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ゴジラ

過去、何度も観て来た作品だが、マニアも多く、ネット上で熱く語る人が多い事もあり、今まで書きそびれて来たが、今改めて見返して、やはり、この初代「ゴジラ」は名作以外の何ものでもないなとの思いを強くした。

この作品、香山滋と言う原作者が存在している作品(正確に言えば、東宝側の依頼により原作のようなものをまとめた方であり、原作本が先にあった訳ではないのだが…)だけあって、文芸作風の「品」があるのだ。

山根博士、その娘恵美子、そして、芹沢と言う「3人の苦悩する人間」がしっかり描けているので、何度観ても惹かれる。

ゴジラ騒動は、実はこの3人の苦悩の背景に過ぎないようにさえ感じられる。

こうした描き方は、なかなか他のモンスター映画には見られない特長ではないだろうか?

過去、こうしたパニックものやモンスター映画に、ここまで真に迫った苦悩が描かれただろうか?

貴重な生物と出会えたのに、それを研究するどころか、殺す事ばかり求められる生物学者山根の苦悩。

かつての許嫁恵美子の心を、尾形と言う別の青年に奪われた失意の科学者芹沢の苦悩。

芹沢は、ただ、自分の研究を葬り去らねばならない事だけに苦悩しているのではない。

自分の愛情表現として、恵美子だけに見せた「秘密」を、悲惨な惨状を見かねたためとは言え、あっさり別の青年に打ち明けられてしまったという衝撃。

つまり、この事実だけで、恵美子の愛情は尾形の方にあると言う確信を芹沢は抱き、自らの運命に絶望したのだ。

戦争で顔に傷を負ってしまったという不幸、そして、研究途中で恐ろしい殺人兵器にもなる新発見をしてしまったという不幸に加えて、最後の希望の星であった恵美子の心さえも失ったという絶望感。

芹沢が、最後に死を選んだのは、この暗黒の現実から逃れる為だったのかもしれない。

恵美子も、父親や芹沢ほどではないにしろ、女性としての苦悩に悩んでいる。

こうした3人の様子を、本多監督は、奇をてらわず丁寧に描いている。

もちろん、ゴジラによる災害被害や、被害者達のリアルな姿と言った惨状の描き方も見事で、そうした描写の積み重ねがこの映画を心に長く焼き付ける力となっている事は言うまでもない。

そして、この映画が、それまでのモンスター映画と一線を画すのは、報道を巧みに描いている事ではないかと思う。

昭和29年の作品だが、テレビは前年にNHKと日本テレビが本放送を始めたばかりの頃で、まだ一般家庭には普及していない時代である。

その事を示すように、劇中にはラジオも登場している。

そのラジオ中継用のアナウンサーの実況放送の迫力と、テレビ映像による生々しい同時中継風の画面が全国に一斉に流れると言うテレビ時代幕開けの頃の姿。

今では当たり前になった光景だが、こうした状況を映画の中で描くのは、当時としては革新的な技法だったはずである。

このテレビ中継で、芹沢が、ゴジラが巻き起こした惨状を地下の実験室でじっと観ているというのも、最後の行動への引き金になっているのではないかと、観客が想像する仕掛けにもなっている。

このように、この作品、怪獣映画なのに、「怪獣」に触れなくても映画として見応えがあると言う事が分かる。

そして、怪獣ゴジラの描写の方も、当時としては見事なのだから、この作品が名作と言われるのも当然だろう。

後に続く、娯楽に徹したシリーズ作品も皆それなりに楽しいが、時々、この味わい深い初代に触れてみるのも感慨深いものがある。

ちなみに、後年のゴジラのイメージからか、ゴジラ作品はいつもカメラ位置が高くて、人間の視点ではないと言う指摘もあるが、この初代に関しては、路線を覆う電線の位置などを見るまでもなく、ちゃんと下からあおり気味に撮っているシーンが多い事が分かるだろう。

又、品川駅に接近するゴジラの、足下に舞い上がっている小さな瓦礫や土埃の描写など、今観ても感心するアイデアに満ちあふれているのも魅力である。

後に「怪獣大戦争マーチ」としてマニアに知られている有名なメロディも、既にこの作品から使われている事が分かるだろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1954年、東宝、香山滋原作、村田武雄脚色、本多猪四郎脚色+監督作品。

「賛助 海上保安庁」の文字

東宝の会社クレジット(ドーン、どーんと言う、ゴジラの足音のような音)

タイトル(ゴジラの鳴き声)

スタッフ・キャストロール(ゴジラの足音のような音)

海の船の航跡

甲板上で、船員達が楽譜を観ながらハーモニカやギターをかき鳴らし、休息している。

その時、まばゆい光と共に、海中が光り、船員達は、海から噴射して来た何かに覆われる。

ギターが甲板に転がっている。

SOSを打電する無線室に、窓を突き破って水が入って来る。

海上保安庁では、栄光丸からの遭難呼出波を受信していた。

南海サルベージの部屋にいた尾形秀人(宝田明)は、鳴り出した電話を取る。

一緒にいた恋人の山根恵美子(河内桃子)は、何か、事故でも?と、緊張した表情の尾形の様子を心配するが、本社の船からSOSが入ったので、これには行けなくなったと言いながら、恵美子が持って来た「ブダペスト弦楽四重奏コンサート」のパンフレットを返して部屋を後にする。

海上保安庁では、南海汽船の栄光丸7500トンが、8月13日、19時5分、北緯24度、統計141度2分付近で消息を絶ったと報告がある。

そこに、尾形と共にやって来た南海汽船社長(小川虎之助)は、原因は何でしょうと聞く。

保安員達は、さっぱり分からない。明神礁の爆発の時とそっくりで、SOSを出した後すぐに消息が途絶えた.今、備後丸が現場に急行していると説明する。

その備後丸も、海面が光り、突如大爆発を起こして沈没していた。

保安庁に詰めていた新聞記者の萩原(堺左千夫)は、社に電話で逐一事件を報告していた。

そこに、栄光丸と備後丸の乗組員の家族達が駆けつけて来て、捜査を増やせと詰め寄る。

その頃、遭難船の生き残り3人が丸太に捕まって漂流していた所を何とか救出され、大戸島に入港したらしいので、今、巡視船「ほだか」を向かわせたという連絡が入る。

その場にいた家族達は、栄光丸、備後丸、どっちの生存者なんだと質問して来る。

南海汽船社長は、とにかく生存者がいたのだから、これで、事件の原因も掴めるでしょうと一安心したようだったが、その直後、又新しい連絡が入ったらしいので、尾形も社長も被害者の家族達も、連絡室になだれ込む。

そこにいた保安員は、信じられないような表情で、大戸島の漁船もやられた…と告げる。

大戸島では、兄の漁夫政治が行方不明になった新吉(鈴木豊明)と一緒に海を見つめていた長老(高堂国典)が、どう考えてもただ事じゃねえ…とつぶやいていた。

その時、新吉が、何かが流れて来た!と海を指しながら立ち上がる。

長老も、それが筏だと気づく。

海岸に集まっていた島民達は、一斉に海に入り、気絶したまま筏に乗っていた政治(山本廉)を救出する。

新吉は「兄さん!」と呼びかけ、母親(馬野都留子)も、「まさじ!」と呼びかけると、ようやく気づいた政治は、「やられただ…」と目を見開き、又気絶してしまったので、新吉は、何にやられただ?と声をかける。

その日から、大戸島の漁民達の網には雑魚一匹かからなくなってしまう。

長老は、やっぱりゴジラかもしんねえ…とつぶやくが、それを聞いた娘達は笑って相手にしない。

すると長老は、昔からの言い伝えをバカにすると、今にお前達のようなアマっ子をゴジラの餌食にしなきゃならなくなるぞと脅す。

そんな海岸に、本土からヘリが飛来して、新聞記者の萩原が降り立つ。

政治にインタビューした萩原だったが、巨大な生物に襲われたという話を全く信じられなかったので、政治は、誰も信じてくれないといら立ち、話を自ら打ち切って去ってしまう。

その夜、島で行われたお神楽を前に、萩原は長老から、この島に古くから伝わる「ゴジラ」の話を取材していた。

長く時化が続く時には、若い娘っ子を生け贄にして沖に流したものだ。今は、この事を伝える神楽だけが残っていると長老は言う。

その夜は嵐になる。

新吉の家はきしみ、異変を感じた新吉は、寝床から抜け出ると、外に様子を見に行くが、それを止めようと起きて来た兄政治は、何者かを観て身をすくませる。

次の瞬間、家は倒壊し、外に出ていた新吉はぬかるみに倒れながら、「兄ちゃ〜ん!おっかちゃ〜ん!」と叫ぶが、その声に気づいた近所のもの達が集まって来る。

萩原が乗って来ていたヘリも、海岸で大破していた。

後日、「大戸島災害陳情団」が乗ったバスが国会にやって来る。

議会では、大山議員(恩田清二郎)が、大戸島で起きた災害被害、破壊家屋17、死者9名の内訳を稲田村長(榊田敬二)に質問していた。

稲田村長は、牛12頭、豚8頭を言い忘れていたと答弁する。

証言者としてマイクの前に立った新吉は、生き物だったと答え、萩原も、到底台風被害としては考えられず、ヘリコプターも、上から押しつぶされたとしか見えないと答弁する。

次いで、マイクの前に立った古生物学者の山根恭平博士(志村喬)は、ヒマラヤ山中には、未だ正体不明の雪男の足跡などが発見されてる事例もあると発言する。

大戸島災害調査団が乗り込んだ「しきね」が出航する港には、大勢の見送り客と共に、右目に眼帯をした科学者の芹沢大助(平田昭彦)も混じっていた。

それに気づいていた尾形は、一緒に大戸島に向かう恵美子に、芹沢さんが見送りに来ているなんてよっぽどの事だ。最後の別れに来たのかもしれない。危険水域は避けて行くが万一ってこともあるからね…などと言う。

大戸島に到着後、調査を始めた田辺博士(村上冬樹)は、とある井戸の付近でガイガーカウンターに異常を発見、当分、この水は使わないようにと近所の住民に告げながらも、放射能雨だとすると、この一帯だけ部分的に放射能が検出されるという事態に当惑しているようだった。

山根博士は、同行していた萩原記者に、これが、ある生物の足跡だとしたら、君は信じるかね?と言いながら、巨大なくぼみを示していた。

田辺博士は、そのくぼみにもガイガーカウンターが反応する事に気づく。

山根博士は、そのくぼみの中に、トリオバイト(三葉虫)を発見し、採集するが、それを観ていた田辺博士は素手で触らない方が良いと注意する。

その後、島の半鐘が鳴り渡り、島民たちが、手に手に手かぎなどを持って山を登り始める。

恵美子も尾形に手を引かれ山道を登って行く。

上で待ち構えていたのは山根博士だった。

恵美子達が到着すると、私は観た!確かにジュラ紀の生物だと興奮しているようだった。

その時、山の背後から、巨大な怪物が上半身を覗かせたので、島民達は一斉に逃げ始める。

途中、恵美子が転んだので、助け上げた尾形は、近くの草むらに身を隠す。

怪物はいつの間にか姿を消していた。

恐る恐る、又山を登って行った島民達は、山頂から下を海岸に残っていた巨大な怪物の足跡を見下ろすのだった。

東京に戻った山根博士は、この大戸島で発見した怪生物の報告を国会でしていた。

今から200万年前、ジュラ紀から白亜紀にかけた時期に、海棲爬虫類から陸上爬虫類に進化する途中の生物で、大戸島の伝説に従い「ゴジラ」と呼称しますと発表する。

度重なる水爆実験で安住の地を追い出されたものと推察されると言いながら三葉虫を山根博士が披露すると、説明を聞いていた女性議員小沢(菅井きん)は驚く。

記者から、水爆との関連性を問われた山根博士は、ストロンチウム90の発見、足跡の中にあった砂粒から見つけたと説明する。

ゴジラも、水爆放射能因子を持っていると言う山根博士の解説を聞いていた大山議員は、このような重大な報告はとても公表できないと言い出すが、それを聞いていた小沢議員は、重大だからこそ公表すべきだ!と抗議する。

大山議員はそれでも、ゴジラが水爆の落とし子だなどと発表したら国際問題になると主張するが、小沢議員は、馬鹿者!何を言うとるか!事実は堂々と発表しろ!と異議を申し立てる。

その後も、ゴジラの餌食になったのか、17隻もの船が沈没していた。

電車の中でも、ゴジラの話題で持ち切りで、長崎から疎開して来たという女性は、ゴジラが東京湾にでも現れたらどうしたら良いだろうと心配し、聞いていた男性客も、又疎開か…とうんざりしたように応じていた。

特設災害対策本部には、陳情団が詰めかけていたが、東経138度〜7度、北緯33度4分〜8分の範囲内にフリゲート艦隊が爆雷攻撃をしかけると言う発表が、記者達相手にさせる。

その爆雷攻撃の様子を報道するテレビニュースを自宅で観ていた山根博士は、一人立ち上がると億の自室に入って行く。

新吉は、どうかしたんでしょうか?と不思議がり、尾形は、先生は動物学者だから、ゴジラを殺したくないのだと答える。

心配した恵美子が、父の部屋に入ってみると、山根博士は、電機も付けないくらい部屋の中でじっと座っていたので、灯りを点けて声をかけるが、博士は1人にしてくれ。電気を消してくれと頼むのだった。

その後、東京湾の上を航行中の遊覧船の甲板上では、男女がダンスなど興じていたが、その時、一人の女性客が階上に首を出したゴジラの姿を発見して悲鳴を上げる。

その事を知らされた山根博士は直ちに対策本部に駆けつけて来る。

係官は、このままでは外国航路も停止しなければならないと顔を曇らせ、いかにしたら、ゴジラの生命を絶つ事が出来るのか聞いて来るが、山根博士はそれは無理だ。水爆を持ってしても生きながらえているゴジラをいかに殺す事が出来るでしょう。それよりも、生物として研究すべきだと主張する。

その頃、新聞社にいた萩原は、デスクから、至急あってもらいたい人物がいる。山根博士の養子になるべき人だととある人物の名を教える。

南海サルベージに来ていた恵美子に、ちょうど尾形も芹沢の事を話している所だった。

何とか、自分達の事を芹沢に承知しておいて欲しい。あの人も、戦争さえなければ、あんな傷を負うはずもなかったのだと。

恵美子は、昔から、芹沢の事はお兄さんのような人だったし、今もそうだと尾形に説明する。

そこに、正吉が入って来て、記者の萩原さんが来ていると言う。

その直後に顔を出した萩原は、お嬢さんにお願いがある。芹沢さんに会いに行ったのだが門前払いを食ってしまったので、何とか紹介してくれというのだった。

それを聞いた尾形は、僕も会って、さっきの事を切り出そうと、恵美子との交際のことを言い出すが、恵美子は、自分の口から伝えると言うので、尾形は、新吉の学校のこともあるので、後で自宅の方へうかがうと言い、恵美子に日傘を渡すと送り出す。

尾形はその後、後ろに新吉を乗せてバイクで山根邸にやって来る。

一方、芹沢科学研究所を訪れた萩原と恵美子は、自分は全くの畑違いだと、応対した芹沢から言われていた。

萩原はそれでも、スイスの特派員が、ドイツ人から聞いた話として…と食い下がろうとしたが、芹沢は、自分はドイツ人の友人など1人もいないとはっきり否定する。

今はどんな研究を?との質問にも、特にこれと言ってとはぐらかされ、全く相手にしてもらえなかった萩原は、仕方なく研究所を後にする事にする。

その後、残った恵美子が、今、何を研究してらっしゃるの?と聞くと、芹沢は、見せてあげようか?その代わり、絶対秘密ですよ。僕の命がけの研究なんだと念を押して来る。

恵美子が約束すると、芹沢は彼女を地下の研究室に連れて行く。

そこには、大きな水槽が置いてあり、魚が泳いでいた。

芹沢は、その水槽に、乳鉢から何かを少量投じ、電源のスイッチを入れると、水槽の側で覗き込んでいた恵美子をもっと離れるように抱きかかえる。

水槽の中の様子をじっと見つめていた恵美子は次の瞬間悲鳴を上げ、両手で顔を覆うのだった。

芹沢は、あなただから見せたのだ。それを忘れずに…と口止めをし、恵美子も、絶対に秘密守りますと約束して帰宅する。

尾形と新吉が来ていた自宅に戻った恵美子は元気がなかった。

山根博士が茶の間に来た時、サイレン音が響き、ズシン、ズシンと言う地響きが聞こえて来る。

ゴジラだ!ゴジラが来たぞ!と山根博士はつぶやき、外に飛び出す。

その後を追おうとした尾形に近づいた恵美子は、あの事を、芹沢に言いそびれたと謝る。

海岸に設置されていた防衛隊の機銃が掃射される。

海岸近辺の住民は一斉に避難を開始する。

その避難民が殺到していた鉄橋にやって来た山根博士は、これ以上先には行けないと制する警官に、ゴジラに光を当ててはいけない。ますます怒るだけだと伝えてくれと言う。

尾形は、これ以上進めないと分かると、山根博士を高台の方へ誘う。

ゴジラは、品川駅に近づき、近づいて来た列車は、ゴジラの足に衝突し転覆する。

ゴジラは、その車両の一両をくわえて、地上に吐き出す。

さらにゴジラは鉄橋も持ち上げ破壊する。

それをじっと見つめる山根博士。

その後、各国の調査団が続々来日する。

対策本部では、海岸線に鉄塔を張り巡らし、高さ30m、幅50mの有刺鉄条網を張って、5万ボルトの電流を流すと発表。

避難民は続々施設に集まって来る。

防衛庁駐屯部隊から戦車など攻撃部隊が出発。

巨大な鉄塔がない海岸沿いに並ぶ。

港区、品川区、大田区に完全避難命令の臨時ニュースが流れる。

恵美子の家を訪れていた尾形は、今日こそ、お父さんにはっきり了解をもらおうと、二人の結婚の話を煮詰めていたが、そこに、憔悴し切った山根博士が帰宅して来て、ゴジラを殺す事ばかり考えて…、物理衛生学の立場から研究しようとしないのか?と悔しがるので、つい尾形は、ゴジラこそ、日本に覆いかぶさった水爆そのものじゃないですかと反論したので、君まで、ゴジラを抹殺しようと言うのか!帰ってくれたまえ!と怒った山根博士は自室にこもってしまう。

尾形は言い過ぎたと反省するが、恵美子は、ゴジラが出現してから、お父様はどうにかしてしまったのよと悲しむ。

その時、臨時ニュースで、ゴジラが京浜地区に接近したとの報道がある。

鳥かご

ゴジラが上陸する。

第3管区の鉄条網に電流を流し、防衛隊の砲撃開始。

ゴジラは口から白熱光線を吐くと、鉄塔が溶け始める。

進撃するゴジラの背びれが光り、口から吐かれた白熱光は、家や逃げる人間達を焼き尽くして行く。

ガスタンクも爆発し、消防車も駆けつけるが、途中で横転するものもあり、町は火の海と化して行く。

防衛隊の戦車隊が砲撃を開始するがゴジラには通用せず、芝浦地区の火災は特にひどかった。

警戒本部の司令で、避難民の救助に全力を傾けろと言う通達があるが、それを聞いていた警官達が気づくと、ビルの上にゴジラの顔が見え、逃げる間もなく、パトカーが白熱光で燃え上がってしまう。

火の見やぐらが倒れ、海浜地区の町は無人状態になって行く。

そんな中、3人の幼子を抱きうずくまる母親の姿。

鳥籠の向うをゴジラが通過して行く。

銀座松坂屋をゴジラの白熱光が焼き尽くす。

火の粉が舞い落ちる中、幼子を抱いた母親は、もう、お父様のそばに行くのよと子供達に話しかける。

11時の時報を、銀座和光の時計台が鳴らすと、ゴジラは時計塔を破壊。

そうしたゴジラの猛威の状況を実況していたのは、GHKのアナウンサー。

信じられません。銀座尾張町、新橋、田町方面は火の海です。今ゴジラは移動し、数寄屋橋方面へ向かいました!

世紀の怪事件です。200万年前の昔に引き戻されたのでしょうか!

ゴジラは日劇を破壊し、国鉄の高架線を壊す。

対策本部も、地下室へ退避した直後、建物が崩壊する。

ゴジラは、国会議事堂を破壊して進撃する。

実験放送用のテレビ塔の上から実況中継していたアナウンサーは、ますます近づいて参りました。右手を鉄塔にかけました。いよいよ最後です。さようなら、皆さん、さようなら!とレポートした直後、倒壊する等と一緒日常に落下して行く。

ゴジラはその後、上野、浅草を通過し、隅田川から海上へ戻って行く。

その惨事を、テレビを通じて芹沢も実験室で見守っていた。

尾形、恵美子、山根博士らと共に、高台から、ゴジラの被害状況を観ていた新吉は、何度も「畜生!」とつぶやいていた。

ゴジラは勝鬨橋を破壊していた。

その時、防衛隊のジェット機が飛来し、ゴジラにミサイルを発射する。

ゴジラはそれを嫌ったのか、海中に没して行く。

又あいつが戻って来たら、どうしたらやっつけられるんだ、畜生!…そう叫ぶ群集の声を背後に聞いた山根博士は、哀しげな表情になる。

避難所には負傷者が次々に運び込まれ、床から廊下に至るまで、累々と被害者達が並んでいた。

そうした被害者の子供にガイガーカウンターを当てて調べた田畑博士は、助手を務めていた恵美子にゆっくり首を振ってみせる。

母親を失い泣きじゃくる幼女を抱き上げて慰める恵美子。

そんな恵美子に会いに来た尾形だったが、恵美子は階段を上がり二人きりになると、重大なお話があるんです。もう黙っていられません。私は喜んで裏切り者になります。芹沢さんと約束した事があるんです…と暗い表情で語り始める。

(回想)あの日の事…

水槽に電流を入れた瞬間、水槽の中は泡立ち、次の瞬間、中で泳いでいた魚達は、全て骨になってしまったのだ。

芹沢が言うには、水中の酸素を一瞬にして破壊してしまう「オキシジェン・デストロイヤー」というものらしい。

酸素の研究をしている途中で発見したもので、そのあまりのエネルギーの凄まじさにぞっとしてしまい、2、3日は、食事も咽を通らなかったと言う。

この砲丸大のものが1つあれば、東京湾を死の墓場にする事も可能だというので、恵美子は、もしそんなものが恐ろしい目的で使われたら…と心配すると、兵器として使われれば、水爆と同じように人類を破滅に導くかもしれませんと芹沢も同意し、もし、何らかの形で、使用する事を強要されたなら、僕の死と共に研究を消滅させるつもりですと答える。

恵美子は、お父様にも絶対言いませんわと約束したのだった…

(現在)話し終えた恵美子は、とうとう約束を破ってしまいましたと言うので、聞いた尾形は、この悲惨な状況を観たら、芹沢さんも許して下さるに違いありませんと慰める。

その後、2人で芹沢科学研究所を訪れ、オキシジェン・デストロイヤーを使わせて下さいと頼んだ尾形だったが、応対した芹沢は、オキシジェン・デストロイヤーとは何だね?僕には全然分からんねととぼける。

尾形は、何故ごまかすんです?と迫り、恵美子も、何もかも尾形さんに話してしまったんです。どうかあれを使わせて下さいと頼み込む。

恵美子さんは、あの惨状を見かねたんです。許してあげて下さいと尾形も頼むが、恵美子さんから話を聞いたのなら、僕があれを使わない理由も分かるはずだと芹沢は答える。

そして地下の研究室に向かった芹沢が、それまでの研究成果を破棄しようとしているのに気づいた尾形は必死に止め、もみ合っているうちに、額に怪我をして床に転がってしまう。

恵美子が尾形の傷の手当を始めると、さすがに冷静になった芹沢は謝罪し、もしこれが使用できるんだったら、俺が真っ先に持って行ったはずだ。このままでは破壊兵器に過ぎない…と言う。

尾形も、でも今ゴジラを防がないと、これから先どうなるでしょう?と反論する。

今これを使ったら、世界中の施政者達は、必ずこれを兵器として使うに違いない。

原爆対原爆、水爆対水爆…、同じようにこれを使う事は、科学者として、いや1人の人間として許す事が出来ないと芹沢は言う。

それでも尾形は、今、この不幸を救えるのはあなたしかいない。あなたが口外しない限り、破壊兵器に使われる事はないでしょうと食い下がるが、人間というものは弱いもので、一切の研究書類を捨てたとしても、俺の頭の中にある限り、又使わないとは言い切れない。俺が死なない限り、誰も使用しないとは断言できないのだ…、こんなものさえ使わなければ…と芹沢は苦悩する。

しかし、その後、尾形、君たちの勝利だ。僕の手で、オキシジェン・デストロイヤーを使用するのは今回1階限りだと言うと、その場にあった研究書類を燃やし始める。

そんな芹沢に対する罪の意識から、恵美子は泣き出してしまう。

良いんだよ、恵美子さん。これだけは絶対、悪魔の手には渡してはならない設計図なんだと、芹沢は慰める。

その後、芹沢と尾形、新吉や山根博士が乗り込んだ船が東京湾へ向かう。

別の船に乗ったGHKのアナウンサーが、その実況放送をしている。

ガイガーカウンターの反応が、はっきりゴジラの所在を突き止めました!

芹沢は尾形に、潜水服を着せてくれ。オキシジェン・デストロイヤーを完全な状態で作動させるには、水中操作しかないんだと頼むが、尾形は素人だけにやらせますかと言い、2人分の潜水服を用意させる。

山根が、完成した砲丸型のオキシジェン・デストロイヤーを芹沢に手渡す。

受け取った芹沢は、まさか、こんな形で発表しようとは思いもよりませんでした…と寂しげにつぶやく。

恵美子は芹沢に、ご成功をお祈りしますと言葉をかけ、水中に潜った芹沢の命綱とホースを送り込む。

やがて、海中に潜った芹沢と尾形は着底し、海上の船は機関を停止させる。

海中の2人は、接近して来るゴジラを確認。

芹沢は尾形の肩を叩いたので、尾形は浮上するが、気がつくと、芹沢が付いて来ない。

「芹沢さ〜ん!」尾形は潜水服の中で絶叫する。

海底の芹沢が、オキシジェン・デストロイヤーのスイッチを入れると、海中は泡立ち始め、ゴジラの身体を包み込んで行く。

船上に上がった尾形は、マイクに芹沢の名を呼びかける。

芹沢は、苦しむゴジラの姿を観ながら、成功だ!幸福に暮らせよ。さようなら、さようなら…と通話を送り、自らナイフで、ホースと命綱を切断する。

甲板で、芹沢の命綱とホースを引き上げていた新吉と山根博士は、それが途中で切れている事を知り愕然とする。

ゴジラの上半身が海面に現れたかと思うと、すぐに沈んで行き、海底で白骨化してしまう。

アナウンサーが、ついに勝ちました!若い世紀の科学者芹沢博士がついに勝ったのでありますと叫ぶ。

新吉は泣き出し、それを同行していた萩原記者が慰める。

尾形は恵美子に、幸福に暮らせと言っていたと芹沢の最後の言葉を伝え、それを聞いた恵美子は泣き出す。

悄然と海を眺めていた山根博士は、あのゴジラが、最後の1匹とは思えない。もし今後も水爆実験が続けて行われれば、あのゴジラの同類が世界のどこかに現れるかもしれないとつぶやく。

船上の全員が、亡き芹沢博士に敬礼や黙祷を捧げるのであった。

海は何事もなかったかのように広がっていた。


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