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ええじゃないか

幕末に発生したと言われる「ええじゃないか」騒動を素材とし、アメリカから戻って来た貧しい農民源次とそのだらしない妻のイネを中心に、江戸東両国の見世物小屋に集まったヤクザや侍や商人たちが織りなす猥雑な群像劇になっている。

今見直してみても大変な大作なのだが、確か公開当時は、興行的にも評価的にも今ひとつだったような気がする。

物語の中核となる、源次、イネ、金蔵、古川などは皆クセのあるキャラクターとして面白く描かれているし、ミュージシャンの泉谷しげる、政治家の河野洋平など、異色のキャスティングも面白く、冒頭から当時の通俗見せ物を見せて行くつかみや、世の中を煽動させようとする薩摩藩の思惑に、民衆の日頃の世の中に対する不安や不満が爆発して行く過程の描写も悪くないだけに、なぜ作品としてブレイクしなかったか不思議な気もする。

あれこれ様子を詰め込み過ぎて、やや散漫な印象になったということかも知れないし、大衆好みのアクションシーンやサスペンス要素が少ないということもあったかもしれない。

桃井かおり独特の滑舌の悪さのため、何を言っているのか分からない部分も多く、若干イライラする所がないではないが、当時の桃井かおりと言うのは、そう言う所も含めて、いかにもべたべたと男に甘えかかり、だらしなさそうに見える女優ということで評価する監督がいたということだろう。

火野正平、草刈正雄、丹古母鬼馬二辺りの無頼はなかなか印象に残るキャラクターになっている。

一方、三木のり平や小沢昭一らベテラン勢は、ややおとなし過ぎて面白みがない。

金蔵役は確かに重要でかつ難しい役所だと思うが、演じている露口茂はまじめに演じているが、正直な所微妙な感じがする。

巧いとか下手とかではなく、もう一つ強烈さがなく淡白な印象なのだ。

少なくとも、女郎たちを束ねているようなエネルギーの固まりのようなギラギラ感は感じられない。

この金蔵の存在感が弱いので、その周辺に集まっている女たちや無頼連中の存在感も全体的に散漫な印象になっているのではないか?

最初は主人公のようだった泉谷しげるは後半になるにつれ印象が薄れて行き、桃井かおりも今ひとつ主役になり切っている感がない。

緒形拳や草刈正雄も、かっこいい部分もあるが、やはりこの作品においては脇役以上の存在ではないだろう。

結局、主役不在に感じてしまう所が、この作品の弱点と言えば弱点なのかもしれない。

とは言え、作品として特に出来が悪いということはなく、むしろ秀作と言う方が正しいのかもしれない。

しかし、80年代、この種の作家大作が興行的に受けなくなって来たということは、日本映画の流れの中では重要な意味があるような気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1981年、今村プロ+松竹、宮本研脚本、今村昌平原作+脚本+監督作品。

肌も露な女相撲に、蛇女、ろくろっ首、眼力男…、怪奇な見せ物が行われていた。

慶応2年夏 江戸 東両国

孫七(火野正平)が見世物小屋の呼び込みに最近売上が落ちているんだって?と声をかけると、川向こうの西両国にも最近同じろくろっ首をやりはじめたんで、売上がぱっとしないという言う。

その横では、三次(樋浦勉)が無宿者を捕まえ、御上が募集している歩兵隊にならないかと脅しながら強引に説得し、歩兵隊から人数集めの金を約束させていた。

まだ幼顔の娘お松(田中裕子)ら2人連れてそこに近づいて来たゴン(丹古母鬼馬二)は、儲けた金を三次に見せるが、三次は、俺と卯之吉とで三つに分けようと言い出すが、いつの間にか背後に近寄っていた孫七が、俺も入れて四つに分けようと声をかける。

そんな所に、西洋の珍しいラクダなる動物が連れて来られたので、野次馬たちがみんな観に行く。

タイトル

横浜では、アメリカの船から小舟が浜辺に近づき、そこで待っていた役人たちの前に、1人の日本人が降りて来てる。

通訳が、立ち会っていた神奈川奉行所吟味方与力の佐郷屋を紹介すると、アメリカ人は、この男はガブリエル源次(泉谷しげる)と言う米国市民であり、彼はいつでも米国公使館の保護を受けられるので、扱いには注意していただきたいと申し出る。

砂浜に寝そべり、懐かしそうに砂を触っていた源次に、アメリカ人が握手をして船に戻ると、役人はすぐさま源次を引っ立て、牢にぶち込んでしまう。

ようやく恋いこがれた祖国に到着したのに、いきなり理不尽な扱いをされた源次は怒るが、その時、牢の奥にもう1人男が入れられていることに気づく。

彼はイトマン(草刈正雄)と名乗り、国は琉球だという。

源次は、上州川西村の源次と名乗り、糸を横浜に送る仕事をしていたが、海に憧れ船に乗った所で嵐に遭い難破、アメリカの船に助けられて6年振りに帰って来たと自己紹介する。

翌朝、朝飯が配られるが、牢から出れないことに源次はいら立っていた。

その時、牢の裏の板壁が外れるようになっていることに気づいた源次は、お前がやったのか?とイトマンに聞くが知らないという。

結局2人は牢を抜け出し、源次の生まれ故郷である川西村に向かう。

ようやく村にたどり着いた源次は、自分の実家である小さな小屋の横にある妻の実家に入るが中には誰もいない。

近くの山の中で働いていた義理弟の千松(矢吹二朗)と義理の父親である虎松(伴淳三郎)を見つけたので声をかけると、千松は兄が生きていたことに驚いたようだった。

家に戻った虎松は、おっ母は3日寝込んだらすぐに仏様になったという。

女房のイネのことを聞くと、それまで黙っていた千松が、イネは売った!食えねえから売った…と言い出す。

この辺の貧乏人は、みんな娘や女房を売ったんだというので、源次が俺の女房だぞと怒ると、亭主面するな、このヤクザやろう!と千松は逆ギレする。

虎松は素直に謝り、2年お前を待っていたが、音沙汰が何もないので、うちに引き取った。イネは自分で出て行った。その夜は一晩中泣いていたが、あれから3年経ったがイネは帰って来ない。お前は江戸に行ってイネを探してくれ。千住の「角屋」と言う宿に行けば分かるはずだ。熊の胆があるのでこれを持って行って、旅費の足しにしてくれと頭を下げる。

両国橋にイトマンと一緒にやって来た源次は男にぶつかられる。

その後、露天の立ち食い飯屋で飯を食いながら、ゴンなる人物を店主に聞いた源次だったが、気がつくと懐の巾着袋がないことに気づく。

すると、側にいた浪人古川条理(緒形拳)が、イトマンと源次の飯代も払ってくれた上に、お甲か金蔵に聞いてみな…と教えてくれる。

その直後、飯屋の周囲に又吉(小林稔侍)ら岡っ引きが周囲に目配せしながら集まる。

源次は、ゴンからお松を預かったお甲(倍賞美津子)に会い、千住から来たイネという女を知らないかと聞くが、お甲は古川が自分を教えたと知ると露骨に迷惑がる。

幕府陸軍荒川調練場

金蔵(露口茂)が、鉄砲隊を30名献上しました。長州御征伐の時には新品の鉄砲を取り揃えますなどと役人に媚を売っていた。

そこにイトマンを連れやって来た源次は、訓練中の歩兵の中に先ほど巾着を掏ったスリを発見、訓練場の中に飛び込んで行くと、相手を川の中まで追いつめ、巾着袋を取り戻す。

そんな源次がイネを探していると知った金蔵は、一緒に両国橋まで戻って来ながら、イネには借金があるんだと教える。

イネ(桃井かおり)は、見世物小屋の中で太夫と呼ばれ「それ吹け(好色見世物)」をやっていた。

客席の間からイネを発見した源次も、その源次を発見したイネの方も驚き、2人は、騒ぎ出した客たちも無視して小屋の外に出ると抱き合うのだった。

興行主(大村千吉?)が困るよと注意しに来てもイネは相手にしなかった。

そんな2人の再会の様子を、ヤモメの六(犬塚弘)が興味深そうに眺めていた。

その夜、イネの住まいである長屋で2人は差し向かいになっていたが、イネは源次の足が悪そうなのでどうしたのか?と聞く。

源次は船が難破した時、足を折って、そのまま曲がってしまったと言う。

イネは、源次も驚くほど酒を飲むようになっており、源次に無理矢理抱きついて来たりする。

そんなイネを訪ねて男が来たりするが、イネは追い返す。

三田 薩摩藩邸

屋敷の表から駕篭で帰って行く金蔵のことを見送っていた薩摩藩士たちが、あれは、東両国の見世物小屋、深川の女郎屋、本所の乞食の元締めなどをやっている男だが、役人や札刺しやおいどんたちにも顔が利く奴で、油断ならんと噂し合う。

その会話を、屋根の上に忍んでいたイトマンがじっと聞いていた。

金蔵は風呂の中で桝屋富衛門(三木のり平)の背中を洗いながら、メリケンの事情に詳しいのを見つけた。使えそうですと報告する。

お松はどうした?と聞いて来た桝屋に、後1月御待ちくださいと言い含める。

一通り男同士の会話が終わると、裸の女を3人浴室に呼び入れ、一緒に湯船に入るのだった。

翌朝、イネの住む長屋の隣に住むヤモメの六が、夕べは隣が激しくて眠れなかったと、井戸の所で水を汲んでいた綾若(かわいのどか)に打ち明ける。

その直後、源次が起きて来て外の厠へと向かう。

その日、源次は、イネが出ている「それ吹け小屋」の外で日がな待っていた。

その前の隅田川では、イトマンと古川が、泥鰌を獲っていた。

そんな東両国に、今度はゾウが見せ物として連れて来られる。

余りの野次馬に、ゾウが興奮すると付き添いのインド人は困惑していたが、そのゾウの前の人を整理してやった源次に、インド人は感謝する。

そんな源次に金蔵が、今夜うちに来てくれと伝える。

その夜、泥酔したイネは、ゾウが入れられている小屋の中に入り込もうとして源次に止められる。

イネは地面に寝っころがり夜空を見上げると、やっぱり天が動いているじゃないか。ゲンちゃんは地面の方が動いている何て言ってたけど…などと言い出す。

調布 米国公使館

源次は、イネと2人でアメリカに渡れるよう、渡航許可賞の申請に来ていた。

公使は、2人で50ドルくらいでしょうと費用を教える。

両国橋の上では、古川が「施し」と称し、亀や泥鰌を売っていた。

夜、ゴンや孫七から金儲けとして誘われた源次とイトマンは、金庫破りの盗賊仕事を手伝うことになる。

商人の屋敷に侵入し、金庫を見つけると、それを川に浮かべていた小舟に運び込んで逃走しようとするが、あまりにも金庫が重いので水が浸入し、それをかき出したりしているうちに、バランスを失って小舟を転倒させ、金庫は川の中に沈んでしまう。

翌日、御用舟が川で捜査をする中、孫七たちは小舟で釣りを楽しむ振りをしていたが、水中からイトマンが上がって来る。

その直後、水中で爆発が起きる。

同じく小舟の上で、三味線を弾いていたイネに合わせ、源次が英語の歌を歌っていた。

アメリカの歌も良いねと言うイネに対し、アメリカは広いし、開墾すればその土地は自分のものになる。日本の百姓はまるで奴隷だ。アメリカでは働くと、庄屋の100倍もの土地を持てるんだと源次は教える。

その話を聞いていたイネは、行っちゃおうか?メリケン…と乗り気になる。

そんなイネに源次が抱きつく。

しかし、いざ横浜に向かうと、途中でイネはぐずぐず言い出す。

港が見える所までくると、急に差し込みが…などと言い出して草むらの中に消えてしまう。

源次は、船との交渉にとりあえず自分一人で港に向かうが、草むらの中でイネは手を合わせ、ごめんね、源ちゃん…。どうか源ちゃん1人で行かせないで下さいと神頼みしていた。

やがて草むらで待たせていたイネを呼びに来きた源次だったが、もうイネの姿は消えていた。

東両国に戻って来た源次は、又性懲りもなく「それ吹け小屋」で客の相手をしていたイネを見つけ飛びかかろうとするが、逆に客たちに袋だたきに遭う。

女郎屋で事情を聞いたお甲は源次に同情し、そんなに親方が大事なのかね?この辺のみんなは親方の息がかかっている。私だって金蔵の女などと、金蔵がこの辺一帯を仕切っていることを打ち明ける。

呼ばれて席を外したお甲の代わりにやって来たお松も、50両の借金があり、1年の年期奉公なのだと源次に言う。

戻って来たお甲は、イネが探しに来たと教え、私と浮気をしようよと源次に迫って来る。

それを振り払って外に出た源次は、夜鷹の1人とむしろ小屋の中にしけこむが、探しに来たイネが源次を引っ張り出し殴りつけたので、客を取られた夜鷹の仲間たちに囲まれ、お前も見世物小屋の女じゃないかと反論されてしまう。

イネは小銭を夜鷹たちに投げつけるが、西両国でも「それ吹け」が始まった。あっちの方が若い女らしいので客はみんな取られているらしいぞと夜鷹連中から嘲笑される。

イネは、背中に刺青を入れていたその西両国の「それ吹け」太夫の所に来ると真似をするなと文句を言うが、刺青を入れていた情夫らしき男が、こっちは辰五郎親分から許可をもらってあるし、今度は新しい見せ物の「女の意和戸(あまのいわと)」と言うのも考えてある。金蔵から話つけて来いと怒鳴り返され、あげくの果てに捕まえられたイネは、両国橋の欄干に裸の状態で、縄でがんじがらめに縛り付けられてしまう。

それに気づいたのは、たまたま通りかかったヤモメの六だった。

翌日、その顛末を三次から聞いた金蔵は、ばらしますか?と聞かれ、相対死に(心中)って手もあるなと示唆する。

そんな金蔵の店にやって来たのは、薩摩藩の使集院主馬(寺田農)だった。

二階に使集院を案内した金蔵は、川で盗んだ金の引き上げをしているイトマンたちの様子を、遠目がね(望遠鏡)で一緒に眺める。

使集院は金蔵に、江戸とその周辺の騒ぎを起こしてくれと頼み、手付金を渡す。

残りは薩長が天下を取ったらいくらでも払うと言いながら、上州で仕事があると使集院は続ける。

その後、隅田川で漁をしていたイトマンと古川は、背中に刺青がある女と男の心中死体を発見する。

西両国の見せ物のあの2人だった。

金蔵が桝屋富衛門に会いに来ると、ちょうどすれ違いで帰って行ったのが上州屋(殿山泰司)で、桝屋は、一揆が起こりそうなので護衛をしてくれと上州屋が頼みに来たと教えると、金蔵の方は、こっちは一揆を越してくれと頼まれましたぜと伝えると、桝屋は両方やりゃ良いさと笑う。

さらに桝屋は、小屋もんの死体が上がったそうだが…怖いね、お前もなどと皮肉を言う。

その頃、源次はお松に、上州に帰るか?俺とアメリカに行くか?と説得していた。

金を払ってお松を買い戻した源次にお甲が証文を返すと、源次はその場で証文を破って、アメリカだって奴隷を解放したんだぞと叫ぶ。

深の木場では、イトマンがいつまでも丸木の選別を行っていた。

古川が住んでいた長屋にやって来たのは、かつて深川とおぬいの媒酌人をした原市之進(河野洋平)だった。

京都へ来て欲しいと誘いに来たのだった。

そして自分が帰り際、連れて来た妻のおぬい(生田悦子)を中に招き入れようとするが、綾若が菓子を持って来て、奥様、入ってくだせえなどと転びながら言うもので、2人の仲を見抜いたぬいは中に入ろうとせず帰ってしまう。

客がいなくなると、綾若は古川に抱きつく。

一方、孫七やゴンらを呼び寄せた金蔵は、これから上州へ飛んで、高崎の糸問屋「上州屋」の用心棒をやってくれ。上州屋が危ないそうだと頼む。

さらに続けて、一揆の方もあおれと指示したので、孫七たちは、そりゃ真逆だと戸惑う。

そんな中、金蔵は源次に、お松を助けたそうだな?と笑いかける。

そのお松も連れ、孫七や源次たちは上州にやって来る。

お松は途中で、自分の実家に帰って行く。

そんな源次を追って、イネも上州へ向かうが、途中、源次からもらったオルゴールなどを落としたので慌てて拾い上げる。

川西村では、庄屋を中心に、上州屋、大黒屋、高崎屋などを狙おうと農民たちが集まっていた。その中には、源次の義弟の千松も混じっており、庄屋から頼まれた千松が一揆の中心になる。

やがて、上州にやって来たイネは源次の居場所を尋ねるが、最近、上州屋に行きっぱなしだと教えられる。

その上州屋にやって来た千松や庄屋ら川西村の農民たちは、固く戸を閉ざしている上州屋に開けろと叫ぶ。

その上州屋は、古川の指示により、店の中の柱に縛られていた。

店の横で待機していた孫七は、花火を打ち上げる。

それを合図のように、屋根の上で銃を構えていた男が店に押し入ろうと下農民の一人を射殺。

農民の方もその男を下から撃ち殺す。

そうして打ち壊しが始まるが、便所で小便をしながらその様子を観ていた古川は笑っていた。

二階に上った孫七と源次は、下にいる農民たちに向かって小判をばらまき始めるが、源次の姿を下から見つけた千松と、その場に紛れ込んで来たイネは驚く。

この上州の一揆騒ぎの影響で、江戸の米の値は3倍、米は2倍になったと金蔵が三次に告げていた。

源次の兄貴は実績があったということで土地をもらったそうだとも噂していた。

しかし、あのイネが、百姓で辛抱できるかな?と薄笑いを浮かべていた。

土地をもらい、源次やイネと共に、開墾作業していた千松の元に庄屋がやって来て、これから書き付けの整理のため代官所に行って欲しいと言う。

観ると、代官所の役人が周囲を取り囲んでいるではないか!

自分は利用されただけだと気づいた千松は、計りやがったな!話がうま過ぎた!と庄屋を罵倒しながら逃げ出そうとするが、その場で役人に斬られてしまう。

イネは、兄ちゃん!と追いすがろうとするが、瀕死の傷を負った千松を引き立てて行く役人は、10日間代官所の前で首をさらすので引き取りに来いと言い渡す。

イネは帰りかけた庄屋たちに向かって、お前たちはいつも弱いものいじめしか出来ないのか!と叫ぶ。

やがて、源次とイネは、千松の粗末な墓を作ってやる。

その後、源次が土地を開墾する中、イネは徐々に働く気力を失って行く。

ある日、「かんかんのう きゅうざれす♬」と口ずさみながら家に帰りかけていたイネは、頬かぶりをした正体不明の男たちに襲撃される。

夕方、家に帰って来た源次は、呆然としてしゃがみ込んでいるイネと、首を吊っている虎松の死体を発見する。

イネは、源次のバカ…と呟いていた。

東両国には又ゾウがやって来ていたが、磁石を引きずりながら歩くヤモメの六と子供には、世の中の不景気さが身にしみていた。

折れ釘一本引っかからなくなったからだ。

道には、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えながら歩く集団が目立ち始める。

小舟の上で金蔵は、使集院は上方へ行ったという薩摩藩士の月野木伴次郎(倉田保昭)に、米がとうとう4倍になったなどと内密話をしていた。

その後、店に帰って来た金蔵は、そこにイネが戻っており、自分に抱きついて泣き始めたので、なだめてやる。

やはり、イネに百姓仕事は無理だったのだ。

冬になり、まだ開墾作業を1人で続けていた源次の元に近づいて来た村人は、お前、神奈川の取調中に逃げ出したそうじゃな?と話しかけて来る。

自分もここに入られないと知った源次は、必死で逃げ出す。

イネはどうせ俺なんて女郎が作った父なし子などと自嘲する金蔵と寝ていたが、気がつくとイネが自分の巾着袋を盗んでいたので取り返す。

イネは、だってお金くらないんだもん…と甘えかかる。

そんな2人の睦言を隣で三次が聞いていた。

その後、イネは、木舟を作っていたイトマンの所に遊びに来て両親や奥さんはいるのか?と聞くと、イトマンは、みんなやられたと答え、姉さん、源ちゃん好きか?親方とどっちが好きか?嫌いか?と言うので、お前、底意地が悪いねと言いながら帰って行く。

そんなイトマンの元にやって来た岡っ引きは、源次がここへ来ていないか?庄屋を刺して逃げたらしいと聞く。

一方、三次もイネに酒を振る舞いながら、源次は戻って来たかと聞いていた。

その直後、イトマンの元に戻って来た源次は、イネはどうした?渡さなくてはいけないものがあるんだという。

その後、小屋で一人酒を飲んでいたイネの元にやって来た三次は、親方はあっちの方はダメだったななどと言いながら無理矢理抱こうとする。

そんな店にイネを訪ねて来た源次は、気まずそうに出迎えたイネに、両親と兄の千松の位牌を手渡し、アメリカに行く気ないんだろう?と確認する。

イネは、アメリカで死んだら、クマ婆ちゃんの山に帰れないんだもんと…と言い訳し、あたしって、なまけもんだしだらしないし、バカでスケベで女郎上がりだけど、源ちゃんが好き、どうしようもなく好き!と告白する。

しかし、そこに岡っ引きがやって来たので、源次は別扉から逃げる。

岡っ引きが帰ったあと、又源次がやって来てイネを抱こうとするが、それを振り払ったイネは、姿を消した源次の姿を求めて、外に声をかけ続ける。

調布の米国公使館に再び渡米の手続きに来た源次に、君は川西村で犯罪を犯しているので、もう渡米は出来ないと言い渡される。

外に出ると、孫七とゴンが待っていたので、たれ込んだのはお前らか!と気づいた源次は、もう手前たちの世話にはならないよ!と捨て台詞を吐き、三日も食べてない空腹をごまかすため、神社の湧き水を飲む。

そんな源次は、お甲の部屋に匿われることになるが、なかなかお甲が飯を食べるように勧めても従おうとはしなかった。

しかし、さすがに空腹に耐えかねたのか、ある日、急に飯を食い出すが、そこにお松がやって来たので、身請けした源次は、お前、いつ江戸へ戻ったんだ?と驚く。

お松は、私なんかいなくなった方が、お父っあんは大喜びだ!とすっかりすれた態度になっていたので、源次は怒るが、そんな2人をお甲が止める。

結局、その後、源次は又、孫七やゴンや古川らと共に盗賊の仕事を手伝うことになる。

古川が、盗んだ屋敷の柱に「天誅」の貼紙を貼って行く。

一方、イトマンは、川の中に沈めた金を引揚げる役を相変わらず続けていた。

その潜り方を観ていた薩摩藩士は、お前琉球の漁師だな?と話しかける。

孫七らの暴れ方はますますエスカレートして行き、民衆を煽動して、屋敷を一軒丸ごと、綱で引き倒すことまでするようになる。

その直後、役人が駆けつけると、全員蜘蛛の子を散らすように逃げ出すのだった。

駆けつけた歩兵たちに、金蔵は小遣いを渡していた。

そんなある日、小舟の中で古川条理と密会した侍と旗本の鵜飼作之丞(小沢昭一)は、京の原市之進を切れと相談していた。

そこに、お甲が酒を運んで来る。

それまで膝枕で横になっていた鵜飼は、御主も直参武士ならば大義を知れと迫るが、古川は、原は自分の媒酌人だし、俺は侍を捨てたと言い断ろうとするが、父や子やおぬいはどうする?どうだ古川?と追いつめられる。

源次は、お甲に襲いかかろうとしていてはねつけられていたが、そんな所にやって来た金蔵は、横浜まで付き合ってくれと源次に頼む。

源次の仕事は、アメリカ商人との通訳だった。

南北戦争で余った銃が欲しいと伝えると、イギリス人のグラバーが長州に売ったはずだというので、そんなこは知っていると金蔵はいら立つ。

しかし、そのアメリカ人は絹商人なので難しいという。

何度でもくると伝え、帰りかけた金蔵は源次にイネに会いに来ても良いと言い出すが、源次はもうどうでも良いと答える。

その後、東両国に戻って来た金蔵はイネに、横浜に行ってみなと勧めたので、イネはアメリカ人と寝ろというの?嫌ですよと気色ばむ。

そんなイネに、源次はお甲と出来ているぜと金蔵は耳打ちする。

ある日、金蔵は小出大和守(高松英郎)に挨拶に来ていた。

小出は、最近、両国付近で盗難事件など騒動が多い。監督不行き届きだなどと注意し、薩摩屋敷と行き来しているそうだな?公儀を甘く見るな!と叱りつけながらも、しっかり金蔵が差し出した賄賂は受け取る。

その帰り道、金蔵は、源次、孫七たちを集めて、盗人稼業はしばらく控えていろと注意するが、暇を持て余している孫七たちは、その後も盗人稼業を続ける。

金蔵はいら立ち、捕まりゃ、打ち首、獄門だぞ!と再度叱りつけるが、盗人家業を辞めるものはいなかった。

その内、イネまで仲間に加わるようになり、米国公使館の金庫まで、火薬を使って破壊するようになる。

金蔵は岡っ引きに、罪状は上州で庄屋を傷つけた1件だけにして2ヶ月程度捕まえろと耳打ちする。

三次は、源次をばらさなくていいのか?と聞くが、良い。しかし、先行きのために1人…、やりたかねえな…と迷っているようだった。

岡っ引きに待ち伏せられていた源次は、戻って来た所で取り囲まれたので、川を渡って逃げようとするが渡った所で捕まってしまい、一緒に戻って来たイネが待ってるからねと向こう岸から声をかけると、裏切りやがったな!と叫んだので、誤解されたと知ったイネはそれは違うって!と必死に言い訳しようと川の中まで追って来ようとする。

三次に呼び出された孫七も、見知らぬ男たちに取り囲まれ、その後死体となって川に浮かんでいた。

源次を助けないのか?と聞きに来た深川の前で、金蔵は死んだ孫七のことを泣いてみせ、当分、御用党は見合わせますので、旦那も…と釘を刺す。

その後、金蔵は小出大和守から、西両国の辰五郎の跡継ぎも頼むことになるだろうし、申請が出ていた西洋料理店の許しも出た。御主、その内、羽織だけではなく、帯刀を許されるかもしれぬなどと言い渡される。

金蔵は、イネに再び横浜に行くかい?と意思を確認し、三次を付けて横浜に行かせる。

アメリカ人絹商人とホテルに入ったイネを助けに来たのはお甲だった。

しかし、逃げる支度をしている時にシャワー室から出て来た商人に見つかってしまい、逆に商人から「オー!2人ね」と喜ばれてしまう。

源次が入れられていた牢にわざと入って来たゴンは、親方の差し金で孫七が殺されたことを知らせる。

一方、横浜で数日間、アメリカ絹商人の相手をすることになったお甲は、イネと一緒に江戸に帰る道すがら、源次のために身体を売るなんて…、私はあんたにほの字なんだよ。この3日間は結構楽しかったよ。源ちゃんは返すよなどと言う。

一方、遊郭に古川を無理に連れて来た鵜飼作之丞は、女郎に身を落として男に抱かれていたお縫の姿を深川に無理矢理見せる。

古川は、金を仕事の前借りとして金蔵に借りに来るが、金が欲しいのなら、辻斬りでも強盗でも何でもおやんなさいときっぱり断られる。

旦那はまだ侍引きずっている。その花魁、出て来ていますぜ…と教える。

その女に会いに行くと、それは目が見えなくなっていた桜井の吉野(池波志乃)だった。

後日、古川は、丸木舟を完成させかけていたイトマンの所へくる。

イトマンは、薩摩が世の中をとっても世の中良くならん。侍は自分は偉いと思うとるが、人殺しだと言うので、古川も、侍は単なる人殺しだよと言い、しばらく江戸を留守にすると挨拶をする。

京都

古川は原市之進に会っていた。

原は歓待し、幕臣は獅子身中の虫だ。百姓町民だけで世の中どうなる?武士には1000年の歴史と誇りがあるなどと持論を得意げに展開するが、床の間の刀にさりげなく近づいた古川は、武士を捨てきれぬ半端者の愚挙です。お許しください!と言いざま、原の身体を剣で突き刺しとどめを刺す。

その後、異変に気づいて駆けつけた家人も斬り逃亡すると、古川は川で返り血を洗うが、その土手の上を偉いこっちゃと騒ぐ男たちが列をなして通り過ぎて行く。

その様子を見に上がった古川は、「天照皇大神宮 御本営」と書かれたお札が道に落ちているのを見つける。

その京都から、竹筒を首に付けた犬が走り出す。

江戸では、金蔵が、アメリカの絹商人が持ち込んだ新式の銃を幕府の役人たちに披露していた。

その金蔵が新しく始める「西洋御料理 丸金」の店を工事中の所にやって来たので、竹筒を首に付けた犬で、職人の1人が見つけ竹筒の中を調べると、中から「天照皇大神宮 御本営」のお札が見つかったので大騒ぎになる。

お甲も、お札が来たよ〜!と町中を走り回る。

源次は鞭打ちの刑の後、釈放されたので、イネが引き取り傷の手当をしてやる。

源次は、アメリカでは日本に帰りたかったけど、本当はお前に会いたかっただけかもしれんと言い、イネの方も、あたいだってアメリカ行っても良いんだよと返事をし、横浜で身体を外国人に与えたことを打ち明けようとするが、ゴンが牢に知らせに来てくれた。俺のためにしてくれたと思えば…と許す。

その後、元気になった源次は、東両国で見せ物小屋の呼び込みの仕事をするようになる。

そこにやって来たのは、京都から戻って来た古川だった。

綾もやっているのか?と源次に声をかけ通り過ぎる。

小屋の中では、洋装姿になったイネ、お甲、綾若の3人が舞台に上がり、かんかんのう♬徳川勝つやら薩長勝つやら近頃分からない♬と歌い踊ると、客たちも愉快そうに唱和し出す。

やがて、3人と客たちは小屋の外に踊りながら飛び出して来る。

そんな中、ゴンがお札を巻く。

後日、お札を刷りながら、わしらより先にこのお札を降らせたのは誰だろう?とイネやお甲らは不思議がっていた。

数日後、騒動はさらに大きくなり、裸になった綾若が、教祖のようにあがめ立てられ、商家の店先から出て来たりするようになる。

外では、民衆が踊り狂っていた。

よりを戻した源次とイネも抱き合っていた。

誰が世の中を変えるのか?神様か?人間だろう…

そんな踊る民衆に向かい、金蔵は、肉を食って西洋人みたいにでかくなろうと店の表で酒を振る舞い宣伝していた。

その後、店の中にいた使集院主馬は、桝屋富衛門や金蔵らに、そろそろ騒ぎも打ち止めだなとつぶやき、、桝屋も50万両ご用意しましょうと言い出す。

それを聞いた使集院は喜び、西郷どんに知らせたいと言う。

桝屋は、ご出世と権力のためにと音頭をとり、ワインで乾杯をする。

使集院は小舟に乗って帰る際、見送りに出て来た金蔵に、御主、幕府に鉄砲を売っているそうだな?と問いかけるが、金蔵は否定する。

小舟を操っていた船頭はイトマンで、船を出してしばらくした所で、油断していた使集院の背後から襲撃し、5年前、琉球でしたことを思い出せ!両親、兄貴、女、みんな、お前とその部下に殺された!と迫る。

使集院は驚愕し、止めろ!俺はこれから大仕事があるんだ!と抵抗するが、川に落下した後、その死体が浮き上がる。

イトマンは、使集院の死体を船に持ち上げると、首をかき切り、その血を壺に集める。

後日、イトマンが、完成した丸木舟の帆に、赤い血を塗りたくっていると、侍も終わったと言いながら近づいて来た古川が、それは何だと聞いて来る。

豚の血だとうそぶくイトマンに、お前の仕事も終わったようだな…と古川は呟く。

その後、手に入れた金をお縫のために人に託した古川は、花火があがる夜、川岸で、吉野の弾く三味線と歌に聞き入っていた。

そこに岡っ引きや捕り手が近づいて来たのを知った古川は、あばよ、世話になったな。虫けらみたいな死に様を良く観ておけと言いながら、刀で吉野の胸を突くと、自分も腹を斬り、吉野と共に川に落ちる。

数日後、江戸の街には、ええじゃないか!と浮かれながら踊り回る一団で溢れていた。

その中には、源次、イネ、お甲、ゴン、ヤモメの六 の姿もあった。

それを桝屋や月野と一緒に苦々しげに眺めていた金蔵は、この橋だけは渡るな!向こう側は旧江戸市中だ。騒ぐ所じゃねえ。歩兵隊が待ち受けていると止めようとするが、源次を始め誰一人言うことを聞かず、金蔵は民衆からはじき出されてしまう。

ゴンは、歩兵隊はまずいんじゃねえか?とちょっとビビっているようだったが、源次はどうせ撃てやしねえよとたかをくくり踊り出したので、民衆もそれに釣られ踊りを継続する。

金蔵、桝屋、月野らはさすがにこれはまずい!と焦り出す。

馬に乗った小出大和守も乗り出して来て、橋を渡ろうとする民衆を阻止しようとするが、興奮状態の民衆のエネルギーはもはや止めようもなかった。

それでも金蔵は、もう一度先頭に立っている源次を止めようとするが、イネをアメリカ人に売ったのは誰だ?俺を牢に入れたのは誰だ?俺はもう騙されないぞ!とわめいた源次は、渡ったって良えじゃないか!とはやし立て、首位の群衆もそれに乗って、小舟に乗り込んだり、橋を渡り始める。

ゴンも段々怖さが消え失せたのか、どうせ親方が売った銃で大したことないなどと言いながら踊る。

そんな民衆に立ちふさがった役人は、小屋者の分際で!と激高し、奴を狙え!と歩兵隊に先頭に立った源次を狙わせる。

すると、それに気づいたイネが飛び出し、歩兵隊に向かって着物をまくると、尻を突き出す。

それに合わせて、お松ら他の女たちも尻を出し、役人や歩兵隊に向かって一斉に立ち小便をし始める。

群衆はそれに気勢を上げ、旧江戸市中になだれ込んで来る。

金蔵は、岡っ引きの又吉を前に押し出し止めようとさせ、自分も群衆の先頭に来ると、行きたきゃ、俺を殺して行け!と怒鳴り、上半身を露にするとその場にあぐらをかいて座り込む。

その気勢に、一瞬群衆の動きは止まり、全員戻り始めたが、それを観ていた役人が撃つんだ!命令だ!と命じる。

歩兵隊の連中は、もう帰りかけているが…と躊躇するが、命令とあっては撃つしかなかった。

金蔵、ゴン、源次たちが背中から撃たれてしまう。

源次は、駆け寄ったイネに抱かれながら、死んだら死んだで良いじゃないか…と呟いて息絶える。

歩兵隊が前進し出し、それに押されるように、群衆は追い戻される。

その様子を観ていた桝屋富衛門は、世の中の変わり目はきつうござんすねぇとつぶやき、隣に立っていた月野木伴次郎も、全く…と同意する。

源次やゴンの死体は小舟に積まれて、お甲やイネと一緒に元の東両国へと戻る。

その後、源次の遺品となった笠を持って来たイネは、海に完成した丸木舟を浮かべたイトマンに渡す。

イトマンはイネに、髪の毛をくれんかと頼むので、イネは承知するが、刀を取り出したイトマンは一瞬握っていた手に力を込める。

しかし、イネが何してんのさ?と振り向いたので、何事もなかったかのように髪の毛の先を少し斬り、自分の懐に入れると、真っ赤な帆を揚げて琉球に向け出発する。

あたいも行っちゃおうかな…といつものように軽く言いかけたイネだったが、気を付けてね…と最後の別れの言葉を投げかける。

見せ物小屋の所に戻って来たイネは、地面に染み込んだ源次の血を見つけ、その上に愛おしそうに多いかぶさると、血にまみれた砂をかき集めながら、止めるったってあたいは止めねぇから…と呟くのだった。

その映像がカラーからモノクロになりエンドロール