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事件記者 狙われた十代

NHK人気テレビドラマの映画化シリーズの8作目。

当時「カミナリ族」と呼ばれていた無軌道な若者が、ヤクザに付け入られ、強盗の手伝いをさせられる顛末を描いている。

ヤクザの健次を演じている草薙幸二郎が若々しい。

前作「事件記者 時限爆弾」では、タツミ製のストーブが登場していたが、今回はタツミ製の炊飯器が登場している。

毎回登場する「ワカ末」同様、当時のタイアップの状況が分かって興味深い。

毎回、それなりに楽しませてくれるこのシリーズだが、今回は少し物足らなさが残る。

事件自体がじみな上に、個性豊かな記者たちの掛け合いなどのシーンが少ないせいだろう。

ガンさんとタケさんは今回もそれなりに目立っているが、東京新報の記者たちの影が薄いような気がする。

このシリーズ、イケメンのヤマさんこと山崎役の園井啓介があまり活躍しないような気がするのは気のせいだろうか?

テレビ版でもこんなものだったのだろうか?

当時、一番人気があったと思われる俳優だけに、このシリーズでの登場シーンが少ないのは惜しい気がする。

特に女性ファンには不満があったのではないか?

ひょっとすると、当時から一番売れていたため、この作品に参加する時間が取れなかったのかもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、日活、島田一男原作、西島大+山口純一郎+若林一郎脚色、山崎徳次郎監督作品。

深夜の神宮外苑聖徳記念絵画館前に集まった若い娘たちが歓声を上げ、バイクに乗った青年たちがスタートを切る。

そこに通りかかったのが、東京日報のスガちゃんこと菅(沢本忠雄)とイナちゃんこと伊那(滝田裕介)が乗った車が通りかかるが、一人の男がその前に飛び出し停める。

朝刊の締め切りで急いでいるんだと言うと、男は、キ○ガイどもがガーガーやってるもんで…と頭を下げ、バイクレースが通り過ぎると、すぐに車の前から離れて通らせてくれた。

弘子(小園蓉子)の側に戻って来たその男、ハイコロの健次(草薙幸二郎)は、ブンヤだった。もめると後がヤバいのでな…とうそぶく。

警視庁内 桜田記者クラブの部屋では、ストーブの前で、中央日々のガンさんこと岩見(山田吾一)が、外で凍り付いた身体を温めていた。

そこに、イナちゃんとスガちゃんが戻って来ると、相沢キャップに、心中した男の方は19で、女の方はまだ17だったと写真を見せ、遺書にはただ「さようなら」とだけ書いてあったと報告する。

それを聞いていた相沢キャップは、「今流行りの理由なき自殺か?」と話し合う。

絵画館前では、9分42秒!とタイムを女が叫び、一番だった一郎(朝広亮)に、健次が賞金を渡す。

次は第6レースで、一等賞金は1500円だと健次は誘う。

今度は、娘たちが同乗する「2ケツ勝負」だった。

一郎は降りると言い出し、健次は見学していた山路忠夫(杉山俊夫)にやらないか?と勧めるが、バイクを持っていないと言う。

それで、二郎が自分のバイクを貸してやることにする。

記者クラブではガンさんが、心中するにしても水に入るとは…、こっちのみにもなって欲しいとぼやいていた。

そこに、注文していたラーメンが届いたので、嬉しそうに食べ始めたガンさんだったが、他の記者が、お前さん、手は洗ったか?さっき死体を川からあげていたじゃないかと指摘するが、ガンさんは平気だと言い、横にいた新日本タイムスのタケさんこと竹本(高原駿雄)が、持っていた「ワカ末」の瓶を取り出してみせる。

そんな中、イナちゃんとスガちゃんは、さっき遭遇した外苑のバイクレースのことを思い出し、すぐに交通課に知らせに行く。

一方、神宮外苑でバイクレースをしていた忠夫は、前を行くバイクの前に1人の学生が道を横切ろうとして接近、後ろによろけた所を引っ掛けてしまう。

倒れた学生の周囲にバイクが停まり、若者たちが周囲に集まって、心配げに倒れた学生の様子を見るが。学生はぴくりとも動かなかった。

忠夫は、病院に運ぼうかと提案するが、サツに捕まるぞと言われると動けなかった。

そこに、パトカーのサイレン音が近づいて来たので、若者等は全員散り散りに逃げ出してしまう。

翌朝、玉川上水に若者同士が入水自殺したと言う記事を記者が読んでいた記者クラブの部屋に、事務員のみっちゃんこと光子(福田文子)がやって来たので、記者たちはめいめいに朝食を注文する。

その日、自宅で目覚めた山路忠夫は、タツミの炊飯器などある台所で朝食の準備をしていた姉の澄子(堀恭子)の横を通り、届いていた朝刊を読むが、夕べの外苑での事故に付いては何も載っていなかったので、大したことがなかったんだと胸を撫で下ろす。

そんな忠夫に澄子は、あんた、母さんが亡くなり、大学に落ちたからって、最近ヤケになっているんじゃないの?これでは姉さん、お嫁には行けないわと小言を言う。

そんな山路家の表に来ていたのがハイコロの健次と弘子。

忠夫のオヤジは何をしているんだと聞く健次に、確か、元軍人だったはずよと弘子が教えると、だとしたら、金目のものを持っていそうだなとつぶやいた健次は、忠夫を読んで来るよう弘子に命じる。

すぐに門から出て来た忠夫に、連れ出した弘子は、夕べのひき逃げ、サツにバラしても良いの?と言い出す。

ひき逃げ?と驚いた忠夫に、バラされたくなかったら、2万円用意しろと健次が脅して来る。

5000円は昨日転倒させたバイクの修理代、15000円が今日の保証代なのだと言う。

怯える忠夫に、健次は、サツにばらしてやると執拗に迫るのだった。

その頃、記者クラブでは、記事の差し止めを言って来た捜査一課長にみんなで抗議に行こうと言っていた。

一課長は、抗議にやって来た各社のキャップたちに、今、交通課と四課で相談して密かに捜査を進めている所なのだと説明する。

カミナリ族のひき逃げだろ?と中央日々のウラさんこと浦瀬(高城淳一)がカマをかけるが、一課長は、背後のボスがいるらしい。ヤクザがレースの参加料を取って、その中から賞金を出しているらしいんだと言う。

一方、忠夫の父、山路壮六(伊達信)は、本来供出しなければいけない、戦時中の銃を今でも大切に保管しており、今日も書斎で磨いていた。

屋敷の外では健次が忠夫に、出来るだけ金目のものを持ち出して来いとそそのかしていた。

父が銃を磨いていることに気づいた澄子は、それは供出するものじゃないの?と聞くが、父は、大村閣下の形見なので手放しかねているのだと説明する。

その時、勝手口の方から物音が聞こえたので澄子が行ってみると、忠夫が何かを持ち出そうとしている所だった。

落とした風呂敷の中を見ると、それは澄子の貯金通帳だったので訳を聞いていると、出て来た父親がそれを見て、忠夫を殴りつける。

その間、無人になった書斎に忍び込んでいたのが健次で、あれこれ物色しているうちに、机の上に置き忘れてあった拳銃に気づき、それを持ち去ってしまう。

記者クラブの東京日報の部屋では、夕刊の締め切り前にもかかわらずネタが何もなかったので、本社のサブちゃんこと西郷三郎社会部長からの電話に、相沢キャップが、152円のかっぱらいなど小ネタを報告し、今日は900万都民のため辛抱してくれと謝っていた。

その直後、相沢キャップはスガちゃんに、若者が集まるジャズ喫茶「エルビス」を当たってみてくれと頼む。

スガちゃんが店に行くと、娘たちが、今日は中止だとグループの青年等に教えていた。

そんなグループに紛れ込もうと、スガちゃんは、バイクを貸すから俺も仲間に入れてくれないかと話しかけるが、警戒したそのグループは、ヤバいなと言いながら、店を出て行ってしまう。

弘子のアパートにやって来た忠夫に、部屋にいた健次は盗んで来た拳銃を見せながら、これを帰して欲しかったら2万円返せ。出来ないのだったら、駅を襲うので、お前は見張りを手伝えと言い出す。

さすがに尻込みした忠夫だったが、健次は、昨日の男は死んだぞ。知りあいのデカに聞いたんだ。これでお前は絞首刑だ。嫌なら、俺がお前をバラバラにしてやるぜと脅し付ける。

ジャズ喫茶の報告を受けた相沢キャップは、旦那はこの事件に付き合え。ただし、他社さんにバレないように、ここは無駄話に付き合いましょうと言い、東京日報の部屋を出ると、何事もないように、他社のキャップたちといつものように合流する。

合同スペースでは、タケさんが碁の石を使って占いをしている所だった。

これからヤマがあると言うので、ガンさんが男か女かと聞くと、女だと言い、これ以上占ってもらいたかったら、1件につき、「ひさご」の酒1本だとタケさんは言い出す。

城西線の「ひばりが丘駅」では、駅長と駅員たちがその日の売上を計算している所だった。

その途中、駅員2人は貨物列車が到着するのでホームに向かうが、そこに入って来たのは、覆面をして拳銃を差し出した健次と弘子だった。

手を挙げ壁の方を向かされた駅長を前に、弘子は机の上に置いてあった売上を奪い始める。

外で見張っていた忠夫は、近づいて来る警官に気づき、駅舎の中に「ポリだ!」と声をかける。

健次と弘子があわてて逃げ出すと、駅長は「強盗だ!」と叫び、それに気づいた警官は、逃げ出して来た覆面姿の健次に組み付く。

健次は、その手を逃れようと、拳銃を警官の胸に向けると引き金を引く。

警官はその場に倒れ、健次は今撃った拳銃をその場に落として逃げ去るのだった。

「ひさご」で飲んでいたキャップや記者たちの所に、遅れてガンさんが合流する。

そこに「杉並で殺し」の一報が飛び込んで来る。

電話に出たスガちゃんに、女だろ?と聞いたタケさんだったが、スガちゃんは男ですと答える。

現場に集まった記者たちに、梅長こと梅原部長刑事(深水吉衛)は、凶器は14年式銃だと教える。

それは、日本軍が使っていた銃だった。

撃たれて死亡した徳竹巡査は、昨日、奥さんに赤ん坊が生まれたばかりだったことが分かり、電話でそれ聞いた相沢キャップは同情する。

八田さん(大森義夫)は、銃を残していたのか…とつぶやく。

弘子のアパートへ戻って来た健次は作戦の失敗に悔しがっていたが、弘子から銃を落として来てまずかったんじゃない?と聞かれると、手袋していたので、指紋は心配ないし、東京に俺が戻っていることを知っている仲間はいないはずだから大丈夫だろうという。

忠夫は怯え、すぐに警察に自首して来ると言い出すが、健次のひき逃げはどうする?こうなりゃ2人とも絞首刑だと脅す。

警視庁では、梅長が鑑識からの報告を聞き、銃にマエはないことを知る。

その周囲には、各社の記者たちが集まって、その分析結果を逐一聞いていた。

スガちゃんは、下手をするとオミヤ(迷宮入り)になるのでは?と言い出す。

その頃、忠夫の父山路壮六は、新聞で、駅での警官殺しの記事を読んでいたが、そこで使われた戦時中の拳銃が、よもや自分のものだとは気づかず、かつての将校たちは、みな銃に思い出があるから手放せないのだろうなどと、人ごとのように澄子に話していた。

駅員たちに事情を聞いていた梅長だったが、駅長を始め、はっきり犯人の顔や特長を覚えているものはいなかった。

その日、外出から帰って来た澄子は、家の中に入ろうと中の様子をうかがっていた忠夫を見つけ声をかけるが、忠夫はあわてて逃げ去ってしまう。

記者クラブでは、スガちゃんが、着替えを家に取りに帰ると言って部屋を出て行くが、それを聞いたタケさんは、その後を追う。

「エルビス」まで追跡して来たタケさんだったが、店のカウンター席に並んでいた若者グループの背後にとっさに隠れたスガちゃんを見失ったので、自分は場違いだと察し、すごすごと店を後にするしかなかった。

一見、サツに追われているように見えたこれが逆に、スガちゃんにとっては若者グループに信用されるきっかけとなる。

梅長は一課長に、拳銃の手掛かりがないと報告していたが、そこに面会人があると知らせが来る。

それは山路壮六だった。

銃の持ち主が名乗り出て来たことを嗅ぎ付けたイナちゃんは、すぐに相沢キャップに知らせるが、他社も知ることになり、一斉に一課長室へ向かうが、扉の前には、溝口刑事(木島一郎)が立ちふさがっており、誰も中に入ることは出来なかった。

その頃、山路家の勝手口に忠夫がこっそり戻って来ていた。

それに気づいた澄子は、撃ったのがあなたなら、素直に自首して。父が警察に自首したのよと教える。

銃を息子に盗まれたと思い込んでいた父の荘六は、一課長にひたすら詫びていた。

しかしそこに、銃についていた指紋は息子さんのものではなく、通称ハイコロの健次、本名坂西健次と言う神田に組があるヤクザで、今は北海道にいるらしい男のものだったと言う梅長の報告が入る。

弘子のアパートへ帰って来た忠夫は、今夜とんずらしようと話していた健次に、オヤジが自首してしまった。俺も連れて行ってくれと頼む。

東京日報の部屋にやって来たベーさんこと長谷部(原保美)が、たった今、梅長等が裏口から出て行ったと相沢キャップに教えるが、部屋の外で、タケさんが盗み聞いていた。

タケさんは、すぐに弘子のアパートに車を飛ばすが、その後部トランクから出て来たのは、いつの間にか潜り込んでいたらしいガンさんだった。

イナちゃん、がんさん、タケさんは、弘子のアパートの中に入り込むが、中はすでにもぬけの殻だった。

東京日報の相沢キャップの元には、スガちゃんから電話が入り、レースを今夜又やるらしいので、自分も参加することになったと言って来る。

その電話を横で聞いていた八田さんは、やったね、スガちゃんと喜ぶ。

夜、神宮外苑で又バイクレースが行われていた。

その場に来ていた健次は、忠夫が捕まって泥を吐いたらまずい。死人に口無しさと弘子に伝える。

記者クラブに戻って来たイナさんは、女の行方が分からないと相沢キャップに報告する。

レースを見学していたスガちゃんは、隣にいた忠夫が、ひき逃げをしてしまったなどと話していたので、あの学生だったら、後1週間くらい出たいんだよと教えてやる。

学生が死んでいなかったと知った忠夫は、これまで騙されていたと気づき、噓を教えた健次に食って掛かる。

健次はナイフを取り出し、忠夫に立ち向かう。

その様子をじっと観ていたスガちゃんは、若者グループの中からこっそり抜け出すと、バイクに乗って走り出し、近くの交番に捜査一課への連絡を頼む。

現場に戻ってみると、健次が忠夫の首を絞めている所だった。

しかし、すぐにパトカーのサイレン音が近づいて来る。

近くに待機していた四課と交通課が一斉に動いたのだった。

刑事は弘子を後ろに乗せ、バイクで逃走しようとするが、白バイに追跡される。

やがて、挟み撃ちになったと知った健次は、バイクのハンドルを切り損ね、転倒すると、弘子と共に路上に倒れ込む。

警官隊が駆けつけるが、2人ともぴくりとも動かなかった。

忠夫は、四谷署の救急車に乗せられている所だった。

その救急車が出発したのをいつまでも見つめていたスガちゃんだったが、そこに近づいて来たイナちゃんは、原稿を書こう。考えるのはその後だと声をかけ、2人は車に乗り込むのだった。