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ALWAYS 三丁目の夕日'64

「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの3作目。

お馴染みの登場人物が、又新しいステップに向かって進み出すまでを描いている。

1作目が出会いがテーマだったとすると、今回は別れがテーマになっている。

茶川の方は、父との惜別から親子の真の情愛を理解した茶川が、淳之介に父親としての役目を果たすまでが描かれており、こちらは、お涙頂戴、あざとい演出と分かっていても泣かされる仕掛けになっている。

一方、鈴木家の方は、六ちゃんの恋愛と結婚までが描かれている。

こちらは、途中、観客がちょっとハラハラするようなひねりがちょっと加えられている。

こちらのエピソードも、他愛無いと言ってしまえばそれまでだが、1作目から観ている観客にとっては、それぞれのキャラクターたちに感情移入しているので、そんなに嫌味なく観られるのではないだろうか。

レトロ趣味は、今回あまり目立っていない。

東京オリンピック当時の流行語や風俗などが色々登場するが、この辺の時代になると、テレビなどに映像が残っているものが多く、これまでにも色々な番組で観た覚えがあるものが大半なので、そんなに懐かしい!と感激するようなものが登場しない。

むしろ、まだ「エレキの若大将」(1965)が登場する前なのに、加山雄三に憧れている一平くんが、エレキに夢中になっている所など、ちょっと引っかかる部分もないではない。

懐かし要素をあまり感じない原因の1つには、オリンピックそのものをあまり描いていないこともあるだろう。

競技場の中の再現などは難しかったとしても、沿道を応援客が埋めた、アベベなどが走るマラソンシーンなどは再現できたのではないかと思ったりもする。

日頃、60年代頃の映画を見慣れている目で観ると、この映画のテンポがひどく遅いことに気づく。

当時の映画は、基本的に若い客層に向けたものだったのに対し、「三丁目の夕日」シリーズは、当時を懐かしむ年配者向けに作られているためかもしれない。

とは言え、別にだらだらしていると言う訳でもなく、これはこれでゆったりした気分で観れる作品になっているとも言える。

泣ける=名作と考える人には、この映画は正に、号泣必至の名作かも…

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会、西岸良平原作、古沢良太脚本、山崎貴脚本+監督作品。

古い東宝会社ロゴからラジオのマークにフェード

東京オリンピックの準備が進んでいる放送が聞こえて来る。

部屋にハタキをかける、鈴木オートの社長妻トモエ(薬師丸ひろ子)に、今や立派な働き手となった六ちゃんこと星野六子 (堀北真希)が、楽しみですね、今日…と話しかける。

古行淳之介(須賀健太)と一緒に高校から帰って来た鈴木一平(小清水一揮)は、鈴木オートの店の前で、ゴム動力の模型飛行機を飛ばそうとしていた子供たちを見て、作るのへただなとバカにする。

向かいの茶川家の駄菓子屋で淳之介を迎えた新妻のヒロミ(小雪)は、お腹が大きくなっていた。

駄菓子屋の隣には、ヒロミがやっている居酒屋「やまふじ」も増築されていた。

そこに、電器屋(蛭子能収)のオート三輪がやって来て、茶川家にテレビを持って来たので、茶川竜之介(吉岡秀隆)と淳之介は、はじめて家にテレビが来たと感激、喜び合うが、そんな茶川の駄菓子屋の前を子供たちが馬鹿にしながら通り過ぎて行く。

電器屋は、向かいの鈴木オートの方へもテレビを運び入れるが、それは近所では珍しいカラーテレビだった。

新し物好きの鈴木オート社長鈴木則文(堤真一)が、東京オリンピックを観るためにさっそく買ったものだった。

近所の子供たちも集まり、スイッチを入れたカラーテレビに映し出されたのは、NHKの「ひょっこりひょうたん島」だった。

にぎやかな鈴木オートの様子を観ていた茶川はがっくりしながらも、オリンピックなんて、しょせんは運動会じゃないかと負け惜しみを言う。

店の前から一平は、子供たちのゴム動力の模型飛行機を空に向かって飛ばす。

模型飛行機は三丁目から大通りに出ると、東京タワーに向かって飛んで行く。

カメラは、それを追って東京タワーのてっぺんを上から見下ろす位置まで舞い上がる。

タイトル

六ちゃんは最近、朝、化粧台の前でメイクを入念にすると、左腕を見つめ、その手に巻かれた腕時計で時間を確認すると、いそいそと外出するようになっていた。

夕日町3丁目20番地あたりで、とある青年と出会った六ちゃんは、おはようございますと、さりげなく挨拶をしてすれ違うが、何故かドキドキしていた。

店に戻って来て工員服姿になった六ちゃんは、九州からやって来たらしき後輩のケンジ(染谷将太)に仕事を教えるだけではなく、最近では、主人である鈴木にまで、世話女房のようにあれこれ注意するくらい、工員として成長していた。

そんな六の変貌振りを唖然と見つめる鈴木に、トモエは、最近、六ちゃん、朝、おめかしして出かけているの知ってた?早朝デートしているんじゃないかしら?と耳打ちする。

その夜、「やまふじ」で、近所の常連である、精肉店の丸山(マギー)や自転車屋の吉田(温水洋一)と一緒に酒を飲む鈴木。

出版社から帰って来た茶川は、自分の作品「冒険少年ミノル」が載っている子供向け月刊誌「冒険少年ブック」で、最近、緑沼アキラという謎の新人が書き始めた「ヴィールス」と言う小説の方が人気があると聞いて来たらしく、不機嫌そうに、その新人作家の作品をくさし始める。

淳之介も又、そんな茶川に同調するように、緑沼なる新人の作品を批判し、おじちゃんは「冒険少年」の看板作家じゃないですか!と励ますのだった。

そんな時、向かいの鈴木オートの2階からエレキの音が聞こえて来る。

一平がエレキを練習していたのだった。

東大受験のため、淳之介が勉強しているのに、うるさい!と茶川が怒鳴ると、下にいた鈴木は、一平はうちの跡取りだ!と怒鳴り返す。

その時、2階から顔を出した一平が、コツコツやる奴ぁごくろうさん!と、植木等の真似をして声をかけて来たので、この不良が!と鈴木は怒鳴り返す。

翌朝も、朝早く化粧していそいそと出かけて行く六ちゃんを目撃したのは、タバコ屋の大田キン婆さん(もたいまさこ)、若い男と挨拶をしているのを見つけたキン婆さんは、帰って来る六ちゃんに声をかけ、あの若い男は、自分も時々診察を受けに行く凡天堂病院の菊地孝太郎先生(森山未來)だと教えるが、六ちゃんも、やけどを診てもらっただけだと恥ずかしそうに答える。

そんな奥手の六ちゃんに、キン婆さんは、モーションかけてみたら?と勧めるが、六ちゃんは、社長や奥さんに余計なこと言わないで下さいねと口止めする。

トモエは、スモッグのせいで洗濯物を干しても汚れるとぼやいていたが、そこに通りかかった近所の小学生がテレビCMの真似をして「イエイエ」と色っぽく言うので、子供がそんな事言うもんじゃありませんと叱りつける。

しかし、子供たちが「シェー!」と言いながら逃げて行くので呆れていた。

昼食時、ソーメンを食べながら、鈴木が六ちゃんに、コックの見習いとはまだ付き合っているのか?と冗談めかして探りを入れると、武雄は弟みたいなものだからと言う。

トモエは、子供たちが今やっている変なポーズ知っている?と言いながら「シェー」をやってみせるが、それを観た鈴木には、ソビエトの体操選手の格好としか思いつかなかった。

そんな中、突然、店先に、車が故障したので修理を頼みたいと言う客が来たので、六ちゃんが出てみると、何と、いつも朝会う菊地先生だったのでびっくりしてしまう。

自分が工員であることを知られたくない六ちゃんは、帽子を目深にかぶって、近くの路上に留めてあった車を修理に行くが、菊地先生は、六ちゃんに気づいた様子。

仕方なく、六ちゃんも挨拶をするが、鼻の頭が煤で汚れていたので、菊地先生は狸の置物みたいだと笑う。

修理代を払おうとした菊地先生だったが、ディストリビューターのコードが外れていただけなのでもう直りましたと言い、六ちゃんは料金を受け取らないまま急いで帰ろうとする。

菊地先生はそんな六ちゃんに、お茶でもおごらせて、銀座のフルーツパーラーでもと誘う。

後で電話すると別れた菊地先生からの電話を待ちわびる六ちゃんは、早く電話が鳴らないかと工場でそわそわしていたが、ようやくかかってきた電話に出たのは社長の鈴木で、六を出せ?お前は誰だ?菊地?お前、菊地って奴知っているか?と聞いて来たので、六ちゃんは知らないと答えるしかなく、鈴木は電話を切ってやったと愉快そうに言うのだった。

仕方がないので、病院の薬袋に書かれた電話番号を頼りに、公衆電話から菊地先生に電話を入れ、さっきは社長さんが出てしまって…と詫びる六ちゃんだったが、菊地先生は気にしてない風で、明日なんだけど…と予定を聞いて来る。

ある日、茶川に、電報配達人(神部浩)が電報を届けに来る。

それを読んでいると、淳之介が学校から帰って来て、どうしたんですか?と聞くので、何でもない。下らん用事だと茶川は答える。

翌日、銀座のフルーツパーラーで菊地先生とデートした六ちゃんは、最近、雑誌で、職業夫人を指すBGと言う従来の言い方をOLにしようと提案があったなどと言う話を教えられ、以前治療してもらった腕のやけどの痕を確認してもらう。

菊地先生は、少し痕が残るかもしれないという。

その帰り道、2人は、「みゆき族」の若者が集まる通りの横を通りかかるが、それをテレビの取材班がフィルムに収めていることに気づかなかった。

夕食時、次はクーラーでも買うかなどと鈴木が言うが、その時、テレビを見ていたケンジが、みゆき族のニュース映像に、六ちゃんが映っていると言い出したので、慌てた六ちゃんは必死に否定する。

その時、又、2階から一平のエレキが聞こえて来たので、鈴木は仕事を覚えろと怒鳴りつけるが、こんなクソ修理屋なんか継がないよと憎まれ口を聞く一平の部屋の壁には、憧れの「ハワイの若大将」のポスターが貼ってあった。

高校で、一平は「サンシャインボーイズ」と名付けたバンドのリードギターとして、ベンチャーズの「パイプライン」を披露することになるが、あまりに下手だったので、徐々に聞いていた女子学生たちが会場から去って行き、最後の1人だけ残った淳之介だけが拍手をしてくれる。

放課後、「水野氷屋」の前にあるコカコーラの自動販売機の前で、今日の反省会をする一平たちだったが、お前は加山雄三にはなれない。ギターを返せと、一平にギターを貸していたメンバーからはっきり言われてしまう。

そこに淳之介が通りかかったので、一平は、お前、どうして小説家辞めたんだよ?と聞くと、淳之介は、自分を捨てた親を見返したいので、安定した仕事の方が良いと思って…と答える。

そんな児童販売店の横には、いつも氷屋のオヤジ(ピエール瀧)が座っていたので、どうしていつも座っているのかと一平が聞くと、お前らにコーラを盗まれないように見張っているのだという。

それじゃ、自動販売機じゃねえだろと一平は呆れるのだった。

創進画報社「冒険少年ブック」編集部にやって来た茶川は、緑沼アキラの「ヴィーナス」と言う作品は品がないねなどと、編集者の富岡(大森南朋)に苦言を呈していたが、しかし人気はあると反論され、大量のファンレターを見せられてしまう。

それは、茶川がもらったこともない凄い量だった。

富岡は、最近、編集部内でも、雑誌をマンガ中心に代えて部数が伸びて来たので、読み物は1本で良いんじゃないかと言う意見もありまして…と茶川に圧力をかけて来る。

帰宅した茶川は、緑沼と言うのは、何でも有名作家の弟子らしく、最初から恵まれたデビューなんだと自分がピンチ状態であることを打ち明けると、こうなったら「ファンレター作戦だ」と言い出し、自らも便せんにファンレターを書き始めると、唖然として聞いていた淳之介とヒロミにも、俺宛のファンレターを書けと言い出す。

それを聞いた淳之介は、ねつ造するんですか?と戸惑う。

茶川は、二階を増築した借金もまだ残っているんだと弁解しながら、手伝おうとしない淳之介に対しては、勉強に戻れ!その代わり、東大落ちたら許さないからなと釘を刺す。

文箱の便せんを探していたヒロミは、変なものが入っていたと茶川の元に持って来る。

それは、「チチ キトク スグカエレ」と書かれた茶川への電報だった。

一昨日の日付だと気づいたヒロミは、何故帰らないの?と茶川に問いかける。

俺は勘当されたんだ。オヤジは、小説家なんてヤクザと同じように観ている。気位ばかり高くて…と悪口を並べるので、聞いていたヒロミは涙ぐみ、すぐに行ってあげて。私、お兄さんが臨終の時、行ってやれなかったから。絶対、後悔するから…と説得する。

妻に後押しされる形で、茶川は単身、ふるさとに帰る。

帰宅して見ると、出て来たのは、電報を打ったおばの奈津子(高畑淳子)で、あの痕、父親は持ち直したと言う。

見ると、布団に寝ていた父、茶川林太郎(米倉斉加年)は、まだ生きていた。

奈津子が、息子の竜之介さんですよと声をかけると、林太郎は、わしに息子はおらん!と顔を見ようともしない。

僕は、あんたが絶対になれないと言っていた小説家になったぞ!と玄関先から茶川が声をかけると、あんなもん、子供騙しの雑文だと父は吐き捨てたので、あんたに小説の何が分かる!と言い捨てて、茶川は不機嫌なまま帰って行く。

10月10日東京オリンピックの開催日

航空自衛隊の飛行隊ブルーインパルスが、青空に五輪の輪を描いて行く。

茶川と共に、自宅の白黒テレビでその実況を観ていた淳之介は、この雲は五色になっていませんか?とブルーインパルスの描く五輪のことを聞いたので、念のため外に出て空を見上げた茶川は、驚いたように、カラーテレビで観ていた向かいの鈴木一家にも「外に出て来い!」と声をかける。

何事かと外に出て空を見上げた鈴木も又、上空に広がる実物の五輪の輪を観て感動に震える。

終戦後は、この辺一帯焼け野原だったんだ。それがとうとう、東京オリンピックだぞ!鈴木の言葉に呼応するように、集まって空を見上げる三丁目の住人たちはウォ~ッ!と雄叫びの声をあげる。

凡天堂病院に血圧を測りに来たキン婆さんは、看護婦に、菊地先生は、舟木一夫と橋幸夫を足して2で割ったような良い男だねと話を振ってみるが、その看護婦は周囲をはばかるように、こんなこと、本来は話しちゃいけないんでしょうけど…と前置きして、菊地先生には女たらしだと言う悪い噂があると教えてくれる。

そんなことは知らない六ちゃんは、その後も、菊地先生とデートをしており、たまたま通りで出会った外国人から英語で道を聞かれまごつく。

すると、菊地先生が、英語であっさり歌舞伎座への道を答えたので、六ちゃんは恥をかかされたとふくれてみせる。

別れ際、そんな菊地先生がキスをしようと顔を近づけてきたので、六ちゃんは思わず避けてしまう。

菊地先生は、今度、海にバカンスに行かない?海に2泊くらい…と誘って来たので、さすがに外泊は難しいと六ちゃんは返事を渋るが、菊地先生は、考えておいてと言い残して車で帰って行く。

火照った顔で三丁目に戻って来た六ちゃんだったが、そこで、厳しい顔つきのキン婆さんと出会う。

後日、六ちゃんは、凡天堂病院を出て来る菊地先生を監視していた。

菊地先生がタクシーを拾ったので、六ちゃんも、オート三輪車で後をつける。

(回想)キン婆さんは六ちゃんに、菊地先生は、前も、その前の病院も辞めさせられたらしい。開業医の息子で、ヤクザとも繋がっているなどとかく悪い噂が多い人物らしく、あんたは遊ばれているんだよと忠告する。

(現在)菊地先生がタクシーを降りたのは、ストリップ小屋などが並ぶ怪しげな繁華街の一角だった。

菊地先生は、路地の奥に入ると、地回りらしき男から奥へと道案内される。

それを尾行した六ちゃんは、水商売らしき女たちと会話している菊地先生の姿を目撃してしまう。

創進画報社編集部では、大量に届いた茶川宛のファンレターの筆跡や内容が全て同じであることに富岡は気づいていた。

仲間の編集者は、そんなことまでする茶川のことをバカにするが、富岡は、あの先生もずいぶん新しいことに挑戦してくれたんだと、これまでの功績を思い出し弁護する。

そこに、満面の笑顔で茶川がやってくる。

一方、鈴木オートでは、六ちゃんが上の空状態になっており、その様子を見たトモエは、大丈夫?と心配して声をかける。

編集部に来た茶川は、机の上に置かれた大量のファンレターを観て、わざとらしく驚いてみせたりするが、富岡は、先生、こういうことをしちゃいけないときっぱり諭す。

自分の浅はかな策略が簡単に見破られたと悟った茶川は自己嫌悪に襲われ、帰って来ると、ヒロミにお酌をさせ、苦い酒を飲み始める。

結局、緑沼にやられた。「銀河少年ミノル」は連載終了だそうだと茶川は報告する。

そんな会話を聞いていた淳之介は、自分の机の引き出しをそっと開けて中を観る。

その中には「ヴィールス」のアイデアノートが入っていた。

淳之介は悩む。

六ちゃんの方は、菊地から電話がかかって来るが断り、銭湯帰り、ヒロミから声をかけられたので、「やまふじ」に立ち寄って、飲みなれない酒を飲み、菊地のことで愚痴を言い始める。

酷い人だと分かっていても…、遊ばれていると分かっていても…、私、どうかしちゃったんだろうか?と自問自答する六ちゃん。

そういうものよ、恋をするって…とヒロミが言う。

あなたの目には、どんな風に見えるの?そうヒロミが問いかけると、六ちゃんは、病院ではじめて会った菊地先生のことを思い出す。

(回想)やけどの治療をしてもらった後、痕、残りますよね?と聞いた六ちゃんに、生きている証しだから、僕にはとても美しいと思うけどねと菊地先生は優しく答える。

(現在)このまま諦める?自分で決めることよ。そうすれば、どんな結果になっても後悔しないものよとヒロミはアドバイスする。

翌朝、トモエは、休暇が欲しいと言い出した六ちゃんを弁護するように、たまには羽を伸ばさないと…と鈴木に話しかける。

一方、茶川は、淳之介の部屋で、こっそり淳之介が書いていた小説の原稿を発見し、何、小説なんて書いているんだ?この時期頑張らないと、東大通らないぞ!と叱りつける。

俺を観ろ。小説にしがみついて、載る当てもない小説書いて、だらだらと暮らしている…。ヒモと同じだ。お前はこんな風になりたいのか?しかも何だこれ?緑沼のマネジャないか!と、奪い取った原稿を読み呆れる。

しかし、淳之介は、真似じゃないんです。僕なんです。僕が緑沼なんですと告白する。

じゃあ、「ヴィールス」は、お前が書いてるってことか?お前のために必死に頑張って来た俺が、お前のために「冒険少年ブック」から追い出されたって言うのか?と、信じられないように呟く。

言い出せなかったんです。おじちゃんが困るなら、止めても良いですと淳之介は困った様子で詫びるが、同情か?俺に同情してるのか?と茶川はいきり立つ。

お前は勉強する振りをして、ずっとこんなものを書いてたのか?東大入って、良い会社に入れば、ずっと良い暮らしが出来るんだぞ。俺、観て来ただろ?みじめな生活観てるだろ?今は人気があるかもしれんが、あいつら、人気がなくなったら、簡単に見捨てるぞと言いながら、茶川はその場で淳之介の原稿を破こうとする。

淳之介はその腕にすがりつき、止めて下さいと抵抗するが、茶川は、今後、小説を書くのは禁止する。こういうの捨てろ!と、淳之介がノートに書きためていたアイデアノートを指差すと、編集部の方には、俺から連絡しておくと通達する。

淳之介は、仕方なく、今まで書きためて来たノートを燃やすしかなかったが、それを見つめる茶川ももがっくり気落ちしていた。

そんな茶川は、一平のことで悩む鈴木と、親の心子知らず…と言うことで意気投合する。

自宅に戻って来た茶川に、ヒロミが届いたばかりの電報を手渡す。

そこには「チチ シス スグカエレ」と書かれていた。

くたばりやがった…、そう茶川は呟く。

ヒロミを伴い、ふるさとの実家に戻った茶川は、葬式の席で奈津子から、竜之介さんにこんなきれいなお嫁さんがいて、子供が出来ることを知っとったら、林太郎さんも喜んだろうね。5年ほど前、竜之介さんが芥川賞の候補になった時、林太郎さん、小説が載っている本をたくさん買って、近所に配ってたのよと教えられたので、噓だ!俺は勘当されたんですよ。殴って追い出したでしょうと反論する。

そんなの、お芝居だったんですよ。小説家なんて厳しい世界だから、背水の陣で臨まなければいけなって…。あんな形でしか現せなかったのよ。いつか、あなたが帰って来ると思ったんでしょう。あんたの部屋、そのままにしてあるのよと奈津子は言う。

呆然として自分の部屋に行ってみた茶川は、自分のことが載った新聞記事の切り抜きが壁に貼られ、本棚には、自分が小説を書いた「冒険少年ブック」が完璧に買いそろえられていたことを知る。

その一冊を手に取った茶川は、自分の作品が載っているページにしおりが挟んであり、そのしおりには、父、林太郎が自分で書いた短評が添えられていた。

驚いた茶川は、次から次へと、「冒険少年ブック」のページを開いて行く。

そこには全て、自分の小説に対する適切な父親の短評が書き込まれたしおりが挟み込まれていた。

茶川は混乱し、本棚をひっくり返すと、俺には、もう親でもなければ子でもない!いつまで道楽しているんだ!って言ってたじゃないか!それを今さら、何だい!勝手に死んじまって…と怒鳴るが、ふと、自分が小説を書きはじめていた頃、書きためていた「草案帳」と書かれたノートを見つける。

父ちゃん!…、茶川は絶句し、部屋の外からその様子を観ていたヒロミも涙する。

帰京する列車の中、茶川はヒロミに、オヤジのお陰でここまで続けて来られたのかもしれない。正直言うと、小説家なんて辞めちまおうと思ったことは何度でもある。でも、オヤジの顔が浮かんで、その度になにくそって…と打ち明けるのだった。

その頃、茶川家の前で、変種車の富岡は、学校から帰って来る淳之介を待っていた。

「ヴィールス」の再会を依頼しに来た富岡に、帰って来た淳之介は、もう2度と小説を書く気はないと宣言する。

東京オリンピックを観に行ったものの、人気がないサッカーの試合の券しか手に入らなかった丸山と吉田は、全然点が入らないサッカーなんて退屈だし、あんなスポーツ流行らないだろうな〜…などとぼやきながら三丁目に帰って来ていたが、通りの向こう側で、若い男が運転する車に乗り込む六ちゃんの姿を見かけ、好奇心を膨らませる。

それを2人は、鈴木に告げ口する。

その若造の正体を知りたがる鈴木。

車で海に向かう菊地先生に、最初に鈴木オートに、故障の修理を依頼に言ったのは偶然ではなく、君の住所を調べて、最初から会いに行ったんだと白状する。

鈴木オートでは、六ちゃんがいなくなったと狼狽した鈴木が、中島巡査(飯田基祐)を呼んで、捜査願いってどう出すんだ?と、トモエとうろたえていた。

その騒ぎを観ていたキン婆さんが、あの子、後戻りできなくてね…と呟いたので、鈴木は、ババア!、何で俺に教えてくれなかったんだ!と噛み付く。

キン婆さんは平然と、私は若者の味方さと言い返すだけだった。

そな騒ぎを知らず、六ちゃんは、鈴木に送られて三丁目に帰って来る。

それを見つけた一平とケンジは、オヤジが呼んでいるよと声をかけたので、菊地先生も六ちゃんについて行くことにする。

鈴木オートに来た菊地先生は、激怒した鈴木から殴られ、ガラス戸を突き破って表まで飛ばされる。

まるで魔物のような顔に変貌した鈴木は、この外道が!と、鼻血を出した菊地先生を罵倒すると、六ちゃんには、いつからそんなふしだらな女になったんだ!としかり飛ばす。

そんな騒ぎを仲裁しようとしていたヒロミが、急に産気づいてしまったので、驚いた茶川は、鈴木を突き飛ばすと、医者を呼んで来ると言って駆け出して行く。

鈴木オートの居間で菊地先生がヒロミを診察し、まだ大丈夫でしょうと診断していると、そこにスクーターに乗った宅間史郎医師(三浦友和)が駆けつける。

宅間は菊地先生の顔を見ると、旧知の間柄だったようで、親しげに声をかける。

不思議そうな顔の鈴木らに、宅間は、彼の父は、自分の医大の先輩なんだと打ち明ける。

六ちゃんの彼氏なんだよと一平が教えると、それは良いと宅間は喜ぶ。

菊地先生は、今日は千葉の実家の方に行ったんです。小さな村で小さな診療所をやっているものでと答え、六ちゃんも、お父さんを紹介されて…と恥ずかしそうに打ち明ける。

菊地先生が、六子さんにプロポーズさせていただいたんですと説明すると、聞いていた鈴木は、なんだか話が違うじゃないかと戸惑い始める。

トモエは真剣なのねと確認し、鈴木は、お前、女たらしで、何度も病院を首になっているそうじゃないかと噂をぶつけると、宅間医師が、何もかも話した方が良いだろう。この人たちは信頼できると菊地先生を説得する。

無料診療をしているんです。多くの病院ではこれを禁止しています。孤児、浮浪者、娼婦のような人たちを無料で観てやるんですが、孝太郎くんはこれがバレて、病院を何度も辞めさせられているんです。今の病院でも、悪い噂を立てられているんだろうと宅間医師が変わって説明する。

菊地先生は、何とか看護婦たちと距離を縮めようとしているんですが…とうつむく。

話を聞いていたヒロミは、あなたの目は正しかったわねと、六ちゃんに微笑みかける。

宅間医師は、孝太郎くんは六ちゃんにふさわしい相手だと太鼓判を押すが、六ちゃんは浮かない表情。

断ったの?六ちゃん…と問いかけるトモエ。

どうして?と不思議がるキン婆さん。

菊地先生は、残念ながら…と口ごもる。

私が店に来た時、鈴木オートは世界に打って出るって社長さんは言ってました。まだ恩返ししてないのに、結婚なんて…と六ちゃんは説明し、菊地先生はすみませんでしたと鈴木に詫び、店の前で鼻血を押さえた紙を抜いて六ちゃんに渡すと、そのまま帰って行く。

宅間医師は、一言だけ言わせて下さいと前置きすると、今は上を観ている。みんな便利で良い暮らしをしたがっている。菊地先生は、それとは違う生き方をしている。血気盛んな若者が、出世を望まない。金持ちになるより、みんなが喜ぶ顔が嬉しいって言って…。幸せって何でしょうね?こんな時代に得難い青年です。2人のこと、よく考えてあげて下さいと言い残して帰って行く。

そこに、産婆(正司照枝)をおんぶした茶川は息せき切って戻って来るが、周囲の状況の変化を観て、「お呼びでない?」と呟き、産婆からは、慌てもんが!と叩かれてしまう。

トモエは鈴木に、今日の六ちゃんを観ていると、私たちの若い頃を思い出すわとつぶやき、鈴木も、お前たちがいたから、今日まで頑張って来れたんだと答える。

六ちゃんは、大切な人を見つけたみたいですねと喜ぶトモエに、鈴木は、だけどよ…、早過ぎだよ…と未練を見せる。

確かにちょっと早過ぎ、でも覚悟しましょう。今度は六ちゃんが新しい家族を築く番よとトモエは説得する。

いつの間にか、空には美しい月が昇っていた。

一方、茶川は、淳之介がドラム缶で焼き捨てた創作ノートの残骸を1人見つめていた。

そこに近づいて来たヒロミが、宅間先生が、幸せって何でしょう?って言ってたわ。金持ちになったり、出世することだけが幸せじゃないんじゃないかしら?私、幸せだよと語りかける。

二階の勉強部屋を覗いた茶川に、まじめに勉強していた淳之介は、僕はやりますよ!絶対、現役で東大入ってみせますよと決意を述べるのだった。

茶が訳の前を通る小学生たちが、「ひょっこりひょうたん島」の放送が、しょっちゅうオリンピック中継で中止になるし、もうオリンピック飽きた〜…とぼやきながら通り過ぎて行く。

鈴木家には菊地先生が呼ばれ、六ちゃんとの結婚話に関する話が始まっていた。

トモエは、工場を手伝ってもらいながらってのはどうだろう?うちが世界的な企業になるのを待っていたんじゃ、六ちゃん、おばあちゃんになってしまうから…と話を切り出すと、六ちゃんは感謝しながらも、まだケンジ君も半人前だし…と返事を渋る。

それを聞いていたケンジは、俺のこと信用してくださいと工場の方から口を挟む。

トモエから促された鈴木は、もっとずっと先のことだと思っていた。ついこの前来たばかりじゃねえか。女が工員やりてえなんて凄いなと思って迎えたんだけど、こいつ、事務だと思って上京したらしい。シュークリーム食って腹壊すしよ…などと、思い出を語りながら涙ぐみ、菊地、捕まったって構うもんか。こいつを幸せにしなかったら、俺はお前を殺すぞ!と迫る。

その迫力を前に、菊地先生も幸せにします。必ず命に代えても、六子さんを幸せにします!と約束する。

だったら、くれてやる…と鈴木は2人の仲を許す。

話がすんだ鈴木は、ウィスキーを持って来させて、菊地に注ぐと、一緒に飲み干し、旨ぇ!とうなる。

その時、ふすまが開いて隣の部屋で話を聞いていた一平が、結婚を許すかどうかは、六ちゃんの青森のご両親が決めることじゃないの?と正論を述べる。

しかし、六ちゃんは、何も…、社長さんと奥さんは、私の東京の両親です。私、絶対に幸せになりますと頭を下げる。

一方、創進画報社「冒険少年ブック」編集部の富を訪ねてやって来た茶川は、淳之介を待ち伏せしているんですって?と問いただす。

富岡は、もう諦めます。彼の決心が固くて…と頭を下げ、小さい頃、引き取られたとか?と、淳之介が茶川に子供時代から育てられていることを聞いて来る。

そのことを、ずいぶん恩義に感じているようです。ですから、あなたの思いに背くこと出来ないそうです。何も知らずすみませんでした…と富岡は詫びる。

話を聞き終えた茶川は、富岡に頼みがあると言い出す。

帰宅後、バレーボール女子、「東洋の魔女」とソ連の決勝戦をテレビで観ようとしていた茶川だったが、皆で観るのが良いのよというヒロミの言葉に促され、ビール持参で向かいの鈴木オートのカラーテレビを見せてもらいに行くことにする。

みんなで、テレビ画面に見入っていた時、ヒロミの陣痛が再び始まる。

又又茶川は、生まれるのか?と狼狽し、やがて、産婆と内科の菊地先生と小児科の宅間先生が全員駆けつけて来る。

居間で始まった出産を前に、東海林を挟んだ工場内では、男連中が、頑張れ!アタ〜ック!と応援し始める。

やがて、赤ん坊の泣き声が聞こえ、無事女の子が生まれたと産婆が障子を開けてみせる。

茶川はヒロミに、よく頑張ったなと褒め、産婆は茶川に、お前のお父さんだぞと赤ん坊を近づけ、淳之介には、お前のお兄ちゃんだぞと紹介する。

鈴木は大声で万歳を叫び、店の前を通りかかった中島巡査は、その声を聞いて、日本勝ったか…と喜ぶのだった。

六ちゃんの結婚式当日。

2階で、六ちゃんにウエディングドレスを着せたトモエが、本当に時間が経つのは早いわね…。青森からでて来たほっぺの真っ赤な女の子が、もうお嫁さんになるんだから…とため息をついていた。

そして、自分が嫁に来る時母親から託されたと言う真珠のネックレスを、もらってくれないかしら。うちは女の子がいないから、六ちゃんに持ってもらおうと思ったの点と言いながら、六ちゃんの首にかけてやると、今日から、六ちゃんの新しい家族が始まるのね。忘れないでね、あなたはいつまでもうちの家族の一員でもあるんだからと言葉を添える。

車が待っているぞと鈴木が呼びに上がって来ると、六ちゃんは正座をして、社長さん、奥さん、ふつつかな娘で下が、今日まで本当にありがとうございましたと頭を下げる。

妻トモエと一緒にその挨拶を受けた鈴木は、涙を止めることが出来なかった。

教会の鐘の音が響く中、ウエディングドレス姿の六ちゃんと菊地先生が教会の入口から出て来たので、出席していた鈴木やトモエは、持たされていたコメを振りかけるが、2人とも、ライスシャワーのことを知らなかったので、これ、土産じゃなかったんだと話し合っていた。

後日、編集者の富岡が茶川家を訪れ、今日うかがったのは、緑沼先生のことなんですと切り出して来る。

居間で応対した茶川は、その話なら、淳之介は東大に行くんですと断る。

それでも富岡は、淳之介くんは、小説を書きたがっていますと反論するので、茶川は、僕は確認しているんですと答える。

富岡は、本心からそう思っているはずないでしょう。あなた、淳之介くんの才能をねたんでいるんじゃないでしょうね?と失礼なことを言って来る。

仕方がないので、茶川は2階の淳之介を呼び、その本心を問いただすことにする。

お前、約束したよな?東大行くって。小説止めるってと聞く。

富岡は、寮を用意しますから…と淳之介を説得しようとする。

黙っている淳之介に向かって、茶川は苛立たしそうに、はっきりしろこいつらは責任取ってくれないぞと迫る。

淳之介は、僕はおじちゃんに、言い表せないくらいの恩義があります…と言い出したので、茶川は、そんなことじゃなくて!と話を遮る。

僕は…、小説がやりたいんです。小説をやりたいんですと答えた淳之介に、茶川は、何だと〜!と拳を振り上げ、もういっぺん言ってみろ!と怒鳴りつける。

おじちゃんの言うことは分かります。自分の気持ちは騙せません。恩知らずってののしられても、やっぱり小説がやりたいんです。おじちゃんはみじめになるだけだって言うけど、でもどうして止められなかったんです。好きで好きでしようがなかったからでしょう?なのに、どうして書くことを悪く言うんです?僕はずっとおじちゃんのこと尊敬してたんです。お願いですから、小説嫌いだなんて言わないで下さい!

そう打ち明けた淳之介を、茶川は殴りつける。

ずっと俺を騙して来たのか?俺の気持ちなんて何にも分かっていなかったのか?お前にはほとほと愛想が尽きた…と言った茶川は、2階で淳之介の荷物をバッグに詰め込むと、それを店の前に放り投げて、出て行け!お前のような恩知らずは、二度とこの敷居をまたがせない!早く行け!と淳之介を追い出す。

淳之介は、ただ黙ってお辞儀をすると、店を出て行く。

茶川から頭を下げられた富岡は、すぐにその後を追う。

一部始終を黙って観ていたヒロミは、本当に行っちゃったのね…と言い、茶川も又、行っちゃった…と泣き出したので、ヒロミはそっと抱きしめてやるのだった。

家風だね…ヒロミはそう呟き、淳之介は大事なうちの長男だからな…と茶川は答える。

壁には、小学生の頃の淳之介が描いた、ヒロミと茶川と同じちゃぶ台でカレーを食べたときの絵が貼られていた。

富岡は、車で淳之介を送っていたが、何か忘れ物に気づいたのか、急に淳之介が止めて下さい!と叫ぶ。

その頃、六ちゃんと菊地先生は、東京駅から新幹線に乗って新婚旅行に出かけようとしていた。

俺は音楽向きと言っていた一平くんに、菊地先生が、車のデザイナーとかエンジニアと言ったカタカナ職業はモテるぜと耳打ちする。

一平くんは、俺はそんなくだらないことで人生考えちゃいねえんだよ!とバカにする。

一方、茶川は、がっくり力を落として、2階の淳之介の勉強部屋に入って来て、思い出に浸っていたが、その時筆立ての中に1本の万年筆を見つけると、淳之介の幼い頃を思い出して泣き出すのだった。

すぐに、その万年筆を持って外に飛び出した茶川は、出て行った淳之介を追いかける。

やがて、同じように息せき切って戻って来ていた淳之介と出会う。

お前、これからずっと小説描いて生きていくんだろ?そう聞く茶川に、淳之介は、はいと答える。

だったら、これは大事な道しるべだと言って、万年筆を淳之介の学生服の胸ポケットにさしてやる。

おじちゃん!と呼びかけた淳之介に、勘違いするなよ。俺はお前を全力で叩き潰す。俺に背いたことを心の底から後悔させてやると茶川は言い放ち、その場を立ち去る。

その背中に向かって、分かっています。僕、おじちゃんの気持ち分かってますから…。僕は、茶川竜之介の一番弟子ですから。今日まで本当にありがとうございましたと、淳之介は礼を言う。

角を曲がった所で立ち止まった茶川は、こちらこそありがとうだよ。お前が俺をどん底からここまで引き上げてくれたんだよ…と涙ぐみながら呟くのだった。

新幹線「ひかり」の車窓から、夕日を見つめていた六ちゃんは、ずっとあの夕日に見守られて来たんだと菊地先生に話していた。

駅からの帰り道、鈴木一家は、なんだか寂しいわね、祭りが終わって…とトモエが言うので、鈴木は、前を歩いていた一平とケンジを観ながら、祭りの後はあいつらが作るのよと答える。

一平は、お前がエンジニアで、俺がボンドカーみたいな車をデザインするから…などとケンジとこっそり打ち合わせしていた。

大丈夫だろうか?そんな一平たちに市松の不安を感じる鈴木に対し、信じましょう、私たちの子供よとトモエが言葉をかける。

再び、富岡の車に乗った淳之介に、富岡は、茶川先生は来ますよ。作家があの目になった時が怖いと告げる。

それを聞いていた淳之介も、分かってますよ。僕はずっと先生を観て来たんですからと答える。

ヒロミの元に戻って来た茶川は、寂しくなるな…と呟くが、ヒロミは楽しみだわ、あの子の未来と答えながら、抱いていた赤ん坊に、もう目が見えるのかな?と問いかける。

その赤ん坊を受け取った茶川は、俺だってこのまま終わりはしないさと決意すると、見えるか?あれがこの町の夕日だ。きれいだろ?お前たちが大きくなっても、今日観たいにずっときれいなままだと良いんだが…と赤ん坊に話しかける。

東京タワーの向こうには、遠く富士山が見えていた。


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