TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

やがて青空

ほのぼのとしたホームコメディと言った感じの作品である。

強情っ張りなヒロイン役の桂木津子、歌が得意なその妹役の松島トモ子、女子高生と言うには、ちょっと大人びて見える白鳩真弓、清水谷洋子らは、全員そろって愛らしい。

キャストロールの桂木律子には(松竹)と書かれていたので、どう観ても桂木洋子と同一人物だと思うのが、この作品に限って、何故名前が変わっているのか、詳細は分からない。

映画会社が違う仕事なので、芸名も一時的に変えてみた…と言うことなのだろうか?

一方、普段は口うるさく厳格ながらも、実は恐妻家で、母親にも頭が上がらない、情けない父親役の斎藤達雄と、その妻ことを演じる沢村貞子、祖母を演じている浪花千栄子による絶妙の掛け合いも愉快である。

注目すべきは、小林桂樹扮する岩谷の親友で、ボート部のコーチをやっている大熊役の天津敏。

後年の東映時代劇で有名になる悪役のイメージは、この当時はまだない。

優男とかイケメンと言う感じではないが、長身で実直そうな青年である。

いづみとコンビを組むカメラマン役の水谷を演じているのは、怪獣映画などでも有名な、童顔の加藤春哉。

自立志向が強いいづみが、最後、改心して従順な花嫁になってしまうのではないかとも予想したが、その辺はぼかしたような「青い山脈」風の締め方になっている。

「やがて青空」と言うタイトルが暗示しているように、ほのかなラブストーリーをほのめかす程度のエンディングなのが、今の感覚からするとやや物足りなくも感じるし、微笑ましく、後味も悪くない印象を残す理由なのかもしれない。

余談だが、劇中に登場する博多(福岡)の高校「修猶館」は、江戸時代の藩校から今に続く、地元では有名な文武両道で知られる進学校で、作家の夢野久作などを輩出した名門校である。

※その後、当時の「映画年鑑」を読んで知ったのだが、この作品での桂木洋子の出演は松竹に無断だったようで、五社協定違反に問われ、東宝の映画製作部長が1955年8月末に解職されているようだ。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1955年、東京映画、北条誠原作、笠原良三脚色、小田基義監督作品。

早朝から起きた飛田真平(斎藤達雄)は、まだ点きっぱなしになっている街頭の電気を自分で消したりしながら、近所の散歩から自宅に帰って来ていた。

そこに、新聞配達の少年が通りかかり、真平に朝刊を渡して行く。

自宅に戻った真平は縁側に座りながら、「母さん!」と妻のこと(沢村貞子)を呼ぶが、朝食の準備中だったことはなかなか台所から姿を見せない。

ようやく朝食の準備を終えたことが何ですか?と聞くと、ことがぐずぐずしていることへの小言を言っていた真平は、何だったっけ?と一瞬、言おうとしていたことをど忘れするが、すぐに、いづみ、喬夫、トモ子はまだ寝ているのか?夕べ、一緒に朝食を食べようと言ってたじゃないかと小言を言う。

ことは、トモ子はまだ小さいし、上の2人もまだ若いんですから可哀想じゃないですか。まだ6時半ですよと言い返すが、強情な真平は、まず、1階で寝ていた次女のトモ子(松島トモ子)を「昔から、早起きは三文の得だと言うぞ」等と言いながら起こそうとする。

しかし、まだ小学生のトモ子は、「三文っていくら?」と寝ながら聞くので、今の三銭、否、三円くらいのことだと父が教えると、嫌だ、キャラメル一つ買えないとトモ子は口答えする。

そんなトモ子を強引に抱いて起こした真平だったが、一旦起きて、父親の後ろから点いて行くかに見えたトモ子は、父が後を向いているのを良いことに、又寝床に潜り込むのだった。

2階に上がった真平は、まず、大学生の喬夫(太刀川洋一)を起こそうとするが、寝ていた喬夫は、まだ夜中じゃないかと文句を言う。

真平が雨戸を開けて、朝の光を部屋の中に入れると、今日は学校、昼からだよと、さらに喬夫は床の中から文句を言う。

朝飯を一緒に食うと約束したじゃないか!と真平が叱りつけると、約束と言うのは両者の合意があることで、お父さんのは独り決めじゃないかと喬夫は反論する。

さらに、奥の部屋で寝ていた長女のいづみを起こそうとすると、夕べ仕事を終え寝たのは3時で、私はジャーナリストよ。そもそも白バラ女子学院の教務主任が、女子の部屋に入って良いの?と寝ながら怒る。

その時、下から、もう7時5分ですよと、ことの声が聞こえて来たので、真平は、これはいかんと言いながら出勤の準備のため降りて行く。

下では、ランドセルを背負って学校へ出かける前のトモ子が、「マンボ」の歌を元気良く歌っていた。

真平は、又そんな歌を歌って!と叱るが、トモ子は、パパ、マンボ知らないの?とバカにしながら玄関から出て行く。

ことは、今まで話さなかったが、トモ子はあの歌で、ラジオで優勝したのよと教える。

一旦家を出た真平だったが、やれやれ…と溜息を漏らしたことの言葉を聞いていたかのようにすぐに戻って来て、傘という。

今日は雨なんか降りませんよ、そんなに用心深いから、生徒からコウモリさんなんてあだ名をつけられるんですよとことは呆れるが、傘を持ってなくてもあだ名はつけられる。女生徒なんてそんなものだと言いながら再度家を出かかった真平に、レインコートと長靴は良いんですか?とことは嫌みを言い、バカ!と外に出た真平から怒鳴られてしまう。

いづみが起きて来て、ようやく朝食を食べ始めたのは11時だったが、まだ喬夫の方は降りて来ないので、さすがにことが起きなさいよと声をかける。

何とか降りて来た喬夫は、朝飯前の運動と称して、いきなり壁に逆立ちをする。

顔も洗わず朝食を食べようとするので、ことが叱ると、母さん、このごろ、父さんに似て来たよと喬夫は言い、何とか顔だけは濡らして来て、飯台の上の布巾で顔を拭く始末。

それを聞いていたいづみも、「全然、同感!」と喬夫の意見に同調する。

ことは、そんなぐうたらな喬夫に呆れたように、どうしてそうなの?運動選手なんかにしなければ良かったと嘆く。

いづみが先に出社しようと立ち上がると、喬夫は相談があるので待って欲しいと声をかける。

何よ?といづみが聞くと、母さんの前ではまずいことなんだと平然とことの前で言う喬夫。

それでも先に家を出て行った姉を急いで追いかけた喬夫は、小遣いがピンチなんだ。1000円貸してくれと頼むが、いづみは、明日になれば1000円入るじゃない。野沢さんも来てくれるんでしょう?座談会に出るでしょう?車代1000円出すわよ。率直な恋愛や結婚観を聞かせてくれれば良いだけと答える。

いづみにやり込められた喬夫は、姉さんのこと、一生お嫁に行けないんじゃないかって母さん言ってたぞと言い返す。

いづみが勤め先である「モダングラフ」編集部に来ると、編集長が、ライバル誌である「毎朝グラフ」を観て、又やられたな…と嘆息していた。

他の編集者が、そこはバックに新聞社が付いているんですからと、企画でいつも先を越されている言い訳をする。

そこに電話がかかり、受けた編集長は、柔道日本一の藤村俊太郎(舟橋元)の居場所が分かったと言う。

ミスニッポンの一ノ瀬みどりと結婚して姿を消していた藤村が、銀座「アラスカ」に現れたとマネージャー直々に知らせて来たと言うのだ。

男が行っては取材させてくれないだろうからと、いづみが出かけることになるが、一緒に付いて行こうとしたカメラマンの水谷(加藤春哉)の同行も断ったいづみは、ライターに仕込んだ小型カメラ「ノバ」を借り受けると、同じ女性編集者の横寺(恵ミチ子)に明日の座談会の用意を頼み、出かける。

銀座「アラスカ」にやって来たいづみは、マネージャーから、藤村が今、3号室で誰かと会っていると聞くと、小型電話番号早見帳を使い、店の電話をかけ始める、

その時、3号室で藤村に会っていたのは、運動部からグラフ部に回された記者の岩谷鉄夫(小林桂樹)だった。

2人は柔道仲間で、昨年、藤村に決勝で負けた相手が岩谷だったのだ。

藤村は奇遇を喜び、今度、家に来てくれと誘う。

いづみは大和印刷に、32ページのスポーツ欄を刷るのを待ってくれと頼んでいたが、その背後を藤村が帰って行くのに気づかなかった。

電話を終えたいづみは、3号室に向かうが、小型電話番号早見帳をうっかり電話の横に置き忘れて行ってしまう。

3号室に入ったいづみは、部屋に残っていた岩谷を藤村と勘違いし、私はミドちゃんとは昔からのお友達なんですなどと挨拶するが、岩谷の方は意味が分からず、何事かと面食らう。

いづみは、ライターに仕込んだカメラで相手のタバコに火を付けた後、こっそりシャッターを切る。

相手の勘違いに気づいた岩谷は、本物は今帰ったよと教えるが、いづみはからかわれていると思い不機嫌になる。

岩谷は、相手が「モダングラフ」の編集者と気づき、自分は、毎朝グラフの岩谷ですと名乗り、少し来るのが遅かったですねと微笑む。

翌日、並木ビルで、いづみは、横寺が速記を担当する中、男女学生たちを集めての座談会の司会を務めていた。

まずは、男子学生代表として、弟の喬夫に恋愛について質問するが、照れた喬夫は、ボート部が忙しくて…と言ったきり言葉が続かず、止めてよ姉さんといづみを睨んでしまう。

同行して来た同じボート部の野沢(有田稔)も巧い返事が出来ないので、今度は女子高生代表として須藤かおる(白鳩真弓)に結婚観を聞くと、これからは夫婦共稼ぎじゃなくては大変だと思うと答え、隣に座っていた山田ひさ子(清水谷洋子)も、断然恋愛よ!相手はやっぱり中年が良いわなどとませたことを言い出す。

座談会が終わり、いづみが帰る出席者たちに謝礼を渡す。

最後に残った喬夫に、何よ、さっきの「止めてよ姉さん」なんて返事は、これでキャラメルでも買いなさいと子供扱いして薄謝を渡すと、喬夫は渋い顔をするのだった。

それでも、1000円づつもらったので、喜びながら廊下に出た野沢と喬夫は、大学の先輩の岩谷とばったり出くわしたので挨拶をする。

大学の後輩と知った岩谷は、クマさん元気かい?と聞く。

外に出た野沢は、岩谷が柔道部、クマさんがボート部のキャプテンをそれぞれやっていた頃が、我が校の黄金時代だったんだと喬夫に教える。

その日、「モダングラフ」編集部のいづみは、来客があると言われ応接室へ行くと、そこにいたのは岩谷だったので、私のミスを確認しに来たの?と睨みつける。

岩谷は、その応対に腹を立て、君はもっと女らしい応接が出来ないのか?と注意すると、昨日、いづみが忘れて行った小型電話番号早見帳をその場に置き、君はインタビュー相手は間違えるし、仕事道具は忘れて来るし、まるで新米だねと捨て台詞を残して帰ってしまう。

自分の席に戻ったいづみは、「飛田女史へ」と書かれた封筒が置いてあり、中から、「お見事でした」と言う水谷からの皮肉の文と、昨日、自分が岩谷を撮った、岩谷が画面から切れて収まっている失敗写真が入っていた。

野沢と喬夫は、今もらった1000円で腹ごしらえをしようとレストランへ入るが、そこで、先ほどの女子高生、須藤かおると山田ひさ子に再会する。

野沢と喬夫は、ビフテキとトンカツとマカロニグラタン…などと注文し出したので、女子高生2人は、私たちは結構ですと遠慮するが、喬夫たちはきょとんとし、全部自分たちが食べるのだという。

城南大学のボート部であることを明かした喬夫たちは、体力を付けるにはこのくらい食べないと身体が持たないと話し、今度のインターカレッジを観に来て下さいと女子高生を誘う。

先ほどの座談会の発言は、雑誌の受け売りを言っただけというひさ子は、スポーツにも興味があると言い、登山に行ってみたいなどと言い出す。

すると野沢が、登山のテントや道具類は自分が持っているから、今度一緒に行きましょうと言う。

飛田家では、トモ子がバレエを踊っていたが、庭で盆栽の手入れをしていた真平に背後から近づき、目隠しをしたので、真平は、思わず、大切な枝を斬り落としてしまう。

トモ子は映画を観たいのとねだるが、今週は子供向けのはやってないし、父さんのためにもならん映画しかないと言う。

家に上がった真平に、ことが、今日やって来るおばあさんの出迎えはどうするんですか?と話しかけるが、真平はこれから出かけるので、子供たちに迎えに行かせない。そもそもおばあさんの上京は、わしの承諾もなく、お前が決めたんじゃないかと叱りつける。

ことは憤慨し、嫁である私が、上京したいとおっしゃるおばあさまを断れるはずがないじゃありませんか。おばあさまが来ると、あなたはワンマンで入られませんからねと言い返し、今からどこへ行かれるんですか?と聞く。

真平は、校長の家に呼ばれているんだと不機嫌そうに答える。

2階に上がって来たトモ子は、喬夫に、おばあちゃんを迎えに行ってってと伝えるが、喬夫は今日から合宿なんだと断り、いづみも忙しいと断る。

父さんは?と聞かれたトモ子は、出かけちゃったと言う。

しかし、通りに出た真平の前をバスが通り過ぎ、停留所で停まったそのバスから降りて来た祖母のやす(浪花千栄子)は、遠ざかって行く真平に気づき、声をかけると、持って来た荷物を持たせて家に案内させる。

やすは、いづみの見合い写真を持って来たのだったが、いづみは、まだ結婚はしないわと言い、写真を見るのさえ拒否する。

それでも、こと、真平、トモ子は見合い写真を観るが、そこに写っていたのは、柔道着姿の岩谷だった。

やすは、その人は村一番の山持ちなんだと説得するが、いづみが話を聞こうとしないので、そんないづみを弁護するように、この子には喬夫の学費も出してもらっているので…とやすに伝える。

しかし、やすは、口に出さなくても、年頃になると女の子と言うものはうずうずして来るもんや。この子も嫁さんもらう時は怖いと言っていた。こんな情メ○ラの言うことなど当てにならんと、ことに真平のことを皮肉って伝える。

みんなと一緒にスイカを食べていたいづみは、最後まで写真を観ようともせず2階へ上がって行ってしまう。

自分の机に座ったいづみは、岩谷が届けてくれた小型電話番号早見帳を開いて見つめるのだった。

喬夫のボート部の合宿が始まり、練習後、宿舎の風呂に入ろうと準備している所に、来客の知らせがある。

誰だろうと向かった喬夫は、そこに須藤かおると山田ひさ子が来ているのに気づき、ここは女性禁制なんだ。違反すると、後でリンチを受けるんだと慌てる。

しかし、それを聞いたふみ子は、じゃあ、女がボートレースを観てもいけないことになるの?と憤慨し、かおると共に、その場に居座ることにする。

それに気づいた他の選手たちが、部屋の入口ではやし立てたので、その騒ぎに気づいたコーチ役のクマさんこと大熊(天津敏)が、全員を叱りつける。

翌朝、選手たちがモーニングラン、通称モーラン中、岩谷がやって来て、寝冷えで体調を崩し寝ていた大熊を見舞う。

大熊は、この前の話考えてくれたか?地方の高校教師では不足かもしれないが、柔道が出来るというのが良いし、国の校長に頼まれて困っているんだと頼み、今日は、俺の代わりに、後輩たちを鍛えてくれという。

宿舎に戻って来た部員たちを前にした大熊は、昨日の罰として、喬夫に、岩谷先輩が自転車で付いて行くので、もう一周して来るように命じる。

再び走り出した喬夫に、自転車で並走する岩谷は、君とは並木ビルで会ったな?モダングラフって知っているか?と聞いて来る。

喬夫が、姉が勤めている会社だと答えると、やっぱりいづみさんの弟だったのかと納得した岩谷は、姉さん、強情っ張りだな。でもファイトがあって面白い人だなどと話しかけて来る。

走りながらいちいち返事をするのが苦しい喬夫は、少し黙って下さいと頼むと、もう一言だけ言わせてくれ。うちに帰ったら、姉さんに、よろしくって言っといてくれと岩谷は付け加える。

その頃、当のいづみは、プロレスラーの力道山(本人)にインタビューしていた。

食事は一日にどのくらいお召し上がりになるんですかとのいづみの質問に、たくさんのほうれん草と、肉なら500匁は食べます。1年にすると牛2頭分になるそうですと力道山が答える。

いづみは、今度、国際試合に出られるそうですけど、日本のため、ご健闘をお祈りしますと伝える。

喬夫はその後もボート部の合宿を続けていたが、8月19日の日曜日は外出許可日だった。

ところが、みんなが出かけた中、1人野沢がギターを弾きながら宿舎に残っていたので、喬夫が出かけないのかと聞くと、金も家もねえよと答える野沢。

家に来ないかと誘う喬夫は、お前、須藤かおるのことが好きなんじゃないかと聞く。

そう言うお前も山田ひさ子が好きなんじゃないかと言い返した野沢は、会いてえな…とつぶやくのだった。

その日、飛田家では、又、トモ子がマンボを歌っていたので、真平は、トモ子!と叱りつける。

やすは、日曜だと言うので昼まで寝ているいづみに呆れ、ひょっとするとあの子には好きな人でもいるのと違うか?とことに聞く。

それを聞いていた真平は、そんなふしだらなことは教えてませんと反論するが、やすは、好きな人の1人や2人作ってくれた方が嬉しいのだと叱る。

そこに起きて来たいづみは、もう見合いだの結婚だのって話はたくさん!といら立つ。

そこに、合宿先から喬夫が帰って来て、2階に上がると、いづみにインターカレッジのチケットを2枚買ってくれとせがむ。

嫌々いづみが買うと、それは招待券だったので、騙されたと怒る。

喬夫は、試合に負けたら坊主になってやるよと約束する。

喬夫は、そんないづみに、岩谷さんがよろしくって言ってたよと伝える。

岩谷さん?と一瞬、誰のことか分からなかったいづみに、柔道の藤村に決勝で負けた人だよ。柔道日本一の人と紙一重の力を持っている人だぜと喬夫が教えても、要するに弱いんでしょうとバカにするいづみ。

呆れた喬夫は、その人、姉さんのこと褒めてたよ。強情っ張りだってさと教えたので、いづみは、まぁ!と声をあげてしまう。

喬夫たちが出場するインターカレッジが始まり、ラジオの実況中継が始まる。

いづみ、かおる、ひさ子、真平、岩谷、大熊も試合場で見守っていたが、京北がリードしたままゴールまで順位は変わらず、喬夫たちの城南大学は2位と言う結果に終わる。

かおるに気づいた岩谷は、あなたに会うときはいつも、妙に嬉しくない時ばかりですねと話しかけ、残念会をやるので合宿所まで行きませんかと誘うが、いづみは、そんな暇ないんです。失礼しますと言って帰ろうとするので、むっとした岩谷は、ちょっと君!と呼び止め、最後に一言言わせてもらう。君は強情っ張りだなと言い残して別れるのだった。

夜、合宿所で残念会が始まり、大熊から勧められて、岩谷が挨拶のため立ち上がる。

今日はベストを尽くして負けたんだから悔いはないはずだ。むしろ優勝した京北のために乾杯しようじゃないかと、すっかり落ち込んでいた部員たちを励ます。

やがて、大熊から指名された野沢が「お富さん」の替え歌を歌い始め、みんなもそれに和して会は盛り上がりはじめる。

そんな中、岩谷は大熊に、この前の話、行く事に決めたよと言い、それを聞いた大熊も喜び、博多に着いたら連絡をくれと言うと、固い握手をして別れるのだった。

帰りかけた岩谷に、野沢と喬夫が立ち上がって礼を言うが、岩谷は、さっき君の姉さんと会ったけど、いつも喧嘩ばかりだ。今度、東京を離れることになったから、もう一度、姉さんに、よろしくと言ってくれと喬夫に頼む。

社に戻って来たいづみは、自分が藤村と勘違いして撮った、岩谷の失敗写真を見つめていた。

その夜の11時頃、ことと真平が寝ないで待っていた飛田家に、喬夫が酔って帰って来る。

ことは、赤飯炊いて待っていたんだけど、残念だったねと慰めるが、喬夫は真平の前に跪き、今日は応援しに来てくれてありがとう。野沢が言ってたと感謝する。

ことは意外そうだったが、今日は会合に行っていたと照れて否定する真平に、川の上でですか?とからかう。

2階に上がった喬夫に、いづみは、約束いつ守るの?負けたら坊主になるって言ってたじゃないと突っ込む。

すると、喬夫は、やっぱり姉さんは、岩谷さんが言う通り、強情っ張りだ。あの人が姉さんに、2度もよろしくって言うのは、好きなんじゃないかな?とからかい、でも岩谷さんは、今度東京を離れるから、2度と喧嘩することもないだろうけどさと言うので、いづみは驚く。

翌日、いづみは、会社の窓から、その方を気にしていた。

一方、城南大学にやって来た野沢は、困ったことになったと喬夫に言う。

訳を聞くと、先日、野沢が持っていると言っていた登山用具など、実は何も持っていないんだというではないか。

それを聞いた喬夫は驚き、それを知ったら、ひさ子さん絶交するぞと脅し、テンとは借りるにしても、道具を揃えようとすると1万円はかかるなと計算した喬夫は、姉の会社に向かうと、いづみにバイトがないかと相談する。

しかし、こともあろうに、女の子のためにキャンプの用具を買うため金がないなんて、全然、同情の余地なしだわと断られる。

困った喬夫は、こうなったら覚悟しろよと野沢に伝えると、2人して扮装し、パチンコ屋のビラ配りのバイトを始める。

ところが、町で配っていたビラをたまたま受け取ったのが真平だったので、すぐにバレてしまう。

帰宅した真平は、喬夫の情けないバイトに憤慨するが、ことは、今はそれどころじゃない。おばあさんが朝からご飯も食べずに座り込んでしまった。いづみの結婚話を、先方から断って来たので、顔を潰されたと怒っているんですと説明する。

見ると、確かに、やすが縁側に座り込んでいる。

そこに、又、トモ子がマンボを歌いながら帰って来たので、真平が叱りつけると、お父さんのヒステリ!とトモ子は可愛い舌を出して、あかんべをするのだった。

その夜、帰宅して来た喬夫は、真平からこっぴどく説教される。

あんなバイトをしていた理由は、姉さんが良く知っているよと口答えした喬夫に、一緒にその場にいたいづみは、もう喬夫ちゃんと口をきかない!とふくれる。

そんないづみの態度を見かねたやすは、お前がそんなに強情だから!とヒステリを起こす。

お前がいかん!叱ってばかりだから、子供が強情っ張りになると真平に言うと、岩谷が写っていた見合い写真をその場で引きちぎって廊下にまき散らしてしまう。

それを廊下で様子をうかがっていたトモ子が拾って集める。

いづみは怒って席を立ち、喬夫もその後を追って2階に上がる。

家庭がバラバラになった真平は、お母さん、勘弁して下さい。こんなとき、出張しなければ行けないわしの気持ちになって下さいとやすに頼む。

九州博多の名門、福岡県立修猶館高等学校の柔道部で、岩谷は指導をしていた。

そこにやって来たのが大熊で、今度、東京の全日本大会に出ることになったそうだなと岩谷に声をかける。

その晩、中州の飲み屋で酒を酌み交わしていた大熊と岩谷だったが、同じ飲み屋の座敷で接待を受けていたのが真平だった。

真平の相手をしていた相手が、大きな声で黒田節を歌い始めたとき、店にいた2人組の男たちが「やかましい!」と怒鳴りつけ、歌っていた相手に酒を浴びせかける。

カウンターにいた岩谷は、楽しく飲もうよと仲裁に入ろうとするが、手向かいするとか?と酔客2人がかかって来たので、やむなく、投げ飛ばして追い出す。

その一部始終を観ていた真平は、迷惑をかけたことを詫びるのだった。

その後、偶然にも、帰京する真平と岩谷は、列車で隣り合う。

互いに名刺を交換し合い、真平は、持っていたウィスキーのミニボトルを岩谷に勧める。

真平は徐々に酔い始め、女房は怖い。女房と言うのは、税務署と憲兵と暴力団を一緒にしたようなものです。結婚などは止めた方が良いと愚痴り始め、それを聞いていた岩谷は苦笑するしかなかった。

その内、ミニボトルが空になったので、岩谷は、土産に持っていた泡盛を真平に勧める。

飛田家では、珍しく風邪で会社を休んでしまったいづみを見舞いに来た編集長が、臨時賞与が出たんだと言い、半月分の給料が入った袋を置いて帰る。

そこに、バイトを終えた喬夫が帰って来たので、いづみは、その臨時賞与の1万円をあげる。それで、キャンプ道具を買いなさいと言い出す。

さらに、姉さん、そんなに意地っ張りかしらと聞くので、喬夫は、気にすんなよ。姉さんは本当は優しい人なんだと慰める。

そんな飛田家の表にやって来たタクシーから降り立ったのは、泥酔した真平を支えて来た岩谷だった。

帰宅した真平の醜態に、出迎えたやすは呆れ、バカもん!そんなことで子供に示しがつくか!と叱る。

真平を布団に寝かしつけるため、家に上がり込んだ岩谷の顔を、トモ子は何故か、じっと見つめていた。

そこに顔を見せた喬夫は、何だ、岩谷さんじゃないかと驚き、岩谷の方も、やっぱり君の家だったのかと再会を喜ぶ。

トモ子は、以前、やすが破った見合い写真を繋ぎ合わせたものをやすに見せる。

やすも、それを見て、ようやく目の前に現れた岩谷が、自分が持って来た見合いの相手だったことを知る。

やっぱり、縁があったんじゃなあと喜んだやすは、喬夫と共に、2階で寝込んでいたいづみの元に岩谷を案内すると、自分たちは気を利かして1階に下りて行く。

お加減でも?と利いた岩谷に、いいえと答えたいづみは、あなたとお会いするのは、妙な時ばかりですねと言う岩谷に、わざわざ負けに東京に出ていらっしゃったの?と悪態をついてしまう。

それを聞いた岩谷は、さすがにむっとして、そいつは、試合がすんでから言ってもらいたいなと言い残し、そのまま帰って言ってしまう。

下にいたやすたちは、岩谷さんと何度も声をかけるが、返事もせずに帰ってしまった岩谷の態度の急変に首を傾げていた。

柔道の全国大会の日は、朝から雨だった。

喬夫はいづみに、今日の試合、本当に観に行かないのか?岩谷さん出るんだよと確認していた。

あの人、姉さんのこと好きなんだよ。姉さんも強情っ張りだな。最後のチャンスを自分から見捨てるなんて…と喬夫は心底呆れた風だった。

会場の控え室では、大熊が岩谷の足をさすってやりながら、決勝戦まで無理をするなよとアドバイスしていた。

試合会場には、かおるとひさ子の女子高生コンビ、野沢と喬夫も観に来ていた。

その頃、取材を終え、タクシーで帰社している所だったいづみは、運転手にカーラジオを付けさせ、柔道の試合の実況を聞き始めたカメラマンの水谷から、行ってみようよと誘われる。

決勝戦は予想通り、岩谷6段と昨年の覇者藤村6段との戦いとなる。

勝負は、藤村優勢だった。

ようやく会場に到着し、客席通路から岩谷が羽交い締めになっているピンチを観たいづみは、思わず、岩谷さん!と声を上げてしまう。

次の瞬間、羽交い締めを逃れた岩谷は、一本背負いで藤谷を投げ飛ばす。

喬夫は、通路にいた姉に気づき声をかけると、いづみは負け惜しみのように、インタビューに来たのよと答える。

その後、控え室にいた岩谷の前に来たいづみは、素直に「おめでとうございます」と声をかけ、岩谷も嬉しそうに「どうもありがとう」と答えるが、そぐに他社のマスコミ人が乱入して来たので、2人の会話はそれきりになってしまう。

後日、やすがトモ子を連れ動物園に行っている中、ことと2人きりで留守番していた真平は、若いもんも、叱りつけるだけではなく、正しい愛情を注いでやりさえすれば素直に育つものだ。今後はあんたにも優しくするよと語っていた。

それを聞いたことは、喜びながらも照れくさそうに、私には今まで通りで良いんですよと答える。

その頃、喬夫、野沢と女子高生たちは、歌いながらキャンプへ向かっていた。