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事件記者 深夜の目撃者

魅力的な記者たちが、毎回、生き生きと描かれているので、今観てもついつい物語に引き込まれてしまう、NHK人気テレビドラマの映画版シリーズの1本。

今回は、クリスマス直前の都内で、毒入りケーキを食べたタクシーの運転手が死亡するという事件をきっかけに、それが、郵便局強盗の伏線だったと言う展開になっている。

この当時のクリスマス前には、若者らが町のクラブなどでダンスを踊っているのが流行だったようだ。

父親は、子供用の土産を買い込んで、マイホームで家族サービスをしていたらしいことも分かる。

当時の地域の郵便局には、住み込みの局員がいたらしいことも分かる。

そうした時代背景の面白さもあるが、この作品の一番の見所は、何と言っても、往年の日活で名脇役を勤め、後年は、宍戸錠等と共に、テレビの「どっきりカメラ」で、看板を持って最後に登場するヘルメット姿の男として有名だった野呂圭介さんが、メインの犯人役を演じていることだろう。

他の映画でもチンピラや子分役などは良く演じていた野呂さんだが、この作品では、主役に近いポジションと言っても良い目立つ役どころである。

徐々に、自らの犯行に追いつめられ、やがては自滅してしまうチンピラ風の小者の感じを良く演じていると思う。

野呂圭介さんの代表作の1本と言っても良い作品ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、日活、島田一男原作、西島大+山口純一郎+若林一郎脚色、山崎徳次郎監督作品。

警視庁

「桜田記者クラブ」の部屋札がかかる部屋の中では、事務員のみっちゃんこと光子(福田文子)が、小さくなった記者たちの鉛筆も使ってクリスマスツリーの飾り付けをしていた。

そんな中、大晦日を間近に控え、馴染みの洋服屋(青木富夫)がタケさんらから溜まった借金の取り立てをしていた。

タケさんは、10ヶ月ローンのうちまだ2ヶ月分しかもらっていないと言われ、渋々2000円だけ渡し勘弁してもらう。

そこに子だくさんのクマさんが、子供用のクリスマスプレゼントを買って帰って来る。

馴染みの小料理屋「ひさご」の女将お近さん(相馬千恵子)も記者クラブに年末の挨拶に来ており、八田さん(大森義夫)らに、お歳暮を渡して帰って行く。

町中でもクリスマスパーティが各所で行われており、とあるクラブで恋人の津山ふじ子(葵真木子)と踊っていた工藤隆(石丘伸吾)だったが、ガラに悪い友人である大木(野呂圭介)から呼ばれ、彼女の元を一旦離れる。

大木は、乗り気ではない様子の隆に、睡眠薬を飲ますだけだと命じていた。

戸塚、新宿、池袋と、ネタ探しに歩いていたイナさん(滝田裕介)から、何も今夜は収穫がなさそうだとの電話を受けていた相沢キャップ(永井智雄)だが、その通話を聞いていた八田さんは、朝刊はホネじゃねとつぶやく。

その夜は、記事にする事件が何もなかったのだ。

その深夜、市ヶ谷のバス停前では、隆がふじ子にケーキの箱を土産として渡していた。

隆の待つバスの方が先にやって来たので、隆はそれに乗って帰って行くが、その直後、ふじ子は、同じ郵便局で住み込みで働いている今井久子(千代侑子)を見つけたので、声をかける。

2人は、最終バスが到着したので一緒に乗って帰ることにするが、その時、ふじ子は、先ほど隆からもらったケーキの箱をベンチに置き忘れていた。

その最終バスには、黒い眼帯をかけた学生が乗っており、眠ったままので、車掌が必死に起こそうとしていた。

ふじ子は車中で、ケーキの箱を忘れて来た事に気づくが、もう誰かに拾われているわよとひさ子に言われ、取りに帰る事は諦める。

ケーキの箱を拾って、中のケーキを食べていたのは、市ヶ谷バス停前で客待ちをしていたタクシーの運転手(山田禅二)だった。

そこに、近くの浮浪者が近づいて来るが、運転手は追い払う。

中年男とその愛人らしき女が乗車して来たので、タクシーの運転手は車を走らせ始めるが、やがて運転手は苦しみ出し、運転席から外に転がり出ると動かなくなってしまう。

驚いた中年男と女の客は、恐る恐る倒れた運転手に近づき、身体を起こしてみるが、既に運転手の息はなかった。

偶然、その事件現場の近くで、一晩中取材に歩き回っていた他社記者たち仲間から風邪薬「ルピット」をもらい、この後は相沢キャップが湯豆腐で飲ませてくれるらしいなどと話していたイナさんだったが、警察車両が集まっている現場に気づいて、みんなと一緒に近づいて行く。

現場には、梅長こと梅原部長刑事(深水吉衛)が到着しており、運転手の死因は青酸カリで、市ヶ谷からここまで来る間に飲まされたらしいという。

客の話を聞いて来たヤマさんこと山崎(園井啓介)は、どうやら、運転手が食べたのはケーキらしいとイナさんに耳打ちする。

イナさんから電話で連絡受けた相沢キャップは、湯豆腐はその内、ふぐちりに変えましょうと慰める。

記者クラブの東京日報の部屋にいたスガちゃんこと菅(沢本忠雄)が部屋を出て行ったので、すぐさま新日本タイムスのタケさんこと竹本(高原駿雄)が後をつけ、どこに行くのかと聞くと、夜鳴きそばを食べに行くのだと言う。

タケさんの方は、便所に行くと言い、スガちゃんが歩いて行った反対方向から鑑識部屋に走って行く。

鑑識部屋に到着したスガちゃんは、先にウラさんこと中央日々の浦瀬キャップ(高城淳一)とタケさんが来ていたので呆れるが、毒は12個入っていたケーキ全てに入っていたが、ケーキの箱には複数の指紋が重なっていたので、個人特定は難しいと言う鑑識の説明を聞く。

それを聞いたウラさんとタケさんは帰って行くが、一緒に帰りかけたスガちゃんはわざと自分のライターを床に落とすと、それを探す振りをして部屋に残り、鑑識係に指紋写真を見せてくれと頼む。

確かに指紋は複数重なっていたが、その中に一つ、指に傷がある指紋が混ざっていたのにスガちゃんは気づく。

東京日報の部屋では、本社のサブちゃんこと西郷三郎社会部長から電話を受けた相沢キャップが、朝刊用のネタがないと怒られ、石川五右衛門だって、ないものはないのだと言い返していた。

郵便局の二階で蒲団に入っていたふじ子と久子の部屋にやって来たのは、同じく住み込みで働いていた牧村司郎(木下雅弘)だった。

腹が減ったので何かないかと探しに来たのだが、ふじ子は、隆さんからもらったケーキを忘れて来たと言い訳しながら、有り合わせのクッキーを司郎に食べさせる。

その頃、工藤隆は大木と茶店で時間を潰していた。

大木から、確かにケーキは手渡したか?と聞かれた隆は、渡したけど相手が今晩食べるとは限らないなどと言い訳していた。

0時を過ぎたのを確認した大木と隆は、ふじ子等が住み込んでいる中野区高田東天神郵便局の前にやって来て様子を見る。

まだ、2階の部屋の灯りはともっていたので、苛つく大木だったが、その時、2人の警官が通りかかったので、2人はおわてて路地に隠れる。

その頃、市ヶ谷で見つけた浮浪者を警察に呼び、事情を聞いていた溝口刑事(木島一郎)は、運転手が拾ったケーキを忘れて行ったのは女であり、その女は、新井薬師寺行きの最終バスに乗って帰って行ったと言う情報を得る。

相沢キャップも、毒入りケーキは拾い物だったと言う情報を受ける。

隆と大木は、ようやく郵便局の2階の灯りが消えたので、ふじ子たちが寝たことを知り、御用口の鍵をこじ開けようとしていた。

東京日報の部屋では、相沢キャップ、スガちゃん、ベイさんこと長谷部(原保美)の3人が、長椅子に毛布に包まって仮眠を取っていたが、早朝4時ちょっと過ぎ、電話で起きたのはスガちゃんだった。

しかし、それはナイトクラブと間違えた酔客からのものだった。

スガちゃんは、その間違い電話ですっかり目が覚めてしまったので、警視庁内をぶらついて来ることにする。

隆と大木は郵便局の中に侵入し、大木は金庫の鍵を回し始める。

その物音に気がついて目覚めたのは、1階で寝ていた司郎だった。

「誰だ?泥棒!」と扉を開けた司郎に驚いた大木は、持っていたナイフで、司郎の腹を突き刺してしまう。

そのもみ合いの音に気づいたふじ子と久子は、共に二階で目覚め怯えるが、「大木!早く!」と言う声が聞こえた後、下が静かになったので、恐る恐る降りてみた2人は、血まみれで倒れている司郎に気づき立ちすくむのだった。

警視庁の通信室では、ただちに、この殺人の通報を受けるが、その部屋の前に立っていたのは、庁内を散歩中だったスガちゃんだった。

思わず指を鳴らして喜んだスガちゃんは、すぐさま部屋に戻ると長椅子で寝ていた相沢キャップを起こし、今聞いたばかりの事件を耳打ちする。

すると、一緒に起きたベイさんが、「オーイ!殺人だよ!」と、他社の部屋に聞こえるような大声を上げたので、寝ぼけないで下さいとスガちゃんはあわてて止める。

しかし相沢キャップは笑いながら、どうせ知られるんだから、こういう時は他社に恩を売っておいた方が良いんだ。ベイさんが寝ぼけるようなタマかと説明する。

ベイさんに感謝しながら、クマさん等他社の記者たちも起きて来る。

中野東天神郵便局の現場に来ていた梅長は、ものは何も取られていないと、到着した記者たちに説明する。

そこに、向かいの路地に落ちていた大量のタバコの吸い殻が見つかったと知らせが届いたので、犯人たちは相当長い間ここで時間を潰したようだと、吸い殻の場所に来た梅長はつぶやく。

その頃、大木は、隆のねぐらである自動車修理工場の部屋で、血の付いたナイフを洗いながら、計画が失敗したのを悔しがっていた。

その時、隆は、持っていた懐中電灯を現場に忘れて来たことに気づく。

お前はまだ指紋を採られたことがないから安心だと言う大木だったが、これからどうするんだ?と聞いて来た隆の言葉にいら立ち、飲んでいた酒の瓶とコップを床に叩き付ける。

その日はクリスマスイブだった。

郵便局の様子を探りに、郵便局近くの食堂にやって来て食事をしていた大木と隆は、店に入って来た新聞記者浅野(綾川香)が、社に電話をかけ出したのを聞く。

実はその時、梅長は既に、犯人の1人の名前が「大木」であることを掴んでいた。

その情報をつかんだスガちゃんとヤマさんは、どこからその名前が浮かんだんだろうといぶかしがりながらも、郵便局のふじ子に事情を聞きに行く。

すると、事件の時、「大木!早く!」と男の声が聞こえたのだと、梅長に話した内容をふじ子は教える。

スガちゃんは直ちにそのことを相沢キャップに連絡する。

そんな相沢から頼まれていた子供用のプレゼントを買って、みっちゃんが東京日報の部屋にやって来る。

礼を言ってそれを受け取った相沢は、すぐに本社のサブちゃんこと西郷三郎社会部長に電話を入れ、夕刊でぼ〜ん!と行きましょうと報告する。

自動車修理工場へ戻って来た大木は、情報を得ようとラジオを付けるが、故障しているのか、さっぱり放送は聞こえなかった。

翌朝10時、記者クラブで遅い朝食をかき込んでいたガンさんの横で、タケさんが、「ラーメン丼の中にタバコの吸い殻を入れないで下さい」と書かれた、みっちゃんからの注意書きを読んで肩をすくめていた。

鑑識部屋にやって来た梅長は、事件現場に残されていた懐中電灯の指紋が、毒入りケーキ事件で見つかったのと同じ、傷のついた指紋であることを知る。

ベイさんとスガちゃんは、捜査一課長の部屋に来て、事件に関する質問をしかけていたが、そこに梅長と共にやって来た鑑識が指紋写真を持っているのに気づく。

ベイさんとスガちゃんはそれを見せてくれと頼み、一課長は断ろうとするが、鑑識は、ヒントを与えてくれたのはスガちゃんだったので…と言い、その場にいたスガちゃんにも、毒ケーキ事件と郵便局事件の懐中電灯の指紋写真を見せる。

2つに事件が同一犯人の仕業だったことを知ったスガちゃんたちは、直ちに部屋にかけ戻って行く。

廊下で2人とすれ違ったタケさんは、何かを東京日報に抜かれたらしいと気づく。

スガちゃん等の話を聞いた相沢キャップと八田さんは、毒入りケーキを忘れて行ったのは、最終バスに乗った客の1人に違いないと読む。

翌日、最終バスに乗っていた車掌に、事件当夜のバスの乗客に付いて取材をしていたのはタケさんだった。

車掌は、黒い眼帯を付けた体格の良い学生と、片桐という常連の女医さんが乗っていたと思い出す。

取材を終え、バス会社から帰りかけたタケさんとすれ違ったのが、今やって来たスガちゃんとベイさんだった。

タケさんは、抜き返したのを愉快そうに、遅れて来た2人に「ワカ末」の瓶を見せる。

スガちゃんは、車掌から聞いた話を元に、ケーキを忘れたのは女だったと相沢キャップに報告する。

極東大学拳闘部に在籍していた眼帯をした学生と片桐女医(原恵子)は、十津川刑事(武藤章生)に呼ばれて、ケーキを忘れた女性のモンタージュ写真作りに協力させられる。

記者クラブでは、一社出遅れてしまったガンさんこと岩見(山田吾一)が、ウラさんこと浦瀬キャップ(高城淳一)からどやされていた。

翌朝、新聞に、郵便局強盗の1人として「大木」の名前が載っているのに気づいた大木は愕然としながらも、あの夜、郵便局の連中は誰もケーキを食べず、1人も眠っていなかったらしいと気づき、隆がへまをやったと言いがかりをつけ、確かに渡したと反論する隆と取っ組み合いの喧嘩になる。

正体がばれた以上逃げるしかないと気づき観念した大木は、自分のダチが店をやっている室蘭へ飛ぼうと隆を誘う。

その頃、東京日報の相沢キャップは、毒ケーキ事件と郵便局強盗事件の犯人が同一人物らしいと発表したことを、一課長から抗議されていた。

ウラさんたち他社のキャップたちも、東京日報に抜かれたことを怒っていたが、相沢は笑いながら謝るしかなかった。

その日、食堂でラーメンを久子と共に食べていたふじ子は、女性が深夜、市ヶ谷に忘れてったケーキを食べたタクシー運転手が死亡した新聞記事を読み驚いていた。

そのケーキを忘れた女と言うのが自分であることに気づいたふじ子は、隆さんがこんなことをするはずがない。会って来ると久子に言い残して、1人、隆のいる自動車修理工場へと向かう。

一方、女のモンタージュを東京日報の部屋で初めて観たスガちゃんは、すぐにそれが、郵便局で会ったあの津山ふじ子であることに気づく。

それを知った相沢キャップたちは、ひょっとすると、これが共犯者だよと言い出す。

隆の自動車修理工場へ来たふじ子だったが、相沢キャップは、スガちゃんからの電話報告で、ふじ子はホシの居場所へ出かけたが、その場所は中野駅の近くとしか分からないと知らされる。

すぐに、一課長に相談に行った相沢キャップだったが、一課長は、すでに工藤隆のアパートを見つけ出していた。

事件を担当した刑事たちが全員野方署に詰めていたので今まで気づかなかったが、モンタージュを観た梅原部長刑事がふじ子に気づき、そこから工藤隆にたどり着いたのだと一課長は説明する。

ふじ子は、大木に首を絞められていた。

隆から助けられたふじ子は、隆に自首を勧める。

隆は大木に対し、ふじ子をかばおうとするが、大木はそんな隆をナイフで刺して逃げ出す。

そこに、パトカーのサイレンが近づいて来る。

相沢キャップは、大木が相棒を刺して逃亡した。刺された隆は今、恵明会病院にいると電話を受ける。

隆が運ばれた病室には、梅長、イナさん、スガちゃん、そしてふじ子が付き添っていたが、大木のヤサはどこだ?と聞くと、かろうじて「室蘭…」と隆は答える。

時計を観たイナさん等は、上野発21時36分青森行き最終列車がまだあると気づく。

上野駅の鉄道公安官が、警視庁から手配の電話を受けたのは、大木が乗り込んだその列車が出発した直後だった。

車で上野に向かっていた梅長たちは、間に合わなかったと知ると、そのまま赤羽駅へと急行する。

赤羽駅で、何とか、停車中だった臨時急行に乗り込んだ梅長たちだったが、それに気づいた大木は、窓から線路へと飛び降り、操車場内を逃亡し始めるが、やがて、線路に妻づいて倒れたところを、走って来た列車に轢かれてしまう。

その遺体に駆け寄る、タケさんや梅長たち…

その夜、記者クラブには、スガちゃんとガンさんと八田さんだけが残っていた。

ダンス、行きたいね…とぼやくガンさんは、「新聞屋、新聞屋、町を行く〜。新聞屋、新聞屋、飛んで行く〜♬」と、ジングルベルの即興替え歌を口ずさむ。

ごま塩頭なので、「サンタクロースの八田さん」寝ちゃったかな?と気づいたスガちゃんは、長椅子で寝入ってしまった八田さんに毛布をかけてやる。

そこに、先に帰宅した相沢キャップから電話が入ったので、何もヤマはないことと、差し入れの礼を言ったスガちゃんは、相沢キャップ差し入れのビールでガンちゃんと、わびしいクリスマスの乾杯をするのだった。