TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

遊侠三国志 鉄火の花道

裕次郎、旭、ルリ子、英樹と言った日活の人気者たちが勢揃いした任侠映画。

話の展開は良くある東映任侠もののパターンにそっくりで、特に新鮮みはなく、主役の裕次郎も肥満が始まっており、顔も後年の「太陽にほえろ」のボス顔に近くなっていることもあり、シャープさの欠片もない所が残念な所である。

同じく旭の方も肥満は始まっているのだが、こちらはキャラクター設定が面白く出来ているので、まだ魅力はある。

浅丘ルリ子は、濃い化粧でかろうじてまだきれいさを保っているが、さすがに若い頃の瑞々しさはない。

高橋英樹だけがまだ若く、肉体的には輝いている時期だが、役柄がまじめ過ぎ、面白みに欠けるキャラクターになってしまっているのも惜しい。

日活時代の高橋英樹は同じようなまじめキャラが多いようで、今ひとつブレイクしなかったように感じるのもその辺りが原因ではないだろうか?

三島雅夫の悪振りや野呂圭介のぐず安などは、良くあるキャラクターと言った感じで、特に悪くはないが強烈さもあまりない。

結局、この作品で印象に残るのは、片目の一本松の破天荒なキャラクターだけかも知れない。

全体的に、おじさんたちが集まって作っている感じで、それなりにそつなくまとめているが、観客にびんびん伝わって来るような若いエネルギーみたいなものはもはや失われてしまった印象がある。

途中、活弁士(松田春翠)がしゃべっている無声映画のスクリーンの前で斬り合いをやったり、駆け落ちの成れの果ての醜悪さを嫌った一本松が、あっさりその男の方を殺してしまう辺りなど、興味深いアイデアがないでもなく、全体として特に出来が悪いという訳ではないのだが、何となく凡庸な印象は拭えない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1968年、日活、星川清司脚本 、 松尾昭典脚本+監督作品。

大正末年の冬 北岡の町

暗がりでドスを抜き待ち受ける男たちに、見張り役の男が駆け寄って来て報告する。

近づいて来たのは、大寺組の親分大寺常造(三島雅夫)とその娘おりん(浅丘ルリ子)の乗った人力車、それぞれ代貸しの杉野軍次(葉山良二)と小村伸次郎(石原裕次郎)が護衛していた。

常造は横を歩く軍次に、婚礼まで後10日と話しかけ、おりんの方は、横に付き添って歩いていた伸次郎に目をやっていた。

そんな一行の前に立ちふさがった暴漢たちに、軍次と伸次郎が立ち向かう。

タイトル、スタッフロール

その後、大寺組に、旅の途中病人が出たので世話になりたいと、武州の箕島半五郎一家の代貸斉田銀市(玉村駿太郎)なるヤクザが仲間と共に仁義を切って来る。

その応対に出たのは花田丈吉(高橋英樹)だったが、玄関に並んだヤクザの胸元に目をやると、さらしの下に油紙がのぞいていることに気づき、兄貴分の柴倉(榎木兵衛)に報告する。

兄貴たちは玄関に出て来ると、何の遺恨?誰に頼まれた殴り込みだ!と睨みつけ、斬り合いが始まる。

キャストロール

常造の部屋に集まった代貸しや丈吉たちは、今回の2度の襲撃は行徳一家の仕業に違いない。うちが山名さんと近づいたから、嫌がらせだと相談し合っていた。

軍次は、ともかく山名さんとうちとが組めば、手出しが出来る奴はこの町ではいなくなるんだと説明し、伸次郎も、今、こっちから仕掛けるなんてもってのほかと自制を促す。

常造も、山名のご子息とのご婚礼が間近なんだと自制するよう、子分たちに言い聞かす。

そこにやって来たおりんが伸次郎に耳打ちし、驚いた伸次郎が部屋を出て行くと、新田さんが自殺されたんですと、おりんが常造に説明する。

さらにおりんは、自分はお嫁なんかに行かない。町の人から絞り上げて名士づらしているような奴は大嫌い!どら息子の繁なんて、考えただけで寒気がするわと言いたい放題で、口が悪いのはヤクザの娘だからと開き直る。

好きな奴でもいるのかと聞かれると、私の片思いだけど…と言うので、聞いた常造は、何だ、くだらないと一蹴する。

それでもおりんは、新田さんを自殺させて、今度は私の番?と父親を睨みつける。

叔父に当たる新田の葬儀に出席した伸次郎は、列席した新田の仕事仲間たちからつるし上げを食う。

身の潔白を明かすために自殺するなんて…。ありもせん不正をでっち上げたのは大寺だろう?お前は自分でおじさんを殺したようなものだと罵倒され、常造から受け取ったという通達状を見せられる。

そこには、今後はレンガや土管の値段をこれまでの4割にすると書いてあった。

関東大震災で、レンガや土管が飛ぶように売れている中、常造が儲かる商売を独占しようとしていたのだった。

そこに、常造ら大寺組がやって来たので、伸次郎はその通達状を見せながら、親分、これはいくら何でもひどすぎるじゃありませんか。堅気の商売人たちを困らせるなんてと抗議するが、同行していた軍次や常造らから余計なことを言うな。それ以上何か言うと、この葬式は無事にすまねえぜとすごまれる。

葬儀の帰り、軍次は馴染みの芸者おみね(南寿美子)が、おりんの結婚相手である山名繁(小高雄二)と一緒にいたので声をかける。

小峰はすぐに立ち去るが、手切れ金を吹っかけていたんでしょう?と軍次が聞くと、途方もない額をなと繁は答える。

ある日、普段は賭場周りが役目の丈吉を連れ土管工場へ向かっていた軍次は、お前足が洗いたいと言っているそうだが、それは伸次郎の差し金じゃねえのか?と聞くが、丈吉はきっぱり否定する。

工場に着いて見ると、職人たちが仕事をしていないので、軍次が何故働かない!と聞くと、いくら働いても稼ぎにならないからだという。

その時、丈吉は仲良しのはる(磯部玉枝)から声をかけ、ちょっと外に出る。

はるもこの工場で働いていたのだ。

丈吉の知りあいの職工たちは、もうちょっと高く買ってくれと丈吉に頭を訴えて来るが、その時、工場で罵声が聞こえたので駆けつけてみると、軍次らが職工らに暴力を振るっていたので慌てて丈吉は止めに入る。

丈吉は、近頃の大寺組は変わってしまった。貧乏人から搾り取るなんて、渡世人の恥だと悔しがる。

そんなある日、常造は、婚礼間近のおりんが伸次郎と共に家を出たと知り慌てふためいていた。

「おりん様 頂戴し候 伸次郎」と言う書き置きが残っていたので駆け落ちと思われたが、常造は、無理矢理連れて行かれたとしか思えないと言う。

今のレンガ、土管の販売元の権利は、おりんの婚礼の見返りに山名から手に入れたものだった。

そこに、以前、草津で大寺組と会ったことがある片目の一本松(小林旭)なる風来坊が訪ねて来る。

玄関先で応対した軍次が、久し振りじゃねえか?と歓迎すると、2年臭いおまんまを食って、出て来た所だという。

仁義を切らない一本松を珍しがっていたぐず安(野呂圭介)に、お嬢さんは達者で?と聞いた一本松だったが、安は声を潜めて、家出なさいましてね…と答えたので、一本松はちょっと驚いたようだった。

せっかく、惚れた女に会いに来たら、その日に駆け落ちしたんだとよ…と、芸者の小里(八代真矢子)相手に愚痴をこぼして酒を飲んでいた一本松は、小村伸次郎ってそんなに良い男かい?と聞く。

その頃、行徳組が動き始めていた。

こさとに声をかけて廊下に呼び出した菊代(渡辺智子)は、行徳組が大寺組に殴り込みですってと耳打ちする。

その話を部屋の中で聞いた一本松は、その足で行徳組に出向くと、懐にしのばせていた拳銃を見せながら、助っ人に雇わないか?俺は銭になりさえすれば良いんだと持ちかける。

出入りの直前だった親分行徳(小泉郁之助)は面白えじゃねえかと招き寄せ、名前を尋ねるが、名前を言うと高くなるぜ。独眼竜伊達政宗…又の名を片目の一本松!と名乗ると、足下に置いてあったドスを足でたぐり寄せ、それをいきなり抜くと、親分さん、命もらうぜと言うなり、その場で斬りつけて殺害する。

子分たちも叩き斬った後、鼻歌まじりで川沿いを帰っていた一本松に、一台の人力車が迫って来る。

中には、行徳の生き残りが乗っており、車が一本松の横に並んだ時、いきなりドスを突き出して来るが、一本松は、その人力車を刺客ごと持ち上げると川に放り込み、やはり行徳組だった車屋も殺害してしまう。

川に落ちた人力車から、怪我をした刺客が悔しそうに見上げていた。

翌日、親分の言いつけで来たと言い、常造の元を訪れた伊沢組の峰蔵(木浦佑三)が、おりんと伸次郎は今、河西の町の和田屋勘三の家にいるのをご存知ですかと告げる。

それを知った常造は、丈吉を呼び寄せると、お前、足を洗いたいと言っていたが、望み通り堅気にしてやる。その代わり、最後の仕事を引き受けてくれるか?と言い出したので、喜んだ丈吉は何でも…と承知する。

すると常吉は、伸次郎を斬って来い。そして、おりんを連れて来いと命じたので、さすがの丈吉も言葉を飲んでしまう。

伸次郎は、丈吉にとっては常日頃から慕っていた兄貴分だったからだ。

しかし、断ろうとする丈吉を、渡世の掟だ!と叱りつけた常造は、ここから8里ほどの所にある河西へ行って来いと言う。

その河西の町にあるお茶問屋「和田屋」の二階に世話になっていたおりんは、一緒に隠れていた伸次郎に、私を連れ出したのは、山名と大寺組との仲を裂くためだったのねと確認する。

伸次郎は、堪忍しておくんなさいと詫びるが、これが本当の駆け落ちだったら…とおりんは心底哀しそうだった。

そこにお茶を持って来た主人勘三(大坂志郎)は、伸次郎の亡くなった父親の子分だったので、厄介をかけたことを詫びる伸次郎に、水臭いですぜと笑って去る。

その人柄を褒めたおりんは、お父様もああ言う人だったの?と聞くと、親爺は、俺をヤクザにさせたくねえばかりに叔父貴の所に預けたんだが、自由気ままな暮らしが好きで、とうとう俺は渡世人になってしまったと伸次郎は告白する。

するとおりんは、気が合うね。どうせ私をさらったのなら、どうして遠くへ行ってくれないのと甘える。

その頃、常造を呼び出していた山名虎之助(柳永二郎)は、繁が芸者から聞いたそうだが、おりんがいなくなったそうだな?わしもこの町では知られた男だ。万一わしが恥をかくようなことになったら、お前さんにも同じように恥をかいてもらうぞと脅していた。

帰宅した常造は、軍次やぐず安を呼ぶと、婚礼まで後4日だと確認させる。

軍次が、丈吉に伸次郎が斬れるでしょうか?と聞いたので、はじめてそのことを知った安は、そんなバカな!と肝をつぶす。

そんな丈吉に飲み屋で近づいたおみねは、あんたどうすんのさ?私にも関わりがあるんだと、伸次郎殺しの確認をする。

お前の旦那は、山名の御曹司だったな?と丈吉が皮肉で返し、悩み抜いた末に、やっぱり俺には兄貴は斬れないと口に出す。

大寺組が仕切っていた賭場では、一本松がサイコロを振っていたが、繁は負け続けていたにもかかわらず、将来の婿だと威張り、軍次から無理矢理金を出させていた。

そこに、丈吉が戻って来たというので、庭で迎えた軍次は殴りつける。

それを止めたのは一本松だった。

こいつの始末は自分に任せてくれないか?夕べの行徳の件を含めて200両でどうだと言う。

軍次は、良し!やってもらおうと頼む。

その後、飲みに出かけた一本松に、何故俺を助けた?と丈吉が聞くと、お前が堅気になる代償にやらされたと聞いたからよと一本松は答える。

お前に兄貴はやらせねえ、俺がやるよと言う一本松に、丈吉は俺がやる!と言い返す。

そんな丈吉に一本松は惚れたようだった。

翌朝、河西に旅立つ丈吉に、ぐず安も付いて来る。

どうせ親分から、俺がやったかどうか見張れと言われて来たんだろう?と睨んだ丈吉だったが、安は違うよ、手伝いがしてえだけなんだと言い返す。

丈吉は旅立つ前に、はるに会いに向かう。

ちょうど工場に出かける所だったはるは、丈吉が旅に出ると聞くと、私のためなら止めて!と止める。

しかし丈吉は、違うよ。俺のためにやるんだ。堅気になって真っ青な空を見上げるまで、待っていてくれるかい?これから先、まともな仕事がしてえんだと言い、台所の鉢の中にそっと巾着袋を隠し入れる。

そんな丈吉に、はるは自分用に持っていた弁当を渡すのだった。

その後、河西に向かった丈吉と安だったが、人力車に乗った一本松まで付いて来たので、侠客が車に乗るようじゃな…と丈吉は呆れる。

すると一本松は、人力車から降り、一緒に歩いて同行して来る。

飯屋にやって来たので、一本松はここで飯を食おうと誘うが、弁当を持っていた一本松は俺は良いと断って歩き続ける。

安は仕方なく飯屋を素通りしかけるが、一本松が店の中に引っぱり込んで、お前がいないと、俺は兄貴の顔を知らないんだ。何でも好きなものを注文しろと勧める。

そんな一本松の様子を店の外からうかがっていたのは、川に放り込まれた行徳組の刺客だった。

飯屋を出た後、刺客の尾行に気づいた一本松は、「血煙高田馬場」の無声映画がかかっていた地元の劇場に入るので、安も呆れて入ろうとするが、俺に付いて来ると死ぬぜと一本松から脅かされる。

その後、刺客たち数名が映画館の中に入り混むが、舞台裏で身を潜めていた一本松は、活動の見せ場の剣劇とと共に、刺客たちをスクリーン裏で斬り殺して行く。

その後、映画館を出て近くのお堂にやって来た一本松は、下駄の鼻緒が切れたので、その場で直し始める。

すると、お堂の中から夜鷹らしき女が声をかけて来たので、俺は昼間の女は嫌いなんだと断った一本松だったが、見ると、お堂の中でその女がヒモのような男から殴られているではないか。

さすがに見かねて、いい加減にしろと言いながら、男の腹を蹴り飛ばした一本松だったが、倒れたその男は急に泣き出す。

いの字(柳瀬志郎)と言うその男は、元渡世人だったが、親分の女房に手を出したばかりに、今じゃこの様だ。見事に落ちぶれやがったと自嘲するので、夜鷹だと思っていた女がその親分の女房だと気づく。

その時、丈吉が顔を見せたので、一緒に立ち去ろうとした一本松だったが、駆け落ちものの成れの果てよと説明しながら、途中で何を思ったか、お堂に取って返すと、男を射殺して戻って来る。

やがて2人は、目指す和田屋の屋敷に到着するが、中に入ってみた丈吉は、ここにはいねえ。引っ越したそうだと言いながら出て来る。

一本松がそれは確かか?と疑うと、玄関から出て来た勘三が、今朝引っ越したばかりだ。疑うのなら家捜しでも何でもしてくれと言ったので、良い度胸だと感心した丈吉は、あんたには聞かないことにしようと諦める。

そんな丈吉の人柄を見込んだ勘三は、殺し合いを止めても良いんじゃねえか?と勧め、さしずめお前は森の石松か?と一本松をからかうが、俺はあんな馬鹿じゃねえ。ここを使うからなと一本松は自分の頭を指して丈吉と共に去って行く。

そこに、遅れて来たぐず安が合流する。

彼らが立ち去った後、勘三は町中に引っ越していた伸次郎とおりんを訪ね、刺客が来たからにはこの町を出ろ。おりんさんの気持ちも考えてやってくれねえか?と頼むが、伸次郎は頑として断り続ける。

その日、別の旅館に泊まった一本松と丈吉は、情報を探しに歩いたものの何も掴めなかったぐず安が帰って来て報告をするのを聞いていた。

飯を食い始めた安が、婚礼まで後3日だぜと確認するが、丈吉は、2人はまだこの町にいるような気がすると言い張る。

そんな丈吉に、お前、まだ迷っているんじゃねえか?と聞いた一本松だったが、一旦決心したものを迷うことはない!と丈吉は答える。

翌朝は朝から雪が降っていた。

窓辺から外を見下ろしていた一本松は、近づいて来た「和田屋」と書かれた傘を見つけ、丈吉と安に声をかける。

後をつけると、勘三は一軒の家に入って行き、その家から出て来たのはおりんだった。

その姿を確認した丈吉に、一本松が、お嬢さんは俺が押さえておくと言う。

二階で、一晩中考えたと言いながら、遠くへ行ってくれと言いながら金の包みを差し出した勘三だったが、伸次郎 の考えが変わらないことを知ると、やはり蛙の子は蛙。そうしたお前さんの姿は、死んだ親爺さんそっくりだと諦める。

その勘三が家を後にした後、下の井戸端でおりんに近づいた一本松は、あっしを覚えていなさるかい?と聞き、2年前草津で会ったと思い出させた後、その口を塞いで、丈吉と安が家に入り込むのを見届ける。

家の中で伸次郎に出会えた丈吉はドスを抜き、兄貴!ドスを抜いてくれ!と頼む。

お前を寄越すとは惨えやり口だ。お前を斬りたくないと拒否した伸次郎は、足を洗おうとしたお前が…と言いながら相手をし出す。

腕の差は明らかで、伸次郎は素手でも丈吉に斬れる相手ではなかった。

そこに慌てて駆け込んで来たおりんは、捕まえようとした安の頬を叩く。

いよいよ俺の出番か?等と言いながらその後から入って来た一本松は、伸次郎の顔を見るなり、何だ、お前さんのことかいと言い出し、徳島の花会で簀巻きにされかけていた所を助けてもらったと伸次郎に思い出させると、俺は手を引くよと言い出す。

苦しむ丈吉に伸次郎は、お嬢さんを帰して話をつけるぞと言い出す。

かくして4人は、あっさり大寺組に戻って行く。

丈吉と共に、とりあえずはるの家に来てみると、はるは熱があるので仕事を休んだと言って寝込んでいたが、丈吉の帰還を喜んで起き出して来る。

そんなはるに伸次郎は、しばらくお嬢さんを預かってくれと頼む。

丈吉は、弁当旨かったぜと言いながら弁当箱を返したので、はるは喜ぶ。

伸次郎はそんな丈吉に、お前は行くなと命じるが、一本松が俺がここに残るよ。狼を子羊の元に残しておくようなものと思っているのかい?という。

伸次郎は、おりんが子羊なんかじゃないことを知っていたので苦笑する。

常造と対面した伸次郎は、山名と手を切ってくれ。俺を殺ったら、お嬢さんは死ぬと言っていると突きつける。

今後一切、山名と手を切り、レンガ工をいじめる奴と戦う元の渡世人に戻ってくれ。この町を良くするも悪くするも、親分の腹一つだと思って、性根を据えて答えてくれと迫られた常造は、手をついて俺が悪かった!娘が可愛いんだ。何でも言う通りにすると詫びる。

しかし、その態度を心底信じきれない伸次郎は、常造が山名に直接、絶縁を願い出る所まで同行する。

山名は承知したので、丈吉と2人で帰りかけていた伸次郎は、大寺組の仲間たちが自分らを待ち伏せしていたことに気づくと、大寺は芝居をうったらしいな…と気づき、丈吉にははるの元へ行けと命じると、素手で応戦を始める。

襲撃を受け左手を負傷しながらも、丈吉ははるの元へ走る。

その頃、はるの家で待っていた一本松は、玄関にやって来たぐず安から声をかけられ、何事かと表に出る。

その部屋の窓際には、大寺組の追っ手が中の様子をうかがっていた。

外に出た一本松は、急に安が泣き出し、松っつぁん、勘弁してくれ。俺は意気地なしなんだと言い出したので戸惑う。

居場所を言わなければ殺すと言われたんで…と続けた安の言葉に観に気づいた一本松は部屋の中に駆け込むが、すでにおりんの姿はなく、はるが部屋の中に倒れていた。

窓からおりんを連れ去って行ったらしかった。

自分がしくじったことを悟った一本松は、くそったれと叫ぶ!

伸次郎がはるの家にやって来ると、はるの遺体にすがって泣いていた丈吉の姿を発見する。

もう伸次郎と丈吉の気持ちは決まっていた。

常造の所へ向かう2人に、大寺組の様子を探りに行っていたらしい一本松が合流して来たので、手助けしてくれるのかい?と尋ねた伸次郎は、飛び道具だけは止めてくれと頼む。

一本松は、その場で拳銃から弾を抜き取ってみせると、おりんは土蔵の中にいると教える。

先に大寺組に着いた一本松は、土蔵の中に果たし状を投げ込む。

一方、丈吉は馴染みの職工たちを集め、今は誰も住んでいない行徳組の中に入り込むと、怪我だけはするなよと職工たちに声をかける。

行徳組の名が入った果たし状を読んだ大寺組のうちの大半は、無人の行徳組に殴り込みに行くが、かがり火が焚いてあった家の中に全員飛び込むと、外に隠れていた職工たちが、急いで表戸を締め、その上から戸板を釘で打ち付ける。

これで、大寺組に残っているのは15、6人だけのはずだった。

伸次郎、一本松、丈吉の3人は、そろって大寺組に乗り込む。

土蔵の中で縛られていたおりんの側には、繁が一緒に付き添っていた。

伸次郎が、表戸を開け中に入る。

中では、大寺組の残党が隠れて待ち受けていた。

廊下を進んでいた伸次郎は、廊下のしたから突き出して来た刃を避け、敵を倒し始める。

一方、奥の部屋で待ち受けていた常造は、天井から札束が落ちて来たので見上げると、天井裏に潜んでいた一本松が、金は返したぜと笑顔で挨拶するのを観る。

奥で待ち構えていた軍次と斬り合う伸次郎。

常吉は怯えてさらに奥へ逃げようとするが、そこに立ちふさがったのが一本松だった。

さらに丈吉も合流し、俺がやると言い前に出ると、常造を叩き斬る。

丈吉!と驚いた伸次郎だったが、土蔵に駆けつけると、短刀で土蔵の鍵を壊すと中に入る。

伸次郎は、襲って来た見張りの身体を掴み、そのまま繁に投げつけたので、見張りの持っていたドスで繁は突き殺される。

土蔵から出てきた伸次郎を狙って、垣根の裏側に竹槍を持った連中がいることに気づいた丈吉は、自ら伸次郎の前に飛び出すと、自分の腹を竹槍に突かれながら、相手を斬り殺す。

軍次は、一本松が落とした拳銃を拾い、近づいて来た伸次郎に向けるが、引き金を引いても弾は出なかった。

次の瞬間、伸次郎は軍次を斬り、背後に迫った一本松もとどめを刺す。

伸次郎は、自分の身代わりになって死んで行った丈吉に手を合わせ、近寄って来たおりんも合掌する。

さっき常造に返した札束を再び握った一本松は、おりんに向かって、親爺さんを殺したのはこの俺だよと告げる。

丈吉をかばってやった一本松の気持ちを察した伸次郎は、目で礼を言うと、ヤクザの喧嘩は、勝って監獄、負けて地獄だ。割に合わねえな…と呟く。

そして、一人で帰ろうとしていた一本松に、粋がるなよ。警察へ行くのは俺1人でたくさんだと言葉をかける。

一本松はバツが悪そうに、バレたかと笑うと、せめて2人が幸せに暮らせるように陰ながら祈らせてもらうぜと言い残し去って行く。

朝方、人気のない町を伸次郎が警察に向かい、おりんはその背中に向かい、伸さん、私いつまでも待っていると告げるのだった。