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事件記者 時限爆弾

NHK人気テレビドラマの映画化シリーズの7作目。

今回、記者たちの馴染みの飲み屋「ひさご」に新しい娘が働き始め、それが、タケさんの妹雪子であり、物語の冒頭で、スガちゃんと出会う所から始まる。

今回の事件は、爆破と言う派手なもので、劇中、2度、ミニチュア特撮が登場する。

そこに、「事件記者 仮面の脅迫」にも登場していた楠侑子が、女スリのお吉と言う役で登場し、事件に絡み活躍する展開になっている。

この作品にも、いつものように「ワカ末」はじめ、コピア複写機など、色々なタイアップ商品をわざとらしく写しているシーンがある。

世田谷の描写で、京王線の八幡山駅と言うマイナーな場所が登場するのは、日活が、同じ京王線の布田近辺にあったせいかもしれない。

サスペンスタッチとユーモラスな描写が巧く入り交じり、いつものように肩のこらない娯楽作品になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、日活、島田一男原作、西島大+山口純一郎+若林一郎脚色、山崎徳次郎監督作品。

山間の風景の中、列車が通り、トンネルに入る。

タイトル

客席に乗っていた、東京日報の記者スガちゃんこと菅(沢本忠雄)は、大きく背伸びをした弾みに、足で向かい側の席に置いてあったふろしき包みに包んだ酒瓶を床に落として割ってしまう。

恐縮したスガちゃんは、弁償しますと金を出そうとするが、向かい側の窓際に座っていた、その土産の持ち主の若い女性は、貴重な地酒なのよ!金金って言うけど、あんたなんてどうせ安サラリーマンなんでしょう?と罵倒し、金を受け取ろうとしない。

困ったスガちゃんは何度も詫びるが、相手の女性は決して許そうとしなかった。

とある密室で、トランクに詰めた時限爆弾に付いて説明する男と、金を渡し、それを受け取る男。

説明をした男は、バー「エデン」と言う店で、ピンクレディを飲んでいる相手にこれを渡せと指示する。

バー「エデン」で、ピンクレディを注文したのは黒い眼帯をした男だった。

その眼帯の男に、隣でタバコを口にくわえ、バーテンから火をつけてもらった男が素早くシガレットケースを渡し、床に置いていたふろしき包みをそのままにして店を出て行く。

眼帯の男は、さりげなく、そのふろしき包みを手にすると、店を後にするが、先ほどから店内で、その眼帯の男の様子をうかがっていたスリのお吉(楠侑子)がその後を付けて行く。

新宿駅の改札付近では、今列車が到着したスガちゃんと酒瓶を割られた女が改札口から出て来る。

その側に来た眼帯の男は、子分の松(須藤孝)に荷物を持つように命じるが、その直後、背後から近づいたお近が、わざと眼帯の男の背中にぶつかり、「ご免よ」と声を残して立ち去ると、柱の陰で今男からスリ取ったシガレットケースを開けてみる。

中には「今夜10時 爆破せよ」と書かれた紙切れが入っていた。

警視庁 部屋の壁に「賀正」の札が貼られた正月の桜田記者クラブ

保険の外交員が記者連中に、保険の大切さを説得していた。

そこへ、「タツミ」製の新しいストーブが到着したので、記者たちは大喜びする。

クマさんは、「ワカ末」の瓶を見せて、自分の胃腸はこれでは大丈夫と自慢していた。

そこに、スガちゃんが戻って来る。

今夜は「ひさご」で新年会をやろうと言うことになる、クマさんは、梅長こと梅原部長刑事(深水吉衛)も誘おうと言い出す。

その頃、その梅長は、馴染みであるスリのお吉から電話を受けていたが、10時に爆発すると書かれた紙を見つけたと言うだけで、どうにも信用できない話だったので、適当に断って電話を切る。

ちょうどそこに新年会の誘いでやって来たのがスガちゃんで、何の電話だったのか聞くと、お吉というフーテン野郎で、いつも酔って嘘をつく奴だと教えてくれる。

梅長も新年会に参加するとの返事を持って記者クラブに戻って来たスガちゃんは、部屋のソファに、先ほど列車の中で喧嘩をした娘がいるのに気づき、ここまで文句を言いに来たのかと思い、しつこいなと言いながら身構える。

しかし、その娘は、さっきは安サラリーマンだなんて言ってごめんなさいと低姿勢になっていた。

聞けば、彼女は、新日本タイムスの記者タケさんこと竹本(高原駿雄)の妹で、突然上京して来た雪子(稲垣美穂子)だった。

ところが、肝心のタケさんは、妹に会いたくないのか、逃げ出してしまっていた。

「ひさご」でようやく兄のタケさんと再会した雪子は、兄さんお下宿の大家さんが私を妹だと信用してくれず、部屋に入れてもらえなかったので、ここで雇ってもらうことになったのだと説明していた。

その夜、「ひさご」の2階では、新年会のどんちゃん騒ぎが始まっていた。

そこに、タケさんと雪子も参加することにする。

「台山丸」と言う船が接岸した鳴海埠頭にやって来た眼帯の男は、子分の松に、船に残っている見張りをおびき出せと命じる。

松が船に侵入しようとすると、すぐに監視に見つかり、追いかけられるが、その隙に、眼帯の男は台山丸に侵入する。

船底の倉庫に降りて来た眼帯の男は、その荷物の上に時限爆弾を置くと、タイマーをセットし、スイッチを入れる。

台山丸から脱出した眼帯の男だが、その時、船の中に、一人の船員がラジオを聞きながら、ベッドで休んでいたことに気づかなかった。

眼帯の男が岸壁に逃げ、松と合流して数分後、台山丸は大爆発を起こす。

「ひさご」で飲んでいた梅長は、警視庁に残っていた溝口刑事からの電話で、鳴海埠頭の客船が爆発沈没したとの報告を受ける。

もちろん、その電話の周囲には、各社の記者たちも集合して耳をすませていた。

すぐさま鳴海埠頭に飛んだ記者たちは、沈没した船から、1人の爆死死体が発見され、機関士宮城のネームがあったと聞かされる。

記者クラブの東京日報の部屋に陣取っていた相沢キャップ(永井智雄)の元にイナちゃんこと伊那(滝田裕介)から電話が入り、沈没したのは台山丸と言う貨物船で、足にけがして、船に残っていた機関士が1人犠牲になったと報告がある。

事件の担当は、水上署が受け持つことを聞いた相沢キャップは、珍しいねと答える。

台山丸爆沈事件捜査本部が出来、捜査一課長(二本柳寛)と梅長は、船主である藤田海運の社員等から事情を聞いていた。

船の保険金は一応かけてあったが、作られて18年にもなる老朽船だったので、大した金額ではなかったと言う。

社長たちが帰るとき、電話が入り、梅長が出ると、相手はあのスリのお吉だった。

私の言うことを信じないから、本当に爆発事件が起きたじゃないかと言うお吉を説得し、本部に顔を出すように梅長は頼むが、お吉は行ってやらないよとすね、電話を切ってしまう。

梅長は一課長に失態を詫び、四谷署に行かせましょうと説明する。

本部の前では、先代社長の未亡人藤田みつ江(広岡三栄子)が記者たちに囲まれていた。

中央日々のガンさんこと岩見(山田吾一)が、保険金目当ての偽装爆破じゃないんですか?と推測をぶつけると、夫人は憮然とする。

相沢キャップは、船主はシロのようだねと結論づけていた。

そこに戻って来たヤマさんこと山崎(園井啓介)が、台山丸に詰んであった荷主は、極東電機、三笠油脂、そしての敷島商事の3社だったと報告する。

このままでは、全社に知れ渡ってしまうので、イナちゃんこと伊那(滝田裕介)とスガちゃんに相沢は、散歩して来ましょうと取材を命じる。

しかし、やがて戻って来た2人は、会社の残っている者に聞いても要領を得なかったという。

一方、梅長の元に連れて来られたお吉は、あの紙をすった相手は、眼帯をかけた男だったと説明し、自分も手伝ってやるから、犯人を捕まえようじゃないかと張り切る。

その頃、東京日報の部屋では、八田が、爆発する前、台山丸の監視員は船を離れたそうだね?と確認し、保険金目当てだったとすると、人死にが出たのはおかしいと言い出す。

その後、梅長は、各社のキャップたちを呼び集めると、お吉の名を使い、噓の新聞広告を出して爆破犯人を地下鉄新宿駅におびき寄せたいので協力してもらえないかと相談する。

各社のキャップたちは渋々従うことにし、部屋に戻って来た相沢キャップは、本社のサブちゃんこと西郷三郎社会部長に、明日の夕刊はにぎやかになるよ。だから朝刊に広告を載せてよと頼み込む。

翌朝、台山丸爆破沈没事件の記事を新聞で読んでいた眼帯の男と松は、人死にが出ていたと言うことに驚くと共に、「シガレットケースを拾ったので、地下鉄新宿駅で会いたし。5万で売ります。お近」と書かれた広告を発見する。

松は、広告を出したのは、あの時、あの気にぶつかった女スリだと気づくが、眼帯の男は、誰が行くか!どんな罠が仕掛けているか分かったものではないと不機嫌になる。

桜田記者クラブの室内では、「コピア複写機」で書類をコピーしていた事務員のおみっちゃんこと光子(福田文子)に、ガンさんが、眼帯の男は来ると思うかい?と話しかけていた。

それを見つけたウラさんこと浦瀬キャップ(高城淳一)は、何をそんな所で油を売っているんだ?日報さんは、もう全員すっ飛んで行ったじゃないかと叱りつける。

イナちゃんから相沢キャップに電話報告で、極東電機の保険額は商品価格の60%の3860万と言う常識的な金額、三笠油脂の荷物は蝋燭だったので、回収して溶かせば再生可能なので、90万しか保険をかけていなかったと言う。

相沢キャプは、残る敷島商事の調査を頼む。

それを横で聞いていた八田さんは、荷主がクロじゃないだろうと、この調査に疑問を感じていた。

記者クラブから出て行こうとするタケさんに気づいたガンさんは、こっそり後をつけて行く。

イナちゃんとスガちゃんも合流し、結局4人で一緒に敷島商事に出向くことになる。

応対した小川(深見泰三)が言うには、敷島商事が台山丸に詰んでいたのは、1枚数百円程度の小皿で、総額2500円以上。これに対し、保険金は1500万円程度しかかけておらず、結果、1000万の損害を受けたという。

記者たちが帰ると、小川は隣の部屋で待っていた保険会社員の三神(河野弘)と子分の半田(長尾敏之助)と落ち合う。

三神は、死人が出るとは聞いてなかったと狼狽しながらも、査定して金は出すと小川に告げる。

そこに、あの眼帯の男がやって来て、約束の金をもらいに来たと言う。

「みさご」では、兄がいなくなってしまい、下宿先の部屋の鍵を受け取ってないので、もう少しここでお世話になると、店の女将のお近(相馬千恵子)に頼んでいた。

その後、眼帯の男は子分の松と共に、地下鉄新宿駅に行ってみることにする。

記者クラブの東京日報の部屋では、イナちゃんが、敷島もシロなんじゃないか?と言っていたが、スガちゃんは、荷物のことをもっと詳しく調べてみたいと言い出かけて行く。

イナちゃんは、もはや、片目の男を追うしかないのかと考えていた。

地下鉄新宿駅

梅長以下、刑事たちが張り込んでいると、ヤマさんやガンさんなど各社の記者たちもやって来たので、梅長が困るよと抗議する。

ヤマさんは、自分たちは表の喫茶店にいるので、捕まえたら知らせてくれと梅長に頼んでその場を離れて行く。

やがて、眼帯をした男が現れたので、刑事たちは一斉に取り巻き確保する。

その様子を側で観ていたお吉は、いきなり背後から銃を突きつけられ、シガレットケースを渡せと迫られる。

それは、眼帯を取った男だった。

一方、眼帯をした男の方は、これから九州へ行く所で、今東京に着いた所だ。今日の日付が入った切符も持っていると言い、刑事たちに証拠の切符を差し出す。

東京日報の部屋に戻って来たスガちゃんが言うには、あの船の船底倉庫に小皿を2万5000個も詰め込むのは物理的に不可能らしい。

そこに電話が入り、地下鉄新宿駅から、お吉がいなくなったと相沢キャップに報告がある。

秘密のアジトにお吉を連れて来た眼帯の男は、5万も払えるか!とすごみながら、ナイフを取り出し、シガレットケースのある場所を教えろ!とお吉を脅していた。

お近は観念したように、世田谷区巡沢364…と住所を教える。

一方、捜査一課長の部屋に集結した各社のキャップたちは、お吉を奪取するため、夕刊に載せましょうと相談していた。

お吉から教わった場所へやって来た眼帯の男だったが、目的の家は見つからない。

近所の主婦に住所を確認すると、ガスタンクの向うだと言う。

京王線の八幡山駅に来た男は夕刊を買うが、そこに、行方不明になったお吉のことが載っているのを読み、一杯食わされたと悔しがる。

一方、アジトに捕われていたお吉が部屋をうろつくので、見張り役で残っていた松が文句を言うと、だったら紐で縛ってくれと、お吉は自ら言い出す。

松が、紐でお吉の腕を縛ろうとするが、何度やっても、お吉はその紐を外してしまう。

驚く松に、縛り方を教えてやるからここへ座ってみなと、自分の代わりに松をイスに腰掛けさせたお吉は、松の手と足をあっという間に縛り上げてしまう。

その直後、お吉は近くの交番から梅長に、眼帯の男は実は変装していただけの兼太郎(岩下浩)と言う男だったことと、犯人の住処は谷中の清水町であると通報する。

その頃、アジトに戻って来た兼太郎は、イスに縛り付けられている松を発見、女に逃げられたと知ると、松を殴りつける。

警視庁では、兼太郎逮捕の緊急指令を発令する。

敷島商事の清水は三神に、兼太郎の奴がへまをやったと人死を出してしまったことを指摘し、あいつに50万払うのは業腹だと打ち明けていた。

そこに、イナちゃんとスガちゃんが再度やって来て、小皿をあの船に全部積めますか?と小川に疑問を突きつけるが、小川は癇癪を起こして2人を追い返す。

その頃、捜査一課長は、緊急警戒を指示していた。

記者たちの追及も厳しくなったと危機感を感じた小川は、高飛び用に金がいると言い出した三神に、半田が持っている船の上で払う。わしたちもその船で高飛びすると約束する。

三神は、私には妻子が…と、逃亡に躊躇するが、小川は一足先に半田邸に行っていろと命じる。

東京日報の部屋に戻って来たスガちゃんたちは、東南アジア向けの登記で1枚100円以上のものはないし、登記所で調べたら、奴の言うことはでたらめばかりと話し合っていた。

そこに駆け込んで来たヤマさんが、ホシが割れた。今、梅長たちが追っていますと言いに来たので、記者たちは一斉に敷島商事の前に集まる。

しかし、中から出て来た梅長は、一足違いだったと言う。

すでに、小川は車で逃走用の船に向かっている所だった。

その後、再び、敷島商事に戻って来た三神は、隠れて張っていた刑事に逮捕されてしまう。

三神の口から、小川の向かう先は、東雲23号だと知った梅長は、直ちに捜査一課長に報告する。

ベーさんこと長谷部(原保美)が、場所が割れました。一社残らず向かっていますと相沢キャップに報告する。

それを聞いた相沢キャップは、うちだけの特ダネではないので、残念だねとため息をつく。

それを聞いていた八田さんは、正月早々だから良いじゃないかと慰める。

捕まったのは、昭和海上保険の三神信也と判明し、梅長たちは東雲に向かっていた。

先に船に到着した兼太郎は、半田から持っているバッグは何だと聞かれたので、この前使い残りの時限爆弾だよと教える。

そこに、小川が載った車が到着し、小川も船に乗り込んで来たので、兼太郎はその場で金を要求する。

一旦は、今はそんな場合じゃないと拒絶しかけた小川だが、兼太郎の迫力に負け、その場で50万の札束を渡す。

操縦席に降りて行った小川は、沖に出たら、奴をばらそうと半田に持ちかけるが、それを外で聞いた兼太郎は怒り、船尾においていた時限爆弾のタイマーをセットして逃げ出そうとする。

それに気づいた小川が、背後から兼太郎を射殺する。

パトカーが近づいて来たので、小川は半田に小型船を出港させる。

一課長は水上署への手配を指示、警官たちが遠ざかって行く船に向かって銃撃を試みるが、その弾が操縦していた半田の背中に命中する。

小川は、自分で舵輪を手にして逃げようとするが、次の瞬間、小型船は大爆発を起こす。

それを岸から、驚きながら見つめる警官たちや記者たち。

その後、記者たちは全員、キャップたちも交えて「ひさご」でお茶漬けを食べていた。

そこに電話がかかり、ベーさんから杉並で放火殺人の一報が入ったので、電話を受けたスガちゃんはじめ、記者たちは一斉に飛び出して行く。

雪子は、又、鍵がないと訴えるが、そこに兄のタケさんが戻って来て、ちゃんと部屋の鍵を妹に手渡す。

一人残った雪子は女将のお近に、私、絶対に、記者のお嫁さんにはならないわと愚痴るのだった。