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ワイルド7
WILD SEVEN

望月三起也の往年の人気マンガを映画化した作品。

原作自体を詳しく記憶している訳ではないが、原作の設定だけを流用した別作品と解釈した方が良さそうな内容になっている。

中井貴一が演じている草波だけは、かなり原作のイメージに近いように感じるが…

話は単純明快、最後の敵も小者であり、ストーリー的なひねりはほとんどないが、アクション映画不毛の日本映画の中で、この作品はとりあえず現時点での日本映画のアクション技術を確認できる貴重な存在になると思う。

テンポもそう悪くないので、正月映画らしく、頭を使わず気楽に楽しみたい向きにはぴったりな作品ではないだろうか。

地方都市のロケとエキストラの大量動員、そこにVFXを加え、「バットマン」における「ゴッサムシティ」のような架空の日本、架空の都市を舞台にしている。

ラストのロケット発射場が出て来る所などを観ると、これは完全に、現実の日本などとは関係ない、別世界でのファンタジーである事を観客に認識させているのだと思う。

その分、どこかしら空疎な印象がないではないが、それなりにハリウッドアクションっぽい雰囲気を再現している事も確か。

ボランティアエキストラの使い方やVFXは、それなりに成功しているのではないだろうか?

この作品辺りを出発点として、日本映画の現代アクションも、今後さらなる前進をして欲しいと願う。

瑛太が演じている主役飛葉は、原作の明るいイメージとは違い、陰のある暗い青年になっているが、男の目から観ると、共感を覚えると言うよりも、どこかひ弱で今ひとつインパクトに欠けるキャラクターのように感じないでもない。

その分、深キョン演ずるユキが、主役の弱さを若干サポートしているようにも思える。

なぜ、普通の一般女性であったはずの本間ユキが拳銃などを手に入れられたのか?とか、細かい事を言い出すと気になる点はいくつもあるのだが、あくまでもストレス解消用のマンガ世界と割り切って観ると、それなりに楽しめるはずである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2011年、「ワイルド7」製作委員会、望月三起也原作、深沢正樹脚本、羽住英一郎監督作品。

弾丸が数発落ちて来るのを手のひらに受け止めるイメージ。

指の隙間から砂がこぼれ落ちるように、確かなものは消えて行く…

一人でしか生きられない。ランブルフィッシュのように…

今の俺は、生きているのかすら分からない…(…と、飛葉らしき青年のモノローグ)

能面をかぶった人物が、いきなり人を射殺する。

銀行強盗が起こった現場の外でカメラを構えていた東都新聞社社会部記者の藤堂正志(要潤)に、近づいて来た新人記者の岩下こずえ(本仮屋ユイカ)が、犯人側の要求を飲んだと警察側の判断を知らせる。

能面をかぶった強盗グループは、人質たちに麻袋をかぶせて行く。

輸送車両が銀行の前に到着し、その周辺では、SATが犯人グループを狙って待機していたが、銀行から出て来た数名のメンバーたちは、皆、麻袋を頭からかぶっており、人質と犯人の区別がつかない事が分かる。

SATが撃つのをためらっている間、車両に先に乗り込んだ犯人グループは、麻袋をかぶって付いて来た銀行員たちをその場で射殺すると、1人の女子工員だけを連れて車両を出発させる。

警察側はあわてて、防護措置を取れ!と命じる。

それと同時に藤堂は現場を離れる。

本件は我々の手に移譲された…、誰かの声が指示を出す。

トンネルの中で、犯人たちの逃走用車両が爆発し、路上には能面が落ちていた。

中に乗っていた犯人グループと1人の人質の女子工員は別の車両に乗り換えていた。

作戦を遂行する!男が指令を出す。

大型トラックの中から、バイクが次々と路上に降りて行く。

この瞬間だけが生きている事の証しだ…飛葉大陸(瑛太)がつぶやく。

橋を渡る7台のバイク

犯人グループの一人が、人質の女子工員に銃を向け、射殺しようとした瞬間、その犯人の側頭部から血が噴出する。

犯人グループの車も衝突横転。

外に立っていた4人の犯人たちが、接近して来る輸送トラックに向けて発砲する。

横転した車から、目立たぬように、もう一人の犯人がはい出し来る。

そこに、7台のバイクが接近して来て猛然と犯人グループを銃撃して来て、立っていた3人の内1人が射殺されたので、残った2人の犯人は諦めて手を挙げる。

停車したバイクから降りて来た飛葉が、「お前ら全員、退治する!」と言うと、手を挙げていた犯人の1人が嘲って、「逮捕だろう」とバカにすると、バイクの7人の1人が50セント硬貨をはじく。

次の瞬間、車の下から立ち上がって銃を撃とうとしたもう1人も含め、3人の犯人たちは、その場でバイクのメンバーたちに射殺されてしまう。

「ほら、退治だろ?」と飛葉が死体に語りかける。

藤堂と岩下こずえがその現場に駆けつけた時には、犯人グループの遺体と車の残骸と、バイクの車輪跡が残っているだけだったが、藤堂は、思わず、奴らだ!奴らが射殺したんだ!と叫んだので、こずえが、奴らって?と聞くと、ワイルド7!と藤堂はつぶやく。

タイトル

これまで起きて来た8件もの謎の犯人死亡の背後に、自分たちが知らない超法規的警察組織があると確信した藤堂は、それをトップ記事に持って来るが、その見本刷りはシュレッダーで裁断され、起こったデスクに、犯人たちが交通事故を起こしたと言う平凡な記事に差し替えられてしまう。

岩下こずえも藤堂の妄想としか思えなかったので呆れるが、そんなこずえに、藤堂は、パソコン上にアップしてある一般市民が偶然撮ったワイルド7らしき動画を開いてみせる。

しかし、それはあまりにも画質が悪く、ワイルド7の姿もぼんやりとしか映っていなかったので、こずえは信じられないと否定する。

それでも、藤堂は、国家ぐるみで奴らの正体を隠蔽しているんだとつぶやく。

最高検察庁

成沢守(中原丈雄) 検事総長は、草波警視正(中井貴一)に、闇社会でワイルド7と呼ばれて来ているようじゃないかと、機密が漏れ始めている事を危惧する。

ワイルド7は、1年前、草波が発案したものを成沢検事総長が認めた闇組織だった。

今や、君も含めて危険な存在になりつつあり、自分もかばいきれなくなって来たと案ずる成沢総長に、草波は、その時は私が彼らを潰しますと言い切る。

その頃、ワイルド7は、別の事件の犯人グループを高速道路上に追いつめ退治中だったが、その時、目の前にいた犯人の一人が何者かによって射殺されてしまう。

飛葉は、その銃弾が、近くを走るもう一本の高速道路に停まっていたバイクの運転手が撃ったものだと気づく。

ワイルド7は、その謎の狙撃手を追うが、見失ってしまう。

その後、地元のクラブにやって来た飛葉は、中で一人の女性と目が合う。

直感的に何かを感じた飛葉は、彼女が出て行った後、自分も店の外に出てみるが、すでに彼女を見失っていた。

飛葉は、ワイルド7のアジトである倉庫に戻る。

あの謎の狙撃手に標的を奪われたのはこれで2度目。殺された相手は、広域指定M1078(イチマルハチ)号と呼ばれている犯人グループの1人だった。

この半年間で同じ犯人グループのメンバーが4人も殺されていると、倉庫に来ていた草波がワイルド7たちに教える。

飛葉は、俺たちに代わって、そいつがドブさらいをやっているんだろうとつぶやく。

ワイルド7のメンバーが、その場に全員揃っていた。

飛葉は、過去ヤクザ3人を殺した殺人犯

セカイ(椎名桔平)も、警官を含め過去3人を撲殺した殺人犯

パイロウ(丸山隆平)は、警官2人を殺した連続爆弾魔

ソックス(阿部力)は、2人を殺した闇世界のギャンブラー

オヤブン(宇梶剛士)は、過去、300人の手下を束ねていた指定暴力団の組長

ヘボピー(平山祐介)は、県警襲撃犯

B・B・Q(バーベキュー)(松本実)は、養父母を焼死させた連続放火魔

そんな連中に、草波は、任務は確実に実行しろ。3人をゴミくずのように殺したお前を拾ったのは。マシンはマシンらしく生きていれば良い。人並みに存在理由など考えるなと飛葉に釘を刺す。

飛葉は、考えてねえよとふてくされる。

ある日、町に出かけた飛葉は、停留所から発車しかかっていたバスの前にバイクを停める。

乗客の中に、クラブで見かけたあの女性が乗っているのを発見したからだ。

他の乗客の目を気にしバスから降りた女性に、飛葉は、俺に見覚えがあるな?高速の上で観てるな?と問いかけるが、女性は、新手のナンパ?バカみたいと言うので、飛葉は、人違いみたいだったと謝罪する。

すると彼女は、バイトに遅れそうなんだけど?と言い出したので、飛葉は、彼女をバイクに乗せると、彼女が働いていると言うレストラン目がけて飛ばす。

途中、白バイに追いかけられるが、捕まっちゃうぞ、もっと飛ばせと彼女が言うので、そのままぶっちぎってやる。

店の前に到着した飛葉は、ぎりぎりセーフ!と言う彼女から、売上に協力しなさいと言われたので、そのまま店の客となり、食いなれない洋食など頬張りながら、夜になるまで、店で働く彼女の姿をジッと観察し続ける。

ついついワインなど飲み過ぎてしまったためか、気がつくと飛葉は、水槽にランブルフィッシュが飼ってある見慣れぬ部屋のベッドで裸で寝ている事に気づく。

そこは、彼女の部屋らしかった。

俺、まさか?と口にして起きた飛葉だったが、平気な様子の彼女は、飛葉のシャツを洗っておいたと言い、乾いたシャツを放って来ると、こんなことになったからって勘違いしないでよと釘を刺す。

さらに、あんた、家族は聞いて来たので、飛葉は、生まれたときからいねえよと答える。

友達や恋人もいない。守らなきゃいけないものなど何もない。どうせ守れやしないって寝言で言ってたわと教えた女性は、何があったの?と聞く。

飛葉は4人殺したと告白する。

女性は本間ユキ(深田恭子)と名乗ったので、飛葉も自分の名前を教え、部屋を後にするが、ユキが洗ってくれたシャツを脱いで、アパートの入口にかけると、自分は別のシャツを着て帰って行くのだった。

倉庫の中で一人バイクの映像を観ていた飛葉に、まだ残っていたのか?と言いながら近づいて来たセカイが、俺たちだって、少しは世の中の役に立っているんじゃないか?守りたい大切な誰かがあるんだろう?と聞いて来る。

飛葉は、あんた、大切なもの、守れた事があるのかよと突っかかる。

その後、とある船の上で起きた船員死亡事件を、防護服を来た捜査陣が、ガイガーカウンターを使って調査していた。

アテナ製薬会社から、厚労省が秘密裏に開発していた特殊なウィルスが盗み出されたのだった。防衛省も参加していたらしいと言う。

事件を知った草波は、PSU(公安調査庁情報機関)と、全身スキャンの幕を通って、TCルームに入る。

不審者がここを通過すると攻撃をするシステムになっているのだと成沢検事総長が説明し、PSUの情報分析部門統括者桐生圭吾(吉田鋼太郎)を草波に紹介する。

10年前からPSUを管理していると言う桐生は、草波とワイルド7の情報を知っているようだった。

犯人からの要求は2億ドル、ウイルスを積んだ飛行船はすでに都内の上空を飛んでおり、今から4時間後の3時ちょうどに爆発させると言う。

脅しではないのかと言う草波に、桐生は、真鶴半島沖の貨物船ですでにウィルスを撒いていると説明する。

犯行時刻は昨日の午後5時と聞いた草波は、我々に事件の情報が上がって来るのが遅過ぎたのではないかと疑問を口にする。

しかし、桐生はそれを無視して、ワクチンの国内備蓄は少なく、今、米国メイカーにワクチンの注文をしているが、到底時間が間に合わないと言う。

さらに、どうやら主犯は広域犯108らしいとも言う。

成沢長官は、政府は要求を飲むだろうと読み、草波はただちにワイルド7の面々に、飛行船への操縦電波の発信範囲は5km以内なので、ただちに発信元を探し出せとの指令を出す。

機嫌レベル4、ウィルスの罹患率、死亡率90%以上と聞いたメンバーたちは、その危険性のただななさを知り、都内を走り回る。

やがて、中央駅ロータリー前に不審車発見との連絡を受けたヘボピー、B・B・Q、セカイらは、社内に放置されたままだった注射器や薬品を発見、犯人たちは、自分たちへのワクチン接種を終えていると気づく。

中央駅のコンコース内にやって来た飛葉は、あまりの人の多さに唖然とし、この中から見つけろってか?とため息をつく。

PSUの司令室では、桐生が指紋認証をして、緊急時、自分だけに許されていると言う特殊システムを開く。

それは、全国の監視カメラをコントロールできると言うもので、そこに映し出される人物のあらゆる個人情報を瞬時に知る事が出来るものだと言う。

その頃、中央駅を監視していた飛葉は、見覚えのあるバイクとライダーを発見していた。

その狙撃手だった。

その時、真鶴半島沖で演習があったなんて聞いていないとぼやきながら、藤堂と岩下こずえがやって来る。

藤堂がこずえと離れた時、藤堂を物陰に連れ込んだセカイは、東京を離れろ!今すぐにだ!と言い、さらに、携帯灰皿ぐらい、自分で持っていろと叱りつけると、腹を殴って去って行く。

その直後、藤堂を探しに来たこずえは、尻餅をついていた藤堂を発見し、どうしたんですか?と不思議がる。

飛葉は狙撃手のバイクに近づきかけるが、その時、コンコースにマイケル柴田と言う広域犯108号メンバーの1人が空港行きのコンコースにいるとの草波からの連絡が入ったので、飛葉もやむなくそちらに向かう。

柴田のガードマンたちは、近づいて来るワイルド7に気づくと、群衆がいるにもかかわらず銃を取り出し発砲し始める。

群衆はパニック状態になり右往左往する中、飛葉たちも銃を取り出すが、草波は、殺すな!確保せよと命じる。

そんな中、飛葉は、バイクを降りた狙撃手が、メットを脱いだ顔を確認する。

やはり、狙撃手は本間ユキだった。

ユキは、銃を取り出すと、柴田の方へ近づくが、そんなユキに銃口を向けた飛葉は、撃つな!と命じる。

囲まれたマイケル柴田だったが、ノートパソコンを取り出してみせると、時限装置を止められるのはこの俺だけだ。後3分だぞと牽制してくる。

ユキに銃を向けていた飛葉をユキの背後にいて観たオヤブンは、誰を狙っているんだ?と睨みつける。

ユキは、そいつは、私の家族を殺した男。邪魔する奴は殺す!と言うと、躊躇なく柴田を射殺する。

同時に、周囲を固めていたガードマンたちをワイルド7が射殺するしかなかった。

後1分!

なんて事をしてくれたんだ!とぼやきながら、倒れた柴田に近づいたメンバーたちだったが、柴田は、防弾チョッキを着込んでいたお陰で命拾いしていた。

それを知ったワイルド7たちは全員、倒れていた柴田に銃口を集中させ、死にたくなかったら飛行船の爆破装置を解除しろと迫る。

結局、爆破装置は解除された。
その後、飛葉と2人で空き地に来たユキは、4年前のユニバーサルスクゥエア事件で、両親を失った過去を語り出す。

両親と弟とユニバーサルスクゥエアに遊びに来ていたユキは、風船が手から離れたのを追って家族から走りかけた瞬間、建物が爆破され、両親と弟を瞬時に失ってしまったのだった。

私が目にしたのは地獄のような光景だった…とユキは回想する。

私だけが生き残った…。この手で両親たちを殺した犯人に復讐する事だけを目的にその後は生きて来た。

半年前、偶然、犯人の1人を見つけ、その場で射殺した。

その男が持っていたデータから、7人の犯人のうち4人を見つけて殺した。

あなたが何者なのかも知っていたわ…とユキは続ける。

あの日、アパートであなたが寝ている間に、あなたの携帯に発信器を仕掛けた。少しでも犯人に近づきたかったからだ。残りは後2人…、復讐はまだ終わっていない…

そう告白するユキの言葉を聞いていた飛葉は、もう止めるんだと忠告するが、ユキは、私を止めるには殺すしかないよ。撃ちたかったら撃てば良いと言い切る。

ランブルフィッシュ…、俺と同じ…、1人でしか生きてゆけない。否、彼女も生きているとは言えないのかもしれない…、そう飛葉は考えていた。

着陸した飛行船から、間一髪、薬品は回収されていた。

PSUの司令室にいた草波は、今回の事件が、事件発生直後に連絡があったなら、貨物船の事件は起きなかったのではないかと疑問を口にしていた。

しかし、それを聞いていた桐生は、15人もの命を奪うような極悪人がこの世にはいると言う事ですよと説明する。

煙草をくわえた藤堂は、またもや新聞社で、今回の事件に付いて考え込んでいるようだったので、岩下こずえは、またワイルド7との関連を考えているのかと、携帯灰皿を差し出しながら聞いて来る。

ふと思い出したように、藤堂はこずえの父親の事を聞いて来る。

こずえは、父はいません。何も覚えていませんと答える。

ウィルス事件が明るみになった後、厚労省がワクチンを依頼した海外企業の株が高騰した時、この株を買って、短期間に20億も儲けた奴がいる…と、ワイルド7が集まっている倉庫内で、草波は説明する。

犯人以外に、事件を赤ら締め知っていた人物がいると言う事だった。

桐生だと草波は断定する。

これまでにも、事件発生後のタイムラグを利用して大量の株取引をした痕跡があると言う。

ワイルド7のメンバーたちは、イマイチ話が飲み込めない様子だったが、飛葉は、同じだろう?俺たちが退治しなければいけない野郎だって事だと察していた。

その後、正装したワイルド7のメンバーたちは、桐生が通う高級バーに潜入していた。

カウンターに立った桐生は、隣に来た草波に気づく。

桐生は、草波が来た理由を知っているようだったが、自分は事件で何千倍もの人を救っているので、その報酬をもらっているだけと言い、自分には切り札があるとも言う。

国家の最高機密を握っていると言うのだ。

この国中の情報をつかんでいるので、国や全ての組織に守られているのだ。それでも私に歯向かいますか?ワイルド7など無意味ですと桐生は冷笑する。

この世から悪が滅びると言う事はない。だとすれば、悪と共存して生きてゆくしかないのです、私のようにね…と言い残して、桐生は店を出てゆく。

その会話を、レシーバーでずっと傍聴していたワイルド7たちだったが、飛葉だけが桐生の後を追って外に出ようとしたので、それに気づいた草波は止めようとする。

飛葉が付いて来た事に気づいた桐生は、君はある女性を愛した…と、対面して語り出す。

暴力団に苦しめられていた娘だ。

君はその暴力団に乗り込み、3人殺したが、その娘は事件直後自殺してしまった。

君はその後、誰も愛せず、誰にも愛されないようになった。そんな君が、なぜ、ウエイトレスになど心を動かされる?どうせ又、守れないんだろう?

桐生の挑発に暴発しそうになった飛葉を押さえたのは、駆けつけて来たセカイだった。

これ以上、新聞記者をしている娘を泣かせるな…、桐生がそう言葉をかけたのはセカイの方にだった。

桐生は、ワイルド7全員の経歴も全て掴んでいたのだ。

その後、帰宅途中の草波は、黒服の男たちに取り囲まれ、停まっていた車の側面に身体を押し付けられる。

車のサイドウィンドが開き、顔を出したのは成沢検事総長だった。

桐生が持っているパンドラを開けてはならない。これ以上、君をかばう事が出来ないと言い、去ってゆく。

ワイルド7のアジトの倉庫に、特殊部隊が突入するが、そこはもぬけの殻だった。

テレビでは、ワイルド7と言う凶悪犯罪者集団が刑務所から脱走したと言うニュースを流し始めたので、それを目にした藤堂は驚く。

本間ユキも、ニュースを観て、直ちにアパートの裏窓から屋根伝いに逃げ出す。

玄関口にパトカーが来ていたからだった。

水路脇に逃げて来たユキを待っていたのは、バイクに乗った飛葉だった。

飛葉はユキを後ろに乗せると、走り去ってゆく。

その後、秘密の部屋に連れて来た飛葉は、草波の声が随時聞こえる無線を部屋に流す。

これからどうする?と聞く飛葉に、2人を殺すと答えるユキ。

もう終わりにしろと勧める飛葉。

どうして、私だけ生き残ったんだろう?復讐するため?きっとそのためなんだわと言うユキに、残りの2人を殺しても、復讐は終わりじゃないと諭す飛葉。

それに対し、どういう事? PSUの桐生の事?その男、どこにいるの?と問いつめるユキだったが、君の倒せる相手じゃない。君は生き残るんだと答えた飛葉は、ユキの腹を殴って気絶させる。

そのPSUに乗り込み、桐生にワイルド7の事を聞こうとしていた藤堂と岩下こずえだったが、桐生は相手にもせず、指令センターの中に入ってゆく。

エレベーターに乗り込んで昇ってゆく桐生は、ガラス張りの側面から、じっとこずえの顔を見つめていた。

ワイルド7のメンバーたちは、輸送トラックの中に集まっていた。

運転していたB・B・Qは、行き先は決まったとつぶやき、スピードを上げる。

その背後からは、何台ものパトカーが追尾していた。

警視庁の受け入れ準備は終わった。車を回してくれと秘書に命じ、退室させた成沢検事総長は、部屋に1人残っていた草波に、彼らは何をしようとしているのかね?と聞く。

草波はただ、任務の遂行でしょう。向かう先はPSU…と答える。

正気の沙汰とは思えんね、彼らを止められるのは君だけだ。止めなさいと成沢は命じる。

結局、最後は犯罪者か…、輸送トラックの中でオヤブンがつぶやいていた。

その時、草波からの無線が入る。

作戦発動だ。目標は、東京の桐生だ。他の人間は絶対に殺すな!

それを聞いたセカイは、了解と答える。

ワイルド7が迫っている事をモニターで察知した桐生は、司令室からSATの出動を要請する。

同時に、まだ施設内に残っており、監視カメラに写っていた岩下こずえの姿も追いかけていた。

成沢検事総長は、後悔しているよ。上司を平気で殴り倒す部下を持った事を…と言いながら、黙って、草波の前に立つ。

草波は、失礼しますと言いながら、成沢総長を殴りつける。

ワイルド7の輸送トラックが、PSUの玄関口に突っ込んで来る。

PSU内部では、銃を構えたSATが待ち受けていた。

トラックのコンテナの中から、PSUの玄関口に向かってミサイルが発射され、SATの背後で爆発が起きる。

続いて、コンテナの中からマシンガンを乱射し始めるワイルド7たち。

穴だらけになった側面から、バイクが飛び出して来る。

さらに、ミサイルやバズーカを建物内部に撃ち込み、SATの陣形が崩れた所に、バイクがエスカレーターを上ってゆく。

TCルームにいた桐生は、部下たち全員に退室を命じる。

1人になった桐生は、ワイルド7聞こえるか?とマイクに語りかける。

岩下こずえの身柄は預かった。降伏しなければ、その女が死ぬ事になる…と言い、脅しではない事を証明するために、別の場所を爆破してみせる。

ワイルド7は、それがセカイの実の娘である事を知っていた。

こずえと藤堂は縛られて、一室に閉じ込められていた。

それを聞いたセカイは、自分だけで娘を救出しに行こうとするが、それが罠である事を知っている仲間たちが止める。

その時、飛葉が、守れるさ…とつぶやく。

ソックスが、いつものコインを取り出し、裏が出たら、全員で助けに行こうと言いながら放り上げると、落ちて来るコインを途中でつかみ取ったオヤブンが、自分の手の甲にコインを置いて「裏だ…」と教える。

ちょっと、寄り道してゆくか…、全員バイクを反転して、セカイに同行する事にするが、その時オヤブンはセカイに、このイカサマやろうが!両方とも裏じゃねえかと小声で言いながら、両面とも裏の刻印になっているコインをソックスに返す。

こずえと藤堂が閉じ込められていた部屋の前に来たワイルド7は、扉を爆破する。

こずえは気絶していたが、藤堂の方は、壊れた扉の前に立った7人の姿をはっきり観る。

その直後、ワイルド7たちは、自分たちの身体に当たっているレーザーポイントに気づき、来るぞ!と警戒する。

その直後、SATの銃撃が始まり、部屋の中に入ったセカイは自らの身体で気絶しているこずえをかばいながら、藤堂に、SATが来てもここを動くな。抵抗しなければ助けてくれると言い聞かす。

あなたは、岩下君の?と聞く藤堂に、こずえの事を頼むと託したセカイは部屋を後にするが、扉を締めた所で、その場に崩れ落ちる。

応戦しながら、その様子を見つめるワイルド7たち。

オヤブンは、ここは俺に任せろと他のメンバーに言い、自分だけ残って、飛葉たちを先に進ませる。

その頃、気がついたユキは、部屋のテレビニュースで、PSUでの事件で犯人グループの1人が死んだと言う報道を不安げに聞いていた。

その後、援護をしていたオヤブンとB・B・Qは、SATに捕まる。

ソックスも足を撃たれたので、飛葉は、自ら持っていた銃を動けなくなったソックスに渡し、自分たちはさらに奥へ進む事にする。

ヘボピーは防護扉のスイッチを入れ、飛葉を先に行かせる。

飛葉だけが防護扉をくぐり抜け、TCルームの前にたどり着く。

全身スキャニングをくぐり抜けた飛葉だったが、自分の身体にレーザーポイントが当たっている事の気づく。

攻撃システムが作動し、飛葉を狙っていたのだった。

ここまでたどり着くとは…と、部屋に1人残っていた桐生が感心し、だが、お前が引き金を引く前に蜂の巣にする事が出来るとうそぶく。

飛葉は、例えバラバラにされたって、この引き金だけは引いてやる。やってみろよ!と言いながら銃口を桐生に向ける。

その時、飛葉の銃が撃ち落とされる。

部屋に1人入ってきたSATが撃ったのだった。

その隊員がマスクを取ると、中から現れたのは草波だった。

唖然とした飛葉は、なぜ、止めたんだ?と聞く。

それには答えず、草波は桐生に向かい、あなたの言う事は正しかった。従うしかなさそうだと告げる。

この男を見逃せって言うのか?と、まだ信じられないように飛葉は問いかける。

その代わり、私のデータは修正してくれないか?と、桐生に頼む草波は、止せよと言う飛葉に、壊れたマシンに用はない!と言うなり発砲する。

中途半端な感情を持ったのが間違いだった、犯罪者のくせに…と飛葉を哀れむ桐生は、指認証をし、特殊システムを立ち上げると、これでワイルド7の記録は抹消される。同志としてあなたを迎えましょうと言いながら草波に話しかけるが、草波はそんな桐生を殴りつけると、私の価値観では、お前はいらない人間だ。闇社会のデータの一部をネット上に流しておいた。これでお前は、闇社会の連中が目の色を変えて追いかけるだろう。みんながお前の死を望んでいる。お前は、ワイルド7は無駄だったと言った。確かにお前のような小悪党を抹消しても悪はなくならないだろう。しかし、俺が集めた連中は、愚かだが、最も人間らしい奴らだ。どこへでも行け、逃げ延びられるのならな…と言い放つ。

その後、東京湾埠頭で車が爆発し、中から、激しい暴行を加えられた桐生の焼死体が発見される。

そのニュースを観ながら、岩下こずえは、私には分からない。全てが桐生のねつ造だったなんて…、SATに助けられる前、確かに、7人を観たような気がする…と困惑していた。

しかし、藤堂は、超法規的警察組織など存在しないときっぱり言い聞かすが、こずえは、私証明します!とムキになるのだった。

飛葉は、死んだセカイの墓参りをしていた。

道で待っていた草波は、ユキは出頭して来た。極刑は免れんだろう…と飛葉に教える。

罪が許されるのは、お前たちワイルド7だけだ…

その後、宇宙ロケット発射場が占拠されたと言う報告を聞き、現場にひた走る6台のバイク。

そこに、後方から合流した1台の新しいバイクがあった。

ユキだった。

ユキは、先頭を走る飛葉の横にぴたりと付けると、新しいワイルド7メンバーの1人として並走する。

そんな新ワイルド7に、草波の指令が届く。

本件は君たちに移譲された。これより作戦を発動する!