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愛と誠('12)

「巨人の星」「タイガーマスク」「あしたのジョー」など一世を風靡したマンガ原作者梶原一騎原作の映画化。

原作はほとんど読んだことがない。

当時から人気があったことは知っていたが、不良や恋愛テーマ自体に最初から興味がなかったため、ドラマ版や当時の映画版も観ていない。

今回、予告編などで、ミュージカル風というか、音楽映画風の画面を観なければ、今回もパスしていたかも知れない。

予想通り、別にミュージカル映画というようなものではなかったが、当時から何となく感じていた梶原一騎原作もの全般特有のアナクロセンスがかなり今風に脱臭されており、代わりに、三池監督お馴染みのコント風悪ふざけセンスで処理された奇妙な映画になっていた。

予算も少なかったのか、いつものように、実写で作りたい部分だけセットを作り、予算がかかりそうだったり面倒そうなシーンは、アニメや学芸会風書き割りセットなどの手法で簡略化されているため、チープな印象もあるのだが、それ以前に、「愛と誠」は純愛映画でもなんでもないと公開前の宣伝で主役の妻夫木聡がぶちまけたように、確かにこの映画は「純愛映画」のようなものではない。

子供時代の愛と誠が出会う冒頭のアニメの雪山シーンで2人の心が結びついたとするならば、11年経って、高校生になった早乙女愛のキャラクターはあまりにも屈託がなさ過ぎる。

劇中で太賀誠が愛のことを何度も「勘違い女」と罵倒しているが、「勘違い女」にも見えない。

ただの変な少女になっているのだ。

断片的に覚えている原作の愛は、過去に誠を傷つけてしまった負い目をずっと胸に秘めているためか、暗い印象の高校生だったような気がする。

このキャラクターをこの映画版では、脳天気なお嬢さんに変えているため、彼女が誠の過去に対して負い目を持っていると言う部分が、彼女があっけらかんと話すセリフ以外に全く伝わって来ない。

おそらくこれは意図的な処理ではないかと思う。

三池監督は今更、臭い純愛ものなど描くつもりなど最初からなかったのだ。

同じような暗いキャラである高原由紀と差別化するためだったとも思えるが、それはそれで個人的には正しい判断だったように思う。

ただし、そのことによって、この映画は、マニア受けはすれども、一般受け、特に若い女性たちの観客層をそっくり捨て去ってしまったと思えるのだが、それも正しい判断だったと思う。

今さらアナクロな素材の純愛物など忠実に描いたとしても、今の少女コミックや携帯小説などに馴染んだ少女たちは興味を示さなかったように思うからだ。

結局、純愛部分は徹底的に茶化すことにしたようだ。

喧嘩シーンの方は本来好きなのか、デジタル処理なども加え、省略形のような形ながらそれなりに見せてくれているように思う。

最終的にこの映画で印象に残るのは誠でも愛でも岩清水でもなくガムコである。

次いで岩清水、愛、誠、座王権太くらいの順で、裏バンの高原由紀が一番印象が弱いような気がする。

そのため、クライマックスの盛り上がりが今ひとつな感は否めないのだが、何だかこの映画での屋上決闘シーンは、「ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲」のクライマックスを思い出させたりもする。

おそらく、原作とは相当イメージが違っているとは思うのだが、原作を知らない自分にとってはこの作品、かなり面白かったことは確かである。

例え素人が歌っていたにせよ、映画での音楽シーンはやっぱり魅力があると改めて感じた。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「愛と誠」製作委員会、梶原一騎+ながやす巧「愛と誠」原作、宅間孝行脚本、三池崇史監督作品。

地球と同じくらい大きな月を並べて子供が描いたらしいクレパス絵

愛は戦いである…などと言ったテロップとアニメによる回想シーンが重なる。

別荘を出て一人雪山にスキーで出かけた少女は、突如、崖の上から落下し、スキーが止まらなくなる。

その時、たまたま近くにいた1人の少年が彼女にぶつかって行きスキーは止まるが、白い雪の上に血のしずくが垂れる。

あんた、一番でかい別荘の子だろう?と男の声がする。

金持ちだから助けたなんて思ったらぶっ飛ばすぞ!

タイトル

それから11年…

1972年

日本が一番元気だった時代。

誰もが豊かになれると信じていた時代…

東京西新宿にある「新宿の目」の前に、高校生になった早乙女愛(武井咲)が、同級生の女の子と一緒にしゃがんでいると、そこに1人の風来坊風の男子高校生太賀誠(妻夫木聡)がやって来る。

その前に立ちふさがった不良グループの代表が、花の東京の喧嘩殺法を見せてやる!と粋がる。

愛は、風来坊の青年の額に残っていた大きな傷跡を発見、あ!あの傷は!と驚く。

「止めろと言われても…」青年がそう呟き、やがて西城秀樹の「激しい恋」歌い出す。

そのリズムに釣られ、不良グループも身体を動かし、次の瞬間、両者間で壮絶な喧嘩が始まる。

その時、お止めなさい!喧嘩はいけないわ!暴力では何も解決しない。やるなら私を倒してから行って!などと奇妙なことを言いながら目の前に立ちふさがった愛を観た誠は、俺はブルジョアが大嫌いだ!この勘違い女が!と毒づくが、一瞬ひるんだかに見えた愛は、私は負けないわ!と気丈にも誠を見つめる。

パトカー音が近づいて来たので、不良グループと共に誠も逃げようとするが、気がつくと、足に愛がしがみついていたので逃げ遅れ、逮捕されてしまう。

助け起こされた愛を観た警官は、彼女が有名な早乙女財閥のお嬢様だと気づくが、愛は、私は特別扱いされたくありませんと毅然として答える。

その愛が、連れて行かれる誠の後姿を観ながら、あの人はどうなるんでしょう?と聞くので、あの様子だと相当な札付きのようですから、少年院送りでしょうと警官は答える。

少年院に連れて来られた誠の前に立ちふさがったのは、掃除用の濡れ雑巾を絞っている不良たちだった。

誠と不良グループが接近して一発触発状況になった瞬間、付き添っていた看守が、大河誠、釈放だ!といきなり告げる。

青葉台高校に入学させられた誠に、校長は、PTA会長からのたっての頼みだと、訳が分からない表情の誠に教える。

これで良いのよ…、そう呟きながら、誠の様子を観ていたのは早乙女愛だった。

名門青葉台学園高校3年1組に在籍していたのが彼女だったのだ。

愛は(公園の鉄棒で大車輪してみせ、子供たちから拍手を受ける)スポーツ万能、成績も優秀なお嬢様だった。

大河誠が新入生として教室に連れて来られるが、態度がでかいので、レスリングでオリンピックにも出たことがあると言う教師青田(前田健)が、帽子を脱げと言いながら、帽子を脱がせると、その額に大きな傷があったので、まるで月光仮面だなとからかう。

その言葉に敏感に反応した誠は、子供時代、同じように額の傷を近所の子供たちからからかわれ、誰が月光仮面のおじさんなんだよ!と怒鳴りながら、あっという間に倒してしまった過去のことを思い出していた。

ポケットに手を突っ込んだままだった誠の右手を無理矢理外へ出させようとした青田だったが、次の瞬間、出した右手が顔面に当たり、青田は鼻血を噴き出し気絶してしまう。

誠は、今、手を出せって言ったのはこいつだよな?皆証人になってくれるよな?とクラスメイトたちに話しかけるが、その様子を教室の入口から観ていたメガネの学生が、悪魔のような男だと呟く。

そこに騒ぎを聞きつけやって来たのが早乙女愛だったので、誠は、出たな、勘違いなブルジョア女!と罵倒するが、それを聞いたメガネの青年が、この人のことを悪く言うと、僕は…僕は…と興奮気味に言いながら愛に近づいて来る。

それに気づいた愛は、半年前、そのメガネの男、岩清水弘(斎藤工)からもらったラブレターのことを思い出す。

その手紙の最後には、「僕は君のために死ねる」と書かれてあった。

その後、愛は岩清水に、何を求めているの?と問いかけるが、岩清水は何も求めてない。君は君であり続ければ良いんだ。君が君らしく生きるために、僕は存在する。君のためなら死ねる…と答えたのだった。

場面は現在の教室に戻り、岩清水は、「愛してる~とても~」と、にしきのあきらの「空に太陽がある限り」を熱唱し始める。

しかし、それを観ていた愛は不気味がる。

おいメガネ!と呼びかけた誠がうざそうに突き飛ばすと、メガネ、メガネ言うな!メガネは顔の一部なんだぞ!と岩清水は立ち上がりながら抗議する。

生徒会長だと自己紹介した岩清水は、僕は絶対暴力を使わないと宣言し、愛も、誠さん、何もかも、暴力で解決しないのよ。私がお父様に頼んで、あなたをこの学園に入れたのですと打ち明ける。

しかし、担任を怪我させた事件はすぐに校長の耳にも届き、彼と教師たちが校庭にいた愛の元にやって来て、こんなひどい暴力はないと訴えるが、愛は、彼がこうなったのには訳があるのですとなだめる。

一緒に付いて来た岩清水は、ふてくされたように立っていた誠を観ながら、彼はどうしようもないクズだぞとバカにすると、それを聞いていた誠は、このお嬢さんがここまでする理由は1つしかないだろ?このお嬢さんは俺のことを愛してるんだよと小馬鹿にしながら答える。

校長は、警察に渡した方が良いと再度愛に訴えるが、愛は、この人が言うことは間違いありません。私は…誠さんを愛していますと告白し、命かけても~♬と、フォーククルセイダーズの「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌い始める。

踊りながら、誠の左腕に自分の手を組んで廻ろうとするが、誠に突き飛ばされるが、気丈に愛は歌い続ける。

そんな愛に駆け寄った岩清水は、自分が手を差し出し、愛と回転してやるが、愛はそんな岩清水を突き飛ばし、又しつこく誠と手を組もうとするが、又もや突き飛ばされる。

そんな愛と港にやって来た誠は、感動したぜ、あんたの思い切りの良さにはと褒め、真っ当な高校生活に必要なもの、金を寄越せと迫る。

愛は、今でも、誠のための安アパートや食事代は負担しており、チキンラーメンに卵を2つ入れてやったりして優しさを示していたので、これ以上、まだお金を用意するの?と戸惑いながら聞き返す。

誠は、アルバイトしてたら勉強する時間ないだろ?どうだねお嬢さん?と詰め寄ってきたので、愛は急に寒いわ…と訴える。彼女の背景は雪山に変化していた。

帰宅した愛を待っていたのは、裕福な両親早乙女将吾(市村正親)と美也子(一青窈)だった。

金のことを切り出すべきか悩んでいた愛の心も知らぬ風に、両親は明るく歌い始める。

あげくの果てに、愛まで一緒に手を組まされポーズを決めさせられたので、もうこれ以上両親から金はもらえないと覚悟するのだった。

愛は、純喫茶「窓」と言う洋館風の怪し気な店のウエイトレス募集の貼紙を観て、生徒手帳に記されている校則を破り、自らアルバイトをする決心をする。

恐る恐る店長に、ここは普通の喫茶店ですか?と聞く愛に、店長は、普通の喫茶店でなければ、どんなことするの?と面白そうに答える。

そんな愛の様子を外から窓越しに監視していたのは岩清水だったが、迷っている様子だった愛が結局、愛らしいコスチュームに着替えて、嬉しそうに仕事を始めたので、やる方向なんだね…とがっかりする。

その店では、男女の金粉ダンサーがステージ上で踊ったりする、ちょっと普通じゃない喫茶店だったので、愛は男客から絶えず連絡先を聞かれたりする。

途中、控え室に戻った愛が、誠さんのためならこんなことなんでもないわと呟いていると、同僚のホステスが不思議がり、誰と話しているのと言いながら近づいて来たので、お客さんからの嫌らしい仕打ちに耐えていただけですと愛が答えると、話しかけられただけじゃないとホステスは呆れる。

一方、誠は、夜の新宿の繁華街で一人飲んでいたが、地回りから因縁を付けられ、又もや大げんかをしてしまう。

この騒動は警察沙汰になってしまったので、さすがに臆病な校長はお手上げになり、誠にこれはまずいですよと叱るが、誠は、誰もかばってくれと言ってねえよとふてくされているだけだった。

そんな誠に岩清水は、君が繁華街で遊んでいる間に、早乙女くんは…と教える。

誠を連れ、「窓」の外にやって来た岩清水は、愛がステージの上に上げられ、客たちからやじられている姿を見せられる。

愛は戸惑っている様子だったが、やがて持ち前の脳天気さを出し、何となく踊り始める。

君のためにあんなことをやっているんだと岩清水は誠に訴える。

やがて、面白がった客たちが愛と同じステージの上がり、一緒に踊り始める。

早乙女くんにこんなことをさせておいて良いのかね!と岩清水が迫ると、誠は黙って帰ってしまう。

その後ろ姿に向かい、少しは思い知ったかと呟く岩清水だった。

その日帰宅した愛を待っていたのは、厳しい表情の両親だった。

聞けば今日、太賀誠がここに来て、お前が喫茶店アルバイトしていると言い、証拠の写真を見せられたという。

さらに、口止め料として100万要求して来たとも…

愕然とする愛に向かい、美也子は、口止め料だけではなく手切れ金として払ったと打ち明ける。

将吾は誠を退学処分にしたと言い、美也子は、花園実業に編入するそうよと人ごとのように告げたので、聞いていた愛は思わず、なぜ?と聞いてしまう。

花園実業は、徹底的に荒廃した高校だった。

授業中、講義をまともに聞いているのは数人程度で、後は完全に教師の存在を無視しているような状態だった。

そんな中、マガジンを読んでいた誠に、ガムコに挨拶しなと立ちはだかったスケバンがいた。

その時、男子学生が教室内で打った野球のボールがまともにガムコの側頭部に命中するが、ガムコは痛くもなさそうに、教室で野球するなって言ったろう?とボールを投げ返しただけだった。

ガムコ?と誠が苦笑したので、今笑ったかい?と睨むガムコに、親衛隊の1人が、少し考えたんですけど、こいつ転校生だから知らないんじゃないですかね?とガムコに説明し、ガムを食っているからガムコって言うんだよと誠に教える。

誠は、疲れた様子で立ち上がると、そんなガムコを一蹴りでベランダ部分に追いやってしまう。

ガムコはベランダの柵でバランスを失い、真っ逆さまに落ちかけたので、近づいた誠が、その両足を持ってやる。

お陰で、ガムコはスカートがめくれ上がり、パンツ丸出し状態になるが、両足を持たれて空中に突き出されているのではどうしようもなかった。

ガムコがやられたという知らせは直ちに学校中に広まる。

話を聞いた教師たちは、久々に裏バンが大暴れするかも知れませんぞと噂し合う。

何とか、教室に無事戻ったガムコは、あんな奴観たことねえ…と何だかうっとりしたような表情になっていたので、親衛隊たちはまさかと思いながらも心配する。

しかしガムコは誠に近づくと、裏バンには禁句があるんだと教え、無理矢理、誠の手にガムの包み紙を押し付け離れると、奇妙な表情をして見せる。

どうやらウィンクをしてみせたようだったので、思わず誠はこみ上げて来るものがあり、トイレで嘔吐する。

そんな誠に女学生が話しかけて来たので、ここ男子トイレなんだけど?と誠が答えると、家ここは女子トイレですとその女性とは言い、後からは行って来る女生徒にバレないように誠と一緒に個室に閉じこもると、いきなり藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」を歌い始める。

歌いながら何を思ったのか、個室の上に這い上がると、その枠の外から顔をのぞかせるという不思議な体勢で歌い続けていたその女生徒は、最終的に、個室の外でムーディーな照明を手に歌っていた。

他の女生徒たちがいなくなったと知った誠はトイレから出て行く時、かばってくれた女生徒に名を聞くと、彼女は高原由紀(大野いと)と教える。

誠はその時、先ほどガムコがくれたチューインガムの包みを落として行くが、その裏には「悲しい女」と言う禁句が書き込まれていた。

その頃、プールの中に立って、「何でや~!」と叫んでいたのは、自分がおっさんにしか見えへん病気にかかっていると思い込んでいる老け顔の座王権太(伊原剛志)だった。

しかし、彼の親衛隊連中は、中2の時から変わらないし、むしろ若返ったぐらいですとお世辞を言い、そのヅラ、似合ってないですとアドバイスまでしてくれたので、お前らええ奴やな…と権太は感動する。

そんな権太の元に、ユキさんが!と使いがやって来たので、俺のユキがどないした!と権太は表情をこわばらせる。

その頃、岩清水は、勝手に早乙女の屋敷に侵入し、愛に、ポロッポ~!と鳩の鳴きまねをして気づかせていた。

なぜ、人の家に入るの?と愛は素朴な疑問を口にするが、岩清水は、一緒に期末試験の勉強をしませんか?と誘いかける。

一方、高原由紀と一緒に歌舞伎町にやって来た誠は、あんた、花園実業の子なら、歌舞伎町に詳しいんじゃないか?と聞いていた。

しかし、いつもツルゲーネフの「初恋」の本を持ち歩いている優等生風の由紀は、そう言うのはあまり…と口を濁すだけだった。

あなたのような人が、あんな腐った学校に通っているとは…と誠が呆れると、腐った学校で悪かったな~!と前方に立ちふさがったのは、権太の親衛隊員たちだった。

早乙女愛の家で、一緒に勉強をしていた岩清水は、君が以前の早乙女愛に戻って良かったと安堵していた。

そこに、母親とメイドがお茶を持ってやって来て、岩清水の成績が優秀なことを感心してみせる。

そんな岩清水に、愛は、何のためにそんなに勉強するの?と問いかける。

良い大学に入るためじゃないと、呆れたように母親の美也子が答えると、何のために良い大学に入るの?と再び愛は問う。

可能性が広がるから。より幸せになる可能性が広がるからだよと岩清水は自信ありげに答える。

その頃、誠は、親衛隊と大喧嘩の最中だった。

岩清水は、自分にとっての幸せとは、愛する人が幸せになることですなどとキザな言葉を続けていた。

そのとき、出かけてきますと言いながら立ち上がった愛は、さっきから胸騒ぎが止まらないのと告げる。

喧嘩していた誠の所に駆けつけた愛は、止めて!誠さん!お願いだから、これ以上人を傷つけるのは…と制止しようとするが、誠は、俺はお前という奴が心底鬱陶しい!と吐き捨てる。

それでも、私の前では素直になれないのねと平然と答えた愛は、あなたのために生きる。それが私の償いなのですと言うのだった。

その時、座王権太が姿を現し、親衛隊を従え「狼少年ケン」を歌いながら誠に近づいて来る。

何だよ、おっさん!と誠がガンを飛ばすと、何で俺の病気のこと知っとるねん?と言いながら、権太は強烈なパンチをお見舞いする。

ぶっ飛ばされた誠は、これまでとは桁違いに強い敵が出現したことを悟る。

一緒に駆けつけた岩清水は、なんて恐ろしい奴だ!と驚愕する。

その時、外階段の踊り場に姿を現した高原由紀を見つけた権太は、お前のせいでわいの由紀はんが不機嫌になったやないか!と言いながら、制止しようとする愛の叫びもむなしく、誠をこてんぱんに叩きのめして行くと、何や、もっとおもろい奴かと思うとったのに…、つまらんのう…と物足りなさそうに呟く。

巨大な夕日をバックに、倒れた誠に寄り添う。

その後、学校にいたガムコがそわそわしていたので、親衛隊たちは嫌な予感を感じるが、ガムコは、別に太賀に会いに行くんじゃないぞなどと懸命に言い訳しながら教室を出て行ったので、めちゃめちゃ動揺しまくりだな…と仲間たちは呆れる。

教室を出たガムコはスキップしながら学校を後にする。

病院に入院した誠を見舞っていた愛は、花を飾った後、学校に出かける。

それと入れ違いの形で誠を見舞いに来た高原由紀は、愛が飾っていた花を、窓から捨てる。

その直後に病室に入りかけたガムコは、先に高原由紀がいることを知り、持って来たヒマワリの花を病室の前の床に置き、悲しそうに立ち去って行く。

さらに、権太の親衛隊たちが病院にやって来るが、無理矢理ベッドから起き上がり、病室を出て来た誠が、廊下で出会ったその連中を片っ端に叩きのめして行く。

その頃、座王権太は、手下たち相手に「猿カニ合戦」の話を聞かせていた。

この中で一番悪いのは、牛のウンコだというのだった。

その時、権太さん!と手下の1人が駆け込んで来ると、何やと!!と何の説明を受けてないのにいきり立った権太は、その場にいた手下たちを片っ端に叩きのめすと、何でや~!牛のウンコ~!と絶叫するのだった。

早乙女愛も、授業中だったにもかかわらず、又胸騒ぎを感じ、いきなり立ち上がると、嫌な予感がする。私はこんな所で幸せに暮らしている場合じゃないわと言い出す。

その後、愛は、花園実業に転校していた。

その新入生紹介の挨拶を双眼鏡で窓から覗いていた岩清水は、自分も花園実業に転校することにする。

驚く愛に、君を危険な目に遭わすことは出来ない。君のためなら死ねると、岩清水はいつもの臭いセリフを発するが、すかさず、スケバンからスリッパで頭をはたかれる。

放っとけ、そんな雑魚…と、教室内のソファにふんぞり返っていたガムコが注意するが、愛が誠のことを好きだということに気づくといら立つ。

一方、又もやメガネ呼ばわりされた岩清水は、メガネをバカにすると、メガネに泣くぞ!と言い放つが、どう言うこと?とスケバンに突っ込まれる。

その日、愛と一緒に下校することにした岩清水が、なんで太賀は花園に入ったんだ?と疑問を口にすると、理由があるのよと愛は答える。

何故奴は東京にやって来たんだ?と又岩清水が問いかけると、彼が不幸な人生を送って来たは私のせいなのと愛は答える。

その頃、高原由紀と一緒に歩いていた誠は、俺は復讐をするため東京に来たんだ。俺の人生をめちゃめちゃにした奴に償いをさせるため…と教えていた。

それは誰なの?何で私には何でも話してくれるの?と由紀が聞くと、あんたが「悲しい女」のような気がするからさと誠は答える。

すると、立ち止まった由紀は、久々に聞いた…、違うと思っていたのに…と呟く。

そして、ちょっとしたくなっちゃったと言うと、付いて来てと誠を連れて来たのは、ラブホテルの回転ベッドだった。

セーラー服姿でベッドに横になった由紀は、早く滅茶苦茶にして!と誘うが、入口の所で呆れたように観ていた誠は、あんた、本当に「悲しい女」だな…と言い捨てて去って行く。

ベッドに取り残された由紀は、ぶっ殺す!と呟くと、愛読書の「初恋」の本に手を伸ばすのだった。

その後、飲屋街に来た誠は、「スナック お富」と言う一件の店の女将を、開いていた入口からじっと見つめる。

女将(余貴美子)は自らも酒を飲む、だらしない女のようだった。

その女将が「酒と泪と男と女」を歌いながらふらふらと店の前に出てきそうになったので、誠は付いて来た由紀と一緒に、向かいの店に身を隠す。

すると、逃げ込んだ店の主人が、あの女将を知っているのかい?暴れ出したら手に負えないので近所迷惑な女なのだと誠に教える。

その言葉を証明するように、店に戻った女将は客に絡み出し、暴れ始める。

店を出て変える誠に、あの女なのね、あんたの人生をめっちゃめちゃにした人…と由紀は話しかけるが、俺を棄てた女だ…と誠は吐き出すだけだった。

ボウリング場には、ガムコが裏バンの高原由紀を前に、全員そろいました!と直立不動の姿勢で報告をしていた。

そして、メス女をさらってきましたと麻袋の中から引っ張り出したのは、縛られた早乙女愛だった。

太賀誠の女みたいなので…と報告するガムコ。

愛の顔を観た由紀は、哀しみの欠片も知らない日々を送って来た顔だねと呟く。

この女餌に出来るかも知れないね。飲み屋の女も切り札になりそうだと言う由紀の言葉を聞いたガムコは、配下のキナコを連れ、飲み屋の女んことを調べに向かう。

残った由紀は、思ったより骨がない、センチな男なんだけどね…と一人呟く。

その頃、線路脇の釣り堀にいた誠の元にやって来た岩清水は、愛が君のために捕まったと伝える。

しかし、それを聞いた誠は動揺するでもなく、どうして俺のためにスケバンに捕まるんだ?と聞くと、早乙女くんは君のために転校したんだと岩清水が答えたので、結果的に、俺のピンチを作っただけじゃないかと誠は呆れ、お前、あいつのために死ねるんじゃなかったのか?と岩清水に問いかける。

迷惑がっている誠に対し、岩清水は、君の人生を不幸にしたのは自分だと思っているんだ。悔しいが、早乙女くんにはあんたに対しては無償の愛があるんだ。母親の子供に対する以上の愛が…と岩清水は教える。

それでも、お前が行けば良いじゃないかと相手にしない誠に、僕が死んでも早乙女くんが助かるとは限らない。僕の望みは、早乙女くんが助かることだ。それが出来るのは僕じゃない。君なんだと岩清水は懇願する。

俺が助けに行ったら、あのお嬢さん、ますます俺に惚れちゃうかも知れないぜ。それで良いのか?とからかう誠。

僕の幸せは彼女が幸せになることなんだ。頼む!と答える岩清水。

その頃、飲み屋の女はどうやら太賀の母親みたいですとガムコから報告を受けた由紀は、拉致しに向かおうとするガムコを止め、私は自分をコケにする奴は許せないんだよと呟く。

やがてやって来た誠を前にした由紀は、びっくりしたかい?私が、実質、花園を仕切ってる人間だよと自己紹介する。

愛はやって来た誠の姿を観ると、何故私を助けに来たの?と問いかけるが、誠は、別に助けに来てねえし…と呟くだけだった。

私をバカにした奴を私は許さない!と睨みつける由紀に、つくづく悲しい女だな…と同情する誠。

私の生い立ち! 3年C組高原由紀!と言うと、画面は安い学芸会のような雰囲気になり、赤ん坊の人形が書き割りの女の股間から生まれ、血まみれの嬰児の人形が檻の中に落ちる様が描かれる。

生まれたとき、お父さんはいませんでした。

お母さんは新宿のトルコ風呂で働いていたので、いつも朝まで帰って来なかった。

お母さんは酒を飲んでは暴力を振るった。

やがて、お母さんは、ヤクザみたいな男と住み始め、その男がちょっかいを出して来たので、包丁で刺してやりました。

警察に連れて行かれて、母とは別々に暮らすようになりました。

ヤクザの親分が申し訳ないって言って、私を養女にしてくれました。

友達は皆怖がって、去って行きました。

話を聞き終えた誠は、あんた、自分が一番悲しい女だと思っているんじゃないか?と口にする。

ビルの屋上にいた愛が吊り上げられる様子を下から見上げていた誠は、あんたがいなけりゃ、もう少し話は簡単だったんだとうんざりしたように吐き捨てるので、愛は涙ぐんでしまい、お母様が狙われていますと伝えようとするが、誠は、俺を棄てた女だからむしろどうなっても良いと平然と答える。

行かせないわよ!と意気込む由紀に対しても、だから、行かねえって!と誠は強調する。

由紀は濃硫酸の瓶を取り出し、愛の顔にかけようとするが、誠はそれでも平気な様子で、俺ははなから行く気ないって言ってるだろ!と苛つき出す。

そんな誠の言葉が聞こえないかのように、由紀は愛に迫ろうとするので、結局、硫酸かけたいだけだろ?と由紀に突っ込む。

愛は、いつでも硫酸をかければ良いわと由紀に対して強がり、あなたは決してお母様を見殺しにするような人じゃないわ。本当は心の優しい人なのですと誠に訴えかける。

由紀はすみれに瓶を渡し、お望み通り硫酸かけてやりなと命じる。

次の瞬間、誠はけりを飛ばし、すみれが持っていた硫酸の瓶を蹴落としたので、すみれは硫酸を浴び床にのたうち回る。

由紀はトルコ風呂のネオンが輝く愛を屋上に連れて来させる。

それを追って来た誠の前に現れたのは座王権太17才だった。

由紀は権太に、殺しちまいなと命じる。

権太が誠をぼこぼこにし始める中、愛は、止めて!何でも言うこと聞きますと訴えるが、由紀は良い子だねと呟くだけだった。

あなたは私の永遠のヒーローなのです。白馬に乗った王子様なのですと誠を見つめた愛は、この人だけは助けて下さい。私はどうなっても良いからと由紀に嘆願する。

由紀は、2人仲良くあの世に行きな!と言いながらツルゲーネフの「初恋」の本を開くと、中がくりぬいてあり、その中には特殊な形をしたナイフが並んでいた。

権太が、誠のとどめを刺そうとしたとき、誠の額の傷に気づき、何や?月光仮面みたいやなとからかう。

次の瞬間、由紀はナイフを投げつけるが、誠の前に立ちふさがった愛に突き刺さる。

既に力尽きていたと思われた誠は、「月光仮面」という禁句でよみがえったように権太を叩きのめすと、傷ついた愛を助け起こす。

いつまでもメロドラマやってるんじゃないよ!と絶叫した由紀が又ナイフを投げつけるが、それを身体で受け止めた誠は、由紀を倒し、ナイフを奪い取ると、その右手の手のひらに向かい、二度と投げられないようにしてやろうか?と迫る。

しかし愛が必死に、止めて!誠さん!と声をかけた後倒れ込む。

ありがとうと、倒れながら呟く愛。

そこに駆けつけた岩清水に、愛を病院に連れて行かせ、自分はどこかへ向かおうとする誠だったが、君だって重傷者ないかと岩清水は声をかけるが、俺にはまだやらなくちゃならないことがあるんだと誠は答える。

花園警察署から出て来た誠の母親を、近くで監視していたガムコたちは、拉致しようとタイミングを計っていたが、そこに、ボスと権太が!と2人が倒された知らせが届く。

それを聞いたガムコは、さすが、一瞬でも私が彫れた奴だけのことはあると感心し、私もそろそろ潮時だなと言うと、それまでずっと噛んで来たガムを吐き捨てる。

それを観た親衛隊たちは、ガムコさん、あんたがガム吐いたらガムコじゃないでしょう!と抗議するが、私は普通の女の子に戻ります!とガムコは、キャンディーズみたいなセリフを言い、 尾崎紀世彦 の「また逢う日まで」を歌いながら去って行く。

誠の母親は、踏切の途中にやって来ると、線路の上に座り込んでしまう。

もう死ぬしかねえな…そう呟く彼女の背後から列車が迫っていた。

そんな母親の背中にしがみつく誠。

死なせてくれ!もう生きる勝ちなくなったんだよと、誰が抱きついたかも気づかずわめく母親。

止めねえよ。止めねえから騒ぐなよと、背中で声をかける誠。

俺も付き合って死んでやるぜ。寂しい人生だったからな…と呟く誠は、母親と二人で暮らしていた少年時代のことを思い出していた。

まずは、父親がいた時代の思い出から始まった。

トウモロコシを食べていた少年誠(加藤清史郎)に、洗濯物を取り込んでいた母親が、もうすぐ父ちゃんが帰って来るから銭湯へ行ってお出でと優しく声をかける一番良い時代だった。

次の記憶は、家に戻って来た少年誠が、飲んだくれている母親の姿を観て立ち尽くす所だった。

その回想を破ったのは、止めてくれ~!死ぬのは嫌だ~!とわめき出した今の母親の絶叫だった。

しかし誠は暴れる母親を押さえつけ、じっとしてろよ。俺1人で死ぬのは悲しいし…、おいおい死にたくないのかよと愚痴る。

助けて~!誠~!お母ちゃん、死にたくないよ~!と絶叫する母親の言葉を聞いた誠は、列車がぶつかる一瞬前、母親を抱いたまま線路脇に転がる。

一年の恐怖を味わったものはもう自殺する気はなくなるらしいぜ。まあ、元気でな、最後の最後に、俺の名を口走ってくれたんで気が変わったよ、おふくろ…達者でな…と言い残して誠は立ち去って行く。

その言葉を聞いた母親は、去って行く若者が我が子の誠だったことにようやく気づくと、その場に土下座して無言の謝罪をするのだった。

病室で目覚めた早乙女愛に、ずっと付き添っていた岩清水は、誠さんは?と聞かれたのでさすがに気落ちするが、ごめんなさいと謝られると、来るよ、太賀誠は必ず来る!と宣言する。

確かに、誠は病院に向かっていたが、途中、路地から現れたフード姿の暴漢に、いきなり背後からナイフで突き刺される。

誠は思わず、逃げようとした男のフードを剥がすと、それは青葉台学園高校で誠から殴られた青田先生だった。

それでも愛の病室に誠はたどり着いたので、岩清水は静かに病室を後にする。

誠は愛の頭を優しく抱きしめてやる。

愛は、来てくれたのね。勘違いじゃないのね、誠さん…と満足そうな笑顔になる。

病院の階段を上り帰りかけていた岩清水は、そこに大量の血痕が落ちていることに気づき、はっと病室の方を振り返る。

愛を抱きしめていた誠の手が力尽きたかのように離れる。

(最初の雪屋までのシーンがアニメ描写で)一番でかい別荘の子だろう?お前、名前は?と聞く少年誠。

早乙女愛ですと答えた少女を、愛のピッケルが刺さって額に大怪我をした少年誠は、おぶって別荘まで送り届けてやる。

お金持ちの子供だから助けたなんて思ったらぶっ飛ばすぞ。それから、このことは秘密だぞ。オンンアのこのために怪我したなんてかっこ悪いからな…と背負った愛に命ずる少年誠。

地球を覆うほど大きな月が横に並ぶクレパス画風のアニメ。


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