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スウィングガールズ

男子学生とシンクロナイズドスイミングという奇抜な組み合わせの「ウォーターボーイズ」で注目された矢口史靖監督の青春音楽映画。

東北の美しくものどかな風景を舞台に、落ちこぼれの女子高生とジャズという、又しても奇抜な組み合わせで、最後まで楽しく観客を引き込んでくれる。

感心するのは、女子高生の顔ぶれ。

見事なくらい「いわゆるきれいなモデル顔」がいない。

はっきり言えば「普通の女子高生らしく見える女の子」だらけなのだが、これがこの、話自体はあり得ないことだらけで、ご都合主義な展開も見える映画を、それなりに説得力のあるものにしている。

笑いはギャグマンガっぽい発想が多いが、高校生たちの青春ものと言うこともあり、特に違和感はない。

男女が混じっているのに、最後まで恋愛要素が全く出て来ない(引っかけ要素はあるが)のも清々しい。

ベタベタした所がない、からっと爽やかな青春コメディである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2004年、フジテレビ+アルタミラピクチャーズ+東宝+電通、矢口史靖脚本+監督作品。

東北地方にある山河高校の夏休み

黒板は落書きで埋まっている。

そうした中、1年数学担当の小澤忠彦(竹中直人)先生の補習授業を13名の女子生徒が受けていた。

しかし、落ちこぼれの彼女たちには勉強するという意欲が全く感じられず、授業はだらだら状態。

そんな中、窓際に座っていた鈴木友子(上野樹里)は、校庭から野球部の応援に向かおうとしていた吹奏楽部のバスをうらやましげに観ていた。

弁当担当になったものの、なかなか注文した弁当屋が到着しないので、バスの外で待っていた1年生中村拓雄(平岡祐太)は、同じく外に立っていた顧問で音楽教師の伊丹弥生(白石美帆)先生が、試合負けないかな〜…、友達にハワイ誘われてっから…と、いかにもやる気なさそうな言葉を吐くので、用意していた「退部届け」を出せないまま、一緒にバスに乗り込み出発することになる。

友子は教室でくしゃみをする。

その時、遅れて来た弁当屋「ジョイランチ」の車が校庭に到着し、降りて来た弁当屋(森下能幸)は、次に葬儀の予約が入っていいて忙しいのに、バスが既にいないので困惑していた。

友子のくしゃみで校庭の方に注目した小澤先生に、友子は、届けた方が良くないか?きっと困ってますと提言する。

もちろん、補習をさぼる口実であった。

タイトル

電車で弁当を届けるため野球場へ向かっていた1年女生徒たち。

友子は、吹奏楽部の優遇を象徴するように豪華な弁当の一つを盗み食いし始めるが、すぐに1組の斉藤良江(貫地谷しほり)が話しかけて来て、他の女生徒たちも友子の弁当箱の中身に手を伸ばし始める。

全員、1個くらい食べてもバレないという魂胆だった。

ところが、目的の駅を過ぎた所で、居眠りをしていた友子が目覚め、慌てて降りようとするが、すでに扉が閉まり、電車は出発してしまう。

その頃、野球の試合の応援のため、吹奏楽部のシンバル担当として参加していた中村は、途中でシンバルを落としてしまい、部長(高橋一生)からいつものように注意される。

吹奏楽部の女生徒たちは、なかなか弁当が届かないので、いら立って弁当担当の中村に文句を言う。

その頃、次ぎの駅で降りた友子たち女生徒たちは、下りの電車は1時間位来ないことを知り、線路を歩いて戻ることにするが、途中で背後から近づいて来た電車に気づき、慌てて線路脇の田んぼに飛び込んだため、セーラー服も弁当もドロだらけになってしまう。

友子は、線路に落ちた弁当の中味を拾い上げごまかすと共に、服の泥を落とすため、近くの川で水浴びをする。

何とか野球場に着き、弁当配りまでさせられた友子たちだったが、中村は自分の分が足りないと言い出す。

友子はそんなこと知らねえと否定するが、そのあごには米粒が1つくっついているのを中村は見逃さなかった。

一方、弁当を食い始めた部長は、口の中から小石を取り出し首を傾げていた。

中村はホットドッグを買って腹ごしらえすることにするが、気がつくと、伊丹先生初め、吹奏楽部の生徒たちが皆一斉にトイレの方に向かっていたので何事かと驚く。

中には、座り込んで嘔吐する男子までいた。

皮肉なことに、野球部はその試合に勝っていた。

帰宅してだらだらしていた友子に、母親早苗(渡辺えり)が、チラシをパソコンで作ってくれと頼むが、使い方が分からないとあっさり断ったので、母親はあんなに欲しがって買ったのに…と呆れるし、晩酌をしていた父親泰三(小日向文世)も、これからお前が欲しがるものは買ってやらんと叱る。

その時、クラスメイトの佐々木から友子に電話が入り、テレビを見てみろと言うので、妹のみえ(桜むつ子)がゲームをやっていたテレビ画面を切り替えると、ニュースで、山河高校の吹奏楽部43人と教師1名が食中毒で入院したと報道していた。

キャスター(武田祐子)は、33度を超えた猛暑の中、弁当の保存状態が悪かったせいのようだと言っているので、友子はすぐに自分たちのせいだと気づく。

佐々木が言うには、吹奏楽部がいなくなったので、入部希望者は明日4時に音楽部に集合するよう連絡網が廻っているという。

翌日、音楽部で1人待っていた中村は、窓から校庭で練習中の野球部を観て落ち込み、持っていた退部届けを破り捨てていた。

その時、一人のメガネの女生徒が入って来たので、何が出来るの?と聞くと、その女生徒関口香織(本仮屋ユイカ)は、恥ずかしそうに縦笛を出してみせる。

次にやって来たのは、エレキを抱えた2人の女子渡辺弘美(関根香菜)と山本由香(水田芙美子)で、バンドが解散したので、とりあえず音が出したい訳と、吹奏楽部にギターはいないと断ろうとする中村に一方的に言う。

こんなメンバーで吹奏楽部を作ることは絶対無理だと呟いた中村は、廊下をはしゃぎながら通り過ぎて行く友子たちの姿を見つけ、連絡網行っただろう?お前らが弁当腐らせたの張本人だろ?と怒鳴りつけるが、友子たちが弁当は前から腐っていたのかもととぼけたので、お前らは途中で弁当一個食った。(そのお前たちが何ともないのは)おかしいだろう?黙ってやっても良いんだけど…と詰め寄る。

そんな所に、教室から顔をのぞかせたのが補習を始めようとしていた小澤先生だったので、友子らは小澤先生に事情を話しに行く。

要するに彼女たちは、補習を又さぼるため、吹奏楽部に参加することにしたのだった。

しかし、13名の落ちこぼれ女子とバンド崩れの女子2名、縦笛少女だけでは、25名以上必要な吹奏楽を構成することは不可能だった。

友子は、関口に対し、邪魔しに来たな?と敵対視する。

そんな友子が、音楽室のサックスをいじっていると、置いてあったレコードジャケットの1枚が落ち、中からレコード盤が廊下に転がって行く。

中村は半ばヤケになり、1人、ピアノで猫踏んじゃったを演奏するのだった。

そんな中村を励ましに来たのは、転がったレコード盤をグルーブでキャッチして返しに来た野球部3年の井上(福士誠治)だった。

井上は、人間には2種類ある。やり遂げるものと諦めるものだと言い残して帰るが、その姿に斉藤良江が一目惚れしたようだった。

中村は、返してもらった「BIG BAND JAZZ」のレコードジャケットを観て、17名でもこれなら出来ると言い出す。

女子たちは、ジャズなんか、ブランデーとか飲む親爺がやるものではないか?と気乗りしない様子で、とりあえず音楽室の楽器を吹いてみるが、当然ながら、誰1人、音が出るものはいなかった。

あまりにも肺活量、体力不足と知った中村は、早速彼女たちにランニングさせることにする。

単に、補習をさぼる口実で参加していた友子たちは途中で投げ出そうとするが、中村は容赦しなかった。

さらに、中村は、窓ガラスにティッシュを口の息で落ちないように貼付ける練習をさせる。

誰も出来ないかと思われたが、次にやらされたペットボトルを吸い込んでへこます練習も、関口だけが出来ていた。

腹筋背筋20回を命じた中村は、様子を観ていた小澤先生から呼ばれ、止めとけ。どうせ補習をさぼる口実だし、バンドなんかやるつもりないんだからと忠告する。

その間、こっそり抜け出した良江は、野球部の練習をしていた井上を観に行く。

友子や田中直美(豊島由佳梨)も逃げ出そうとするが、先回りしていた中村に見つかり、友子が持っていた菓子まで取られ、次ぎの試合まで後2週間!と発破をかけられたので、こんな練習やったって、吹ける訳ねえだろと抵抗する。

ところが、関口がマウスピースを鳴らしてみせたので、関口に出来て、何でお前らに出来ないんだ?と中村は言う。

半信半疑で自分らもマウスピースを吹いてみると、いつの間にか少し音が出ることに気づいた友子たちは、その後徐々にコツを掴み始める。

関口は既にトロンボーンを吹けるようになっていた。

中村は、楽器に慣れて来た友子らに、好きになって来たか?と聞くが、友子は負け惜しみで、しようがなくやってんのと応える。

ある朝、学校にやって来た友子は、前を何かを抱えた中村が歩いていたので、落ちていたサッカーボールを投げつけようと拾い上げるが、中村が持っていた電子ピアノを落としそうになったので、思わずボールを捨て、中村を支えてやる。

自分で買ったと言う電子ピアノを観た友子は、中村がお坊ちゃんだと知る。

中村のピアノもくわえ、いよいよ音合わせをやってみるが、案の定めちゃめちゃだった。

それでも友子は、音が出たことに感動してか、「良くねえ?良くねえ?」とはしゃいでいた。

中村は一人ブルーになっていたが、そこに、退院した伊丹先生と吹奏楽部の面々が音楽室に戻って来る。

もう大丈夫と知った友子は、良かった!補習出なくて…と負け惜しみを言いながら、他の落ちこぼれたちと部屋を後にするが、1人関口だけは、トロンボーンを吹奏楽部員に取られまいと抵抗していた。

伊丹先生は小澤先生に、補習の時間を空けてもらった礼をする。

結局、関口も説得して帰る途中、友子たち落ちこぼれたちは全員、努力を中断させられた悔しさで泣き出していた。

泣きながら帰る彼女たちの姿を観た老婆(森康子)は、どうしたんだ?先生死んだのか?と聞いて来る。

友子と良江と直美は、次ぎの野球部の試合を観に来ていたが、良江がバッターボックスに立った井上を応援すると、応援席にいた別の女が女学生も「フルスィング!」と応援しており、それに井上がお守りを見せて応えていたのでがっかりする。

さらに、井上が打ち上げたフライが、良江の左目に直撃し転倒したので、友子たちが助け起こすと、良江の左目はお化けのように腫れ上がっていた。

試合もあっさり負けてしまう。

やがて夏休みも終わり2学期が始まる。

定期演奏会に向けての練習をしていた吹奏楽部を覗きに来た友子だったが、出てきた伊丹先生から、入るの?と聞かれる。

中村のことを尋ねると、退部したという。

部屋の中に入ってみた友子は、そこに関口もいたので帰ることにする。

途中、廊下で良江と会った友子は軽く声をかけ帰るが、良江の方は、そんな友子の方を、眼帯を取って見つめていた。

もう良江の左目の腫れも引いていた。

田中直美は土手で1人、ハーゲンダッツのアイス1パイントケースを抱えて食べていたが、立ち上がった途端、スカートが弾けて脱げてしまったので、近くを通りかかっていた自転車の青年は思わず土手を転がって落ち、その後何事もなかったかのように自転車を漕いで行く。

楽器屋に行ってショーウィンドーに飾ってあるテナーサックスを眺めていた友子だったが、35万もするのでとても手が出せなかった。

店主(江口のりこ)に中古ないかと聞いた友子は、近くのディスカウント店に向かう。

そこには3万円のサックスが置いてあった。

小学校から帰って来たみえは、いつものようにテレビゲームを取り出そうとするが、それがなくなっていることに気づく。

母に尋ね、外に出てみたみえは、姉の友子が、使わないパソコンとテレビゲームを自転車に積み込んで出かけようとしている所を目撃、阻止しようと追いかけるが、姉の自転車は逃げ延びる。

友子は、それを売った金で何とか中古のサックスを手に入れたので、草むらで1人吹いていると、どこからか、同じメロディーが響いて来た。

サックスを吹きながら川岸に出た友子は対岸で電子ピアノを弾いていた中村の姿を発見する。

2人は嬉しそうに演奏を続ける。

しかし、学校で皆に、安い中古の楽器を買おうと提案した友子に、中村は反対する。

中古は、前の持ち主の癖がついていたりして使いにくいというのだ。

それでも、とりあえず金を作る方法を考えた友子らは、関口が提案したスーパーで働いてみることにする。

しかし、試供品売り場を担当した友子らは、売り物である食品を自分らが食べる有様。

マネキン運びをやらせれた良江たちは、エレベーターの中で、男性マネキンを相手にキスをしたりする。

餃子に売り物のチョコなどを乗せて焼いていた友子は、ワインを売っていた関口からワインを1杯もらうと、それを餃子にかけようとしていたが、その時、主任(木野花)が様子を見に来たので、思わず、鍋に入れるが、炎が上がり、スプリンクラーが作動して、店内は水浸しになってしまう。

こんな仕事ぶりでバイト代がもらえるはずもなく、先にもらっていた女の子たちは、その金でブランド品などを勝手に買っており、ボーイフレンドと一緒にボウリングなどに出かけてしまう。

ボーイフレンドは、人間には2種類しかいない。楽で楽しんで生きる奴とそうじゃない奴と友子たちをあざ笑うようにして去って行く。

取り残された友子や良江に、関口が、昔、おじいさんを手伝って松茸を採ったら結構なお金をもらったことがあると言い出したので、早速、山へ登って松茸がりを始める。

その途中、この山はおじいさんのものか?と中村が関口に確認すると、お母さんの知りあいのおじいさんなどというので、皆一挙に不安になる。

その時、友子が、倒れて枯れ葉に埋もれていた注意書きを見つける。

そこには、勝手に松茸を採ったものは、罰金50万円と書かれていた。

その時、山の上の方から銃を持った男らが近づいて来たので、ヤバいと感じた友子たちは一斉に逃げ出すが、その時、彼女らは猪に遭遇してしまう。

松茸を持って逃げていた田中直美は、追って来た猪から逃れよう時に登り、途中で滑り落ちて、木にぶつかって来た猪の鼻をへし折ってしまう。

そこに、先ほどの猟友会の男たちが近づいて来る。

中村は思わず、すみませんでした!と謝罪するが、その中村たちは、後日、近隣の田畑を荒らしていた猪を退治した功績を認められ、表彰状と金一封をもらっていた。

その金一封で、友子たちは中古の楽器を購入することが出来た。

しかし、購入した中古品は、中村の予想通り、壊れていたり、中にネズミがいたりで、とても使い物になりそうにもないものばかりだった。

その時、エレキ担当の弘美たちが、それ直せるかも?と言い出す。

弘美と由香が中村や良江や友子らを連れて来たのは、前バンドを組んでいたという兄弟が
やっていたリサイクル工場だった。

兄の高志(眞島秀和)と弟の雄介(三上真史)は、やって来た弘美と由香に未練たらたら今でも愛しているなどとめそめそし、今度はフォークデュオを始めたので聞いてくれと言い出す。

曲のタイトルは「失恋してもラビングユー」

2人は廃車の上に乗って歌い始めるが、あまりにダサダサの歌だったので、友子たちは唖然とするしかなかった。

それでも、その後、色々クズを拾い集め、兄弟の協力もあって、何とか楽器が使い物になるようになる。

喜んだ友子たちは、さっそく練習を外で始めるが、近所の主婦(林田麻里)からうるさいと叱られるし、子供たちからは石を投げられる。

仕方がないので、カラオケBOXで練習を始めると、又しても店長が(徳井優)他の部屋から苦情が出ていると注意しに来る。

じゃあ、どこで練習すりゃ良いのよ!と友子が切れると、客の1人(田中要次)が部屋を覗き込み、そんなことだったらうちでやっても良いよと言ってくれる。

その客はパチンコ店長だったので、「プチトマト」と言う店の前で練習を始めるが、あまりに下手なので、観ていた客たちからバカにされてしまう。

店長からも、それじゃ亜客寄せになるどころか逆効果なのでもう止めてくれと言われたので、がっかりして帰ることにした友子たちに、エレキ担当の弘美と由香はもう自分たちは参加しないと言って去って行ってしまう。

関口が落としたメガネを拾った友子は、関口を探すと、無効で誰かと話しているではないか。

戻って来た関口は、メガネがなかったので誰か知らないおじさんから、もっとスウィングしろと言われたというではないか。

気になった友子は、そのおじさんに声をかけようとするが、何故かそのおじさんは田んぼの中逃げていったので、友子たちも慌ててその後を追う。

おじさんが逃げ込んだ家を突き止めたので、勝手に庭に入り込み窓から中をのぞいてみると、部屋の中には無数のジャズのレコードがそろい、ピカピカのサックスも飾ってあった。

しかも、椅子に腰掛けた部屋の主は、以前彼女たちが想像した通り、ブランデーを飲んでジャズのレコードを聴いているではないか!

彼女たちの気配に気づいたのか、窓を振り返った部屋の主は、何と小澤先生だった。

小澤先生は無類のジャズマニアだったのだ。

自宅を突き止められた驚きを隠しながら、仕方なく部屋の中に中村や友子らを招き入れた小澤先生だったが、意外なことに彼は子供が嫌いなのだという。

友子が部屋の中に飾ってあったサックスを取り上げると、その背後に隠してあった「ジャズ入門」と言う初心者向け教本が落ちて来る。

これは僕たちのために?と中村が聞くと、お前たちには最初はそのくらいから始めるのがちょうど良いと小澤先生はアドバイスする。

その小澤先生は、地元の音楽教室でサックスを起用に吹く真似をしてみせる。

しかし、それを観た音楽教室の先生(谷啓)は、小澤が楽譜も読めない初心者だと気づく。

同じ教室に来ていた真澄(西田尚美)と子供の聡(谷本和優)も、そんな小澤を迷惑そうな目つきで眺めていた。

それでも小澤先生は、音楽学校の先生から聞いた通りを受け売りで友子たちに、ジャズの基本を教え始める。

それでも全然理解できないまま帰途についた友子らだったが、途中の横断歩道で、関口が何かに気を取られたかのように立ち止まる。

先に渡った友子たちが何をしているの?と声をかけると、その時流れていた歩行者用のメロディ「故郷の空」をこれってジャズじゃない?と、途中の避難帯にいた関口が指摘する。

意外に感じた友子らだったが、リズムを裏打ちしてみると、確かに「故郷の空」もジャズになることに気づく。

ジャズのコツを掴んだ友子たちは、以前働いたスーパーの前で演奏をさせてもらえることになる。

スウィウングし始めた彼女たちの曲に客は集まり始め、スーパーのチーフ(大倉孝二)は、その客たちに特売の案内を始める。

その時、近くのボウリング場から出て来たかつてに仲間たちは、友子たちの演奏を聴き、ジャズの魅力に気づくと、急いで楽器店に向かう。

しかし、やはり楽器が高いことを知ると、以前の友子と同じように店員に中古はないのか?と聞くが、店員は、あんたらのブランド品を売れば、新品を買えるんじゃない?と教え、ようやく彼女たちもそのことに気づく。

新品を手にした彼女たちは、スーパーの前の友子たちの演奏に合流する。

そんな彼女たちの上に雪が舞い降り始める。

雪が積もった朝、友子は走っていて転ぶ。

急いで登校した彼女は、「第20回東北学生音楽会 出場グループ募集」のチラシを、仲間たちに見せる。

すると、中村たち全員もすでに同じチラシを全員持っていた。

指揮で出て下さいと中村が頼んだ小澤先生は、エントリーしなければいけないが、よっぽどひどくなければまず大丈夫だと保証してくれ、エントリー用の映像を撮ろうと言い出す。

次の日曜日、雪の積もった校舎の屋上でビデオに演奏をおさめた後、小澤先生は、撮り終えたビデオカセットを友子に託す。

友子たちは、撮り終えた安心から、誰からともなく雪合戦を始め、はしゃぎ始める。

友子たちは、音楽会に出るための衣装を考え出す。

それを知った伊丹先生は、吹奏楽部への案内状は来たけど、そちらには届いたかと聞いて来る。

スウィングガールズにはまだ、音楽祭への案内が届いていなかった。

それもそのはず、友子がビデオカセットを郵送し忘れていたのだ。

失敗に気づいた友子は、急いでポストに投函して、間に合ってくれと祈るのだった。

一方、河原で一人トランペットの練習に励んでいた良江は、ペットの中からネズミが出て来た瞬間、出したかった音が出たことに気づき感激していた。

中村は音楽会に向けて床屋で散髪していたが、その時、店の窓から、向かいのビルの中に入って行く小澤先生の姿を発見する。

その後をつけてみた中村は、音楽教室から飛び出して来た真澄や、部屋の中で小学生の聡から睨まれて小さくなっている小澤先生を発見する。

小澤の方も中村に気づくと、諦めて全てを打ち明け、自分は音楽会の指揮を辞退すると申し出、このことは皆に黙っていてくれと頼む。

一方、友子は、音楽会から通知を受け取って安心するが、内容を読んでみると、今年は例年になく応募が多かったので、先着順となり、落選したと知らせるものだった。

友子はその通知を落とすと、呆然としてしまう。

スウィングガールズたちは、久保千佳(あすか)の実家である久保産婦人科を背中に染め抜かれたお揃いの真っ赤なジャケットを着ていた。

友子は、通知のことを皆に知らせようとタイミングを計っていたが、そこに中村が来て、小澤先生は都合により指揮は出来なくなったと知らせたので、伝えるタイミングを逃がしてしまう。

いよいよ、音楽祭当日、相変わらず優遇されている吹奏楽部は先に観光バスで出発し、スィングガールズは電車で会場へ向かう。

張り切っているメンバーたちの顔を見ているうちに、友子はますます言い出せなくなり、隣の車両に1人、逃げるように座る。

それに気づいた中村が、乗り物酔いか?と心配しながら隣に座って来たので、その様子に気づいた良江らは好奇の目を注ぐ。

友子は中村に大事な話があると言い出し、何かを期待した中村の顔は明るくなる。

その直後、電車が停まり、積雪のため、いつ動くか分からないと車掌(小形雄二)が説明したので、スウィングガールズたちは焦り出す。

そこに中村が戻って来たので、良江は告白なんかしている場合じゃないよと伝えるが、中村は深刻な表情で、エントリーの締め切りに間に合わなかったことを告げる。

それを聞いたスウィングガールたちは、全員、呆然となり、やがてやけになり始める。

その直後、どこからか「A列車で行こう」が聞こえて来る。

見渡すと、客の1人がトランジスタラジオを聞いていたのだった。

いつの間にか、スウィングガールズたちはその曲に合わせて演奏を始めていた。

落ち込んでいた友子も、仲間たちに勧められ、いつしか一緒にサックスを吹いていた。

その時、曇った窓ガラスを拭いて外を観た一人が、何かに気づき窓を開ける。

線路沿いの道に観光バスが横付けしており、伊丹先生が、東高が来られなくなったので、急遽スウィングガールズが繰り上げ出場になったので迎えに来たと言うではないか。

友子たちは喜んでバスに乗り換え会場に向かうが、その途中、お揃いのジャケットを列車の中に忘れて来たことに気づく。

しかし、もう取りに帰っている時間はなかった。

会場の方では、出場校の演奏が一通り終了し、司会者(菅原大吉)が、山河高校の到着が遅れているので、今日の音楽会は終了しますと宣言する。

来場していた客たちは帰り始めるが、その時、雪まみれの友子たちが壇上に滑り込み、スウィングガールズでやります!と言い出す。

客席で彼女たちを待ち受けていたスーパーの主任や、ボーイフレンド、友子の家族たちは、安堵する。

しかし、はじめて大勢の客を目の当たりにしたスィングガールズたちは明らかに上がっていた。

演奏を始めかけた時、関口が立ち上がり、みんな聞いて!と叫ぶと、自らの耳元で音叉を鳴らす。

チューニングのことだと気づいたみんなは一斉に楽器の音を調整し、その内に上がっていた気持ちも落ち着いて来る。

良江はトランペットの先に、ネズミのマスコット人形を取り付ける。

スウィングガールズたちが「ムーンライトセレナーデ」を演奏し始めると、会場を出かかっていた客たちも音に気づいて戻って来る。

エレキの弘美と由香は、客席に「好きだ 好きだ 好きだ」と書かれた横断幕を見つけ呆れる。

もちろん、リサイクル業の兄弟がやっていたのだった。

会場には、小澤先生もやって来て、いつしか客席の後ろから嬉しそうに指揮を始める。

それに気づいた伊丹先生は、ジャズも良いもんですねと声をかけに行く。

音楽室と彼女に、以前、ジャズのレコードを贈っていたのは、もちろん、小澤先生だったのだ。

リサイクル兄弟は、互いに眼で合図をし合うと、照明調整室に入り込み、スィングガールズたちの照明を操作し始める。

スポットライトに浮かび上がった田中直美はドラムソロを披露する。

曲は「シングシングシング」になり、友子や中村もソロ演奏を披露する。

会場にいたボーイフレンドたちは、人間には2種類ある。スィングする奴と、しない奴だと言い、立ち上がって乗り始める。

いつしか会場全体も総立ちになる。

演奏が終了すると、会場中から大きな拍手が巻き起こる。

「L-O-V-E」に合わせてエンドロール