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非情都市

組織の中の一員ながら、一匹狼で協調性がなく、スタンドプレイしか出来ない自己中心的な新聞記者の転落を描く作品。

ある事件を取材して行くうちに、巨悪の存在に気づき、それを記事にしようと張り切るが、圧力がかかり…と言う展開そのものは良くあるパターンだが、記事を取るためにはどんな手でも使ってしまう主人公のピカレスク(悪漢)風の個性(アク)の強さが面白い。

そんな主人公とは、大人の関係と割り切って、単なるセックスの相手をしているうちに、いつしか愛してしまうちょっと哀れな女として司葉子が登場する。

こちらも、単なるか弱い女性でもないし、かと言って、ばりばりのキャリアウーマンと言った感じでもなく、両方を兼ね備えた、ちょっと複雑なキャラクターになっている。

作られた時代が時代だけに、どちらかというと、女の性(さが)に押しつぶされそうになる哀れさが強調して描かれているようにも見えるが、芯はある印象で頼もしい。

平田昭彦演ずるヤクザは、この当時彼が良く演じていたパターンのキャラクターだが、大田原を演じる中丸忠雄の方のキャラクターは、ちょっとナイーブな感じもあり、単なる強面ヤクザではない独特の魅力がある。

後半のクライマックスは、この大田原と三宅が、取調室で面通しをするシーンだろう。

当初、三宅を裏切って警察に売ったと思われた大田原が、意外な言葉を吐く部分は、サスペンスフルであり、かつ意外性もある。

新聞記者ものと言うジャンルは、総じて面白いものが多いような気がするが、この作品もその見事な一例のような気がする。

主役を演ずる三橋達也の代表作の1本かもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、東宝、井手雅人脚本、鈴木英夫監督作品。

早朝の駅を出発する電車。

その駅の高架橋に佇む1人の男。

スーツにソフト帽、出勤鞄を持つその外見はごく普通のサラリーマンのようだった。

やがて、そのサラリーマンは橋を降りると線路脇を歩き始め、近づいて来た電車に身を投げ出す。

「経理部長自殺」「800万横領」「トンネル会社に騙される」などの文字が新聞紙上をにぎわす。

タイトル

東都新報社

社会部長の島津(稲葉義男)がデスクの山下(北沢彪)に、峰岸はいないかと探していたが、いつものごとく峰岸の姿は社内になかった。

そんな島津の元にやって来た坊やが、午前中から会わせろと粘っており、受付を困らせていると説明しながら、1枚の名刺を差し出す。

しかたなく、受付の所に出向いた島津は、3番応接室で待っていた河野珠江(菅井きん)に面会する。

珠江は、飛び込み自殺を遂げた経理部長の妻だった。

自己紹介士をした島津は、パクリ屋が捕まって良かったですねとお愛想を言うが、こわばった表情の珠江は、三宅さんって方、どう言う人なんですか?手形を探してやると言って主人に近づき、結局、利用するだけ利用して、主人の無実は晴らされないまま…、あなた方はこういう事をなさっても平気なんですね!と抗議する。

最初から予期していた相手の出方だっただけに、島津は鷹揚に構え、新聞は庶民の正義の代弁者ですし、ご主人は背任行為に触れますし、新聞は公器ですからね…、訴えられてもどうしようもないでしょうなどと反論する。

東都新報に、同僚が運転する車に同乗して出社して来た三宅哲夫(三橋達也)は、運転していた若者から、デスクになるの、断ったんですって?と不思議がられていた。

社に到着し、車を降りた三宅は、ちょうど社から出て来る都南広告社勤務の並木千晶(司葉子)と出会う。

新聞社の宣伝部に来たのだと言う千晶に近づいた三宅は、気安げに、今晩例の所で会おうと誘う。

千晶は、今日はダメときっぱり断るが、三宅は10時頃と一方的に言い、千晶の腰を触って新聞社に入って行く。

社会部にやって来た三宅は、デスクに領収書の決済を頼む。

三宅が勝手に行っていた防衛庁の取材費だったので、デスクは判を押すのをためらうが、三宅の押しの強さに負けて結局押してしまう。

そんな三宅を呼び寄せた島津社会部長は、さっき河野珠江が来た。河野清一郎の妻だが、お前、パクられた手形を探してやるって、河野に近づいたそうじゃないか?と小言を言う。

しかし、三宅は、俺はあの仕事で局長賞もらったんですぜと憮然とした様子。

そんな人を人とも思わない態度の三宅に、島津は、うちは赤新聞じゃないんだ!と注意するが、三宅は、新聞なんて、大衆が喜ぶ、ドキッとするセンセーショナリズムがありゃ良いんじゃないですか?と真顔で言い返すのだった。

その直後、新協機械の保科社長が、ピストルで撃たれて危篤状態という一報が社会部に飛び込む。

長谷川部長刑事が警視庁から向かったらしいという情報もあり、その手の事件に乗り気でない三宅はデスクに尻を叩かれる形で、渋々取材に出かける。

長谷川部長刑事(佐々木孝丸)は、記者相手に事件の説明をしていたが、三宅は最初からそういう紋切り型の発表等聞く気はなかった。

記者仲間は、大島組の仕業だと三宅に耳打ちする。

三宅も、会社の乗っ取り屋である保科を殺したがっている奴は、財界にはたくさんいるとうそぶく。

そこに、ライバルである毎朝の滝田記者がやって来て記者発表の部屋に入って行ったので、三宅は、あいつにだけは抜かれたくないと睨みつける。

発表が終わり、部屋から出て来た長谷川部長刑事に近づいた三宅は、トイレに行く長谷川部長刑事について行き、出て来たところで、手を洗うために蛇口の水を出して待っていた。

日頃から、その強引さに呆れていた長谷川部長刑事だったが、そこまでされると無視する訳にも行かず、北東興業の榊大作と言うのがホシの兄貴分だとこっそり教えてやる。

早速、三宅は、北東興業に向かうが、ビルの中に入ろうとすると、踊り場に待機していた子分らしき男たちに追い返されてしまう。

仕方なく、入口付近で様子を見ていると、そこに、車でやって来た男が会社に入って行くのを目撃する。

三宅はその男には見覚えがあった。

貝谷雄造(松下猛夫)と言う男だった。

すぐに、社会部のデスクに電話を入れた三宅は、貝谷が顧問をやっている会社を調べてくれと頼む。

デスクは、今どこにいるんだ?と三宅に問いかけるが、三宅はいつものごとく、新橋のさるところ…としか教えなかったので、デスクは顔をしかめる。

近くで電話の様子を聞いていた記者仲間も、いつもあいつは個人プレーなんだと、デスクの心を見抜いたように声をかける。

三宅は、北東興業の裏にある非常口から勝手に中に侵入するが、社長室に近づいたところですぐに子分の一人に発見されたので、貝谷先生、まだ?とごまかしてみたが、あっさり捕まると別室に連れ込まれる。

社長室では、榊大作 平田昭彦)が、貝谷に一丁の拳銃を手渡していた。

保科を撃った凶器の拳銃だった。

貝谷は、どこに隠したら良いんだと困惑しながらも、兵藤金融が金なら融通してくれると榊に教えていた。

別室では、三宅が子分たちに痛めつけられていた。

殴られて倒れた三宅が、テーブルに置いてあった花札を床に落としてしまったので、拾えと命じられ、渋々従っているところに入って来た榊の顔を三宅は見上げ、しっかり確認する。

その頃、都南広告社で働いていた千晶は、女性社員たちから評判が悪い社長から食事を誘われていたが、そこにやって来た同僚チーコが、三宅さんが外に来ていると千晶に教えてくれる。

しかし、千晶は、会いたくないと断ったので、チーコは、この前のデートすっぽかしたでしょう?だから千晶は怒っているのだと三宅に伝言する。

三宅は、それでも千晶を外に呼び出すと、兵藤金融の兵藤を調べてみてくれ、兵藤は女に弱いらしいんだと頼み込む。

それを聞いた千晶は、スパイなんて絶対にお断り!と、強引に自分を利用しようとする三宅の態度に不快感を示すが、結局、三宅の言うことを聞き、兵藤金融の社長兵藤健(松本染升)に会いに出向く。

広告に話だと思って面会を許可した兵藤に、千晶は、新協の社長を撃った犯人をご存知ありませんか?といきなり問いかける。

兵藤は、誰に頼まれた!?と表情をこわばらせる。

その後、飲み屋の「喜文」にやって来た三宅は、店にいた経済部の記者に、貝谷の情報を聞くが、保科には敵が多く、経済部は何も知らないんだと言うだけ。

そこに、千晶がやって来る。

店の外に出て千晶からの報告を聞いた三宅は、大島組に関係があるんだな?と確認するが、兵藤は後は笑っているだけだったと千晶は教える。

千晶が「喜文」に入ると、店の親爺(上田吉二郎)が、酔いつぶれている社会部のアル中記者峰岸(池田生二)にコートをかけてやっている所だった。

今はダメ人間に成り果てたその峰岸も、かつては敏腕記者だったのだと親爺は言う。

三宅が東都新報社に戻って来た時、島津社会部長は局長の猪股(東野英治郎)に呼び出されていた。

猪俣局長は、事件の背後関係に触らんでくれ。君と僕も責任問題だと島津に頼む。

そうした上層部の動きも知らず、三宅は黙々と取材して来たネタを記事にまとめていた。

その後、三宅はホテルで千晶を抱いた。

ストッキングを履きながら、千晶は、「喜文」の借金を5年分ためているそうね?と三宅に話しかける。

すると、シャワーを浴び終えた三宅は、あの親爺は俺って馬に賭けているのさ。峰岸って奴は失敗さ…などと愉快そうに言いながら、フロントに朝刊を持って来るよう電話する。

千晶は、私、あなたのこと、好きになっても良い?結婚しなくても良いのと三宅に問いかけるが、それを聞いた三宅は、しれじゃあ有楽町の女と一緒じゃないかとバカにしたように答える。

それでも千晶は、私が兵藤の所へ行っていること、心配じゃなかった?築地の料理屋で2時間くらい兵藤と行ってたのよ…と思わせぶりに聞く。

それでも三宅が無反応なので、所詮、広告会社の女外交員くらいにしか思ってないのね!と千晶は怒る。

三宅は、ボーイが持って来た朝刊を確認し、昨日入れたはずの自分の記事がボツになっていることを知ると、すぐに島津社会部長に電話を入れ理由を問いただす。

どっかからいちゃもんが付いたのか?広告?営業?と苛つく三宅に対し、君のいつものやり方だが、締め切りぎりぎりに記事を入稿するといつも新鮮に見える。その盲点を突いた演出だと言うことも分かっていると、島津は皮肉で言い返す。

三宅は「喜文」でやけ酒を飲む。

用を足そうと外に出た三宅は、見知らぬ3人の男たちから取り囲まれてしまう。

三宅が連れて来られたのは、榊大作の部屋だった。

榊は、あんたの度胸に惚れたので、あんたに得をさせてやろうと思う。人間1人、預かってくれないかと言い出す。

どうやら、部屋の隅に立っていた大田原行雄(中丸忠雄)のことらしかった。

大田原は保科社長を襲撃した大島組の1人らしく、榊は1週間後に自首させることになっているから、あんたはその時記事にすれば良いと言う。

三宅は、この申し出を考えながら聞いていたが、そんなことを引き受けたら、俺が犯人隠避で刑事訴追されてしまう、近頃のヤクザは当てにならないからな。自分たちだって大田原に手をこまねいているんだろ?と言い、一旦は虚勢を張って断るが、相手方に拉致されている今の自分が断れる状況ではないことを悟ると、預かりましょうか。でも、自首じゃなくて逮捕じゃないと…と未練がましく答える。

桜田門の警視庁

記者クラブにやって来た三宅は、クラブ詰め記者に保科事件の進展具合を問い合わせる。

記者は三宅に、犯行グループは、5人バラバラに逃げているようだと教える。

三宅はその記者に、俺は別のを追っている。君がそいつの手記を書かないか?と頼むが、記者は大丈夫か?と心配する。

その後、三宅は、タクシーでとあるガード下まで来ると、旅館「美作」の裏手に回り、裏口から中に入ろうとするが、その時、貝谷と兵藤が中から出て来て車で帰って行く姿を観かける。

大田原を匿っている部屋に入ると、中で待っていた榊が、もう10日くらい匿って欲しい。大島組の組長がまだ隠れているのに、大田原が先に出て行くのはまずいと言い出す。

三宅は約束が違うと答えるが、榊も後に引かない。

間に入って聞いていた大田原は、叔父貴!と、興奮気味の榊を制止する。

三宅は、今、外で見かけた貝谷の姿をヒントに、金が動いたので飛ぶつもりなんだろう?と、榊にかまをかけるながら、座布団を足で蹴飛ばす。

その下には札束が隠してあった。

俺に内緒で第三者に連絡をするなと頼んでいたのに…、貝谷だろう?誰と来たの?兵藤?言ってくれたら、大田原を東京から逃がしてやると三宅が榊に迫る。

大田原に促されたこともあり、榊は渋々、西コンツェルンの西健作の名前を出す。

西は、青葉屋デパートを乗っ取ろうとして、保科にやられたんだという。

「美作」を出た三宅は、表に回るが、そこに長谷川部長刑事ら刑事が張っているのに気づくと、裏手に再び逃げるが、その近くにも刑事たちが張り込んでいた。

三宅は、再び「美作」に裏から入り、玄関から入って来た長谷川部長刑事を迎えると、ここは東都新報の寮だよと嘘をつく。

長谷川部長刑事らは、一応その言葉を信じたのか帰って行く。

すでに手が回りつつあることに気づいた三宅は、その夜、大田原を乗せ、車で東京を離れる。

後部座席に乗った三宅は、山梨に、砂利屋をやっている友達がいるので、そこに行こうと隣に乗った大田原に説明する。

大田原は、俺も大島組の幹部だ。あんたのことは誰にも話さないと約束する。

やがて、運転していた若者は、前方に警察の検問があることに気づく。

三宅は慌てず、一旦車を停め、外に出ると、車のアンテナに東都新報の社旗を取り付け、大田原と席を入れ替えると検問所へ向かわせる。

警官が後部座席を覗き込むより早く、窓から首を出した三宅は「何かあったんですか?」と問いかけ、記者証を出してみせる。

すると、警官は、奥に座っていた大田原も記者と思ったのか、そのまま通過させてくれる。

後日「喜文」で東都新報を読んでいた親爺が、保科事件では毎朝に負けているねと、その日も店の中で酒浸り状態だった峰岸に話しかける。

峰岸は、おっかないんだろうな…とつぶやく。

そこに、千晶が入って来て、三宅に私が言ってたって内緒よと前置きし、政財界に信用ある人が深入りしないで欲しいって伝えて欲しいと親爺に頼む。

それを聞いていた峰岸は、あいつは暴走列車のように突っ走っているんだ。昔の俺みたいにな…とつぶやく。

その頃、三宅は、通りに出て来た西の秘書に、西さん、パスポート取ったそうだね?と話しかけるが、全く相手にされないので、東都新報の三宅がとことん勝負するって大将に言っといてよと声をかける。

その頃、雨が降る山梨の採石場でぶらついていたサングラス姿の大田原は、刑事が迫って来るのに気づき逃げ出すが、すぐに捕まってしまう。

記者クラブ詰めの記者が、本社の島津部長に会いに来る。

山下デスクと共に屋上に上がった記者は、警視庁が三宅に任意出頭を命じたと報告する。

あいつ、どこからか金でももらっているのか?と怪しんだデスクに、記者は、10日くらい前に三宅が記者クラブに来て、逮捕直前の記事を自分に書かないかと言われたと教える。

その後、島津部長は、又、猪股局長に呼ばれる。

猪股局長は、島津の顔を見るなり、清新銀行とトラブルを起こすのは困るよと苦情を言う。

清新銀行の久我重役に会いに来ていた三宅は、秘書から会社からお電話ですと言われたので、戸惑いながら受話器を受け取る。

ここに来ていることを会社に知らせてなかったからだ。

電話の相手は山下デスクで、今、四課の矢部主任から君に任意出頭の指示が出ている。君はまさか、保科事件のホシをナニしたんじゃないだろうな?と言われる。

島津部長からも、すぐに社に戻れと命じられる。

三宅は、この銀行側が東都新報に、自分が来ていることをリークしたなと気づき、その後は、会社から電話がかかって来ても、もう自分は帰ったと秘書に言わせ、そのまま居残ることにする。

やがて、三宅と対面した久我重役(小川虎之助)は5分間だけと言う条件付きで面会を許したので、青葉屋デパートの株の買い占めに3億2000万出されたと言うのは本当ですか?と急いで質問するが、久我は、銀行が豚に真珠をくれてやるような真似をしないし、西さんとも最近会っていないと否定する。

しかし、三宅は、最近久我重役と西が会っていると言う証拠を挙げ、西は今日、羽田から出発した。兵藤の空き地会社に9500万無担保で融資していますね?などと次々に質問するが、久我は答えなかった。

東都日報に戻った三宅は、待っていた山下デスクから勝手な行動に対する文句を言われるが、僕はあんたと違ってごますりが出来ないんだ!と三宅が罵倒したので2人は険悪なムードになる。

その時、甲府で大田原行雄が捕まったという知らせが飛び込んで来たので、三宅は呆然となる。

「喜文」に立ち寄った三宅の顔を観た親爺は、任意出頭だって?と心配する。

相変わらず店の隅で酒を飲んでいた峰岸の側に来た三宅は、自分がそれまで取材したメモを取り出すと、これを読んで、記事に書いてくれないか?今日を逃すとダメになるんだと頼む。

メモをざっと読んだ峰岸は、その内容に何かを感じ取ったのか、書くよ…と約束する。

警視庁に出頭した三宅は、捜査四課長(熊谷二良)と長谷川部長刑事に取り調べられることになる。

大島組の大田原を知っているね?と捜査四課長から聞かれたので、三宅は、3年ほど前に会ったことがある。売春グループの取材で、4、5日協力してもらっただけだととぼける。

あんたは最近、太田のツケで飲んでいると言う噂がある。捕まった大田原はあんたに連れて来られたと言っていると捜査四課長が追求すると、そんな話、信じるんですか?俺がそんなことをしたら、出世がパーになるんですぜとシラを切り続ける。

じっと話を聞いていた長谷川部長刑事が、ちゃんと正直に言えよと真顔で説得し、大田原を取調室に連れて来て、三宅と面通しさせる。

三宅は大田原に、お前も大島組の幹部じゃないか!いい加減なこと言うなよと睨みつける。

大田原はそんな三宅の表情を見ながら、すみません。この旦那の名を出せばごまかせると思ったので、捕まった時ついそう言っちまったんだが、この人とは3年前、田坂組の売春グループの取材をするってんで、4、5日世話しただけなんですと捜査四課長に謝る。

三宅の言ったことと合致した内容だったので、捜査四課長と長谷川部長刑事は相談し、結局、三宅を帰すことにするが、長谷川部長刑事は帰りかけた三宅に、まさか、俺を裏切りやしないだろうな?と耳打ちして来る。

東都新報では、島津社会部長が、三宅が書いていた今回の記事は自分が命じたものではないし、中間報告もなかったと、呼び出された猪股局長に弁明していた。

三宅の独断専行だと分かると、猪股局長は、配置転換をする手もあるとつぶやく。

会社に三宅が戻って来ると、役員室で部長が呼んでいると坊やが伝えに来る。

出向いて見ると、島津社会部長は、北海道へ行く気はないか?といきなり切り出して来たので、三宅は憤慨し、どうしてこの記事をボツにするんですか?と聞くと、清新銀行と西コンツェルンのことだろ?高校生の理屈のようなことを言うな!君は社会正義でもしているつもりか?と怒鳴りつける。

三宅は、榊大作に聞けば…とメモを見せながら粘るが、島津社会部長は、ダメだったら、ダメだ!と拒絶し、破らないのか?この前は破ったじゃないかと、三宅が差し出したメモの束を指す。

三宅は、その取材メモを持って、前の社会部長だった論説委員(江川宇礼雄)の所へ持って行くが、昔の社会部長がこんなことを言うのは恥ずかしいが、これまでの我が社の取材ソースは偏っていた。これはいい材料なんだがな…と、メモを見ながら言うだけだった。

それでも三宅は諦め切らず、専務を捜すが、見つからなかった。

取材メモを上着のポケットに入れたまま、呆然と廊下に佇んでいた三宅の側に来た仲間の記者が、今、千晶から預かって来たと言い、封筒を手渡す。

その中身を読んだ三宅は外に飛び出して行く。

外にまだいた千晶に出会った三宅は、興奮気味に、このネタ、誰に聞いた?と詰め寄る。

千晶は、うちの社長、西コンツェルンの顧問やるって…と答えるだけ。

いら立った三宅は、どこから出たネタなんだと千晶にさらに迫るが、千晶は冷めたような表情で、私、ニュースにしてもらおうつもりでその手紙書いたんじゃないわ。裏にそんな大きな動きがあれば、記事になるはずがないと分かると思って…と三宅に告げる。

すると三宅は、何を思ったのか、突然、俺と結婚しよう!結婚したいんだろう?と千晶に笑いかける。

千晶は、あなたって酷い人ね。子供につくような嘘が良く言えるわねと泣き出し、あなたはひからびたコンクリートじゃない!薪雑把(まきざっぽう)みたいな事件記者じゃない!誰があなたのために泣くもんですか!と言い返す。

三宅は諦め、持っていた封筒を破り捨てる。

そこに、長谷川部長刑事が近づいて来るのを見た三宅は、もう一度、千晶に情報源を聞こうとするが、千晶は、何度言ったら良いんです!と態度を変えようとしないので、三宅は、最後の手もダメか…と肩を落とす。

そこにやって来た長谷川部長刑事は、三宅哲夫!犯人隠避で逮捕する!と言い渡す。

手錠をかけられ連れて行かれる三宅は、オヤジさん、俺は無罪になってみせるぜとうそぶき、千晶の方を振り返る。

留置された三宅に面会に来た山下デスクは、部長の代理で来たと言い、辞令を示しながら、君には辞めてもらうことになったと告げる。

それを聞いた三宅は、俺は社のためにやったんだよ!と立ち上がるが、山下デスクは、社の面目と言うこともある。隠匿罪の男を飼っとく訳にもいかんだろう。新聞を敵にするなよ…と冷たく言い返す。

三宅は、看守に促されながら立ち上がると、山下デスクに、部長に言っとけ、あのネタは絶対に捨てないからなと言い残し、まっすぐ前方を見つめながら牢に戻って行く。

帰社後、山下デスクからの報告で聞いた島津社会部長は、あの男から新聞記者の肩書きを取ったら、丘に上がった河童のようなものだと笑う。

編集部の中で、三宅が捕まった記事を読んでいた峰岸は、バカな奴だ…とつぶやくのだった。