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人間の條件 第2部 激怒篇

この第2部では、会社の同僚による裏切りと、戦時中の憲兵隊による残虐行為や拷問が描かれている。

つまり、醜い日本人像が徹底的に暴かれて行くのだ。

中国人捕虜と、何とか信頼関係を築こうと努力してきた梶だったが、その中国人からも信用を得られぬうちに、これまで彼を援護してきた沖島まで左遷されてしまい、完全に孤立してしまう。

そんな梶を精神的に支えるのは、妻の美千子だけになってしまう。

そして、もう1人、捕虜だった中国人の賢者王によるアドバイスが、梶の心に染み渡る。

こうした日本人批判は戦後だからこそ描かれた内容であり、自虐的な内容であればあるほど、敗戦後の日本人にとっては、戦争への反省材料として、熱く支持されたのだろうと思う。

極端から極端へ変わりやすい日本人には、うってつけの内容だったに違いない。

今観ると、こんなに自虐的に描かなくてはいけなかったのかな?と思いたくなるほど、日本人を絶望的に描いている。

実際の戦争を知る人は今や少なくなりつつある。

こうした映画も、そんな戦争の一端を知る手がかりになるはずだが、どのくらい事実が描かれ、どのくらいがフィクションなのか、今となっては判別すら難しくなっている。

なるべく冷静に観る必要性がある映画のように感じる。

ちなみに、本作で、憲兵隊から拷問を受けた梶が言うセリフ。「スリやかっぱらいじゃあるまいし、殴られて吐けるか!」は、「戦争と人間」の中で、やはり、特高から拷問を受けた山本圭がそっくり同じことを言っている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、五味川純平原作、松山善三脚色、小林正樹監督作品。

※劇中、今では差別用語と言われている表現も出てきますが、できるだけ映画の雰囲気を再現するため、言い換えないで使用しております。ご理解ください。

休暇を取り、山を久々に下りる美千子(新珠三千代)は、本社時代の友達だった靖子をさぼらせ、3人で食事して、りんご園に行きましょうとプランを立てていた。

しかし、夫の梶(仲代達矢)は、1時間だけ釈放してくれないか?本社の部長に会って、特殊工人を一般工人並にして欲しいんだと頼む。

美千子は、良いわ。2時間あげると笑顔で答える。

そこに、老虎嶺鉱山から、特殊工人たちが逃亡したとの知らせが来る。

それを知った美千子は、嫌よ私、あなたは公休を取ったのよ。沖島さんに任せれば良いじゃないのと夫を説得しようとするが、梶は、何故そんなに怒るんだ?たったこれだけのことで…と美千子の抵抗が理解できない様子。

美千子は、私の気持ちがわからないのねとつぶやくと、自分一人で街に行くと言う。

すぐさま、収容所に戻って来た梶は、逃げずに残っていた高を殴りつけている沖島の姿を見つけたので、それを止める。

沖島は、18人も逃げた。これからは俺のやり方でやると言い、王に向かい、お前に失望したよ。アホはアホなりにもう騙されないと不機嫌さを隠さない。

梶も、待つと言っていたのに…と王に語りかける。

このことをきっかけに、梶と沖島は、もう中国人達を信じないことにする。

黒木所長(三島雅夫)は、憲兵隊に逃亡報告したと言う梶に、どうするんだ?2割増産目標を達成した今、こんなことでごたごたしたくないと不機嫌そうだった。

沖島は、以前のように、中国人たちを殴って従わせるやり方に変えていた。

そんな中、古屋(三井弘次)が黒木所長に、沖島さんを梶が邪魔をしていると告げ口する。

そして、特殊工人たちをわざと逃亡させ、失敗させるんですと言う計画を打ち明ける。

黒木所長は、やってみたまえと古屋に任せる。

逃亡を聞きつけてきたのか、松田が梶に嫌みを言う。
スクリーンで観ている途中から、これは間違いなく名作だと感じていました。

ただ同時に、チャンバラシーンなどアクションがなく、きわめて地味な内容だったので、これは一般受けしないだろう。ヒットはしないだろうとも感じました。

興行的には予想が当たり、この映画はヒットしませんでしたが、名作であるとの個人的な判断は、その後も変わっていません。沖島は、中国人の集落にいた張を見つけて殴りつけていた。

梶は、陳に、怪我をした張を治療所に連れて行かせる。

治療所のベッドに横になった張は、古屋を呼んでくれと頼み、そこにやって来た古屋は、梶には傷は大したことないと言って、ここには来させない方が良いと陳に伝える。

その後、帰宅した梶は、沖島が酔って、家の前で待っていたことに気づく。

梶が、あんたが急に粗暴になったのは何故だ?と問いかけると、いつまでそんな調子でやっているつもりなんだ?と沖島は逆に聞いて来、俺は息が切れたんだ。邪魔になったら言ってくれ。きっぱり手を切るからと言う。

深夜、収容所の側で一人監視していた梶は、鉄条網の所で逢い引きしている高と楊春蘭の姿に気づく。

春蘭は持って来た食べ物を放り入れ、それを拾った高は、むさぼるように食いながら、逃げるときは連れて行くが、逃げたやつがどうなるか分かってからだ。王先生が言っていた。戦争は終わる。日本は負けるんだと話しかける。

そんなことよりも、春蘭には、今二人を隔てている鉄条網の存在の方が恨めしいらしかった。

二人が、愛していると言い合う様を覗き見していた梶は、自らを恥じたのか、そのまま帰って行くのだった。

街で出会い、りんご園でリンゴを穫った後、夜、二人で床に入っていた美千子に友人の靖子(小林トシ子)が、あんた、梶さんのレポ打っていた時、夢中だったわねと、かつてタイピスト同士だった頃を思い出して言う。

仕事のこと聞いてる?私だったら、しつこく聞いてみるわと言う靖子の言葉を、美千子は黙って聞き入っていた。

リンゴをもって自宅に戻って来た美千子は、一人で寝ていた梶を起こすと、昨日はごめんなさいと謝る。

私、良い奥さんでも、女でもなかったわ。約束してね。私に喜びだけではなく苦しみも与えてねと言う美千子を、目覚めた梶は抱きしめるのだった。

「二割増産突破記念表彰式」が行われ、黒木所長が表彰状を代読する。

その頃、給食室にいた陳に近づいた古屋は、雨の晩は逃亡には好都合だな。給食で収容所の中に入ったら、今夜逃げろと言え。梶が責任を取るから電気を切れと変電所に言いに行け。お前の生きる道はそれしかないんだと脅す。

関係者達による宴会が行われ、川島(小杉義男)などは、梶に、あんたの言う通りになったなどと、おべんちゃらを言う。

収容所の中に給食を運び込んだ陳は、近づいてきた高に、今夜、逃げるように伝える。

川島は、少しも酒を口にしようとしない梶に、酒合戦を申し込み、横で聞いていた沖島(山村聡)もやってみろと勧める。

その沖島自身も、岡崎(小沢栄太郎)からの売り言葉を買い、言い争いを始める。

宴会を終え外に出た梶は、陳に白麺の配給券を渡す。

受け取った陳は、何か梶に言いかけるが、何でもないです…とそれ以上は語らなかった。

梶が立ち去った後、陳は近くから姿を現した古屋の姿を見つける。

ずっと、陳が裏切らないように監視していたのだった。

宴会の座敷では、沖島と岡崎が取っ組み合いをしていた。

陳は一旦、変電所の所までくるが、すぐに逃げ帰り、金のいる慰安婦宿にやって来る。

金に、僕はきっと殺されると訴えた陳だったが、金は冷たく、今度は日本人が考えたのだと言い聞かす。

陳は、君が引っ張り込んだんだと責めるが、金は楊春蘭を呼ぶと、高に、今夜は危ないと言っておいでと伝える。

金は、春蘭の帰りを酒を飲みながら、陳と二人で待ち受けていた。

酒を勧めても陳が飲もうとしないので、金は自ら口に含んだ酒を、口移しで陳に飲ませる。

やがて戻って来た春蘭は、高と会えなかったと言い、本当に逃げると言ったの?1人で逃げたら、死んでやる!と興奮する。

金は陳に、電気を切らないと日本人を怒らせたら大変よと囁くが、陳は悩み続ける。

やがて、一番良いのは、梶さんに打ち明けることかもしれないと言い出し、部屋を飛び出して行く。

そんな陳に、変電所に行くのね?と声をかける金。

収容所の鉄条網の所へ来た陳は、隠れていた古屋に捕まってしまい、梶に言いはしまいな?と追求され、言った通りにしたかどうかすぐ分かる。裏切ったら、お前も脱走誘導したとして射殺すると脅される。

観ると、鉄砲を構えた日本兵が、何人も溝の中に身を隠し、逃走者を射殺するため待機していた。

その夜の午前1時前

収容所からぱらぱらと、特殊工人たちが闇に紛れて外に出て来る。

陳はたまらなくなり、変電所はまだ…と、古屋に、電気を切らせていないことを伝えようとするが、その時、サイレンが鳴り響く。

鉄条網に手をかけた特殊工人の3人が感電死、それを観た陳も又、ふらふらと鉄条網に近づくと、自ら鉄条網に抱きつき感電死する。

翌朝、死体を前に、まさか陳が首謀者だったとは思いませんでしたと、梶の前で古屋はとぼけてみせる。

そこに、高を慕って駆けつけてきた春蘭は、高が生き残っていたことを知り、安堵のため泣き崩れる。

そんな春蘭に梶は、失敗した男の顔を見て帰れと叫ぶ。

その収容所に、沖島から教えられたと言いながら美千子もやって来る。

梶は呆然としながら、日本人ってことは俺のせいじゃない。しかし、一番罪深いのは、俺が日本人だってことだ。畜生!古屋のやつ…、あいつをのさばらせているのは所長なんだ!と吐き捨てる。

そんな梶に、帰りましょう。おみおつけを飲んで元気になりましょうと美千子は声をかける。

ある日、宴会での喧嘩で出張を命じられてトラックに乗り込む沖島に、梶は、特殊工人を一般工人にしてくれるよう、憲兵隊に言ってくれと託す。

沖島が乗ったトラックが出発すると、すれ違いにサイドカーでやって来たのが憲兵隊だった。

山での作業中、高は他の仲間達から孤立していた。

噓の逃亡計画を広めた張本人だと思われていたからだ。

仕事中、数人の仲間が話し合っている所に岡崎が近づいてきたことに気づいた高は、逃げろと忠告し、自ら囮になって、別方向へ走り出す。

それを見つけた岡崎は、逃亡だ!と叫ぶ。

黒木所長や梶らは、やって来た渡合憲兵軍曹(安部徹)から、500人特殊工人を払い下げてやると伝えられていた。

そこに、岡崎がやって来て、逃亡者が出て7人捕まえたと言う。

その話を聞いていた梶は、作業中、柵の中で逃げたのが逃亡ですか?と疑問をぶつける。

しかし、その場にいた河野憲兵大尉(河野秋武)は、我々が逃亡と認めたんだ。大尉殿、指示をお願いしますと言う渡合憲兵軍曹(安部徹)に、逃亡者達の処刑を命じ、その立会人として梶を指名する。

梶はその後、牢に入れられていた高らに会いに行き、お前らは逃亡と見なされたと伝える。

高は、調べてみろ。俺が調べて所では逃亡ではないと言い張るが、梶は、お前達は俺を信じなかった。今度も又、俺を信じない方が良い。あいつらには権力がある。私にはない。やってみるだけだ。明日の夕方まで…と答えるだけだった。

梶は黒木所長に、処刑に中止を懇願に行くが、今は戦時下だよ。平治の理論は通じない。不服なら、自分で調べたら?と言われただけだった。

事務所に帰った梶は、本社にいた沖島からの電話に出ていたが、諦めろと言われ愕然とする。何とかもう一度頼んでくれと懇願する。

収容所にやって来た梶は、王(宮口精二)に、正直に言おう。処刑が中止される可能性は100に1つだと打ち明ける。

王は絶望的になった梶に、あんた自身が重大な岐路に立っている。

人道主義の仮面をかぶった殺人者になるか、人間と言う美しい名に値するものになるか。

この山の日本人全体が殺人鬼の仲間ではないでしょう。その意思を集めたらどうでしょう?

あなたは、自分が思っているほど人間を信じていない。人間には、人間の仲間が、いつでも必ずどこかにいるはずですと伝える。

夜、本社の沖島からの連絡を待って事務所に一人残っていた梶の元にやって来た楊春蘭は、高の身を案じ、あの人どうなりますか?いつ出て来るのですか?殺すんじゃないでしょうね?などと問いかけて来る。

その時、電話が鳴り、沖島から、明日まで待て。理事長を説き伏せる気だと言って来る。

その後も残っていた春蘭に、帰ってくれないかと頼む梶だったが、あの人を助けて!逃げやしません。戦争が終わったら結婚するんです。どうか殺さないで下さいと春蘭は命乞いして来る。

帰宅して寝ようとした梶だったが、どうしても寝付けない。

横に寝ていた妻の美千子は、私、本当に安心して良いのね?と聞いて来るが、梶は寝なさい。俺も寝ると梶は言うだけ。

深夜のサイレンが聞こえて来た時、突如起き上がった梶は、あいつらを逃がしてやる!あの7人を逃がしたら、後はどうなっても良い!と言いながら外出しようとするが、美千子も飛び起きて、あの人逃がしたら、あなた殺されます。大声出しますと言いながら、梶の身体にしがみついて来る。

梶は、このままでいたら、俺は人間ではなくなるんだ!と美千子を振りほどこうとするが、じゃあ、私の言うことはまるで犬と同じなの?約束したじゃない!と美千子も離さない。

玄関口で梶を抱きしめた美千子は、ごめんなさい。あなたの気の済むようにやって頂戴。後で、私が邪魔をしたと恨まれたくないの…とつぶやく。

どうしたら良いのか判断がつかなくなった梶は、美千子と抱き合ってただ泣くだけだった。

翌朝、サイドカーでやって来た渡合憲兵軍曹は、すでに山の広場に並べられた7人の特殊工人達の側にやって来る。

その処刑の様子を、少し離れた所から、他の特殊工人達も王を先頭に観ていた。

渡合憲兵軍曹は、一人の工人を大きく掘った穴の前に連れて来ると、その場で日本刀を水で濡らし、いきなり首を斬り落とす。

そして、側に立っていた梶に向かい、後で連中に言っておけ、斬られて良ければいくらでも逃げろとと声を書ける。

7人の1人、高は、殺される理由がない!人殺し!これが貴様の正体だ!人間の釣らしているが、実は獣だ!と、穴の側に呆然と建っている梶に語りかける。

目隠しされることを拒否した高は、中国万歳!と叫ぶと、いきなり暴れ出す。

しかし、抵抗もむなしく、穴の前で渡合憲兵軍曹に斬り殺されてしまう。

梶はたまらなくなって、止めていただきます!と渡合憲兵軍曹に頼み、日本刀を突きつけられると、それが怖くて今まで動けなかった。斬ってみろ!と立ちはだかる。

渡合憲兵軍曹は、そんな梶に、貴様のような八路の仲間は斬ってやるとすごむが、その時、離れた所から観ていた王が、これ以上、同胞を殺させるな!と叫び、特殊工人達も一斉に声を上げながら憲兵隊に近づいて来る。

憲兵隊は、銃を空に向かって発砲し威嚇するが、一旦ひるんだかに見えた王達は、又歩き始める。

その迫力に動じた渡合憲兵軍曹は、良し、処刑は中止してやると言い出す。

感極まった梶は、穴の中に落ちて死んだ、高ともう一人の工人の死体を観て泣き出す。

渡合憲兵軍曹は、そんな梶を隊に連行すると言い、サイドカーを運転してきた田中上等兵(福田正剛)に、そのお客さんを低調に扱えよと命じる。

梶は、田中上等兵の運転するサイドカーに乗せられ、処刑場から走り去って行く。

その様子を、王達中国人工人はじっと見守っていた。

その後、梶の自宅にやって来た渡合憲兵軍曹は、驚く美千子に対し、梶はきょうは帰らないと告げ、家宅捜索を始める。

美千子は、どうかしたんでしょうか?と聞くが、八路の首を斬らせるなとおっしゃるんでねと答えた渡合憲兵軍曹は、梶の蔵書を取り出すと、こんな毛唐の本を読むから、今日のようなことになるんだとつぶやき、机の引き出しの中のものまで美千子に取り出させるのだった。

その頃、憲兵隊に連れて来られていた梶は、イスに縛られ、田中上等兵から、棒やベルトで殴られていた。

そこにやって来た渡合憲兵軍曹は、もっと丁重にしろと田中上等兵を焚き付けるが、梶は、スリやカパライじゃあるまいし、殴られて吐くようなことはない!と言い張る。

渡合憲兵軍曹は、捕虜が18名逃亡したのを報告しなかったな?と追求して来るが、逃亡したことにしないと、そっちのメンチが立たないのか?と反論する。

美千子は、急に岡崎まで家にやって来たので驚く。

岡崎は、梶があんなことをするとは思わなかったと言い、美千子に同情する振りをするが、美千子は気丈に、あなたに出来ることは、7人は逃亡ではなかったと証言なさることですわと言い放つ。

憲兵隊では、渡合憲兵軍曹が、王は捕まえたぞと、牢に入れられた梶に告げていた。

それを聞いた梶は、王の処刑はいつですか?と皮肉る。

牢の壁には、王享立の名が刻まれていた。

高…、お前は暁を観ずに死んだ。だが、お前の同胞は、暁の中に葬ってくれるだろう…、そう梶は考えていた。

翌朝、梶は牢を出され、面会室へ連れて行かれると、そこに美千子と沖島が来てくれていた。

梶は、こんな所に来ちゃ行けない!早く帰りなさいと妻を叱りつけるが、美千子はその場に同席していた渡合憲兵軍曹に、持参してきた寿司を食べさせても良いでしょうか?と尋ね、許可を得る。

渡合憲兵軍曹が気を利かせ部屋を出て行くと、梶は寿司を頬張りながら、これから何事によらず、沖島に相談しなさいと美千子に伝える。

ところが、それを聞いた美千子は、沖島さん、転勤なさるのよと言うではないか。

沖島は面目なさそうに、部長と大げんかして、小さな山に島流しだ。俺の後に古屋が座る。元の木阿弥だと悔しがる。

何か欲しいものは?と聞く美千子に、何もないと答えた梶は、君には色々教わったなと答えるが、そこに戻って来た渡合憲兵軍曹は、特別の計らいをもって釈放してやる。お前の後ろには、俺の目が光っていることを忘れるなと言い出す。

山に戻った梶は、黒木所長に挨拶に行くが、所長は、来ているよ、臨時召集令状だと言いながら書類を見せる。

梶は、何かあると思った。使うだけ使って、お払い箱か。厄介払いには良い切り札だ。上役信じるより、売春婦を信じた方が良いと言い捨てて部屋を出ようとするが、そんな梶に向かって黒木所長は、古屋くんに引き継ぎ頼むよと冷たく言いながら、王享立と30人が逃げたよと教える。

それを聞いた梶は、思わず笑い出し、巧くやったぞ〜!逃亡するが良い。1人残らず逃亡するが良いと叫び、これから古屋をひっぱたくつもりだったと愉快がる。

外に出た梶は、春蘭 から日本鬼とののしられる。

一緒にいた金東福(淡島千景)は梶に同情し、怒ることない。梶さんが良い人だってこと知ってる。でも、高さんの命、間に合わなかかったからねと慰める。

山を下りかけた所で、迎えに来た美千子に出会ったので、抱き合いながら梶が召集令状を出してみせると、そんなことって…、あなたは、召集免除の約束でここに来たんじゃない!こんなことって…と美千子は絶句する。

梶はそんな美千子に、もうどうすることも出来ない。俺は何もしなかった。今度こそ君と2人で何かしようと思って帰って来たと告げる。

あなたが何をしたって言うの?こんなに痩せて、傷だらけになって、その上、戦争にも駆り出されて…と美千子は嘆く。

そんな二人に、近づいてきた楊春蘭が、日本人の鬼!と叫びながら、石を投げつけて来る。

それを避けながら山を降りると、梶は美千子に帰ろう。俺たちにはまだ24時間あるんだと伝えるのだった。