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テルマエ・ロマエ

漫画の映画化で、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(2007)に続いて、阿部寛が挑むタイムスリップ・コメディ。

発想としては、一時期テレビで流行って国際問題になりかけた「未開の土地の人間を日本に呼んで、色々最先端の文明を見せて驚かせる」と言うのと同じ、文明国の優越感をくすぐるちょっと下品な「カルチャーショック」要素を使ったナンセンスというか、おバカ映画と言うべきかもしれない。

かつてフジテレビの人気番組だった「なるほど!ザ・ワールド」の海外タイトルも「culture shock」だったので、いかにもフジテレビ発想らしいと言えばフジテレビらしいかも…

もちろんこの映画では、現代の日本にやって来るのは古代の外国人だし、タイムスリップという超現実的な発想なので、現実のどこかの国を馬鹿にしているというようなことはない。

かと言って、別に「日本も捨てたものじゃないな」と見直させてくれたり、「夢を諦めかけている人を勇気づけてくれる」作品と褒めるのも大げさな気がする。

あくまでも、バカバカしい映画なのだ。

タイムスリップによって生じた「歴史の改変」を、未然に防ごうとする展開もありきたりと言えばありきたりだが、そこもご都合主義の「温泉」つながりで処理している辺りもバカバカしい限り。

そのバカバカしさを楽しめるかどうかが、この作品を評価するかしないかの分かれ目だろう。

個人的にはナンセンスやバカバカしいことは嫌いではないが、この作品、そうしたナンセンス映画として心底楽しめたかというと、やや微妙な気がする。

竹内力演じる野人のようなヤサのキャラクターが面白かったので、彼をもっと活躍させて、身体を張ったナンセンスをたくさん見せてくれれば面白かったはずなのだが、家族向けを意識したためか、全体的に「おとなしい」と言うか「地味」と言うか、「ぬるい」印象が残る。

上戸彩演じるヒロイン山越真実が、思ったほど活躍しない所も、話が今ひとつ盛り上がらない一因かもしれない。

それでも、現地ローマのオープンセットなどを有効に使った洋画風の画面などは楽しいし、ヤサが木製の檻に入れられて荷車で運ばれて来る所などは「猿の惑星」を連想させ愉快だった。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「テルマエ・ロマエ」製作委員会、ヤマザキマリ原作、武藤将吾脚本、武内英樹監督作品。

古代ローマでは、亡くなった為政者を後継者が神聖だとする「神格化」の風習があった。

紀元128年

ハドリアヌスは、反対勢力を退け皇帝になったが、暴君と呼ばれるようになる。

そのハドリアヌス帝は、力で押さえつけるだけでは民衆の反発を招くだけと考え、テルマエと呼ばれた浴場を作り、民衆の支持を集めていた。

タイトル

紀元128年

テルマエの建築技師ルシウス・モデストゥス(阿部寛)は、町を歩きながら、依頼主から、君の設計は古いんだと文句を言われていた。

そこに近づいて来たビルトゥスという男が、設計図を広げて依頼主に見せる。

どうやら最近人気の設計技師らしかった。

がっかりしたルシウスに明るく一緒に風呂にでもはいろうと誘って来たのは、太った友人だった。

その友人は、ハドリアヌス帝は元老院の4人を殺した暴君と呼ばれているとルシウスに耳打ちする。

ルシウスが入ったテルマエ(浴場)はとにかくうるさく、とても心を休めるような所ではなかった。

あるものは格闘の真似をしてふざけ、あるものは大声を出し、物売りさえもうろついていたからだった。

静けさを求めるには、風呂の湯の中に身を沈めるしかなかった。

斬新な発想を求めるために…

ルシウスは、湯船の一角に大きな割れ目が出来ており、そこから大量のお湯が流れ出しているのに気づく。

気がつくとルシウスは、足からその穴の中に吸い込まれてしまう。

お湯の中をもがきながら、光に向かって泳いだルシウスが立ち上がったのは、日本の下町の銭湯の湯船の中だった。

振り返ると、銭湯の壁には大きな山が描かれており、ポンペイのベスビオス山ではないか!とルシウスは驚嘆する。

そこにいるのは、顔の平たい年寄りばかりで、言葉は全く通じなかった。

ここは奴隷用の公衆浴場か?

あのテルマエの横にあったのかもしれない。

その時、爺さんの1人が、湯辺りしちゃいけないから外に出たら…と話しかけるが、言葉がわからないルシウスは、ここはローマ人が入る所ではないと言っているのか?と言いながら、脱衣所へ向かう。

そこは、巨大な鏡や籐製の衣装駕篭、さらに、何やら腹に布状のものを巻いてブウブル振動させている怪しげな装置まであり、信じられぬ技術力にルシウスは立ち尽くすだけだった。

ルシウスが裸のまま立ち尽くしていたので、駕篭の衣装を盗まれたのか?と老人たちは心配して集まって来るが、技師を紹介してくれと一人の男に話しかけると、その男(神戸浩)は、俺は盗んでないと狼狽するだけだった。

ルシウスは裸のまま簾を潜り外に出ると、外は見たこともない建物が建っていたので、又もや唖然とする。

もう一度銭湯の中に戻ったルシウスが入り込んだのは女湯の脱衣所の方だったので、おばちゃんたちが悲鳴を上げるが、そんな中、その場にいた漫画家志望の山越真実(上戸彩)は、ルシウスの身体を観て、「ケンシロウ?」と呟いてしまう。

真実は急いで持っていたスケッチ帳にルシウスの似顔絵を描き始めるが、おばちゃん客が投げたものがルシウスの額に当たり、ルシウスはその場に昏倒してしまう。

真実は、その姿もスケッチするが、老人たちが女性客に謝りながら、布を持って来てルシウスの身体を隠しながら連れ出して行く。

その後、老人の一人が、気がついたルシウスにフルーツ牛乳をおごってくれる。

それを一口飲んだルシウスは又驚愕してしまう。

牛の乳なのに果物の香りがする見たこともない飲み物だったからだ。

しかも冷たく冷やしてあるではないか!

完全にこの顔が平たいものたちの文化はローマを凌駕していた。

悔し涙を流したルシウスの目に、愉快そうに笑う平たい顔の男が見えたかと思うと、いつの間にか、ルシウスは元のテルマエの床に寝かされて、太った友人から呼びかけられていた。

湯の中で溺れていたというので、では今までのは夢だったか?と思ったルシウスだったが、身体の横に転がっているたフルーツ牛乳の瓶を見つける。

数ヶ月後、ルシウスが新たに考案したテルマエには、のれんや衣装駕篭、行事を予定を記したポスター、「コロリン」と底に書かれた木桶、地下水で冷やしたフルーツ牛乳を模したものまでそろっていた。

さらに、背後の壁画にはベスビオス山とナポリ湾が大きく描かれており、その斬新さに友人も驚愕する。

そんなテルマエに入りに来た老人が家に風呂があったら…と嘆いているのを観ていたルシウスは、確かに、身体が不自由になった老人たちがわざわざテルマエに来るのは大変だ。しかし、家に風呂を持つなんて、金持ちか貴族でもなければ無理だと気づく。

その時、老人が、持っていた金具を湯船の中に落としたと知ったので、それを取るためにお湯の中に潜ったルシウスは、又又水の流れの中に引き込まれてしまう。

気がつくと、ルシウスは、何か小さな空間に閉じ込められているようで、なかなかお世の中から頭を出すことが出来なかった。

何とか、頭を押さえつけていた蓋のようなものを持ち上げ頭を出すと、そこは棺桶のような陽気の中にお湯が張ってある場所だった。

ルシウスは、それがどうやら個人用の風呂らしいこと。

上に置かれていた蓋のようなものは、お湯を冷めないようにする防具で、さらに壁には、腸のようなものの先に小さな穴から水が吹き出る不思議な装置がかけてあることに驚く。

もちろんそれはシャワーだった。

さらに、バスタブの横に置いてあったキャラクター型のシャンプー容器やシャンプーハットも意味が分からないなりに、ルシウスはすごいものなんだろうなと予感した。

そこは実は、真実がアシスタントをやっている女流漫画家みち子の自宅で、その時、真実は、書き上がった漫画を先生にチャックしてもらい、丸でダメだと小言を食らっている所だった。

その時、よね子さん、風呂はまだか?とちょっと認知症気味の父親が声をかけて来たので、漫画家は、みち子です!と名前の呼び方を訂正し、もうすぐヘルパーさんが来るから待ってて!と叱りつける。

しかし、そのまま風呂に入った父親は、そこにいたルシウスをヘルパーさんと勘違いし、背中からお願いしますとイスに腰掛ける。

全く日本語がわからないルシウスは呆然とするが、やがて、垢擦り用のタオルで、驚くほど老人の背中の垢が取れることが分かり呆然とする。

さらに、その老人がシャンプーハットを頭にかぶったので、ルシウスは、王冠?この老人は平たい顔族の族長なのか?と驚くが、老人がシャワーを使って自分ではげ頭を洗ってみせ、こうすれば顔が濡れないじゃろ?と振り向いて教えたので、ルシウスは、ただただそのとてつもない発想に絶句するしかなかった。

インパクトのあるキャラクターを考えようと洗面台の所へ来た真実は、裸で踞って考え込んでいるルシウスを目撃、これだ!とインスピレーションを得る。

真実がスケッチブックを取りに戻っている間、ルシウスはそこに置いてあったゴキブリよけのスプレーを発見、何気にプッシュすると、薬が目に入ったので、慌てて浴室に飛び込む。

スケッチブックを持って戻って来た真実は、すでにルシウスの姿がどこにもなかったので不思議がる。

浴室の中にいた老人は、消えたんじゃ、すーっとと訳の分からないことを言うだけだった。

一ヶ月のローマ

ルシウスは、老人用に家に個人用の風呂を作ってやっていた。

もちろん、動物の腸を使ったシャワーもどきも作って喜ばれたのは言うまでもなかった。

しかし、ルシウスは、こうした発想がしょせんは人まねに過ぎないことを恥じて悩んでいた。

自宅では、妻リウィアがカタツムリやヤギの睾丸などを調理したものをそろえ、ルシウスに精力を無理矢理つけさせようとしていたが、ルシウスは食欲がないと拒否してしまう。

すると、リウィアは、夫婦間にもう何年も子供が出来ないことにヒステリックになっていたので、泣きながら家を飛び出してしまう。

その直後、ルシウスを皇帝が呼んでいるとの使いが来る。

宮殿に来たルシウスを出迎えた次期皇帝候補ルキウス・ケイオニウス(北村一輝)は、行きて帰れると良いななどとからかって来る。

その後対面したハドリアヌス帝(市村正親)は、ルシウスが設計したベスビオス山の風景画を描いたテルマエの中で待っていた。

ハドリアヌス帝はこの発想を褒め、お前も暴君の才能がある。民衆を軍事力で押さえるだけでは限界がある。文明で圧倒せねばならない。

民衆の心を落ち着かせ、ローマの司政を成功させるにはテルマエが必要だ。

そなたに見せたいものがある…とハドリアヌス帝が言うと、家臣のものたちが、それまで中で焚かれていたかがり火を消し、室内を暗くする。

中に差し込むのは、窓からの月光だけだったが、その光がベスビオス山を囲むナポリ湾の絵の部分に水の波紋を加え、幻想的な壁画が出現していた。

そして、ハドリアヌス帝は、わしのテルマエを作って欲しい。ローマ帝国のためと思って、そなたの力を貸してくれと依頼する。

了承したルシウスは、テルマエから外に出るが、廊下で待っていたのは、ハドリアヌスの側近アントニヌス(宍戸開)だった。

アントニウスは、ハドリアヌス帝は建築の天才でもあるとルシウスに教え、立派なテルマエを作ってくれ。それが皇帝のためになると頼むが、それはルシウスにとってプレッシャー以外の何者でもなかった。

その後、松明を持って1人テルマエの建設現場に向かったルシウスだったが、自分の最近の発想は全て、平たい顔族の模倣であることを恥じていたので、苦悩していた。

しかし、もうこうなってしまってはプライドなどくそくらえだ!と叫んだ瞬間、池にハマってしまう。

2012年 新宿のトイレとバス(風呂)のショールームでは、昼間、派遣のバイトをしていた真実が、上司から勤務態度を叱られている所だった。

その時、突然、展示してあったバブルジェットバスの中に、突然衣装を着たままのルシウスが出現する。

ルシウスは、煮えたぎっているように見えるお湯なのに、熱くないことに気づく。

一方、その突然の侵入者に驚いた上司は、部長を呼びに言ってしまう。

取り残された真実は、バスから出て、濡れた衣装を絞っていた素っ裸のルシウスに布を投げつける。

ルシウスは、そんな真実に案内を頼むが、当然、真実は言葉が理解できないため動こうとしない。

それを観たルシウスは金が欲しいと言うことかと勝手に解釈し、コインを一枚与える。

それを受け取った真実は、最先端のトイレを眺めているルシウスを、キャラが立ってるわとうっとり見つめる。

ルシウスは、文字のようなものが描かれているトイレットペーパーを不思議そうに見つめていた。

そのトイレ展示場に、部長(蛭子能収)を連れて来た上司は、慌てる真実の前で展示室に入り込むが、いつの間にかルシウスの姿は消えていた。

ルシウスは、香料入り蝋燭が並び、クラゲの映像が映るビデオ装置が付いた風呂の前にいた。

ビデオ装置が全く理解できないルシウスは、これは書物やギリシャ文明も敵わないと驚嘆する。

その時、突如、ルシウスは腹痛に襲われ、真実にトイレの場所を聞くが、真実に言葉がわかるはずもない。

しかし、ルシウスの苦しそうな姿で察しが付いた真実はトイレの場所を教えてやる。

その部屋に駆け込んだルシウスだったが、トイレに蓋が閉まっているのを観て、今の自分のように急な便意を催した場合は不便ではないか…と不満を感じるが、次の瞬間、その蓋が自動的に開いて何やらメロディが流れ出したので凍り付いてしまう。

その動きや音楽は、全部影で奴隷がやっているに違いないと信じ込んだルシウスは、何人奴隷を使っているんだ?と驚き呆れる。

何とか用を足したルシウスは、尻拭きを探すが、それらしきものが見当たらない。

横の壁に付いたアイコンを頼りに、スイッチに触れてみた所、いきなり尻にお湯が当たったので飛び上がってしまう。

どうやら、トイレからお湯が尻に当たる仕掛けになることに気づいたルシウスは、これで、一々、海面を水に浸して尻を拭く必要がないことに気づく。

特に、尻に当たる水流の「サンダー・ウェーブ」と言うテクニックは癖になりそうだった。

一方、真実は、部長から首を言い渡されていた。

数ヶ月後

ハドリアヌス帝は、ルシウスが作った新しいテルマエに入り上機嫌だった。

風呂の底から泡が出、クラゲが入った水槽が怪しく光り、水が吹き出るトイレに大満足だったのだ。

しかし、その動力は全て奴隷たちが影で行っていた。

ハドリアヌス帝は、早速ルシウスに褒美を出してくれる。

金のペニス型のアクセサリーを買ったルシウスは満足げに自宅に帰り着くが、寝室のドアを開けると、そこに見えたのは、親友のデブが妻とベッドを共にしている浮気現場だった。

一方、真実の方も、雪の中、「ヒデブ」と呟きながら、自宅である温泉宿にたどり着こうとしていた。

出迎えた母親は、昼間の派遣を首になったのか?それとも先生に漫画家を首になったのか?両方か?と嫌みを言われる。

すぐさま、温泉場の掃除に向かった真実だったが、父親(笹野高史)が、長老やヤサ(竹内力)など、近所の老人や野人たちと共に、いつものように風呂に浸かって仕事をさぼっていた。

そんな中、真実は教授と呼ばれるインテリ爺さんに、ルシウスからもらったあのコインを見せる。

教授は、コインに刻まれた文字を観ると、ラテン語みたいだな?と呟く。

その日から、真実は、古代ローマの歴史を調べ始める。

14代皇帝ハドリアヌス帝は、自分の居場所をコインに記したとあったので、ルシウスからもらったコインに描かれていたのは、紀元128年のトリポリであると突き止める。

ハドリアヌス帝は、その後、2階目の視察巡回を行い、アレキサンドリアに移動したのである。

古代ローマ

久々に、ルシウスの家を訪れたアントニウスは、部屋の隅で踞っていたルシウスの異様な姿を発見する。

浮気がバレた妻に逃げられ、ずっと1人暮らしをしていたのだった。

アントニウスは、ハドリアヌス帝が可愛がっていたアンティノーとナイルに行った際、その最愛のアンティノーを亡くしてしまい、それ以来、生きる気力を失ってしまわれたので、何とか力を貸して欲しいと頼みに来たのだった。

あまり気乗りがしないまま、ハドリアヌス帝に会いに行ったルシウスだったが、ハドリアヌス帝は、アンティノーの化身として、ナイルからワニを宮殿に連れて来たらしかったが、気候が合わないのか、ワニは元気がなかった。

そのワニが死ぬときが、自分の最期かもしれんなどと、ハドリアヌス帝は見る影もなく弱気になっていた。

真実は、ルシウスの顔を思い出しながらスケッチしていた。

教授や父親たちは、その古代ローマ人が出現していた時の共通点はないのか?と聞くが、真実は、最初は銭湯で、次ぎは先生の家の浴室、次ぎはショールームで全然共通点はなかったと答えるが、聞いていた父親らは、共通点はあるじゃないか!いつも真実がいることだと指摘する。

運命の赤い糸じゃあ!と長老が叫ぶ。

しかし、そこにやって来た母が、真実に見合い写真を見せながら、この旅館は閉めることになるかもしれんと言い出す。

もう随分前から赤字続きだったらしい。

その時真美は、絵が巧くても漫画家にはなれないのよと言う先生の言葉が頭をよぎり、見合いをする。漫画家を諦める潮時かも…と返事をする。

その頃、古代ローマでは、ルシウスとアントニウスが、道ばたで女といちゃついているケイオニウスを観かける。

アントニウスは、ケイオニウスの女好きにも困ったものだと呟きながら、故障し立てる前の所にルシウスを連れて来ると、どうしてあんなに落ち込んでいたんだと聞く。

ルシウスは辛そうに、結婚して7年、毎日のように子供が欲しいとねだられていた妻リウィアを友人に寝取られたのだと打ち明け、テルマエに入って、故障箇所を点検し始めるが、次の瞬間、ルシウスは又しても水の中に引っ込まれてしまう。

ルシウスが浮かび上がった温泉では、男性器をかたどった大きな棒状の御神体に股がった女性が、子宝に恵まれるよう願う「金精様祭り」のまっただ中だった。

女性だらけのその温泉に突如出現したルシウスを観た参加者のおばちゃんらは「金精様だ!」と叫び興奮する。

続いてルシウスは、ワニ園のガラスケースに出現する。

そのワニ園で見合い相手と会っていたのが真実だった。

ワニを飼っている園内の様子を見たルシウスは、ワニも養殖していたのか!と平たい顔族の英知に驚く。

そんなルシウスを発見した関係者は、驚きながらもガラスケースの鍵を開け、外に追い出す。

ルシウスは真実を発見すると、又もや案内しろと言いながら、彼女をお姫様だっこして移動し始めたので、すっかりルシウスに憧れた真実は有頂天になるが、バナナ園にやって来ると、ルシウスは真実をその場に落とす。

バナナをはじめて観たルシウスに、真実がむいて食べさせると、ルシウスはその美味しさに目を見開く。

さらに、バナナを漫画で解説した看板で、この種があれば、ローマでもバナナが生えることを知ったルシウスは感心してしまう。

真実は、見合い相手などそっちのけで、ルシウスに浴衣を着せると、温泉地を案内し始める。

吸盤付きの弓で的を射る射的場に案内すると、ルシウスは見事な弓の技術を見せる。

その時、ルシウスは日本猿が、自分が持って来た食べかけのバナナの皮を盗んで逃げ出したことに気づき、弓を持って追跡する。

やがて、ルシウスは、川の横に作られた温泉風呂を発見する。

野外風呂の発想に驚きながらも入浴してみたルシウスは、室内の風呂とは比べ物にならない開放感を得る。

その時、川を流れているバナナの皮を発見したので急いで飛び出すと、そのバナナの皮を追って川に飛び込むが、そこはちょうど滝壺になっており、ルシウスは水の渦の中に巻き込まれてしまう。

気がつくと、ルシウスは、故障したテルマエの横に寝かされ、アントニウスに介抱されていた。

ルシウスは慌てて自分の横を観ると、無事、食べかけのバナナの皮がそこにあった。

しばらくして、ハドリアヌス帝用のナイル風テルマエが作られるが、アンティノーの首像とバナナ、そして、お湯の中で元気に泳ぐようになったワニなどに癒され、元気を取り戻したハドリアヌス亭はルシウスの斬新な発想を褒め讃えるのだった。

しかし、又しても、平たい顔族のアイデアを盗用しただけのルシウスは自己嫌悪に陥っていた。

そこに、兵士が駆け込んで来て、北方の蛮族が暴れているとハドリアヌス帝に知らせる。

その当時、ドナウ川の北側では、蛮族とローマ兵が戦いを繰り広げていた。

ハドリアヌス帝は、ここまで苦しめられるとは…と苦悩する。

ある日、そのハドリアヌス帝から書簡をもらったルシウスは、自分の後継者にするつもりのケイオニウスを養子にしようと思う。

ついては、このケイオニウスの最初の仕事として、民衆の浴場を作らせたい。過去の浴場を凌駕するような素晴らしいテルマエを作ってくれ。そうすれば、ケイオニウスは民衆の支持を受ける…と書かれていた。

さっそく、そのことを確認するためにケイオニウスに会いに出向いたルシウスだったが、相変わらず、女好きらしく、近くで見つけた女といちゃついていた。

ケイオニウスはルシウスを観ると、風呂なんて皆一緒だろ?豪華絢爛な風呂にしてくれと無関心そうに命じるが、ルシウスが、風呂作りを辞退したら?と問いかけると、そうなると皇帝の意思に逆らうことになるので重罪になるぞと脅す。

ルシウスにとって、そんな人間性に問題があるケイオニウスのために浴場を作ることは、どうしても納得できなかった。

1人、井戸の側で悩んでいたルシウスに突如飛びかかってきた男があった。

以前、出会ったことがあるビルトゥスと言うテルマエ設計士だった。

彼は、ルシウスのお陰で最近仕事がなくなったと言いながら、ルシウスを井戸の方に押し付ける。

ルシウスはバランスを崩し、井戸の中に落ちてしまう。

気がついたルシウスがいたのは、真実の父たちが集まる温泉宿のオンドル部屋だった。

ルシウスは、床が暖かいことに驚く。

ルシウスは、その後、老人たちに露天風呂に連れて行かれる。

そこで、老人たちと一緒に露天風呂に浸かるが、ヤサの背中にある無数の傷跡を観て、ここまで船上で傷を負っても死なないとは!百年隊長ではないか!と驚愕する。

そんなルシウスに、老人は、ヤサはトラック事故にあったし、自分は大工をしていて屋根から落ちて足を怪我したが、この温泉で良くなると説明するが、もちろん彼らの日本語がルシウスにわかるはずもなかった。

別の老人は、ルシウスに温泉卵を勧める。

ルシウスはその旨さに驚く。

ヤサは濁酒をルシウスに飲ませるが、飲んだ瞬間、毒を盛られた!とルシウスは直感しもだえる。

ヤサは一升瓶から同じ濁酒を口に含み、腐っていると吐き出す。

しかし、その度胸を目の当たりにしたルシウスは、さすが百年隊長!と妙な感心をし、露天風呂を飛び出て逃げ出す。

近くの温泉場に逃れて来たルシウスは、腹痛のあまり倒れ込むが、それに気づいたのは、たまたまその場所でラテン語の勉強をしていた真実だった。

真実は、苦しんでいるルシウスに温泉水を直接桶で飲ませる。

最初は、何を飲ませるのかと抵抗したルシウスだったが、不思議なことに腹痛が治ったではないか。

そんなルシウスに、真実がラテン語で話しかけると、ルシウスはさらに驚き、互いに名乗り合う。

その時、濁酒の酔いが急に廻って来たルシウスは、真実に抱きつくような形になり、一緒に温泉に落ちてしまう。

気がつくと、目の前にケイオニウスがいた。

ケイオニウスは気絶していたルシウスのことよりも、近くに倒れていた真実の方に興味があるようだった。

真実も気がつき立ち上がると、ここは?と周囲の情景が一変していたので驚く。

ルシウスは、ローマだと教える。

目の前に広がっている風景に信じられない様子で立ち尽くしていた真実に近づき、手を握って来たケイオニウス。

しかし、そこに、アントニウスがやって来て、嫌がっているではないかと留めたので、ケイオニウスは忌々しそうに手を離してその場を去る。

アントニウスはルシウスに、ケイオニウスのためのテルマエ作りを頼まれたそうだがと聞くが、ルシウスは、断ろうと思うと気持ちを打ち明ける。

それを聞いたアントニウスは、死罪だぞと忠告する。

しかし、ルシウスの家に連れて来られた真実は、世の中、気に入らない仕事なんてしょっちゅうじゃない。死んじゃうのよ?もっと自分を大切にしなよと説得するが、ルシウスは、自分の気持ちを殺してまで生きたくないと言うだけだった。

その後、アントニウス議員がパンノニア行きを命じられたことを、真実は群衆に混じり聞く。

その頃、露天風呂にいた真実の父たち老人一行は、温泉の中に浮かんでいる真実の帽子を発見、何か起こったに違いないと感じた彼らは無謀にも全員温泉に飛び込む。

ルシウスは戦場に出向いていたハドリアヌス帝に会いに行き、自分はケイオニウスのためのテルマエを作ることは出来ないと伝える。

それを聞いたハドリアヌス帝は、ケイオニウスを皇帝と認めないということだな?と確認し、二度と余の前に姿を見せるなと命じる。

追われるように皇帝のテントからの帰る途中、ルシウスはある崖の所で温泉が湧いているのを発見し、味を確認すると酸っぱく、腹痛の時、真実に飲ませてもらったあの温泉水と同じ味だった。

自宅に戻って来たルシウスは、家で待ち続けていた真実の姿を発見する。

真実は、アントニウスが、パンノニアに行かされることになったことを教え、本来なら、パンノニアに行くのはケイオニウスであり、彼はそこで疫病にかかって死ぬことになるはずなのだが、アントニウスが行くことになると歴史が変わってしまうと訴える。

実際の歴史では、アントニウスが皇帝になり、ハドリアヌス帝を神格化するのだが、それがなくなると、ハドリアヌス帝の功績は全部抹消され、愚かな皇帝として記憶されてしまうとも教える。

その話を聞いたルシウスは驚き、直接、ケイオニウスに会いに行くと、皇帝になられたら、ハドリアヌス帝を神格化なさるつもりはあるかと確認するが、護衛役の兵士の剣を掴み、それをルシウスののど元に突きつけたケイオニウスは、ハドリアヌス帝は、元老院の人間を殺しているからな…などとその気がないことを証し、お前はどんな手を使って名を手に入れた?飛んだ食わせ物だったということかと、ルシウスのこれまでの仕事も否定する。

雨の中、絶望の余り、濡れ鼠になって石階段に座り込んでいたルシウスに真実が近寄って来る。

その時、通りかかった民衆が、ルシウスの功績を褒め讃えるが、ルシウスは、止めろ!俺はそなたたちが思っているような男ではないと否定し、その男を遠ざける。

私は無能だ。そなたたちのテルマエを盗んだだけだと真実に言うルシウスに、じゃあ、何で何度も溺れたの?期待に応えようともがいたんでしょう?と真実は励ます。

アントニウスのパンノニア行きを阻止すれば、全て本に戻るのだな?と真実に再度確認したルシウスは、アントニウスに会いに出かける。

その後、叱責覚悟で再びハドリアヌス帝に会いに出向いたルシウスは、アントヌスからの伝令を持って来たと言い、ここにテルマエを作って欲しいと提案されたと伝える。

この地には、傷を治癒する力のある湯がある。兵士が元気になれば、ローマ軍の勝利も間違いありませんと言うルシウスの言葉を聞いたハドリアヌス帝は、アントニウスの提案を受け入れようと言いながらも、これはそなたの考えではないのか?と確認する。

しかし、ルシウスは、いえ、アントニウス様のお考えですと繰り返すのみだった。

その後、真実と共に、温泉が湧く山間の場所にやって来たルシウスだったが、アントニウス様のパンノニア行きが阻止できるのだから、やるしかないと決意を固める。

しかし、テルマエ作りに駆り出された兵士たちはもはや体力も尽きかけており、到底テルマエなど作れる状態ではなかった。

そんな所に連れて来られたのが、何と、こちらの世界にタイムスリップしていた父親たちだった。

ヤサは、まるで獣かなにかのように、父親らが引く荷車の上の檻に入れられていた。

彼らはここが地獄だと思い込んでいるらしく、長老などは婆ちゃんはどこだと探している始末。

そんな老人たちと再会した真実が事情を話すと、オンドル小屋を作れば良いんじゃないかと言い出す。

それなら小屋を作るだけで言いし、簡単にできると言うので、直ちに老人たちも一緒になってオンドル小屋を作り始める。

その様子を観ていたルシウスは、この者たちはなぜ手伝っているのだ?何の名誉にもならないことを。個人の名誉より、人が幸せになるのを喜ぶということか?…と不思議がる。

教授が温泉水の性質を調べ、やがて最初の小屋が完成する。

その頃、蛮族との戦いに劣勢を強いられていたハドリアヌス帝は、ルシウスのテルマエの効力に託すしかないと感じていた。

そこに、テルマエで休息した兵士たちが病から治り、次々と戦地に復帰しているとの知らせが届く。

温泉地では、オンドル小屋の他に露天風呂も完成し、小屋の数も次々と増えていっていた。

真実はテントの中で、温泉の説明図を漫画で描いていた。

隣にいるルシウスに対し、自分も漫画家を諦めかけていたけど、まだまだもがいてみるよ。ありがとうと礼を言い、あなたと会えて本当に…と告りかけるが、気がつくとルシウスが全く聞いていないようだったのでがっかりする。

やがて世が空け、テントの中から朝日が見えたので、テント内で休息していた兵士たちはローマ帝国万歳!と叫ぶ。

兵士たちは、オンドル小屋で身体を温め、露天風呂に浸かり、温泉卵を食べて、皆元気になっていた。

その夜、たき火を囲んで夜空を観ていた真実とルシウスは北極星を見つける。

ルシウスは真実に、ハドリアヌス帝のことは歴史に残るかと聞き、もちろん、みんな知っているよという返事を聞き満足そうだった。

その時、近くのたき火を囲んでいた父親たちは、煙が目にしみると言いながら姿が消えて行っていた。

ルシウスは真実に、お前の言葉を借りれば、私もまだまだもがいてみるよと言うので、聞いていたんだと真実は感激する。

ありがとう、会えて良かったと言いながら、ルシウスが微笑みかけたので、ずるいよ、こんな時、はじめて笑うなんて…、反則だよ…とすねてみせながら、真実はうっすら涙を浮かべる。

すると、真実の手も消え始めているのに気づく。

それを見たルシウスは、そうか!そう言うことか!私がこちらの世界に戻る時、いつも泣いていたと、タイムスリップするきっかけが涙であったことを発見する。

それを聞いた真実は、ってことは、私も帰っちゃうってこと?そうか…と納得し、又会えるかな?と消えながら呟く。

すると、ルシウスは、きっと会える!ローマの道は全てに通じているのだから…と答える。

真実や老人たちは皆、元の温泉場に戻っていた。

真実は、夜空の星を見上げていた。

1ヶ月後

ハドリアヌス帝は、民衆の前で蛮族との戦いに勝利した演説を行っていた。

アントニウスの功績を讃え、パンノニアス属州には、別のものに行かせることにしたので、アントニウスはローマに残るよう命じる。

ハドリアヌス帝はさらに、ルシウス・モデストゥスも讃えよ、これへ!と呼びかける。

民衆に混じり演説を聞いていたルシウスは、驚きながらも慎んでハドリアヌス帝の前に近づく。

ハドリアヌス帝は、余がそなたの噓を見抜けぬと思ってか?大義であった!と褒め讃える。

その言葉を聞いたルシウスは、私の力ではありません。皆の代わりとしてありがたくお受けしますと泣きながら礼を述べる。

民衆はそんなルシウスに、惜しみない拍手を送る。

その後、ハキウス・ケイオニウスはパンノニアで疫病にかかり没する。

ルシウス・モデストゥスの没年は定かではない。

真実は、ルシウスをモデルにした新作漫画の原稿を出版社の編集者に見せていた。

その後、皇居のお堀端を歩いて帰っていた真実は、突然、お堀からはい上がって来たルシウスを発見するのだった。

エンドロール

アヤが銭湯に浸かっている。

ヤサが1人で露天風呂に入っている。

そして、ルシウスは、ローマのテルマエに入っていた。


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