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人間の條件 第1部 純愛篇

おそらく、公開時には、休憩を挟んで、1部と2部が連続上映されたのだと思うが、DVDでは、この1部だけが第1回分に納められている。

主人公梶は、特に政治信条など明らかにしていないが、戦争に反対している立場の人間である。

ただ、当時、そのようなことを公言すれば、劇中で影山が言っているように、監獄に入れられるしかなかった時代である。

労働者の管理の仕事をしており、中国人を非人道的に扱うやり方にも反対している。

こうした考え方は、今では何も不思議ではなもなんでもない考え方だが、戦中は異端であった。

非国民とののしられても仕方がない考え方だったのだろう。

この第1部純愛篇では、そんな梶と、彼を心から愛す美千子が結婚し、召集免除を条件に、奥地の鉱山に赴任して、悲惨な中国人達の扱いを目の当たりにし、人間として追いつめられて行く様子が描かれている。

徴兵と言う望まない現実から逃避する為選んだ道が、又別の厳しい現実を背負わされることになると言う皮肉。

頭の中だけ、理屈だけで、現実を否定し、修正しようとしていた梶は、どんどん自らの非力さを思い知らされて行くことになる。

そして、妻との新婚生活も忘れるほど心が荒んで行く…

老虎嶺鉱山での工人たちの扱い、貨物列車で連れて来られた特殊工人と言う名の、中国人捕虜達の悲惨な様子、こうした所を、この映画は出来るだけリアルに描いており、思わず息を飲むほどの迫力がある。

登場しているエキストラ達の存在感も凄い。

今のCGなどでは、到底再現できない説得力がそこにある。

中国人を演じているのも日本人俳優で、劇中での彼らは当然ながら中国語を話しており、それが巧いか下手かの判断はしかねるが、その異国語でのセリフを覚えるのはさぞかし大変だったに違いない。

達者な俳優達が顔を揃えているが、安部徹が演じている憲兵は迫力満点。

どちらかと言うと嫌な人物を演じている淡島千景と言うのは珍しいように思える。

山村聡や小沢栄太郎などもまだ若く、単なるセリフだけの座り芝居ではなく、普通に身体を動かして演じているのも新鮮に見える。

一体どこで撮っていたのか知らないが、広大な中国でロケをしているかのように見えるから不思議である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、五味川純平原作、松山善三脚色、小林正樹監督作品。

※劇中、今では差別用語と言われている表現も出てきますが、できるだけ映画の雰囲気を再現するため、言い換えないで使用しております。ご理解ください。

昭和18年、満州

雪の町中を行進する兵隊の一団。

それを避けるように人気のない街角を歩く男女。

美千子(新珠三千代)は、結婚を申し込んだのに逃げている梶(仲代達矢)を追いながら、いつ赤紙が来るか分からないって言うんでしょう?と梶の気持ちを代弁する。

それを聞いた梶は、決意したかのように、僕の寮に連れて行くと言い出し、美千子もいいわ!と返事を返すが、梶は急に、やっぱり、君の寮に帰りたまえと言葉を翻したので、美千子は試したのね?卑怯!分かったわ…と言い捨てて帰って行く。

南満州鉄鋼株式会社の調査課に勤めていた梶は、廊下で会った影山(佐田啓二)から、お別れに来た。明日の晩だと知らされる。

召集令状は5日前に来ていたが、毎晩飲んでいた。今、後悔しているのは、惚れた女を女房にして、その腹に、命の一滴を命中させておかなかったことだと影山は言う。

その後、梶とすれ違いタイピスト室に戻って来た靖子(小林トシ子)は、梶が怒った顔をしていたと教えると、ぶつかってみるのよ!と、隣でタイプを打っていた同僚の美千子にアドバイスする。

梶を呼んだ本社部長(中村伸郎)は、梶が書いた「植民地では、支那人を人間的に扱えない」と言う研究書を読んだと言い、100kmも離れた老虎嶺鉱山に行ってもらい、実地にやってみる気になったら、招集免除にしてやろうと思うと言う話を聞かされる。

その夜、影山と食事をした梶は、戦争反対をすると言うことは、監獄で終身刑になることだと忠告される。

老虎嶺で中国人を使う仕事というのは羊飼いの犬になるようなものだが、それで良いじゃないかと言う。

翌日、駅から列車に乗って出発する影山を見送りに来ていた梶だったが、そこに美千子もやって来る。

走り出した列車を見送りながら、美千子は、もう帰って来られないかもしれないわと、影山の将来を不安視する。

梶は、僕は行かないと言い切り、新しい任地となる老虎嶺には中国人の集落しかなく、あるのは鉄鉱石だけだ。そんな所へでも一緒に行ってくれるかい?と聞き、美千子は、行くわ、どんな所へでも…。召集令状が来たら、あなたの子供を産みたいと思っていたくらいと答える。

後日、老虎嶺に向かうトラックの荷台の上で、熱いキスをかわす梶と美千子の姿があった。

二人は結婚したのだった。

老虎嶺鉱業所には、長い中国人の列が出来ていた。

鉱夫達の身体検査をしているのであった。

その検査をしていた沖島(山村聡)が、やって来た梶夫婦を観て「本庁から来た梶くんか?植民地的労務管理の諸問題、読んだよ」と声をかける。

沖島は、さっそく梶を所長に合わせに行くが、所長は会議中だと事務所にいた古屋(三井弘次)が言う。

会議室では、黒木所長(三島雅夫)を始め、現場監督達が集まっていた。

そこに、沖島が梶を連れて行くと、黒木所長はちょうど良いと言いながら、その場にいた岡崎(小沢栄太郎)、小池(稲川善一)、川島(小杉義男)、樋口(玉島愛造)と言ったメンバー達を紹介して行く。

梶は、自分の計画として、鉱夫の給与制度を改正したい。給与が上がれば、労働意欲も上がるはずだと言う持論を紹介するが、聞いていた岡崎らは、ここには大小200組もあり、給与を上げても、ピンハネなどがないとは言えないし、所長も、机上論だけでは巧く行かないと冷笑する。

しかし、梶は負けずに、今までのやり方で効率が上がってないのは、現実はそうでもないか、机上論が間違っていたかですと反論する。

所長は、とりあえず、梶の言う通りにやってみるよう許可を出す。

その後、さっそく実務についた梶は、鉱夫の給与のピンハネをやる過ぎるとの理由で、牟田(永田靖)、小林(磯野秋雄)、金田(浜田寅彦)らが仕切っていた1班を解散させることにしただったが、当然、3人からは猛反発を食らう。

しかし、梶は、自分は現場の岡崎じゃない!仕事が捗らないのは宿舎や食べ物が悪いと言うが、もっと悪いのはあんた達だと糾弾する。

一人が文句を言うが、沖島が怒ったので、3人ともその場は諦めあっさり帰るが、そのことが沖島に、何か連中、考えているな?と警戒心を抱かせる。

梶と共に現場に行ってみると、岡崎が3人に何か指示を出している所だったので、沖島は、明日から働くな!その代わり、飯は食わせないと怒鳴りつける。

その夜、梶が帰宅すると、そこに岡崎が待ち構えていた。

岡崎は、俺の仕事が気に食わないと、工人を回さないと言ったそうだなとすごんで来たので、樹種に注意しただけだと梶は答える。

俺たちにとっては石を出すのが大事だ。人間とどっちが大切なんだと岡崎が言うので、人間を大切にすれば石は出ると梶は返答するが、20年も考えていることを代えるつもりはないと岡崎は言い捨てて帰って行く。

ある日、事務所に、河野憲兵大尉(河野秋武)と渡合憲兵軍曹(安部徹)がやって来て、緊急増産するので特殊工人600人回してやると、所長と梶、沖島らに伝える。

特殊工人とは、北支の捕虜だと言う。

渡合憲兵軍曹は、特殊工人と一般工人を接触させてはならない。鉄条網で包囲し、電流を流すこと。食事、労力は任せるが、逃亡させるなと一方的に命じ、電流はどのくらい流せる?と聞くので、黒木所長は、3000ボルトくらいですが…と答える。

梶は、準備は1週間では出来ないかもしれないと困惑するが、憲兵二人の顔色を観ていた沖島は、全力を挙げて準備します!と答える。

その特殊工人がやって来る日、指定の線路脇に到着した梶に、中国人陳(石浜朗)は、母親が病気なので、倉庫の白麺を分けてもらえないだろうかと頼んでくる。

しかし、梶は、気の毒だが、規則でそれは出来ないと断り、今から来る人の中には、君のお母さんの友達もいるかもしれないが、平気か?と尋ねる。

陳は、自分は日本人に逆らわないように育てられたと答えるだけだった。

貨物列車が到着し、そこに、馬でやって来た渡合憲兵軍曹は、特殊工人を渡すと言いながら、梶達が7人しかいないことに気づくと、7人で600名が引率できるか!と怒鳴りつける。

梶に年を聞いた渡合憲兵軍曹は、女房はいるのか?と重ねて聞き、絶対、特殊工人を逃亡させてはならんぞと釘を刺し帰って行く。

貨車の扉を開けると、中から、力尽きた老人達が溢れ出て来る。

陳が大変ですと呼ぶので、その貨車へ行ってみると、中で2人が死んでいた。

外に出た600人近くの特殊工人たちは、一斉に食料を積んである荷馬車に駆け寄ろうとする。

沖島は、いきなり食わせるな!死ぬぞ!と叫び、梶も、必死に、荷馬車に群がる特殊工人たちを止めようとする。

しかし、600名の数の前にはどうすることも出来ず、沖島は荷馬車に飛び乗ると、馬を走らせて、その場から脱出する。

特殊工人を連れ、老虎嶺に戻って来た梶は、黒木所長に、1ヶ月は休ませてくれ。連中は衰弱し切っていますと進言する。

所長は、もう1度だけ、君の意見を尊重しようと冷たく答え、古谷くんから聞いたけど、君の工人、150人ばかり引き抜かれたそうだよと教える。

特殊工人600人を収容した場所では、整列させた中国人を前に、陳が犬を鉄条網に向かって投げ感電死するのを見せ、沖島が鉄条網には電流が流れているので逃げられんと教え込んでいた。

会議室では、黒木所長が、明日から増産突撃月間になるので、戦争完遂のため何としてでもなし遂げて欲しいと発破をかけていた。

岡崎は、引き受けたと張り切り、現場に戻ると、突破したやつには、所長から賞金を取ってやると、工人たちに伝えていた。

特殊工人が整列した収容所にいた梶は、先頭に立っていた中国人の一人王享立(宮口精二)にタバコを渡そうとするが、王は断り、我々は軍人じゃないと言う。

高(南原伸二)と言う中国人は、日本人を憎んでいるらしく、いつも睨みつけて来る。

沖島は、そんな中国人特殊工人に対し、お前らは我々に管理されているんだと念を押す。

その時、陳は梶に、梶さんは、あの人達に逃げられたら困りますね。あの人達、村で働いていた。ここで働いて、何楽しいですか?と語りかける。

病人以外は山に出て行った収容所にやって来た黒木所長は、工人達の間に仮病が流行らないように、宿舎を案内してくれんか?と梶に頼み、檻の中にいるものは何を考えるかね?と問いかける。

自由ですと梶が答えると、所長は、女だよと答える。

その頃現場では、動けなくなった老人特殊工人を鞭打っていた岡崎が、それをかばおうと抵抗した別の特殊工人に鉱石を投げつけ大怪我を負わしていた。

その後、近くの慰安婦宿にやって来た梶は、代表として出てきた金東福(淡島千景)に、30人くらい、特殊工人のために回してくれと、所長からの依頼を恥ずかしそうに伝達する。

その後、山に戻って来た梶は、岡崎にやられて運ばれて行く特殊工人を観る。

工員が死んでいたと知り憤慨した梶は、所長に会いに行き、こんなことが起こるようでは工人管理は出来ませんと抗議する。

しかし、黒木所長は、愛国心のあまりだよ。戦争の為には、小さな過失くらい見逃さなくては。岡崎を告訴するなら、私を共犯で訴えてくれと、岡崎をかばう。

そこにやって来た沖島は、梶を連れて部屋を出ようとするが、そんな二人に、竪坑から落ちた事故と言うことにしろと所長は命じる。

収容所に戻って来た梶に、王が、仲間が1人いないと話しかけてきたので、死んだと教える。

それを聞いていた高は、殺さないと言っていたのに殺した!と激しく抗議して来る。

そんな収容所に、慰安婦の女達が約束通りやって来たので、それを観た高は、日本人の作戦に気づき、淫売など寄越しやがってと憤る。

自分たちを蔑視したような高に、一人の慰安婦楊春蘭(有馬稲子)が、あんただって、好きで石を掘ってないだろう?と文句を言う。

女達の立場に気づいた高は、悪かったと素直に謝罪する。

その日、帰宅した梶は、何も知らない妻の美千子が、鶏が卵を産んだなどと無邪気に報告するのも聞かず、俺は人殺しの仲間だ。女30人と男600人がどうなるか…。もう誰も、俺の言うことを聞かないだろうと落ち込む。

そんな夫の姿を観た美千子は、つまんないわ。あなたは特殊工人が来てから、どこかに行ってしまったと、自分との家庭生活を忘れたかのような夫への不満を口にする。

さらに、あなたは一日働いているけど、私は一日家の中に入るだけで働いていないような気がする。これでは奥さんと家政婦の違いないわねとぼやくので、梶は悪かったと謝る。

その頃、王は、慰安婦の金から、あなた逃げたいのね?と話しかけられ、この不幸の原因を考えるのだと答える。

その後、金は、朝鮮人の張命賛(山茶花究)から、金儲けの片棒を担がないかと相談を持ちかけられる。

儲けは山分けだと言うので、金は興味を持ったようだった。

王に近づいてきた高は、イタリアが降伏したそうだと最新情報を伝える。

王は、この戦争は、後半年か1年で終わるだろうと予想する。

ある日、金に頼まれ饅頭屋にやって来た陳は、店主の饅頭屋の親爺(東野英治郎)に白麺を1袋譲ってくれないかと持ちかけるが、親父は、大あばたに頼んでみるんだなと言うばかり。

その後、陳は近づいてきた梶に気づき、その場を逃げ出す。

倉庫にやって来た梶は、机の上に足を乗せ、水虫の薬を持ったまま応対する倉庫番松田(芦田伸介)の態度を叱責する。

その頃、大畑の手引きにより倉庫内に忍び込んでいた陳は、人目を盗んで白麺の袋から粉を少し小袋に詰め外に出ると、金の元へ逃げて来る。

怯えている陳を優しく抱いた金は、変電所に行って、友達の崔(織本順吉)に頼み、3分間だけ収容所の鉄条網に流れている電流を切ってもらってくれと耳打ちする。

金は色仕掛けで、ウブな陳を利用していたのだった。

その頃、倉庫を見回りに来た松田は、床にこぼれていた白麺の粉を発見していた。

松田は、会社の事務所にいた陳の元に来ると、梶の観ている前で、白麺を盗んだな?と追求し、許してやっても良いが、後学のため、あんたがどんな処置をするか観たいと思ってねと梶に迫る。

梶は驚き、陳に問いただすと、やりましたと答えたので、思わずその場で殴りつけ、松田に対しては、満足か?と睨みつける。

顔を腫らした陳は、外に出た所で美千子に出会い、どうしたのか?と聞かれたので、何でもないです。梶さん、日本人、私、中国人、これはそう言うことですとだけ行って帰って行く。

慰安婦宿に再びやって来た陳は、金に会いたがるが、金はその時、張と会っていた。

陳が来たことを知った金は、張を部屋に残し、自分達は楊春蘭の部屋を借りに来るが、春蘭は、高のことが忘れられないと言いながら部屋を出て行く。

金は、ウブな陳を又色仕掛けで、変電所に行くよう説得するが、その様子を張が、こっそり覗きに来る。

その後、変電所に来た陳から要求を聞いた崔は、サイレンが鳴る午前1時の2分間だけ、電気を切っても良いと承知する。

その話を聞いていた陳が、何気なく、近くにあった機械のスイッチに触ろうとしていたので、崔は、気をつけろ!3,300ボルトの電流が流れているんだと注意する。

その夜も、慰安婦達は又収容所にやって来た。

その際、金は出会った王と眼で合図をする。

その頃、帰宅した梶は、美千子が揚げたてのドーナツをおやつとして出して来て、粉はどうしたのかと聞く梶に、もらったの、岡崎さんの奥さんに…と言うので、思わず、返しなさい!と怒鳴ってしまう。

美千子は、どうしてなの?謝りに来たのよと困惑するが、梶が、殺人犯が盗んだものか。そんな思いやりはいらんよと言うので、これが沖島さんの奥さんからだったらどうするの?と聞くが、やはり梶は、断るよと言う。

そんな梶に美千子は、陳さん、殴ったでしょう?やりたくなかったはずよ。人前で顔を潰されたからやったのよ。あなた、みんなが何て言っているか知ってる?あなたが1人で良い子になりたがっているって…と伝える。

収容所内では、高が春蘭に、戦争は中国の勝利で終わるんだと教えていたが、春蘭は今の方が良いわ。そんな日が来たら会えなくなると答える。

高は、今、脱走計画があるが、君がいる限り、俺は逃げないと約束する。

その頃、梶は、自分の態度を反省し、高と春蘭を結婚させてやろうと思っていると打ち明けながら、美千子と抱き合っていた。

翌日、出社した梶は、特殊工人が90名も脱走したと電話で連絡を受け、慌てて、沖島と共に収容所へ向かう。

逃げずに残っていた高や王に、あれこれ詰問する沖島だったが、梶は、冷めた口調で、逃げたいやつは逃げろとつぶやく。

その連絡を受けた黒木所長は、憲兵隊への弁明もよく考えておくようにと梶に伝える。

後刻、渡合憲兵軍曹がやって来て、沖島を殴りつけると、人材が足りないから管理が出来ないと正直に事情を説明した梶には、正直な所は認める。今度だけは見逃してやると言いながらも、今後の責任は貴公に問うことになると言い残して帰る。

梶は、もっと話し合うんだと、部屋を飛び出そうとした沖島を止め、王や高らを料理屋に呼ぶと、話し合いの場を持つことにする。

梶は、とにかく俺を信じて欲しいと中国人達に頼むが、楊春蘭と結婚させてやると言われた高は、聞きたくない。日本人はあれやる、これやると言って、実行したことがないと不信感を募らせる。

梶は、今後、待遇を、一般工人と同じにすると言ったらどうだ?と王に問いかける。

王は、待つと約束してくれるが、彼らを収容所に戻した後、彼らは信じてくれたかね?と不安がる梶に、沖島は、気はそう思いたいんだろう?と冷ややかにも聞こえる答えをする。

翌日、梶は、気分で、特殊工人たちを山へ連れて行こうと思うと言い出す。

それを聞いた沖島は、逃がしたいんだろう?と問いかけ、首が飛ぶのはこの俺だ、忘れんでくれと釘を刺す。

山に来た梶は、陳に、俺は融通が利かないんだと前置きし、変電所の崔ってお前の友達か?と質問し、もし、やったんなら、もうやらないようにと言ってくれと頼む。

その日、帰宅して入浴した梶は、連中が何かを警戒している。逃げない…と不思議がる。

そして、美千子に一緒に風呂に入らないかと誘うのだった。

同意した美千子は、特殊工人が落ち着いたら、街に出てみないと誘う。

梶は、休暇を取るよと約束する。

翌日、その話を会社で知った古屋は、土曜から3日、梶が休暇を取るので、沖島には気をつけろと、張にこっそり教えていた。

売春宿の金を訪ねてきた張だったが、今、陳が会いに来ていると言う。

陳は完全に、金の色香の虜になっていたのだ。

外に出てきた金は、手引きは嫌だと坊やが言っていると張に伝える。

張は、泊めずに返せよと金に念を押す。

売春宿から帰る陳の前に現れた張は、電流を切らせろと迫り、崔がいるのは金曜の夜だと怯える陳に、言うことを聞けば、金はお前の女にしてやる。嫌だと言ったら、生きちゃおかせないぜとすごむのだった。