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憲兵と幽霊

「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長こと中山昭二と天知茂が共演する「憲兵もの」の怪談。

秀才でありながら、家庭の事情で大学進学を断念させられたことに起因するのか、性格がネジ曲がった憲兵を天知茂を演じ、対するまじめな憲兵兄弟を中山昭二が演じている。

ただ、一卵性双生児というような設定ではないはずの中山昭二の二役が、あまりにそのままなので、途中、区別できないで混乱するシーンもある。

モノクロ画面ということもあり、今の感覚からすると、ものすごく怖いというほどではないが、一部、耳をつんざくようなキーンという金属音などで生理的不快感を感じさせるような演出がある。

終始、ポーカーフェイスを崩さない天知茂の演技が見物。

久保菜穂子演ずる明子は美しく、特に後半で登場する看護婦姿は凛々しい。

三原葉子は妖艶な中国人女性を演じており、脇毛の処理もせず踊っている万里昌代共々、男性客の目を楽しませてくれる役目なのだろう。

天知茂演じる波島中尉の子分格である高橋伍長を演じている三村俊夫とは、後の村上不二夫であるが、機密書類を紛失した後も、そんなにパニクっていない風で、罪の意識もなく唯々諾々と中尉の言葉に従う態度には、かなり不自然さを感じないでもない。

そう言う異常な人間であると言う意図的な設定なのかもしれない。

ラストの墓場のセットはなかなか手が込んでおり、怖いという訳ではないが、かなり楽しめる。

低予算で地味な印象はあるが、それなりにアイデアも盛り込まれ、怪奇ファンとしてはそれなりに楽しめる一作ではないかと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、新東宝、石川義寛脚本、中川信夫監督作品。

橋から街の中にかけ、楽団が軍歌を吹き鳴らし練り歩いている。

タイトル

昭和16年秋

神社で結婚式を上げていたのは、田沢憲兵伍長(中山昭二)明子(久保菜穂子)の2人。

その明子の方を少し離れた所から蛇が獲物を狙うように見つめていたのは、波島憲兵中尉(天知茂)だった。

そんな波島に近づいて来た高橋憲兵軍曹(三村俊夫)から、彼女の争奪戦には負けましたなと冗談を言われると、女性は攻略するまでが魅力だ。攻略してしまった後は興味がないと吐き捨てる。

その夜の披露宴でも、仲良く中央に座っている新婚夫婦の明子の方を、軍隊仲間として出席していた波島中尉はじっと見つめていた。

座を外して廊下に出た波島は、2階からコートを脱ぎ捨て、肌も露な格好で降りて来た女性から助けてくれと背後に回られる。

その後から追って来た中年男性は、その女は金で買ったものだから渡してもらおうと迫るが、女は、私は踊子なので身体は売らないと拒絶するので、波島は、無理強いをすると職権上逮捕することもありますぞなどと脅すと、中年男は憲兵と気づき、慌てて2階に逃げ帰る。

女は助けてもらった礼を言うと、クラブ上海で踊っているので、必ず遊びに来て下さいと半ば強引に波島に約束させる。

昭和16年12月8日 真珠湾攻撃 日本軍はフィリピンやビルマなどを次々と陥落して行った。

昭和17年夏

東京第五憲兵隊本部

波島中尉の部屋に、鞄を提げ、慌てて飛び込んで来たのは高橋憲兵軍曹だった。

軍の機密書類を紛失したという。

それを聞いた波島中尉は、それが本当ならお前は死刑だ!書類を探し抜くのだ!と命じるが、既に探し終えた後であり、明日隊長に提出しなければならない。どうすれば良いのか?と問いかける高橋に、波島は、それなら人に罪を着せるか…と言い出す。

苑からの鞄を誰かの部屋の中に入れておき、書類がなくなったと騒ぎ出す。そうすれば、鞄を盗んだのはそいつの仕業ということになると教える波島に、誰の部屋に入れれば良いのですか?と高橋がバカ正直に来聞かすので、俺に言わすな、頭を働かせろ!と叱りつけた波島だったが、例えば、お前の競争相手になりそうな田沢憲兵伍長とか…とほのめかす。

その後、田沢が部屋を出て行った後を狙い、高橋はその部屋の中に空の鞄を置いたので、書類を盗んだのは田沢伍長ということになり、鬼軍曹高橋立ち会いの元、取り調べというなの拷問が始まる。

そんな田沢に面会に来たのは、瓜二つの容貌を持つ弟の田沢二等兵(中山昭二-二役)だった。

きょうは本年最後の外出日なので、今日会えないと一生会えないかもしれないので、どうか会わせて欲しいと懇願する弟だったが、憲兵隊は頑として拷問中の兄に会わそうとはしなかった。

その後、再度指示を受けに来た高橋に波島は、田沢の女房と母親に罪を着せて捕まえるんだ。早く始末しないと、お前の足下に火がつくぞと脅す。

高橋が出て行った後、1人になった波島は、金庫の中にしまっていた機密書類を取り出す。

高橋の書類を盗んでいたのは彼だったのだ。

書類を持ち出した波島は、「東洋堂」と言う書店に入り、店主(倉橋宏明)が座っている横の勝手口から路地裏に抜けると、中国人張覚仁(芝田新)の屋敷に入り込む。

張に会った波島は持って来た機密書類を渡し、受け取った張は、これで本国が有利になると喜ぶ。

波島は届けるのが遅くなった訳を、盗んだ犯人を捕まえていたのだと説明し、一歩踏み外せば死の谷ですからねと苦笑する。

波島中尉はスパイだったのだ。

クラブ「上海」で歌い出したのは、田沢伍長の披露宴の夜、波島が助けた踊子紅蘭(三原葉子)だった。

歌い終わった紅蘭は、波島のテーブルに座ると波島が店に来てくれたことを喜び、あなたのことは調べたの。秀才だけど、お父さんが亡くなったので陸軍大学に行けなかったそうねなどと言いながら、あなたのことが大好きなのと言いながらダンスに誘う。

その頃、田沢伍長の妻明子と母しず(宮田文子)も逮捕され、田沢伍長の目の前で拷問を受ける。

自分だけではなく、愛する母親や妻まで拷問を受けるのに耐えきれなくなった田沢伍長はとうとう罪もないのに自白してしまう。

それを知った波島は、結婚式のときからお世話になってと恐縮する明子としずに優しく応対し、田沢伍長のことは何とか手を尽くしましょうなどと心にもない返事をする。

刑務所

波島中尉は、その日呼び集めた飯田兵長以下16名の二等兵たちに任務を言い渡そうとしていたが、その中に田沢伍長そっくりの男を見つけ狼狽する。

しかし、何とか持ち直した波島は、死刑囚の銃殺係を命じる。

死刑囚として刑場へ連れて来られた田沢伍長は、目隠しとしてかぶせられていた頭巾を獲らせ、十字架にかけられるが、俺は無実だ!必ず恨みは晴らしてやる!と叫ぶ。

その前に並ばされた弟の田沢二等兵は、兄の顔を見て仰天し、この任務の交代を願い出るが許されるはずもなかった。

銃を構えた時、耐えきれなくなった弟は気絶してしまう。

その直後、兄の田沢伍長は銃殺されるが、息を引き取る直前、決して忘れないぞ、恨みは…と絞り出すように言う。

その後、泥酔した高橋軍曹が憲兵隊本部に戻って来るが、田沢伍長の亡霊を観て怯え、波島の部屋に逃げ込んで来ると、足音が!と告げる。

波島も足音が近づいて来るのを聞いたので、ドアを開けて外を確認するが、誰の姿もなかった。

田沢の自宅の門には「国賊」などの落書きが書かれ、近所の子供らも石を投げつけるなどしていた。

そんな中、様子を見るために訪れた波島中尉は、すっかり気力を失い寝込んでしまったしずと、職を失ったという明子に、何とかしましょうと慰めて帰る。

それを見送った明子は、田沢の弟からの手紙が届いていたので読んでみると、兄の処刑に立ち会わされた。兄の最後の言葉は心に焼き付いています。これからは自分も憲兵になって事件を究明しますと書かれてあった。

波島は張に頼み、明子の就職の世話をしてくれるように頼む。

かくして、明子は、「東洋商事」と言う会社のタイピストとして働き始めるが、ある日、波島から電話があり、夕食を誘われる。

料亭で波島と差し向かいになった明子は、母は、少しの刺激を受けるだけでも発狂すると医者から言われた。今度、義弟が憲兵になって兄の無実をたらすと言っていたなどと報告する。

波島は、母のしづは入院させた方が良いのではないかと勧める。

後日、入院したしづを見舞った波島は、これは態の良い追い出しです。明子さんはあなたが自宅にいるのが面倒なんです。お母さんがいなければ、どんなに幸せになれるかなどと言っていましたなどと噓を吹き込む。

その言葉を真に受けたしづは悔しさで泣き出し、生き恥をさらすくらいなら死んだ方がマシと叫びながら、波島の目の前で窓から飛び降り自殺を遂げる。

その直後、波島はいづが死んだことを明子に電話で教える。

その事件は「スパイ憲兵の母親自殺」と新聞に載る。

明子と会った波島中尉は、もう一度結婚する気はありませんか?と正すが、明子は結婚しても、又兵隊に取られれば同じことですと言う。

では、あまり外地に出ない私なんかはどうです?と波島は言い出す。

新聞に「国賊の妻」として明子の写真が載り、東洋商事の部長は明子に首を言いつける。

それも実は、波島が張に頼んで影で操っていた策略の一環だった。

張は波島中尉に、一人の女を引き合わせる。

明子の自宅を訪れた波島は、あなたを慰めるためにごちそうを持って来たんですと言いながら上がり込むと、人間は戦争と同じで負けたらダメなんですと言いながら、明子に無理に酒を勧める。

酔いつぶれた明子に波島が手をかけようとすると、気づいた明子は抵抗するが、その時、周囲には空襲警報が鳴り響いていた。

山本五十六戦死

波島は明子に手切れ金を投げ与えるが、明子は子供が出来たことを打ち明ける。

すると、波島は誰の子です?酔えばすぐに身体を与えるような女の言うことは当てには出来ない。子供は始末した方が良いですよ。いくら産めよ増やせよの時代でもね…と嘲笑するだけだった。

その後、張に会った波島は、今日の午前0時自分は大陸の漢口に向かうと教える。

すると、張の方も、今度上海に行くことになった。向うでの連絡は暗号無線でやりましょうと打ち合わせし、妻を紹介しますと言い出す。

部屋に入ってきたのは紅蘭だったので波島は驚くが、表面上は初対面を装い挨拶を交わす。

紅蘭は庭をご案内しましょうと言い出し、張は、その間に送別会の準備をしようという。

庭に降りた紅蘭は、張の妻と知り驚いたという波島に、恋する女は秘密を持つものです。張はひどい焼き餅焼きなので気を付けて下さいと忠告するが、そんな2人の様子を、張は窓から監視していた。

その後、ささやかな送別会が始まり、波島と紅蘭は屋敷の中でダンスを踊るが、奥のテーブルで酒を飲んでいた張の黒めがね越しの目は、じっと2人に注がれていた。

サイレン音や爆発の音が響く中、波島中尉は、決して忘れないぞ、この恨み…と呟いた田沢伍長のことを思い出していた。

憲兵本部の自室に戻って来てみると、そこには泥酔した高橋軍曹が待ち構えており、並み島中尉殿とお別れをしようと思って…などと絡み付いて来る。

中尉殿は命の恩人でありますと礼を言う高橋軍曹だったが、やがて、酔った勢いもあってか、良いんですか?寝取った女を置いて行って?などと嫌みを言い出したので、波島は思わず殴りつける。

すると、逆上した高橋軍曹は軍刀を抜いて迫って来たので、もみ合ううちに波島は高橋を刺し殺してしまっていた。

廊下から足音が近づいて来たので怯えた波島は、ベッドに倒れ込んだ高橋の方を観ると、それは田沢伍長の顔に見えたりする。

波島はベッドの下から、自分用の将校行李を取り出して中のものを取り出すのだった。

○○兵団 漢口へ

船で大陸に渡る波島中尉は、夜の闇に紛れて2つの行李を海に投げ捨てる。

漢口憲兵隊本部で、隊長の小森憲兵中佐(中村彰)に呼ばれた波島中尉は、重大ニュースが入った。張覚仁と言う中国人スパイがバー「牡丹」に現れることが分かったので、君に逮捕してもらいたいと命じる。

その時、部屋に入ってきたのは、田沢と赤堀上等兵(坂根正吾)という新人憲兵だったが、小森中佐は、2人は優秀なので今後君の配下になると教える。

波島は田沢の顔を観ると狼狽するが、その様子を田沢の方はさりげなく観察していた。

その後、波島は暗号無線で張に連絡すると、身代わりを「牡丹」に寄越せ、こちらで射殺すると指示を出す。

それを受信していた張の横で、風呂に浸かった紅蘭は、私たちは違う人種だけど、一緒に働いているんでしょう?などと話しかけてくる。

そんな紅蘭に、波島を諦めたらどうだと張は忠告するが、今夜会いに行くわと紅蘭が答えたので、張は私が悪かった。今度正式に結婚をしようと詫びるが、私は秘書で結構と紅蘭は相手にしなかった。

張は、王友民という男を「牡丹」に差し向けることにする。

その夜、バー「牡丹」では、歌手(胡美芳)が歌ったり、踊子(万里昌代)が踊っていた。

そんな店に、波島が田沢と赤堀を連れてやって来る。

カウンターでウィスキーを頼んだ波島に、紅蘭が近づいて来たので、どうしてこちらに来ていることを教えてくれなかったのかと波島が聞くと、張の焼きもちよと紅蘭は答える。

その2人の様子を、二階の窓からじっと見つめているのは張だった。

紅蘭は、ダンスしながら、私と一緒に逃げてくれません?スパイを辞めるチャンスなの。あなたは自分自身を裏切っているのですと波島に頼む。

波島はこの仕事が終わるまで待っていてくれと返事をする。

その後、店に来た黒めがねの男に近づいた波島が、張覚仁だね?と確認するとそうだというので、表に車が待っていると教え、店を出るとスパイ容疑で逮捕すると言い出し手錠をかける。

その様子を観ていた田沢と赤堀もその後を追うと、張覚仁を取り囲むが、その直後、張は何者かに狙撃される。

田沢は張をかばいながら敵を捜そうとしながら応戦するが、その背後の柱の影から田沢と張を撃とうとしていたのは波島中尉だった。

しかし、駆けつけた赤堀から、味方に当たりますと声をかけられたので、やむなく銃をおさめる。

憲兵隊本部に連れて来られた黒めがねの男は、自分は張覚仁ではなく王友民というもので、日本人の看護婦が知っていますと言い出したので、取り調べをしていた波島は激怒し出す。

しかし、一緒に聞いていた田沢が、無実の人間を作ることは憲兵隊の目的に反しますと進言したので、やむなく、その陸軍病院にいるという吉川明子という看護婦を商人として呼ぶことにする。

病院に向かった田沢が会った看護婦は、想像通り兄の妻の明子だった。

再会を喜んだ田沢は、母が死んだと連絡を受けた後音信不通だったので心配していた.自分も母親の葬式にも出られないと知ったとき、つくづく軍隊が嫌になったと打ち明ける。

今日来た目的は、上官の波島中尉から命じられ、王友民という人物を観て欲しいのですと田沢が伝えると、波島という男は、今度会ったら殺してやろうと思っていた相手で。お母さんや一郎さんを殺したのはその人かもしれません。看護婦になったのも、その人を追って来るためなのですと明子は教える。

本部に同行して来た明子は、結婚式の日以来ですねなどとうそぶく波島を前に、目の前にいる中国人は王友民という人物であり、以前急患として運ばれて来たので、カルテもあるし、そこに住所も記してあると証言する。

小森中佐の同席している手前、そこまで言われれば、それ以上追求出来ないと感じた波島は、明子に帰って良いと告げるが、あなたが悪い人であると言う証人ならいつでも来ます。お母さんを自殺させたのはあなたでしょう!と言われたので顔をこわばらせる。

田沢も、王に、どうして身代わりになったのか聞きましたか?と言われても返事が出来ない波島の異変に気づいた小森中佐が訳を聞くと、気分が悪いというので、その日の取り調べは中止ということになる。

その後、波島は暗号無線で、王友民を殺せと張に命じていた。

その頃、赤堀上等兵は、この前、中尉がお前を狙っているのを観た。用心しろよと、重い将校行李を一緒に運んで来た田沢に教えていた。

その様子を、物陰からうかがっていた波島は、行李が運び込まれた部屋を開け、行李を確認しようとするが、その時、「開けてくれ〜」と言う男の声と共に、行李の蓋が開き、男の手が出て来るのだった。

田沢から、明子の話を聞いた小森中佐は、今まで何故黙っていた?と聞くが、潜在意識がありました。兄も憲兵でしたが、波島が兄に罪を着せたのではないかと…と田沢は答える。

波島の自分を見る目が尋常ではないと言う田沢の話を聞き終えた小森中佐は、行李の件も本当のことのようだな…と呟く。

何でも、波島中尉がこちらに出発した後、高橋軍曹が行方不明になったのだが、その後、漂着した将校行李が見つかった、さっき、お前たちが運んで来たあれがそうだ。どうやら波島中尉の行李ではないかと小森中佐は教える。

その波島中尉は留置していた王に逃げろと言い、部屋から出してやっていた。

王がその言葉に従い、逃げかけた時、波島は拳銃で背後から撃つ。

その音で慌てて駆けつけた田沢は、逃げ出したので撃ったという波島の言葉を聞き、倒れた王に近寄るが、瀕死の王は悔しそうに中尉に騙され…と呟く。

張の住処を知っているか?と田沢が問いつめると、王は場所を教えて息絶える。

いつの間にか波島が姿をくらましたことに気づいた小森中佐は、田沢たちに波島を探すように命じる。

波島中尉はサイドカーに乗って本部を抜け出していた。

中尉の部屋を捜査した赤堀は、隠し扉の中に隠してあった無線機を発見する。

波島がスパイだったことに気づいた小森中佐は、お前の兄を陥れたのは波島だぞと田沢に告げ、波島が向かいそうな張の在処を聞いたという田沢らに、すぐに波島を追うんだと命じる。

張の屋敷にやって来た波島を迎えたのは紅蘭だった。

2人はキスをすると、紅蘭は、うれしいわ。約束通り、一緒に逃げて下さるのねと感激し、再び口づけをかわすのだった。

そんな2人を前に、張は二階から姿を現す。

ついに行動が暴かれたという波島に、何の役にも立たない人間になったのですねと張が嘲ったので、波島は今までの金を頂こうと迫る。

しかし、張は、役に立たなくなった男には死んでもらうと言うなり、銃を発砲する。

波島は右手を撃ち抜かれ、それが人間のすることか?と叫んだので、人間?そんな言葉を知っているのか?と言いながら、とどめを刺そうとした張だったが、紅蘭が撃った銃で倒れる。

張は、お前らも逃げられないぞ。みじめな死に方をするのだ…と呟いて息絶える。

波島と紅蘭は屋敷から逃げ出そうとするが、田沢ら憲兵隊が到着して撃って来たので、紅蘭は腹を撃たれ倒れる。

波島は外に飛び出すと、田沢がその左足を撃ち後を追う。

波島は、懸命に捜査する憲兵隊の目をかいくぐって闇の中に逃げ込み、やがてたどり着いたのは墓場だった。

観ると、石の棺桶がいくつも並んでおり、その一つの蓋が開いたかと思うと、中には白骨が横たわっており、そのしゃれこうべの目の空洞から蛇がはい出して来ていた。

さらに横の棺桶の蓋は突如破裂したかのように弾け飛ぶと、その下に横たわっていたいづの死体が起き上がって波島を睨みつける。

さらに、別の棺桶の蓋が開くと、その中は水が溢れており、水浸しになった高橋軍曹の遺体がむっくり起き上がり、波島の方を睨む。

耐えきれなくなった波島は墓の中を逃げ出し、十字架に捕まるが、その十字架には田沢伍長が張り付けられていた。

驚愕して逃げ回る波島だったが、どの十字架にも田沢伍長が張り付けられており、周囲一体、田沢伍長が張り付いた十字架が浮かび始める。

思わず顔を手で覆った波島だったが、そこに駆けつけて来た憲兵が発砲し、倒れた波島に田沢が手錠をかけると、国賊が!軍法会議に処して極刑にしてやると小森中佐が告げる。

その後、明子と会った田沢は、波島の自白で、兄の無実が証明されましたと報告していた。

そして、戦争が終わったらご相談があります、2人のことで…と続けるが、明子はそれ以上はおっしゃらないでと制する。

しかし田沢は、過去のことで何かこだわっていることがあれば忘れて下さい。待ちますよ、喜んで…と言い添えるのだった。


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