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ももへの手紙

「ユタと不思議な仲間たち」の女の子版と言った感じのアニメ作品

基本的には子供向きの内容だが、リアルなデッサンや淡い色使いなどから想像するに、どちらかと言うと大人の女性辺りを意識した作りのように感じる。

風光明媚な瀬戸内の美しい光景や、郷愁を誘う地方色はそれなりに魅力があるし、登場する妖怪たちも、そのデザイン面での好みはあるにせよ、なかなか楽しいキャラクターになっている。

意図的にか、アニメでなくては出来ないようなド派手な演出はなるべく控え、実写でも観ているような淡々とした日常ドラマのような雰囲気で進行して行く。

今マニアの間で流行っていると言う「聖地巡礼」も意識しているのか、現地の風景の引用などが多数登場し、観光映画風にもなっている。

父を失った少女が、慣れない環境に最初は抵抗しながらも、妖怪たちと出会うことで徐々に新しい環境に馴染んで行き、自分の心の整理と母親との関係修復も出来るようになるという成長物語だが、かなり分かりやすすぎるような印象はある。

もちろん完全な「子供向け」なら分かりやすくても問題ないのだが、この映画のように、絵柄などのタッチから「大人の客層」も意識しているとすると、その「分かりやすさ」はちょっと抵抗がないでもない。

大人が観るにしては、ちょっと説明的すぎるような気がするのだ。

もちろん、別にもっと難解にしろというのではない。

ターゲットとそれに対する戦略が不鮮明だということだ。

ストーリーは明らかに子供を意識しており、表現は大人…と言うか、特に子供は意識していないように感じる。

それは、とりあえずアニメ好き、映画好きなオタク層なら気にしない所かもしれないが、一般客の関心を惹くかどうか…?

いくら「もものけ姫」のスタッフが加わっているからと言って、露骨に「もののけ姫」を連想させるようなイメージが出て来る所辺りも気になる。

「人狼」の時にも感じたことだが、作者と感覚が近い層、こういう世界が好きな人だけ観てくれれば良いと言ったような、何となく「内向き」な雰囲気が今回も感じられる。

それを「作家性」と解釈すれば良いのだろうが、そうしたものを今の子供が受け入れてくれるかどうか?

個人的には、「人狼」よりはまだ雰囲気的には馴染めた内容だったが、万人受けするかどうかは、正直若干の疑問が残った。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「ももへの手紙」製作委員会、沖浦啓之原案+監督+脚本作品。

三つの水滴が空から地上へ落下して来る。

その下には、真夏の光にきらめく瀬戸内の海を汐島に向かうフェリーが走っていた。

甲板上に1人立って前方を観ていたのは小学6年生の宮浦もも(声 - 美山加恋)、彼女は「ももへ」とだけ書かれた便せんを見つめていたが、そこに船室から母親の宮浦いく子(声 - 優香)が出て来て、瀬戸内海って良いわね。最後に来たのはあんたが生まれる前だった…などと声をかけて来たので、便せんを隠す。

そんなももの頭に落下して来た3つの水滴が当たり床に落ちるが、雨のように木に染み込むことはなく、そのままゆらゆら動いていた。

タイトル

汐島に到着し、いく子とももがフェリーを降りると、小さな3つの水滴もその後を追うように付いて降りる。

いく子とももがやって来たのは、大きな家だった。

すでに、引っ越し荷物も到着しているようだった。

縁側で2人を出迎えたのは大おば(声 - 谷育子)だった。

大おばは、あがりんさい、あんたらのうちじゃけんと言い、いく子は、奥にあるもう一棟がおじさんの家だとももに教える。

そのおじさんこと大おじ(声 - 坂口芳貞)も2人を歓迎し、橋は9月に開通じゃと、フェリーから見えた大きな橋のことを教え、いく子は昔、喘息で1ヶ月ここに養生に来ておったなどと昔話を始めるが、横に座っていた大おばがそっと止めたので、その話はそれっきりになる。

東京のマンションはどうした?とおじが聞くと、いく子は売っちゃったと言う。

そこに郵便屋の幸市(声 - 小川剛生)がやって来て、昔なじみのいく子に声をかける。

いく子も幸市に気づくと、こうちゃん?ビジネスマンはどうしたの?と驚いたようだったが、郵便屋は、ビジネスマンは辞めたと恥ずかしそうに頭をかく。

部屋の古時計が6時で止まってことに気づいたいく子に、この春先に壊れたと大おじが説明する。

ももは、大おばから、「空」に荷物を上げるけん手伝うてと言われ、「そら」と言うのが屋根裏部屋のことだと知る。

大きなつづらの上に置いてあった玉手箱のような箱を見つけたももが蓋を開けて見ると、中には、一冊の薄い本のようなものが入っていた。

タイトルは「化物御用心」

大おばによると、大おじのお父さんが集めていたものだそうで、江戸時代の「黄表紙」と言う珍しいものだそうだ。

ぱらぱらとその本を開いてみると、どのページも不思議な妖怪の姿が描かれていた。

大おばとももが「空」から出て行った後、3つの水滴がその黄表紙の中に潜り込んで行く。

いく子が、明日から今治へヘルパーの講習に行くと言い出したので、ものは驚き抗議する。

慣れない引っ越し先でいきなり1人ぽっちになってしまうからだ。

でも、母親が働かなくてはいけないことは分かっているので、ももは風呂の中で不機嫌になり、自分の部屋の机に座ると、又、「ももへ」とだけ書かれた便せんを広げてじっと見つめる。

それは亡くなった父親が残した最後の手紙の書きかけだった。

(回想)もう良い!お父さんなんか大嫌い!もう帰って来なくて良いよ!そうももは叫び、部屋を飛び出して行く。

どうしても仕事に出かけなければ行けないんだと詫びる父親は、机の上に置いてあった「ウィーン少年合唱団」のチケットを観る。

その父が乗り込んだ調査船が沈没し、本当に父は帰らぬ人になってしまう。

父の葬儀の後、ももは、父の机の引き出しから「ももへ」とだけ書き残した便せんを見つけたのだった。

(回想あけ)なんて書きたかったの?父さん…一人考え込んでいたももは、誰もいないはずの「空」から物音が聞こえて来たのでちょっと怯える。

翌日、近くの商店で買い物をするいく子に付いて行ったももは、この島にはスーパーやコンビニはないと教えられ唖然とする。

その時、同じ店内に、ももと同年輩くらいの男の子と、その妹らしき女の子がいたので、いく子は恥ずかしがって嫌がるももを無視して声をかけ、陽太と海美という兄妹にももを紹介し、この子も仲間に入れてもらえないかしら?と頼む。

陽太と海美は承知するが、その時は橋の上から海に飛び込みをしている仲間たちの元に向かう。

今日は午後から電話屋も来るので留守番していてとももに託して、いく子は今治行きのフェリーに乗り込むが、それを見送りに来ていたももは、何か影のようなものが母と一緒にフェリーに乗り込むのを観たような気がした。

家に帰り、市販の弁当を食べた後、冷蔵庫からプリンをテーブルの上に置いた後、1人で寝転がっていたももだったが、屋根裏部屋である「空」から何か人の話し声のようなものや、木がきしむような音が聞こえて来たので様子を見に行くが誰も人影はいなかった。

その時、突然、玄関のチャイムが響いたので飛び上がったももだったが、それは電話屋だった。

戻ってみると、今自分が降りて来た「空」の戸が閉まっていたので、閉めたかな?と自問自答したももだったが、台所に向かうとテーブルの上の3連プリンが全部食べられていて、空の容器だけになっていたので絶叫し、恐怖に駆られ外に逃げ出す。

ちょうどやって来た郵便屋の幸市が声をかけるが、それを無視してももは見知らぬ近所中を懸命に逃げるが、その背後から2つの影のようなものが追って来る。

「菅公の碑」と言う立て札がある神社を過ぎ、とある石垣の辺りまでやって来たももは背後を確認し、気のせいだったんだと自分を納得させるが、ここどこなの?と呟く。

自分が迷子になってしまったことに気づいたのだが、そんなももに怪訝そうに声をかけて来たのは陽太だった。

陽太は、島で迷子になったら海を探せば良いとコツを教えてくれ、ももの家の方角を指差すが、藁舟見るか?と言い出し、自分の家に連れて来る。

しかし、そこには作りかけの藁舟があるだけで、作っている爺さんの姿がなかったので、これは宮島さんという祭りで使うんやと言うだけで、それ以上の説明に窮していた陽太だったが、あまり橋未を持てず、母さんが帰って来るので桟橋に行って来ると言いももが帰ると、肝心な時に出かけていた爺さんがチャリで戻ってきたので、おってくれにゃ困るじゃろうが!と陽太は文句を言う。

帰って来たいく子は、家に何かいると怯えているももと一緒に自宅に帰って来るが、全く信じる様子はなく、玄関を開けっ放しで出て来たももを注意する。

それでも怯えて、玄関口で中に入りそびれていたももは、何かが自分の足を嘗めるのに気づき悲鳴を上げる。

家に上がっていたいく子が驚いて様子を見に来るが、騒いでいるももを、何もいない!と叱りつける。

ももは、東京に帰ろう!こっちに来るのだって、母さんが勝手に決めてさと言い出すが、そんなに嫌なら1人で帰ってと言い返されたので、お母さんの意地悪!と口を尖らす。

その夜、昼間走り回って疲れ果て、布団にも入らず寝入ってしまったもものを布団の所に引っ張って来たいく子は、亡くなった夫の遺影をじっと見るのだった。

翌朝もいく子は講習会に出かけて行き、ももは1人で留守番をすることになる。

すると、誰もいないはずの家の中から、いく子が出かけたぜ…とか、腹ごしらえでもしますかなどという話し声が聞こえて来たので、ももは飛び上がってしまう。

玄関先に逃げ出したももは、そこに陽太と海美が遊びの誘いにきていたので、これ幸いと水着に着替えた後、一緒に橋まで出かけることにする。

橋では、欄干から子供たちが下の海に飛び込む遊びをやっていた。

陽太が自分も飛び込んでみせ、下から出来るかぁ!と誘ってくれたが、飛び込む勇気がなかったももは、そっと帰ることにする。

海美がそれに気づき、ももちゃん帰るの?と聞いて来たので、ご免と謝りながら自宅に戻っていたももだったが、途中で豪雨に巻き込まれ、途中の祠の下で雨宿りすることにする。

すると、すぐ近くから「くわばら、くわばら」とか、「お前、見かけからすると、水に強そうだけどな?」「海も雨も大嫌いだ!」等と言う会話が聞こえて来たので、そっと横を振り向いてみると、そこには得体の知れない妖怪のようなものが2体座っており、まだ青いミカンを食べていた。

さらに、昨日玄関でももの足を嘗めた小さい生き物も合流して来る。

その得体の知れない生き物と互いに目が合ったももは、悲鳴を上げて逃げ出す。

その場に残っていた2体の妖怪たちは、あいつ、俺たちの姿が見えてたぜ…と呟く。

自宅に戻って来たももは、最近畑が荒らされて困るとぼやいている大おじと会ったので、そのまましばらくおじさんの家に上がらせてもらうことにする。

大おじの家の居間には、何枚もの妖怪図が鴨居にかけてあり、自分の親爺が集めたもので「お守り様」と言うのだと説明してくれる。

元々は神様だったものが落ちぶれて化物になったようなものだと言う。

そして、親爺がそのお守り様に会ったことがあると話してくれたことがあると大おじが言い出したので、ももも、つい今観た妖怪の話をしようとするが、おまえには教えたが人には言わん方が良い。悪いことが起こるかもしれんからと親爺に言われたと大おじが続けたので、ももも口をつぐんでしまう。

大おじは絵を観ながら、良く観ると、みなおもろい顔しておるよと言う。

鴨居には亡くなった親戚の写真も額に入れて飾ってあり、中でも目立つひげ面の男が、大おじの親爺、つまりももの曾爺さんじゃと大おじが教えてくれる。

妖怪なんか睨み返したらええとのんきにアドバイスしてくれた大おじだったが、その後自分の家に戻り、洗面所の鏡相手に睨む練習などしてみたももだったが、とても妖怪相手に睨み返す自信はなく、布団に潜り込んで震えるしかなかった。

翌朝ももが起きた時には、テーブルに昼食用のおにぎりが置いてあり、いく子は、畑の手伝いに行く。お昼過ぎに荷物が届くからよろしくと置き手紙が置いて、すでに出かけた後だった。

その後も、布団の中に包まっていたももだったが、そこに「空」から降りて来た3体の妖怪がももの前に立ちふさがる。

小さな妖怪マメ(声 - チョー)がさっそくテーブルの上のおにぎりを発見する。

河童のような妖怪カワ(声 - 山寺宏一)が、寝ていたももを突つき起こすと、巨大な頭の妖怪イワ(声 - 西田敏行)が勝手に自己紹介を始める。

自分たちは菅原道真に封じ込められ数千年も眠っていたものだと言うイワの解説を聞いていたマメは、あれ?てっきり俺たち、空から落ちて来たと…と言いかけたので、慌ててカワが口を塞ぐ。

ももは、箒を振り回して部屋の中で暴れ回るが、その時、カワが持っていたらしき、天川のようなものが床に落ちる。

すると、イワが、その通行証を半分に割れれると自分らは死んでしまうと言い出したので、ももは急いでそれを拾い上げると、半分に割ろうとする。

すると、3体の妖怪は慌てて土下座すると、止めて下され!何でも差し上げるからと言いながら、ボールペンをイワが差し出すが、それはもものものだったので、ももは怒って通行証を割ろうとする。

さすがに困ったらしき妖怪たちは、この家を出て行くでござる…、引き換えにそれを…と、通行証を返して欲しいと訴えるがももは応じなかった。

お堂の所へ来たカワは、あいつは性悪だとももの悪口を言い、でも何で俺らが見えるんだろう?と不思議がり、イワが、落ちて来る時、あやつの頭に当たってしまったからではないか?と推測を言う。

その間、お堂の上の小山で石を積んで遊んでいたマメだったが、草むらから何やら白い生き物が出て来て、その積んだ石を壊してしまう。

白い生き物は数匹いるようだった。

やがて、イワはそろそろうちに帰ろうと言い出す。

その頃、大おばの畑の手伝いを終え小休止していたいく子に、大おばは、和男さんも良い人じゃったけん、寂しかろう…と話しかける。

いく子は、島の山の上の方まで作ってある畑を観ながら感心していたが、ちょっと咳き込んだので大おばは驚く。

しかし、単にお茶が気管に入っただけだと知ると安堵するのだった。

家出トイレに入ろうとしたももは、イワがしゃがんでいたので慌ててドアを閉めようとするが、急に勘違いを思い出して、追い出そうとする。

さらにカワは寝転がってのんきにテレビを観ているので、通行証を割ろうとすると、それ割ったら俺たち死んじゃう。お前人殺し?と脅迫して来る。

さらに台所ではマメが大量の野菜を持ち込んで食べていたので、盗んだのね!と怒ったももは、居て良いから、悪いことはしないでと妖怪たちに言い聞かせる。

その後、「空」で黄表紙を確認してみると、そこに描いてあった3体の妖怪の絵の部分だけが消えていた。

家に住むことを許された妖怪たちは、勝手気ままに家の中を動き出したので、ももは次第に妖怪たちに慣れて来るが、気がつくと、マメが海美の雨合羽を来ていることに気づき、又盗んでいる!と叱り取り戻したももは、それを陽太の家に帰しに来る。

ももが来た時、それまで藁舟を作っていたじいちゃんが出かけたので、そっと玄関口に入り込み、雨合羽をそこに置こうとしたももだったが、その時、陽太と海美がももに気づいて出て来る。

海美は、ももが慌てて後ろ手に隠した雨合羽を発見し喜ぶと同時に、ももと一緒について来たマメを不思議そうに見つめる。

どうやら海美にも妖怪が見えるらしかったが、陽太は、気にせんで良い、こいつ時々妙なこと言うから…とももに言う。

翌日も、ももはマメの手を引いて商店で買い物をするが、カワが勝手に商品を盗もうとしていたのを見つけたので止めさせる。

ももが店から出た後、郵便配達の幸市に会い、橋の上で遊んでいる子供たちの方が気になり見つめるもも。

その背後でイワは畑から盗んだスイカを丸かじりしていた。

その後、ももは水着に着替え1人で堤防に出かけると、海面を見つめながら、飛び込みのタイミングを計っていた。

すると、背後に現れたイワが突然ももの背中を押し海に突き落とす。

驚いたももは怒りながら何とか堤防に這い上がって来るが、そのももを又イワが突き落とし、見事でござると喜ぶ。

ももは、カワが又盗んだ青いみかんを食べていたので、ももが怒ると、魚は嫌いじゃ。鱗があるし…と平然と答える。

困ったももは、大叔父にこの島にお金を使わず何か食べるものはないか?と相談する。

大おじは魚はなんぼでもあるが…と考え、山に行けば…と教えてくれる。

その後、ももはイワとカワを連れて山を登ることにする。

カワが、まさか俺たちに、訳分からねえ木の実でも食わせようって言うんじゃねえだろうな?と聞いて来たので、当たっていたももはぎくっとする。

坂道があまりにきついので、途中から、道に沿ってレールが走っていた農業用モノレールに乗って登ることにしたももらだったが、途中で、畑に入り込んでいた猪を見つけたイワとカワが、モノレールを降り、ウリ坊を3匹捕まえて戻って来る。

すると、怒った両親猪が追って来たので、慌ててモノレールを走らせるが、迫って来た猪がモノレールに体当たりする。

乗っていたモノレールが破壊されたので、ももとイワとカワは別の農業用モノレールに乗り換え上昇を始めるが、まだ猪が追って来たので、イワがモノレールを後ろから押して走り始める。

気がつくと、先回りした1頭の猪が前方から走り降りて来たので、カワは尻を突き出し、強烈な屁を猪に吹き付けて吹き飛ばす。

それでも猪はしつこく追って来て、モノレールに体当たりしたので、ももたちは吹き飛ばされてしまう。

気がつくと、うり坊も猪もいなくなっていた。

カワは、木の実すらねえじゃねえか!と不機嫌そうに立ち上がるが、ものは、猪が食べちゃったのよと説明する。

そんなももは、展望台から見える周囲の島々の風景に観とれ、妖怪たちにも観るように勧めるが、景色は食えねえよ!と、ふてくされたカワが吐き捨て、その場を動こうとはしない。

ももは、そろそろ暗くなって来たので帰ろう。1人じゃ怖いじゃんと道に寝そべって動こうとしないイワとカワを誘うが、イワは、我らの屍を越えて行けなどと訳の分からないことを行ってぐずる。

仕方がないので、ももは通行証を取り出して振り回したので、仕方なくイワとカワも歩いて帰ることにする。

その頃、自宅でアルバムを観ながら涙ぐんでいたいく子だったが、ももがようやく帰って来たので、アルバムを戸棚にいれ、ももの顔を見ると、あら、真っ黒ね!と驚く。

一日中外で妖怪と行動を共にしていたので日焼けしたももは、知らないうちに笑顔になっていた。

天井裏の「空」では、カワがあの女、だんだん悪くなって行くぜと嘆き、女とはそういうもんじゃとイワも悟ったように同意していたが、深夜、ももが缶詰を差し入れにきてくれる。

トイレに行っていたと嘘を付き寝床に戻って来たももは、隣で寝ていたいく子に、父さん、海が好きだったよね。私、この島のこと、そんなに嫌いじゃないよと語りかけるが、もういく子は寝息を立てていた。

天井裏のイワは、思えばわしらは長らくこんなことをやっているでござるな…と呟いていた。

空にいく子ともものことを報告するのが俺たちの仕事だろ?とカワが面倒くさそうに答え、イワは、今回はマメが報告書を書いたたら良かろうと勧める。

翌日、お堂で、島の精霊たちに囲まれたマメは、便せんを前に筆で何かを書こうとしていたが、一向にその筆は動かなかった。

ももは勉強机の前で、また父からの最後の手紙を観ていたが、海美がやって来て、今日は、自分と兄ちゃんだけで、他には誰もいないから飛び込みやろうよと誘ってくれる。

その時、大おばが昼食の準備が出来たと呼びにきたので、ももは後で行くと海美に約束して別れる。

「空」では、マメが何もかけない。おいら、字書けないんだな〜とカワとイワに報告していた。

その頃、交番の前で警官に呼び止められた郵便配達の幸市が、最近女の子の持ち物がなくなるけん気を付けてくれ言われていたが、その時幸市は、急にバイクの荷台に誰かが乗っかったような感覚を感じ首を傾げる。

大量の野菜を盗んだイワが腰掛けていたのだが、その姿は幸市にも警官にも見えなかった。

やがて、いく子の家にやって来た幸市は、イワが荷台から降りて軽くなった感覚を覚える。

帰って来たイワは、ももが残していた「ももへ」と書かれた便せんを発見し、「ももへ」の「へ」毛筆で消すと、「もももいく子も元気」と勝手に書き足し、それを本当の空へ送ることにする。

ももは、天井裏の「空」から物音が聞こえて来たので登ってみると、そこでは手紙を前に、イワとマメが奇妙な踊りを踊っていた。

見ると、イワもマメも見知らぬ女の子の帽子やバッグなどを身につけていたので、怒りながら取り返そうとしたももだったが、今、手紙を送る大切な儀式の最中だと聞かされ、結局、彼らと同じ踊りをやらされる羽目になってしまう。

イワが気合いというか念力を送ると、目の前に置かれた手紙は黄表紙の中に煙のように吸い込まれて行く。

どこへ送ったの?とももが聞くと、イワは道真公に送ったんじゃとごまかすが、それを聞いたももは、死んだ人に手紙を送れるの?と驚き、だったら、死んだお父さんに手紙を出したいのと言い出し、下へ降りて行ったので、ややこしいことになったと悟ったイワだったが、知らんぷりをすることにする。

その頃、橋の上では、陽太と海美がももの来るのを待っていたが、ももは一向に来なかった。

それでも、陽太はもう少し待ってみることにする。

一方、ももは、あの大切な父の手紙がなくなっているので部屋中を探しまわっていた。

その途中、約束を急に思い出したももだったが、橋に駆けつけた時には、もうそこには誰もいなかった。

がっかりして家に戻って来ると、門の所で郵便配達の幸市といく子が楽しそうに話している所だった。

翌朝、テレビの天気予報では、台風が接近していることを知らせていた。

朝食を終えたももは、お父さんへ…と手紙を書きかけたももだったが、そこにいく子が手鏡知らない?と言いながら入って来たので、ノックくらいしてよと怒る。

その手鏡は、カワが持っており、畑で野菜を盗み食いながら自分の姿を写しうっとりしていた。

イワも又、その手鏡を借りて自分を映し、こちらも陶酔する。

カワは、俺たちタンパク質足りてねえんじゃねえか?と呟く。

マメは、ももの部屋の伝統に足でぶら下がって遊んでいたが、そこにイワとカワが野菜をたくさん盗んで帰って来たので「空」に登って行き、様子を見に上がったももは、カワが手鏡を持っていることに気づく。

それはお母さんがお父さんに買ってもらった大切なものだから返してよ!と迫るが、カワが意地悪して取らせないように持ち上げたので、ももはその手鏡を奪おうとカワに接近しているうちに、床に置いてあった野菜の瓜に足を滑らせ、転んでカワにぶつかり、その手から離れた手鏡は、床に落ちて割れてしまう。

その物音に気づき「空」に上がって来たいく子は、割れた鏡で手を切っているももが床に転んでおり、その周囲に野菜が散らばっている様子を見て驚き、手鏡にことよりももの怪我の心配しながら、これはどう言うことなのか正直に言ってと迫る。

ももは仕方なく、信じてくれないかもしれないけど、妖怪がいてお腹を空かしているのと説明するが、いく子が信じるはずもなく、噓を言っていると思っているいく子がどこにいるの?と詰め寄ると、ここにいるんだよとももは必死に説明する。

いく子は、そんなももの頬を叩く。

ももは、母さん変だよ!お父さんが死んでから、お母さん、私のことなんて全然分かってないじゃん!家にいないじゃん!母さん、父さんのことなんて忘れちゃったんでしょう!と抗議して、下に降りて行く。

その時、いく子は胸苦しさを覚え出す。

海辺に来て1人海を見つめていたものを発見したのは、たまたま通りかかった陽太だった。

イワやカワも側に座って海を見ていたのだが、もちろん陽太が気づくはずもなかった。

家では、いく子が吸引器の薬を吸っていた。

ももに会った陽太は、昨日はどうしたんだ?待っとったんやぞ。わしも5年生の時にはじめて飛べたんで、お前ももうすぐ飛べるようになるよと慰めてくれ、もうすぐ祭りじゃ。お父さんが藁舟を流すんじゃと話しかけるが、ももは、お父さん、いないもん…と言い残して去って行ったので、陽太は、まずいことを言ってしまったと気づく。

島では台風の影響で風が強まり、雨も降り出す。

お堂で雨宿りするももだったが、同行していたイワは、良くある親子喧嘩でござるなどと、喧嘩の原因が自分たちにあることを無視してのんきなことを言っていた。

お父さん、死んじゃう前に、喧嘩しちゃったの…とももは言い出す。

お父さんとお母さんは、結婚する前、一緒にウィーン少年合唱団を観に行ったらしいので、今年の結婚記念日に、又来日するウィーン合唱団のコンサートのチケットを3枚買って、お父さんには内緒で用意していたの。

そしたら、その日になって急に…

(回想)お父さんはももに、大事な調査なんだと、ちょっとおどけながら詫びる。

そんなお父さんの態度に怒ったももは、もう良い。お父さんなんて大嫌いだ。もう帰って来なくて良いよと言い残して部屋を出て行く。

父は、机の上に乗っていた「ウィーン合唱団」のチケットを発見し、驚く。

その父の葬儀の後、ももは、「ももへ…」と書かれた便せんを発見し、泣き出すのだった。

(回想あけ)何故、あんなこと言ったんだろう?

それを聞いていたイワは、自分がその手紙を間違って空へ送ってしまったと告白する。

天井裏のことではなく、もっと大きな空のことでござるとイワが説明する。

その頃、雨の中、傘をさして歩いていた陽太とその父親は、ももを探して歩き回っていたいく子と出会うが、そのいく子が道に倒れ込んでしまったので驚いて駆け寄る。

イワはももに、自分たちは昔、悪さをして、空のお偉方に追放されたもので、妖力もほとんど失っていると打ち明け、菅原道真の話は噓だったと告白していた。

そして、自分たちはももの父とは多少縁があり、死んだ直後は、その魂は地上付近を漂い、やがて空に登るのだが、その間、自分ら「見守り組」が地上の家族の様子を見守るのが努めであるのだと教える。

そして、父が空に空に登り、自分の目で見守るようになったら自分らの役目は終えるのだが、それは明朝でござるという。

その時、お堂に郵便配達の幸市がバイクでやって来て、こんな所にいたのか!いっちゃんが大事や!と母の異変を教える。

急いで家に戻ると、大おばが電話をしており、いく子は布団を積んだ所に座り込み、苦しそうだった。

医者も看護士のみつ子も、隣の島に行っており、この台風で戻って来れんそうじゃと大おじが説明する。

ドクターヘリも台風で来れないという。

咳き込み苦しむ母親の姿を観ていたももは、橋は?大橋は?と聞く。

開通しとっても、この台風ではとても…、その内台風が収まるけ、落ち着けとと大おじは落ち着かせる。

苦しむいく子を観ながら、大おばは、大分無理をしとったようじゃ。人に言わん子じゃから、余計苦しかったんじゃろと同情したので、それを聞いていたももは、はっと気づき、戸棚からアルバムを取り出してみる。

その中には、母と父が結婚した時、ももが生まれた時、ももが生長する姿が映った写真がたくさん貼ってあった。

母さん、泣いてたんだ!と、事実に気づいたももも泣き出す。

天井裏の「空」に登って来たももは、橋を渡って今治に行ってと頼むが、わしらは人の生き死にには関われんとイワは狼狽し、カワも自分たちにはそんな力はない。夜明けには俺たちもおさらばだ…とすまなそうに断る。

ももは、通行手形をその場に残して、1人で降りて行く。

豪雨の中、外に飛び出して行ったももに気づいた幸市と陽太は、慌ててその後を追う。

雨の中は知りながら、私、お母さんの気持ち全然分かってなかった!とももは反省していた。

そこに、バイクで追って来た幸市が、無茶しちゃいかん、戻るんじゃと止めるが、このままじゃ、母さん死んじゃう!私、お父さんと仲直りできないままだった。今行かなければいけない!と、ももは必死の決意を述べる。

それを一緒に聞いていた陽太は、おっちゃん、助けてやれ!と幸市に頼む。

悩んだ幸市だったが、わしにとっても、いっちゃんは大事だ!車に乗れ!とももに伝える。

その頃、天井裏の「空」で3体の妖怪たちも悩んでいた。

昔、ご禁制に触れた連中がみじめな死に方をしたことを思い出していたのだ。

今、いく子とももが死んだら、俺たちは「見守り組」失格だな。今回の騒ぎの原因も俺たち出し…とカワが言うと、もはや厳罰は免れないと悟ったイワが、もも殿を助けたら、厳罰は免れるかも…と提案するが、屁がこけるとか速く走れるくらいの力で何が出来る?と反論する。

すると、それまで黙って聞いていたマメが、仲間がいるよと言い出す。

やがて、呼びかけに答えた島中の精霊たちが、姿を現して来る。

それらは全部合体して、巨大なダイダラボッチのような姿になる。

開通はしているものの、まだ開通式を行っていない大橋を、ももを乗せた幸市の郵便バイクが豪雨の中疾走していた。

しかし、前方から飛んできた大きなビニールが前輪に引っかかってしまい、バイクは転倒、起き上がった2人は、挟まったビニールを引き抜こうとするがビニールは外れなかった。

母さん!ももは空を見上げ、お父さん!お母さんを助けて!と叫ぶ。

その時、何かが近づいて来たのに気づいたももと幸市が後方を見ると、合体した妖怪や精霊たちがトンネルのように、2人の上に覆いかぶさっていた。

その中に、イワや河原の姿を認めたももは、みんな、来てくれたんだね!と感激する。

幸一は、何か得体の知れないものが、自分たちから雨風を防いでおり、バイクのビニールが勝手に外れ、勝手に倒れていたバイクが起き上がったのに驚きながらも、自分の身体まで浮き上がり、勝手にバイクに股がらされたのに気づき怯えるが、ももを再び乗せると夢中でスタートさせる。

走るバイクの周囲は、妖怪がトンネルを作って一緒に移動していた。

幸一はやがて気絶してしまうが、それを上から見下ろしていたイワが降りて来て自らバイクに股がると、気絶した幸市を肩に乗せながら運転し始める。

妖怪トンネルが通過して行く周囲の民家では、地震のような地響きを感じていた。

やがて、マメが、四国の町の灯りに気づく。

妖怪たちはその場で待つこととし、ももと幸市を乗せたバイクはイワだけが四国まで操縦して行く。

翌朝、台風一過で、又夏の日が戻って来る。

いく子は無事入院でき、その側でももが付き添っていた。

ももは、眠っているいく子に、ちょっと家に行って来る。すぐ戻って来るからと話しかけ、自宅の屋根裏に戻る。

そこには、出発間際だったイワ、カワ、マメがいたので、良かった、間に合って!とももは喜ぶ。

皆のお陰で母さんも助かったと礼を言うと、イワは、半分は自分たちのためなんだがな…と小声で言う。

手紙を持って行って欲しいのと、書いて来た手紙をイワに渡すももは、彼らが背負っているふろしき包みに目を留める。

中味はやはり、盗んだ野菜だった。

最後まで裏切られと悟ったももだったが、思い出はきれいに取っておきたいから、もう行って!と頼む。

ありがとうみんな、忘れないからねと最後の別れを告げたももに、女は必ずそう言うよとカワが嫌みを言うと、例の奇妙な踊りをし、煙のような状態で黄表紙の中に消えて行く。

その直後、黄表紙から、3つの水滴が転がり出て来て、窓から空へ飛び上がって行ったので、ももはそれを見送って手を上げる。

その時、下から、壊れていたはずの柱時計が鳴り始めたのが聞こえて来る。

お父さんへ

私は元気です。あの時はひどいこと行ってごめんなさい。ずっと謝りたかったんだ。妖怪に助けられて母さんは助かりました。これからは母さんと2人で生きていきます。ずっと見守って下さい。

祭りの日、退院して、灯を点した藁舟を島の人たちが海に流すのを一緒に観にきていたいく子は、謝りたかったのよ…とももに語りかける。

でも父さん、研究論文ならすらすら書けるけど、手紙書けなかったのよ。いつでも相手の気持ち考えていたから…。お父さん、海大好きだったのよ。ご免ね、叩いたりしてと続けたいく子に、ももは、私こそご免、心配かけたからと答える。

母さん、バンバらなくちゃと思い過ぎ、頑張り過ぎて空回りしてたんだわ。これからは何でもももに相談するからねと言ういく子に、ももは、でも私、頼りないよと答えると、知ってるといく子は笑いかけ、ありがとうと感謝するのだった。

陽太と海美も、父親が藁舟を海に流すのを観に来ていた。

やがて、見学客がいなくなり、ももといく子も立ち去ろうとするが、ももが気がつくと、一艘の藁舟が浜辺に引き返して来る。

驚いてその中をのぞくと、手紙が乗っているではないか!

驚いたももは、いく子を呼び戻し、その手紙を開いてみる。

それは、イワが間違って空へ送ったあの手紙だった。

イワが書き加えた毛筆部分が又墨で消してあり、最後に「へ」が書き加えらていた。

つまり又「ももへ」と言う最初の呼びかけに戻っていたのだ。

そして、便せんはもう1枚あった。

恐る恐る次の便せんを見ると、それはマメが送ったものらしく、一見何も書いていないままの絵便せんだったが、いく子がももの驚く様子を見て、何か書いてあるのね!と聞く。

そこには、「頑張ったな。お母さんをよろしく頼むぞ 父より」と書いてあるのがももには読めたが、その文字はすぐに消えてしまう。

消えちゃった…と呟いたももに、文面を伝え聞いたいく子は、間違いない、お父さんだ。ぶっきらぼうなんだもんと告げる。

その後、橋の上で飛び込みをする仲間に加わったももに、海美が、この間の友達は?と聞いて来たので、帰っちゃったと答えると、欄干の外側に捕まり、今日は飛び込めそうな気がすると答えたももは、陽太が飛び込んだ後、ありがとう!と言いながら鼻をつまみ、飛び込む。

下で待ち受けていた陽太が頑張ったのと褒め、女の子が、これでももちゃんも島の子だねと喜ぶ。

エンドロール

ももの家の天井裏の「空」に置いてあった黄表紙が風にめくれると、ちゃんとイワ、カワ、マメらの仲良く旅する姿が戻っていた。