TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

アジア秘密警察

香港との合作なのか、日活の会社クレジットにも英語のクレジットが重なり、劇中でも、英語と日本語が重なって表記されたりしている。

今回観たフィルムが、香港辺りを中心とした東南アジア向けのものではなく国内用のものだとしたら、英語やフランス語でしゃべっているセリフに字幕が出ていない部分などもあり、やや分かりにくかったりする。

内容は、ずばり「和製007」映画なのだが、二谷英明が主人公を勤めている事もあり、雰囲気としては、テレビの特撮ドラマ「マイティジャック」の特撮部分がないバージョンと言った方が近いかもしれない。

日本支部が地下にある洋服店の仮縫い部屋からエレベーターで地下に下りるシーンなど、「マイティジャック」に似ているとも言えるし、「0011ナポレオン・ソロ」のような雰囲気もある。

悪役が多かった高品格までもが、味方側のスパイと言うのはちょっと意外。

当時、この手の「和製007」映画は各社で作られていたのだが、大抵あまり面白くない。

理由は簡単で、本家の007ほど金をかけたアクションシーンが作れなかったせいである。

本作もその例外ではなく、殴り合いや銃撃戦、凡庸なカーチェイス、爆発シーンなど、邦画としてはありふれたパターンはあるものの、特にそれ以外に斬新なアクションやスペクタクルシーンがあるわけでもなく、観ている観客としてもそれは薄々予測しているので、盛り上がりようがないのだ。

敵が宍戸錠と言うのもちょっと弱い。

何やら、都筑道夫原作原作「怪盗X 首のない男」(1965)のブラックジョーに近いイメージだが、変装の名人だった怪人ブラックジョーほどのインパクトはない。

ちなみに、同じ都筑道夫原作のテレビ特撮ドラマに「スパイキャッチャーJ3」(1965)と言うのがあったが、J9などと言う呼び名は、ここから来ているのではないか?

要するに、当時はその手の「和製007」ものが大いに流行っていたと言う事だろう。

宍戸錠は弟の郷英治と共演していると言うのがちょっと珍しいが、どちらも敵役としては小者風。

カルロスを演じている小柄な小林昭二に至っては、まるで悪役になり切れていない感じ。

敵役が総じて迫力がないので、そんな敵と戦ってもハラハラするはずもない。

ボンドガールならぬ「マイトガイガール?」あるいは「J9ガール?」を浅丘ルリ子が演じているのが、ちょっと豪華な感じがするだけ。

香港のスターも何人か登場しているが、どの人も馴染みのない顔ぶればかりだし、特にアクションなど見せ場が用意されているわけでもないので、印象に残りにくい。

香港ロケも、その後のカンフーブームの際、日本のドラマなどにも良く登場した見慣れた町並みや裏町を撮影しているだけと言った感じで、特に驚きもないのだが、1960年代半ば頃としては、まだ珍しいロケーションだったのかもしれない。

その後の、ド派手な石原プロのアクション刑事ドラマなどを知っている世代としては、なんとも生温い凡庸なB級アクションと言った感じの作品に思える。

こんな作品を作っていた日活が、この時代、ほとんどヒットを生めなかったと言うのも分かるような気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、日活、山崎巌脚本、松尾昭典監督作品。

横浜の港で、陸揚げされる荷物を、車の中から監視していたのは、アジアポールのJ9こと佐伯竜太郎(二谷英明)とJ7こと陳(高品格)だった。

佐伯はシガレットケース型無線機で本部を呼び出すと、通信係の三崎杏子(浅丘ルリ子)に夕飯を誘うが、それまであなたが生きているかどうかも分からないのに?と皮肉で返される。

陸揚げされた荷物は泰新貿易のトラックに詰まれ、国道246を走り始めたので、佐伯の車も追跡する。

妙な車が付けて来ている…とトラックの運転手は背後を気にするが、気のせいかと前を向いた所、後部の覗き窓が割られ、荷台に身を隠していた佐伯が銃を突きつけて来て、行くんだ!と運転手に指示を出す。

追跡して来る車を運転していたのは陳だった。

トラックの動きを別の場所で監視していたジョージ・イートン(宍戸錠)は、緊急サインが点いているじゃないか!と、計器の前の係を怒鳴り、側にいたチャイナドレスの女を殴りつける。

倒れた女の太ももには、バラの刺青が彫ってあった。

佐伯に銃で脅されて走っていた運転手は、積み荷はレコードプレイヤーだと説明するが、佐伯は返事をしない。

やがて、トラックの上空にヘリコプターが飛来。

ヘリに乗っていた本郷(郷英治)は、手榴弾をトラック目がけて投下する。

佐伯は、背後から付いて来ていた陳に、危険だ!降りろ!と叫ぶ。

手榴弾の投下は続き、トラックの周囲で爆発が何度も起き、工事現場のバラック小屋も吹き飛ぶ。

そして、泰新貿易のトラックも爆発炎上する。

画面一杯の炎の中にエンブレムが浮き上がる。

タイトル

東京

とあるビルに到着した車から降り立った佐伯は、待機していた男に車を移動させる。

後部座席には、爆破で負傷した陳が乗っていた。

ビルの1階にある洋服屋に入った佐伯は、店員に案内され仮縫い室に入るが、そこはエレベーターんになっており、地下に降りた佐伯は、連絡係の三崎杏子に軽く挨拶すると、所長室に入り、トラックの荷台から持って来たレコードプレイヤーの1台を部長(三島雅夫)に渡す。

その場で係員が分析してみた所、外見上レコードプレイヤーに見えるその機械は、純金製だと判明する。

そこに、三崎杏子が入って来て、J7こと陳がたった今死亡した。小さな破片が心臓に達していたようですと報告する。

一方、ジョージ・イートンは、映像に残っていた相手方の車のナンバーを本郷に調べさせていた。

ボウリング場で長官(北龍二)に会った部長は、今回見つかった密輸品は純度99%の純金で、これまでのスイス経由で入っていた純度94%の金とは違うことと陳隆昌がやられた事を報告する。

陳は、敵から奪ったらしい乱数表を握っていた事も部長は付け加える。

レコードプレイヤーを納入した店舗に警察が到着し、二階の事務所を家宅捜索を始めるが、一足先に隣のビルの屋上に逃げ出し、向かいの捜査の様子を観ていたジョージ・イートンは、一緒にいた本郷にスイッチを入れさせ、警察が捜査中だった事務所そのものを爆破してしまう。

陳の遺骨を抱き、参列したのは自称妹だけなんて…と寂し気に呟き、後部座席に乗っていた喪服姿の杏子に、車を運転していた部長は、ジョージ・イートンの裏が取れた。今頃、香港では、警察がボスの楊長慶を逮捕しとるだろうと伝える。

香港

屋敷裏の広大な庭で、ゴルフの練習をしていた楊の打ったボールを拾い集めていたお手伝いは、密かにボールを1つ混入させる。

その時、玄関先には香港警察の包警部(ティアン・チェン)張刑事(チンコウレツ)がやって来るが、チャイムを鳴らしても応答がないので、裏手に廻る事にする。

その2人の目の前で、何も知らない楊が、又、ボールを打ったその瞬間、お手伝いが新たに入れたボールは大爆発を起こす。

東京本部内で、楊長慶の写真を見ていた佐伯は、彼はボスじゃないと断定し、部長に、自分を香港に行かせてくれと頼む。

その会話を隣の通信室にいた杏子は、密かに盗聴していた。

大連を引き上げて来る途中、両親を失った君を拾ってくれたのが、当時雑貨商だった楊長慶で、君がイギリス国籍なのはそのためだと部長は事情を知っている事を打ち明けるが、その楊長慶は、自分が中学生の頃行方不明になった。今回香港で死んだ楊長慶と言う男は同姓同名の別人だと佐伯は主張する。

しかし、部長は、アジアポールは個人プレーを許さんと、佐伯の申し出を拒否する。

その佐伯を車で送っていた杏子は、あなたの顔、今日は嫌いと呟く。

ホテルに遺骨を持ち込んだ佐伯は、その遺骨に手を合わせる自称妹のアキコ(弓恵子)に会う。

アキコは、日本に来たら、佐伯に会えと兄から言われていたと言うが、さりげなくウィスキーの瓶を佐伯が取り上げると、その瓶が置かれていた場所のスイッチが持ち上がり、別室にいた杏子の部屋に、佐伯の部屋の音声が聞こえるようになる。

夕べ、兄に事故があったと聞いて香港から来たと言うケイコに、たった1日でパスポートが降りますか?と佐伯は問い返す。

彼女のバッグを調べてみると、中から出て来たのはスチュワーデスの身分証明書で、友達にフライトを代わってもらったと言う。

私の兄は、あの中に…と、遺骨を納めた箱を観ながら失神しかけたので、佐伯はケイコを抱きとめてベッドに運んでやる。

気を失ったかに見えたケイコは、バラの刺青のある太ももに隠した銃を取り出そうとするが、そこには銃を構えた佐伯が立っていた。

佐伯は、仲間はどこにいると聞くが、その時部屋の電話がかかり、受話器を取った佐伯の方に、窓ガラスを突き破って来た麻酔針が突き刺さる。

ケイコは受話器を取ると、助かったわ、隣のビルの一室から麻酔針を撃ち込んでくれた本郷に礼を言う。

やがて、どこからともなく救急車がホテル前に到着し、救急隊員らしき2人がホテルの中に入ったので、近くで様子をうかがっていた杏子は、その救急車の下に発信器を取り付ける。

やがて、救急隊員に担架に乗せられた佐伯とケイコがホテルから出て来て救急車に乗り込むと走り出したので、杏子も自分の車で尾行を開始、本部の部長にも連絡を取る。

部長は間に合わないので、君が追って連絡をくれ、後から行くとの指示がある。

救急車は「工事中」の脇道にそれるが、その直後、そこに車で近づいた杏子は、トラックに進路を阻まれてしまう。

その間、工事中の道路に入っていた救急車は、別のトラックのコンテナの中に入り込む。

杏子は、救急車から出ていた発信機の光が切れた事に気づく。

本郷は、捕まえた佐伯をテーブルの上に縛り付け、自白剤を注射する。

その頃、部長たちが到着するが、佐伯を見失った杏子は、あのコンテナだわと気づく。

自白剤を打たれた佐伯に、ジョージ・イートンがあれこれ質問を始める。

お前はサツか?と聞かれた佐伯は、APSS(アジアポールシークレットサービス)と言う、日本国ではなく、東南アジア各国が協力して作った組織だと漏らす。

本部の所在地は?とジョージが聞くと、陳の遺骨と佐伯は答える。

佐伯と一緒に盗んで来た遺骨の箱を調べていた子分は、鍵がかかっていると言うので、思わず本郷は佐伯の頭を撃ち抜こうとするが、ジョージがそれを制し、アキコが、佐伯の上着を探ってすぐに鍵を見つけ出す。

その鍵で、ケイコが遺骨箱を開こうとした瞬間、気絶していたかに思えた佐伯は急に身体を回転し、テーブルの下に身を伏せ、遺骨箱は大爆発を起こす。

二谷はジョージに、銃を放れ。俺は最初から中和剤を打っていたんだと言うが、ケイコが死んだのにショックを受けた様子のジョージは、せめて女に別れを告げてやりたいと言い、ケイコの遺体に近づく。

ケイコの遺体を抱き上げたジョージは、ケイコの太ももから小型拳銃を取ると、振り向きざま佐伯を撃つ。

佐伯!引っかかったな!とジョージは嘲笑するが、佐伯は窓ガラスを破って外に逃げ出す。

公衆電話から杏子に電話を入れた佐伯は、俺の代わりに2人死んだ、1人は女だ。ジョージたちは数時間後に日本を離れるだろうと報告する。

あなたは大嫌い!と急に言い出した杏子の言葉を聞いた佐伯は、そんなに俺の事が心配なんだと苦笑する。

ジョージらを乗せ日本を離れる船ピグリス号。

本部の部長は杏子に、佐伯の休暇を取り返して香港へ行ってもらうことになった。船からの通信を傍受し、ジョージのボスの事が乱数表を使って暗号を解読して分かった。今、佐伯はどこにいる?と聞いて来る。

「パシフィックホテル茅ヶ崎」のプールで泳いでいた佐伯は、自分の名を呼ばれ、622号でお客様がお待ちですとのアナウンスがあったので、プールを上がるが、その様子を本郷が二階から監視していた。

佐伯は、途中で、ボーイを部屋の中に連れ込む。

ボーイから電話を受けた杏子の部屋に、佐伯がやって来ると、杏子は急いで部屋の中のカーテンを閉めると、ジョージのボスの写真を見せる。

それは、あの楊長慶だったので、佐伯は信じられない…、楊先生がジョージの一味だなんて…と呟く。

確かめたい気持ちは今でもあるでしょう?と問いかけた杏子は、金とパスポートを佐伯に手渡す。

佐伯は、君が部長を口説いてくれたんだねと喜ぶ。

杏子は、あなたはあくまでも観光客として行くのであり、英国情報部員みたいな派手な事はしないでねと釘を刺す。

その2人の会話を隣で盗聴している本郷。

佐伯は杏子に、久しぶりに食事でも?と誘う。

香港

パンナム機で香港に到着した佐伯だったが、同じ機内から本郷も降り立つ。

空港ビル内で本郷は、現地の女性に眼で合図を送る。

その女性はわざと佐伯にぶつかり、駐車場の自分の車に向かうが、彼女が落としたらしき車のキーを拾った佐伯は、車に乗り込もうとしていた女性に声をかける。

女性は、変な男たちに追われていると訴えるので、その車に乗り込んだ佐伯は自ら運転して市街地に向かうが、追って来るような車はいなかった。

女性の行き先を聞いた佐伯だったが、女性は答えず、その代わり車内から時計の音が聞こえて来たので、後部座席を探すと、そこに時限爆弾が仕掛けられている事に気づく。

慌てて脱出しようとした佐伯だったが、ドアは開かない。

完全に車内に閉じ込められた事を悟った佐伯は、助手席の女性に君もジョージの仲間だったのか?と聞き、後3分で君もあの世に連れて行くつもりだと教え、2人だけで心中できる場所はどこだと聞き、急いで車を発車させると、人気のない空き地までやって来る。

女性に名を聞くと、明花(ミンホワ)(方盈)だと言う。

その佐伯を市街地から追って来る車があり、その運転手は、空き地に停車した佐伯の車のドアロックを銃撃で破壊し、ドアが開く。

それに気づいた佐伯は、ミンホワを連れ出し外に逃げる。

次の瞬間、車は大爆発を起こす。

そこに警察車両が近づいて来て、降りて来た刑事たちは佐伯にパスポートの提出を求める。

その後、遊覧船に乗った佐伯は、ミンホワから話を詳しく聞き、彼女の父が楊長慶で、父は最近までバンコクにおり、1年前に香港に来たのであり、自分の兄は今でもバンコクにいるのだと言う。

それを聞いた佐伯は、楊に息子はいない。それを知っているのは俺だけだと答え、2度と俺の前に姿を現すなと言い聞かすと、ミンホワは哀しそうに佐伯の前から立ち去る。

何となく気になってその後を追った佐伯だったが、ある寺院のお守り袋が落ちていただけで、彼女の姿を見つけ出す事は出来なかった。

お守り袋の中には翡翠の珠が入っていた。

タクシーで宿泊先のホテルにやって来た佐伯だったが、又しても、見知らぬ女性の尾行が付いていた。

ホテルを出た佐伯は、拾ったお守り袋を手掛かりに、寺院を訪れてみる。

佐伯には今でも楊先生が、敵の一味だったとはどうしても信じる事が出来なかった。

しかし、昔、育ててもらっていた自分の前から突如姿を消してしまった事は気になっていた。何か子供だった自分が知らない秘密があったのか?

その時、佐伯は怪し気な男に気づき尾行してみるが、とあるバーの前で見失ってしまう。

ふと気づくと、背後に男が立っていたので、あんただな?私を守ったのは…と佐伯は尋ねる。

頼雨田(ライウデン)(王侠)と名乗ったその男に、お前はミンホワの男だったのか?ここは俺の第二の祖国でなと説明した佐伯は殴りかかるが、すぐに青い車に乗って逃走する。

ホテルに戻って来た佐伯は、浴室からシャワー音が聞こえ、ベッドに女物の服とバッグが置いてあることに気づいたので、銃を取り出して警戒する。

バスタオルを巻いて出て来た女ハルコ(浜川智子)は、昼間フロントで会った。この部屋はボーイに聞いて来たと言う。

佐伯は、娼婦らしきハルコのバッグに金を入れてやるが、ベッドに横たわって、私を好きにして良いわと誘って来た女は無視し、ズボンのベルトを引き抜き、バックルからナイフを飛び出させると、いきなり、ハルコのバッグの底を切り裂いてみる。

そこには、オープンリールのテープレコーダーが仕込んであった。

ハルコは、鼻の長い客に売るつもりだった。ボスはいないと焦りながら答えるが、銃を突きつけた佐伯は、そのままで出て行くんだ!そしてボスに言っておけ。俺にどんな女を送り込んで来ても通用しないって。敵はジョージだけだと言い渡して追い出す。

ホテルのショールームでは、火踊りが行われていた。

「楽都飯店」の地下室では、本郷が戻って来たハルコを殴りつけ、勝手な事をするな!と叱りつけていた。

しかし、ハルコは、私の姉はあいつに殺されたのよ!と抵抗する。

本郷は、そんな事より、奴の本部を突き止めろとジョージは言っていたと念を押す。

その場には、頼も一緒にいた。

本郷は頼に、ミンホワを捕まえろ。もう一度あの女を囮にしようと提案する。

赤いオープンカーで市街を走る佐伯、それを喫茶店から目撃した頼は、連れていたミンハオをわざと佐伯の目につくように道を歩かせてみる。

佐伯はミンホワを尾行し、とある路地に来ると、爆竹を同行の男に投げつけ、ミンハオを奪い取るとジャンク船が並ぶ港に逃げ込む。

尾行して来た本郷は、2人の姿を見失ってしまう。

佐伯は、ミンホワが落としたお守り袋を返し、自分も同じ翡翠を取り出して見せる。

それを観たミンホワは、父から同じ翡翠を持っていると聞きました。佐伯さんね?と表情を和らげる。

喫茶店で落ち着いたミンホワは、ずっと見張りが付いており、監視されていたと打ち明け、あなたは日本の警察の方ね?と聞く。

しかし、佐伯は、時間がないので、俺のホテルで待っていてくれと告げる。

その後佐伯は、ジョージと頼が乗った車を尾行する。

ジョージは頼に、カルロスが保証した君の腕も当てにならんなと嫌みを言い、とにかく、アジアポールの本拠地を見つけないと身動きできないと呟く。

「楽都飯店」にやって来たジョージを追い、店の中の地下階段に侵入した佐伯だったが、そこには本郷が待ち受けており、頼との間に挟まれる形になり、ジョージがミンホワを連れて来た事を、振り向いて知った佐伯は、本郷に後頭部を殴られ気絶してしまう。

地下室に捕まえられた佐伯は、ジョージから、10数年前に香港のボスは死んだと聞かされていた。

ロボットで良い。洗練された紳士であれば良かった。

楊長慶は、この娘と妻が囮だったと言い、ボスの替え玉として楊を利用した事をジョージは打ち明ける。

楊長慶を殺したのは自分たちではないとも。

ジョージは、マレーの財閥の娘が日本人と結婚して俺を生んだ。だが、父親である日本人は、ボム縁を売って1人で逃げたので、母は狂い死にしたと自分の素性を打ち明け、日本人を憎む気持ちを吐露するが、佐伯はそれだけが日本人じゃないと反論する。

しかし、ジョージは、俺にとっては母親だけが全てだった。統制品である金を運び込んで日本の経済を破壊してやると憎々し気に言い放つ。

その場にいたハルコは、私が殺す!東京で死んだアキコと言うのは、本名宋香蘭、私の姉よと佐伯に迫る。

しかし、ジョージはハルコを止めると、ミンホワと佐伯を縛り付けた側に時限爆弾を置き、地下室を出て行く。

佐伯は、ベルトのバックルからナイフを飛び出させると、それで自分のロープを切るようにミンホワに頼む。

その時、駆けつけて来た包警部と張刑事たちがドアを蹴破って侵入して来るが、時限爆弾があると知ると緊張する。

時間がないと悟った佐伯は思わず、ミンホワの身をかばうように身体で覆いかぶさるが、何故か時限爆弾は爆発しなかった。

緊張が解けたミンハオは、思わず佐伯にしがみつくと泣き出す。

マカオ

カジノ「スリースター」

ジョージはカルロス(小林昭二)に会いに来ていた。

頼と言う男はどこで拾った?とジョージはいきなり尋ねる。

頼雨田は一発で殺す奴だと、怪訝そうにカルロスに答える。

ジョージは、明後日、日本に出発するので、明日中に船に金を積み込んでくれと命じると、俺たちは対等な立場のはずだとカルロスは不快感を表すが、ジョージは昨日まではな…と答える。

カルロスは、俺は香港に何百人もの友人がいるんだ。その信用を失いたくない。ベイルートから持ち込まんようにしているんだと説得する。

その頃、香港警察に保護されていた佐伯は、包警部から国外追放を言い渡されていた。

明日の東京便に乗って帰ってくれ、ずっと見張っていますと言われたのだ。

さらに包警部はミンハオを保釈するよう張刑事に命じる。

ホテルに戻って来た佐伯は、ビクトリアパークに言って来たとにぎやかに話している日本人所家のグループに気づく。

その中に、何と三崎杏子が混じっているではないか。

ボーイにグループの事を聞くと、日本の化粧品会社の宣伝員たちなのだと言う。

その頃、保釈されたミンホワは、佐伯に会わせてくれと張刑事に頼んでいたが、張刑事は今夜は無理だと断っていた。

佐伯は、部屋のベッドで横になっており、部屋の前には包警部が立って張り込んでいたが、ベランダ側から杏子が部屋に入って来る。

外務省から連絡を受けた部長が私に、国外追放されたあなたを連れて来いって指示をされたと言う。

ミンハオは楊先生の娘だと佐伯が説明すると、あの人はあなたを愛しているわと杏子は答える。

そんな杏子をビンタし、余計な口出しするなと怒った佐伯だったが、恋人みたいな口を聞かないで!と反論した杏子は、佐伯にいきなり抱きしめられキスをする。

杏子は、私あなたに嘘をついていたの。香港に行かせたのは私なのと謝り、俺の手で手に入れたいのは君だけだと佐伯は答える。

包警部は、部屋の前で、中の様子をうかがっていたが、そこにミンホワがやって来て、佐伯に会わせてくれと頼む。

マカオの「スリースター」と言う賭博場があり、そこに金の精錬工場があるらしいと杏子は佐伯に教える。

それを聞いた佐伯はマカオに行くと言い出し、杏子は、あなたに甘えようとした私が間違っていたわと反省し、ピグリス号を張っていたら、明日出航するようだと伝える。

佐伯は銃を持って来てないかと聞く。

ミンホワの必死の願いに負けた包警部はドアを開けてやるが、中にいたのは杏子だけで、佐伯の姿はなかったので、ミンハオは思わず泣き出してしまう。

包警部は杏子に、開いた窓を観ながら、お嬢さん、行き先は?と聞く。

杏子は包警部に、佐伯は、アジアポール日本支部のJ9なのだと伝える。

マカオ

ジョージはカルロスに銃を付き付けながら、今日からマカオと香港地区は俺が頂くと宣言する。

カルロスは、金は出す!撃たないでくれ!と怯えながら後退し、ビリヤード台の所まで来たとき、台の横に隠していた銃を取り上げ撃とうとし、背後から撃たれる。

売ったのは頼だった。

何としても俺を買ってくれた恩人ですから…と呟いた頼に対し、ジョージは、今日から仲間と思おうと告げると、この地下に金の工場があるらしい。俺のものだと笑う。

そこへ電話がかかって来たので頼が出ると、相手は本郷で、佐伯の赤いオープンカーを尾行している所だと言う。

本郷と佐伯はカーチェイスをし、ジョージの手下の車と挟み撃ちにされた佐伯は、崖の所に追いつめられる。

そこにやって着た頼は、俺に任せろと言い、銃を付き付けながら佐伯に近づくと、フランス語は出来るか?と問いかけて来る。

佐伯が出来ると答えると、俺はバンコクアジアポール支部の頼だと打ち明け、あっという間に、近くにいたジョージの手下2人を撃ち殺してしまう。

頼に裏切られたと知った本郷は頼を撃ち、頼はその場に倒れる。

佐伯に近づいて来た本郷だったが、撃たれて死んだ振りをしていた頼は、本郷の銃を撃ち落とし、手下から奪い取ったマシンガンで佐伯が、ナイフを取り出して最後の抵抗を示そうとした本郷にとどめを刺す。

傷一つなく立ち上がった頼は、油断させたんだと佐伯に笑いかけると、金はさっき、ジョージがピグリス号に積んだと伝える。

警察に任せようと言う頼だったが、間に合わないと判断した佐伯は、モーターボートでピグリス号に向かうジョージのボートを追う。

背後に迫るボートに気づいたジョージは、撃とうとする手下を止め、船に招待してやれと命じる。

船におびき寄せるつもりだと察した佐伯は、船に乗り込んだらカバーしてくれと頼に依頼する。

ジョージたちが登って行った後、タラップを登る佐伯と頼。

船倉に入った佐伯は、そこでジョージに銃を突きつけられている杏子の姿を発見する。

目の前で女が死ぬ…。お前にもたっぷり哀しんでもらう!とジョージが引き金を引こうとしたとき、何かの爆発の衝撃が起こり、ジョージはよろけ、外から、香港警察だ!と声が聞こえて来る。

その一瞬の隙を付き、佐伯はジョージに殴り掛かる。

2人は殴り合いながら、船底に金が大量に積まれている倉庫室に来る。

これが俺の財産だ!日本に送り込んでやる!

その時、廊下の隅に姿を現した頼が手榴弾を佐伯に投げて寄越し、それを受け取った佐伯は、手榴弾を金が積まれた船底に投げ込む。

大爆発が起こり、ジョージとハルコは、金塊の山の上で血まみれで死んでいた。

その後、香港で佐伯に別れを告げる頼は、一緒じゃなかったのか?有能な秘書は?と杏子の事を聞くが、バンコクへ行ったと佐伯は答え、「愛する事はやがて深い傷になるでしょう。バンコクで遊んだら忘れるでしょう。又、友達になりましょう。 杏子」と書かれた手紙を頼に読ませる。

佐伯とがっちり別れの握手をした頼は、キミに会いたがっている人が来たよと言い、その場を離れて行く。

佐伯に駆け寄って来たのはミンホワだった。

良いの、何もおっしゃらないで。父もこれで浮かばれますと言い、佐伯に花束を手渡すと、明日から一人で生きて行く自信あります。父があなたに教えたように…と付け加える。

香港空港のカウンターにやって来た佐伯に、受付嬢が、至急電が届いていますと渡す。

それをその場で読んだ佐伯は、バンコク行きに変更して下さいと願い出る。

後10分ですと断りかけた受付嬢だったが、佐伯の押しに負け、切符を受け取った佐伯はバンコク行きの飛行機に乗り込むと、先に乗り込んでいた杏子の隣の席に着席すると、今受け取った指令の至急便を見せる。

また私を巻き込むつもり?と膨れる杏子に、友達だろう?水臭い…と笑顔で甘えてみせる佐伯。

その佐伯が持っていた花束を観た杏子は、愛する人と別れる花よ、中国の習慣ではね…と笑顔で教える。

そんな2人を乗せたバンコク便が飛び立って行く。