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クレージーメキシコ大作戦

全部で2時間40分にも及び、途中に「休憩」が入るというという前代未聞の大長編コメディ映画。

ナベプロが総力を挙げて作った作品だけに、登場タレントも豪華なら、内容も豪華。

久々に見直してみたが、やっぱり考えられないくらい金をかけている。

クライマックスのピラミッドの中のセットは、「インディ・ジョーンズ」シリーズも真っ青の仕掛けが愉快だが、ピラミッドの入口になるどんでん返し周辺の階段部分など、どうやって作ったんだろう?と良く分からないような部分もある。

本当のメキシコのピラミッドに、どんでん返しのセット部分をくっつけているのだろうか?

それとも、あの周辺のピラミッドの下の部分は全部セットなのだろうか?

他にも、サンフランシスコでヒッピーまがいの生活をしている三郎の部屋なども良くできている。

窓から見える向こう側の部屋の中で外国人が踊っていたりするからだ。

東宝スタジオで撮っていたとすると、最大級の大きさのセットではないだろうか?

前半の日本篇では、死体の移動をめぐるドタバタが中心となっているが、死体役の春川ますみは良く頑張っている。

特に、花岡の事務所で死体を発見した忠治と松村が、死体を中にして互いにセリフを言い合っているシーンなどは、ずっと春川ますみは目を見開いている。

低空飛行のセスナ機から、藁の上に酒森が飛び降りるスタントシーンなども、さりげなくやっているがすごいと言うしかない。

もちろん、藁のヤマハカメラに近い位置にあり、その奥のクッションか何かに落ちているんだろうが、相当な準備をしないと撮れない危険なスタントである。

晩年は「踊る大捜査線」の老刑事和久さん役で親しまれたいかりや長介が、制服警官役で登場するのも今となっては貴重な映像だろう。

当時のナベプロの人気者たちが大勢出演しているが、スパーク3人娘の中尾ミエと園まりは出ているのに伊東ゆかりが出ていなかたり、ジュリーこと沢田研二が出ており、「タイガースホテル」等と言う言葉も出て来るのに、肝心の「ザ・タイガース」が出ていないのが、ちょっと残念だったりする。

あれこれアイデアがつまった作品なのだが、長い話なだけに、つじつまが合わない部分もないではなく、特に、前半トンボメガネ姿で登場し、メガネが取れるとほとんど何も見えないほど目が悪いように描いていた絵美役の浜美枝が、アメリカで踊子になってからは、メガネがないのに、普通に酒森の顔を見分けたりしているのはちょっと解せない。

彼女が目が悪いということが何か後半の伏線になるのでは?と期待していただけに、見事に肩すかしを食わされた感じ。

コンタクトを入れているのなら、そう一言説明が欲しい所だし、最後、そのままの絵美が海に飛び込んで平気なのも理解に苦しむ。

マリアを演じているアンナ・マルティンという女優さんは、その後他で見かけた記憶がない人だが、最後のレストランのシーンで、ジュリーと踊り出すと、すごいキレのあるゴーゴーを踊っているので、ひょっとすると、劇中で絵美がアメリカに呼ばれる職業として出て来る「ゴーゴーガール」の本職ではないかと想像したりする。

この映画がメキシコを舞台にしているのも、東京オリンピックの次のオリンピック開催地として日本でも有名だったからだろう。

クレージーの面々も、さぞかし大変なロケだと想像されるこの映画で、良く健闘している。

特に、植木等の口八丁手八丁の面白さはやはり群を抜いている。

マリアを見つけたベランダの下で歌を歌い、男から水を引っ掛けられるシーンのリアクションのおかしさなど絶品である。

腰抜けなのに、いつも貧乏くじを引かされる三郎役の谷啓も面白いし、お人好しのヤクザ役を演じているハナ肇も、不器用な印象ながら良く健闘していると思う。

性格的に一番まじめでお笑い面では弱かった安田伸に、わざとらしい「やんす」言葉を使わせているのが、ちょっとわざとらしく感じないでもないが、ドリフターズの高木ブー同様、あまり器用そうな人ではないだけに、演出側も考えた末のキャラクターだったのだろう。

桜井センリが演じているキザな二世役が意外にハマっているのが新発見。

犬塚弘と石橋エータローは、まあまあそつなくこなしている感じである。

マリアの背中に描かれた財宝の在処を示す地図などという発想は、色んな作品で見かけた記憶があるが、かなり古くから伝奇ものなどで使われて来たパターンなのではないだろうか?

観れば観るほど、往年のナベプロ作品の底力を思い知らされるような娯楽巨編である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1968年、渡辺プロ+東宝、田波靖男脚本、坪島孝監督作品。

お城で、殿様(植木等)が、勢の腰元たちに囲まれて、大きな盃を放り投げて上機嫌で歌っている。

その盃が額に当たったのは家老(人見明)。

すっかり酩酊状態の殿さまは、腰元からさらに酒を注がれて、一口飲んだ所で「効いた〜1」と叫び、腰元の膝の上に頭を乗せ寝入ってしまう。

しかし、そんな殿さまそっくりな酒森進(植木等)が、膝枕だと思ってにや付いていたのは「タイガースホテル」、つまり「トラ(酔っぱらい)」が泊まる「酔っぱらい保護センター」なるブタ箱のトイレの便座部分だった。

トンボ眼鏡姿の美大生だという絵美(浜美枝)が、そんな酒森を呼び起こしたので、ようやく目覚めた酒森は、今までのお城の騒ぎは皆夢だったと気づく。

そんな酒森を牢から出してやった看守は、何故か、夢の中の家老そっくりだった。

その頃、親分の身替わりとなってムショ暮らしをしていた全課13犯のヤクザ、清水忠治(ハナ肇)が出所し、表で待っていた兄貴分の松村(中丸忠雄)に出迎えられていた。

忠治は、パチンコ屋のミッちゃんは元気か?と尋ねると、今は社長が世話していると教えた松村は、忠治を車に乗せ、親分のいる花岡興行に戻ってくる。

親分の愛人だった銀座のバー「人魚」のマダム由香利(春川ますみ)は、親分に捨てられたも同然で、今も怒って帰って行く所だった。

そこに松村と一緒に戻って来た忠治は、16才の頃パチンコ屋で働いていた少女が、今目の前にいる秋本光子(大空真弓)とは一瞬気づかないほどだった。

聞けば、親分こと社長の秘書をさせてもらっていると言うではないか。

感激した忠治の前に姿を現した親分花岡(田武謙三)は、ムショから出て来た忠治をねぎらいながら、早速頼みたいことがあると言い出す。

その花岡から、今夜の予約を受けた料亭「大和」の女将(東郷晴子)は、ちょうど店に来ていた取引銀行である希望銀行の主任鈴木三郎(谷啓)の相手をしていた。

女将が奥に消えた後、三郎の元にやって来たのは、その店で働いている相川雪子(園マリ)だった。

雪子は前から三郎との結婚を夢見ていたが、この前、店にやって来た銀行の支店長から、三郎が銀行の常務の娘と婚約したと聞き、心を痛めていたので、三郎自身にそのことの真偽を確認する。

三郎は、鈴木なんてどこにでもいるからとごまかしながら雪子に抱きつこうとするが、棚の上に置いてあっただるま人形が頭の上に落ちて来る。

その後、上機嫌で銀行に戻って来た三郎は、部下で受付の石山(石橋エータロー)が、鼻の頭にニキビなどをこしらえていたので注意するが、石山は、主任の鼻にも出来ていますと反論する。

その時、常務が読んでいると知らせがあったので、三郎は石山を地下の金庫室へ追いやり、自分は常務の部屋に向かう。

大林常務(十朱久雄)は、部屋にやって来ていた不細工な娘令子(浦山珠実)と、今度の日曜日にでも遊んでやってくれと頼む。

エリート銀行員である三郎は、恋人であるゆき子とは別に、ちゃかり出世のために、令子と結婚するつもりでいたので、作り笑顔で快諾する。

日曜日、約束通り、令子を連れ、銀座にやって来た三郎は、歩道に人だかりがしているので何事かと覗き込む。

すると、さくらに扮した着物姿の酒森が、泣きまねをしている恵美を相手に、「泣き売」をしている最中だった。

店が潰れたので商品のスーツを給料代わりに渡されたので困っている?と酒森が見物人に聞こえるように説明している。

風呂敷を開けると、中にはスーツが入っており、1着1万なら安いので俺が買ってやろうと酒森が言いながら、何?10着まとめてしか売らない?そりゃ困ったな…などと一人芝居している。

そして、誰か俺と一緒にこのスーツをかう人はいないか?普通なら2万位するやつだよなどと野次馬たちに言い出したので、令子は安いわと乗り気になるが、三郎があれは「泣き売」と言うやつですよと教えたので、それを耳にした酒森は、「何?」と気色ばむ。

れい子を連れ、その人ごみを抜け出した三郎だったが、その目の前に近づいて来たのは雪子だったので、慌てて、近くの百貨店で開催中だった「メキシコ秘宝展」という催し物に逃げ込む。

その会場内には、松村に連れられた忠治もいた。

忠治は、展示してあるオルメカの石像をアメリカのシンジケートから頼まれたと言う花岡から盗むよう命じられたのだった。

松村は、展示ケースの鍵は、警備員を買収して開けてあるので大丈夫だと耳打ちすると、自分はさりげなく紙袋の中に入れて来たガソリンを装飾部分にさりげなく撒くと、タバコを吸う振りをしてマッチに火をつけるとそれを投げつけて放火をする。

見物客たちは、突然の火災に驚き、一斉に逃げ出す。

その隙をつき、忠治は展示ケースの中からオルメカの石像をバッグに詰めて逃げようとするが、その前に立ちふさがったのは、学生バイトのガードマン(加藤茶)だった。

そんな展示場に入って来たのが三郎で、後を追って来た雪子に捕まる。

そんな秘宝展の前の通路に近づいていた酒森は、あなたは金と私のどっちが好きなの?と絵美から問いつめられていた。

そんな絵美は、さっきの泣き売で儲けた金で買ったバナナを食べていたが、その皮を放り投げた所に、中から逃げ出して来た忠治が滑り、持っていた石像入りのバッグを投げ出してしまう。

そのバッグを受け取ったのが絵美と酒森で、2人は、訳も分からずそれを持ったまま逃げ出してしまう。

礼子も会場の外に出ようとしていたが、そこに間違って飛びかかって来たのが学生バイトで、令子は転んでしまうが、勘違いしたままの学生バイトはまだ彼女の足にしがみついていた。

一方、近くの公園に雪子と連れ立って来た三郎は、自分も会社員なので、常務の申し出を断るわけにはいかないんだと言い訳するが、雪子は、本当に三郎さんが相手を愛しているなら私は諦めたけど、そうは見えない。こうなったら邪魔してやる。結婚式で皆の前で毒を飲んでやる。三郎さんなしでは私の幸せはないのよなどと切々と訴えるので、三郎は、女ってそんなもんかもしれないなどと天狗になる。

その頃、酒森は、河原に建てた掘っ建て小屋の住まいで、バッグに入っていた石像は紀元前300年くらいに栄えたオルメカ文化の遺産らしいと説明されていた。

絵美は、張り合いのない男と付き合うより、外国行った方が良いなどと酒森に嫌みを言うが、石像に金の匂いを感じた酒森は、いつもやっているように、絵美にその偽物を作ってくれと頼む。

誰に売りつけるの?と不思議がる絵美に、酒森は、バッグに入っていた銀座のバー「人魚」のマッチと飲み残しの煙草「朝日」の銘柄を手がかりに、持ち主捜しに出かける。

バー「人魚」にやって来た酒森は、隣に座っていた客がマダムの由香利相手に何かを探しているような話をしており、カウンターの上には、タバコの「朝日」が乗っていたので、これかもしれないと踏み、何を探しているんです?と話に割り込む。

すると由香利が、この人は芸能プロモーターの伊沢(藤岡琢也)と言う人で、アメリカで踊るゴーゴーダンサーを捜しているのだという。

勘違いには気づいたが、ただでは起きない酒森は、ちょうどアメリカに行きたがっている女を知っているのでこれから会いに行こうと伊沢を誘う。

絵美はアトリエで石像のニセモノ作りに励んでいたが、誰かが来た様子なので、急いで秘密部屋に隠すが、その時、メガネが床に飛んでしまい、目の悪い彼女は一生懸命探す。

酒森と一緒にアトリエに入ってきた伊沢は、絵美の身体を観るなり一目で気に入り、金を酒森に渡してさっさと帰ってしまう。

事情が分からず困惑する絵美だったが、酒森から、君はアメリカに行ってナイトクラブでゴーゴーを踊ってくれれば良いんだと聞かされると、単純に喜んでしまう。

その頃、ムショに入る前、花岡から結婚させてもらう約束をしていたつもりのみつ子が、その花岡の女になっていると思い込んで悩む忠治は、バー「人魚」でマダムの由香利相手に愚痴をこぼしていた。

由香利は、自分もあの花岡には袖にされており、あんな悪い男を信じていたあんたが馬鹿なのだと説教する。

復讐を誓った忠治は興奮して店を出て行こうとするが、その時やって来た酒森とぶつかってしまう。

忠治は、転んだ酒森に悪態をついてそのまま出て行ってしまう。

呆れながらもカウンターに座った酒森は、今出て行った忠治が忘れて行ったらしき「朝日」の箱を見つける。

事務所に戻って来た忠治は、その場にいたみつ子に、親分のスケになったと言うのは本当かと確認するが、みつ子は、自分は単なる秘書で、今度、花岡と一緒にアメリカに行くのだと教える。

社長室にやって来た忠治に、花岡は石像はどうした?と聞くが、忠治は、石像は落とした。それよりもあんたは俺のスケを横取りしたではないか!あんたなんてもう親分でも何でもねえぜ!と一方的に抗議して部屋を出て行く。

どう言うことだ?と困惑する花岡に、どうやら「人魚」のママが妙なことを吹き込んだのかもと松村が答える。

その時、みつ子が来客を部屋に案内して来る。

それは着流し姿の酒森だった。

酒森は、こんなものを拾った、お宅なら高く売ってもらえねえかと思って…と言いながら、持って来たふろしき包みを開けると、中にはあの彫像が入っていた。

拳銃型ライターでタバコに火を付けたりしながら1000万!と吹きかけた酒森に、花岡も100万と応酬し値段交渉が始まるが、途中で松村が拳銃を取り出したので、一瞬ビビった酒森だったが、うちの若いもんを呼ぼうか?などとはったりをかけたので、結局500万で交渉が成立する。

金を渡しながら、どこでこれをうちが欲しがっていると聞いた?と松村が聞くと、酒森は「人魚」ってバーでねと答えて帰る。

花岡と松村は、いよいよ由香利を生かしちゃおけないと感じる。

その頃、希望銀行の大林常務は、娘令子との新婚旅行用に、パスポートとJALパックのバッグと1000ドルの小遣いを三郎に渡しながら、今夜、令子と映画に行くんだって?手ぐらい握ってくれよと頼む。

羽田空港の前で手を握り合って別れを惜しんでいたのは、酒森と絵美だった。

酒森は、結局あの偽石像は50万でしか売れなかったので、半分の25万が君の取り分だが、アメリカに行く君が日本円で現金を持っていてもしようがないだろうから、真珠のネックレスにして来たと言いながら手渡す。

絵美は又もや単純に喜んで受け取ると、世界的な芸術家になるまでは、もう日本には戻らないつもりと言い残して、伊沢と共に空港へと入って行く。

そんな絵美を見送りながら、あんなに喜んでくれるのなら、真珠のネックレスくらい本物買ってやれば良かったかな…などと酒森はちょっと後悔する。

しかし、その夜、酒森は「人魚」でホステスを侍らせ大盛り上がりだった。

ママの由香利がいないので事情を聞くと、電話で呼ばれて出かけたので旦那さんだと思うとホステスが言う。

それを聞いた酒森は、俺のことをほっときやがって、絞め殺してやる!と叫ぶが、由香利は本当に、花岡の事務所で松村から絞め殺されていた。

その時、人の気配を感じた松村は室内の電気を消す。

そこに、花岡!出て来い!などと怒鳴りながら入って来たのが忠治で、どこで手に入れたのか拳銃を構えると、窓の明かりに浮かぶ人影目がけ発砲する。

電気を点いたので、忠治が死体を確認すると、それは「人魚」のママの由香利ではないか!

狼狽する忠治に銃を手にして背後から近づいた松村は、責任を取ってもらおうか?この死体をどこかで始末して来い。社長に仕返ししようったてもう遅いんだ。今頃、アメリカ行きの飛行機の中だと教える。

愕然としながらも、忠治は由香利の死体を背負って外へ出ると、鍵がかかってない路上駐車の車を探し始める。

そこに近づいて来たのが警官(いかりや長介)だったので、慌てて、忠治は由香利の死体を抱いて、キスしている恋人同士を装う。

一旦通り過ぎた警官だったが、何か臭いな?などと忠治の方を振り返りながら歩くうちに、駐車してあったバキュームカーにぶつかってしまう。

警官が立ち去った後、何とか、後部座席の鍵がかかっていない車を見つけた忠治は、由香利の死体をその中に押し込んで逃げる。

その直後、その車に帰って来たのが、映画を観終わった三郎と令子で、2人は運転席と助手席に座って車を出発させたので、後部座席に座らせられている由香利の死体に気づかなかった。

ところが、途中、車のハンドルを切った瞬間、由香利の死体の手が三郎の横に突き出し、それを令子の手を勘違いした三郎は、心が温かい令子さんの手は冷たいなどと言うが、令子の反応が妙なので、はじめて後部座席に乗っていた見知らぬ死体に気づく。

焦った三郎は急にスピードを上げ、死体を後部座席に押し戻すと、どうしたの?と振り返ろうとする令子の目を塞ぎながら、彼女の自宅まで送り届ける。

彼女が家の中に消えたのを確認した三郎は、改めて、後部座席の死体を確認、その処理に迷う。

結局、橋の上から川に捨てようとやってくるが、欄干に死体を持たれかけさせた所に、こんな所に車を停められると困るねと声をかけて来たのが、警官2人(荒井注、仲本工事)だった。

驚いた三郎は、連れが気分が悪くなったもので…と言い訳をしながらも、警官の求めに従い免許証を見せてしまう。

警官が立ち去った後、何とか、死体を下に落とした三郎は逃げるように帰って行く。

死体が落ちたのは、川ではなく酒森の掘建て小屋だったが、寝ていた酒森は、屋根を突き破って自分の隣に落ちて来た由香利に気づいて一旦は目を覚ますが、酔って寝ぼけていたので、ママじゃないの!と喜んで、そのまま又添い寝する。

翌朝、港に来た忠治は、サンフランシスコ行きの船を見つけると、そこに運び込まれているイモの麻袋の中味を出すと、自分がその中に入り込む。

やがて、作業員たちが、その麻袋も気づかないで一緒に船に積み込む。

一方、橋の上から通行人が投げ捨てた火のついたタバコの吸い殻が手のひらの上に落ちて来たので、その熱さで目覚めた酒森は、改めて隣で寝ている由香利と壊れた屋根に気づき、不思議に思いながらも起こそうとする。

そしてようやく、由香利が死んでいることに気づいた酒森は青ざめる。

処理に困った酒森が、由香利の死体をリヤカーに積んで運んで来たのは、帝京医科大学だった。

白衣を着て「薮田病院」のものだと名乗った酒森は、先ほど連絡した解剖用の死体を持って来たと受付(豊浦美子)に伝えるが、そこにやって来たのが、ガン治療の権威中村医師(藤田まこと)。

その中村が、死因は何かと聞くとガンだと酒森が答えたので、今、ガンで死んだ死体が少ないのでありがたいと喜ぶ。

ガンでの死亡者は多いのでは?と酒森が不思議がると、私の手にかかると大抵の患者は直るんでね…と中村医師は自慢し、リヤカーに積んであると言う死体の確認に出る。

外に出て来た中村医師を近くで監視していた外国人たちがいた。

酒森は死体を確認し始めた中村医師を観てまずいと感じ逃げ出すが、突如、背後から外国人たちに頭を殴られ、トラックの荷台に押し込まれてしまう。

その直後、死体の様子を調べていた中村医師は、これは他殺だ!警察を呼べと騒ぎ始める。

その頃、令子との結婚式の控え室に母親うめ(浦辺粂子)と一緒にいた三郎は、テレビで、銀座のバー殺しのニュースが流れているのに目を留める。

アナウンサーは、重要参考人として、帝京大学に死体を運び込んだ酒森進と、駐車違反で警官に免許証を確認された鈴木三郎という男を捜していると言っているではないか。

驚きを抑えるために、窓を開け深呼吸しようとした三郎だったが、式場の外にパトカーがやって来たので逃げ出そうとする。

しかし、そこに石山が式が始まると呼びに来る。

仕方なく、そのまま令子と三三九度を始めた三郎だったが、その式場に刑事がなだれ込んで来たので、慌てて逃げ出す。

外に飛び出した三郎は、そこにやって来た雪子とぶつかり両者は転ぶが、その時雪子は持って来た自殺用の薬の錠剤がこぼれる。

三郎はタクシーを停め逃げ出すが、雪子も別のタクシーを停め、それに乗って後を追う。

大山常務らも式場から出て来て三郎を追おうとするが、その場に停まっていたパトカーの警官(高木ブー)は、これには乗せられないと面倒くさそうに断るが、強引にそのパトカーに乗り込むと三郎の後を追うのだった。

その結果、遅れて外に出て来た刑事たち(犬塚弘、小川安三)は取り残されることになる。

三郎は羽田空港にやって来るが、そこでばったり会ったのが「大和」の女将だった。

何でも、代議士から1千万も預かったが、困るのでお宅でお願いできないかしら?と言う。

三郎は困惑するが、続いて到着したタクシーから雪子が降りて来たので、仕方なく、そのふろしき包みを受け取って飛行機に逃げ込む。

驚いた女将と雪子は、お金を返して!と見送り台で叫び、大林常務や石山もやって来たので、あんたに任せれば良かったと今、三郎に金を持って行かれたことを打ち明ける。

それを聞いた大林常務は、もうあんな男はお前のダーリンじゃありません!と花嫁姿のまま付いて来た令子に言い渡す。

雪子は女将に、自分をサンフランシスコに行かせてくれないか?必ず、三郎さんを見つけてお金を取り戻してみせますと頼み込む。

汽笛の音で目覚めた酒森は、自分が何故か牢の中に入るので、又「タイガースホテル」に泊まらされたと勘違いし、頭痛がひどいので、夕べよほどひどい酒を飲んだか?などと言いながら、鉄格子の嵌った窓から外を観るが、そこには赤く巨大な橋が見えたので、言問橋 か?白鬚橋か?などと隅田川周辺にいると思い込んでいたが、それは実は、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジだった。

のんきに二度寝をしようとしかけた酒森のいる牢の前に現れたのは、日系人ケン(桜井センリ)と見知らぬ外国人たちだった。

彼らは何故か、ドクター中村と呼びかけて来たので、酒森は自分は中村ではないと否定するが、ケンらは信用しなかった。

一方、貨物船に潜り込んでいた忠治の方は、麻袋には行っていた芋ばかり食べていたので、特大の屁をひるが、それが汽笛の直後だったので、2度汽笛を鳴らしたと勘違いした船長は電話で警笛係を叱りつける。

サンフランシスコに到着し、街を見渡せる公園にやって来た忠治に、「ジャパニーズヒッピー!」と呼びかけたアメリカ人コンビが、これを観ても良いと展望双眼鏡を貸してくれる。

それを覗いてみると、全くの偶然にも、ビルのレストランで食事をしているみつ子を見つけたので、急いでその場所へ向かうことにする。

みつ子は、突然現れたぼろぼろの状態の忠治にカニをごちそうしてくれると、自分は社長の彼女でも何でもないから、あなたは、密入国者としてきちんと申請してねと注意してさっさと帰ってしまう。

慌てて後を追った忠治だったが、通りかかった車に轢かれそうになり、その間にみつ子を見失ってしまう。

一方、風船を身体にたくさん付け、牢屋を抜け出た酒森はケンたちの追跡をかわし、海へ飛び込んで逃げる。

ケンは、銃を撃とうとした外国人を制し、どうせ生きてここを渡れたものはいないと笑うのだった。

同じ頃、ゴールデンゲートブリッジから、みつ子の名を呼びながら身投げしようとしていたのが忠治だった。

それを押しとどめたのが日本から酒森と三郎を追って来た塚田刑事(犬塚弘)だったが、2人は下の海から「助けてくれぇ!」と叫ぶ酒森を発見する。

救出し、病院へ運んだ酒森が気がついて起き上がると、塚田刑事は警察手帳を示し、銀座のバーマダム殺人事件の容疑者として手錠をかけようとするが、酒森は、その手錠をかわし、塚田自身の左手にかけると、もう一方をカーテンレールに引っ掛けて逃亡する。

外に出ると、そこは外国人だらけだったので、酒森は戸惑うが、その時ぶつかって来たのが日本人らしいと気づくと後を追って来て話しかける。

話しかけられたのは風貌が変わった三郎だったが、落としたふろしき包みを拾い上げた酒森が、「大和」の文字に気づいて中味が大金だと知ると、そこに偶然、忠治もやって来て合流する。

忠治は酒森の顔を見るなり、銀座のマダム殺しなのに良く逃げられたなと感心すると、それを耳にした三郎も驚き、詳しい話を聞きたいので、僕のアパートへ来ませんか?と2人を誘う。

そこは、びっくりするほど汚いアパートで、穴の開いた床下から階段で登って入る部屋だったので、忠治と酒森は驚く。

三郎は、番町、日比谷、東大を出た秀才なんだと自己紹介し、腹が減ったと言い出した2人のために、他の部屋へと調達に向かう。

三郎がスナックを持って戻って来ると、忠治は自分は身代わりの忠治というんだと粋がり、へらへらバカにしている酒森に蜂の巣になりてえか?と脅すが、酒森が銀座のマダムみたいにか?とカマをかけると、あっさりそうさと自白してしまう。

すると、俺は酒森って言う刑事だと言い出し、スーツの上着の内側に銃を握っている真似をしながら、三郎も証拠隠滅の罪を犯していると牽制しながら、金の入ったふろしき包みを取り上げると、これから国際秘密警察に連絡して来ると言い残し、そのまま部屋から出て行く。

その時、三郎は、銀座の路上で泣き売をしていた酒森を思い出し、忠治の方もバー「人魚」でぶつかった酒森をそれぞれ思い出したので、騙されたと悟ると外に追って行く。

酒森は、路面電車に乗り込んで逃走しようとするが、彼が持っていた風呂敷に書かれた「大和」の文字に気づいたのは、たまたまその電車に乗っていた雪子だった。

雪子は酒森を怪しみ、ふろしき包みを取り上げると、あなたはだれです?と聞くが、酒森がそのふろしき包みを取り返そうとするのを女性に乱暴していると思い込んだ他の乗客たちに妨害され、あげくの果てに走っている電車から降ろされてしまう。

そんな酒森は、たまたま通りかかった自動車に乗せてもらうが、その車に乗っていたのはケンたちで、偶然の再会を喜ぶように「良く生きていたな」と笑われてしまう。

酒森を追って来た忠治と三郎は、走り去ったその車のナンバーを覚える。

その車がやって来たのは大きなホテルで、酒森がケンや外国人に促されてやって来た部屋は何かパーティをやっている最中だった。

そこには、頭に包帯を巻いた外国人がおり、ケンからボスと紹介されたその男は、お陰で助かった。今日は謝恩会だと言い、酒を勧めて来たので、酒森はあっけにとられる。

どうやら中村医師が彼の頭部に出来たガンを手術で治してやったことへの礼らしかった。

やがて部屋に持ち込まれた巨大なケーキの上に置かれたシャンペンを、ボスが狙い撃ちすると、そのデコレーション部分が開いて、中からマリリンモンロー風の女性が出て来てくる。

その金髪ダンサーは踊りながら酒森の方に近づいて来るが、互いに相手の顔を良く観るうちに、相手が誰だか気づく。

その金髪ダンサーは絵美だったのだ。

絵美は、ビーナスからキスしてもらいなさいと言うケンの言葉とは裏腹に、いきなり酒森をビンタするのだった。

その頃、奥の部屋に引き込んだボスは、日本からみつ子を連れやって来た花岡から、探させていたオルメカの石像を受け取っていた。

ボスは子分に眼で合図をすると、子分はいきなりその石像をたたき壊し、中の空洞を探す。

しかし、地図が入ってないことに気づいたボスは、これはニセモノだ!とわめく。

パーティ会場では、あなたがくれた真珠のネックレスはニセモノじゃない!と絵美が酒森に怒っていた。

そこにやって来た花岡は、俺にニセモノを掴ませたのはあの男だ!と酒森を指しボスに教える。

そんな会場に乱入して来たのは、外に停めてあったケンらの車に気づいた忠治と三郎だった。

さらに、怪しげな風体の2人が建物の中に侵入するのを目撃していた警官隊までなだれ込んで来たので、海上はてんやわんやの大混乱。

テーブルの下に隠れていた三郎は、あっけなく警官隊に逮捕されてしまう。

外に逃げ出した忠治は、停まっていたワゴン車の後ろに忍び込む。

建物の駐車場にやって来た酒森は、近づいた車に乗り込もうとするが、そこにはケンや花岡、そしてみつ子が乗っていたので、「お呼びじゃない?」と離れようとするが、捕まって連れ込まれてしまう。

警察の連れて来られた三郎は、その風体からメキシコからの密入国者と断定され、強制送還されることになる。

一方、地元の空港に日本からやって来て降り立った石山は、車から降りて来たケンと酒森とすれ違う。

その頃、雪子が働いていた日本料理店に来ていた塚田刑事は、もう予算がなくなったので日本に帰るしかなくなったと打ち明けながら、追っている三郎の写真を見せる。

その写真を見た雪子は驚くが、知っているのか?と聞かれると、否定するしかなかった。

しかし、そこにやって来たのが石山で、彼もその写真を観ると、これはうちの銀行の鈴木三郎で、1000万持ち逃げしているのだと教える。

それを聞いていた雪子は、お生憎様、三郎さんはもうアメリカにはいないと石山に教え、塚田刑事も、メキシコに送られたらしいと無念がる。

しかし、石山が、メキシコなんて隣の国じゃないですか。自分は金を取り戻すまではどこまでも追いかけますと言うと、それを聞いていた塚田刑事も、こうなったら、コ○キをしても追って行ってやると意気込むのだった。

それを聞いた雪子は三郎の身を案じたのか、ビルの屋上に出ると、一人歌を歌うのだった。

休憩

メキシコ篇

忠治が乗ったワゴン車は、メキシコとの国境を通過していた。

一方、花岡とみつ子に捕まった酒森は、セスナ機に乗せられメキシコ上空を飛んでいた。

盗んだ地図を出せと迫られていたが、そんなもんはとっくに破って捨ててしまった。中味は全部頭の中に入れてあるんだと酒森が適当に答えると、じゃあ、ここでその地図を書いてみろと紙とペンを渡される。

困った酒森は、下界に見えている風景をそのまま映していたが、それにみつ子が気づくと、そう言えばこの辺だったかもしれない。

もうちょっと低空飛行をしてみてくれとパイロットに頼み、地上すれすれになった所で、ジャンプして地上に積んであった藁の上に着地する。

その藁の近づいて来たのが、ふらふら状態になった三郎で、手に持ったトウモロコシを食べようと藁の所で腰を降ろすが、気がつくと手に持っていたはずのトウモロコシがない!

気がつくと、藁の中から手が伸びているので、マッチを擦り、その手に押し付けると、熱さで中から飛び出して来たのは酒森だった。

酒森は、今三郎の手から盗んだトウモロコシを食い、とりあえずは空腹が紛れたので。元気出して行こう!と叫んでさっさと歩き出す。

空腹のままの三郎はその後を付いて行くしかなかった。

町中に来た2人は人だかりがしているので、何事かと中を覗き込むと、そこには楽団の演奏に合わせて踊っていた少女マリア(アンナ・マルティン)がいた。

マリアは酒森が気に入ったのか、持っていた花びらにキスをして投げてくれた。

酒森は、メキシコの言葉が何とかわかるという三郎に名前を聞いてくれと言いながら、金を集めていた少年を呼び寄せると、少年が三郎に気を撮られている隙に、彼が持っていた帽子の中から小銭を盗んでしまう。

その小銭で買ったバナナを食べながら、2人が歩いていると、ろう城で1人で仁義を切っている忠治と出会う。

どうやら、忠治が乗り込んだ車がウィスキーの会社のものだったらしく、積んであったウィスキーをずっと飲んでいて泥酔状態らしかった。

そして忠治は、実は「人魚」のママを殺したのは自分なんだと泣いて2人に詫びる。

事実を知った三郎は怒り出すが、脳天気な酒森の方は、オリンピック選手より一足先にメキシコに来れたんだから良いじゃないかと気にしていない様子。

忠治は、こうなったら花岡とみつ子の前で自殺しようとこれを日本から持って来たんだと言い、ダイナマイト3本出して見せる。

酒森は、とりあえず、今後は3人協力して親分を探してやろう。奴らはピラミッドの地図を探しているようだったから、こちらがじっとしていても向うから近づいて来るはずだと話し合う。

その時、三郎は、近くの家のベランダに出て来ていたマリアを発見する。

忠治はそれを見て喜び、下品にも口笛を吹いたりするが、それが気に触ったのか、マリアは室内に姿を消してしまう。

呆れた酒森は、女を誘い出すにはこうするんだと言いながら、ギターを弾く真似をする。

三郎と忠治も真似をし始めたので、その演奏に合わせ酒森は歌い始めるが、次の瞬間、ベランダから出て来た男が水を酒森の頭に浴びせかける。

その晩、路上で野宿した3人が翌朝目を覚ますと、マリアが男らに拉致されている所だったので、慌てて後を追跡してみる。

すると、とある村にやって来たので、村の中心にある井戸の所に近づくが、気がつくと、銃を構えた大勢の山賊らしき男たちに取り囲まれてしまう。

縛られて牢に入れられた3人は、外から聞こえて来るマリアの悲鳴に気づき窓から様子を観ると、縛られたマリアが山賊から拷問を受けていた。

三郎が、むちを振るっている男(天本英世)がしゃべっている言葉を聞くと、爺さんからもらったはずのピラミッドの地図を出せと言っているようだった。

やがて、マリアは気絶し、酒森らが入れられていた同じ牢の中に運ばれて来る。

帰りかけた山賊に、これから自分たちはどうなるのかと聞いた三郎は、銃殺になるらしいと他の2人に教える。

その時、牢の側にいた鶏に気づいた酒森は、何とかこの紐をほどけないかと言い出し、三郎が気絶しているマリアに声をかけ、何とか自分の紐を解いてもらう。

そして三郎が忠治と酒森の縄をほどくが、酒森は忠治にあの鶏を捕まえてくれと頼む。

忠治がすぐに1匹捕まえると、酒森は、その鶏に、お前が持っているダイナマイトを結びつけろと言い出したので、三郎も、あの連中の中に放り込んで爆発させるんだな?と気づき、すぐに鶏に2本のダイナマイトを結びつけると点火する。

ところが、その火のついたダイナマイトを背負った鶏が部屋の中で暴れ始めたので3人は大慌て。

酒森は鶏が苦手というし、仕方なく、三郎が押さえつけて窓から外へ放り投げる。

3人は気絶したマリアを抱え、爆風を避けるために窓下の壁の陰に隠れるが、気がつくと、鶏は、庭に落ちたどころか、窓のすぐ下の出っ張りの上にいるではないか!

驚いた3人は、反対側の壁の方に移動し、もはやこれまでと覚悟するが、鶏に気づいた山賊が、それを捕まえて愉快そうに、仲間の集まっていた井戸の方へ持って行き、その直後大爆発が起きる。

その爆発で山賊たちは全滅し、酒森らが入れられていた小屋も崩壊していた。

気絶していた酒森の頭上に、ローストチキンが落ちて来たので、気づいた酒森は他の2人も起こし、マリアを急ごしらえの担架に乗せ、近くの道まで運んで来ると、通りかかったバスを停め、病院へ連れて行ってくれと頼む。

バスは、メキシコシティに向かう。

独立記念塔、メキシコ大学、チェプルテペック公園、オリンピックスタジアム、市場通り、ローマス住宅街、プラサメヒコ闘牛場、グアダルーペ寺院、憲法広場、建設省、国立劇場、ファーレス通り…

やがて、病院に着いた3人は、マリアを入院させる。

マリアは三郎に、もうダメ、ありがとう…。もし私が死んだら、このペンダントをグアダルーペ寺院のマリア様に返して欲しい。オルメカのピラミッドからおじいさんが持ち出したものだが、その後、家族には不幸が続き、自分も踊子まで身を落とした。あの山賊たちも、どこかでこの噂を聞きつけて来たのだろうという。

三郎が、ピラミッドまでの道を知っているのかと、酒森の求めに応じて聞いてみると、マリアは頷き気絶する。

看護婦がやって来て安静が必要だというので、3人は外に出て今後のことを話し合う。

酒森は、マリアと一緒にピラミッドに行くために準備金を稼ごうと言い出す。

今までは1つしかないものを2つ作ることに賭けて来たが、今度は本物に賭けるんだ!何事もなせばなる!と酒森は意気込む。

それから酒森と三郎は、ドロで汚れた車を停めては、勝手に泥を拭いてやり、5ペソほどの小遣い稼ぎを始める。

そのドロは、少し先で駐車中の車に、忠治がわざと塗り付けていたものだった。

そんな忠治は、オープンカーを停めていた運転手の顔にうっかり泥を塗り付けてしまう。

その男は、忠治を乗せ、酒森と三郎の元にやってくると、君たちのやっていることは日本人の恥だ!と叱りつける。

男は3人を「3時代の広場」に連れて来ると、自分は、メキシコ大学に留学中の立原(安田伸)と名乗り、あなた方が困っていると聞いて仕事を回してあげようと思うと言い出す。

何でも、彼の父親は日本で芸能プロモーターをやっており、タレントをこちらに呼びショーをやろうと思うのだが、予算の関係もあり、そうたくさんスタッフを日本から呼ぶ訳にも行かないので、君たちには裏方の仕事をやらないかと言う。

すでに、在留邦人を3人雇ったと言い紹介したのは、ケンと石山と塚田刑事だった。

ケンは、君たちにパーティを台無しにされたので、日本人は信用できないとボスに首になったのだという。

立原は、三郎と酒森を捕まえようとする塚田刑事に、どうせ今のままでは日本に帰れないのでしょうから、帰るまで仲良くやって下さいと注意される。

みんな、それもそうだと納得するが、そんな中、酒森は、どうせなら俺たちでショーをやろうぜ!と又調子の良いことを言い出す。

それを聞いた立原も賛成し、「ロス・ガトス・ロコス」英語で言うと「クレージーキャッツ」と言う名前で行こうと提案したので、全員ずっこける。

ギターを銃のように発砲させた中尾ミエが「ビバ!クレージー!」と叫ぶとショーが始まる。

ザ・ピーナツやクレージーや中尾ミエが歌うショーは華やかだったが、それはあくまでも想像の世界。

夢を見ていた立原の元に、父親からの手紙が届けられ、中を読んでみると、金もタレントも送らぬ。お前は勘当だ!と書かれてあった。

これにはさすがの立原もがっくりし、実は遊びが過ぎて自分も借金があるのだと打ち明ける。

かくして、全員一文無し状態となった面々は、ポンチョ姿になり、町中で靴磨きを始めることにする。

そかし、結局、集まった金は13ペソと、最初の客が置いて行った宝くじが一枚だけだった。

呆れたケンは、勝手に離れて行ってしまう。

忠治と三郎と酒森は病院に向かい、マリアに自分たちをピラミッドへ連れて行ってくれないかと頼み、地図はあるのかと聞く。

すると、マリアは自分の背中に描かれていた地図の絵を見せる。

そこに戻って来た塚田刑事たちは、道具の借り賃を払ったら1円も残らなかったとがっくりして報告する。

残った希望は一枚の宝くじだけだったことを知ったマリアは、グアダルーペ寺院のマリア様に祈れという。

立原が言うには、グアダルーペ寺院で願い事をするには、石畳の上を跪いて歩かなければ行けないのだという。

その後、立原、塚田、石山の3人は、仕方なく、グアダルーペ寺院の石畳を跪きながら祈り、忠治、三郎、酒森が宝くじの当選番号を確認しに行く。

持っていた宝くじの番号は「02874」で、当選番号は「02874」だったので、一瞬外れたと勘違いした酒森はその場に宝くじを投げ捨てるが、帰りかけた瞬間、当選していたことに気づき、慌てて、落ちている外れ券の中から、今捨てたばかりの当たり券を探す。

やがて、ようやく当たり券が見つかったので、3人はマリア様万歳と叫ぶ。

一方、病院に戻ってきた、立原、石山、塚田の3人はマリアの姿が消えていることに気づく。

そこにケンが雪子を連れて戻って来る。

彼らは、酒森らに利用されただけだったことに気づくが、立原は、金を手にしたやつが行く所は決まっていると笑うのだった。

その頃、マリアと酒森、忠治、三郎の4人は、ジープに乗ってピラミッドを目指していた。

途中、湿地帯のぬかるみにタイヤを取られた一行は、歩くしかないことに気づく。

じゃんけんで、重い荷物を担ぐことになった三郎だったが、途中の川で、イグアナを観て怯え、背負っていた食料を川に沈めてしまう。

がっかりした酒森や忠治は、とりあえず、病み上がりで一番体力がないマリアをロープで引っ張って行こうと話し合うが、数時間後、ロープを引っ張っていたのはマリアの方で、3人は全員力なくロープに引かれるだけだった。

やがて夜が来たので野宿することになるが、3人は、たき火を使ってマリアが作った謎のスープを飲まされる。

何と、サボテンで作ったスープだそうで、意外に良い味だったので、3人は何度もお代わりをしてその夜はぐっすり寝入ってしまう。

翌朝、目覚めた3人は、マリアの姿がなく、置き手紙が残されていることに気づく。

そこには、ここまで来れば大丈夫。1人でピラミッドまで行けるので、皆さんも欲を出さず、ここから引揚げて下さいと書かれてあった。

忠治と三郎は口喧嘩を始め、坂道を上ってみた忠治は、三角の山しかないとがっかりしながら降りて来る。

念のため、酒森がその道を登ってみると、すぐ目の前にピラミッドがあるではないか!

急いでそのピラミッドに近づいた3人は、階段の手すりの部分にかけられたマリアのペンダントを発見し、ここに返した後、1人で帰ったのだと知る。

諦めきれない酒森は、どこかに中に入る入口があるはずだと言い出し、三郎はこんな所にあるはずがないよと言いながら壁に手を触れるが、そこがどんでん返しになっており、三郎が中に落ちたので、簡単にそこが入口だったことが分かる。

一緒に中に入り込んだ酒森と忠治は、中が暗いこともあり、迷子にならないように手をつないで進もうと提案する。

やがて、少し明るい所に出たので3人は安心するが、一番最後から入って来た三郎は、前に2人いるので、自分が引いている手は誰かと疑問に思い、中に引いてみると、それはミイラだったので仰天する。

他の2人も驚き、さらへ下の部屋へと滑り落ちる。

三郎が懐中電灯を点けてみると、いくつもの穴があるのが分かったので、酒森は三郎の身体にロープを巻き付け、一つの穴の中の様子を見て来るように命じる。

いつも貧乏くじを引くことにぶつぶつ言いながらも、三郎が中に入ると、すぐに悲鳴が聞こえ、ロープの手応えがなくなったので慌てた酒森と忠治が引っ張ってみると、ロープの先には白骨が付いていたので仰天する。

そんな2人の背後の穴から、不気味な光に照らされた三郎が姿を現したので、振り向いた2人は腰を抜かしかけるが、三郎は懐中電灯の灯りで自分を照らしていただけで、穴を降りて行ったらここに繋がっていただけだと言う。

別の穴を除いてみた酒森は、そこにあのオルメカの石像と同じ形をした巨大像を発見する。

その部屋に入ってみると、ピラミッドの頂上の穴から差し込む太陽光が、吹き抜けになって明るく照らしていた。

その石像の左目の下にしずく型のくぼみがあるのに気づいた酒森は、マリアが残していたペンダントと同じ形であることに気づき、そう言えば、あのオルメカの石像の同じ場所には宝石が埋め込まれていたことを思い出し、そのペンダントに付いた女王の涙という宝石を、石像のくぼみにはめ込んでみる。

すると、太陽光がその宝石で屈折し、隣の壁の目を象った突起物を照らし、突然、部屋全体が崩れ始める。

驚いて逃げ出そうとした酒森たちだったが、気がつくと、壁の一部が開き、その奥に観たこともないような財宝が置いてあるのを発見する。

財宝を掘り当てた3人は、一躍大金持ちになり、オープンカーでアカプルコへ向かう。

海辺に繰り出した3人は、現地の美女たちと歌い踊る。

「社長もコ○キも〜♬」

そんな3人の様子を遠くから観ていたのは立原だった。

立原は、連中を港で見つけた、ホテルミラドールに泊まっているらしいと、当地のホテルの従業員として働いていた石山や塚田刑事、雪子に伝える。

その後、オープンカーでホテルに戻っていた酒森は、道路脇で油絵を描いていた絵美を発見し声をかける。

聞けば、アメリカで少し小遣いを溜めたので、こちらに来たのだという。

酒森は、今度は本物のダイヤをあげるから一緒にホテルに来ない?と誘う。

ところが、ホテルに戻って来た酒森たちは、部屋の中に、ケンや花岡、ギャングのボスなどが入り込んでおり、置いていた財宝を奪い去ろうとしていたので驚く。

そこに、雪子、立原、塚田、石山らもやって来るが、全員ホールドアップを命じられる。

銃を構えていたケンから、その銃を受け取ったボスは、お前ももう用済みだと言い、ケンも一緒にホールドアップの列に入るよう命じる。

その時、急に酒森が笑い出し、ボスの頭のガンは、実は手術せずそのままなんだと噓を言う。

ケンに訳させ、その噓を聞いたボスは、心理的に参ったのか、その場で本当に死んでしまう。

それを確認した酒森は、はい、これまで!ご臨終!と言い切る。

しかし、ボスが落とした銃を拾い上げた花岡が、子分たちに財宝を持ち出させ、みつ子の手も引いて連れて行こうとするが、みつ子は、もうこんなことの手伝いをするのはまっぴらですと断ろうとする。

しかし、そのまま強引に部屋の外に連れ出されたみつ子は、忠治さん、助けて!と叫ぶ。

その言葉を聞いた忠治は自殺用に残していた最後のダイナマイトに火をつけると、花岡の後を追う。

花岡は追って来た忠治に銃を向けようとするが、相手が持っているのがダイナマイトだと気づくと一瞬躊躇する。

その時、みつ子が花岡の手にしがみつき、銃を落とす。

忠治はその隙をつき、花岡に飛びつくと、一緒に死ぬんだ!過去後しろ!とわめくが、そんな忠治の左腕に、「みつ子、いのち」と書かれた刺青を観たみつ子は、あなたが死んだら私はどうなるの?結婚しても良いわと言い出す。

その時、駆けつけた塚田刑事が花岡を取り押さえる。

まだ火がついたダイナマイトを受け取った三郎は捨て場書を求めて狼狽するが、そんな三郎に、雪子が持って来た「大和」の風呂敷を見せ、お金はここにあると告げる。

三郎は安心するが、ダイナマイトの導火線はまだ燃えていた。

それを受け取った酒森は絵美と手を繋ぎ、ホテルの中に戻って来る。

その時、壁に貼ってあった「メキシコオリンピック」のポスターを観た酒森は、何を勘違いしたのか、ダイナマイトを聖火のように持ち上げて、得意げにホテルの廊下を走り始める。

やがて、そのまま外に出ると、海に向かって放り投げるが、実はすぐ足下に落ちたことを酒森は気づかなかった。

それに気づいた絵美は、進さん危ない!と叫びながら、酒森の背中を押す。

酒森は、アカプルコの絶壁から海に落ち、絵美も又、後を追うように海に飛び込む。

海面で、どうして俺を助けたんだ?恨んでいたんじゃなかったのか?と絵美に聞いた酒森だったが、そう言えば、ダイナマイトはどうした?と不思議に思いながら上を見上げる。

ダイナマイトの導火線の火は消えており、不発だった。

酒森たちは、オルメカの秘宝をギャングたちから守ったと現地の新聞に大きく報じられる。

メキシコ政府の好意で、彼らは全員、日本へ帰ることになる。

帰りの旅客機の中、塚田刑事は、三郎と酒森に手錠をかけさせてもらおうかと近づくが、そこに警視庁から電報が届いたと持って来たケンが、銀座のマダム殺しは、松村が既に逮捕された。お前は首だ。捜査課長と読み上げる。

雪子と一緒に座っていた三郎は、どうせ僕も首だ…と落ち込んでいたが、ハワイで女将さんに電話をしたら、お金を預けた旦那さんが死んだので、そのお金は自由に使って良いんだってと教えたので、そんなうまい話があるだろうか?と半信半疑の様子だった。

酒森たちはその後、メキシコ料理屋を東京で始めるが、そこにやって来たのは、マリアと見知らぬ青年(沢田研二)だった。

三郎が通訳した所では、恋人が出来たので一緒に来日したのだという。

酒森は、恋人ってこれ?と呆れたように青年(沢田研二)を観る。

それでもマリアは、「君だけに愛を」って言ってくれたのと説明し、青年は「温かいハートにタッチ」しちゃったんですと答える。

テーブルに着いた2人に飲み物を持って来たのはみつ子だった。

みつ子も絵美や雪子と一緒にこの店を手伝っていたのだ。

酒森たちは楽器を演奏し始める。

その曲に合わせ、マリアと恋人もゴーゴーを踊り始めるのだった。