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第三の悪名

今東光原作の映画化シリーズ第5弾

2作目「続 悪名」で死んだモートルの貞の事件から10年が経過した時代を描いている。

朝吉は、その貞の妻だったお照の家に居候しており、貞と瓜二つの弟清次とは兄弟のように仲良くやっているいると言う設定になっている。

そんな中、朝吉が出会う新たな人物として、戦争中、小隊長だった修、その修の実家の後を継いでいる女親分お妻、松島の二代目元締めなどが登場する。

そして、貞の仇、カポネとの再対決を軸に物語は進行して行く。

タイトルの「第三の〜」と言うのは、この回から登場する長門裕之演ずる修のことであろうか?

極道の家に生まれ、極道を憎みながらも、義母に恋慕してしまったため、自ら極道になろうとする複雑なキャラクターになっている。

カポネ役は、「続 悪名」では藤山浩二が演じていたが、本作では南道郎に替わっている。

3作目「新・悪名」で登場した勘やん役の島田洋介は、同じ役で再登場しているが、今喜多代の方は、前の勘やんの妻役と同じかどうかはっきりしない。

この島田洋介と今喜多代は夫婦漫才師として有名だが、この作品での島田洋介は、単なるお笑いゲスト以上の存在になっている。

相変わらず、陰影のコントラストを強調した奥行きのある照明、時代色がしっかり再現されたセットなど、当時の大映の底力を見せられる思いのプログラムピクチャーである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、大映、今東光原作、依田義賢脚色、 田中徳三監督作品。

兎の絵が背中に描かれたジャンパーを着た清次(田宮二郎)が新年の挨拶に訪れたのは、今は亡き兄、モートルの貞の妻だったお照(藤原礼子)の家で、そこに居候していた朝吉(勝新太郎)が歓迎してくれた。

清次は、自分と瓜二つだった兄の遺影を見つけると、こんなものをいつまでも持っているようじゃあかん。わてが預かっときましょうと取り上げる。

貞が死んでからもう10年が経っていた。

あの時、おなかの中にいたボンも、もう10になりました…とお照は感慨深気に呟く。

その時、清次が朝吉に、兄貴、最近誰かからか恨みを買ってませんか?松島の辺りで、兄貴のことを探しているんですよと教える。

気になった朝吉が松島に出向き、とある遊郭のやり手婆(今喜多代)に、朝吉を探している奴がおるんやて?と事情を聞くと、そのやり手婆は、目の前にいるのが朝吉本人であることも知らず、朝吉はんと言ったら、戦争で戦車と心中しはったそうやで。あんたに良く似て愛嬌おましたわなどと言うので、朝吉は苦笑しながら、礼を言うと立ち去る。

次に、屋台のラーメン家「来々軒」の主人に話を聞くと、朝吉はん言うたら、ノモンハンの戦いで敵の機銃に撃たれて、立ったまま死にはったそうやなどと、また怪し気な情報を聞かされたので、呆れてその場を離れるが、その直後、「来々軒」に因縁をつけて来た地回りが、屋台をひっくり返してしまう。

それに気づいた朝吉が、その地回りに文句を言い、一暴れしてひねり上げると、親分の所へ連れて行かんかい!と迫る。

近くのおでん屋に案内された朝吉は、そこで飲んでいた男の顔を見て、小隊長!と叫ぶと固まってしまう。

目の前にいたのは、兵隊時代、極道の朝吉を戒め、良く殴りつけて来た小隊長の粟津修(長門裕之)だったからだ。

あんたやな?この辺でわいを尋ねていたのは?と聞くと、修は、兵隊時代のことを謝ると言うか、俺の身内にならんかと言い出す。

今は、小隊長と一等兵やないんやと朝吉が断ると、戦時中、俺が貴様のことをたしなめたのは、俺自身が渡世人だったからだ。実は手を貸してもらいたいことがあると修は打ち明ける。

朝吉は、あんた渡世人やったら、何で蕎麦屋いじめるんや?と聞くと、こっちにも仁義と言うのがあるんで、新しい蕎麦屋を出させるわけにいかんのじゃ!と修も凄んでみせる。

そこに顔を出したのは、松島を仕切っている二代目元締(西村晃)で、朝吉が屋敷に付いて行くと、帰っとったなら、何故挨拶に来んのや?松島を先代から任されていたのと違うのか?と聞いて来る。

朝吉は謝罪し、元締めは一発朝吉の頭をどつき、堪忍したると言ってくれる。

大阪が焼けてから、闇市で儲けた奴が羽を伸ばし、昔からの極道者を押しのけよる。お前ら若いもんが頑張ってくれんと…と元締めはにらみをきかせるが、朝吉は、縄張りはお返しして、朝吉1人で生きて行きたいと頭を下げる。

元締は、やれるもんならやってみいと凄んでみせるが、朝吉は黙って立ち上がると、今度、先代の三回忌の法要があるから挨拶くらいしとけと命じる。

先代加藤松五郎の三回忌法要が行われていた寺にやって来た朝吉は、粟津組の親分と呼ばれていた1人の女性と出会う。

朝吉が名乗って挨拶をすると、宿辰から聞いていますと答えたお妻(月丘夢路)は、奥で遊んで行かないか?軍資金ならあると誘って来る。

花札をやっていた奥の間にやって来たお妻と朝吉に気づいたのは、先に遊んでいたカポネ(南道郎)とその子分の勘やん(島田洋介)だった。

朝吉の方も2人に気づくと、こんな所におったんか…、可愛い弟分の貞の仇のことは忘れてへんでと睨みつける。

一勝負遊び終わった朝吉に、お妻は、さっきの話はいつ頃のことです?と聞いて来たので、わいが出征するときや。あいつらの指図でガキみたいな奴にやられましてな…と打ち明けると、そのお照はんと言う方は、今、どないしてはりますねん?とお妻は案ずる。

朝吉が、えろうすってしまってすみませんと詫びながら財布を返すと、詫びに酒でも付き合いなさいとお妻は言って来る。

酒は飲めないと朝吉は断るが、だったら酌だけでも良いわと言うので、朝吉は粟津組に付いて行く。

そこで酒を持って来たのは、同じ八尾出身の幼なじみ辰吉(丸凡太)だった。

担ぎ人やったけど、志を立てて渡世人になろうと言うので、朝吉は呆れる。

自分の小隊長やったと説明し、松島で会ったのだが、修はんはこちらの?…と聞くと、お妻は、どこで会いました?今何をしてます?どこかの会社にでも勤めてるんですか?などと話に飛びついて来る。

お妻は、元々自分はここの奉公人だったけど、先代の後添えになり、修の義理の母にも当たるわけで、修はんを東京の知りあいに預け、大学まで出したのに、すぐ戦争になって…、それ以来、来てもくれないと嘆く。

朝吉は、修の様子に付いて適当にごまかそうとするが、勘の良いお妻は、わてに聞かせとうない格好をしてたんやなと指摘する。

お照の家に戻った朝吉は、貞の仇であるカポネに会ったことを話して聞かせると、清ちゃんには聞かせなやとお照は釘を刺す。

そこに、大きめのタキシードを来た清次がやって来て、今度、キャバレー「ドリーム」の支配人になったと言いながら、持って来たシャンパンを朝吉に飲ます。

口当たりの良さでつい飲んでしまった朝吉は、それも酒だと聞かされると怒り出す。

貞からキャバレー関係者の写真を見せられた朝吉は、その中央に写っているカポネが、キャバレー「ドリーム」も社長だと知る。

この社長に雇われたのか?と聞くと、垣内はんと言う御贔屓に入れてもらったのだと清次は説明して去って行く。

清次が帰ったあと、朝吉はお照に写真を見せ、社長はカポネやと教える。

松島で、又、「来々軒」をひっくり返していた子分たちの側にいた修は、いつの間に近づいて来たお妻から、若旦はん、なんちゅう、情けないことを…と話しかけられる。

事情を知らない子分たちがお妻にからみ始めると、この人は天王寺の粟津組の親分お妻やと教えた修は、お妻を馴染みのおでん屋に連れて行く。

家に寄り付かへんのは、立派な仕事をしているとばかり思っていたのに…と嘆くお妻は、わてに長い苦労を水の泡にせんといておくれなはれと頼むが、修は、俺は天王寺に戻って、お前と2人で2代目になろうと思うなどと言い出す。

俺が中学の頃、意気地なしやったんで、親から暗い部屋に閉じ込められた。その時、お前だけがクリームパンを持って来たくれた。わいに勇気を教えてくれたのはお前や。そして恋と言うのもや…と修が続けたので、お妻は戸惑い帰ってしまう。

その足で、松島の元締めの元を訪れたお妻は、法に会わんこととは分かってますが、修を返しておくんなはれと頼むが、元締めは相手にしないので、それでは粟津一課を相手にせんと受け取ってようございますね?と聞く。

すると、元締めは、あんさんは粟津組の姐さん気分らしいが、うちは粟津の2代目は修さんだと思ってます。あんさんを親分はんとは思ってまへんと切り返して来たので、お妻は黙って辞去する。

松島で修に意見しようとしてやって来て、ひっくり返された「来々軒」の主人と話していた朝吉は、やって来たお妻に誘われ、車で宝塚の旅館に来ると、一晩泊まることになる。

翌朝、朝吉はお妻に、あんた、無理したんと違うか?惚れてもいないのに、何やけったいなことになって…。松島に楯突く奴欲しいんやろ?相当の覚悟せなあかんな…と語りかける。

お照の家に戻ると、朝帰りなんて珍しい。どこ行ってはったん?天王寺の女親分とどっかにふけこんではったんやろ?とお照は不機嫌で、朝吉が言い返そうとすると、ほな、出て行っておくんなはれ!と追い出されてしまう。

朝吉が出て行くと、さすがにお照も、気がとがめたようで、玄関が開くと嬉しそうに顔を上げるが、そこにいたのは息子だったので、お帰りくらい言わんかい!と叱り飛ばしてしまう。

朝吉は、粟津組の客分と言うことになり、辰吉らと一緒に掃除の手伝いなどするが、その辰吉が、彫りもんをしたいので付いて来てくれと頼む。

とある彫物師(夢路いとし)の家にやって来た辰吉は、ほんのちょっとの痛みにも耐えきれなかったので、同行した朝吉は「あほ」と掘ってもらえなどと茶々を入れる。

その時、もう1人の彫物師(喜味こいし)が見事な般若の刺青を彫り上げた客は、一言も痛いと言わなかったと感心されるが、振り向いたその客は修だった。

外に呼び出した朝吉に、俺の話に乗る気になったか?と修は聞いて来るが、今わいは、お妻はんの所に居候してるんやと教えた朝吉は、あんた、あんなに心配してる人いるのに、きれいな身体汚して…。堅気になってくれと頼む。

しかし、修はそんな朝吉に殴り掛かって来たので、やむなく朝吉も相手をする。

倒れた修は、殴ったてな、村上、どうにもなりやしねえよ。殴って人が変わるなら、軍隊に入った奴はみんな立派な人間になってるよ。世の中、そんな浪花節じゃ生きていけないんだよと冷笑すると、胡蝶白粉って知ってるか?と聞いて来る。

小杉久左衛門と言う人の会社の商標をミナミの「ドリーム」の社長が、元番頭の垣内を通して奪って、新しい会社で使おうとしていると言う修の話を聞いた朝吉は、必ず名前を取り返しましょうと約束する。

まずは、小杉久左衛門(菅井一郎)の元に出向いた朝吉は、わいも河内ものや。河内の人間の多くが、あんたの会社の奉公人として搾り取られたことも良く知ってる。胡蝶白粉には、奉公人たちの汗と涙が染み込んでいるのを忘れたらあきまへんでと釘を刺し、「ドリーム」の事務所に乗り込んで行く。

そこには、カポネ、勘やん、垣内(天王寺虎之助)と交渉していた修がいた。

カポネは、胡蝶白粉の商標権利は小杉のご子息の静男さんから許可をもらっているので、何ら問題はないと言い張る。

ではその息子さんと会わせてくれと朝吉が迫ると、今、資金繰りで東京に行っているとカポネは答え、勘やんは小杉に、もう隠居なさったら良いんじゃないですか?と勧める。

黙って話を聞いていた修は、息子さんが東京に言ったと言うのは噓だろう。明日の晩、ここに松島一家がもらいに来ると言い残して帰る。

小杉も、こんなこと辛抱できんわと嘆くと帰って行く。

一旦帰ったと思っていた朝吉だったが、実は物陰に隠れており、人気がなくなった頃、側を通りかかった勘やんを捕まえると、ぼんちはどこにいる?と詰め寄る。

そこにやって来たカポネは、家でもどこでも調べてもらえば良いと開き直ったので、さしもの朝吉も、その内からくりを暴いてやるぞ!と言い残して帰るしかなかった。

キャバレーの店の中で会った清次が、親分、どないしましたん?と聞いて来たので、今まで黙って来たけど、カポネは兄の仇の片割れや。否、若い者に言いつけて貞を殺した張本人やと教えるが、それを聞いた清次は、兄貴は兄貴、わいはわいやなどと言うので、朝吉は、わいとはここで縁切ったるわ!と怒鳴って店を出て行く。

その頃、小杉の息子静男(矢島陽太郎)は、垣内の妾の家で、カポネの子分たちと麻雀をして遊んでいた。

粟津組に戻って来た朝吉は、わい、やっぱり極道の血を引いとるわ。小隊長を堅気にしてやるのはあんたしかおらんとお妻に伝えていた。

一方、垣内、カポネ、勘やんたちは、愉快そうに酒を酌み交わしていた。

翌日、キャバレー「ドリーム」に粟津組が次々に乗り込んで来たので、わけを知らない清次は、早いうちからややこしいのが大勢来よるな…と目を丸くする。

お妻と朝吉も客として乗り込んで来る。

その頃、修と会っていた元締めは、胡蝶白粉の小杉のお世話になっていたのは昔の事や。落ち目になった方にそう義理立ても出来ん。お前勝手に松島組を名乗りやがって!天王寺からお前を迎えに来とるぜ。粟津の一家で勝負してみたらどうや?と説教していた。

松島に出てみた修だったが、いつも付いて来た子分たちまでもが、回状回っていて、兄貴と口聞いたらあかんと言うとるんやと言いながら去って行く。

その頃「ドリーム」の事務所に戻って来たカポネと勘やんは、粟津と朝吉が来ていることを子分らに確認すると、支配人の清次を呼びつけ、いきなりカポネが殴りつける。

面食らった清次が訳を聞くと、朝吉が粟津を連れて来たの、お前、知っとるやろ?と言い、勘やんは、もうお前は店に出んで良い。言うこと聞かんと、から手で頭勝ち割ったるぞ!と脅して来る。

店の中のテーブルは粟津組で占拠していたが、そこにやって来た修は、松島の連中は誰も来ない。松島から追い出されたと告げる。

そこに、勘やんらが出て来て、朝吉とお妻の周囲を取り囲む。

お妻は朝吉に、家で飲みましょうと言い、帰ることにするが、その際、朝吉は清次に、祝儀やと言って金を渡す。

粟津組に付いて来た修は、お妻から着物を着せてもらう。

そんな2人に気遣った朝吉は家を出て行こうとするが、雪が降り始めたことに気づく。

一方、その日の務めを終え、「ドリーム」を帰りかけた清次は、突如暴漢に襲われる。

捕まえて顔を確認すると、顔見知りの松(北野拓也)だったので、誰に頼まれた?と聞くと、社長に頼まれたと口を割る。

なんで社長がわいを?と不思議に思った清次だったが、あんたが小杉の息子のことを知っとるからやと言うので、松に公衆電話から、匿われていると言う小杉静男を呼び出させると、松と二人三脚のように片足を結ばせると、お照の家まで連れて来る。

親分は?と聞くといないと言うので、危うく兄貴と同じになる所やったと清次は今あったことを話し、松と静男を仇討ちの人質やと言う。

お照は、仇討ちなんて誰も観てくれんのや。死ぬのは家の人1人で十分やと清次に言い聞かし、止めて!としがみつく。

その頃、粟津一家では、修がお妻に、俺は堅気にはなりたくないんやと打ち明けていた。力だけでのさばっている奴らが許せないんだ。お前と一緒になってここを継がせてくれよと頼むので、またも、気を利かした朝吉が出かけて行くと、私、約束して人がおますのや。朝吉はんですとお妻は修に告げる。

それを聞いた修は、そうだろな…、じゃあ、俺はいよいよ堅気になるしかないか…。じゃあ、ちょっと仕事を探しに行って来ると言い残して家を出る。

その後、金物屋でナイフを購入する修。

お照の家に戻って来た朝吉は、そこにいた清次から事情を聞くと、お前、兄貴は兄貴、それから何ちゅうたんや?と問いつめ、殺されかかって、初めて分かったんか!やられたらどないするねん!お前みたいなスカタンでも、わい、弟みたいに思うとるんや!と叱りつけると、面見せい!と命じて、しょげていた清次のかをもまじまじと見ると、わいの面目丸つぶれやがな…と言いながら笑いかけてやる。

生き証人として捕まえていた静男に、ぼんち、胡蝶白粉、新しい会社作るって知ってたか?と朝吉が聞くと、何も知らずにハンコを押したとのんきそうに答えるので、お前も悪事に加担して事になるんや!と怒鳴りつけると、清次にどこから連れて来た?と朝吉は聞く。

垣内の2号の家からやと言う清次の返事を聞いた朝吉は、今日は節分やったな。店には客が揃うやろ?良い厄払いになるやないかと語りかけ、清次も、そうでんなと嬉しそうに答えながら、朝吉のタバコに火をつけてやる。

その頃、修は単身、カポネの事務所にやって来ていた。

勘やんらは事務所の外に隠れ、入って来た修がナイフを取り出した瞬間、スパナで後頭部を殴りつけ、地下室に連れ込むと、水道水をぶっかけ目を覚まさせる。

修が、小杉の息子を返せと迫ると、カポネは、何を言うとる?お前こそ息子をどこにやったんや!と殴って来る。

「ドリーム」の店内では、節分パーティが行われていたが、地下室では、勘やんが、後ろ手に縛り付け床に転がした小杉を鞭打ち、自白させようとしていた。

そんな「ドリーム」に、松と静男を連れてやって来た朝吉は、一緒に来た清次に中の様子を見に行かせる。

清次は、支配人の立場を利用して店の奥の事務所に来るが誰もいない。

そこに、朝吉の手から逃げて来た松がやって来たので、殴って気絶させると、たまたま通りかかった子分に、おやっさんどこにいる?良い話あるねんと聞くと、あっさり地下室やと教えてもらう。

店の前に戻って来た清次は朝吉に、地下室やと教え、一緒に店の奥に入り込むと、静男は事務所のロッカーの中に押し込めておく。

地下室にやって来た朝吉は、そこで気絶していた修に気づくと、こんなからくりになっとんたんかとつぶやき、わい、こんなん見ると、辛抱たまらんのや!と叫び、清次と共にかかって来た子分たちと喧嘩を始める。

カポネは銃を取り出して朝吉に向けるが、不発だったので、殴り飛ばされる。

店内で上機嫌で女給たちと踊っていた垣内を見つけた清次は、電話がかかってますと言い、事務所に案内する。

そこで待っていたのは朝吉だった。

酔っていた垣内は、事の次第を把握し切れてない様子だったが、朝吉から殴られ、ロッカーから証人の静男が出て来ると、極道者に血を流させ、お前、影でヘラヘラ笑うつもりやろうが、そうはさせんぞ!胡蝶白粉の権利にハンコ押さんか!と朝吉から迫まれる。

さらに、ぼろぼろ状態になったカポネもロッカーから引きずり出されると、もはやこれまでと、おとなしく権利の放棄書に判を押すしかなかった。

そこにやって来た小杉久左衛門は感激し、朝吉に礼はなんぼでも出すと頭を下げるが、その根性があるうちは胡蝶白粉は又取られるわと朝吉に冷たく言われてしまう。

朝吉と清次は、傷ついた修を粟津組に連れて行く。

布団に寝かせた修に、小隊長、これで極道の世界がどんなものか、良う分かったやろ?と朝吉が言い聞かすと、修は、俺は極道者としても落第だった…と呟く。

この人はあんたに任せましたで…とお妻に託した朝吉は、粟津組を後にする。

あらかじめ打ち合わせてあった駅近くで朝吉と落ち会った清次は、落ち着き先が決まったら、連絡しまっさと言い、朝吉は、又、お照の所に居候やと答える。

そこに、「来々軒」の屋台を引いた親爺が来て、又ひっくり返されても困らんように、麺やスープは別に持って歩いているんやと言う。

ああでもせんと生きていかれんわと、去って行く屋台を観ながら朝吉が感心すると、清次も、ほんまでんなと相づちを打つ。

そんな2人は階段を上って歩いて行くのだった。