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ジョン・カーター

端的に言ってしまうと、第2の「フラッシュ・ゴードン」(1980)と言った感じのVFXファンタジー大作。

当初、古典SF「フラッシュ・ゴードン」の映画化を狙っていながら権利を取得できなかったルーカスが、それをベースに練り直し「スター・ウォーズ」(1977)を作り大成功をおさめたのを知ったラウレンティスが、元々の原作権利を買い取って巨費を投じて作ったのが「フラッシュ・ゴードン」

今回の「ジョン・カーター」は、おそらく、バロウズの火星シリーズに影響されたキャメロンが「アバター」で大成功したのを知ったディズニーが、かつてのラウレンティスと同じような発想(柳の下の泥鰌)で作った作品で、「フラッシュ・ゴードン」ほどトホホ感はないものの、大時代な印象は同じ。

最先端の技術で作り上げているはずなのに、ストーリー自体の古めかしさのせいか、特に目新しいものに出会ったという印象を受けない、ちょっと損な作品である。

3D効果も、全般的に凄く効果的!というほどでもなく、多くのシーンが2D風に感じてしまうのも計画ミスなのだろうか?

こうした例を見るにつけ、「スター・ウォーズ」や「アバター」は、古典をベースにしながらも、現代風にちゃんとアレンジされていたところが新鮮だったのだということに改めて気づかされる。

今頃、古代ローマ歴史劇と西部劇をベースにしたような古色蒼然としたファンタジーを、ほぼそのまま再現してもどれほど魅力があるだろう?

又、「アバター」が「ダンス・ウイズ・ウルブス」のように現住民の異文化を理解し同化して行く姿を描いていたのに対し、「ジョン・カーター」に登場する現住民は、西部劇におけるネイティブアメリカン(インディアン)と同じ扱いで、仲良くはするが基本的に同化するなどという発想はなく、召使いとして利用している印象だけ。

主人公を助ける現住民の娘ソラも登場するのに、男女の区別も分からない造形では、観客が感情移入できるはずもなく、ジョン・カーターの愛の対象にも最初からなり得ない立場に置かれている。

原作が書かれた時代を考えると致し方ない所だし、「アバター」や「ダンス・ウイズ・ウルブス」の発想にも、どことなく「白人の上から目線」を感じたりはするが、「ジョン・カーター」の白人優位主義風の時代錯誤感が、今の感覚からすると違和感あり過ぎなのも事実。

とは言え、VFXはかなりのレベルだし、部分部分の見せ場にも事欠かず、それなりに楽しめることも確かで、どうしようもない駄作と言った感じではない。

ただ、火星での登場キャラクターが多すぎる上に、同族間同士に似たように見える人物も多く、その識別や関係性に混乱してしまう部分はある。

DVDなどで何度も繰り返してみてこそ、本当の魅力が分かって来る類いの作品なのかもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、アメリカ、エドガー・ライズ・バロウズ原作、マーク・アンドリュース+マイケル・シェイボン脚本、アンドリュー・スタントン脚本+監督作品

火星…

お前たちはそう呼び、分かったようなつもりでいるが、そこにも人間が生きていることは知らない。

今や、その火星は死にかけていた。

ゾダンガと言う移動都市がヘリウムという都市と戦っていた。

空飛ぶ船に乗っていたヘリウムの戦士が緊張する。

ゾダンガの船が接近していたからだ。

ヘリウムに死を!そう叫びながら、上空に迫ったゾダンガの船から、何人もの戦士がヘリウムの船に乗り込んで来て戦いが始まるが、そんな中、甲板上に3体の禿頭の人物が出現する。

彼らのリーダーサーン族の教皇マタイ・シャン(マーク・ストロング)が、ゾダンガの兵士サブ・サン(ドミニク・ウェスト)に、青い網状のものを差し出すと、それはサブ・サンの右手に巻き付く。

禿頭のリーダーは、サブ・サン立て!女神は武器をお前に託された。

お前はバスルームの支配者!全てはお前のものだ!と告げる。

1881年 ニューヨーク

ジョン・カーター(テイラー・キッチュ)は、誰かから逃げているように、身を隠しながら町中を移動し、郵便局で多めのコインを局員に渡すと急ぎの電報を出す。

「至急来られたし」と書かれたその電報を受け取った甥のエドガー・ライス・バローズ (ダリル・サバラ)は、列車で叔父の住む町に到着するが、迎えにきていた執事のシンプソンは、すでにジョン・カーターは死亡したと教え、屋敷に案内する。

そこで待ち受けていたのは弁護士のダルトンで、ジョン・カーターは、書斎で倒れて、医者や自分を呼んだ5分後にはもう死んでいたと言う。

生前、ジョン・カーターは、世界中を掘って廻っており、自分には、何かを探しているように見えた。それが見つかったことをお祈りますと説明したダルトンは、カーターは昔騎兵隊にいたと教えるが、それは母も言っていました。心はいつも戦場にあるって…とバロウズは答える。

ダルトンは、25年間信託され、その後、全てはバロウズに贈られると告げる。

何故、ほとんど会ってなかった僕に?とバロウズは驚くが、ダルトンは、ジョンが残したノートをバロウズに手渡すのだった。

親愛なるエドガー…、そうノートに書かれていた。

君は私の話を良く聞いてくれた輝く目をした子供だった。

13年前のアリゾナでのことだ…とジョン・カーターの文章は続いていた。

(回想)1868年 フォートグラフ駐屯地

商店兼酒場にやって来たジョン・カーターは、店主のディックスからもうお前には売らないと宣言される。

借金が100ドルも溜まっていたからだ。

酒を飲んでいた客たちが、訳も分からない現住民の宝の洞窟などを探しまわっているジョンをバカにした言葉を浴びせる。

ジョンは、ディックスに銃をいきなり突きつけると、ボニータの側で拾ったと言い、金の飾り物をカウンターに置くと、これで借金分も十分足りるだろう?と言いながら、その日欲しい品物を書き記した紙を見せつける。

その時、入口に3人の男が姿を現し、ジョンを捕まえてグラント駐屯地に連行する。

パウエル大佐が、騎兵隊員として逃走していたジョンを尋問するが、ジョンは暴れ出し、牢に入れられる。

国に対する大義は既に果たし終えている。もう何の恩義もない。自分の目的は大金持ちになることだと言うのがジョンの良い分だったので、パウエル大佐は呆れ果てたようだった。

ジョンは、妻の夢を見て目が覚める。

牢の中からいきなり小便をし出したので、朝食をとっていた見張り役は驚いて止めさせようと近づくが、ジョンはその見張りを掴むと金格子に叩き付け、気絶させると鍵を奪って逃げ出す。

ひげを剃っていたパウエル大佐は、馬を盗まれたとやって来た見張りの報告を聞くと、その後を部下たちと追跡する。

やがてジョンは、インディアンと遭遇、得意の現住民の言葉で何事かを話し合ってた。

そこに近づいて来たパウエル大佐は、部下たちに撃つなと命じ、ジョンに何を話し合っているのか?と問いかけるが、その時部下の一人が発砲してインディアンを撃ってしまったので、怒ったインディアンから逆に追いかけられてしまう。

負傷したパウエル大佐とジョンは崖下に追いつめられるが、その時、ジョンは、崖の中腹に、今まで探し求めていた「蜘蛛の洞窟」があることに気づき、その中に入ってみる。

中には、蜘蛛の模様が入った岩があり、壁面には金が輝いていた。

その時突然、洞窟の奥に禿頭の男が出現し、パウエル大佐が後ろにいるぞ!と声をかけ、ジョンに飛びかかって来た相手を撃つ。

倒れた謎の禿頭の男は、メダルのようなものを手にに蹴り閉め、呪文のような言葉を呟いていた。

何を言っているのか?とその呪文のような言葉を復唱していたジョンは、いきなり身体が消えてしまう。

気がついたジョンは、見覚えのない砂漠のような所に倒れていた。

立ち上がって歩こうとしたジョンだったが、何故か身体が浮いてしまい、思うように歩けないことに気づく。

試行錯誤の末、何とか大きくジャンプするような歩き方を会得したジョンは、とある岩場で「蜘蛛の模様」のようなものを見つけ、その下に、見たこともない何か卵のようなものがうごめいていたので、ここは一体どこなんだ?と戸惑う。

その時、砂漠もかなたから、何かが接近しているのにジョンは気づく。

動物に股がった見知らぬ現住民のような生き物だったが、腕が4本もあり、人間とは明らかに違っていた。

皇帝と呼ばれるその生き物は撃つなと部下たちを制し、タル・ハジュス(声-トーマス・ヘイデン・チャーチ)は殺した方が良いと異を唱えるが、皇帝はジョンに近づくと身振り手振りを交え何か話しかけて来る。

それは、今まで全く聞いたことがない言葉だった。

どうやら、自己紹介をしているらしく、タルス・タルカス (声-ウィレム・デフォー)と言っているようだったので、ジョンも名乗り、バージニアから来たと付け加えるが、相手は、バージニアの方を名前と思ったらしく、バージニアと呼びかけて来て、サーク(跳べ)と命じて来る。

しかし、次の瞬間、ジョンは突然、背後に控えていた現住民から撃たれ、卵からふ化した奇妙な動物の子供と共に、彼らの村に運ばれてしまう。

ふ化しなかった卵は、その場で銃で破壊されていた。

ゾダンガの秘密兵器でヘリウムが滅びかけています…と、宮殿の自室内でメッセージの練習をしていたのは、ヘリウムの王女デジャー・ソリス(リン・コリンズ)だった。

そこに父親である皇帝タルドス・モルス(声-キアラン・ヘインズ)が入って来て、ヘリウムは負けたと敗北宣言をする。

第9光線のことでしょう?サブ・サンは殺戮に使っていますが、もっと力を秘めた光線のことですとデジャーはこれまで判明して来たことを機械映像を使い説明していたが、途中でその機械が壊れてしまう。

皇帝の従者の一人が密かに触ったせいだった。

サブ・サンはデジャー姫との結婚を条件にヘリウムを滅ぼさないとの申し出をして来たと皇帝が言い出いだしたので、私の研究は?もう少しで完成しかけていたのに…と姫は抗議し、私は小さい頃空を観た。お父様は、その時英雄の話をして下さったが、私はこんなことで名を残すのですか?と皇帝タルス・タルカスを問いつめるが、船が接近して来たとの部下の報告を受けた皇帝タルス・タルカスは、許可する。結婚式の準備を始めろと命じ、姫の部屋を出て行く。

先ほど、姫の映像機械を破壊した従者は、柱の影で禿頭の姿に戻ると、マタイ・シャン、機械を破壊しました。これ以上厄介ごとは起こしたくないのでと仲間に密かに通信を送る。

村に戻って来たタルス・タルカスたちが持ち帰った小動物を、待ち構えていた現住民の女たちが奪い合うが、サルコジャ(ポリー・ウォーカー)との奪い合いに敗れたソラ(声-サマンサ・モートン)は、ジョンを指して、これを育てれば良いとサルコジャから嘲笑気味に言われる。

どうやら、卵から生まれたのは彼ら種族の子供たちであり、子供は部族の共有財産として一緒に育てられているようだった。

ジョンは、あのメダルのようなものをタルス・タルカスが持っていたので、それを奪おうと近づくが、タルスから捕まえられ半殺しの目に遭わされる。

そんなタルスに反抗的なタル・ハジュスは、俺が皇帝にふさわしいと思うもの!と村人たちに賛同の声を求めるが、誰も手を挙げなかった。

タルスはジョンに、村人たちの前で跳んでみせろというが、ジョンが従わないので、明日必ず跳ぶんだと命じ、落としたメダルを拾う。

その後、ジョンは、赤ん坊を育てる育児室のような地下蔵で、1人で壁に手かせをはめられ繋がれる。

ジョンは、先ほど、ソラと呼ばれていた女から、何かを無理矢理飲ませられる。

何だこれは?と驚くジョンの耳に、バルスームの声よと答えたソラの言葉がジョンにも理解できるようになる。

ソラが去った後、何者かが近づいて来る気配を察したジョンは、渾身の力を込めて、手かせを引きちぎると、その地下蔵から上階の方へジャンプする。

しかし、先ほど近づいていた犬のような奇妙な生き物がすぐ側にいたので、ジョンは驚く。

さらに上にジャンプしても結果は同じで、その犬のような動物は必ずジョンの近くにいた。

タルスら男連中が集まっている建物に様子を見にきたジョンだったが、付いてきた犬のような生き物が、下で酒盛りをしていた男たちの中に落ちてしまったので、宴会は大騒ぎになる。

その生き物がいじめられそうになるのを見かねたジョンも飛び降り、男の1人を殴りつけるが、相手は1撃で死んでしまったので、それを観たタルスは、改めてジョンの力に驚いたようだった。

そこに「ウーラ!」と呼びながらソラがやって来たので、犬のような生き物はウーラという名前であることが分かる。

ジョンは、又妻のことを思い出していた。

翌朝、ジョンとソラは、村人たちの前で石柱に手かせで繋がれ、ソラは、背中に焼き印を押されていたが、ソラは既に何度も焼き印を押された経験があるらしく、もうその背中には押す場所がなくなっていた。

ソラが今度罪を侵せば、処分される運命だとタルスから言い渡される。

その日、赤い旗をなびかせたゾダンガの空飛ぶ船と、青い旗をなびかせたヘリウムの船が空中戦を始めたので、タルスらサーク一族は、下でそれを見物しながら、どちらが勝つか賭けをして楽しんでいた。

タルスらも、ゾダンガは卑怯だと思っているようだった。

そんな空中戦の最中、1人の兵士が船から落ちかけているのを発見したジョンは、思い切りジャンプして、落下して来た兵士を助ける。

その兵士が女だと気づいたジョンは、彼女が持っていた剣を借り受けると、失礼!お嬢さん、俺の後ろにいて下さいと言葉をかけて、ゾダンガの兵士たちと戦う。

しかし、女兵士も武術の名士らしく、見事な剣さばきを見せ始めたので、ジョンは、俺があんたの後ろにいた方が良いかな?とおどける。

ゾダンガ軍の船に乗っていたマタイ・シャンは、あの男は生け捕りにしろとサブ・サンに命じる。

ジョンのゾガンダとの戦い振りを観ていたタルスは得意げだった。

ゾガンダは一旦退却する。

女兵士はデジャー・ソリスと名乗り、自分は降伏する。捕虜にしろとタルスに持ちかけたので、タルスはソラに、女兵士の面倒を見ろと命じる。

タラスはジョンを我が相棒と賞賛し、デジャーもこれから一緒に戦ってくれないかと誘うが、ジョンはきっぱり断る。

他人のために戦うつもりはないと言うのだ。

タラスは、そんなジョンのことをサーク族の皆に、ドタール・ソジャット(大元帥)だ!と称号を与える。

地上に落下した船の残骸や、サーク族によって多くの死体を焼く様子を観ていたデジャーは涙し、それに気づいたジョンは、戦争は残酷なものだと呟く。

デジャーはジョンに、あなたの国には光で跳ぶ船はないの?と聞いて来たので、ない。船は海を行くものだと教える。

すると、デジャーは、助けて欲しいの。あなたの技術をヘリウムに伝えて。報酬はいくらでも与えるからと頼むが、ジョンは金は入らんと断る。

デジャーは、この惑星に海はないと言い、地面に太陽系の図を描いてみせる。

太陽から3番目の星が自分の住んでいた所だと説明したジョンに、デジャーは、そこはジャスーム(地球)で、ここはバルスーム(火星)だと教えると、ジョンは、ようやく、自分が火星にいることを知り驚く。

ジョンは、タラスが持っていたメダルを指し、あれでここに来たと教えると、デジャーは、あなたは自分の星に戻りたいのね?と同情し、川の果てにあるイサスという所に行けば手掛かりがあるかもしれない。自分が案内すると申し出る。

ソラはそこは禁じられている場所だからと止めようとするが、結局、ジョンとデジャーに付いて行くしかなく、やがて彼らは洞窟のような場所に到着する。

ジョンとデジャーは、絵文字のようなものがたくさん掘られた洞窟内の壁面に見とれてしまう。

デジャーは、イス川の聖なる門…と絵文字を解読してみせ、私が案内しましょうか?と名乗り出るが、ジョンは信用できないと答える。

それでもデジャーは、あなたは地球に戻るんだから、私を逃がしてくれない?と交渉して来る。

その時、ソラの呼ぶ声が聞こえ、気がつくと、ソラがサルコジャから銃を突きつけられている所だった。

村に連れ戻されてた3人の計略について、サルコジャはタラスに報告する。

3人は競技場で処刑だ!とタル・ハジュスが叫ぶ。

タラスはジョンに、ソラは死ぬんだ。お前のためにと責めるので、その表情から、ソラがタラスの娘だと直感したジョンは、そう聞き返すが、サーク族では子供は女たちが皆で育てるのだとタラスは教えるだけだった。

小屋の中にデジャーとジョンを連れ込んだタラスは、イスに行くのなら、ソラも連れて行ってくれと頼む。

その間、外で待っていたタル・ハジュスは、タラスがなかなか戻って来ないので、怪しんで家の中を覗き込むと、ジョン、デジャー、ソラが、タラスの手引きで裏の壁を破って脱出したことを知る。

タル・ハジュスは、タルス・タルカスが裏切った!と大声を上げる。

荒れ果てた砂漠地帯を馬のような生き物に乗って進んでいたデジャーは、そうした荒廃はゾダンガがやったのだと教える。

その頃、マタイ・シャンはサブ・サンに、花嫁を屈服させるのだとせっついていた。

サブ・サンはヘリウム皇帝タルドス・モルスに圧力をかける。

砂漠を進んでいたソラは、デジャーが案内している方向は川ではなくヘリウムだと指摘する。

騙されたと知ったジョンは、デジャーを馬から蹴落とし、デジャーの馬は走り去る。

デジャーは、自分はサブ・サンと政略結婚させられるのだと説明し、自分の父はタルドス・モルスだと告げる。

それを聞いたソラは驚いたように、彼女は王女だとジョンに教え、ジョンも、火星のプリンセスか…と目を見張る。

結局、ソラの馬に一緒に乗せ、再びイス川に向かい始めたデジャーは、自分はヘリウムのためなら死ねると思い込み城を飛び出したけど、一種に家出ね。私は弱かったわ。結婚すべきだったかもしれない。バスルームを壊したくなかっただけで、実は、聖なる門などと言うのは噓だった。あれは作り話なのと告白する。

しかし、ジョンはタルスから取り戻したメダルを見せ、これは本物だと王女に迫る。

その頃、移動都市ゾダンガから、サブ・サンが1人で小型船に乗り出発しようとしていた。

それを見送ったマタイ・シャンは、仲間から、ジョンとデジャーらがイス川に到着したとの知らせを受け、瞬間移動で先回りする。

船を川に出そうとしたジョンは、ソラが残って犠牲になるというので、父親のことを思うのなら俺を手伝ってくれ。その優しさは父に似たんだ。タルス・タルカスにと告げたので、ソラははじめて、自分がタルス・タルカスの娘であることを知ったようだった。

どこまでも付いて来るウーラだけは、川岸に待たせ、3人は船に乗って出発する。

途中、自分ら以外にも巡礼者の乗る船があることに気づく。

やがて巨大な建造物のような場所に行き着いたジョンは、デジャーを抱えてその上までジャンプする。

網の目のような模様が覆った床の一部に、小さな空きスペースがあるのを発見したデジャーは、ジョンからメダルを受け取ると、その場所にはめて見ると、メダルの部分から光が放射状に広がって行く。

その光の筋は9本あり、それを観たジョンは地球で追い求めていた「蜘蛛!」だと驚き、デジャーは「第9光線!」と興奮しながらも、こんな力がゾダンガに渡ったなんて…と嘆く。

デジャーは、ここに来て、ようやくジョンが地球からやって来たらしいことに気づくが、そうした中、床の光の模様の中に、太陽系を示した図を発見する。

そこには火星と地球との間に、何か文字のようなものが描いてあり、どうやらその言葉を言うことによって、あるものを地球と火星とに送るシステムの説明らしかった。

デジャーがこれは電報よ!と気づき、ジョンも、俺は自分の複製をこの世界に送り込まれたんだと知る。

しかし、そこに書かれた言葉を読むことは出来ず、調べるにはヘリウムの科学院に行くしかないとデジャーは言う。

ジョンはヘリウムに行くのは気が進まなかったが、デジャーは、最初に空中であなたに助けてもらった時から分かった。あなたは大義名分のために喜んで戦う男だとと告げる。

その時、下の方から銃声が聞こえたので、驚いて縁の部分へ行って様子を見ると、小船で待っていたソラが、ワフー族よ!と呼びかけていた。

確かに、川の崖の上には、凶暴なワフー族が集まっていた。

そのワフー族を命じていたにはマタイ・シャンだった。

デジャーを抱き船に飛び降り、馬のいる場所に戻ったジョンは、馬を走らせ追跡して来るワフー族から懸命に逃げるが、その間中、地球で帰宅した時、家を焼かれ、亡くなっていた妻を見つけたときのことを思い出していた。

ソラにデジャーを頼むと、前は間に合わなかったが、今度こそ!と叫ぶと、単身、ワフー族と戦い始める。

その間も絶えず、妻の墓を作っていたときのことが脳裏によぎっていた。

暴れるジョンにワフー族が一斉に飛びかかった瞬間、空の船から攻撃して来る。

青い旗をなびかせたヘリウムの船だった。

降り立ったその船から、デジャーの父親である皇帝タルドス・モルスが降りて来る。

積み重なったワフー族の死体の下から見つけ出されたジョンは、気絶しているだけでまだ息はあったのでデジャーは喜ぶ。

サブ・サンは罪を認めた…とタルドス・モルスがデジャーに伝え、一緒に降りて来たサブ・サンは、命を捧げようと言いながら、自ら下げていた剣をデジャーに手渡す。

それを手にしたデジャーは、サブ・サンの首筋に剣を突きつけるが、2つの都が1つになればなんでも叶うのです。あなたが私と結婚すれば…とサブ・サンは低姿勢に懇願する。

やがて、ソラをその場に残し、デジャーやジョンを乗せたヘリウムの船は飛び立って行く。

ヘリウムの宮殿の一室に連れて来られ、監禁状態だったジョンの元にやって来たカントス・カン(ジェームズ・ピュアフォイ)と言う兵士は、ジョンに、自分を人質にしろと耳元で囁き、半信半疑なジョンの前で1人芝居を始め、さも人質になったそぶりをする。

仕方なく、調子を合わせ、部屋を抜け出してベランダまでやって来たジョンだったが、自分はデジャー王女に仕えていると自己紹介したカントス・カンから、あの当まで跳べと言われて面食らう。

しかし、追っ手が迫って来たので、運を天に任せて、その場からジャンプしたジョンは、デジャー王女が婚礼衣装を着ていた塔に何とかしがみつくことに成功する。

そのデジャー王女の前に来たジョンは親しげに呼びかけるが、王女にはお辞儀をするものよとデジャーにたしなめられてしまう。

デジャーは、ゾダンガの下品な民族衣装を着せられていた。

人払いをして2人きりになったデジャーは、ヘリウムのために戦ってくれる?とジョンに頼み、暴君は立場は変わっても心は変わらないという格言を教える。

そして、あのイサスで見つけた謎の文字を解読できたので教えてあげると言い、デジャーはジョンに「オク オヘム オクティ ウイズ ジャスルーム」と復唱させる。

その時、苛立たしくノックを続けていたサブ・サンが入って来るが、そこにはデジャーしかいなかった。

誰かといたのではないかとサブ・サンは疑っているようだったが、部屋には他に誰もいなかったので、渋々デジャーを連れて部屋を出て行く。

ジョンは、呪文で地球へ帰ったのではなく、天井裏に飛び上がって隠れていただけだった。

その後、ジョンは、デジャーに先ほどまで付き添っていた従者の老婆が、実はマタイ・シャンの化身だったことを知る。

元の姿に戻ったマタイ・シャンは、お前はバージニアから来たのか?と聞いて来たので、知っているのか?とジョンが驚くと、さほどではないと答える。

マタイ・シャンは、お前の特殊な力は、重力の問題だと言うことに我々は気づかなかったと言うので、ジョンは、お前はサーンか?と聞く。

しかし、マタイ・シャンは、サーンは神話だというだけだった。

変身能力を持つマタイ・シャンは、色々な人間に化け、ジョンと共に町に出ると、サブ・サンとデジャーとの行進パレードを民衆に混じって見る。

第9光線を知ったものは殺される。お前には戦う理由がない。バージニアの人間は大義がなくても戦うのか?とマタイ・シャンはジョンに警告する。

さらに、我々は不死身なのだと教えたマタイ・シャンは、歴史は我々の思う通りにする。

サブ・サンに第9光線を与えたのは、単細胞の方が良かったからだと説明したマタイ・シャンは、2人用小型船に囚人としてジョンを乗せようとするが、そこに飛び込んできたウーラが邪魔をし、ジョンは、例え不死身でも、お前の仲間を地球で撃っていると叫びながら、その小型船を使って移動都市ゾダンガから脱出する。

操縦に不慣れなジョンは、歩く都市の足の間をくぐり抜けたり、追っ手と戦ったりしながら、何とかソラの待っていた場所に船を不時着させる。

驚いたことに、ウーラもその場に付いて来ていた。

ソラは、どこまでも付いて来ると言ったでしょう?と平然と言う。

そんなソラに、デジャーを助けに行く。乗ってくれと誘うが、サーク族は空を飛ばないと言って、ソラは小型船に乗るのを拒否する。

仕方がないので、一緒にサーク族の村に戻ってみると、何とタル・ハジュスが皇帝になっていた。

タルス・タルカスは裏切り者として地下蔵に幽閉されており、そこに一緒にジョンも閉じ込められる。

痛めつけれたのか、衰弱し切っていたタルス・タルカスは、お前のジャンプを観た時、新しいことが始まる兆しだと思ったが、違っていたようだ。娘が天国で母親に会うのが、せめてもの慰めだ…と苦しげに言う。

やがて2人は、サーク族の民衆で埋め尽くされた闘技場へ向かわせられる。

その中央には、タル・ハジュスが新皇帝として座っていた。

タル・ハジュスは、民衆たちに向かい、タルス・タルカスの犯した罪だ。奴らを潰せ!孵らなかった卵のように!と命じる。

ジョンの手かせに付いた鎖の先が岩に打ち付けられる。

そして、降りが開かれ出現したのは大白猿だった。

サルコジャと共に、客席からそれを観ていたソラは、思わず「お父さん!」と叫ぶ。

ジョンは、鎖につながれた状態ながら、傷ついたタルス・タルカスをかばおうと、自分の方に大白猿をおびき寄せようとしながらも、懸命に岩に打ち付けられた鎖を引っ張り続ける。

タル・ハジュスは、もう1頭出せ!と命じ、競技場内に2匹目の大白猿が放たれる。

暴れたソラは、取り押さえようとするサルコジャもろとも、競技場内に落下すると、墜落死したサルコジャから剣を奪い取ると、傷ついたタルス・タルカスの元に駆け寄る。

何故こんなことを?と驚くタルス・タルカスに、ソラは、チチ譲りの気性がこうさせましたと答える。

その間、ジョンが引いていた鎖と岩の結合部が剥がれたので、ジョンは、その岩の部分を振り回し、迫って来た大白猿の側面に叩き付ける。

頭部を砕かれた1匹が倒れて死ぬ。

もう1頭がジョンに向かって来るが、ジョンは「ソラ!」と呼びかけ、ソラが剣を投げると、大きくジャンプして受け取り、着地した所に大白猿が覆いかぶさる。

その背中から、青い血に濡れた剣を高々と差し上げてジョンが姿を現す。

観客席の群衆から「バージニア!バージニア!」の歓声が響く。

ジョンは、その場から、皇帝に決闘を申し込む。

怒ったタル・ハジュスは席を立ち、競技場に飛び込むが、同じくジャンプしたジョンは、タル・ハジュスの首をはね飛ばす。

その瞬間、ジョンは、サーク族の新皇帝になる。

その直後、ゾダンガがヘリウムを潰そうとしているとの知らせが舞い込んだので、ジョンは、サーク族全員にゾダンガへ向かえと命じる。

結婚式場に到着したサブ・サンにマタイ・シャンが、運命は思い通りにならないものだ。落ち着け!目的はバルスーム全体だと耳打ちしていた。

ジョンは、サーク族の皆に、船に乗り込むよう説得していたが、タルス・タルカスも、サーク族は空を飛ばないと言い、拒否するので、仕方なく、小型船で1人出発する。

それを見送るソラは、月の下では船は低くしか飛べないから注意して!と声をかける。

ゾダンガの上では、いよいよサブ・サンとデジャーの結婚式が始まる。

そこに接近して来る小型船を見つけた監視役のゾダンガ兵士が撃ち落とそうと銃を向けるが、仲間から、いらん騒ぎを起こすな。あれは味方の船だと注意される。

デジャーは、サブ・サンに次ぎ、聖なる水を盃から飲もうとしていたが、そこにジョンの小型船が突っ込んで来る。

喜んだデジャーは、駆けつけて来たジョンに、私の後ろにいて下さる?と微笑みかけ、ゾダンガと戦い始める。

その時、大きな船が会場に突っ込んで来るが、そこに乗っていたのは何と、タルス・タルカスやソラ、そしてサーク族の皆だった。

飛ぶって楽しい!とソラは叫ぶ。

それを観ていたヘリウム皇帝タルドス・モルスは、サーク族が我々の味方とは…と驚いていた。

サブ・サンと戦い追いつめたジョンは、サーンについて話せと迫るが、サブ・サンは助けてくれたら話すというばかり。

その時、マタイ・シャンが腕にはめた装置をいじると、ジョンとサブ・サンの身体は光の網状のものに包まれ、両者とも眉に入ったように動かなくなる。

デジャーに変身したマタイ・シャンは、デジャーに飛びかかって行くと、俺がお前に成り代われば良いのだとあざ笑う。

そこに来たジョンは、どちらが本当のデジャーか迷う。

デジャーは、偽のデジャーを打ち負かす。

そんな中、タルス・タルカスが、落ちていたメダルを拾い上げる。

そこに近づいて来たジョンが、礼を言って、それを受け取ろうとするが、そこにもう1人のジョンが近づいて来る。

最初のジョンは、またもやマタイ・シャンの変身した姿だったのだ。

タルス・タルカスは、何とか、メダルを奪われずにすんだ。

戦いは終わり、デジャーに近づいたジョンは、相手の指にはめられていた結婚指輪を浮くと、改めてデジャーに求婚する。

デジャーは喜んで、良いわ、良いわと答える。

改めて、2人の結婚式が執り行われ、ジョンとデジャーは、聖なる水を互いに飲み干し、正式な夫婦となる。

夜、宮殿のベッドで目覚めたデジャーは、ベッドにジョンの姿がないのに気づき辺りを見回すと、ベランダで外を見ているジョンに気づく。

サーク族が恋しいの?と言いながらデジャーが起きて来ると、眠れないだけだと行ったジョンは、デジャーにベッドに戻るように勧める。

デジャーが寝室に戻ると、ジョンは、メダルを取り出し、地球のジョン・カーターか…と言い、否、火星のジョン・カーターの方が馴染みが良いと呟くと、持っていたメダルを遠くに投げ捨てる。

その直後、脇に控えていた護衛がマタイ・シャンに変身し、ジョンに飛びかかって来る。

次の瞬間、ジョンは、地球の「蜘蛛の洞窟」で目覚めた自分に気づく。

噓だろ?と叫んで起き上がったジョンだったが、

洞窟の入口付近には、パウエル大佐の死体もあった。

蜘蛛の印が刻まれた岩の所で呪文を唱えたジョンだったが、もう火星には戻れなかった。

マタイ・シャンは、バージニアの名は知っていても、詳しいことを良く知らないようだった。

つまり、サーン族は時々地球を訪れていたに近いないとジョンは考える。

その後、蜘蛛の洞窟で見つけた金を元手に、大金持ちになった私は探し続けた。

サーンが地球のどこかに残しているかもしれないメダルを…

そしてとうとうある時、そのメダルを発見したのだ。

その時にも、どこかでサーン族に見張られているような気がした。

屋敷の書斎にいた私は、執事のサンプソンを呼ぶと、気分が悪いので医者と弁護士を呼ぶように命じた。

私が死んだ原因が分かっただろう?

私の墓が内側からしか開かない仕掛けになっていることも…

私の肉体が滅びてしまえば、火星にいる私の複製も滅びてしまう。

君が鍵なのだ!

(回想あけ)長いノートの文章を読み終えたバロウズは、急いで墓に向かうと、自分が鍵だという言葉をヒントに、入口の上に描かれていた文字の中から、「エド」と言う名前の部分を押してみるが、扉は開かなかった。

少し考えたバロウズは、電報に書かれた「親愛なる ネッド」と言う文字を思い出し、そう言えば叔父は自分のことを「NED」と読んでいた!と気づき、その文字を押してみると、はたして扉が開いた。

しかし、中には、誰もいなかったので、呆然と立ち尽くすバロウズの背後に、1人のサーン族が青い刃物を振り上げて近づいていた。

その時銃声が鳴り響き、そのサーンを撃った男が姿を現す。

何と、ジョン・カーターその人だった。

ジョンは、倒したサーン族の男からメダルを奪い取ると、実はメダルは見つからなかったんだとバロウズに教え、さらにフグから抽出したという毒の瓶を見せると、これを飲むと一時的な仮死状態になると説明する。

では、僕は囮?とバロウズががっかりすると、そうじゃない。これからこの墓を守って欲しい。そして立派な作家になって欲しいんだと言うジョンとバロウズは、互いに抱き合う。

墓の中のベッドに横たわったジョンはメダルを握りしめ、呪文を唱え始める。

オク オヘム オクテイ ウイズ  バルスーム!

火星を背景にJCMのロゴが浮かびエンドロール

スティーブ・ジョブズへ捧ぐとの文字が出る。