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漫画横丁 アトミックのおぼん 女親分対決の巻

「漫画横丁 アトミックのおぼん スリますわヨの巻」(1961)に次ぐシリーズ第2弾…と言うより、ほとんど「続編」と言って良く、1作目から話が繋がっている部分が多い。

前作で知り合った正木とおぼんは結婚の約束をする仲になっているし、ダイナミック組のメンバーたちを更生させるため、バーを持つ顛末を中心に描かれている。

正木の叔父の伊達野も相変わらずの女好きとして登場。

今回のお相手役は塩沢ときであるが、この作品での彼女、なかなか妖艶で美人なのだが、鼻の天辺にかなり目立つほくろがある。

他の作品では気づかなかったので、何か一時的な吹き出物の類いとも考えられるが、その後、手術かなにかで取り除いたのかもしれない。

この作品でのおぼんは、アップヘアに縦縞の着物と言うお馴染みの姿以外に洋装も披露している。

そもそも、アトミックのおぼんと言う名前、アトミックは当時流行っていた「原子力」からの発想だろう。

おぼんの「ぼん」は、フランス語で「素晴らしい」と意味する「セ・シボン」のボンらしく、主題歌で水谷良重本人が「ボンボンボン、セ・シボン♬」と歌っている。

しかし、これは映画独自の解釈で、本当は「アトミックボム(原子爆弾)」そのものから来たネーミングかもしれない。

おぼんは、合気道で敵を倒した後、刀を懐紙で拭くように、手刀を新聞紙などで拭うポーズを今回も披露している。

今回のゲストキャラは、おぼんと一緒に「申し訳ない♬」と歌っている佐川ミツオ。

もちろん佐川満男のことだが、この映画の前年に歌手デビューしている。

リーゼントヘヤも可愛らしい坊やと言った印象。

そして、中島そのみ扮するインスタントのおちかの恋人役坂本として登場している露口茂、もちろん人気テレビ刑事ドラマ「太陽にほえろ」の山さんで、この当時から、まじめ青年風な印象である。

ヌーベル婆ちゃんを演じる笠置シヅ子は、婆ちゃんというには若々しすぎる。

その若々しさが、愛嬌のある婆ちゃんというよりは、負けん気も体力も強い、ちょっと嫌な感じの婆ちゃんに見せている。

有島一郎が今回はあまり活躍していないのが物足りないし、登場シーンが多い渥美清にしても、あまり笑いに繋がるシーンは多くなく、大江山一味にも笑いの要素が乏しく、喜劇としては全体的に弱い。

余談だが、劇中に何度も登場する玄関横に非常階段が付いた建物は、今はなくなった東宝の旧本館ではないだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、東京映画、杉浦幸雄原作、柳沢類寿脚本、佐伯幸三監督作品。

神田駅

乗降客を怪しい目つきで狙っていたのは、スリの学割の半太(山田吾一)

やがて、1人の中年の田舎紳士(田辺元)に目を付けると、その後を追い、鞄を置いてタバコのピースを買おうとした所を狙うが、中年男は間一髪鞄を取り上げ歩き始めたので、半太もその後を追う。

さらにその後を付け始めたのは、大阪から上京して来たスリのベテラン、ヌーベル婆ちゃん(笠置シヅ子)だった。

婆ちゃんは、店に入った中年男から財布を掏りとって喜んでいた半太に近づくと、地下鉄の料金を聞く。

25円と教えられると、その場で財布を開け小銭を取り出す振りをしながら、わざと中の小銭を落とし、半太が親切にそれを拾うためかかんだ所で、尻ポケットから今掏ったばかりの財布を掏り取る。

その婆ちゃんにぶつかってさらに財布を掏りとったのが、元スリのダイナミックのおぼん(水谷良重)で、彼女は最初に掏られた中年男のポケットにさりげなく財布を戻したので、中年男は買い物の時、自然に財布を取り出し、掏られた事実すら知らないままだった。

安堵したおぼんに近づいて来た婆さんは、仲間らしいが、仲間の仕事の邪魔をするのは仁義にもとるんじゃないか?と睨みつけて来る。

その時、おぼんに声をかけて来たのは恋人で、ダテノモータース社員正木章太郎(中谷一郎)だったので、同じ掏り仲間と勘違いした婆さんは、東京のスリは口がうまいなどと憎まれ口を叩いてその場は立ち去る。

正木は話があるとおぼんに伝えるが、おぼんは、夜にお店で…と頼む。

その後、半太を見つけたおぼんは、あんた、足を洗うんじゃなかったの?と叱りつけ、私と一緒においで!と命じる。

その道すがら、半太は、ロード・ヒラリーも言いましたが、そこに山があるから登るんだと弁解するが、スリと登山を一緒にするんじゃないよとおぼんに一喝されてしまう。

2人がやって来たのは、洋食屋「イケダ亭」、出前に行きかけていた主人の三吉(木田三千雄)に、その内バーを作った時、見習いバーテンとして働かせようと思うので、それまでここで預かってもらいないか?とおぼんは頼み込む。

三吉は、早速、出前へ行って来い。角の交番だと言いながら岡持を渡す。

その頃、おぼんがやっているおでん屋「おぼん」では、ダイナミック組のインスタントのおちか(中島そのみ)、デラックスのお富(春川ますみ)、シーチョのお芳(横山道代)、ズーヂャのおはね(水町千代子)たちが、1万円でこき使われているのも面白くないので、この際思い切って、元のスリ稼業に戻るか?と相談し合っていた。

そこにおぼんが戻って来たので、店を任せられていたお芳以外の娘たちは出て行ってしまう。

残ったお芳は、早くバーを作らないと、元の猛者公に戻っちゃうよとおぼんに教える。

出前から戻って来ていた半太に声をかけたのはヌーベル婆ちゃんで、お前から掏った財布をおかしな女に又取られたとぼやく。

ダイナミックのおぼん姉さんにやられたのかと愉快がる半太は、自分も弟子にしてもらおうとしたが全くスリの手口は教えてもらえず、足を洗わせられたと教えると、あのガキ、今に観ておれよ。今日のおとしまえはきっと付けてやる!と婆ちゃんも悔しがる。

半田は思い切って、婆ちゃんに弟子にしてくれませんかと頼み、婆ちゃんはあっさり許すが、大阪から抱えて来た大量の荷物を半太に持たせ、駅の外に出る。

親分と呼びかけた半太に、自分のことは先生と呼べ。阪神スリ大学の講師をやっている。今日はそこの卒業生に会いに行くのだが…と言いながら地図を出してみせたので、それを観た半太は、目的地までかなり距離があることを知り、持たされた荷物があまりに重いのでがっくりする。

とあるアパートの214号室にやって来た婆ちゃんと半太を、覗き窓から確認したのは、半太の仲間だったスタミナの鉄(稲吉靖)だった。

部屋で出迎えた卒業生の中には、半太の元仲間、マッハのズラ公(渥美清)も混じっていたが、彼らから、おぼんと言うのは、仕立て屋銀次の娘と聞いた婆ちゃんは、仕立て屋なんてカスみたいなもんや。ヌーベル婆ちゃんが乗り込んで来たからにはと言いながら、たくさんの財布を卒業生たちに投げつける。

それは皆、スリたちの財布だったので、ズラ公はお見それいたしやしたと敬服するのだった。

翌日から婆ちゃんのスパルタ特訓が始まる。

まずは、手首を振りながらランニング。

そのポースのまま、ビルの非常階段を駆け上がり、屋上でぐるぐる走り回るうちに、ズラ公のように脱落者が出始めたので、全く疲れを知らない婆ちゃんは、スリの基本は走ること。サツに追われても逃げられると叱咤激励していたが、そこに、ズラ公らを追って刑事がやって来たので、婆ちゃんたちはズラ公たちが逃げたのと別方向に逃げ去る。

その夜、おぼんに会いに来た正木は、僕たちの結婚はいつになるんだ?と問いかけるが。おぼんはこの子たちにバーを持たせないと…と、スリから全員足を洗わせ、堅気にしてやりたいダイナマイト組の面々のことを案じていた。

社長さんはどうしている?最近観かけないけど…とおぼんが心配すると、あの病がぶり返した…と正木は言う。

噂されていた、正木の叔父で、ダテノモータースの社長伊達野(有島一郎)は、新しい店のマダム大川お伝 (塩沢とき)と仲良くなっていたが、その様子を、カウンターの奥で観ていた大江山興業社長大江山(藤山竜一)は、カモが引っかかったとでも言いたげに、にやりと笑っていた。

その後、お伝のアパートを訪ねて来た伊達野は、入口の前でお伝に抱きつくが、下に停まっていた車の中から、大江山の子分たちがその様子を写真で盗撮していた。

現像が上がったその写真を観た大江山社長は喜ぶ。

ダテノモータース社長室に来ていた正木は、電話が鳴ったので受話器を取り、社長で叔父の伊達野に渡す。

伊達野は、写真を買って欲しいと言う相手の言葉に青ざめる。

おでん屋「おぼん」に来た正木は、叔父が10万で浮気現場を撮られた写真を、1時、地下鉄の喫茶店前で買うことになったと教える。

お芳に店の留守番を頼んだおぼんは、早速、喫茶店前に出向いてみることにする。

そこには、目印のチューリップの花を持った伊達野が立っていた。

そこに、大江山の子分角谷(人見明)が、同じくチューリップを持って近づいて来たので、おぼんはさりげなく角谷に接触して通り過ぎる。

そんなおぼんを見かけた伊達野は声をかけるが、おぼんは忙しいのでと言いながら立ち去ってしまう。

角谷は、伊達野が10万円持って来ているのを確認すると、持って来た写真とネガの入った封筒を差し出すが、中の写真を観た伊達野は、これが10万円?と言いながら笑い出す。

不思議に思った角谷が、その写真を観ると、それはチンパンジーが写っているだけだった。

結局、目当ての10万円を手に出来ず、すごすごと大江山興業の事務所に戻って来た角谷は、大江山社長から怒鳴りつけられる。

その時の女だな?と写真を取り替えられたことに気づいた角谷は、確か、伊達野がおぼんと呼んでいたと口にすると、それはダイナミックのおぼんという有名な元スリで、今はおでん屋をやっていたはずだと指摘した大江山社長は、目には目を、歯には歯を…と復讐を誓うのだった。

その時、子分の一人、坂本福一(露口茂)が、ダイナミック組のおちかから、バーの売り物を探していると相談されていたなと他の子分が思い出す。

10万円を払わずにすんだ伊達野は上機嫌で「おぼん」で酒を飲んでいた。

そこに、おちかもやって来て、景気が良さそうな伊達野にバーへでも連れて行ってとねだる。

しかし、伊達野は、バーは当分の間遠慮して行こうと言いながら、おちかに触ろうとするので、おちかは、私はフーテンだけど、その方は固いのよと拒絶する。

そんな女癖が直らない伊達野に、おぼんは封筒を差し出す。

その中の写真を見た伊達野は、お伝と一緒に写っている盗撮だったので、君がどうしてこれを?!と驚く。

その時「おぼん」には正木がやって来るが、おちかに坂本から電話がかかって来る。

バーの売り物があるので、明日いつもの喫茶店で会おうという内容だった。

翌日、喫茶店で落ち合った坂本は、会社の関係でいつも行く店なのだが、3年前の値段で良いと言っているとおちかに持ちかける。

おちかが喜んで帰って行った後、同じ店内で監視していたお伝が、引っかかりそうか?と坂本に話しかける。

坂本は、おちかがスリを辞めて堅気になろうとしていることを知っていたので、騙すことをためらっていたが、お伝は自分も人を騙すのは気が引けるけど、女スリなんて人の金を取っているだけなんだから、悪銭身につかずってことで、目をつぶるのねと言い聞かす。

「おぼん」に戻って来てバーの売り物の話をしたおちかだったが、お芳は、おちかは男を観る目がないので、その話は気をつけた方が言いだし、2人は取っ組み合いの喧嘩になる。

店の外に飛び出して喧嘩を続ける2人に気づいた三吉と、帰って来たおぼんは慌てて止めようとするが、気がつくと、「イケダ亭」の三吉と女房との夫婦喧嘩の方が派手になっていたので、ダイナミック組の方はあっけにとられて観るしかなかった。

坂本は、お伝が待ち受けていたバーにおちかを連れて来る。

気に入ったおちかは「おぼん」でそのことを報告するが、おぼんは、これからは皆堅気になるので「カモ」とか「ナオン」等とい下品な言葉は使うんじゃないよと注意する。

その頃、ヌーベル婆ちゃんは、住処のアパートの部屋の中で、電車の中でのスリの講習をしていた。

ズラ公が、カミソリを使って鞄を斬り、中の財布を取る様を観た婆ちゃんは、財布は取られるは、鞄はダメにされるでは相手が可哀想すぎる…と言いながら、壁に掲げた「愛されるスリ」と書いた色紙を指し示す。

その時、ブザーが鳴り、客が来たようだったので、ドアの覗き穴から確認すると、そこに立っていたのは大江山社長と角谷らだった。

彼らの用向きは、書類を掏ってもらいたいというものだった。

相手はダイナミック組だが、こちらのお手並みは?と大江山社長が確認すると、婆ちゃんやズラ公が、社長や角谷からすでに掏っておいた財布を差し出してみせる。

お伝は、店の権利書を、喫茶店で落ち合ったおちかに手渡していた。

同じ店内にいた婆ちゃんは、おちかを観ると、あんな三下相手に掏れるかと呆れ、同行していたズラ公にやってみろと命じる。

しかし、自信がないズラ公は、スタミナの鉄にやれと命じ、鉄はさらに格下の半太にお前がやれと命じる。

仕方がなく、店を出て「おぼん」に戻るおちかの後を付け話しかけ、同行するが、背後から同じヌーベルグループのズラ公と鉄が尾行して来るので気になって仕方なかった。

おちかは、300万で手に入れた権利書を半太に見せて、これは、おぼん姐さんが店を売って手に入れたのだと説明し、こんな所で取られたら大変だからとバッグにしまう。

顔見知りということもあり、結局手が出せなかった半太を見かねたズラ公と鉄が近づいて来て、お前、足を洗ったんだって?とおちかに話しかけて来る。

2人がバッグを取ろうとしたので、おちかは、スリかと思ったら、強盗もやるの?と呆れ、通り魔よ!ダンプカー!などと大声を上げたので、ズラ公と鉄は逃げ出すが、いつの間にかズボンが落ちパンツ姿になっていた。

2人のベルトを掏りとっていたおちかは笑い出す。

書類を掏れなかったヌーベルグループのだらしなさを知ったヌーベル婆ちゃんは、この道48年の自分に恥じをかかせて!と怒りながら、部屋に戻って来た3人に、鼻ピンの罰を与える。

やがて、おぼんが買った新しい「BAR スリル」が開店し、伊達野や正木も招き、開店パーティが行われる。

おぼんとギターを弾く若者(佐川ミツオ)が「申し訳ない♬」と陽気に歌っていた。

そんな中、カウンター席の客が「マンハッタン」を注文したので、おぼんは困ってしまう。

まだ、バーテンを雇っていなかったからだ。

すると、カウンターの中から、バーテンの姿になった伊達野と正木が、楽しそうにシェーカーを振り出す。

権利書奪還の作戦に失敗したと知った大江山社長だったが、まだ三段構えの作戦があるんだと笑い、坂本に、今日「スリル」にたかりに行って来いと命じる。

しかし、坂本が嫌がったので、角谷に焼きを入れさせる。

そんな様子を見かねていたお伝は、傷だらけになった坂本を外に運び出していたが、そこに声をかけて来たのが、車で取りかかった伊達野だった。

元々堅気だった坂本が、借金をしてしまったばかりに大江山の手下のようにされてしまった事情を聞いた伊達野は、自分が手切れ金の10万を出してやろうと言い出す。

しかし、大江山と手を切った後どうする?と聞くと、坂本は、ニコヨンでもバタ屋でも何でもやると言い、お伝は、「スリル」はどうなっちゃうかしら?と心配する。

伊達野も、大江山は何を企んでいるかな?と考え込むのだった。

その夜、「スリル」に来た正木は、店の中が満員だと知ると、ちょっと一回りして時間を潰して来ると出て行ったので、気を利かしたおちからは、おぼんも外に行かせる。

外で落ち合った2人は、結婚式のことを話し合い、幸せってこういうものだったのねとおぼんは感激する。

その時クラクションの音が聞こえたので、観ると、自分たちが小さな道を塞いでおり、大渋滞になっていることに気づいたので、2人は慌てて道を避ける。

そんな中、「スリル」にやって来た大江山と子分たちは、店の売上を寄越せとおちかたちに迫る。

おちかが何を言うの?と抵抗すると、お前らはこの店をおぼんからもらったんだろうが、この店にはまだ、改装費など借金が500万も残っているので、それを全額払えと大江山社長が言い出す。

唖然として何も言い返せなくなったおちからを嘲りながら、大江山一味は店の酒も持って出て行く。

その時、外から投石があり「スリル」と言う飾りガラスの看板の「ル」の字が割られたので「スリ」と言う文字だけが残る。

それを観たダイナミック組は、敗北感にうちひしがれてしまう。

そんな中、やっぱり坂本もグルだったんだ!と言い出したお芳とおちかが又喧嘩を始めてしまう。

そこに、おぼんと正木が帰って来る。

お芳とおときは事情を話し、この店、まだ私たちのものじゃなかったの!と全員泣き出す。

ヌーベル婆ちゃんは、ズラ公、鉄、半太を連れ、大江山社長に会いに来る。

ヌーベル組の三人が帽子を脱ぐと、全員坊主になっていた。

婆ちゃんも自分たちの不手際を詫びる。

登記所で「スリル」の所有者確認をした正木とおぼんは、大江山の言葉に間違いがないことを知り、こうなったら大江山に借金返済を延期してもらうしかないと話し合う。

「スリル」に戻って来ると、おちかが1人で大江山に掛け合いに行ったというので、あんな短気な子が行くなんて…とおぼんは呆れる。

そんなおぼんに、正木は、君はもう堅気なんだということを忘れないでねと釘を刺す。

その頃、大江山社長は、1人でやって来たおちかに襲いかかろうとしていた。

大江山興行に乗り込んだおぼんは、入口や部屋の中で子分たちに、社長は面会謝絶だと妨害されるが、得意の合気道で次々に投げ飛ばし、社長室のドアはお尻で突き破る。

助けられたおちかも、机の上の算盤を床に落とし、子分たちの足をすくう。

大江山社長と対峙したおぼんは、机の上に腰を降ろし、足を組んで着物の片袖をまくり上げて、借金のカタに女をたぶらかそうなんてヤクザの片隅にも置けねえ。この「お乱暴代」を払ってもらおうじゃないか!と啖呵を切る。

すると、おちかも、ちゃかり権利書を社長から掏摸とったと言いながら見せる。

意気揚々と引揚げていたおちかとおぼんだったが、そこに近づいて来たズラ公が、仲間の義理があるんだと言いながら、権利書を奪って逃げてしまう。

その後、ヌーベル婆ちゃんの部屋に会いに出かけたおぼんとおちかは、仲間のものを取るのは仁義に反するのと違うのかい?恥の上塗りだと抗議するが、お前も以前、わしから取ったではないかと平然と答えた婆ちゃんは、この際、1対1で腕比べをやろうやないか。場所は地下鉄のアーケードと言い出す。

正木との約束があるおぼんは、この申し出に悩むが、婆ちゃんは、3日だけ待ってやるが、店の権利書は誰に渡すか分からへんでとからかう。

珍しく洋服姿になり、公園で正木と出会ったおぼんがその勝負のことを相談すると、正木は店は諦めるんだなと言い、僕はスリの恋人を持つわけにはいかないと断言する。

ヌーベル婆ちゃんの所に権利書があると知った大江山社長は受け取りに来るが、婆ちゃんは、これは仕事で得たものだから、300万で買い取ってくれ。スリ、ワンダフル、ビジネス!と訳の分からない英語を使う。

婆ちゃんの目的はただ一つ、アトミックのおぼんに一泡吹かせること。今に観ていれ!と心に誓っていた。

その後も悩み抜いたおぼんは、正木さんのことを諦めようと決意する。

その頃、大江山社長は子分たちに、抜かりなくやるんだぞと、又しても企みを指示して部屋を出るが、そこにやって来た刑事と警官に逮捕されてしまう、

いよいよ、ヌーベル婆ちゃんとアトミックおぼんとの一騎打ちの日、神田駅の地下アーケド内で落ち合った2人は、ハンカチ勝負で、制限時間は10分間ということで始める。

双方には、ヌーベルグループとダイナミック組が後見役として付いて来ていた。

おぼんは、アトミックおぼんの黄金の腕を見せてやる!と張り切り、早速、乗降客からハンカチを掏り取り始め、明らかにおぼん優勢で進行していたが、気がつくと、正木がやって来ていた。

明らかに自分の勝負を邪魔しに来たと分かったおぼんは、あの店を私たちのものにするにはこうするしかない。どうせ私はスリの子、堅気なんかになれないと開き直るが、正木は優しく、自分は結婚した後別居は嫌だ。女房が刑務所にいるのでは…と説得する。

その言葉を聞いたおぼんは勝負を諦めることにする。

その間も、婆ちゃんの方はまだまだハンカチを掏り取っていたが、その様子を、マネキンに化けた伊達野が写真に撮っていたことには気づかなかった。

おぼんは、こうしてはいられないと言い出し、掏ったハンカチをもとの所有者たちに戻し始める。

10分が過ぎ、ヌーベル婆ちゃんの戦果は271枚、対するおぼんは0枚となり、おぼんは兜を脱いだわと言う。

それを聞いた婆ちゃんは、その言葉を待っていたんや!と喜ぶが、そこに乱入して来た刑事と警官が、ヌーベル婆やん御用だ!と迫って来る。

わては何もしてまへんでととぼける婆ちゃんだったが、そこにやって来た伊達野が、ちゃんとスリの現行犯を写真に撮っていたとカメラを見せたので、婆ちゃんとヌーベルグループの3人はすたこら逃げ出す。

これで万事終わりか…とお芳は嘆き、おちかは泣き出したので、そんなおちかの側にやって来た坂本はご免ね。人のために金をなくし、それをうっかり大江山に借りたのが運の尽きだったんだと詫びる。

その間も、婆ちゃんと刑事や警官隊の追いかけっこは続いており、最後には、赤ん坊に化けたばあちゃんを乳母車に乗せ、それをズラ公が押して警官隊の目をくらませ、何とか逃げ去る。

洋食屋の「イケダ亭」に集まったお芳たちは、元のスリに戻ると話し合っていた。それを聞いていたおぼんも、もうあんたらを止める気力もなくなったわと落ち込んでいた。

するとおちかが、そんな情けないおぼん姐さんなんか観たことない。私たちを堅気にさせたいんだったら、最後まで引っ張ってくれないのよ!と息巻く。

そんな所にやって来たヌーベル婆ちゃんは、「スリル」の権利書をおぼんに手渡すと、わしはメンツのために勝負しただけや。こんなもん持っといても、養老院では役に立たんと言う。

養老院?とおぼんが不思議がると、あの男も返すからせいぜいこき使ってやってくれと、半太を指す。

そこに刑事がなだれ込んで来て、手錠を婆ちゃんにかけようとするが、その手錠がない。

自ら、掏った手錠を取り出した婆ちゃんは、自分と刑事の手に手錠をかけると、行こうと言って店を出て行く。

一方、ズラ公は、他の仲間と今後の身の振り方を相談しながら歩いていた。

デカに顔を覚えられたので、この際関西へでも行くかと言うことになるが、気がつくと、偶然、刑事が背後に近づいていた。

振り向いたズラ公の顔に気づいた刑事は追いかけ始めるが、ズラ公たちは、ゴミ箱の中に逃げ込んだりして目をくらませる。

しかし、刑事も上手で、一旦その場を立ち去る振りをして、ズラ公たちがゴミ箱から出て来た所で又姿を現す。

ズラ公たちは一目散に逃げ出し、とある門の中に逃げ込んで、してやったりと刑事に笑いかける。

しかし、その門に近づいた刑事はにやりと笑い、自分も中に入ると扉を閉める。

そこには「千代田警察署裏口」と書かれてあった。

翌日、スリ集団の14名が捕まったという新聞記事が載る。

後日、留置場にいるヌーベル婆ちゃんに差し入れを持って行った半太が「スリル」に戻って来て、婆ちゃんは元気だったとみんなに伝える。

坂本とおちかは、そんな店を抜け出して、ビルの屋上へ上がろうとするが、おちかが、こは満員だと呟いて降りて行く、

そこにはおぼんと正木と言う先客がいた。

おぼんは正木に、もう会えないかもしれないと思っていたのでと言いながら、擂り取っていたライターを取り出し、もう2度と掏ったりしないわと約束する。

そんな2人の頭上には、「スリに御用心」と書かれたアドバルーンが揚がっていた。