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あんま太平記

駅前シリーズや社長シリーズなどでお馴染みのメンバーが登場している抱腹絶倒の喜劇。

日本の喜劇映画は数あれど、なかなか抱腹絶倒と言うのは少ないのだが、これは久々に声を上げて笑ってしまった。

発想自体のナンセンスさも面白いのだが、按摩という動きを取り入れている所が素朴なおかしさを生んでいるのだ。

フランキーが社長役の三木のり平相手に肩をおもしろおかしくもんだり、京都の道場で師範代の長門勇が小沢昭一を実験台にして按摩の実技を披露する所、三木のり平扮する真木社長が、呼び寄せた淡島千景扮する千恵子を自らもんでやることに快楽を覚えており、それを入浴する妻役の松尾和子の前で、上になったり下になったりあたふたする所など、バカバカしいというしかないおかしさに溢れている。

淡島千景のこの種の喜劇で見せる慣れた受け芝居も見事だが、本作では特に、池内淳子のコメディエンヌ振りが見事。

大和や坂井に体当たりお色気サービスをしたり、焼き芋を食べて胸を詰まらせる慌てぶりなどの部分は、なかなか他のシリーズでは観られないものである。

山東昭子がストの先導者になったり、ジャイアント馬場やサンダー杉山がゲスト出演している所など、今観ると興味深い部分も多い。

主人公のフランキーは、冒頭部の朝の出勤準備のシーンや、後半、左卜全の乳首を吸引器でピコピコ吸い上げるなど、バカバカしい動きで笑わせる部分と、気が弱く生真面目な青年の芝居の両面を巧みに演じ分けており、安定している。

駅前ではフランキーと名コンビの伴淳の方も、思ったほど登場シーンは多くないが、相変わらずのとぼけた存在感を見せてくれる。

森繁ならぬ、長門勇も元気一杯の演技で、これに小沢昭一のスケベキャラも加わり、淡路恵子、千石規子、三原葉子、若水ヤエ子ら女性陣らの巧みな助演も加わり、全体が巧く調和して、面白さの相乗効果になっている印象である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、東京映画、笠原良三脚本、佐伯幸三監督作品。

あんま用笛の音と会社クレジット

「世界按摩図鑑」なる本をバックにタイトル

明治4年の10月22日(旧暦9月9日)がドンの日と呼ばれるようになった解説をするテレビを足の先で消した坂井喜市(フランキー堺)は、パンと牛乳で朝食をすませていたが、寝押しのズボンをはこうとして、後ろ前になっているのに気づいたりしていたが、そこに訪ねて来た大家からバラは好きか?と聞かれたので、食べられないからと興味を持たない坂井だったが、バラ園のアベック券をもらったんだが?と大家が念を押すと、あっさりもらうと言う。

通勤の途中、坂井は、同じ会社の医務室に勤めている大川真砂江(大空真弓)に、バラは好きですか?と切り出すが、真砂江は、あなたは会社で何て言われていると思う?と言い出す。

日の丸観光の経理課に勤めているごますり男と言われているのよ。毎日毎日、社長室に行りび立って…と、いやあれはね…と言い訳しようとした坂井に注意する。

日の丸観光に到着した坂井は、真木平左衛門(三木のり平)社長が電話で経理課から呼び出した直後に、社長室に来ると、すぐさまいつものように、肩をもみ始める。

社長は、坂井の按摩が心底気に入っていたのだ。

君はいくら月給をもらっているのかね?と社長から聞かれた坂井は、税込み28200円ですと答えるが、社長は、もらい過ぎだねと言い出したのでがっくりして、肩をもむ手に力がこもる。

そんな坂井に、京都に、我善坊流と言う按摩の総本山があるのを知っているかと聞く。

坂井は聞いてことがなかった。

京都 我善坊流総本家

何人もの患者がベッドに寝てお灸をしていると、そこに、助手の藤井剛(小沢昭一)を引き連れた123代師範、山野伴三郎(伴淳三郎)がやって来て、患者ごとの容態を診ながら、個別の療法を藤井に伝えて行く。

別の部屋では、師範代の大和進(長門勇)は、免許を受けにきた弟子たちに演説をしていた。

そんな弟子の一人雛奴(赤坂まり江)が免許皆伝を受けるために師範の部屋に向かおうとしている時、藤井が近づいて来て、手ほどきの再確認をしてやるなどと言いながら手や身体を触ろうとしていたが、大和から呼ばれて部屋に行くと、試験台になれと言われベッドに寝ることになる。

大和はいきなりその上に飛び乗ると、藤井をこてんぱんにもみ始める。

免許に判を押していた山野に、雛奴は、うちは団体で受けにきているんだから、免許料負けて欲しいと甘え、山野も鼻の下を伸ばしかけるが、側で帳簿をつけていた秘書のお種(千石規子)が、呼び鈴を「チン!」と押すと、急に正気に戻ったようになり、まけられないと断る。

すると、雛奴は、でも熱海の我善坊流ではもっと安いという評判ですよと言い出したので、山の端お種に、そんな支部あったっけ?と聞く。

日本地図を確認したお種は、熱海にはないと言うので、それは「モグリ」だ!と断定した山野は、道理であの辺には我が流派が広まらない訳だと悔しがるのだった。

すぐに、大和を呼び寄せた山野は、熱海へ行けと命じる。

大和がお種から旅費をもらうと、山野はお種から10円もらい、部屋の横にあるマッサージ器に10円を投じ、そこに座って仕事の疲れを落とすのだった。

熱海

師範、浅井千恵子(淡島千景)と師範代沼田伝子(池内淳子)以下、女性だけでやっているで切り盛りしていた我善坊流熱海流では、女性の仕事と言うことで誤解を招かないように、従業員たちに毎日厳しい言いつけを守らせていた。

今日も、部屋長の伊東あき(若水ヤエ子)がエロサービスで稼いではダメよと呼び出しがあった月山みどり(星美智子)、秋田すみ子(山東昭子)、梅子(小林裕子)らに確認し、パンツは2枚はいたか、ブラジャーはちゃんと着けたかなど、口やかましくチェックしていた。

出かける3人に千恵子は、相手に名前を覚えられないように、今日の名前は13、14、15にしときなさいと命じる。

3人が出かけた後、サングラスをした奇妙な中年男(太宰久雄)が訪ねて来たので、応対に出た伝子は、うちでは男性は雇っていませんけど?と追い返そうとすると、相手は按摩ではなく探偵ですと答える。

不思議がる伝子を他所に、調査を依頼していたらしい千恵子がその探偵を部屋に上げると、京都に我善坊流山野派と言うのがあるんだけど、うちは死んだ亭主が付けた偽看板だから、探偵に別の流派を探してもらったのだと伝子に耳打ちする。

部屋で待たせていた探偵に成果を聴くと、坂井流の血を引く坂井喜市という人間を見つけたという。

丸の内にある日の丸観光の経理課で働いていると探偵が報告すると、日の丸観光なら、社長がうちのお得意で、熱海に来ると呼ばれていると喜んだ千恵子は、その真木社長から電話があって今熱海に着いたと連絡があったので、これ幸いとばかりに自らがでかけて行く。

ホテルで千恵子を待っていた真木社長は、千恵子が部屋に来るなり、今日は女房と一緒で、今、あれは買い物中なので、時間がない。早く始めようとベッドにせかす。

そこに、早めに買い物を済ませた女房の花子(松尾和子)が帰って来る。

ホテルの部屋に入ってきた花子は、按摩である千恵子の腰をもんでやっている真木が、慌てて、押し方を教えていたんだと弁解する姿を観て、後で私もやってもらうわと何も疑っていない様子で言う。

浴室に花子が入ったのを見届けた真木は、又、自分が千恵子をベッドに寝かせると腰を押し始める。

奥さんが帰って来たのに…と迷惑がる千恵子に、真木は歌を歌っているから大丈夫と言いながら、千恵子の身体をもむが、その時、バスタオル姿の花子が浴室から出て来て、今のはラジオで歌手の松尾和子が歌っていると教え、買って来た卵を持って再び浴室に入ったので、慌てた真木は千恵子と身体を入れ替えながら、ゆで卵を風呂で食べるのかい?などと聞き、又、自分が上になり千恵子をもみはじめる。

下になった千恵子が卵パックよと教えていると、又、花子が出て来て、今度は牛乳を撮って浴室に戻ったので、今度は牛乳パックかい?などと聞きながら、又、ベッドに寝そべった真木は、又、千恵子をうつぶせにさせると、自分がもみ始める。

すると、又又、花子がレモンを取ってと頼むので、もうデザートですか?などと慌てた真木は、そのまま千恵子の上に股がっていたが、浴室から出て来た花子に「こら!」と怒鳴られてしまう。

日の丸観光の医務室に来ていた坂井は、他の社員を次々に先に往診させ、わざと自分だけが最後に残って真砂江に言いよろうとするが、かかって来た電話に出た真砂江は、坂井を社長が呼んでいると伝える。

重役会議中だった真木社長は、これからは経費節減、2割節約とスローガンを発表し、坂井がやって来ると、いつもの通り肩をもませながら、これだ!ただで使えるものは何でも使う!と重役たちに坂井のことを披露し、解散する。

社長室に戻った真木社長の所へ、息子の平一郎(江原達怡)がやって来る。

そこに、真砂江がビタミン注射をしにきたので、まだ按摩を続けていた坂井は経理課へ戻るように命じられる。

社長室の前で、真砂江が出て来るのを待っていた坂井は、バラ園のチケットを取り出していたが、真砂江がドアを開けると頭を強打してしまい、さらにチケットを渡そうとしていた所に、又、平一郎がドアを開けたので、坂井は再び頭を強打してしまう。

平一郎は真砂江に、コーヒーでも飲みに行こうと誘って出かけたので、坂井は何も言えずその場に取り残されてしまう。

アパートに帰って来た坂井は、共同洗濯機でゴムの緩んだパンツを洗っていたが、そこにやって来たのが、浅井千恵子と沼田伝子だった。

部屋の前に来た2人は、汚い部屋ね。50万くらいではどうかしら?と千恵子が言うと、半分の25万でも十分ですよなどと伝子が打ち合わせしていたが、後ろで聞いていた坂井が名乗ると、慌てた2人は、閑静な所で…とお世辞を言いながら、部屋に招かれると自己紹介をする。

埼玉出身でしたねと坂井に確認した千恵子は、按摩の総本家をお継ぎになる気はないようですね?権利の一切を譲っていただきたいと申し出ると、三種の神器と巻物があるはずですと聞く。

その時、伝子が、目の前に置いてある握った腕の形をした神器の1つをあっさり発見する。

後、判子と笛があるはずですが?と千恵子が尋ねると、坂井は押し入れから、父親からもらったと言いながら、袋に入った按摩の笛と判子を取り出してみせる。

巻物は?と聞くと、今、隣のケン坊が忍者ごっこに使うというので貸していると坂井は教える。

あなたが持っていても何の価値もないでしょう?と言う2人に対し、何にお使いになるんですか?と坂井が聞くと、自分たちの仕事の貴重な資料ですと伝子が答える。

伝子は、1万円くらいではいかがでしょう?5000円くらいなら色をつけることも…といきなり、値段交渉に入る。

坂井は追って連絡しますと返事をし、ケン坊が巻物をなくすといけないからと言いながら部屋を後にしようとし、按摩の血か…と考え込む。

その頃、熱海の我善坊流道場では、京都から乗り込んで来た大和が、留守番をしていた女たちを、按摩でねじ伏せていた。

悔しかったら誰か俺をもみ潰してみろ!と従業員たちを睨みつけ、表の看板はもらって行くぞと宣言するが、部屋長のあきは、自分たちは留守を預かっているだけで分からないので、師範たちの帰りを待っていてくれと言ってるだけじゃない!と睨み返す。

そこに帰って来たのが伝子で、自分が当家の師範代なので、まずは話し合うのが筋ではありません?と流し目を使う。

大和も伝子に引かれたようで、言われるがまま料亭で2人きりになるが、伝子は体当たりのお色気作戦で大和を懐柔しようとする。

大和はあっさり陥落しかけるが、お猪口の酒を口にしようとした瞬間、お母ちゃんから酒はノンじゃいけん言われとった。危ない所だった…と寸止めしたので、伝子はすぐに、母親を持ち上げる芝居を始める。

これには大和も騙されてしまい、故郷から毎年手袋を編んで送ってくれる老いた母親を懐かしんで涙するが、危ない所だった。お母ちゃんは、酒の次ぎは女に気をつけろと言われたと呟くと、看板料60万円などと言い出して、伝子と対決する。

その頃、我善坊流熱海流道場に一人の流れ女按摩師お仙(淡路恵子)がやって来て一宿一飯を願いたいと仁義を切って来る。

翌朝、出社する坂井は、一緒に通勤する真砂江に、今日から僕は我善坊喜一だと改名したことを証し、真砂江も、その名前は看護婦の養成所で聞いたことがある。免状を与えるだけでお金が入るので儲かるじゃないと驚く。

日の丸観光の社長室では、息子の平一郎が、真木社長に、親子で行くヨーロッパ旅行の打ち合わせをしていた。

そこに、白衣を来た坂井がやって来て、笛で「按摩マーチ」なるものを吹いて紹介する。

随分本格的になったねなどと感心しながら、いつものように坂井に肩をもませ始めた真木社長だったが、今、色んな世界が革新的なことをやり始めているのに、旧態依然としているのは按摩だけだよ。ベルトコンベアを取り入れるとか、新しい発想は出来ないものかねなどと提案する。

それを聞いた坂井は、何かの啓示を受けたようで、興奮のあまり、山野社長の首をねじ曲げてしまう。

一方、医務室にやって来た平一郎は真砂江に、1週間後に自分と社長は業界視察のためヨーロッパ旅行に出かけるが、君も社長専属の看護婦として着いて来るんだと一方的に命じたので、真砂江は唖然としてしまう。

我善坊熱海流道場では、伝子が東京の坂井からの電報を聞いて千恵子に報告していた。

「この間の話 お断り とりあえず 坂井」と言う内容を聞いた千恵子はバカにしていると息巻く。

伝子は、もしダメだったら奥の手を出します。どうせ私は独り者ですからと千恵子に伝える。

坂井はアパートで巻物を読んでいたが、そこに尋ねて来た伝子は、電報は読んだか、そこを何とかならないか?こんなものはあなたには何の価値もないものでしょう?5万、10万、20万と値段を吊り上げ始めるが、坂井は、お金なんか欲しくないんです。これの価値の有る無しは、僕が決めることですから…ときっぱり断る。

すると、突然、伝子は脇腹を押さえて「持病の癪が…」と苦しみ出し、自分で布団を敷いて横になる。

坂井はうろたえ、巻物を読み直すが、癪のことは書いてない。

とりあえず、伝子の言う通り、背中を押したりし始めるが、やがて伝子から手を取られ、肩越しに前の方から押さえられたりさせられる。

伝子の策略のまま、あたかも抱き合っているかのような無理な姿勢になっていた時、やって来たのが真砂江で、あられもない伝子と坂井の姿を観た彼女は勘違いし、そのまま逃げ帰ってしまったので、慌てた坂井が追って行く。

緩んだパジャマのまま外まで追って行って誤解だと弁解した坂井だったが、真砂江は不潔よ!と怒り、平一郎さんとヨーロッパに行きますと伝える。

驚いた坂井は、あいつは若いのに女房を3人も取り替えたような奴だよと忠告するが、真砂江は怒ったまま帰ってしまう。

坂井はパジャマのズボンが脱げてその場に転んでしまう。

真砂江が平一郎と山野社長と共に羽田を出発する日、密かに見送りに来ていた坂井は、ちくしょう!今に日本一の按摩になってみせるぞ!と悔しがっていたが、気がつくと有料駐車場発券機に手を挟まれており、抜けなくなっている自分に気づく。

我善坊熱海流道場では、伝子が、ここの規則は厳しすぎる。人権蹂躙だとあきたち女性従業員からつるし上げを食っていた。

彼女たちが怒っている原因は他にもあった。

流れ按摩のお仙ばかりに客が付き、他のメンバーたちは嫉妬していたのだ。

伝子は、彼女は腕が良いから売れるのよと説得するが、その時、千恵子が、町内会の観覧版にお仙のことが載っていると持って来る。

そこには、お仙が本業以外のサービスをやっていると写真付きで載っており、それを知ったすみ子たちは、お仙が寝転がっていた部屋に来ると、看板を突きつけて、あんたのような人がいるから、私たちがパンツ2枚はけとか、ブラジャーしろとか言われるのよ!と文句を言う。

しかし、お仙は全く動じず、全国の温泉場でもみ歩いて来て、世界一周できるくらいは稼いだので、もう出て行くわと言い残し、あっさり荷物を持って出て行ってしまう。

それを観た千恵子は、みんなも気に入らなければ出て行って良いのよと従業員たちを睨むが、すみ子は他の従業員たちに、今から党争委員会に切り替えようと言い出す。

京都の我善坊山野流道場では、藤井を呼び出した山野がマッサージ器にかかりながら、大和が帰って来ないので、今度はお前が熱海に行けと命じていた。

その大和は、すっかり伝子に骨抜きにされており、今では、我善坊熱海流道場で廊下の拭き掃除をやっていた。

従業員たちは、全員、赤いブラジャーとホットパンツ姿になり、「怒っちゃったのよ♬」などと、闘争ソングを歌ってストを決行していたので、大和はこっそりふすまの穴から彼女たちの様子を覗いていた。

そこにやって来たのが藤井で、交渉は自分にバトンタッチされたと大和に告げる。

大和は、交渉には時間がかかる。日韓交渉だって6年もかかっているではないかと反論するが、あんたは破門やと言うてましたと藤井は冷たく告げる。

我善坊山野流新師範と名乗る藤井に対峙した千恵子は、得意のお色気作戦で対決する。

電話番をしていた伝子は、今、従業員は全スト中ですと対応していた。

そんな伝子に近づいた大和は、今、千恵子は藤井を月10万で事務局長にすると話していると教える。

それを聞いた伝子は、私、今、3万よと呆れ、大和も3万だったと打ち明け、事務局長は男の方が良いらしいと千恵子の意向を伝える。

千恵子の膝枕に頭を乗せた藤井は、按摩は技能者であって労働者ではないんだから、切り崩し作戦すれば良いのだと知恵を授けていた。

そんな藤井の知識を千恵子は気に入ったようだった。

アパートで布団相手に按摩の練習をしていた坂井の元に訪ねて来たのは、熱海を飛び出して来た伝子と大和だった。

2人は、それぞれいた流派を破門された。あなたが一番信頼できそうなので、こちらに入門させていただきたい。連中を見返してやりたいんですと申し出る。

坂井は戸惑いながら、そんな見返すとか何とかはいやだな〜と言い、みんな仲良くやって行くというのが好きなんですよと答える。

今戦争が起きているベトナムやカシミールの指導者たちも皆肩がこっているんやなと大和は坂井の考え方に同調する。

伝子は、その考え方で組織化しましょうと言い出し、坂井も乗り気になるが、軍資金を募ると、大和は熱海で使い切ってしまったので、今は60円しか持ってないと言い、伝子も13000円しか持ち合わせがなく、貯金していた50000円はショールに化けたと大和に伝える。

それでも坂井は、自分の家財道具を売って軍資金の足しにすることにし、間もなく「正統坂井流総本家」の看板を掲げる。

しかし、電話などは安く譲り受けたものを引いたので、前の持ち主だった葬儀屋への間違い電話があるくらいでなかなか依頼主は現れなかった。

伝子は、どこかに良いお得意さんいないかしら?と嘆き、坂井は、スポンサーを見つけてテレビでPRすれば…などとアイデアを出していたが、その時、電話がかかり、それに出た大和は、麹町3番地の茶々井様から依頼が入ったと喜ぶ。

週刊誌の宣伝効果があったと喜ぶさかいに、この家は有名な大実業家のお屋敷で、世界の色々な按摩を呼んでいるそうだから、声がかかっただけでも名誉よと伝子が教える。

早速、坂井自ら出張し、寝室で待ち受けていると、風呂上がりの茶々井夫人(三原葉子)が現れ、按摩を始めた坂井に、脱ぎましょうか?マリリンモンローは日本に来た時全裸になったそうよ…などとあれこれ挑発をし始める。

アパートで、大和と共に食事をしていた伝子は、うちの総裁、持つかしら?実技はじめてだから…と心配していた。

一方大和の方は、ひたすら飯を食うのに夢中なだけだった。

茶々井夫人は、あなたが欲しいものは何?例えば、女とか?と相変わらず表発していたが、坂井は、夫人に求められるまま腰をもみながら、欲しいのは、ズバリ金です。日本古来の按摩を広めて、日本中を健康にしたいのです。今の按摩業界は、政治の世界のように互いに殺し合っているだけではないですか。日本按摩センターのようなものを作り、そこに日本の各流派を全部集めるんです。按摩、鍼灸…、そうすれば世界中に平和も来るんです!といつしか演説を始めていた坂井の言葉を部屋の隅で黙って聞いていた人物がいた。

当家の主人、茶々井麻三(左卜全)だった。

ノックしたが、返事がなかったので失礼したと言いながら寝室にやって来た茶々井氏は、面白い話をしとったね。わしのマンションを1つ提供しようじゃないか。君は何かやれる男じゃな。好きなように何でもやるが良かろうと言ってくれる。

かくして「按摩の殿堂」が作られると言う報道が新聞各紙を賑わわす。

これに参加したいという希望者は定員の約6倍にも登ったというので、公正を期するために、自分たちが審査員となって実技試験を行うことにしたと茶々井夫婦に坂井は知らせる。

それを面白がった茶々井夫婦も審査員として加わることにする。

坂井は、苦労して完成させたベルトコンベアシステムを導入した按摩システムを2人に涙ながらに披露し、茶々井氏に試験台になっていただきたいと申し出る。

夫人の勧めもあり、助手たちに裸にされた茶々井氏は、ベルトコンベアに寝かせられると、坂井がまず噴霧器で水をかけ、さらにパウダーをまぶした後、乏しい胸を豊かにすると称して、吸引器で乳首を吸い上げた後、助手たちに按摩を始めさせる。

さらに、赤外線を当て、その後、寝台に移行して休憩になる予定だったが、途中で、ベルトコンベアの台がひっくり返ってしまう。

いよいよ「按摩会館」が完成し、参加希望者たちの実技試験「ま道選手権競技大会」が始まる。

我善坊山野流からは山野伴三郎自身がお種と乗り込み、我善坊熱海流からは浅井千恵子と藤井が参加していた。

試合は、トルコ派が高得点を取っているという噂が控え室に広がる。

いよいよ山野流と熱海流の一騎打ちになり、それぞれの台にモデル役としてプロレスラーが横になる。

山野はモデル(杉山恒治=サンダー杉山)の上に股がると、尻を叩くという技を披露し、モデルはその度にエビぞる。

千恵子もモデル(ジャイアント馬場)にパウダーをかけると技を披露しはじめるが、モデルはくすぐったいのか途中で笑い出す。

審査結果は48対48で、両者引き分けだった。

この段階トルコ派の失格が発表となり、我善坊の両派は共に合格となる。

この決定に不服を唱えるトルコ派が会場内に乱入、競技場内は大乱闘のるつぼを化す。

藤井と坂井は叩き合い、大和は、モデルの一人(サンダー杉山)と取っ組み合う。

その大和の身を案じた伝子も、空手チョップを繰り出し乱闘に加わる。

そんな中、大和が坂井に、トルコ派に占拠されてしまったようだと耳打ち。

千恵子も、ここはトルコ会館になるんですってと唖然とする。

驚いた坂井はやって来た茶々井に真意を問いただすが、今、トルコ派と入店契約をすませて来たと言うではないか。

それを聞いた山野と千恵子は口喧嘩を始めるが、茶々井は、トルコ派が一番成績が良かったと言い残してその場を去って行く。

坂井は、山野や千恵子らから、これはどう言うことだと一斉に責められる。

坂井は土下座すると、すみません、許して下さい。今回のことは全面的に自分のせいであり、理想に走った私が浅はかでしたと頭を下げるのだった。

三種の神器は、山野や千恵子や藤井たちにその場で全て奪われてしまい、何もかも失った坂井。

その後、坂井は、茶々井の屋敷の前で、2人が帰って来るのを待ち構えていたが、車で帰って来た2人は、坂井がどんなに最後のお願いを聞いて下さいと頼んでも、聞く耳を持たなかった。

アパートを出ることになり、部屋の中の整理をしていた坂井は、真砂江に出し忘れていたラブレターを見つけていた。

そこに大家がやって来て、次ぎの人が待っているので、今日中に出て行ってくれと言い出したので、今日までは家賃を払っているはずだという坂井に、今日の分として200円を大家は置いて行く。

そんな所にやって来たのが伝子と大和で、あれから色々考えた結果、京都や熱海のがりがりに比べると坂井先生が一番立派だと思うので、又使ってもらおうと思って…と言うので、感激した坂井は泣き出してしまう。

巻物は京都に取られてしまったと大和は嘆くが、今まであんなミイラみたいなものに頼っていたのが間違いだったんだ。俺たちには身体があるじゃないかと励ます。

大和も賛成するが、その時、大和と伝子の腹が鳴り出し、昨日から何も食べてないという。

坂井の腹も鳴ったので、目の前にある200円を使って、大和たちが今アパートの前で観たという焼き芋屋に向かう。

3人で焼き芋を食べていた時、坂井は、人に見つかったらまずいものを置きっぱなしにして来たと言いながら、アパートへ戻るが、すでに自分の部屋には見知らぬ人の家財道具が運び込まれており、女性が手紙を読んでいた。

もう次ぎの人が入ったのかと呆れた坂井だったが、振り向いた女性は真砂江だった。

彼女が読んでいた手紙は、坂井が置きっぱなしにしていた彼女へのラブレターで、嬉しかったという。

ここで会えるなんて、まるで映画のようだねと感激した坂井に、押し掛け女房になるつもりで来た。今まで住んでいたアパートの家賃は7500円、ここに2人で住めば9000円ですむと真砂江は言う。

坂井は、そんな真砂江を思わず抱きしめるが、そこに怪訝そうな表情で、大和と伝子が戻って来る。

真砂江が、香港で、平一郎に絡まれている所を助けてもらった人と紹介して、部屋に顔を出したのはお仙で、世界中で按摩を紹介して来たのだが、フランスで、日本の伝統である按摩を招聘したいと言っているけど、皆で行かない?旅費は全部向う持ちなのと言い出す。

それを聞いた坂井や大和たちは行ってみようか?日本の伝統を世界に知らせるんだ!と乗り気になる。

後日、旅客機でフランスへ伝子と共に向かう大和は、自分そっくりな母親の写真を見ながら懐かしんでいた。

同じ機内で真砂江の隣に座っていた坂井は、毛沢東やジョンソンさんは、2人とも肩が凝っているんだろうなぁと呟いていたが、そんな坂井の肩を真砂江がもんで上げましょうか?ともみ始める。

君にもんでもらうのが一番だと感激する坂井。

それが按摩の妙味なのであった。