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捨て身のならず者

任侠映画で一時代を築いた高倉健が、組織暴力を根絶やしにしようと張り切るトップ屋を演じた異色作。

「冬の華」(1978)「駅 STATIO」(1981)「鉄道員 ぽっぽや」(1999)などで知られる降旗康男監督とのコンビ作でもある。

従来の撮影所システムが崩壊しかかっていた1970年の作品だけに、東宝の浜美枝はじめ、日活の宍戸錠や高品格など、元々他社出身のスターたちと健さんが共演しているのも珍しいが、正直な所、この作品、成功作とは言いがたいような気がする。

ヤクザの罠にかかり、冤罪で5年も刑務所暮らしを余儀なくされただけではなく、愛する妻まで殺された男の復讐譚になっているのだが、その復讐までの流れがもたついているため、途中でかなりだれた印象になってしまっている。

やはり、浜美枝との絡みがもたついてしまっている大きな要因のような気がする。

彼女との出会いも、彼女と復讐の相手が関係があったなどという設定もかなりわざとらしいし、浜美枝が演じている真佐子と言うキャラクターもとらえどころがなく、世間知らずの田舎出のお嬢様という感じを出したかったのだろうが、魅力的とは言えない感じがする。

1人の刑事を飼いならしただけで、他の組があっさり消えて、大和会だけが成長しているという辺りも嘘くさい。

警察の介入があったにせよ、もっと組同士の血なまぐさい抗争があってしかるべきだと思うし、ある組の会長ともあろう人物が、そうあっさりと死を偽装しうるものなのか?

その辺は、ヤクザの1組織対1匹狼トップ屋の対決を分かりやすくするための「設定上の整理」だと思うが、その整理が逆に、物語からベーシックな現実感を失わせてしまったように思える。

つまりこの作品は、男客向けの対決映画を狙っていたと言うより、どちらかと言うと、ちょっとひねった恋愛ファンタジーのようなものになっているのだ。

その辺が、観る人により、この作品の評価や好みが別れる所ではないかと思う。

それでも、コートを着て颯爽と町を練り歩く健さんの姿は若々しくて格好いいし、実際には酒を飲まないと聞く健さんの酩酊芝居なども興味深いものがあり、冤罪と普段とは違う状態を演じる健さんと言うことでは、後の「君よ憤怒の河を渉れ」(1976)をどこか連想させたりする部分もある。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1970年、東映、石松愛弘 +澤井信一郎脚本、降旗康男監督作品。

この物語に登場する登場人物、設定は全てフィクションである…とのテロップ

会社クレジット

都内の鳥瞰にタイトル

コートを着たトップ屋矢島(高倉健)は、勤め先である「週刊事件」のあるビルに入ろうとするが、階段付近で男たち数名に囲まれ、そいつ等を殴りつけて編集部に入る。

編集長の太田(小松方正)が、矢島さん、待っていたよで出迎えるが、矢島の顔を見て、そうかしたのか?と聞いて来る。

矢島が編集長にゲラ100枚渡すと、太田は5万用意したという。

大和会(だいわかい)の話を聞くんだ。3日後までに50万容易しておいてくれと矢島は頼み、これで大和会もお終いだと言う。

その後、警察に取材に出向き、他社の記者たちを振り切って部屋に戻って来た刑事の関根(室田日出男)に会った矢島は、来週の事件ネタを買ってくれ。今頃特別捜査本部作ったって遅いよと嘲るが、関根は時期を観ていたんだと答え、俺はあんまり捜査って奴を信じていないんだという矢島に向かい、お前、記者証持っているかと聞いて来る。

虚を突かれた矢島は黙り込むが、こういう所に出入りするには記者証ってのがいるんだ。三流週刊誌なんて世の中は相手にしてない。いい気になるな!と関根は田島を叱り飛ばす。

その夜、自宅で原稿を書いていた矢島の背後で電話が鳴り、それに出た妻の は、無言で電話を切ると、今夜、もう10回目よと疲れ切ったように教え、もう止めてこんなこと。兄も言ってた…と言う 言葉を聞いた矢島は、野沢が?と筆を止め、野沢はお前の兄かもしれんが、俺に取ってはライバルだ。あまり仕事の話はするなよと注意し、又鳴り始めた電話の受話器を外してそのまま置くと、もう寝ろよと勧めるが、その間、耳を塞いでいた は怖さに耐えかねたのか、矢島の身体にしがみついて来る。

翌日出社した矢島は、会社の壁面に足れていた広告の垂れ幕が外されているのを目撃する。

編集長の太田にどうしたんだ?と矢島が聞くと、太田は中止だと言う。

太田は、怖いのは権力だ。印刷屋は刷らないし、本屋は売らないと諦めたように言うので、ガリ版で刷って、窓からぶちまけりゃ言いだろと矢島が息巻くと、個人雑誌作っているんじゃないんだと反論されたので、大和会が怖いんだろ?俺はこのネタをものにして、大和会をぶっつぶしてやる!と捨て台詞を残した矢島は、お世話になりましたと言って編集部を出て行く。

太田は退職金を手渡そうとするが、矢島は、極上のネタですから、この何十倍にして売れますよと受け取りを拒否する。

キャストロール

日東新聞社や不二出版社などと言ったマスコミ各社を歩き回った矢島が、最後に訪れたのは、義兄に当たる野沢(宍戸錠)が勤める大新聞社「毎朝新聞」だった。

しかし、野沢も又、矢島のネタを買おうとはせず、佳代(岩本多代)が心配していると言うだけだった。

矢島は腹を立て、何が「天下の公器」だ!と大声を上げ、「毎朝新聞会館」を後にする。

路上に出た矢島に近づいて来た1人の大男が、会長が会いたいそうですと話しかけて来る。

矢島は、大和田が?といぶかりながらも、覚悟を決め、行きましょうと返事をし、大男と一緒に車に乗り込む。

矢島が連れて来られたのは、大和会の会長大和田(水島道太郎)と幹部連中が集まっている部屋だった。

大和田は、君が書く記事のその後が読みたいと切り出して来る。

あのネタは潰れたよと矢島が自嘲気味に答えると、君は直接、僕に書けば良いんだ。僕が買おうじゃないか。君をうちで雇っても良いと続ける。

矢島は、暴力団の飼い犬になるつもりはないときっぱりはねつける。

その場にいた幹部の1人が、矢島につかみかかるが、大幹部はジェントルマンじゃないんですか?と矢島が皮肉ると、それ以上手が出せなかった。

その後、大和会のネタを聞く予定だった情報提供社の宮崎に会いに出かけた矢島だったが、ホテルの部屋に入ると、宮崎はベッドの上で死んでいた。

唖然とする矢島の姿を、茶をもって来た仲居に観られ、悲鳴を上げられてしまう。

矢島は、宮崎殺害の容疑者として取り調べを受けることになり、担当刑事は関根だった。

矢島は、大和田だな?と罠にかけた相手の名前を想像で口にすると、関根の顔色が変わる。

しかし、関根は、大和会の宮崎廼偉場所を知っていたのはお前だけだ!と責めて来たので、あんた、なんで俺をホシにしようとしているんだ?と不思議がる。

結局、矢島は、5年の刑を言い渡され、刑務所に入れられることになる。

ムショに入った矢島に、同じ部屋の囚人(関山耕司)がシケモクを勧めるが、矢島が断ると、人類の調和が取れないじゃないか!と「大阪万博」のテーマみたいな文句を言う。

しかし、そんな矢島に優しくしなだれかかろうとするのは、オカマのシャブシャブの三公(由利徹)だった。

そんな矢島に面会に来た佳代は、変わったことはないかと聞く矢島に何もないと答えるが、面会室の電話が鳴り出すと、急に顔色を変えた所を見ると、相変わらず電話による脅迫が続いているようだった。

今度こそ頑張るわ、私…と、気丈な所を見せた佳代だったが、その後、何者かの車によって轢き殺されてしまう。

轢いた車は大和会のものだったと所長から知らされた矢島は、大和田に会わせてくれと暴れ始めるが、看守たちに取り押さえられ、独房に入れられてしまう。

矢島は、大和会の犠牲になった亡き妻を偲び、一人涙にくれるしかなかった。

雪が降るある日、面会に来た野沢は、佳代は、夜で歩くと、絶えず、2、3人の尾行が付いていた。お前が持っている暴露記事を隠すため、今まで、あえてその事実をお前に教えなかったのだと打ち明ける。

矢島は控訴はしないと言い出したので、野沢は、やっぱりお前、宮崎を!と驚くが、そうじゃねえんだ。でも良いんだ。大和会の罠にかかってやる。5年辛抱してやる…と、矢島は何かを吹っ切ったように答えるのだった。

元の囚人部屋に戻された矢島は、再会を喜んだ三公から、大和会の大和田が死んだという話を聞き耳を疑う。

本当か!と三公に掴みかかった矢島だったが、三公が冗談や噓を言っているようではなかった。

それから…

大和田が死んだ後も、大和会は潰れる所かますます大きくなり、建設業なども手広く手がけるようになっていた。

そんな大和会が建設中のビルの近くにある屋台

ムショを出て、元のオカマに戻っていた三公は、矢島のことを懐かしがっていたが、隣でおでんを食っていたサラリーマン(山城新伍)から2000円でどうかと誘われる。

そんな屋台に入って来たのが、泥酔した矢島だった。

彼も又、ムショを出所していたのだった。

三公は矢島との思わぬ再会を喜ぶが、泥酔している矢島はふらつくだけで、近くを歩いて来た大和会の若いのとぶつかり因縁をつけられたので喧嘩を始めてしまう。

サラリーマンは三公を連れその場を逃げ出すが、屋台の女将(武智豊子)は、金!と叫びながら2人を追いかける。

喧嘩をした矢島は、駆けつけた警官に捕まり一晩留置されるが、関根を呼んで来い!とくだを巻く。

翌日、そんな矢島の前に顔を見せたのは、いつの間にか、本庁の課長に出世していた関根だった。

関根は、様変わりした矢島を見て、誰も迎えに来ないんだな、可哀想に…と嘲る。

その日は帰宅を許され、自宅アパート前までふらつきながら帰って来た矢島だったが、走って来た男たちがぶつかり、持っていた酒瓶を落として割ってしまう。

矢島が文句を言うと、ヤクザらしき男たちは、女を見なかったか?と聞いてくる。

酔った矢島は、酒を返せ!と怒鳴り、相手は呆れて立ち去って行く。

自宅のドアを開けて中に入った矢島は、何者かが中に潜んでいることに気づく。

酔眼をこらして良く見ると、それは見知らぬ女、真佐子(浜美枝)だった。

真佐子は、ドアが開いていたもんですから…と勝手に侵入したことを詫びるが、状況を理解できない矢島は、デート?俺、あんたと約束してた?ととぼけたことを聞いてしまう。

真佐子は、男たちに追われていたものですから…言うので、先ほどのヤクザたちが追っていた相手だと気づいた矢島は、まだヤバいよ、下…と教え、矢島は、折り畳みイスの上に横になると、あんたは良いようにしなさいと真佐子に告げて、すぐに寝入るのだった。

翌朝、目覚めた矢島は、自分にモーニングコーヒーを差し出す真佐子を発見する。

真佐子が土産に持って来たと言うザボンの一つを渡そうとしたので、あんた、長崎?と矢島が聞くと、真佐子は、自分は孤児で、妾の子なんですと身の上話を始める。

父は、自分が3つの時に亡くなったと思っていたのだが、実は生きており、その父から電話があったのは、昨日の20日のことだったと言う。

ホテルに呼ばれ、日比谷の噴水の前で会う約束だったが、上京直後から、妙な男たちに付けねらわれたらしい。

大和田健作と父の名前を口にした真佐子の言葉を聞いていた矢島は、ふと、あの大和田のことを思い出し、健一郎って言うんじゃないか?あんた、大和会って知っている?と聞き返すが、正子は全く知らないようだった。

昨日、ここらをうろついていたのは大和会だから…と説明した矢島だったが、父と関係あるんですか?と聞いてきた真佐子に、大和田健一郎という会長が3年前に死んだ。だから関係ないんだと慰める。

いっしょに、日比谷公園まで行ってくれます?と頼まれた矢島は承知し、一緒に外でタクシーを拾うが、夕べから真佐子を探していた大和会の連中がそれに気づき、車で後を追いはじめる。

それに気づいた矢島は、タクシーを急がせると、途中で地下鉄に乗り換え日比谷に向かう。

その頃大和会では、10億を焦げ付かせてしまったことが会長に知られたら、俺たちは消されてしまうぜと、板倉(今井健二)や唐沢(山本麟一)ら幹部連中が話し合っていた。

切羽詰まった幹部たちは、子爵の娘との間に生まれたという会長の娘を切り札として使うために捜していた。

日比谷公園の噴水前に立った真佐子を、近づいて来た車の後部座席から眺めていたのは、死んだはずの大和田だったが、真佐子の側に矢島がいることに気づくと、そのまま車を走らせる。

結局、夕方まで待ち続けていた真佐子の前に父親は現れなかった。

寄り添って来た矢島に、明日、長崎に帰ります。いたずらだったんですねと、哀しげに真佐子は告げる。

レストランで矢島に、でも、あなたに会えたわ…。明日でお別れねとつぶやく真佐子。

1人、アパートへ帰って来た矢島は、いきなり大和会の連中に襲撃され、抵抗するが銃を突きつけられてしまう。

大和会本部に連れて来られた矢島は、唐沢から、娘はどこだ?と聞かれるが、殴られて吐くとでも思っているのか?あの娘は大和田の娘だろう?と、逆に問いただす。

まだトップ屋根性が抜けないか?と嘲笑する唐沢に、宛てがい扶持の二代目じゃないかと、矢島もバカにしたので、唐沢は殴り掛かる。

倉庫部屋に縛られて軟禁された矢島は、棚の上に大型ペンチが置いてあるのに気づくと、それを落として、手を縛っていた紐を断ち切る。

そして、入って来た見張りを殴り倒すと、外に出て、東京駅にタクシーを飛ばす。

真佐子は、新幹線に乗り込むためホームに立っていたが、矢島を待っているのか、周囲を見回していた。

やがて「ひかり」が動き始めるが、真佐子はホームに残っていた。

彼女は、駅の外へ向かう。

その直後、矢島は東京駅のホームに到着するが、もう「ひかり」も真佐子の姿もなかった。

日比谷公園の噴水前に着た矢島だったが、そこにも真佐子はいなかった。

毎超新聞の野沢に会いに来た矢島は、大和会の大和田が死んだ時の記事の切り抜きを読ませてもらいたいと頼み、あれは偽装だと断定するが、野沢は、忘れるんだと迫る。

矢島は、佳代が殺されたこともか?と聞き返し、俺が5年間も臭い飯を食わされいる間に、あいつ等は豚みたいに太りだしている。あいつらが又、俺を狙っているんだと野沢に教える。

アパートに帰って見ると、部屋の中に真佐子がいた。

どうして帰らなかったの?と矢島が聞くと、私、待っていたんです。どうなさったの?と、顔に殴られた痕がある矢島に聞き返す。

矢島は、あんたのオヤジさんは生きてるぜ。大和田健一郎は生きているんだと告げる。

じゃあ、なぜ、会いに来てくれなかったの?と聞く真佐子に、死んだことになっているからさ。暴力団の大ボスさと教える矢島。

俺をムショに送り、俺の女房まで殺させやがった。幸せに暮らしていたんだ、俺たちは…と辛そうに語る矢島の話を聞いていた真佐子は耐えきれないように、嫌!私の父は、私が3つの時に死んだのよと泣きながら言い返すのだった。

そんな真佐子を優しく抱きしめる矢島。

翌日、警視庁の課長になった関根を訪ねた矢島は、大和会の大和田の検死に立ち会ったのはあんただったそうですね?何か不審なことはなかったですか?実は、死んでなかったとか…と慇懃無礼な態度で聞く。

6年前、情報を大和田に流したのもあんたじゃないかと思う。学歴も何もないあんたが、課長になっている。他の組がみんな潰れたのに、大和会だけ、代替わりしただけで大きくなっている…、つるんでいるのか?大和田は生きているぞ。差し障りなかったら調べてみな…と矢島は一気に畳み掛ける。

後日、矢島は、大和田の検死をした笠井(福山象三)と言う医師を訪ね、外出先から病院に戻って来た所で呼び止め、大和田の別荘に呼ばれた当時の事情を聞こうとするが、笠井は怯えただけで、何も語ろうとはしなかった。

そんな所に車でやって来たのが関根で、笠井を矢島が脅している様子を車の中から確認すると、直ちに近くの公衆電話から警察に連絡を入れる。

すぐに、パトカーが矢島と笠井のもとに駆けつけてくるが、それを停めた車の中から見ていた関根は薄ら笑いを浮かべるのだった。

地元署に連行された矢島を引き取りに来たのは野沢だった。

迷惑をかけたことを詫び、医者のことを聞いた矢島だったが、野沢は、笠井は崖から岩場に飛び降り死んだ。警察では事故死と見ていると言う。

驚きながらも、俺に話していたら死にはしなかっただろうという矢島に、野沢は、お前が殺したようなものだと忠告する。

1人立ち去る矢島に、どこへ行く?と野沢が聞くと、矢島は、大和田の墓参りだと答える。

顔に赤あざがある墓守に、大和田の墓に案内してもらった矢島は、大和田の遺体は焼かないで埋めたと確認する。

その夜、大和田の墓に来た矢島は、黙々と土を掘り、墓を暴き始める。

やがて棺桶が露出し、スコップで蓋を壊して中を確認すると、中に入っていたのは砂袋だった。

その時、矢島は、後頭部を殴りつけられ、気絶する。

襲ったのは、あの赤あざのある墓守だった。

穴の中に倒れ込んだ矢島の上から、墓守は土をかけ始める。

その時、その墓守を追い払ってくれたのが野沢だった。

野沢に救出された矢島は、やっぱり俺の読みが当たったな…とつぶやき、野沢も、記事にしなよ。スクープになる。今度こそ、うちに載せてもらうさと答える。

しかし、矢島は、俺はもうブンヤじゃないと自嘲し、なれるさ、元のお前にと慰めてくれた野沢に、あんたが書いてくれ。これで、組織暴力は…、少なくとも、大和会は潰れるよ。それであんたも本望だろう?と言う。

野沢は、書くよ…、書かせてもらうよと義弟である矢島に約束する。

俺は佳代が死んだって聞いたとき決めたんだ。大和田をこの手で殺すってな…。俺が死んだら書いてくれ。バカな男が死んだ。やっぱり、1人じゃ無理だったって書いてくれと矢島は頼む。

早朝、東京のアパートに電話を入れた矢島は、どこにいるのかと案じる真佐子に、海の見える所だよ。今、太陽が昇っているよと教える。

真佐子は、いつ帰ってらっしゃるの?会いたいわ…と問いかけるが、矢島は、あんたのオヤジさんは生きている。墓を暴いてみたら、出て来たのは砂袋だったと教える。

それを聞いた真佐子は、私も長崎で日が昇るのを観たことがある。私が探していたのは本当の父だったのかしら。父でも良い。父でなくたって良いと哀しむ。

そんな真佐子に、俺はあんたが好きだよ。だからさよならと告げた矢島はそっと電話を切る。

真佐子は電話口で泣いていた。

大和会では、会長の墓が暴かれたと騒動になっていた。

しかし、唐沢は慌てず、会長はもう死んでいるんだぜ、又、墓に戻ってもらうんだ。俺たちが手を合わせれば歯が立たねえ相手でもないと他の幹部たちに告げる。

矢島の部屋のチャイムが鳴り、真佐子が中から応答すると、米川(高品格)と名乗る男が、お父様の使いで来た。お連れしますとドアの外から話しかけてくる。

真佐子は、会えないって、父に伝えてくれと断り、一旦は部屋の中に戻りかけるが、ふと思い返して、土産に持って来たザボンだけでも渡そうとドアを開けるが、外に立っていた米川に捕まえられてしまう。

同じ頃、大和田の元にやって来ていた関根は、墓が暴かれたことを報告するが、既に知っていた大和田は、なぜ今頃やって来た?と、遅れてやって来た関根の怠慢さにいら立ちを隠さなかった。

そこに大和会の唐沢から電話が入り、大和田が出ると、お嬢さんを預かっていると言ってくる。

大和田は、娘に指一本でも触れたら承知しないぞとドスを利かせるが、明日10時、三田のマンション建設現場に来るように唐沢は伝える。

電話を置いた大和田は、伊豆半島から生き返った男が生きていた。俺は矢島に眠ってもらえば良いと思っていたが、唐沢は俺が眠った方が良いと思ったらしい。荷揚げ会社を日本一の大和会にしたのは私だ。唐沢ごときに勝手はさせんとつぶやく。

毎超新聞に戻った野沢は、デスクに、このことを記事にしよう。絶対間違いないネタだと説得するが、デスクは拒否する。

アパートに帰って来た矢島を待っていたのはオカマの三公だった。

三公は、女なら、大和会の連中にさらわれたわ。私、見たんだもの…としなだれかかってくる。

部屋の中に入り、真佐子がいないのを確認しようとした矢島は、大和会のものが3人、部屋で居座っていたことに気づく。

付いて来いと脅された矢島は素直に付いて行くが、後を追おうとした三公はその場でヤクザたちに痛めつけられる。

その直後、野沢から部屋に電話がかかってくるが、誰も出ないので、野沢はいら立つ。

三田の建設現場のミキサー車の前に連れて来られた矢島は、セメント詰めにされると気づき、一瞬の隙をついて3人のヤクザに飛びかかると、1人の相手が持っていた拳銃を奪い取る。

そして、その銃で相手を脅しながら、娘をどこに隠した?と聞く矢島。

その頃、建設途中のマンションの上で、関根、2人のボディガードと共にやって来た大和田は、から佐原幹部連中に連れて来られた真佐子と会っていた。

真佐子、会いたかったよ…。20年振りになるか。こんな所で会うことになろうとは…。きれいだ。お母さんそっくりだ。お母さんに会ったのも、こんな月の晩だった。グラバー邸…などと、大和田が1人で思い出に浸り始めたので、真佐子は、噓!と言い返す。

そう思われても仕方がない。許してくれと大和田は娘に詫びるが、真佐子は、あなたが愛していたのは、母でも渡しでもなく、あなた自身よ。あなたは自分を守るため、罪のない人を煙書に送り、その人の奥さんまで殺した…。矢島さん、ご存知でしょう?と問いかける。

知らない…と否定した大和田は、ずっと海の仕事をして来たので、何かと誤解されて来た。そんな世間が嫌になって死んだことにしたのだと言い訳する。

その話を聞いていた真佐子は、信じて良いわと答え、お父さん!と呼びかける。

親子の対面がすんだと判断した唐沢は、会長、空っぽの墓に戻ってもらいましょうと告げ、大和田も、唐沢、お前の腹は分かったと答える。

後は私らが引き受けますと言いながら、唐沢肇幹部連中は銃をスーツから取り出し大和田を狙う。

その時、大和田に付いて来たボディーガード2人が、隠し持って来た機関銃を乱射し始める。

たちまち、唐沢ら幹部連中は蜂の巣になって倒れる。

真佐子をここへ連れて来た米川も逃げようとして背中を撃たれる。

大和会の連中が全員死に絶えたのを確認した大和田は、関根にここの後始末を言いつけると、真佐子に、飛んだ所を見せてしまったねと詫びながら近づいてくるが、真佐子はその手を振りほどく。

それが本当のあんたの姿だよ…、そう言いながら、拳銃片手に現れたのが矢島だった。

矢島は、機関銃を持ったボディガードの1人に飛びかかると、もう1人のボディガードの方に身体を向け、相撃ちにさせると、唖然として棒立ちになった関根もその場で射殺する。

ようやく大和田と退治した矢島は、大和田、良く生きていたな。墓に戻ってもらうぞと言いながら銃を突きつける。

すると大和田は、娘である真佐子を羽交い締めにして盾にすると、矢島、撃てるものなら撃ってみろ!と叫びながら、後ずさりし始める。

そして、側に落ちていた拳銃を拾い上げた瞬間、真佐子は矢島の方へ逃げ、拾った銃を発砲して来た大和田は、矢島に射殺される。

さすがに、父親の死を目の当たりにした真佐子は驚くが、大和田に左足を撃たれた矢島は、そんな真佐子を残し、足を引きずりながら去って行く。

そこに、野沢が駆けつけて来たので、矢島はおとなしく、凶器である拳銃を野沢に渡すのだった。

倒れかけた矢島を抱え起こす野沢。

逮捕された矢島は、手錠をかけられ、警察車両で警察に向かっていたが、その時、ふと外を見た矢島は、トランクを下げ、昇る朝日の方向へ1人帰って行く真佐子の姿を発見し、何事かを考え込むのだった。