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ロボジー

ロボットの中に人が入っている…と言うアイデア自体は、かなり古い喜劇などで観たような気がしないでもないが、よぼよぼの爺さんが入るという着想が、そんなの無理だろ!と言う常識的判断を無視しても面白い。

この映画は、この爺さんに感情移入するか、社長からいつも無理難題ばかり押し付けられている3人組に感情移入するか、理工系ロボットオタクの女の子というちょっと異色の存在に感情移入するかのどれかのパターンになると思う。

つまり、これから社会へ出ようとする若者、既に社会に出て消耗し切っている働き盛りの世代、さらに、もう引退し、誰からも相手にされなくなっている年寄り世代と言う、幅広いターゲットを想定しているのだ。

そして私は、残念(当然)ながら、老人に感情移入してしまった。

老人会でもつまはじき、孫にも相手にされず、社会にもはや自分の居場所はないと悟る寂しさ…

そんな彼が、ふとしたきっかけで受けてみたバイトが、ひょんな事から評判になり、あれよあれよと、自分が重要視される事になる快感。

3人組から、講演会の依頼のスケジュールを渡されたときの彼の気持ちは痛いほど分かる。

ないと思っていた仕事が「連続」で手に入ったのだ。

これで彼が得意にならないはずがない。

彼は3人組に、あれこれ贅沢な注文をするのも、この有頂天さから出たもの。

若い世代からみると、わざとらしい演出と思うかもしれないが、私は十分あり得る展開だと思う。

ラストの鈴木の笑みは、又自分が役に立つ機会が出来たという満足感だったに違いない。

見方を変えるとこの作品「ロボット版影武者」のようにも思える。

顔が似ていると言うだけで、武田信玄に成り済まさせられた泥棒の気持ちの変化に、どことなく通ずるものがあるように見えるのだ。

最初は反発から始まるが、徐々に自分が御館様やニュー潮風に感情移入して行き、欲得を除外して何とか役に立ちたいと願うようになる心の変化…

コメディとしては大爆笑するような感じではなく、くすくす笑いを誘う程度の脱力系に近いかもしれないし、「ウォーターボーイズ」とか「スウィングガールズ」と言った青春ものではないので、爽やかさはそれほどなく、かなり地味な印象を受けるのも確か。

それでも、どことなく、ほっこりした気持ちになれる作品ではある。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ、矢口史靖脚本+監督作品。

家電メーカー木村電器社長木村宗佑(小野武彦)が、研究室に来ると、そこには、徹夜したのか、眠りこけた研究員がいた。

チビの小林弘樹(濱田岳)、デブの太田浩二(川合正悟)、そしてのっぽでメガネの長井信也(川島潤哉)の3人だった。

壁にかかったカレンダーの28日には「本番!」と赤く印がついている。

木村社長は、おはよう!と元気良く3人を起こすと、後1週間だけど大丈夫だよね?うちは零細企業なんでCM代なんてないから、テレビに映るときだけ動けば良いんだ。ニュース観ているからね!目立たないと映らないからね!と一方的に伝えてさっさと帰ってしまう。

部屋に残った3人は、社長は思いつきをすぐやりたがるけど、3ヶ月やそこらじゃ無理っすよ…とため息をつく。

その時、デブの太田が後ろによろめいて、机の上の飲み物をこぼしてしまい、キーボードにかかったので、焦って拭こうとする。

その動作が何かのスイッチを入れてしまったのか、壁際にビニールをかぶって座っていた研究途中の二足歩行ロボットが急に立ち上がると、コード類を引きずったまますたすたと歩き出し、そのまま窓を突き破って落下してしまう。

驚いた3人が窓から下をみると、ロボットは壊れており、データ類が入ったパソコン本体まで、コードで宙ぶらりんの状態。

小林は、バックアップは?と聞くが、パソコンの電源を目で追っていた長井は、目の前で、その電源コードがソケットから外れ、パソコン本体も下に叩き付けられる音を聞く。

タイトル

鈴木重光(五十嵐信次郎)は、病院でバリウムを飲んでレントゲン検査をしていた。

娘夫婦と孫を招いての老人会の演芸会で、目立とうとして舞台脇から登場し、その時、腰を痛めてしまったのだった。

レントゲン写真を見た医者は、特に悪くないと、心配してついて来た娘の斉藤春江(和久井映見)とその夫に告げるが、カーテンの向うで服を着ていた鈴木は、レントゲンが壊れているんじゃないか?などと悪態をつく。

医者は小声で、鈴木さんは、道に迷ったり起こりっぽくなったりしていませんか?仕事一筋に生きて来た人に限り、認知症になりやすいので、一度、神経内科の方へ行かれた方が…と春江たちに聞くが、しっかりそれを聞いていた鈴木は、俺がぼけているんじゃないかって話しているのか?とカーテンの向こう側から聞いて来る。

それを、表情で、困ったように医者に伝える春江の夫。

鈴木は老人会なんかに出なければ良かったと自宅でぼやくが、そんな父親を1人残して、春江の家族は車で帰って行く。

孫2人は、最後まで、鈴木には興味がないようだった。

1人になった鈴木は、仏壇に供えていたワンカップを取ると、座って飲み始めるのだった。

今の彼の楽しみはこれだけだった。

その時、電話がかかるが、放っておくと、明日3時からお疲れ会をやるので、コミュニティセンターへ来て下さいと言う知らせが留守電に吹き込まれる。

鈴木は、それをカレンダーに書き込もうとして、行くか!と否定すると途中で止める。

翌朝、新聞の折り込みなどに求人がないかと探す鈴木だったが、どれも59才までとか年齢制限付きで、鈴木のような年齢が働ける仕事は1つもなかった。

諦めかけた鈴木だったが、日給3万円と言う好条件のチラシに目を留める。

身長168cm、胸囲88cmなど、人型マークの各部のサイズが書かれており、このサイズに合う人を求めていると言う内容だったので、自分も条件に合うと一瞬喜んだ鈴木だったが、良く読むと、着るみショーの求人と知り、その場で破り捨ててしまう。

うたた寝をした後、結局、他に用事のない鈴木は、コミュニティーセンターの老人会のメンバーたちに会いに行くが、腰は大丈夫だったの?と心配してくれていたのは最初のうちだけで、すぐに、昨日のビデオに全員夢中になってしまう。

近くの公園で1人弁当を食べていた鈴木は、隣で、同じように弁当を食べているらしき老婆に気づく。

その老婆は、箸に持ったカボチャをなかなか口に入れようとはせず、何かを迷ている風だった。

すぐに、その娘らしき人物がやって来た、その老婆を連れて行ってしまう。

どうやら徘徊老人だったようだ。

鈴木は、ショーウィンドーに映った自分の姿をまじまじと観て、さっきの老婆と自分が大差ない年である事を悟る。

鈴木は、近くで幼児向けの着ぐるみ「グランパワーズ」ショーをやっているのに気づき、興味本位で覗きに行ってみると、孫たちくらいの幼児たちがヒーローに夢中になっている現実を目の当たりにする。

鈴木は、本庁公民館で行われているはずの「着ぐるみショー」の面接会場へ向かう。

当然ながら、そこに集まっていたのは、皆、体力自慢の若者たちばかりであった。

鈴木が応募用紙を取った時、部屋から顔を出して挨拶したのは、小林、太田、長井の3人だった。

簡単な挨拶を終え、面会室に戻った3人は、見つかるか、首になるかだと、互いに切羽詰まった表情をしていた。

最初の応募者が部屋に入り、ロボットの動きをするように3人から指示される。

応募者たちは、それぞれ自分らしいロボットの演技をするが、最後に入って来たのが鈴木だったので、太田は愕然として、おじいさん、着ぐるみの応募って知って来たの?と聞いてしまう。

しかし、一応、やらせてみると、鈴木のやったのは、メイド型のロボットのイメージらしく、「ご主人様、ご飯が出来ました」などとちょこまか動いてみせるが、その直後、痛めていた腰がぶり返し、中腰に固まった又、ゆっくりと退場する。

すぐに、合格発表があり、当然のごとく落ちた鈴木は、パチンコ屋により、他人が積み重ねた箱から玉をちょろまかそうとしかけて、戻って来た持ち主から怒られる始末。

合格者の青年は、目を保護すると言う理由で目隠しをしたままロボットの外装を着せられていたが、頭の部分をはめた直後、こfれ、金属使ってますよね?と言い出し、手が震え出したので、驚いた3人が頭を外してみると、中の青年の顔や身体には赤い斑点が出来ていた。

夜、自宅にいた鈴木は電話を受け、金属アレルギーなどはないかと聞かれたので、そんなものは全くないと答えると、合格したとの知らせを受ける。

喜んだ鈴木は、翌日、スーツをきちんと着て待ち合わせの場所へ向かうが、到着したワゴン車から出て来た3人は、ここで着替えて下さいと言う。

分かったと答えた鈴木は、立っていた歩道上でいきなりズボンを降ろしてしまうが、慌てた小林が、車の中で…と注意する。

車の中でロボットの外装を着せられた鈴木も又、目隠しをさせられていたので、何を着せられているのか分からなかったが、頭部の中にあるスピーカーで、外からマイク越しに呼びかける小林の声をキチンと聞く事が出来た。

小林は、現場に着いたら、こちらの指示通りに動いてくれれば良いと鈴木に念を押す。

ワゴン車からそろそろと降り立った鈴木のロボットは、3人に助けられながら、その日の会場「13回ロボット博覧会」の会場に歩いて行くが、それを目撃したスタッフや関係者たちは、皆一応に驚きの目で動くロボットを見つめる。

ぼんやりとした視界の中で、自分が注目されていることを知った鈴木は少し嬉しくなる。

会場内では、ちょうど「フロンティアロボットのパフォーマンス部門」が披露されており、各社自慢のロボットが、色々芸を報道陣や客たちに見せていた。

通天閣ロボットなども愛想を振りまいている。

ステージの出番を待つ鈴木は、前に並んでいた小型ロボットに、鈴木重光ですと挨拶をしてしまう。

しかし、それは機械だったので答えるはずもなく、そのままステージに上がってパフォーマンスを披露すると、又、歩いて入口の所へ戻って来る。

しゃくに障った鈴木は、足を出して、小型ロボットの足を引っかけ、転ばしてしまうが、事情を知らないメーカースタッフたちはあわてて起こしに来る。

いよいよ鈴木の出番となり、ステージに登場したロボットは「ニュー潮風」と紹介される。

司会者は、太田にロボットの開発秘話のインタビューをするが、緊張して額の汗を左手で拭いたため、その手のひらに書いていたカンペ文字が全部流れて読めなくなってしまう。

マイクを向けられたまま何も言葉が出て来ない太田を救ったのは、隣に立っていた「ニュー潮風」だった。

顔の中にハエが一匹入り込んで鈴木の顔にとまったので、それを振り払おうと左出を横に振ったのが太田を直撃したのだ。

太田は怒るが、それで緊張が解けたのか、いきなり饒舌になり解説を始める。

手を振っていたニュー潮風は、すぐに引っ込むように指示があるが、その時、見物客の中にいた女の子が、他に何が出来るのか?と質問し、他の子供たちは、近くで踊っていた他のロボットの方がかっこいいなどと言うので、それを聞いた鈴木は、いきなり安木節の踊りを踊り出す。

慌てた小林は止めるよう指示を出そうとするが、気がつくと無線の線が切れていた。

地元のケーブルテレビの記者伊丹弥生(田畑智子)は、ビデオカメラをアルバイトの佐々木葉子(吉高由里子)に任せると、見物客の前の方に出ようとするが、その時、他の客たちも前進し始めたため、佐々木は人ごみに飲まれそうになる。

その時、背景に立っていたポールが倒れ始め、佐々木の頭上に落下して来る。

気がつくと、佐々木は、ニュー潮風に手を引っ張られて助かっていた。

ただし、彼女のデジカメは潰れてしまっていたが…

佐々木は、スカートから出ていた膝にニュー潮風の視線を感じ、思わずスカートで隠す。

さすがにまずいと気づいた小林たちは、ニュー潮風を連れて退場する。

ばれてる、絶対ばれてる。みんな観ている…、小林は冷や汗をかいていたが、次に瞬間、見物客の間から拍手が巻き起こっているではないか。

帰りのワゴン車の中で、3人は有頂天だった。

「飲もう!」と言う事になり、翌朝、研究室で泥酔して眠りこけていた3人だたが、そこにやって来た木村社長は、彼らを起こすと、乱れた髪をさっと押さえ、そのまま社長室へ連れて行く。

そこには、マスコミ陣が集まっていたので、3人は固まってしまう。

全てがばれたと思った3人は、申し訳ありませんでした!とそろって頭を下げるが、何を言ってるんだねと木村社長が3人に見せたスポーツ紙の1面には、ニュー潮風が人命救助したと言う記事が大きく載っていた。

鈴木も自宅で、ニュー潮風が載っている新聞やテレビニュースを観ていた。

木村社長が3人に言うには、出演依頼がひっきりなしなんだそうだ。

小林は恐る恐る、ロボットのお披露目は1度きりと言う話だったはずですが…と力なく反論するが、すっかり有頂天になている木村社長は、この後3時から駅前でお披露目をすると言い出す。

それを聞いた瞬間、長井はげろを吐く。

その頃、地元のケーブル局では、伊丹が撮って来たロボット博覧会のビデオが、ポール転倒事故のせいできちんと撮れていなかったと上司から叱られていた。

伊丹は、使い物にならんと突き返されたビデオを持って、隣のブースで待っていた佐々木に、壊れたカメラの修理費も含めたバイト代を支払う。

佐々木は、伊丹が持っていた使えないビデオテープも譲り受ける。

鈴木は、木村電機に電話を入れていたが、機械応対なので良く分からず諦めてしまう。

結局、電話帳の木村電機のページを破って、それを頼りに出かけようとすると、あの3人がワゴン車で来ており、又、中には言ってもらえないだろうか?と頭を下げる。

自分らが入れば良いじゃないかと鈴木が文句を言うと、チビ、デブ、ノッポの3人は、体格的に無理なんですと言う。

鈴木はさらに、これは詐欺じゃないのか?と追求すると、世の中に夢を与えていますと3人は苦しそうに答える。

1回ですむはずだったのが、あんたが勝手な事をするからこんなことになるんだろう!と太田が逆ギレする。

小林は、そんな太田を制止し、あんな事を言ったらダメだろう!と口喧嘩になるが、長井はそんな2人を置き去りにして、さっさとワゴン車を走らせてしまう。

コミュニティセンターにやって来た鈴木は、スポーツ紙に載ったニュー潮風を見せながら、このロボットには俺が入っているんだよと告白するが、保険士は鈴木の言動を怪しみ、自宅の住所や電話番号は言えますか?などと聞いて来る。

さらに、その噂が広まり、他の老人たちも、自分が認知症になったらしいなどと噂しているのを聞いた鈴木は、それ以上話す気にもなれずとぼとぼと帰って行く。

3人組は「昭和枯れすすき」がかかっていたワゴン車で峠に来ると、急に、運転していた長井が奇声を発しながら、車をバックさせ、その後急発進して峠に突っ込もうとする。

そこに近づいて来たのが白バイ警官(田中要次)で、こんな所で何をしているのか?と聞き、免許証の提示を求める。

その時、道に迷ってしまって…と言い訳をする太田ら3人が今話題のロボットの開発者である事に気づいた警官は、自分が駅まで先導してやるからついて来いと言い出す。

一方鈴木は、持っていたスポーツ紙を捨てて、自動販売機でワンカップを買っていたが、その時、隣の電気店のテレビの前で、子供たちがニュー潮風ってかっこいいよなと話しているのを耳にする。

駅前に来ているってと言いながら、子供たちが走り去ったのを観た鈴木は自分も駅前に向かう。

駅前では、鈴木社長が、洗濯機など自社製品を並べていたが、肝心のニュー潮風は「調整中」とやらでまだ登場していなかった。

集まった見物客たちは落胆し、途中で帰るものも出始めるが、そんな様子を観ていた鈴木も呆れ、帰りかける。

鈴木が横断歩道を渡っていた時、泊まっていたワゴン車に乗っていたのがあの3人だった。

鈴木は彼らと目が合ってしまい、ため息をつく。

白バイに先導され、駅前会場にやって来たワゴン車から降り立った3人とニュー潮風を観た木村社長は、感激して彼らを抱きしめる。

とある大学の「ロボット研究会」、部員たちは、佐々木が撮って来た「ロボット博」の時の映像を観ていた。

佐々木は、彼とだったら一生巧くやっていけると思うなどと、ニュー潮風に対する愛情を吐露するので、他の部員たちは呆れてしまう。

男子部員の清水が、2足歩行ロボットなんて何に必要なの?そんなのマンガやアニメに任せておけば良いんだなどと冷めた意見を言う。

その時、鈴木電機のHPにニュー潮風の事が載っていると聞いた佐々木は、すぐにそのページを閲覧し、うっとりするのだった。

鈴木電機の重役会議に出た小林ら3人は、今後、ニュー潮風の講演には、自分たち3人だけが出席する。専門家が集まるような所へは行きません。技術を盗まれるとまずいですからなどと説明する。

太田も、この世界は生き馬の目を抜くような熾烈な世界なんです!と強調し、小林は、メンテナンスのため、予算を頂けないかと木村社長に頼み込む。

その後、自宅にやって来た3人から、今後のニュー潮風のスケジュールを聞かされた鈴木は、泊まる所や食事について、あれこれ贅沢な注文をし出す。

次に出かけたテレビ局で、3人とニュー潮風が他の客たちと一緒にエレベーターに乗っている時、鈴木が放屁し、ニュー潮風の知りの部分についているファンが回り始める。

気が気ではない長井は、つい、すみませんと自分がやったかのように謝る。

ワイドショーに出演したニュー潮風は、いきなり司会の女性に抱きつく。

そして、下着の匂いを嗅ぎ分けて、洗濯する、しないを判断するという技を披露してみせる。

出演後、3人とニュー潮風がワゴン車に乗り込もうとしたとき、近づいて来た佐々木が、太田に花束を渡し、卒業論文でニュー潮風を研究していいですか?と聞いて来る。

研究くらいだったら良いよと答えた太田だったが、車に乗り込んだ後、佐々木がくれたニュー潮風の写真に「大好き!」などと書かれていたので、思わず、変態だ…とうめいてしまう。

小林は鈴木に、勝手にああ言う事やらないで下さい。人にくっついてばれたらどうするんですと注意する。

すると、鈴木も、誰のお陰でこうしていられるんだ!と言い返し、車止めろとわめき出す。

尿意を覚えたと言うので、又の部分だけを取り外すと、ニュー潮風は、公園の公衆便所の中に駆け込んで行く。

小便をし終わり、ニュー潮風が立ち去ると、奥で小便をしていた客(竹中直人)が唖然とした表情で見送る。

その後、3人は、宿泊先のホテルで、ニュー潮風の改良をしていた。

その時、太田は、強力なネオジム磁石を外そうとして一悶着あるが、その時、ルームサービスが来た隣の鈴木の部屋が見えた。

鈴木は、贅沢三昧な食事をし、マッサージまで受けていた。

翌日、ワゴン車を走らせていた3人は、横をスクーターで並走して来る佐々木を見つける。

佐々木は完全に、ニュー潮風の追っかけになったらしい。

その後、ニュー潮風は自転車に乗ってみせたり、病人をだっこしてみせたりパフィーマンスを披露するが、だっこした瞬間、腰を痛めて動けなくなってしまい、ストレッチャーでニュー潮風が運び出されると言う一幕もあるが、佐々木はそれらをいつも見学していた。

自動車の組み立て工場に来たニュー潮風は、強力な磁石付きのアーム型ロボットに身体をくっつけてしまい、振り回されるという騒動まである。

あちこち回り過ぎたためか、ワゴン車も段々調子悪くなって来て、3人が後ろから押して何とかエンジンをかけるという事態も。

ファミレスでは、鈴木が贅沢な料理を注文した後、3人はミニうどんですます。

料理が来る間、トイレに行くと席を立った鈴木は、娘の春江に電話を入れ、ニュー潮風と言うロボットを知っているかと聞くと、孫たちも大好きだと言うので、だったら、今度、地元に来るので、3時、食堂横の通路で待っていればサインくらいしてもらえるはずだと約束する。

席に戻った鈴木は、太田から、ネオジム磁石を4つ並べたものを腰に貼られたので驚くが、腰が悪いんでしょうと言われると悪い気はしなかった。

その後、隣のボックス席の子供たちが、ニュー潮風の話題に夢中になっていたので、あれ、おじいちゃんが入っているんだよと爆弾発言した後、愕然とする3人に向かい、冗談、冗談と笑う。

次のイベント会場では、子供たちと握手会だったが、約束通り、通路で待ち受けていた春江と孫たちは、3時になってもニュー潮風が来ないので、がっかりしていた。

その時、セーラー服のコスプレをした一団が目の前を通り過ぎたので、春江たちは興味を惹かれ、そちらについて行ってしまう。

一方、鈴木は、壁にかかった時計で、すでに3時を15分も過ぎているのを発見、急に握手会を切り上げると、孫たちの待つ通路へひた走る。

しかし、そこにはもう春江も孫たちもいなかった。

したのイベントスペースを見下ろすと、コスプレショーを見学し終わったのか、緑色のマイカーで帰って行く春江たちの姿を発見、急いで下のタクシー乗り場に降りて行く。

走って苦しかったので、顔の部分を上げてタクシーを待っていると、後ろに他のコスプレイヤーたちが並び、鈴木もコスプライヤーだと思い込んだのか、もう一台、ニュー潮風を着て参加していたおっさんを紹介する。

彼らは、この後、飲み会に行くつもりらしく、鈴木も誘うと、2台のタクシーに分乗し、駅前の笑笑に向かう。

途中、鈴木と同乗したもう一大のニュー潮風の中味が、渡辺と名乗り名刺を手渡して来る。

そこには「ドリーム工房」と書いてあったので、そう言う仕事をやっているんですか?と鈴木が聞くと、趣味でやっていると渡辺は答え、そのニュー潮風良く出来てますねと聞き返して来る。

鈴木は、友達にこういうのが得意なのがいて…とごまかすが、駅前について全員が降りると、一人タクシーの中に残っていた鈴木は運転手に耳打ちする。

その頃、小林、太田、長井の3人は、行方不明になったニュー潮風を探して、コスプレショーの中をうろついていた。

全員、他の誰かと一緒にいると思っていたのだ。

斉藤家に着いたタクシーから降り立ったニュー潮風は、チャイムを押し、出てきた春江が驚いているのもおかまいなく、下駄箱から汚れ吹きの布を取り出すと、それで足の底を拭いて茶の間に上がる。

その頃、太田ら3人は近くの川をさらっていた。

ニュー潮風が、川に落ちて流されたかもしれないと思ったからだ。

春江は、祖父が一緒じゃないのを不思議がるが、とりあえず孫たちを呼び、サインをしてもらう事にする。

春江がペンを探していると、ニュー潮風は、勝手知ったる他人お家と言った感じで、タンスの引き出しから筆ペンを取り出すと、色紙に「タマネギ残すな」などと孫たちへのメッセージを書く。

その後、孫2人と一緒に写真を撮ることにするが、ニュー潮風の横に並んだ孫たちは、何だか、おじいちゃんの匂いがすると言い出す。

鈴木は思わず、顔の部分を上げようとしかけるが、途中で思い直して止める。

その後、待たせておいたタクシーに乗って、鈴木は1人帰って行くのだった。

ワゴン車の所で疲労困憊していた3人の所へ鈴木が戻って来ると、太田が、あんた!2度とこんな事はしないでくれ!と怒鳴りつける。

鈴木電機の経理部に領収書を渡そうとした太田だったが、女事務員は、そのあまりの金額の多さに呆れ、あんたたち、ロボットと一緒に何やっているの?と突っ込んで来たので、もう良い!と怒鳴って、領収書を奪い取る。

その後、ワゴン車の中で、太田は佐々木からもらった手紙を小林と長井に披露する。

緑山学園という彼女が通っている大学で講演会をしてもらえないかと言う内容だったので、ニュー潮風は行かなくていいそうだし、女子校のちょっとしたサークル程度みたいなものと期待した3人は、あっさりその依頼を引き受ける事にする。

しかし、行ってみると、緑山学園と言うのは男女共学で、どちらかというと男子学生の方が多い大学だった。

さらに、講演会はものすごい聴衆で溢れていたので、壇上に上がった3人は又凍り付いてしまう。

その最前列に座っていた佐々木が立ち上がり、いきなり質疑応答で良いですかと聞いて来て、多くの挙手があったので、又3人は唖然としっぱなしだった。

最初に立ち上がった男子学生は、女の子を助けましたよね?と言うと、佐々木が、私です!と照れくさそうに立ち上がる。

あれはどうやって危険度を察知する事が出来たんですか?と言うもの。

3人は、何も答えられず棒立ち状態だったが、長井がマイクを受け取ると、あなたはどうやったと思いますか?と逆質問する。

学生は、エレベーターの中の監視カメラのように、映像から解析したのでは?と分析すると、長井は急いで、それをメモに取り始める。

その後も、次々と専門的な質問が続出して来たので、3人は又棒立ち状態だったが、佐々木はそれはこうなんじゃないかという自己分析を披露し始める。

前に出て来た佐々木は、ホワイトボードに、自分なりのニュー潮風の設計図を書き始めるが、それを観ていた男子学生たちが、次々と補足意見を言って来る。

長井はそれを必死に書き留めていた。

あの子ってどう言う子?と最初に質問した男子学生に聞くと、学校一のロボットオタクで、卒論もニュー潮風にしたというではないか。

その講演会が盛況に終了した後、佐々木が、又やってもらう事が出来ますかと聞いて来たので、太田は即決でオーケーを出し、2人でスケジュール調整を始める。

その後、彼女の所属するロボット研究会で、あれこれ解説する佐々木の説明に聞き入る3人。

それらの説明を元に、長井は、ニュー潮風の設計図を完成させる。

次の後援会では、学生たちの有志を壇上に上げ、佐々木と共に、ニュー潮風の分析を競い合わせたりする。

途中、長井が、学生が書いた部品の事が分からずつい聞いてしまうような凡ミスもあるが、何とかニュー潮風は完成しそうだった。

旅館で、設計図を壁に貼り、検討し合っていた3人の元に、何も知らない鈴木が、近くに温泉があるそうだが行かないかと誘いに来たので、3人はあわてて設計図を隠して、鈴木さんだけで言ってくれと追い返す。

しかし、鈴木は途中、壁に大きなおたふくの面がかけてあるのを発見、それをかぶって3人を脅かそうと、又部屋に戻ってふすまをそっと開けると、3人が、ニュー潮風の設計図を完成させているではないか!

ある日、木村電機の洗面所で髪を洗い終えた太田が、小林や長井とともに外に出ようとしたとき、就活で訪れていた佐々木と遭遇する。

それを知った3人は、彼女を会社に入れたりしたらばれるよと相談し合い、太田は、心を鬼にして、佐々木に、君はロボットに向いてない。もう今度は君の大学にも行かないと絶縁宣言をしてしまう。

大学に戻って来た佐々木は絶望感で泣きじゃくりながら、それまで書き貯めていた卒論を自ら破り捨ててしまう。

そんな佐々木の事を案じたもう1人の女子部員が、清水君に振られたの?と心配する。

佐々木が研究会を辞めてしまうと、女子は彼女1人だけになる事を不安がっていたのだ。

それでも、やけになっていた佐々木は、ビデオも消去しようとパソコンで再生してみるが、その時、ロボット博で映っていたニュー潮風の頭部のアップに目を留める。

何と、ロボットの頭部から髪の毛が1本突き出しているではないか!

早速、佐々木は小林弘樹を探すため、小林名義の電話に次々と電話を入れ、とうとう、目的の自宅に通じたので、応対した母親に、高校時代の同級生と偽り、現住所を聞き出す事に成功する。

アパートへ向かうが、相手はいなかったので、部屋の前に出してあったゴミ袋を押収、中味を確認し、破って捨てられていた公民館使用料の領収書を見つける。

公民館に出向いた佐々木は、着ぐるみショーの審査があったようだという係員の話を聞き、つい立ての下に落ちていた申し込み用紙を一枚拾い上げる。

その表面を鉛筆でこすり、筆圧をあぶり出した彼女は、当日応募して来た参加者の1人を特定、コンビニで働いていたその青年を訪ねる。

その青年こそ、金属アレルギーだったため、採用を取り消された人物だった。

合格して人は誰か分かりますかと聞いてみた佐々木だったが、分からないという。

その頃、緑山学園のロボット研究会を1人訪れた小林は、部屋にいた清水に、理工学部4年の佐々木さんに渡してくれと封筒を託して帰る。

佐々木は、ケーブルテレビ局の伊丹に、ニュー潮風の中には人間が入っていると訴えに行くが、伊丹はそれが本当だったら事件よ。下手に関わったら怪我するよと、目の下にクマを作り、異様な姿になった佐々木に注意する。

それでも佐々木が携帯をかけようとするので、そんな事をしても証拠を消させるだけよと言いながらも、伊丹は望遠付きカメラを貸してくれる。

一方、木村社長に呼び出された3人は、インターネットの記事で、ニュー潮風は偽者じゃないかって噂が広がっていると言う事実を教え、そうした疑惑を払拭するためにも、今度の土曜日にいつもの建物で記者会見する事にしたと、又しても一方的に宣言する。

その頃、佐々木は、ニュー潮風を朝から晩まで付け回し、とうとう鈴木の自宅近くまで追いつめていた。

ゴミ集積所に重い望遠レンズ付きのカメラを構えようとするが、使い慣れないカメラなので、なかなかピントがあわない。

その時、携帯が鳴り始めたので、出ると、相手は伊丹で。なかなか顔が巧く撮れないと報告すると、自分もそっちに行くと言い出し、住所を佐々木に聞いて来る。

その時、ゴミ袋を持った鈴木が集積場に近づいて来たのに気づき、佐々木は夢中でシャッターを知るうちに、とうとう鈴木の顔写真をはっきり撮る事に成功する。

こんなおじいちゃん!と佐々木は驚くが、バランスを崩し後ろの道路に尻餅をついてしまう。

そこへ車が通りかかって佐々木は轢かれそうになる。

気がつくと、佐々木は佐々木に手を引っ張られ助けられていた。

あんた、大丈夫か?気をつけなさいよと鈴木は言葉をかけると、落ちたメガネを拾って自宅に戻る。

そこに伊丹が駆けつけて来て、今佐々木が移したばかりの鈴木の素顔を確認し、木村電機がねつ造疑惑を釈明する会見をやる事になったのだと佐々木に説明する。

1人、鈴木の自宅を訪問した伊丹は、あなたは、偽装ロボットショーの被害者になるんですと説明し、今度の会見に、うちのカメラも入れさせてくれ。そして、うちのカメラに向かって騙された事を証言してくれ。ただ、それまで、木村電機には内緒にして欲しいのです。あなたはニュースの主役ですよと頼み込む。

翌日、別の会社の就活に来ていた清水は、木村電機に絞っていたと思っていた佐々木も来ていた事を知り驚く。

夢ばっかり追っていても食えない事に気づいたと言う彼女に、清水は、ロボット研に木村電機の人が訪ねて来て、君にこの封筒を渡してくれと言われたと説明する。

封筒の中に入っていたのは、自分も協力して考案した「ニュー潮風」の設計図だった。

それを観た佐々木は急に走り出す。

記者会見場にはすでにマスコミ陣が集まっていたが、その中に混じって、小さなビデオを持ち込んでいたのが伊丹で、携帯が鳴り始めたので、慌てて留守電に切り替えてしまう。

電話をかけたのは佐々木だったのだが、町の巨大スクリーンに木村電機の会見場の様子が映し出されると、慌ててタクシーを止めると、記者会見が行われている木村電機の建物に向かう。

会見場では、肝心のニュー潮風が姿を見せないので、マスコミ陣はいら立っていた。

木村社長は、メンテナンスの関係で…と弁明していた。

その頃、扉の奥では、鈴木が、自分の正体を明かすセリフの練習をしていたが、次の瞬間、決意をしたかのように、横に置いてあったラジカセで安木節をかけると、踊りながら会見場に入って行く。

伊丹は、そのニュー潮風に向かって、まるで人間が入っているみたいですねなどと言いながら、勝手に近づいて来ると、顔の部分を上げようと手を伸ばす。

ところが、なぜかニュー潮風はその手を避けるかのように後ずさりすると、約束が違うじゃないですか!ふざけないで下さい!と憤慨する伊丹の言葉を無視して部屋の中を逃げ回り始める。

伊丹はマスコミ陣に向かって、皆さん、このロボットの中味をご存知ですか?とわめき出す。

ちょうどその時入って来たのが佐々木で、ニュー潮風を追いつめている伊丹を止める。

その時、進行するニュー潮風は、床に張っていたマイク用のコードを引きずりながら窓の方に進んで行くと、そのまま窓から墜落してしまう。

驚いた全員が窓から下をのぞくと、バラバラになったニュー潮風の中味は機械だった。

実は、窓の前にあったロッカーにあらかじめ隠しておいた「ドリーム工房製」のレプリカを、鈴木が窓の側に来て自分の姿がマスコミ陣から隠れた隙に、取り出して、窓から放り投げたのだった。

そして自分はロッカーの中に隠れていた。

下では、降りて来た太田が、壊れたニュー潮風を前にわざとらしく号泣していた。

そんな3人組を優しくいたわる木村社長。

みんなが下に行って、誰もいなくなった会場から、ロッカーを出て、衣装のニュー潮風を脱ぎ捨てた鈴木は、入口に向かう。

そんな鈴木を呼び止めたのはガードマンだった。

鈴木が入館証を持っていなかったので、どこから入ったの?と聞いて来るが、鈴木はニュー潮風には行っていたのは私ですと言うと、もう良いよと、帰してくれた。

又しても認知症だと思われたのだ。

木村電機を後にした鈴木は、ポケットの中から4つのネオジム磁石を取り出すが、それらは互いにくっつき合ったので、それを見た鈴木は微笑む。

1年半後、鈴木は、又老人会の寸劇「花咲か爺さん」で脇役を演じていた。

それを見つめる春江夫婦と2人の孫たち。

ケーブルテレビGTVの伊丹も混じった木村電機の新製品発表会で、木村電機の社員となった佐々木は、「ニュー潮風」を発表していた。

今度こそ本当の2足歩行ロボットで、デモンストレーションとしてルームランナーの上で走ってみせるが、その内、ルームランナーの早さに追いつけなくなり、バランスを崩し、吹き飛ばされて、又又、窓から落下してしまう。

鈴木は、孫たちと撮ったニュー潮風の写真が置いてある部屋で、消灯して寝ようとしていたが、消した瞬間、玄関のチャイムが鳴る。

出てみると、玄関口に来ていたのは、あのい3人と佐々木だった。

困りきったような4人は、鈴木さん、助けて下さい!と訴えて来る。

それを聞いた鈴木はにやりと笑うのだった。