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俺はトップ屋だ 第二の顔

二谷英明主演で上映時間52分の中編通俗ハードボイルド映画。

今回は、「○○殺人」をテーマにしている所が当時としては新しかったのだろう。(一応、ネタバレになるので、ここでは伏せる)

冒頭、アバンタイトルで人気のロカビリー歌手が謎の死を遂げ、タイトルの直後、本編が始まると、その同じ歌手が同じ車で登場し、「終」と言う文字がいきなり出るというアイデアは、意表をつき面白い。

ただ、その後は、当時の「お色気サービス?」の定番、キャバレーに謎の美女と言ったいかにもなパターンで進行し、主人公の黒川にあまりサスペンスや謎が生まれないのが残念。

当時のシリーズ物には良くあることだが、同じ設定で作られた前作「俺はトップ屋だ 顔のない美女」と同じようなキャストが登場する。

似ても似つかぬ全く別の役柄で…と言うならまだ分からなくもないが、役柄まで似ていると言うのが、今の感覚では不思議な所。

この2本の映画の公開は2週間しか間が開いてない。

2本連続で観た人は、当時混乱しなかったのだろうか?

しばらく経つと、2本の映画のキャストがごっちゃになってしまうこと請け合いのような気がする。

まあ、言い方を変えると、同じようなキャストで馴染みやすいと言えるかもしれない。

東宝や東映のギャングものと言った他社作品でも似たような例は多い。

正直な所、前作より魅力の要素が減っているような気がするので、このシリーズが続かなかったのも分かるような気がする。

劇中、警視庁詰めの記者が登場するのは、やはり、当時の人気作品「事件記者」を意識したのだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、星川清司脚本、井田探監督作品。

山間の道を飛ばすスポーツカー。

運転していた青年が急に苦しみ出したかと思うと、口から血を吐き、車は崖から落下して行く。

人気ロカビリー歌手紫茉沙彦(藤野宏)の突然の死が、新聞に大きく報じられる。

タイトル

笑顔の紫茉沙彦と美女が乗った車が画面に遠ざかって行き、「終」の文字が浮かぶ。

一緒に紫茉沙彦主演映画「春を歌えば」を観終わった浅井マリ(禰津良子)と、不良仲間のお妙(久木登紀子)ベティ(柳田妙子)ミーちゃん(花柳礼奈)たちは、あの紫茉沙彦が死んでしまったなんて信じられないと話しながら映画館を出て来る。

事務所に戻って来たマリは、かかって来た電話を、大将こと黒木哲郎(二谷英明)に渡してやる。

相手は「週刊事件実話」の柳生編集長(佐野浅夫)だった。

ネタ不足と言い訳するトップ屋黒川哲郎(二谷英明)に、今話題の紫茉沙彦のことでも調べてくれと頼んだ柳生編集長だったが、黒川は、マスコミが作り上げた人工衛星なんかに興味はないと断ってしまう。

それを観ていたマリは、仕事受けないの?と不思議がるが、19才の歌手なんか興味ないよと言いかけた黒川だったが、このままではマリの給料も払えないと気づき、気が乗らないまま、紫茉沙彦がかつて歌っていた赤坂のクラブ「メッサ」に行ってみることにする。
「メッセ」では、新しい歌手の松宮方也(夏洋一)が歌っていた。

ホステス相手に、まさかあの晩、茉沙彦が酔っていたとはね…、ところであの晩彼の相手をしていたのは誰?と黒川が利恵(横田陽子)と言うホステスに探りを入れていると、奈々の名を教えられる。

しかし、そこに近づいて来たこの店の支配人と言う青地美恵子(小園蓉子)が利恵に余計なおしゃべりを注意し、自らも別のテーブルに移って行く。

美恵子が移動したテーブルに座っていたのは、西島軍一郎(松本染升)と、アフリカから来日中のパタク・ウナバロという人物だと黒川は気づく。

その時、黒川に声をかけて来たのは、昔付き合っていた辺見武人(森塚敏)だった。

かつては敏腕デスクだった辺見だが、今や、「ひかり芸能」と言う怪しげなプロダクションをやっており、3日前に大阪から上京して来たばかりだという。

黒川が辺見と店の外で別れている時、店のステージでは、サックスを吹いていた小磯奈々(香月美奈子)が、外国人の酔客に絡まれ、ちょっとした騒ぎになっていた。

店に戻って来た黒川がそれに気づき、酔客を殴って外に運び出してやる。

その後、奈々の部屋に勝手に入って来た黒川は、先ほどの礼を言いながら歓迎した奈々に、案外あなたは、彼が死んだの哀しんでないんだなと告げる。

奈々は、残念だわ。私が殺さないうちに死んじゃって…と答え、実は2人の間が、他人が想像するほど巧くいってなかったことを匂わせる。

ここは、マダムの部屋で、自分は自由に使わせてもらっていると言う奈々は、事故の日、紫茉沙彦 は酔っていたかと黒川から聞かれるが、マネージャーがやって来て、又新聞記者が押し寄せて来たと告げたので、2人して店を後にする。

1人、裏口の前に残った黒川は、馴染みの警視庁詰め記者たちがやって来たので、奈々なら部屋にいるよと噓を言い、裏口から外に出た奈々とマネージャーが車で逃げる時間稼ぎをしてやる。

それを見送った黒川だったが、突然、2人の外国人に路地に連れ込まれると、そこには、先ほど奈々に絡んでいた船員風の男も待っていた。

全員殴り倒して帰りかけた黒川だったが、背後から迫って来た車に轢かれそうになる。

翌朝事務所にやって来た黒川は、芝浦ふ頭で会いたいと言う妙な電話があったとマリから教えられたので、早速出かけることにする。

そこで待っていたのは、昨夜の船員風外国人だった。

外国人は、昨夜黒川から奪い取った財布を返しながら、近くに停めてある車に乗っていたマダム青地美恵子から、あんたを殴ってくれと頼まれたと打ち明ける。

奈々に絡んでいたのも芝居だったと知った黒川は、奈々の方でも俺のことを探っていたのだと悟る。

マダムが乗った車に男(二本柳寛)が近づいて来て、一緒に乗り込んだので、ライター型のカメラで撮ろうとした黒川だが、何者かに払い落とされ、その男は逃げて行く。

小磯奈々の自宅アパートを訪ねた黒川は、管理人から、既に店の方に出かけたと知らされる。

その帰り、黒川は、自分を見張っている男たちの姿を発見、何者かと追跡するが、住宅地で見失ってしまう。

その時、「ひかり芸能社」と言う看板を見かけたので、あの辺見の会社だと気づいた黒川は中に入ってみる。

中には留守番の男が1人おり、間もなく社長は帰って来るとのことだったが、部屋の壁には「ヌード嬢」の写真が多数貼ってあり、「ひかり芸能社」の業務内容がうかがい知れた。

そこに辺見が戻って来たので、黒川は、大新聞社のデスクまで勤めた君が、贈賄事件のあおりを受け、部長の席を追われたのは気の毒だったと過去を振り返ってみせる。

辺見は、西島軍一郎とパタク・ウナバロ、須永剛造が一緒にいるので、クラブ「メッセ」に行こう。うちの女の子をあの店に入れているんだと黒川を誘う。

「メッサ」に来た黒川は、奈々に辺見を紹介してやる。

辺見は、芸能界は一晩で人気者にもなれるし、一夜でコ○キになると言う悲哀もある世界だと奈々に告げる。

その時ステージで歌っていた松宮方也は、明らかに様子がおかしかった。

そんな「メッサ」に、マリが黒川を探しに、女友達を引き連れてやって来る。

ステージを終え楽屋に戻って来た松宮方也に、マダム青地美恵子は、何もかもあなたの思い通りにしてやったじゃないと言葉をかける。

外に出て来た松宮方也に、お妙たち3人娘はサインをねだるが、松方が無言で去って行ったので悔しがり悪口を言う。

その後、山の後に乗り捨てられた車の中から、西島軍一郎の死体が発見される。

警視庁では、長谷刑事(藤岡重慶)と小柳警部(宮阪将嘉)が記者たちに、硝酸ストリキニーネによる毒殺だが、西島のシャツに口紅が付いていたと発表していた。

その時やって来た黒川に、先日騙された記者たちは嫌みを言い、須永剛造がアフリカとの契約を勝ち取ったと教えていた。

その直後、松宮方也が自殺したと言う知らせを新聞売りの少年(佐藤正三郎)が伝える。

その頃、マダム青地美恵子も何者かに襲撃されていた。

自宅アパートにいた小磯奈々は、ノックの音がしたので開けてみると、そこに立っていたのは黒川だった。

奈々は嬉しいわと歓迎するが、黒川の方は、君は男を寄せ付けない。君が良く分からないと冷めた目で答える。

すると、奈々は、私は金が欲しい女よ。子供の頃から貧乏だったから…と昔話を始める。

狭い住まいの中で両親がいがみ合っていた。弟や妹は医者にもかかれず、私は学校へも行けなかった。最初の夫にも死なれ、それから6年…と告白する奈々に、何故、松宮方也は自殺したんだ?と黒川は問いかける。

知るはずないでしょう…と否定した奈々は化粧台で口紅を手にするが、黒川はその口紅に注目していた。

奈々は口紅を塗ると、黒川に近づきキスしかけるが、途中で止めて抱きしめるだけにする。

その後、窓から外を観た奈々は、怪しげな人影が自分の部屋を監視していることに気づく。

奈々は、危ないわ。私を殺しに来たのと言いながら、黒川を部屋の奥に押し戻そうとするが、黒川はアパートを飛び出すと、何者かを探ろうとする。

その間、部屋に残っていた奈々は、今塗ったばかりの口紅を拭うと、拳銃を手にするのだった。

部屋に入ってきたマネージャーが、これからどこへ行くのです?と聞くと、奈々は、当分姿を消したいのよと答える。

港近辺まで、アパートの外で見張っていた男たちを追って来た黒川だったが、突然撃たれたので、輸出用に並べられていたスバルの間に身を隠しながら逃げ回る。

やがて、パトカーのサイレン音が近づいて来たので、撃っていた連中は逃げ去ってしまう。

悔しがった黒川はその後事務所に戻って来る。

マリは、自殺した松宮方也について柳生さんが来ていたと報告した後、おかしいと思わない?殺された西島軍一郎、自殺した松宮方也…、みんな「メッサ」に繋がるじゃない…と鋭い推理力を見せる。

黒崎は、小磯奈々の口紅があやしい。それで殺されたのかもしれない。キスだよと話し、マリから嫌ねと顔をしかめられる。

再度クラブ「メッサ」にやって来た黒川は、裏口の近くに放置してあった駕篭を怪しみ、中に詰め込まれていた布を払いのけてみると、その下には、マダム青地美恵子の死体が詰め込まれていた。

その時、裏口から人が入って来る気配があったので、物陰に隠れた黒川だったが、入って来て駕篭の中の死体を発見したのが、小柳警部と長谷刑事だったのを知ると、自ら姿を現す。

すると、2人は、恐喝容疑で逮捕する、松宮から言って来たのだと黒川の手を掴もうとしたので、驚いた黒川はその場を振り払って外に飛び出すと、停めてあった車に乗り込んで逃走する。

やっぱりあの女だ!そう直感した黒川は、奈々のアパートを訪れるが、もう部屋には誰もいなかった。

その後、パチンコ屋に潜り込んだ黒川は推理をしてみる。

紫と松宮、須永と西島…、一方の死によってもう1人が浮かんだ。委託殺人なのだ!

松宮に脅迫があったと言うことは、須永にも同じことが起きる可能性がある。汚い手だ…

委託殺人を依頼した須永への恐喝だ。須永が危ない!

翌日、大須ビルから車で外出する須永を監視していた黒川は、タクシーを停めると、その後を尾行し始める。

須永は、自分の別荘へ到着する。

そこへやって来たのは、トップ屋の黒川哲郎(てつお)を名乗る辺見だった。

須永は猟銃を磨いていた。

須永が、バッグから札束を取り出すと、何ですかこれ?と嘲った辺見は、あんたは青地美恵子に殺しを依頼した。そして西島軍一郎はもういない。アフリカは宝の山。3000万くらいの金は安いと思いませんか?と猟銃を向けながら言う。

すると、須永は、無念そうにバッグの中に残っていた残金を取り出してみせる。

その時、辺見の持っていた猟銃が、入って来た小磯奈々に撃ち落とされる。

須永は持っていた銃で辺見を撃つが、その須永を奈々が撃って牽制する。

助かった辺見が奈々に礼を言うと、奈々は、美恵子をやったわね?私も西島の時、口紅を付けてしまうと言うミスを犯したと言いながら、テーブルの上に置かれた札束をバッグに戻し、これでやっと王様になれるとつぶやきながらそれを持って立ち去ろうとする。

そこに本物の黒川が立ちふさがり、須永に向かい、自分が本物のトップ屋の黒川だと名乗ると、青地美恵子はあんたの情婦だったんだろう?と話しかける。

そして、辺見に向かった黒川は、俺を襲ったのもお前か?と聞く。

しかし、辺見は、お前の名を騙ったのはすまないが、松宮の遺書にはお前の名しかないとあざ笑う。

辺見は拾い上げた猟銃で黒川を撃ちながら、俺が悪党なら、奴は悪魔だと須永を指す。

そして、その鞄を取ってくれ。お前にもやるよと誘って来たので、黒川は辺見に飛びかかると、殴り合いを始める。

その間、奈々がバッグを持って逃げ出したので、辺見はその後を追い始める。

2人は車に乗って逃走したので、黒川も車で追いかける。

辺見は、運転する奈々に銃を向けていた。

奈々は車を停めると、追って来た黒川の車の方へ逃げ出すが、その背後から辺見が発砲する。

倒れた奈々は持っていたバッグを崖っぷちに落とす。

そのバッグを取ろうと、崖っぷちに近づいた辺見は、足を滑らせて落下してしまう。

奈々に駆け寄って来た黒川は身体を抱き上げるが、奈々は、あなたを殺すチャンスはあったのよ…。負けたの私…。信じないわ…、誰も信じないわ…。現代の英雄はお金よ…とつぶやくと息を引き取る。

「第二の顔 その女の名は殺し屋」と題された黒川の記事が週刊誌の誌面を飾る。

一週間で忘れられる名前。それでもマスコミの歯車は廻っている…

黒川は、街角に消えて行くのだった。