホテルに一緒に帰って来た五代は、赤電話をかけ、これから出かけて来ると言う。

優子は1人エレベーターに乗り込む。

五代は高瀬に会い、USCチームも出るサファリラリーに出てもらいたいとの依頼を受ける。

チーム監督の野村憲一(伊丹十三)と技術主任の西島を紹介され、資料も渡される。

五代はホテルに帰る車の中で、資料に夢中になっていた。

ホテルの部屋に戻って来た五代からサファリの話を聞いた優子は、あなたの長年の夢ですものね…と冷たく返事をする。

そんな優子に五代は、俺は君の全てを奪って来た。俺が君に与えたのは、死ぬほどの退屈だけだった…と詫びる。

優子は泣き出し、もう我慢できないと漏らすが、五代も、今度のサファリラリーだけは捨てる事が出来ないんだと言う。

優子は、ジャックとフランスに行く決心をし、羽田から飛び立って行く。

その頃、日産チームは、ケニア人エンジニア、ジュナ・マウラ・キンゴリーの所在を探していた。

◀休憩▶

ジュナ・マウラは列車で駅に到着、五代と2年振りの再開を果たす。

今回、ジュナは、日産チームのナビゲーター訳として五代が推薦、探し当てて呼んでくれたのだった。

その後、モンバサ港から、コース確認に出発する五代とジュナ、メカニックの江藤。

アンナも、当地に乗り込んでいた。

伍代たちが脱輪しているとき、前方からやって来るUSCチームの数台の車と遭遇する。

その1台から降り立ったのはピエールだった。

セスナから地上のUSCチームを追尾していたロバートは、道草を食っているピエールに呼びかける。

その後、昼食に寄ったホテルで、ジュナと五代はアンナと久しぶりに再会するが、アンナは昼日中から酒を飲んでおり、人が変わったように無口になっていた。

アンナは五代に、なぜアフリカを走るの?と絡んで来たので、酒をもう飲まないように止めるが、優子元気?と聞いた来たアンナは、良いもの見せてあげると言い出し、部屋に戻る。

ジュナは、アンナは変わったと言い、五代はみんな変わったと答える。

戻って来たアンナが見せたのは、パリでデザイナーとして活躍している優子の写真が載った雑誌だった。

ジャックと一緒に写っている写真もあった。

五代はそれを無視して練習に向かう。

夕暮れ、アンナから雑誌をもらって来たジュナが優子の事を聞くが、五代はこの話は止そうと拒否する。

スタート順位を決める抽選当日が来る。

ナイロビから北コースを取り、カンパラに到着、帰りは南コースを通るこのレース。

チーム勝負だが、後から出発する車は、前の車が荒らしたコースを走る事になるため、先に出発する方が圧倒的に有利だった。

次々に、チーム名と出場選手が紹介される中、USCメンバーとして参加したピエールは3番手として呼び上げられる。

五代の名はなかなか呼ばれず、ようやく呼ばれた順位は、参加車95台中90番と最悪に近い順位だった。

その番号を聞いたジュナはがっかりする。

さっそく日産チームの作戦会議が始まり、チーム監督の野村は、目指すのはあくまでも3台参加するチーム優勝なので、メカニックチームは、先に走る4番車と36番車の2台の方に随行しようと提案する。

しかし、それを聞いた江藤は、伍代さんの車を見捨てるのか?90番車に機材を積んで走れと言うのか?と反発する。

野村は、先に出発する日産の36番車と後発の90番者とでは、2時間も差があると主張する。

江藤たちは、五代車がある地点からノンストップで走れば、時間差を縮めることが出来るのではないかと言い出す。

いよいよスタート当日がやって来る。

午後4時1番車が大勢の見物客の見守る中出発する。

その後、2分感覚で次々にレースカーが続く。

アンナも、3番車に乗るピエールの車を見送っていた。

まだホテルにいた五代は、東京の高瀬から電話を受け、くれぐれも無理をしないようにねぎらわれると、5日後にに元気な声を聞かせて下さいと励まされる。

ラリーは「再び会う」と言う意味の言葉である。

一般生産車が一般公道を走るレースである。

五代は、野村と握手して出発を待っていた。

そんな五代車に近づいて来たアンナは、ナビゲーター役のジュナに、コーヒーを入れた容器を手渡す。

そのとき、五代は、見物客の中に優子がいる事に気づく。

午後7時、五代の90番車がスタートする。

アンナも優子に出会い、出発した車の中でジュナも優子がいたと言う。

江藤が乗る車の整備をするサービス隊は、日産の36番車の整備を終えた後、90番車が到着するまで1時間半待つ事にする。

五代はそのサービス隊が待つ地点までの直線距離にして120km以上をぶっ飛ばさなければいけなかった。

世が明け、助手席で目覚めたジュナ。

3番車のピエールは、もう最初のチェック地点に到達していた。

何とか、江藤たちが待っていたサービス地点まで到達した五代。

ナビゲーター役のジュナは、我慢していた小便をしに行く。

優子はアンナと共に、ホテルで編み物をしながらラジオでレースの模様を聞いていた。

アンナは優子に、一度失った愛を蘇らせるつもり?と質問する。

ピエールは、レース中、美しい牡鹿がぶつかって来た事があって、その時から毎回レースに怯えるようになったと教える。

そのピエールの運転する3番車は、フロントガラスにヒビが入ったので、思い切って全部外してしまう。

その直後、先行していた車が故障して停まっている横を通り過ぎる。

フォート・ポータルでは、USCチームも日産チームも待ち受けていた。

西島が野村に4号車の事を聞く。

江藤も待ち構えていた。

ピエールの3番車がそこに到着する。

サービス係は、すぐさまフロントガラスの交換に取りかかる。

修理が終了すると、3番車は出発する。

続いて90番車が到着。

3番車とは120分差だと知らされる。

五代は40台抜きをやってのけ、今は30番目の順位に上がっていた。

優子はひたすら編み物に没頭していた。

その後も五代車は雨の中をひた走る。

タイヤがぬかるみに取られ動けなくなったので、降りたジュナが、布を後輪の下に噛ませようとするがうまくいかない。

五代は自分の白いセーターを投げて、それを噛ませるよう指示する。

その結果、何とかぬかるみを脱する事が出来た。

フォート・ポータル

21番車、4番車、8番車、90番車と続いていた。

サービスチームの待機場所に日産チームの36番車が到着する。

優子はホテルでまだ編み物に専念していた。

2番車、14番車、19番車、3番車、90番車、36番車、27番車…と現時点の順位がラジオから聞こえて来ると、優子は泣き出していた。

中間地点のカンパラ

3番車で到着したピエールは先乗りして待っていたアンヌに笑いかける。

優子は五代車を見つける。

ホテルに着いた五代は、タイヤに噛ませたため汚れた白いセーターをテーブルに乗せて爆睡する。

翌朝、五代と一緒にホテルを出るジュナは、地元の英雄として群衆から握手を求められる。

五代は、優子から編み上がったばかりの青いセーターを受け取り、汚れたセーターを預ける。

優子は一言、帰って来てと伝える。

折り返しのコースを再出発したピエールと五代は、それぞれ、運転をナビゲーターに交代してもらい、助手席に移動すると、休んだり食事をとったりする。

ナイロビのラリー本部

4番車が先頭でソフトバレーを通過中、日産のダットサンチームがわずかに優勢との連絡が入る。

19番車がリタイヤ

ピエールと五代の90番車との時間差は40分に縮まっていた。

日産チームの4号車が故障している横を通過した五代は、すぐに江藤を寄越す!と声をかける。

ホテルの優子はパリに電話をかけ、ジャックに、あなたは優しかった。あの人は走っている。ありがとう、さようならと告げて電話を切る。

JSCサービスに、1位となったピエールの3番車が到着すると、そのすぐ後に五代の90番車が到着する。

夜になって冷えて来たので、ハンドルをジュナに固定してもらい、後部座席に置いていた青いセーターを着る。

アンナと優子は、ゴール地点のホテルで一緒に待っていた。

江藤とガギが乗るサービス車も、不眠不休で走り続けていた。

五代は、スタビライザーが故障だと告げ、ジュナが調べてみると、パーツが落ちている事に気づく。

五代は、江藤が待っているはずだから行こうと言う。

しかし、その江藤のサービス車は、途中で脱輪をしていた。

予定地点に到着した五代車だったが、江藤の車はいなかった。

降りて苛つくジュナ。

少し待っていると、ようやく江藤の車が到着し、部品は江藤の車のものを使う事にする。

ジャッキで江藤の車を持ち上げ部品を取ると、今度は同じジャッキで五代の車を持ち上げ取り付ける。

トップとの差は20分くらいだと言う。

熱くなって来たので、五代は青いセーターを脱ぐと又出発する。

やがて、トップを走るピエールの3番車を発見する。

ピエールの方も、ナビゲーターが、工法から迫って来る五代の90番車を見つける。

チャックポイントを一瞬違いで到着。

3号車の真後ろにぴったり着いた90番車は、とうとう追い抜く。

アンヌと優子がゴール地点で待ち受けている。

次のチェック地点には、2台ほとんど同時に到着する。

ピエールは必死に先行する90番車を追っていたが、そのとき、道に鹿に似たガゼールが立っているのに気づき急ブレーキをかけるが、正面衝突してしまう。

ガゼールの死体を前に、ピエールは車を降り呆然とする。

ナビゲーターはオイルパンがやられたと言う。

ピエール車が事故に会い、リタイヤしたとのニュースがゴール地点にも伝えられる。

ピエールは車の横に座り込んでいた。

ゴールに最初に到着したのは、五代の90番車だった。

五代は、監督の野村とがっちり握手をし、先に到着していた江藤は泣き出す。

野村は、チーム優勝はほぼ確実だと五代に伝える。

それを見つめる優子も泣いていた。

22番車、1番車、25番車、17番車、27番車と次々にゴールインして来る。

高瀬は電話で、本当にありがとう、ゆっくりレースの話を聞きたいと東京から連絡して来るが、五代は旅に出ようと思っていますと答える。

高瀬は、じゃあ元気で!と別れを告げる。

五代は泣いている優子と抱き合う。

レースも終わったゴール地点に、牽引車に引かれた3番車が戻って来る。

車を降りたピエールは、ずっと待ち続けていたアンヌを抱く。

アンヌは何故か笑顔だった。

第17回サファリラリー

出場した95台のうち、完走したのは21台だった。

レースを終え、傷だらけのレースカーが映し出される。