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事件記者 影なき男

NHK人気テレビドラマの映画化シリーズの1本

それぞれ個性的なレギュラー記者たちのキャラクターが魅力的なので、話の展開が多少平凡でもそれなりに楽しめるこのシリーズだが、今回は、そのレギュラー記者の1人イナさんが結婚式を挙げるところから事件が始まり、イナさんの新婚旅行の先にまで事件関係者らしき男が現れ、東京の事件捜査と平行する形で、もう一つの取材捜査も進行するという興味深い展開になっている。

イナさんの元同級生で今は、旅館を経営している藤山を演じているのは待田京介。

今回は、イナさんの影響を受け、素人記者のまねごとにハマってしまう…という、地方ののんびりしたキャラクターをユーモラスに演じている。

地方に実在する温泉旅館がロケ先になっているところなど、草津温泉の実在旅館を舞台とした「刑事物語 犯行七分前」(1960)等を連想する。

「刑事物語」やこのシリーズにも必ず登場する特定メーカーの薬同様、タイアップだったのではないかと推測する。

展開としては、スガちゃんが初めて訪れた女の屋敷の応接セットの下にわざとらしくヘアブラシが落ちているなど、ちょっとあり得ないご都合主義の部分もあるが、通俗犯罪ものとしては今回も手軽に楽しめる作品になっている。

記者クラブのみっちゃんが、コピー機を扱っているところは興味深い。

この時代から、事務用コピー機はあったと言う事が分かる。

一方、注文して1時間も待たされる「電話の特別至急電」と言うのも登場するが、これは良く分からない。

当時、長野と東京間の電話は、電話局の交換を通じて、繋ぐのにそんなに時間がかかっていたと言う事なのだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、日活、島田一男原作、西島大+山口純一郎+若林一郎脚色、山崎徳次郎監督作品。

夜、4人組の男の1人が背中に誰かを担いで車の後部トランクに押し込む。

タイトル

海岸縁にやって来て、その運んで来た男(寺尾克彦)の身体を草むらの中に捨てると、男の所持品らしき封筒類をその場で燃やして去って行く様子を背景にキャストロール

翌朝、見慣れぬ靴が落ちているのに気づいた近所の男2人が、近くの草むらにコートをかぶせて捨てられていた男の死体を発見する。

東京日報の記者クラブ室に1人残っていたスガちゃんこと菅(沢本忠雄)が、ベイさんこと長谷部(原保美)に、月島の海岸よりで死体が見つかったとの連絡を入れる。

ベイさんは、こちらの式は滞りなく進行中だとスガちゃんに教える。

イナちゃんこと伊那(滝田裕介)と、「ひさご」の女将お近(相馬千恵子)の娘やす子(丘野美子)の結婚式が九段快感で執り行われている最中だったのだ。

ベイさんは、式に出席していた相沢キャップ(永井智雄)の席に近づくと、今入った情報を耳打ちする。

その頃、式に呼ばれていなかったガンさんこと岩見(山田吾一)ら若手記者たちが、事件現場に殺到していた。

先乗りしていた捜査一課長(二本柳寛)は、ハジキで胸を射抜かれていたガイシャの身元を明かすようなものは全部はぎ取られていたと説明する。

その頃、結婚式にいた相沢キャップは、部下のイナちゃんが、昔、炭屋の小僧が事件の容疑者になりながら冤罪だと分かり釈放した中、1人、怪しいとその後も調査を続行し、注意されると、「炭屋の小僧がシロいはずがない」と反論したと言うエピソードを挨拶の中で披露していた。

同じ式に出席していた中央日々のウラさんこと浦瀬(高城淳一)や、新日本タイムスのクマさんこと熊田(外野村晋)の席にも、それぞれ、記者が近づき耳打ちをする。

その後、進行役の八田さん(大森義夫)が、中央日々の浦瀬キャップに挨拶を頼もうとするが、気がつくと、ウラさんはもう席にいない。

それではと、新日本タイムスの熊田キャップに挨拶を…と観れば、こちらもすでに退席した後だった。

警視庁の記者クラブに戻って来ていたウラさんは、残留していた記者から、ガイシャの指紋は、指紋台帳に残っておらず、マエ(前科)はなかったと報告を受ける。

同じく、記者クラブの部屋に戻って来ていたクマさんは、タケさんこと竹本(高原駿雄)から、ガイシャのズボンの折り返しに、20ドル札がしっかり縫い込まれていたのが見つかったと聞かされる。

現場を担当した梅長こと梅原部長刑事(深水吉衛)は、鑑識を通じて科研に紙幣の調査を依頼していた。

結婚式が終わり、相沢キャップから事件の事を聞かされたイナちゃんは、偽10ドル事件を今回の殺しは関連があるのか…といつもの記者根性を見せるが、相沢キャップに注意され、渋々、上野駅からやす子と共に新婚旅行に出かける。

車中、やす子は、私と事件のどっちが大切なの?と向かい側の席に座ったイナちゃんに文句を言う。

桜田記者クラブの東京日報の部屋に集まった相沢キャップ、八田さん、ベイさん、スガちゃんらは、イナちゃんの噂などしながらも、事件の推理に花を咲かせていた。

ガイシャが、20ドル札をズボンの折り返しに縫い込んでいたのは、手掛かりを残していたんだねと八田さんが指摘する。

そこへ、ヤマさんこと山崎(園井啓介)から電話が入り、ガイシャの爪の間から少量の印刷インクと服に女の髪の毛が発見され、どうやら偽ドルグループの一味らしいとの報告がある。

偽ドル事件といえば、横浜のホテルで使用された事件があり、その際、使用した男は4本指で、左手の手首には錨の刺青があったことから船員関係ではないかと推測されていたのだった。

その頃、ガンさんは、事務員のみっちゃんがコピーしていた記者たちへの「イナちゃんの結婚式の会費として1人400円払うように」との幹事の通達文を観て、自分は今度の事件が入り、ビールの1杯も飲んでないのに不公平だ!幹事は誰だ?と文句を言うが、俺が幹事だと目の前にいたウラさんに睨まれたので、首をすくめる。

イナさんとやす子が向かっていたのは、イナさんの元同級生が宿をやっている長野県千曲市の戸倉上山田温泉だった。

そんなイナちゃん等の席の横を通ってトイレに立った男性乗客(山之辺潤)が、やす子の隣の席に置いていた花束を通路に落としたので、詫びながら、元の席に戻すが、その男の指が4本しかない事にイナちゃんは気づく。

すぐに、その男の後を付け、男が席に戻ると、その動静の監視をしやすいように、やす子と席を交代してもらうイナちゃんだった。

一方、一課長は各社の記者等に、ガイシャの衣服に付着していた髪の毛は、25〜6歳の女性のものと判明したと教えていた。

そこに、1ヶ月前から行方不明になっている立川の印刷工小久保康男がいるとの電話報告が一課長に入る。

その報告を電話で受けた相沢キャップは、その印刷工の妻をこっちでかっぱらおうと言い出し、ただちに本社のサブちゃんこと西郷三郎社会部長に連絡を入れ、自社の車を直ちに立川の印刷屋に差し向け、細君を乗せ月島署に向かわせ、到着するまでに談話を聞き出させようと指示を出す。

現地に飛んだスガちゃんは、行方不明になった印刷工小久保の細君(谷川玲子)に、手首に錨の刺青がある人物を知らないかと車の中で聞くが、細君は何も知らないようだった。

一方、そうした動きに気づかないガンさんは、記者会見後、ちょっと寒いからセーターを取りに記者クラブに戻って来ていたので、ウラさんから、今この時間に事件が動いていたらどうするんだ!と叱りつけられていた。

その頃、イナちゃんとやす子の2人は戸倉駅に到着し、改札前で待っていた元同級生の藤山(待田京介)と挨拶を交わすが、イナちゃんは、先ほどの4本指の男がバスに乗り込むのを観かけると、やす子だけを藤山に車で送ってもらい、自分はバスに乗り込んでしまう。

しかし、結局、バスに乗った4本指の男の行き先も、先に到着していた藤本の旅館「圓山荘」だった。

事情を聞いた藤本は、やす子とイナさんが泊まった部屋に宿帳を持って来て、4本指の男は「川島文雄」と書き込んだと教えるが、それを観たイナちゃんはでたらめだろうなと見抜く。

イナちゃんの影響を受けたのか、急に探偵趣味に目覚めた藤本は、確かにあの男にはおかしなところがある。何とか、手首に刺青がないかどうか確認できないかなどと言い出す。

記者クラブの東京日報部屋では、八田さんが、夏頃の偽ドル事件も未解決のままだし、最近は贋札事件もなかなか尻尾をつかませないようになったね…と嘆息していた。

京橋にある美術商「千賀堂」に1人訪ねて来た刈屋弓子(東恵美子)は、店主の千賀堂(冬木京三)に「宇都木さんは?」と聞くが、すでに奥の部屋に宇都木(木浦佑三)は来ていたので、誰にもバレないと言っていたのに…と、早くも、見つかった死体から偽ドルが発見されてしまった事を抗議する。

しかし、宇都木は、元華族であるあんたの屋敷の地下室で印刷し、この千賀堂が売りさばいた、言わば我々は共犯関係なんだと反論し、千賀堂も、100万ドルをブローカーの小牧に渡しただけだ。小牧もすねに傷持つ身だから口は割らないだろうと言う。

「圓山荘」では、主人の藤山が、イナさん夫婦が土産として贈った「高島屋」のプレすまんシャツを早速着込み、これで少しは新聞記者らしく見えるかい?などと、妻幸代(堀恭子)に見せていた。

その後、藤山はイナさんを誘い、4本指の客の離れの庭先に案内する。

見張りやすくするために、わざと高いこの部屋を通常料金で男に勧めたので、宿としては大損なんだが…と、すっかりブンヤになったつもりの藤山はいう。

その夜、新妻のやす子は、部屋で1人寝ていた。

夜通し、庭で離れの部屋を見張っていたイナさんは、すっかり風邪を引いてしまい、翌朝部屋に戻って来た時にはくしゃみをしていたので、やす子は「ルピット」と言う風邪薬を渡す。

そこへやって来た藤本にもイナさんは「ルピット」を渡してやるが、そこに帳場から電話が入り、4本指の男が姿を消したと幸代から藤本に知らせて来る。

幸代は、5番の客が時計とカメラを盗まれたと言っていると、慌てて帳場に戻って来た藤本に告げる。

ある日、「千賀堂」の店を開けた主人は、いつの間に店に忍び込んでいた小牧(土方弘)の姿を観て驚く。

小牧は、千賀堂から受け取ったドル紙幣の束を投げつけると、うちは闇ドルは扱うが、偽ドルは扱わないんだ!と怒鳴りつけて来る。

千賀堂主人は、うちも、外国人から仏像や歌麿を取られて大損害なんだと弁解するが、小牧は、お前は俺から400万円も取ってるじゃないか!と罵倒される。

小牧の態度に怯えた千賀堂は、昼までに何とか返済すると言い、その場は許してもらう。

その後、千賀堂は、宇都木商会の宇都木を訪ねると事情を打ち明け、何とか金を用意してくれと頼み込む。

千賀堂が帰ったあと、宇都木は机の引き出しから銃を取り出す。

苅屋家の屋敷では電話が鳴ったので、弓子がお手伝いのはる(鏑木はるな)に出るように頼むが、受話器を取ったはるは、相手は何も言わず、すぐに電話が切れてしまったと報告する。

電話の主は、トレンチコートを着た小牧のようだった。

千賀堂にやって来た宇都木は、奥の部屋で主人を射殺する。

東京日報の部屋では、みっちゃんが長椅子のカバーを洗濯のため取り替えてくれていたが、そこにスガちゃんが駆け込んで来て、京橋裏の千賀堂主人が射殺されたという知らせを相沢キャップに知らせた後、ベイさんと千賀堂の事件現場に向かう。

現場には、ガンさんとタケさんが既に来ており取材を進めていたが、そんな中、骨董品の下から偽ドル紙幣が見つかった事、客に出した湯のみには、主人とは別人の指紋がついていたなどと鑑識が梅長に報告する。

出遅れたため、店の中に入りそびれていたベイさんは、路地から店の前の野次馬を見つめていた顔見知りの小牧を見つけ、その後を追うと声をかける。

小牧は、千賀堂が殺されたとベイさんから教えられると驚いたようだった。

そこに、いつの間に嗅ぎ付けたのか、タケさんも近づいて来たので、小牧はそのまま立ち去ってしまう。

千賀堂の店の中に入ったスガちゃんの方は、部屋に残っていた電話番号早見表の開いていたページをその場で手帳に書き写していた。

報告を受けた相沢キャップは、本社のサブちゃんに電話を入れると、千賀堂はドルの仲買をやっていたらしいと伝えていたが、その時、別の電話でヤマさんから、千賀堂の湯のみに残っていた指紋が割れたとの報告が入ったので、本社へかけていた電話の受話器に直接、ヤマさんからの電話の受話器をくっつける。

指紋の主は小牧定夫、闇ドル屋らしいとと言う。

そこに戻って来たベイさんが、小牧はホシじゃない。千賀堂が殺された事を知らないようだったと言う。

新日本タイムスの部屋では、タケさんの方もキャップのクマさんに、ベイさんと同じ読みを報告していた。

殺された千賀堂は何をしようとしていたんだろう?と相沢キャップが疑問を口にすると、仲間に連絡をしようとしていたのではないか?自分はその時開いていた「か」行の電話早見帳を書き写して来たと言うので、その9人の家に、ベイさんが片っ端から電話をして確認する事にする。

千賀堂の代理のものと名乗って、先ほど、主人がそちらに電話をしなかったかと聞いてみるのだ。

すると、苅屋家の女中はるが、さっきの電話は千賀堂さんだったんですねと答えたので、手応えを感じ、電話を切ってしまう。

苅屋弓子は、はるから、又しても、かかって来た電話が途中で切れてしまったと聞き、不審そうな顔になる。

相沢キャップは、苅屋弓子を怪しみ出すと、これを一課長に知らせて恩を売っておこうと言うと、その場から一課長に情報を電話で知らせる。

一課長は梅原部長刑事と、その女は千賀堂の仲間かもしれんと相談し合う。

スガちゃんは、苅屋邸を訪問するが、応対に出て来たはるは、奥様は出かけたと言うので、待たせてもらう事にする。

茶の用意をしに台所へ春が下がった時、スガちゃんは、カーペットに落ちているヘアブラシに気づき、拾い上げると、あなたのものですかと聞きながら春に返す。

はるは違うと良いながら、ヘアブラシを受け取って奥へと戻るが、スガちゃんは、今のヘアブラシに付いていた髪の毛を密かに数本抜き取っていた。

弓子は、会社にいた宇都木の所へ来て、千賀堂を始末した事を抗議していた。

宇都木は、すでに印刷機械も処分したし、偽ドルの証拠は何も残っていないと嘯くが、弓子は、まだうちの地下室に、偽ドルの包みが残っていると教えると、それを持って、今夜、香港に飛ぶと宇都木は答える。

記者クラブに戻って来た菅ちゃんは、持ち帰って来た髪の毛を相沢キャップに見せ、ガイシャの衣服に付着していた髪の毛と照合したらどうかと提案する。

その頃、「圓山荘」では、藤山がイナさんの部屋に飛び込んで来て「4本指の男が殺されている」と報告する。

4本指の男は、線路脇で死体が発見されていた。

早速現場に出向いたイナさんは、現場にいた県警の刑事に、東京警視庁詰め記者クラブのものだと名乗り、死体に近づく。

地元署の刑事たちは、警視庁?と驚く。

一方、その警視庁内では、梅長が東京日報の部屋に来て、スガちゃんが持ち込んだ苅屋夫人の髪の毛が、被害者の衣服についていたものと一致したと教える。

その頃、「圓山荘」に戻って来たイナちゃんは、一刻も早く東京の記者クラブに4本指の男の死を伝えようと特別至急電を頼むが、1時間もかかると電話局から知らされ苛ついていた。

苅屋邸にやって来た宇都木は、弓子が地下室から偽ドル札を持って来る間、銃の弾を確認していた。

弓子が偽ドルの束を持って来ると、それを用意して来た鞄に詰め替え、一つの札束を弓子に渡そうとするが、弓子がいらないと言う風に拒否したので、それも鞄に詰める。

その時、裏庭から忍び込んで来た小牧が部屋の中に入ってきて、400万を返せと宇都木に迫る。

宇都木は平然と銃を取り出すと、小牧に向けたので、ナイフしか持っていなかった小牧は驚いて後退する。

そこに、梅長等が飛び込んで来て、宇都木らを取り押さえる。

その後、ようやく東京の相沢キャップに電話が通じたイナさんは、4本指の男の事を伝えるが、とっくに事件は解決したと聞かされ愕然とする。

県警の話によると、あれは事故だったらしいと言いながら、自分の早とちりに気づいたイナさんの部屋に飛び込んで来た藤山は、夜の散歩に出かけるというイナさんとやす子を見送るしかなかった。

信州上山田温泉の町を散策していた2人だったが、そこに走って来た藤山が、今東京から連絡があり、事件が2つも起こったのですぐに戻って来て欲しいと言って来たとイナさんに伝える。

東京日報の部屋では、相沢キャップと八田さんが、忙しそうに電話の応対をしていた。

外には、ネオン瞬く東京の町並みがあった。