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天下の副将軍 水戸漫遊記

お馴染み「水戸黄門」の映画化の1本だが、冒頭の「生類憐れみの令」を出した五代将軍綱吉を諌めるエピソードや、中盤の楠木正成の墓を新しく作り直すエピソードなどは、他の水戸黄門映画でも見かけたことがあるので、それぞれ、昔から伝わるかなり有名な話なのではないかと想像する。

本作では、助さん格さんの2人だけではなく、護摩の灰の九紋竜の長次とあだっぽい鳥追のお町が味方として同行する展開になっており、テレビでお馴染みのスタイルに近いと言えば近いような気がする。

さらに本作では、仏生寺竜之介と言う、あたかも眠狂四郎を彷彿とさせるような着流し姿で虚無的な浪人が敵役として登場しているにが珍しい。

古川緑波の黄門役ははじめて見たが、特に違和感はない。

いつもの、笑いを意識したような、すっとぼけたようなキャラクターではなく、ごく普通に誠実そうな老人を演じているように見える。

中盤の大勢のエキストラを使った祭りのシーンなどは、ちょっと独特な雰囲気を生んでいるが、全体的には特に個性的というほどではなく、ごく普通のプログラムピクチャーと言った感じである。

後半に登場する丹波哲郎の悪役振りもなかなか見事。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、新東宝、仲津勝義 + 土屋啓之助脚本、中川信夫監督作品。

狆を抱く奥方。

五代将軍綱吉は「お犬様」と呼ばれ、「生類憐れみの令」を発布。

「犬を殺せば死罪、打ちたる者も重く罰せられる」と書かれた高札があちこちに立つ。

町民は、犬を連れて町を練り歩く旗本連中たちに、土下座をさせられることになる。

そんな犬の散歩の道に、目が不自由な巡礼の母とその娘が通りかかるが、何せ目が見えないので事情が分からず土下座をしなかったというので、旗本たちから道ばたに引きずり倒され、土佐犬に吼えつかれた娘の方は恐怖で泣き出してしまう。

そんな所に通りかかったのが、丹波篠山から、お家の一大事の救済を幕府に進言するため江戸にやって来た勝田主膳正(坂東好太郎)

勝田は、そのあまりの情けない光景に発奮、巡礼母子を守ろうと立ちふさがり、旗本たちと一発触発の状況に陥りかけるが、そこに一台の駕篭が近づいて来る。

中から顔を出したのは、水戸中納言光圀(古川緑波)だった。

光圀は、勝田や泣いている幼女の様子をしっかり目にとめる。

登城した光圀は、いくら戌年生まれの上様であろうが、万物の霊長たる人間が、犬を殺せば死罪、打ちたる者も重く罰せられるとは何たること!と苦言を呈する。

その言葉を聞いた綱吉(和田桂之助)は、許せ、余の誤りであったと素直に謝罪する。

光圀はさらに、その場にいた大老柳沢吉保(岬洋二)にも、殿をお諌めしなかった責任があると厳しく叱責すると、江戸でさえこのような状況の中、自分は60余州のことが気がかりなので、旅に出る覚悟と宣言する。

その後、柳沢吉保の屋敷にやって来た勝田は、篠山6万石の城主片桐定政(中村彰)はもの狂いとの理由で座敷牢に入れられ、吉保の弟に当たる柳沢甲斐守が養子に収まろうとしているが、片桐定政がもの狂いというのは間違いだし、甲斐守の横暴に苦心しているので何とかして欲しいと進言する。

しかし、吉保は聞く耳を持たず、勝田のことを逆臣め!と罵倒すると、席を立ってしまう。

勝田が帰ると、柳沢吉保は呼び寄せた侍飛脚の田丸平九郎(水原爆)に、直ちに丹波篠山の柳沢甲斐守に書状をもって行くように、仏生寺竜之介(坂内英二郎)には勝田主膳正を斬ることを、鳥追のお町(宇治みさ子)にも手助けを頼む。

とある船着き場で渡し船が出ようとしていた時、待て!と声をかけて船を止めたのは、書状をもってやって来た田丸だった。

田村は、柳沢様の御用箱を運んでいるのだからと強引に戻した船に乗り込もうとし、それまで乗っていた町人たちに全員降りろと言い出す。

仕方なく、町民たちは渡し船を降りるが、最後の老人とそのお供の2人だけが降りようとしなかったので、田村が文句を言い、側にいた仏生寺を呼ぶが、仏生寺は知らん振りをしていた。

船に乗っていたのは光圀だったので、助さん(若杉英二)と格さん(中村竜三郎)に、そのものが持っておる御用箱を取り上げてしまい、そのものは川に投げ込んでしまいなさいと命じる。

その結果、田丸は御用箱を奪われ、自分は川に放り込まれてしまう。

そこに駆けつけて来たのが、代官江川常太夫(西一樹)だったので、光圀は、その場で書いた書状を渡し、その立て札に貼っておくようにと命じる。

横柄な態度だった江川は、書状に書かれた光圀の署名を見ると平伏し、無礼を詫びると、書状を貼ることを約束する。

その書状には、「何人も、金を払わないものが渡し船に乗ることは相成らん」と書かれてあった。

川に落ちた田村は、仏生寺の助けを借り、書状を取られた!とわめきながら何とか這い上がって来るが、その様子を観ていたお町は笑っていた。

川を渡り、田んぼに積んであった米俵に腰掛け、御用箱の中の書状を読んだ光圀は、片桐家、危うしか…と呟くと、その書状を助さんの振り分けにでも結んでいなさいと命じる。

怪訝な顔つきになった助さんたちに、光圀は、餌じゃ。今にこれを付けねらう輩が増えるぞという。

そんな光圀の方に血相を変えてやて来た老婆(五月藤江)は、年貢米の上に尻を乗せるとはなんてことをするんだこのクソ爺!と罵倒して来る。

米は、九十九も人の手がかかっている大切なものだというので、それを聞いた光圀は、確かにその通りで自分が悪かったと反省し、老婆を止めようとする助さんや格さんを制し、その場に土下座をして老婆に詫びるのだった。

その後、浜辺を歩いていた光圀一行に、後ろから近づきぶつかって来たヤクザものがいた。

助さんや格さんが無礼をいたすな!と叱ると、その九紋竜の長次(小倉繁)と名乗った「護摩の灰(旅人を狙う泥棒)」は着物を脱ぎ、砂浜に大の字に横たわると、ここでなますに切り刻んでみろ!さあ!やれ!とけしかけて来る。

そんな威勢の良い長次に、光圀は、相手を見てものを言えよと諭すと、さすがに相手が違うと感じた長次は、さぞかし名のある親分さんでしょう。あっしを子分にして下さいと頭を下げて来る。

しかし、光圀は、もっと腕を磨いて来いと言い残して立ち去る。

ある宿場町では祭りの真っ最中だった。

宿に泊まっていた光圀一行にそっと近づいていたのはお町だった。

廊下から、外の祭りに見とれている格さんの隙を付き、部屋に置いてあった振り分け荷物を盗み出すと逃げようとするが、ちょうど風呂から助さんが上がって来て退路を立たれたので、お町は、振り分けを外に投げるが、途中の階の欄干に引っかかってしまう。

それに気づいたのが、祭りに紛れ込んでいた長次で、宿をよじ上ってその振り分けを奪ってしまう。

それを下から見ていたお町は慌てるが、そこにやって来たのが、柳沢吉保の特命を受けて駆けつけて来た下郎たち3人(村山京司、小浜幸夫、晴海勇三)だった。

お町から、あの男が書状の付いた振り分けを盗んだと聞いた3人の下郎と仏生寺竜之介は、祭りの群集をかき分け追跡する。

長次は、途中で出会った勝田主膳正に、追われているのでこれを預かってくれ。後でそこの鞠子屋で落ち合いましょうと約束し、振り分けを手渡す。

下郎3人は、勝田に気づかず通り過ぎるが、後から追って来た仏生寺は、鞠子屋に向かう勝田に気づき、後を追う。

宿で勝田から振り分けを返してもらった長次は、それを持って光圀の宿を尋ねて来る。

振り分けが盗まれたことを助さん、格さんが詫びるている所にやって来た長次は、親分に腕を見てもらいたいと思い、これを盗んで参りましたと振り分け荷物を差し出す。

光圀がそれを開けて見なさいというので、長次は箱を開けてみると、中は空だった。

光圀は、自らの懐の中から書状を取り出してみせる。

さすが親分!と感心する長次に、助さんと格さんは、この方は天下の副将軍水戸光圀公なるぞ!と教え、それを聞いた長次は、その場にひれ伏すのだった。

そんな部屋の様子を、外の廊下で聞いていたのはお町だった。

祭りが終わった深夜、お町に連れられた下郎たちが襲撃したのは勝田主膳正の部屋だった。

勝田は単身戦うが、そんな勝田に対峙したのは、素浪人風の仏生寺竜之介だった。

しかし、騒ぎに巻き込まれた隣の部屋の客が外に飛び出し番所に知らせたので、間もなく役人たちが鞠子屋に駆けつけて来る。

それに気づいた仏生寺は、貴様の命はしばらく預けておく。いずれその首、もらって行くぜと捨て台詞を残して立ち去って行く。

翌日、光圀は馬に股がって出発するが、その後から、長次が付いて来る。

やがて山道に差し掛かった光圀一行に近づいて来たお町は、あちらの滝の所で母が護摩の灰に襲われて…と助けを求めて来る。

光圀は、すぐに助さんと格さんを救援に向かわせるが、その後、急に笑い出したお町は、あの2人がいなければどうとでもなる…と言い、下郎3人を呼び寄せる。

騙されたと気づいた長次はお町につかみ掛かって行くが、1人になった光圀は、3人の下郎を前に窮地に陥る。

その時、御老公、遅れましたと言いながら、助さん格さんが舞い戻り、下郎たちを蹴散らせてしまう。

その頃、滝の所では、勝田主膳正と仏生寺竜之介が再び対峙していた。

そこに、御家老!と言いながら勝田の加勢に駆けつけたのは、丹波篠山よりやって来た磯貝半四郎(松本朝夫)だった。

磯貝は仏生寺から左手を斬られるが、又、太鼓を打ち鳴らす修行僧の一行が近づいて来たので、邪魔が入ったな…と、仏生寺は剣をおさめて去って行く。

雨が降り出し、安宿に泊まった勝田は、このままでは殿が危ない。一刻も早く国元にお戻りくださいと頼む磯貝に、柳沢吉保を説得できなかった旨を打ち開け、もはや万策尽きたと答えうなだれる。

その宿の外で、持病のしゃくに苦しみ出したお町を、下郎3人と仏生寺は、足手まといになると判断、その場に残して出発して行く。

そんな安宿「めうが屋」に、光圀一行も泊まりに来る。

「めうが屋」の親爺(鳥羽陽之助)は、ここは見ての通り安宿なので、米は自分で勝って来て食ってくれという。

それを承諾して泊まった光圀たちだったが、何せ同室に満員なので、先に泊まっていた町人が、光圀のヒゲをからかって来る。

何でも、水戸の中納言様のおひげも立派だそうだが、それに比べると大したことないねなどというので、さすがに切れた長次は、この方を誰だと思っているんだ!と名前を明かそうとするが、それを光圀は制する。

そんな中、泊まり客の1人の講釈師(邑井貞吉)が、「楠木正成」を語り出したので、泊まり客たちはみんな聞き惚れる。

二階の座敷では、勝田もじっと聞き入っていた。

その時、光圀は、宿の隅で寝込んで苦しんでいる女を見つけ、それがいつかのお町であることに気づく。

夜中、目覚めた助さんと格さんは、一緒に寝ているはずの光圀の姿が布団にないので、不審に思い宿の中を見渡すと、光圀は1人で、お町の寝ずの看病をしていた。

目覚めたお町は、自分を看病してくれているのが光圀として涙する。

翌朝

光圀は助さん格さんを連れ、湊川の楠公の墓に行くので、長次はお町を連れゆっくり後から付いて来いと言われる。

その楠公の墓の前で、切腹しようとしていたのは勝田主膳正だった。

その直前、助さん格さんが駆けつけ、勝田を止める。

光圀は、早まるでないぞとなだめるが、勝田は、公儀への嘆願も叶わず、お家再興の夢も潰えましたと説明する。

話を聞いた光圀は、助さんに勝田の供をさせ、先に丹波篠山に急ぐよう命じる。

その後、あまりに荒れ果てた大忠臣楠公の墓を観た光圀は、嘆かわしいと哀しみ、近くの石屋に墓の注文に行くが、丁寧な口調で注文すると、その頑固そうな石屋の藤吉(石川冷)は不機嫌そうで、出直して来い!と言うので、出直して来ると答えた光圀は、少し離れた所からもう一度その藤吉の前に来ると、金を払うから石碑をこしらえろと簡潔に頼むと、気に入った!と気に入られる。

工事を始めた楠公の墓の前にいた光圀と格さんの元にやって来たのは、長次に連れられて来たお町だった。

お町は、改めて光圀に詫び、これからは死ぬ覚悟でお仕えします。渡しは悪い夢から覚めたように思いますと改心する。

そんなお町の様子を見かけたのが、柳沢の下郎たち3人組で、お町に近づいて来るが、薄情なお前さんたちとはもう口を聞くのも嫌とお町は拒否する。

何!といきり立った3人だったが、すぐに格さんや工事を手伝っていた職人たちまで駆けつけて来てお町を守ってくれる。

そんな楠公の墓に近づいて来た紀州の行列だったが、「諸大名の通行禁止」と書かれた立て札に阻まれる。

何事かと墓の側にやって来て紀州は、そこに光圀がいたのでかしこまる。

光圀は、紀州様は、たびたびこの道を通られると思うが、この楠公の墓に参られたことはあるかと聞く。

紀州公が恥ずかしながらないと答えると、他の諸大名も同じであろうと嘆いた光圀は頼みがあると言い、墓を作っているので寄進してもらいたいと伝える。

紀州公は快諾し、百両寄進しますと言い出すが、そのような大金があれば、民百姓のために使いなさい。10両で良いと光圀は頼んだので、紀州公は汗顔の至りでございますと恐縮する。

さらに光圀は、江戸へ登る紀州公に、大老の部下3人を連れて行って欲しいと頼む。

その3人は先ほど格さんらに捕まえられ、まるで罪人のように十丸駕篭に入れられていた。

丹波篠山城

天守閣の牢に入れられた城主片桐定政(中村彰)を、娘の深雪姫(松浦浪路)が見舞っていた。

一方、すっかり城主気取りで酒を飲んでいた柳沢甲斐守(丹波哲郎)は、江戸から戻って来た勝田主膳正から、天守閣に何の病気でもない殿を物狂いと断定して幽閉するのはあまりに惨い。ご養子ご縁組みのことも、幕府にご相談がなかったのはいかがなことか?と進言されたので、機嫌を損ね、飲んでいた盃をその額に投げつけ黙らせる。

天守閣の牢の前で泣く深雪姫に、許せよ。父がふがいないばかりに…と片桐定政が詫びていた時、勝田主膳正が帰参の挨拶に来る。

江戸表での首尾は?と聞かれた勝田であったが、何も答えることが出来なかったので、定政は事情を察し落胆する。

しかし勝田は、たった1つ朗報がございます、水戸光圀公が遠からずご来城なさいますと報告する。

そこにやって来た甲斐守は、勝田を下がらせ、深雪姫の従者である波路も叱りつける。

そして、深雪姫に近づくと、これからこの甲斐の奥になる身であろう?と手を握ろうとしたので、牢の中の定政が、無礼であろう!と声をあげると、キ○ガイにつける薬はないということかとあざ笑う。

その後、美濃守(柳沢吉保)の使者が来たと聞いた甲斐守は、その使者の田丸平九郎から、兄の柳沢吉保からの書状を途中で盗まれたと聞き、激怒する。

田丸は、この上は、一刻も早く深雪姫とのご婚礼を執り行われますようと進言し、明日は満月なので、ご婚礼を発表されるにはうってつけと提案する。

その時、立ち上がった仏生寺竜之介が、「斬る」と言いながらその場を立ち去りかけたので、それを制した田丸は、明日の月見の宴にこと寄せて…とほのめかす。

その頃、深雪姫は牢の中の定政に、自分は死ぬる覚悟は出来ています。甲斐守になびくと見せかけて刺し違えますと告げていた。

その時、下の階に上がって来た甲斐守は、波路を斬り捨てると、その血に濡れた刃を深雪姫に差し出し、姫!この血の匂いをかいでみよと命じる。

定政が牢の中から止めようとすると、キ○ガイでも我が子は可愛いらしいと又嘲るのだった。

その後、謡を歌いながら深雪姫を寝所に連れて来た甲斐守だったが、見慣れぬ腰元が、お部屋の用意ができておりますと深雪姫を誘いに来る。

2人が立ち去ろうとしたとき、待て女!と腰元を止めた甲斐守は、その腰元の手を取ると、部屋に連れ込もうとするが、腰元は何をなさいます!と気色ばみ、その場から立ち去って行く。

実はその腰元は、お町が化けていたのだった。

深雪姫の部屋に入ってきた甲斐守は、明日、月見の宴を兼ね、祝言の披露をするぞと告げながら、抱きつこうとするが、深雪姫は隠し持っていた懐剣を突き刺そうとする。

だが、あっさりかわされ、逆に可愛いことをするなどとからかわれるだけだった。

お町と黒装束に身を固めた助さんが深雪姫を助けようと部屋に近づくが、家臣に見つかってしまい、逃げ遅れたお町は捕まってしまい、地下牢に入れられる。

助さんだけは何とか逃げ延びたが、田村平九郎は甲斐守に、明日の月見の宴は、殿のご運が開くめでたき宴でもござるなどとお愛想を言っていた。

翌日の満月の晩

城の中庭では、能が披露されていた。

やがて、田村平九郎が深雪姫と柳沢甲斐守の婚礼を発表する。

そして、家臣一同を代表して、荒川紋太夫(若宮竜二)が喜びの挨拶をする。

中庭では、翁の舞が始まっていた。

そんな中、仏生寺竜之介がじりじりと天守閣を登っていた。

深雪姫に、固めの盃が渡され、酒が注がれる。

躊躇している深雪姫に、甲斐守が、どうした?と声をかけると、もはやどうすることも出来ないと覚悟したのか、姫は盃を口に運ぼうとする。

その時、水戸中納言光圀様お成り〜と声が響き、光圀がそれまで甲斐守が座っていた中央の座に座る。

その頃、天守閣の牢に到達していた仏生寺竜之介は、牢を開け、中に侵入して来る。

光圀は、側に控えた甲斐守に、問答無用!書状を読んでみよと、吉保からの手紙を渡す。

甲斐守が読み上げたその書状は、何と言うことのない内容であった。

すると今度は、その一番上の文字だけを右から読んでみよと光圀は命じる。

甲斐守が読もうとしないので、それならば自分が読んでみようと言った光圀は、書状の二番より下の文字部分に閉じた扇子を横に置いて隠し、「片桐首上よ」つまり、殿の首を刎ねろということであろう?と迫る。

もはやこれまでと観念した甲斐守は、光圀に斬り掛かろうとする。

同じ時、天守閣の牢内では、仏生寺竜之介が刀を抜いて片桐定政を斬ろうとしていた。

一方、地下牢に閉じ込められていたお町は、忍び込んでいた長次に助け出されていた。

中庭では、片桐定政派の家臣と甲斐守派の家臣とが壮絶な戦いを始めていた。

定政は、仏生寺との間合いを計りながら牢を抜け出すと、下の階に降りて、槍を手にするが、簡単に弾き落とされてしまう。

そこに駆けつけたのが勝田主膳正だったので、仏生寺は、今日こそ勝負をつけてやるぞと剣を構える。

地下では、お町を守って、長次も家臣たちと匕首で戦っていた。

お町は姫深雪を伴って、天守閣に登って来ると定政と対面する。

仏生寺は、勝田の剣で頭を斬られており、その場に倒れる。

国光の元に駆けつけて来た勝田は、殿は無事だったと報告し、その直後、光圀の背後のふすまに隠れていた刺客を倒す。

さらに勝田は、柳沢甲斐守も斬り捨てると、鎮まれ!鎮まれ!甲斐守を討ち取ったぞ!と声をあげるのだった。

その後、無事完成した楠公の石碑の前には、光圀、片桐定政助さん、格さん、片桐定政 、勝田主膳正、深雪姫らに混じり、お町と長次も参加していた。

水戸光圀と助さん格さんの3人は、淡路島が見える海岸に来ていた。

そんな光圀一行に、背後から走りよって来たのは、一緒に連れて行って下さい!と頼む九紋竜の長次だった。