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情無用の罠

一応、原作物のミステリだが、当時の東宝のプログラムピクチャーを見慣れていると、大体、お約束の役柄を演じている役者が多いので、その人物が出て来た段階で、大体犯人の推測がついてしまう。

元ヤクザであるために、身に覚えのない殺人事件の容疑者になってしまった主人公が、独力で犯人を捜そうとする展開は、良くある通俗パターンではあるが、なかなか手際良くまとまっている。

この当時の福田純監督作品にしては、そんなに悪くない出来なのではないだろうか?

水野久美がミステリアスな女に扮し、ラストで主人公を愛してしまったのだと告白した直後に殺されると言うパターンは、「怪獣大戦争」などとも重なるが、清純派お嬢様タイプの女優が多かった当時の東宝の女優陣の中で、この手の役が出来るのは彼女しかいなかったのかもしれない。

そのため、この時期以降の水野久美は、何となく似たような「ヴァンプっぽい女」を演じる事が多くなるが、それは彼女の女優人生に取ってラッキーだったのだろうか?

型にはまったような役柄が多かったと言う恨みはあるものの、他に似たタイプの女優がいなかった当時の東宝内では、仕事の需要は多かったはずである。

この作品のもう一つの見所は、不気味な殺し屋を演じている田中邦衛が観られる事だろう。

前年の黒澤映画「悪い奴ほどよく眠る」に登場した殺し屋にダブるキャラクターだが、「若大将シリーズ」の青大将の人気が出始めた頃から、あまりお目にかからなくなる徹底した悪役だけに、それがたっぷり観られるだけでも貴重な作品と言える。

まだどこかしらあどけなさが残る浜美枝が、不良っぽいホステスとしてちらり登場しているのも楽しいし、他の作品では、ちょい役でしかお目のかかった事がない草川直也が、水野久美の夫役と言う、かなり重要な役柄を演じているのにもちょっと驚かされたりする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、飛鳥高「死を運ぶトラック」原作、須崎勝弥脚本、福田純監督作品。

夜の工事現場に一発の銃声が響き渡る。

うつぶせに倒れた女の死体の手の先に「M-2」と荷台後部に記されたミニチュアのトラックが落ちていた。

タイトル

翌日、実際に「M-2」と荷台後部に書かれたトラックが工事現場にやって来て、荷台に積んで運んで来た砂利を落として走り出そうとしたとき、一人の男が飛び出して来たので、トラックを運転していた二宮三郎(佐藤允)は、危ねえじゃねえか!と怒鳴りつける。

トラックの前に立ちはだかったのは、井崎刑事(中谷一郎)だった。

井崎刑事は、詐欺、恐喝、傷害などの、不起訴ながら前歴がある二宮の夕べのアリバイを聞いて来る。

二宮は、今は足を洗ってまじめにやっているんだと腹を立てるが、刑事が取り出してみせた「M-2」と書かれたトラックのミニチュアにお前の指紋が付いていたと指摘されると、付いてて当然だ。くれてやったものだからと認めるしかなかった。

誰にやった?と聞く井崎刑事に、小林と言う女だと二宮が教えると、井崎刑事は小林きく江か?と確認する。

忙しいと言う二宮のトラックの助手席に乗り込んだ井崎刑事は、車を走らす二宮に、重ねて、昨日、仕事がはねた後のアリバイを聞いて来る。

(回想)二宮は、昨日は4時頃早めに上がり、森島運輸の事務所に戻った所で、社長の森島(平田昭彦)から声をかけられる。

森島は、早めに帰って来た二宮が、今日のノルマは終わらせたと言いながら嬉しそうにしているのを観て、あまり深いりはするなよと注意しながらも、事務所内の自分の部屋で着替え始めた二宮に、新しいネクタイでもして行けと小遣い銭を渡す。

二宮の部屋の棚には、ミニチュアカーが何台も置いてあった。

彼女へのプレゼントに1台あげようと思っているんだが…と迷っていた二宮の言葉を聞いた森島は、トラックのミニチュアを選び、やるんなら、これが似合ってるぞと勧める。

二宮がトラックでやって来た約束の場所で待っていたのは、まだ名前も知らない女(水野久美)だった。

彼女をトラックに乗せホテルに向かう間、二宮は、月給をもらうたびに、1台ずつ集めているんだと説明しながら、自分で「M-2」と書いたトラックのミニチュアをプレゼントする。

いつもの「月山ホテル」で抱き合った二宮は、もう名前くらい教えてくれと迫るが、コートでもう知ってるでしょう?と女は言う。

確かに、彼女のコートには「小林」とだけ書かれていたが、下の名前はまだ知らなかったのだ。

回想から覚めた二宮は、夕べ彼女と別れたのは11時半頃だったと答えるが、井崎刑事は、このまま警察署に寄ってもらおうと言い出す。

溝江課長(向井淳一郎)から見せられた死体の着ていたコートや洋服と言うのは、確かに、彼女が着ていたものとそっくりだった。

コートには、ちゃんと「小林」と言う名前も入っていた。

課長は、死体は鈍器でとどめを刺されていたと言い、死体を確認してくれと二宮に迫る。

だが、死体安置所で見せられた死体の女は、二宮が抱いた女ではなかった。

同行していた井崎刑事は、その女とは今度いつ会うんだ?月山ホテルで聞けば、相手の女のことは分かるな?と聞いて来るが、会う日時は向うから誘われないと分からないし、月山ホテルは、従業員に顔を見られないように入れるシステムなので、分からないはずだと二宮は答えるしかなかった。

事務所に戻った二宮は、森島社長に、2、3日休ませてくれと頼む。

訳を聞く森島に、女を捜さないと殺人犯にされてしまいそうなんだと窮地を説明する二宮。

森島は、まともな勤め先もなかったお前を拾ったのは俺だと言い、詳しい話を二宮から聞き出す。

一方、警察では捜査会議中だった。

事件当夜、なぜ、被害者の小林きく江はあんな場所へ行ったんだろうと言う疑問に、溝江課長は、きく江はアパートの建築主だったからだと説明し、今の所、二宮が重要参考人だと言う。

翌日、工事現場の砂利山の上で弁当を食っていた二宮は、足下の砂利が急に崩れ出した事に気づき、弁当箱を放り出すと、あわてて逃げ出す。

砂利はあり地獄のようになっている吸引口に吸い込まれ、ベルトコンベアで運ばれていたが、スイッチを押した仲間が気をつけろ!と声をかける。

砂利と一緒に吸引口に吸い込まれ、ぺしゃんこになったアルミの弁当箱がベルトコンベアで運ばれて来ると、黒手袋の男の手がその弁当箱を掴んで近くのドブの中に捨てる。

仕事を終えた二宮は、あの謎の女を引き合わせてくれた元ヤクザ仲間の木村(西条康彦)に会いに、バー「やどり木」に来る。

まだ昼間だったので、店の中にいたのは、木村とホステスのせつ子(浜美枝)だけだった。

木村は、彼女の居場所を教えろと迫る二宮に、そんな事なら、電話一本くれれば良かったのに…と言いながら、目黒の磯崎アパートの308号室だと教えてくれる。

早速そのアパートの部屋に向かった二宮は、鍵が開いていた部屋の中のテーブルに、吸いかけのタバコが乗った灰皿を見つけたので、彼女がいると思い、奥の部屋まで上がってみる。

その時、誰から玄関から入って来た気配がしたので、カーテン越しに様子を観ると、何とそれは井崎刑事だった。

井崎刑事の方も、突然、被害者小林きく江のアパートにやって来た二宮に驚き、灰皿のタバコは自分のものだと教える。

二宮は、誰か俺をかついだ奴がいるんだ!といきり立ち、再び「やどり木」に戻るが、満員の客の相手をしていたせつ子は、木村なら店を辞めたと言う。

そんなはずがあるか!とせつ子に詰め寄った二宮は、興奮し過ぎて、つい彼女の服を引き裂いてしまう。

それを観た常連客たちが二宮を殴り始め、二宮も応戦し始めたので、バーテンが警察に電話を入れ、やがて駆けつけて来た警官に、二宮は逮捕され、ブタ箱に入れられてしまう。

しかし、二宮はすぐに井崎刑事によって釈放されてしまう。

軽犯罪で逮捕では物足りないってことか?と二宮は皮肉るが、ジープで二宮を送ってやる事にした井崎刑事は、女は生きているんだな?お前の黒白を付けないと気がすまないんだとぼやく。

途中、二宮は、歩道を歩いていたあの女を目撃、ジープを停めさせると、降りて彼女に近づくが、相手は、あなたなんか知らないと言い張り、通りかかった黒い車に乗り込むと走り去ってしまう。

二宮はその車を必死で追いかけるが追いつくはずもなかった。

車を運転していた黒手袋の男は、後部座席に乗った女に、巧い事やってくれた。礼はボスに言ってくれと告げる。

二宮は、再び井崎警部のジープに乗せられ、警察署に戻って、もう一度話を聞かせてくれと言われるが、その直後、二宮はジープから飛び降りると逃走してしまう。

二宮は自分のトラックで会社事務所に戻って来ると、あわてて荷造りを始める。

それを知った森島が訳を聞いて来ると、ずらかるんだと二宮が言うので、逃げたら、かえって疑われるだけじゃないかと森島は諭す。

それでも二宮は、俺はヤクザだったから…と自分の不利さを語り、親父さん、女と言うのはどいつもこんなものですかね?畜生!と悔しがるのだった。

その謎の女は、富士見荘と言うアパートへ帰って来る。

部屋には、寝たきりの夫、香田俊夫(草川直也)が妻正子(水野久美)の帰りを待っていた。

二宮が追っていた謎の女の小隊は、カリエスで3年も寝ている夫と2人きりで暮らす正子だったのだ。

俊夫は、正子が家政婦の仕事をしていると思い込んでおり、いつまでもその世話になっているのを心苦しく思っているようだった。

そんな夫の気持ちを察してか、正子は、あなたは何も考えずに身体を休めて下さいとかいがいしく答えるのだった。

夜、二宮は、工事現場に停めたトッラクの運転席にいたが、前方の砂利山の上に人の姿が見えたので、ライトを照らすと、それは井崎刑事だった。

砂利山の上の井崎に近づいた二宮に、井崎刑事は何故逃げた?と聞いて来る。

二宮は、どうしても俺を人殺しにしたいってえのか?と憤るが、その時、黒手袋の手がベルトコンベアのスイッチを入れたので、砂利が急に吸引口に吸い込まれ始め、井崎刑事が砂利に足を取られて一緒に滑り落ちて行く。

二宮はすぐに手を伸ばし、井崎刑事の手を握りしめるが、持ち上げる事は出来ない。

やがて、二宮の身体も、砂利と一緒に吸引口の方へ滑り始めるが、その時、異変に気づいた森嶋社長が、スイッチを切ったので、間一髪2人は、吸引口の手前で救出される。

トラックに戻って来た二宮に近づいて来た井崎刑事は、礼を言いたかったんだと言いながらも、見逃すって言うんじゃないぜと釘を刺す。

二宮は、面白くなさそうにトラックを運転してその場から帰って行く。

井崎刑事から、その日の報告を聞いた溝江課長は、少し二宮だけを追い過ぎたかな?と反省する。

青アートに集まった、死んだきく江に借金があると言う洗濯屋(二瓶正也)、家具屋(橘正晃)、肉屋(広瀬正一)らから話を聞いた井崎は、アパートを建てようとするほどの女が、こんな程度の借金をしているのはおかしいと首をひねる。

すると、アパートの管理人山野(中山豊)が言いにくそうに、彼女の面倒を観ると言っていた北沼商事が、3ヶ月ほど前から支払いを渋り出したのだと言う。

井崎は早速、その北沼商事の常務土方(中丸忠雄)と言う男に会いに出かける。

土方は悪びれた風もなく、アパートの建築代は、個人的な手切れ金のようなものだったと言うが、きく江との関係を詳しく聞こうとすると、プライベートな話を掘り下げるような事は止めてもらいたいと気色ばむ。

工業省の山瀬と言う人物を知っているかと聞くと知らないと言うので、最近自殺した山瀬は、ロケット燃料の担当だったので、お宅の会社が知らないはずはないのだが?と井崎刑事は追求する。

すると、土方は、全く知らないとは言っていないと曖昧な態度になる。

その日、帰って来た井崎刑事の報告を受けた溝江課長は、それは間違いなく汚職だ。女は高級コールガールだったんだ。殺す事によって、接待した事実を葬り去ろうとしたに違いないと推理する。

二宮は、「M-2」のトラックを置いて、必ず女が現れるに違いないと踏み、通りで待っていたが、そこにやって来た森島は、会社のトラックを使って何をしているんだと呆れる。

一方、正子は、富士見荘を出て出かけようとしていたが、そこに横付けした黒い車に乗った黒手袋の男は、サングラスを外し、まさか二宮に会いに行こうってんじゃないだろうな?と言いながら、片側のドアを道一杯に開け、車を少しずつ前進させると、良いのかい?女房がコールガールで稼いでいますと亭主に話して?と言いながら、正子をじりじりと行き止まりの壁へ追いつめて行く。

その後、二宮がトラックを運転していると、背後の窓ガラスが割れ、荷台に乗っていた黒手袋の男白水(田中邦衛)から銃を突きつけられ、山道に誘導され、そろそろハンドルを切り損ねてもらおうか?と脅される。

二宮はスピードを緩めず、背後の隙を狙って、荷台のスイッチを入れる。

すると、荷台は徐々に競り上がって行き、白水は落ちまいと必死にしがみつく。

それでも、二宮はスピードを緩めなかったので、耐えきれなくなった白水は、道に落下してしまう。

崖すれすれの所でトラックを停めた二宮は、降りて、落ちた白水の様子を観るが、特に怪我をしている風でもなく立ち上がりかけていたので、慌てて、白水が落とした拳銃に走りよろうとする。

それに気づいた白水も起き上がり、銃に駆け寄ったので、2人は互いに銃を奪おうと殴り合う。

白水の姿が消えた後、銃を拾い上げた二宮は、畜生!どいつもこいつも…、一体、俺が何をしたって言うんだ!と悪態をつく。

その直後、白水は、警察に、二宮が銃を持っていると言う密告電話をかける。

会社事務所に銃を持ち帰って来た事を知った森島は、いかん!そんな物騒なものを持っていては…、警察へ言って話してみろと勧めるが、俺を狙っている奴をやってやる!と興奮状態だった。

そこに、連絡を受けた刑事たちがやって来て、二宮は拳銃不法所持で逮捕すると迫る。

二宮は抵抗しようとするが、森島が、俺の気持ちを分かってくれ、俺はお前を今日まで、本当の弟のように面倒見て来たんだ。撃ちたいんだったら、俺を撃て!とまで諭して来たので、親父さん…と観念した二宮は、その場に拳銃を落とし、刑事たちから現行犯逮捕される。

連れて行かれる二宮は、俺が生きてちゃ、世間に何か面倒かけるのか?人並みに結婚して、ガキの2、3人も作れば十分なんだ…と叫んでいた。

二宮が、殺人事件の犯人として捕まったと言う記事を新聞で観た正子は、5回目の結婚式だとベッドから言う夫の俊夫に詫びながら、ちょっと出かけて来ると部屋を出る。

その直後、俊夫は窓際に置いてあった薬瓶を撮ろうと手を伸ばすが、その時、写真立ても落としてしまい、結婚した頃の正子と俊夫の写真のガラスが砕け散る。

事務所にやって来た井崎刑事に、あんな記事が新聞に載ったので、うちの仕事は売上が落ちて大変な状態だと森島社長はぼやいていた。

井崎は、二宮が持っていた銃は、工事現場の殺人で使われたものだったが、二宮は黒手袋の男から奪ったものだと言い張っていると教えに来たのだった。

そこに電話がかかって来たので、それに出た森島は、小声で分かったと答えて切ると、タバコに火を点けようとしていた井崎のライターが点かないので、マッチを貸してやる。

そのマッチ箱に「料亭 銀月」と書かれていたので、良く利用されるのですか?と井崎が聞くと、時々と答えた森島は、野暮用が多くて…と断りながら出かけて行く。

その頃、料亭「銀月」に監禁されていた正子は、「主人」と言う文字をマッチ某で作っていたりしていたが、それを白水に払われてしまい、よろけた時、裾が乱れてしまう。

その足を観た白水が、欲情をかき立てられたのか、正子に抱きつこうと迫ったとき、部屋に入ってきたのが森島だった。

森島は正子に、二宮はもうシャバに帰れないだろう。あんたのお陰だと感謝すると、忘れたのか、店開きの日、最初の客だった俺を…と言いながら抱きつこうとしたので、正子は触らないで!死んでやるわと拒否する。

すると、森島は、そうしてもらいたいね…と冷笑して来る。

その頃、正子の夫俊夫は、毒薬を飲んで自殺していた。

一方、森島の部屋の電話が鳴ったので出た森島は、何だ、いらしてらっしゃったんですかと言い、部屋を出て行く。

別の部屋にいたのは、北沼商事の土方常務だった。

土方はやって来た森島に、きく江を殺してくれなんて頼んだ覚えはないと切り出すが、終戦の時以来の知りあいのこの俺が、頼まれればとことんやる事は知っているでしょう?と森島は笑う。

土方は、汚職の方は償おうと思っているので、殺しはそちらで…と言うと、ふざけるな!と怒鳴った森島は、手は全部打ってある。もっと気持ちを大きく持ってくれと言いながら、土方にビールを勧めるのだった。

翌日、正子を車に乗せ、都内を走り回っていた白水は、ボスもいい気なもんだ。一日中監視させておいて指一本触れるなとは…と愚痴っていた。

その時、正子は、路肩に停まっている「M-2」と書かれたトラックを観かける。

横には運転手も立っている後ろ姿が見えた。

やがて、白水は、ガソリンスタンドによって、満タンにする間、外に出るが、その隙を狙っていた正子は、助手席から飛び出すと、近くに通りかかったタクシーを停めて乗り込むと、追って来た白水を振り切って車を発射させる。

「M-2」トラックの所まで戻って来た正子は、運転手を捜していたが、やがて、車の下から整備を終えて出て来た運転手は二宮ではなかった。

その頃二宮は釈放され、馴染みの玩具屋でミニチュアカーを選んでいた。

結局、なくしたトラックのミニチュアをもう一度買う事にした二宮だったが、女店員は、前に買われたのでは?と不思議がるので、何となく、歯が抜けたようで寂しいので…と照れ笑いする。

金を払い終わったその時、偶然、外の歩道を通過する木村の姿を見つけた二宮は、声をかけながら追いかけるが、気づいた木村は急に逃げ出す。

後を追いかけた二宮は、見覚えのある「バー やどり木」の近くで木村の姿を見失ったので、店の中に入ると、バーテンが一人おり、木村は先日辞めたのでいないと言う。

それでも諦めきれない二宮は、店で待たせてもらうとカウンターに座り込むと、どこかへ行くとするバーテンを押しとどめ、その場を動くなと命じる。

その後、警察署にいた井崎刑事に電話をかけると、犯人は俺が一足先に捕まえてばらしてやると宣言する。

井崎はあわてて、二宮を保護するように頼む。

ただちに、白バイが走行中の「M-2」トラックを見つけて停車させるが、運転手山田(上村幸之)は呆れたように、これで3度目ですぜ。「M-2」の運転手は二宮じゃないと伝えてくれと白バイ警官(関田裕)に文句を言う。

その頃、「やどり木」にやって来たのがせつ子で、入口で彼女を捕まえた二宮は、木村の住処へ案内しろと迫る。

せつ子は、あっさり言うことを聞くと見せかけ、二宮を連れて外に出るが、あちらへ行ったりこちらへ行ったりとごまかそうとする。

その時、二宮は、「M-2」トラックで近づいて来た運転手から、あの女を見つけたので、多摩川の水道橋で待たせておいたと告げられる。

喜んだ二宮は、トラックの運転を代わってもらい、多摩川に向かう。

そのトラックを目撃したのが井崎刑事で、近くの交番に近づき、二宮がいた!手配してくれと頼むが、立ち番の警官は、あの運転手は二宮ではないそうです、ついさっき連絡がありましたと言うので、井崎はそうかと信じてしまう。

多摩川の水道橋にやって来た二宮は、そこで待っていた正子を発見、近づくと、苦労かけやがって…と近づくと、なぜ、この前会った時嘘をついたんだ?と聞く。

正子は、夫の後を追って死のうとしたの、このままでは女としても妻としても…と苦しげに告白して来たので、薄々事情を察した二宮は、そうか…と納得し、持っていたトラックのミニチュアをその場に落とす。

それに気づいた正子は、ごめんなさい、大切なものを人にあげて…と詫びて来たので、誰に渡した?と聞くと、黒い手袋をした男と正子は言う。

すぐに白水の事だと気づいた二宮だったが、あいつ、誰に雇われたんだろう?と不思議がると、正子はすぐに、社長さん、あなたの会社の…と言うではないか。

森島?親父か!と驚いた二宮だったが、畜生!俺に親切にして雇ったり、寝泊まりの世話をしたのもこのためだったのか。畜生!と悔しがり、正子に対しても、良くもグルになって俺を罠にかけたな!と睨みつけるが、正子は、あなたを愛してしまったのと告白する。

そんな正子を押し倒して、二宮は一人頭を抱えて悩み出すが、正子の方は落ちていたミニチュアのトラックを拾って土手を上がり帰って行く。

その時、正子の前方から迫って来た黒い車が正子を轢いて停まる。

異変に気づき、二宮が倒れていた正子に近づくと、正子が、さっき落としたトラックのミニチュアを握りしめている事に気づく。

その直後、背後に隠れていた白水が、銃で二宮の後頭部を殴りつけて気絶させる。

白水は、二宮と政子の身体をトラックの運転席に運び入れると、黒い車で、トラックごと土手から押し出し、川に落としてしまう。

溝江課長は、多摩川の水道橋の50m上流で二宮のトラックが発見され、女の溺死体は発見されたが、二宮の姿は見えないとの電話を受け驚いていた。

富ヶ谷近辺を走っていたパトカーに同乗していた井崎刑事もそう連絡を受け、現場に急行する。

森島の倉庫では、森島と白水が、黒い車のナンバープレートを外していた。

そして、森島が逃走資金を白水に渡そうとしていた時、空き缶のようなものが手元に飛んで来たので2人は驚く。

倉庫の前によろめきながら立っていたのは、額から血を流した二宮だった。

さらに、銃を構えながら、井崎刑事も駆け寄って来る。

二宮は白水と、井崎刑事は森島と、それぞれ取っ組み合いになる。

その途中、倉庫内にあったガソリン缶が倒れ、床は油まみれになる。

4人は油まみれになり争うが、やがて井崎刑事が白水の手に手錠をかけ、その片方を黒い車のバックバンパーにはめる。

すると、森島が運転席に乗り込み逃走しようとしたので、車に手錠で繋がれた白水は引きずられてしまう。

しかし、車は塀に阻まれ、すぐに停まってしまう。二宮は落ちていた銃を拾い上げるが、それを観ていた井崎刑事は、よせ!と制する。

二宮は、女が死んでしまった!畜生!と興奮状態だった。

しかし、必死に自分を掴み、睨んで来る井崎刑事の目を観ているうちに、銃を空に向けて撃ち始め、すぐに弾は切れてしまう。

その行為を観た井崎刑事は頷き、ひどい目にあったなと二宮を立ち上がらせる。

二宮は、俺よりひどい目にあった奴がいるんだとつぶやく。

後日、正子が死んだ多摩川に、花束を投げ込む二宮と井崎刑事の姿があった。

歪んだ世の中のとばっちりを食うのは、いつも善良な人たちだな…と井崎刑事が言う。

すると二宮は、俺は生きてやるぜ!と誓うのだった。