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地獄の饗宴

金に群がる小悪党たちの争奪戦を描いたクライムもの。

原作ものだけに、さすがに展開は工夫が凝らされ、悪党同士の駆け引きの面白さが描かれている。

ただ如何せん、三橋達也は小悪党のぽん引きには見えないし、団令子も怪しげな美女にはちょっと見えない辺りが、若干気にならないではない。

それ以外の脇役陣は、適材適所と言った感じでなかなかハマっている。

チョンボ役の砂塚秀夫、伊丹貫三役の田崎潤とその妻役の中北千枝子、殺し屋トリオを演じている佐藤慶、城所英夫、上田忠好などは印象に残るし、清楚な未亡人を演じている池内淳子も悪くない。

口が不自由な殺し屋と言うちょっと風変わりなキャラクターを演じている城所英夫は、どこかで見覚えがあると思っていたが、往年の人気ドラマ「七人の刑事」の1人だった人である。

天津敏の使い方もなかなか巧く、確かにこの当時の彼は、悪人というよりは生真面目な刑事に見えるのだ。

ラストのひねりもなかなかで、ピカレスクものとしても良くできた作品だと思うが、派手なアクションなどはないので、地味と言えば地味かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、東京映画、 中村真一郎「黒い終点」原作、池田一朗 、 小川英脚色、岡本喜八監督作品。

白いバッグから何かを掏ろうとする手。

その手から一本のフイルムが階段に転がり落ちたので、足の裏で一瞬隠した男がそれを拾い上げる。

外に出たその男戸部修(三橋達也)は、メーデーのデモ隊が通過しているのに遭遇する。

タイトル

戸部は、駐車中の車のワイパーにビラを挟んでいたチョンボこと野田(砂塚秀夫)と合流し、「電話喫茶 ヘル・ルー」に戻って来る。

店の奥で、受付係の女の子と話していると、店主が文句を言う。

その時、電話がかかって来て「国際育英会」かい?と言うので、ビラの効果があったと知った戸部と野田は、店内のテーブルに設置してある電話を取り、相手の車のナンバーを聞くと、金髪と言うのは本物なんだろうね?と疑っている口ぶりの相手に大丈夫ですと保証すると、コマ劇場前で待っていてくれと指定をする。

コマ劇場前に停まっていたその車に乗り込んだ戸部は、当惑する客(若宮忠三郎)相手に、エロ写真がいかがなどと見せながら道を誘導し、金髪美女のエヴァ(ピーチェス・ブラウン)が待っているホテルの一室に案内する。

その後、戸部は、自宅近くにある渋谷の喫茶店でデミタスコーヒーとドーナツというおやつを食べていた。

そこには、ママ(水の也清美)と、夫を亡くして働いている加村和子(池内淳子)がいたが、もちろん、戸部の目当ては同じアパートに住む和子の方だった。

そこに、和子の一人息子のサブちゃんこと三郎(小串丈夫)を連れ管理人のおばさんがやって来る。

どうやら母親の帰りを待ちくたびれてぐずっていたらしい。

ママは、奥の部屋でジュースでも飲みなさいと和子に勧め、戸部もジュースを飲み終わったら一緒に帰ろう。又小鳥の鳴きまねを教えてあげると言いながらサブちゃんの頭をなでる。

おばさんがアパートに戻り、和子と三郎が奥の部屋に消えると、残ったママは、戸部さん、あの人好きね?と笑いかけて来たので、戸部は、俺はああ言うタイプに弱いんだと告白する。

ママは、和子ちゃんも寂しいらしいので、あの人になら、この店の権利を30万で譲ってやっていいとも思っているのだと教えるが、単なるぽん引きに過ぎない戸部にそんなまとまった金があるはずもなかった。

その後、サブちゃんを肩車しながらアパートへ帰る戸部は、得意の鳥の鳴きまねを披露してやっていた。

サブちゃんを送り届けた後、自室に戻って来た戸部は、自分用の暗室に入ると、きょう新橋駅で拾ったフイルムを現像してみる。

やがて、浮き出して来た写真に写った人物を観た戸部は、伊丹曹長!と驚きの声をあげる。

その伊丹曹長とは、戸部が戦時中、中国で現地の女性秀麗(佐野和子)と密会していた時、いきなり上官として暴行されただけではなく、目の前で秀麗を乱暴された憎むべき相手だった。

戸部はその際、倒れた弾みで木の切り株で手のひらを貫かれ、いまだにその時の傷が残っているほどだった。

焼き付けた写真を詳しく観て行くうちに、伊丹が来ている服の裏地に「GINZA HATTORI」と言う店名を見つけたので、早速その店に出向いてみる。

応対した店主(白木茂)に、さりげなく伊丹さんから紹介されたと切り出した戸部だったが、相手が今ひとつ思い出せない風だったので、持って来た写真を見せる。

すると店員はすぐに、三月ほど前にスプリングクートを注文に来たと言うお客様だと思い出し、その伊丹が勤めている「東光住宅」と言う会社を教えてくれる。

その会社に向かうと、何だか会社の中が騒々しい。

何やら苦情があるらしき客たちが何かを聞きに来ているようだった。

受付(野上優子)で、伊丹社長に会いたいと戸部が申し出ると、相手は女性社長ですか?と言うではないか?

話がどうも妙なので、戸部が戸惑っていると、受付嬢は、ひょっとして前の社長さんですか?と聞いて来て、前社長なら先日、九州の列車事故で亡くなりましたと言う。

その時、殺到していた客たちの相手として出て来た美人を見かけたので、あれは誰かね?と聞くと、受付嬢は、秘書の日下さんと教えてくれる。

その日下冴子(団令子)は、押し掛けた客たちに専務がお会いになるそうですと伝え、エレベーターに案内していたので、近づいた戸部は、さりげなく伊丹の写真をちらつかせる。

すると、冴子は、財布も一緒に掏ったんじゃないの?と聞いて来たので、戸部は、拾ったんですよ新橋駅でと答える。

人の写真を勝手に現像するなんてと睨みつけて来た冴子に、現像しないと持ち主が分かりませんからねととぼけた戸部は、6時に「サエラ」で待ってますと一方的に告げて帰る。

その後、「サエラ」で新聞を読み、伊丹が列車事故で死んだことを確認していた戸部だったが、時間になっても冴子が来ないことを知ると、外に出て小鳥屋を覗きに行く。

そんな戸部を公衆電話ボックスの中に隠れていた冴子が尾行し始める。

小鳥屋の店員(森槙子)と会話をしていた戸部だったが、冴子が近くでこちらを監視していることに気づくと、さりげなく店を出て薄暗くなった公園に誘い込む。

目標を見失い戸惑っていた冴子の腕を背後からつかんだ戸部は抱き寄せてキスをする。

冴子は失礼ねと憤慨するが、戸部は送っていただいたお礼さととぼける。

その後、ダンスホールで踊ることになった2人だったが、冴子は執拗にフィルムを返してと迫る。

君も列車に乗っていたのか?と戸部が聞くと、自分は海の中に紛れ込んで助かった。社長は上着と帽子だけが見つかったのという。

社長には、弟の学資を出してもらっていた。今、社長の弟も奥さんも何もしないと冴子は憤慨しているようだった。

伊丹さんとはどう言う関係?とさらに戸部が聞くと、さりげなく冴子の手が自分の上着にポケットに伸びて来たので、戸部はフィルムを守りながら、俺は悪党だよ。ただで返すのは主義に反すると笑う。

その後、戸部はホテルで冴子を抱き、悔しそうな冴子から求められるまま、ネガと焼き付けた写真を渡す。

冴子は、戸部の顔につばを吐きかけて帰る。

タクシーで帰る途中、受け取った写真を確認した冴子は、それがエロ写真であって真っ赤な偽物であることに気づく。

しかし、一緒に、「国際育英会」と書かれたチラシが1枚紛れていたので、「電話喫茶 ヘル・ルー」の存在を知るのだった。

翌日、車の運転席でディズニーのコミッック本を読んでいたポパイ(佐藤慶)の横に、国際育英会宛の電話を受けた戸部がいつものように乗り込んで来ると、もう一人の男が戸部に銃を突きつけて来て一緒に前の席に乗り込んで来る。

車を発射させたポパイが、どう言うことだと話しかけているもう一人の男公卿(城所英夫)は口がきけないが、殺しは飯より好きなのだのだと教え、写真さえ返せば良いと迫って来る。

しかし信号待ちをした時、すぐ前に停まったのはパトカーだと気づいた戸部は、わざとアクセルを踏み、パトカーのバンパーに車をぶつける。

当然、パトカーから警官が降りて来て、ポパイの免許証提示を求めたので、すました顔で自分も一緒に降りた戸部は、こいつちょっと飲んでいるらしいので、霊の風船で検査してみて下さいと警官に告げさっさとその場を離れる。

警官から飲酒計測用の風船を膨らまされたポパイは、戸部にまんまと逃げられた悔しさから膨らませ過ぎて破裂させてしまう。

アパートに戻った戸部は、何故、冴子が執拗に写真を取り戻したがっているのか分からず、もう一度、写っている写真を1枚ずつ再確認して行くことにする。

すると、冴子と伊丹が一緒にテーブルに座っている写真に、伊丹が読んでいたらしき新聞が写っており、それを拡大してみると、何と「鹿児島本線で列車転覆」と言う記事が載っているではないか!

その新聞を伊丹が読んでいるということは、奴は事故で死んでおらず、まだ行きていると言うことだった。

戸部は写真の背後に写っている工場を良く観察し、写真を写した場所は晴海病院だと突き止める。

野田を連れて病院へやって来た戸部は、俺が中に入って10分経っても戻って来なかったら、この火災報知器を鳴らせと野田に頼んで、病院に入って行く。

その時病院から出て来た中華蕎麦屋の出前(倉橋仙吉)を捕まえ、この中に、ひどく餃子が好きな患者はいないかと戸部は聞く。

案の定、冴子と一緒にいる病室で、餃子を食べかけていた伊丹を探し当てた戸部は、戸部一等兵入ります!と声をかけ、唖然としている伊丹の部屋の中に入り込むと、お見舞いです、曹長殿!と愉快そうに挨拶をする。

伊丹は忌々しそうに、いくら欲しいんだ?と聞いて来るが、戸部が、半分いただきましょう。持ち逃げした1億5000万の半分と戸部は答えるが、使い込んだのは俺じゃなくて、女房と重役たちだ!と言い訳するので、戸部一等兵帰りますと言い出す。

すると、伊丹は、今手元に50万くらいならあると言う。

それを受け取った戸部だったが、7450万、明日もらいますというので、一緒にいた冴子は、東光住宅は、奥さんの親族たちが勝手にやっているのと口を挟んで来る。

それでも、戸部は1億と譲らず、多摩アルプス遊園地に持って来いと言い残して帰る。

伊丹は銃を取り出して撃とうとするが、それを冴子が止める。

10分が過ぎたので、火災報知器を石で割ろうとしていた野田の腕を、戻って来た戸部が止め、お前の仕事は終わったと告げる。

伊丹はどこかに電話をし、奴がここに来た。場所を変えると伝えると、冴子の方を疑わしそうな目つきで観るので、冴子は私じゃありません!と否定する。

しかし、元々はお前のせいだ。お前が変な趣味を出してあんな写真を撮るからだと叱り、殴りつける。

その後、自動車で移動した伊丹と冴子だったが、タクシーに乗って尾行した戸部は、しっかり新しい住まいを確認すると、渋谷の喫茶店に引き返させるが、運転手は、ここからだと電車の方が安いですよなどとぼやく。

しかし、喫茶店にその日、和子はいなかった。

戸部はママに、40万手渡すと、30万は権利金、残りの10万は改装費と言う。

和ちゃんも買おうというの?とママが冗談めかして聞くと、和ちゃんは金で買えないから好きなんだと戸部は言い、その代わり、銀行波の利子は取るよと言い、俺にも運が向いて来た。いくらでも金を出すと言う人を見つけたとほくそ笑むのだった。

あんたは何をやるつもり?と聞かれた戸部は、カメラ屋かな?などと、ドーナツを自分で取り出してかじりながら夢を語ると、明日坊主を遊園地に連れて行ってやろうと言い出し、コーヒーでママと乾杯をする。

翌日、多摩アルプス遊園地にサブちゃんと野田を連れてやって来た戸部は、冴子が周囲を気にしながらベンチに腰掛けるタイミングを見計らっていた。

冴子は、いきなり目の前に現れたサブちゃんの手を引いた野田が、日下さんですか?と確認し、これを届けるよう頼まれたと言いながら紙切れを渡したので中味を確かめると、場所を変える。3時に国立体育館前。書かれてあった。

気づかれたと察して冴子に近づいて来た公卿も、その文を読み、ポパイと一緒に車で先回りする。

冴子が体育館前で待っていると、近づいて来た戸部が、その手からバッグを奪い取る。

その時、一台の車が横付けし、中から降りて来た男の1人が戸川くんだね?と聞いて来たので、戸部ですが…と訂正すると、いきなり相手は戸部に手錠をかけ、冴子にも参考人として一緒に来てくれというので、仕方なく冴子と戸部はその男たちの車に乗って出発する。

その様子を近くから監視していたポパイたちは、警察が乗り出して来たのでヤバいと感じたのか、そのまま走り去ってしまう。

やがて、武蔵と呼ばれたさっきの男、本名宮本(天津敏)は笑いながら、戸部の腕から手錠を外す。

戸部はバッグの中味を確認し、400万しか出さなかった。残りは明日の2時、今の体育館前だ。俺に逆らった方が得なのか、2人でよく考えろと冴子に言い、車から降ろすと車は走り去る。

その後、「ヘル・ルー」に先にサブちゃんと一緒に帰した野田に電話を入れた戸部は、さっき、メガネの男がつけていたようだけど大丈夫か?と確認する。

サブちゃんをアパートへ送り届けた野田は、店内を見回し、そんなへまはしねえよと答えるが、遊園地からずっとつけて来た観音(上田忠好)がメガネを外し、しっかり野田の側の席に座り、笑っているのに気づかなかった。

戸部は、冴子が笑いながら側に立っていたので呆れる。

私、付いて行くんだもんと無邪気そうに言うので、俺がこれから行くのは、東光住宅なんだがな…と戸部は教える。

東光住宅の社長になっていた伊丹の妻の峯子(中北千枝子)に会った戸部は、伊丹さんに頼まれて来たと伝えるが、峯子は遺言状なんてあったの?と、その場にいた重役に聞く。重役はそんなものがあるはずがないと興奮する。

その様子を観ていた戸部は、遺言状があると大変なんですか?ととぼけ、伊丹さんは怒っている。あんたらが横領しているってと言うと、伊丹が?僭越な…。伊丹の霊ならいつでも出せるなどと貫峯子が言い出したので、日下と伊丹が一緒に写った写真を見せながら、何だったら、警察に知らせましょうか?と脅してみる。

すると、社長の弟らしき男が、このユー霊に会わせてくれと言い出す。

貫峯子は、光明様を信じなさい!その悪魔を私が滅ぼしましょうなどとうさん臭いことを言い始める。

戸部が、2000万ばかり欲しいんですが?と切り出すと、あんたに悪魔が取り憑いたと貫峯子はわめき出す。

明日の正午と言い残して、戸部は半狂乱になった社長らを後にして部屋を出ると、そこに冴子が待っていた。

光明様はいかがでし?と聞いて来たので、ご機嫌斜めでしたと歩きながら答えた戸部は、又ホテルに冴子を誘い、抱くのだった。

冴子は、自分も伊丹は死んだとばかり思い込んでいたが、香港時代の友達から教えられたのだという。

伊丹と自分とは、明日マカオに飛ぶことになっているが、自分は行きたくない。でもお金は欲しいかったので、しつこく追いかけていたのだと打ち明ける。

そして伊丹は殺さなければダメ。お願い!社長を殺して!1億あれば何でも出来ると戸部にすがりついて来るが、戸部はお門違いだ。俺は殺されるのも殺すのも嫌いだと協力を拒否する。

外には鯉のぼりが泳いでいた。

小鳥屋で、サブちゃんのために小鳥を買ってやった戸部は、その後、サブちゃんを連れて喫茶店にやって来る。

サブちゃんは、鳥籠を前に鳴きまねを使用とするが、巧く出来なかったので、和子らが笑うと、傷ついてしまい、本当に泣き出してしまう。

ママと和子は、今日は6時に早閉めしてお祝いをやりましょうと戸部に提案する。

戸部は、財閥の方の話は今日決まるんだと張り切っていた。

それを聞いた和子は、その財閥さんも、私の財閥さんみたいに良い人でありますようにと笑いながら祈る。

そんな和子に写真のネガを預けた戸部は、一足先にサブちゃんを連れてアパートへ帰ることにする。

サブを部屋に送り届け、自分の部屋に戻って来た戸部は、部屋の中が物色されていることに気づく。

まだ人の気配がするので緊張した戸部だったが、カーテンの後ろから出て来たのは冴子だった。

冴子は荒らしたのは私じゃないのよ。昨日の子供連れをつけたんだってと教えると、でもここに金を置いとくなんて…、やっと私の方が先手を取れたと戸部のうかつさを笑うと、まだあの人を殺したくない?と聞いて来る。

それでも戸部は、伊丹に言え、約束通り、金を持って来いってと負け惜しみとも取れる言葉を吐く。

相手は、あの野田とか言う男と交換にフィルムを取り戻すつもりよ。私たちお仲間ねと喜ぶが、戸部は、あんたと組むほどボケちゃいない。チョンボなんてどうでも良い。葬儀料1000万、400万の利子も加えて6200万持って来てもらおうと冴子に告げる。

その頃、チョンボこと野田は、ポパイと公卿に捕まり、とあるだだっ広い廃棄された建物の中央付近で監視されていた。

公卿は、ずっとセメントの欠片でナイフを研いでいた。

怯えた野田は逃げ出そうとするが、公卿が投げたナイフが足に刺さる。

その様子を面白そうに眺めていたポパイは、逃げなよ。男なら一丁やってみな!と野田をからかう。

戸部は、東宝住宅の新社長伊丹峯子に電話をし、伊丹に会わせる。3時に両国のパールホテルに来い。2000万持って来ないとご対面は出来ないぜと告げる。

冴子とマカオ行きの準備を終えた伊丹は、2人とも消えてもらう。金の隠し場所を教えてやろう。お前がトランクをかき回したことも知っている。両国駅の一時預かりに置いてあり、預かり証はこの中に入れてあると、自分の首から下げているお守り袋を冴子に見せびらかす。

そして、どうした冴子?俺を殺しでもせんと取れんぞと嘲笑すると、冴子をベッドに押し倒すのだった。

その時、部屋に侵入して来たのが戸部で、金の在処を吐け!と言いながら伊丹を殴りつけると、止してよ!とそれを止めた冴子は、私が知っていますといいながら、伊丹のお守り袋を取り上げる。

トランクから拳銃を取り出した戸部がそれを冴子に渡すと、冴子は伊丹を狙わずに戸部の方に銃口を向ける。

緊張した様子の戸部に、撃つと思う?と冴子が聞いて来たので、知らないね、女の気持ちを見抜くのは苦手なんだと答える。

その頃、観音は、千駄ヶ谷駅から国際育英会に電話をする。

「ヘル・ルー」には、宮本と朴(部昭夫)が電話番をしていたが、電話に出た途端、目の前に刑事が現れ、売春防止法の現行犯で逮捕されてしまう。

その観音が到着するのを待っていたポパイたちの元に、冴子と戸部が乗った車がやって来る。

戸部は冴子に銃を突きつけながら車を降りると、野田と交換だと言う。

ポパイは諦め、銃を捨てると、野田を連れ戸部に近づいて来る。

その途中、野田がセメントの欠片に躓いてしまったので、次の瞬間、戸部とポパイは殴り合いになる。

ポパイは野田を蹴り上げ、セメントの欠片を拾い上げ、戸部を殴ろうと持ち上げるが、そのポパイに銃をp向けた冴子がお止めなさいと止める。

野田を車に乗せた後、戸部は持っていた銃を遠くに投げ捨てるが、その時、様子をうかがっていた公卿が運転席に乗り込んだ戸部目がけてナイフを投げて来る。

しかし、ナイフは、マスコット人形を貫いただけだった。

パールホテルにやって来た伊丹峯子は、精神病院の医者だと言う2人に、ベッドの上で縛られていた伊丹を確保させ、あなたを精神病院に入れると宣言する。

あなたはキ○ガイです。貫三郎はとっくに死んでいますと冷酷に言う峯子に、伊丹貫三郎は、マカオに行かせてくれ!受け取りは冴子が!と叫び許しを請うが、そこにやって来たのが観音で、やっちまいますか?と銃を取り出そうとしながら貫三郎に聞く。

しかし、峯子は、伊丹は全部お金を取られて無一文になったのですと教え、偉えことになりやがったな…と呆然とする観音に、お金は私が出します。日下と冴子は悪魔の中の悪魔ですと叫ぶのだった。

車でパールホテルに向かっていた戸部に、助手席に乗っていた冴子は、今や伊丹は鼻血もでないのよ。1億の鍵を握っているのは私。これが1億のキーよと言いながら、運転していた戸部にお守り袋から取り出した受け取りを見せる。

そして、私と一緒に逃げて下さるだけで良いの。一番大切な理由は…、あなたが好きだからと告白する。

しかし、戸部は、伊丹にも同じことを言ったのかね?と笑い、俺はあんたに惚れてない。でも金は欲しい。あんたと一緒に逃げた後、裏切るかもしれないぜというと、それでも良いの。私は油断しないから…と冴子は答える。

考えた末、戸部は冴子と組むことにする。

両国駅には、先回りしていた観音が張っていた。

一時預かりの駅員(佐藤乙四郎)に預かり証を渡すと、駅員は随分古いものですねと言いながら、棚の品物を探し出す。

そんな両国駅に、ポパイと公卿も車で駆けつけて来る。

ようやく埃をかぶったバッグを見つけ出した駅員が冴子に渡すと、案外軽いのねと持ち上げた冴子だったが、駅員がバッグに付いた札を取り外したので、ようやく自分のものになる。

しかし、振り向いて駅を出ようとした冴子と戸部の前には、観音、ポパイ、公卿らが取り囲んでいた。

時刻はちょうど6時だった。

戸部は、スポンサーが変わったのか?と3人に聞く。

車に乗せられた戸部と冴子は、一緒に乗って来ていた伊丹峯子から、フィルムはどこにあるのです?私には光明様が付いていますと聞かれる。

渋谷の喫茶店では、既にお祝いのケーキが用意されていたが、先に来るように言われていた野田が、兄貴は少しおくれると行ってたがもうすぐ来るはずだと和子らに伝えていたので、みんなはお祝いパーティを伸ばしていた。

その時、店の前を通り過ぎた車の中に戸部が乗っていたように、和子には思えた。

そろそろバイバイらしいと戸部が冴子に目配せをすると、冴子は髪につけていた簪型のアクセサリーをそっと抜き取り、いきなり運転してた伊丹峯子の首筋に突き刺し、相手が持っていたバッグを奪い取る。

驚いた峯子が車のスピードを落とすと、戸部が外に飛び出すが、公卿らに脇腹を撃たれる。

それでも戸部は、水位の浅い川の中を逃げ、何とか土手に這い上がると、追って来たポパイや公卿たちをまき、暗くなった公園の方へ逃げ込む。

しかし、そこに近づいて来たのは冴子だった。

こっちに来る奴があるか。別の道に行けって言ったろ?と言う戸部だったが、私しつこいって言ったでしょうと冴子は笑い、出血が多く苦しんでいる戸部に病院へ行こうという。

しかし戸部は、ハジキの弾が入っているんだまともな病院には行けないと断る。

店に行けば仲間がいるはずだからと言うので、「電話喫茶 ヘル・バー」へ向かうが、何故か営業中のはずが電気が消えており、パトロール警官の姿も見えたので、用心して裏口から中に入る。

店の中には誰もいなかったので、戸部はイスに横たわりながら、手入れだ。まずい時に手入れがあったんだと気づく。

冴子はまともな医者を捜すのよ。50万も出せば、口をつぐんでいる医者なんていくらでもいるわと言いながら、玄関ドアから外の様子をうかがうと、すぐ側に、伊丹峯子やポパイが乗った車が停まっていた。

それを冴子から聞いた戸部は、裏口はどうだというので、もう一度確認に行くと誰も見果ていなかったので、冴子はそう伝える。

そんな冴子に戸部は、もう行けよ。俺は嫌だ。もう動くのが億劫なんだ。金を半分置いておくのを忘れるな!と言うが、その時、簪を手にした冴子が、戸部に向かって手を振り下ろす。

しかし、冴子が突き刺したのは、戸部が横になっていたイスの方で、イスのカバー布を切り裂くと、その布を戸部の腹を巻いて応急処置を始める。

何観てるの?私に包帯巻けるのが不思議なの?そんなに簡単に契約破棄できない。1人じゃ怖いじゃないと冴子は言う。

その時、玄関に近づいた警官が懐中電灯を店の中に向けて来たので、2人は息を潜める。

車に乗っていたポパイたちも、店の前を動こうとしない警官の姿にいら立っていた。

その様子を観察した冴子が伝えると、連中、何を待っているんだろう?と戸部も不思議がる。

渋谷の喫茶店では、なかなかやって来ない戸部を全員が心配していた。

その時、駕篭の小鳥が鳴いたので、居眠りしていたサブちゃんが目を覚まし、おじちゃんが来た!と喜ぶが、鳥籠に気づくと、何だ本物かとがっかりする。

カナリヤだ!カナリヤが鳴いてやがらぁと言いながら、冴子の膝の上で目覚めた戸部が呟く。

夢を見ていたらしい。

外は朝になっていた。

剛情っ張りねと言う冴子に、そっちほどではないがねと戸部も言い返す。

本当は夜中に逃げ出そうと思ったのと打ち明けた冴子は、やっぱり私たち、似た者同士ね。金が手に入ったら何に使うの?と聞く。

戸部は、考えが変わった。小鳥屋さ。俺、小鳥慣らすの巧いんだと言いながら、得意の鳴きまねを始める。

その時、店の玄関ドアから誰からは行って来て近づいて来る。

戸部は、邪魔しないでくれよ。もう少しでレパートリーが終わるんだと言いながら鳴きまねを続ける。

鳴きまねを終えた戸部の前に立っていたのは、コマ劇場前から案内し、金髪のエヴァに紹介したあの中年男だった。

男は戸部に向かい、売春防止法違反で逮捕すると告げる。

彼は刑事だったのだ。

あんたは?と冴子の存在に気づいた刑事に、戸部は看護婦だと答えたので、はじめて戸部が重傷であることに気づいた刑事は、あんたも参考人として同行してくれと冴子に声をかけると、警官を呼び込んで戸部を支えながら車に運ぼうとする。

それに気づいたポパイと公卿らは、最初警官の姿に躊躇していたが、運ばれて行く戸部と冴子が車に乗せられそうになった時、一斉に発砲して来る。

撃たれた刑事たちは応戦しながら、逃走した相手の車のナンバーを伝え、緊急手配を警官に指示する。

路上には、撃たれた冴子と戸部が並んで倒れていた。

観ろよ、強情張った罰だよと戸部が語りかけると、仰向けに倒れた冴子も私ってバカねと応ずる。

似た者同士だよ…と言いながら、手を伸ばし、冴子の手を握った戸部は、ばっきゃろう!と呟いて既に息が途絶えた冴子の唇にキスをする。

ああ…、旨えコーヒーが飲みてえねな…そう呟いた戸部の方もすでに息が止まっていた。

2人の遺体のすぐ側には、「新橋病院すぐそこ」と書かれた大きな看板がかかっていた。