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続へそくり社長

「へそくり社長」の続編で、前編公開(1月3日)後、2ヶ月半で公開(3月20日)された作品である。

前作では、妻厚子の尻に敷かれるストレスと戦いながら、小唄の師匠小鈴に熱を上げる田代だったが、後編では、ひょんなことから小鈴に嫌われてしまい、社長解任のピンチもあって、すっかり開き直り、妻に反抗する姿が描かれている。

一方、秘書の小森の方も、先代社長のわがままな娘に振り回され、恋人悠子との仲が危うくなりかけるが、こちらも最後は誤解が解け、丸く収まると言う展開となっているが、全体にまとまる方向へ収束していることから、破天荒な面白さは影を潜め、人情話風のやや地味なドラマになっているようにも思える。

三木のり平がほとんど活躍しないのが物足りないと言えば物足りないが、赤倉役のロッパが、浮気現場に田代を始め、女房までもがやって来てめちゃくちゃになってしまう辺りのエピソードは面白い。

ただし、ドタバタ的な面白さの頂点とも言うべき森繁の宴会芸のシーンは、前編のクライマックスに使っているので、この作品でも冒頭で繰り返し使っているが(三木のり平の面白さの片鱗が観れるのはここだけである)、同じようなドタバタシーンはない。

一方、小野田に徐々に心惹かれて行く未知子が、小野田と同じ行為をまねて失敗すると言う繰り返しの趣向は、今ひとつピンと来ない。

未知子と同じように、服をいじっていた悠子のボタンが取れてしまう辺りは、特に面白い演出とも思えないからだ。

前編で、米は身体に悪いなどと言う説が登場し、時代を感じさせたが、今作でも、タバコを吸うと痩せるので、美容の為に女性の喫煙家が増えてきたとか、ゴルフをやる女性も増えてきたので、その内、プロの女子ゴルファーが誕生するかも知れないなどと小野田が言う辺りは、今や隔世の感がある。

若い未知子が中年の小野田に惹かれたりするのも、今の感覚からするとやや不自然にも思えるが、「ロマンスグレー」などと言う言葉が登場する所からすると、当時の流行だったのかも知れない。(小説にはじめてロマンスグレーなる言葉が登場したのは1954年頃のことらしいから)

ただし、当時の上原謙は見た目的には白髪などない、普通の黒髪である。

あくまでも、流行に敏感な若者ならこういう心理になるのではないか…と、勝手に想像した当時の大人の感覚だろう。

この作品では、金持ちの娘で、わがままと言うか自由奔放な役を演じている八千草薫が愛らしい。

司葉子の方が静かで控えめな娘と言う役になっており、この二人が対照的に描かれている。

そんな二大美女に囲まれている小林桂樹がうらやましい限り。

考えてみたら、「社長シリーズ」には、美女は登場してもイケメン風の役者はほとんど登場しないような気がする。

あくまでも男性サラリーマン向け作品であり、観客の反感を買うようなイケメンはそもそも必要なかったためだろう。

後年の社長シリーズに比べると、この時代の社長は、意外と妻と仲が悪くない、むしろ愛し合っていると言っても良いほどの関係であるのが新鮮に映る。

「仕事に惚れろ 金に惚れろ 女房に惚れろ」と言う先代社長の言葉を実践していると言うことなのだろうが、こういう設定も悪くないと思わせる。

小鈴を演じている藤間紫も、厚子を演じている越路吹雪も、どちらとも気の強そうな美人であるのが笑いを誘っている要因の一つだろう。

二人が強そうであればあるほど、森繁の生来の気の弱さが浮き彫りになるからだ。

三木のり平や森繁は、メイクで白髪をちょっと入れたりして老け演技をしているが、両名ともまだ若々しかった時代の作品である。

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、東宝、笠原良三脚本、千葉泰樹監督作品。

福原コンテンツの一翼を担う明和商事の社長田代善之助(森繁久彌)が画面に向かい、前編のあらすじを紹介し始める。

その背後の壁には、先代社長(河村黎吉)の写真と「仕事に惚れろ 金に惚れろ 女房に惚れろ 福原太郎吉」と先代の言葉が書かれた額がかかっていた。

その先代のお眼鏡にかなって、新社長を仰せつかった田代だったが、好事魔多しと言うか…

株主の赤倉(古川緑波)は、新社長田代を信用しておらず、同じ株主仲間である小野田(上原謙)に色々相談していた。

ある日、先代社長の娘福原未知子(八千草薫)が株主懇談会視察のため、芦屋から上京して来る。

そんな未知子の口車に乗り、田代は宴会で得意のどじょうすくいを披露するが、これが未知子の口から大奥様の福原イネ(三好栄子)の耳に入り、そのようなげさくい真似をするようではダメで、今後は小唄を習うように命じられてしまう。

ところが、その小唄の師匠小鈴(藤間紫)と言うのが色っぽい美人だったので、田代はすっかり参ってしまうのだった。

田代は、自宅では妻の厚子(越路吹雪)に、先代の教え通り、健康に悪い米の飯は一切取ることを許されず、パンばかりの食事と言う味気ない生活を押し付けられていた。

田代の小唄通いは次第に度を超して行き、秘書の小森信一(小林桂樹)から金を借りては、通い詰める有様。

ある日、社長から赤坂の旅館に呼ばれて向かった小森は、風呂の湯にのぼせて寝込んでしまっていた田代を発見し驚く。

社長は今頃、緊急委員会に出席していることになっていたからだった。

後日、明和商事の社員慰労会が開かれる。

以上が前回までのあらまし。ではどうぞごゆっくり…と田代が画面に向かって頭を下げる。

タイトル

小森は、余興もたけなわになった頃、社員(山本廉)が、そろそろ真打ちのご登場を…と社長を持ち上げたので、今日は社長はお疲れだから…と止めさせようとするが、岡本(太刀川洋一)たち別の社員たちが、陽気に安木節を歌い始めるとたまらなくなり、田代はとうとう経理部長(三木のり平)と二人でどじょうすくいを始めてしまう。

その頃、大事な用件で羽田に到着したイネと未知子は、電話で知らせた厚子と合流し、慰労会の会場へやって来るが、そこで、あれほど禁止していた田代のどじょうすくいを目撃してしまうのだった…

イネの姿に気づいた田代は、急に踊りを変え、事情を知らず、どじょうすくいを踊り続ける経理部長を足蹴にしながら、インスタント詩吟のような踊りに変更してみせる。

イネの前に土下座して挨拶をした田代だったが、イネは杖で田代を招くと、別室で、赤倉があんたを社長から辞めさそうと、株を買い集めている。うちだけでは株を過半数も持たない。こうなった以上、あんた自身が赤倉の腹の中に飛び込んでみなはれ!どじょうすくいなんかしてたらあきまへんでと諭す。

そんなイネの会話を、秘書の小森は、部屋の外でこっそり聞いていた。

総務課のタイプ室では、澄子(小泉澄子)が隣の席の(司葉子)に、岡本と近々結婚するつもりだと打ち明けていた。

そんな澄子を、岡本が廊下に呼び出し、何事かを相談し始めたので、通りかかった岡本の先輩に当たる小森は、後ろ足で岡本を蹴って社長室へ向かう。

田代社長は、赤倉へ会おうとして連絡しても返事が返って来ないので、赤倉は留守か?ひょっとしたら俺から逃げようとしているのかも知れんな?と疑念を持つ。

小森は、赤倉の秘書の木下とは友達なので連絡しましょうか?と確認する。

田代は、小唄の練習に行くからと、1万円を小森から借りようとする。

小森は迷惑がるが、ボーナスの中から社長がへそくりしている金を預かっているので、仕方なく1万円手渡す。

田代社長が出かけると、小森は社内の岡本に電話を入れ、先輩の俺を差し置いて結婚するとはけしからん。今晩おごれと嫌みを言う。

小鈴の家にやって来た田代だったが、小鈴は、祖母の見舞いに病院に行っているとかで不在だった。

仕方なく、女中の相手にからかおうとしていると、小森がやって来て、赤倉は留守だった、奥さんと熱海ガーデンと言う旅館に行っているらしいと報告する。

その時、小鈴から電話があり、女中の佐和子に、今晩帰れなくなったから、田代には適当なことを言って追い返して頂戴と頼む。

それで、女中が、おばあさんの容態が酷く悪いようなので、師匠は帰って来ませんと伝えると、がっかりした田代は、こうなったら、熱海へ乗り込むことにしようと決心し、小森に部屋の予約を頼む。

一旦帰宅し、着替えをする田代だったが、その手伝いをする厚子は、赤倉さんは箱根に別荘をお持ちのはずなのに、なぜ熱海なんかに行かれたのかしら?と不審がり、自分はこれから茶会に出かけると教える。

その茶会に来た厚子は、ばったり赤倉夫人の悦子(沢村貞子)と出会う。

熱海からいらっしゃったんですか?と厚子が驚くと、事情を聞いた悦子の方も、うちのは今、名古屋に工場視察に出かけているはずですけど?と不思議がり、ひょっとすると、あなたの話の方が本当かもしれませんねと慌て出す。

その頃、熱海ガーデンにやって来た田代は、マッサージを受けさせている赤倉に会っていたが、明年の重役改選のことを聞こうとする田代を、赤倉は迷惑がって追い返そうとしていた。

そこに、風呂上がりらしい女性の声が聞こえたので、田代は、妻の悦子だと思って挨拶しかけるが、そこに立っていたのが小鈴と知り、互いに気まずい思いをする。

赤倉も、二人が顔なじみだと知ったのか、今日は3人で飯でも食おうと言うことになるが、田代は面白くないので、赤倉にきちんとした返事を頂きたいと言い張る。

小鈴もなかなか赤倉と二人きりになれないのでじれったがり、芸者でも呼びましょう。何だかくさくさすると言いながら、受付に電話を入れようとする。

そこに女性の声が聞こえたので、赤倉は芸者が来たのかと上機嫌になり迎え入れようとするが、そこに立っていたのは妻の悦子だった。

悦子は、凍り付いた赤倉の部屋に来ると、この人誰です?と小鈴のことを聞く。

赤倉は焦り、失礼なことを言うな、この方は田代さんのお連れの方だと嘘をつき、今日はこの辺でお開きにしようかなどと言い出す。

この赤倉の狼狽振りを観ていた田代は、形勢が逆転したことを察し、先ほどの話はまだ解決していませんが?と詰め寄る。

赤倉が困ったように、承知しているよと答えたので、田代は小鈴を伴って部屋を後にしようとするが、そんな田代に悦子は、奥様と先ほど、お茶会でお会いしましたよと声をかけるのだった。

廊下に出た小鈴はひどく機嫌が悪くなっており、二人とも社長づらして、どっちがキツネか狸か分かりませんよ!と捨て台詞を残して、さっさと旅館を後にする。

自分の部屋に戻って来た田代は、部屋に妻の厚子がいるのに気づき慌てるが、厚子はあなたのことが心配できてみた。赤倉さんとの話はどうなったのかと聞くので、何となく巧く行ったよと田代は鷹揚に答える。

厚子は、久々の旅行気分に浸っているのか、新婚の頃を思い出しますねなどと言い出し、あの頃は恥ずかしくて、あなたのお背中を流すことも出来なかったと言うので、田代は、入るか?と入浴を誘う。

一方、赤倉の方も、悦子から入浴を誘われていたが、自分はさっき入ったからと断った赤倉は、小鈴を田代に奪われたと思い込み、いら立っていた。

悦子が一人で風呂に出かけた後、廊下に出て田代の部屋を女中に聞き出した赤倉は、こっそり田代の部屋である鶴の間に入り込む。

すると、女の笑い声が聞こえ、田代が女を抱いてキスとしている姿が見えたので、「こら!」と怒鳴りつけた赤倉だったが、驚いて振り向いた女性が厚子だったので、勘違いを悟り、部屋を間違えました!などと苦しい言い訳をして部屋を逃げ出す。

そんな赤倉の後ろ姿に、無言で握りこぶしを振り上げる田代だった。

ある日、悠子は、社長室の小森を呼び出すと、今日は1時から岡本さんと澄子さんの結婚式よと教える。

小森は、今日は午後から社長が小唄に出かける日だから、12時半にバスの停留所で落ち合うことにしようと約束する。

そんな小森の所にやって来た経理部長は、これはいるかい?などと親指を立てた所に、昼食の蕎麦を小森に頼もうと田代が顔をのぞかせたので、経理部長はばつが悪くなり、適当に指をごまかしてしまう。

小森は、いつもなら出かけるはずの田代が、蕎麦などゆっくり食べ始めたので苛つき出す。

その頃、悠子の方は、木挽町のバス停の前に到着していた。

業を煮やした小森が、田代に、今日は小唄の日ですが?とお伺いに行くと、金輪際小唄の話なんかするな!止めたんだと田代は不機嫌になる。

小唄は、大奥様からのご命令ですが?と小森が当惑すると、奥様が何だ!未知子さんが何だ!と田代は強気なことを言う。

結局、田代が午後出かけないことを知った小森は、自分は午後、お休みにしていただきたい。結婚式に行きたいと申し出る。

すると早合点した田代は、君が結婚するときは、わしが仲人をするつもりでいたのに水臭いと言い出す。

小森は、今日は自分の結婚式ではなく、人から招かれただけなのだと説明すると、田代は不機嫌になり、勝手にしろと投げやりになる。

小森は急いで会社を出ると、停留所で待ちくたびれていた悠子と合流、そのままバスで、岡本と澄子の結婚式に出席し、新婚旅行に出かける二人を見送るのだった。

その帰り、散歩をしてベンチに腰を下ろした悠子と小森は、自分たちの結婚に付いて話し出す。

悠子は、お母さんにだけは正式な話をして欲しいと頼む。

小森は、これのボーナスから貯金を始めたなどと、将来設計の話をし出し、社長が仲人をしてくれると自ら言ってくれたとも打ち明ける。

その頃、再度上京した未知子は羽田に出迎えた厚子と共に車に乗り、うちの株価が値上がりしているのは、誰かが株の買いあさりを始めた証拠だと教えていた。

そう言う事情に疎い厚子は、うちの立場はどうなるんでしょう?と心配するだけだった。

未知子は、今回自分は、母親に頼まれてそれを調べに来たと同時に、お婿さんを探しに来たとも打ち明け、姉さん世話してと厚子に甘える。

日曜日、小森が悠子の家に行く為ネクタイをしていると、アパートの表に車が停まり、部屋にやって来たのは未知子だった。

未知子は、これからゴルフに行くのだが、兄さんは腰が痛いと言って断ったので、あんたが付き合ってくれと言う。

小森は、自分はゴルフは下手ですし、今日は日曜で他に約束があるのですが…と断ろうとするが、わがままな未知子は、会社の用事があると言って断れば良いじゃないと言う。

仕方がないので、部屋に飾ってあった悠子の写真立てを裏返すと、未知子に付き合うはめになる。

その頃、未知子は、自宅で洗濯物など干していたが、今日、小森が家に来ると言うことを知っていた弟の栄一から、自分は映画にでも出かけるから100円くれとねだられていた。

母のみつ(英百合子)は、栄一はまだ卒業まで1年あるんだが…と悠子に相談して来る。

悠子は、1年くらい自分はまだ働くし、小森さんも承知してくれるはずと返事をするが、そこにその小森がやって来て、今日は社長命令で急用ができたので、又後日来ますと言い残して帰ってしまう。

あわてて後を追いかけた悠子は、小森が乗り込んだ車に、きれいな女性が同乗しているのを目撃してしまう。

ゴルフ場にやって来た小森だったが、普段、社長に付き合っているだけで、自分自身がやっていた訳ではないので、全くゴルフは出来なかった。

それを観ていた未知子はがっかりするが、そんな美智子に声をかけて来たのは株主の小野田だった。

小森にちょっと玉の打ち方を教えた小野田は、ハンデ12と言うので、すっかり気に入った未知子は、小野田にゴルフを誘うと、小森にはクラブハウスで休んで来て良いと冷たく言い放つ。

人を無理に引っ張り出しやがって…と文句を言いながらクラブハウスにやって来た小森は、一人ビールを飲み始める。

一回り回り終えた小野田は、ホテルに人を待たせているのでと言い帰って行ったので、クラブハウスにやって来た未知子は、小森が飲みかけていたコップのビールを勝手に飲みながら、ちょっとしたロマンスグレーやわなどとうっとりし出し、小森の顔を見ると、あんた、中年になったら禿げるんやないの?などとずけずけと指摘して小森を腐らせる。

悠子はさらに、小野田さんはホテルに人を待たせているなどと言っていたが、それは奥さんやないやろか?などと勝手に心配し出す。

翌日、悠子にタイプを依頼しに来た小森は、なぜか悠子の機嫌が悪いことに気づき首をひねる。

そこに、未知子が顔をのぞかせ、小森を呼びつけたので、悠子は苛ついて、乱暴にタイプを打ち始める。

小森と車に乗り込んだ未知子は、株を買い占めているのが誰か突き止めるんやと張り切っている。

小森はその後、独自に調査をし、買い占めているのはゴルフが大変お上手なロマンスグレー、小野田春樹さんですと未知子に報告する。

それを聞いた未知子は、小野田さん言うたら、戦後の成り上がりもんやないのとバカにする。

その頃、小野田は赤倉と会っており、今の田代とか言う奴は歯がゆくてみておれん。あんたに明和の社長をお願いしたいなどと持ちかけられていたが、そこに福原未知子が来たと秘書が言って来る。

赤倉は、あなたが未知子さんを知っていたとは知らなかった。これは一石二鳥のチャンスですと言い残して、先に帰ることにする。

挨拶しながら帰る赤倉とすれ違って部屋に入ってきた未知子は、やっぱりそうや。お母はんが言ってた通りやった。あんたは赤倉さんと組んで、明和商事を乗っ取ろうとしているのではないかと小野田に聞く。

小野田は未知子にタバコを勧めながら、最近は美容の為にタバコを吸う女性が増えたそうで、胃が悪くなって痩せるからでしょうなどと話しかける。

そして、何か勘違いをなさっているようですが、私が株を買い焦っているのは、お父様がやってらしたことと同じで、有利な株を買っているだけですと答える。

ちょっと暑いですねと言いながら窓を開けた小野田は、未知子にコートを脱ぐように勧めるが、未知子がコートを脱ごうとするとボタンが一つ取れてしまう。

そんな未知子に小野田は、仲直りに一振りしませんか?赤坂にゴルフ練習場があるんですと誘うと、それまで警戒心も露に身を固くしていた未知子は、急に態度を変え、喜んで付いて行くと言い出す。

練習場に着いた小野田は、未知子のフォームなど修正してやる。

意外と女性客が多いですねと感心する未知子に、その内、女性のプロゴルファーが誕生するかもしれませんねなどと小野田は答える。

未知子はさらに、小野田が今大独身であることを知り、密かに喜ぶ。

小森は、会社の屋上で悠子と会っていたが、相変わらず機嫌が悪い悠子から、もうお母さんに会わなくても良い。根本的に誠意の問題よ。おべんちゃらの八方美人なんて大嫌い!などと一方的に言われてしまい、さっさと帰られたので、むしゃくしゃしてそこにあったボールを蹴飛ばしてしまう。

すると、そのボールは枠を超え下に落ちて行ったので、慌てて下を覗きこむと、近くにボールが落ちてきて驚いた通りがかりの男が、上を向いて危ないじゃないか!と怒鳴っている所だった。

帰宅して夕食を食べる悠子だったが、食欲がないのに気づいた母みつは心配する。

弟の栄一も姉のことが気にかかるらしく、自分のことなら心配しなくて良い。家庭教師の口が見つかったと話しかけるが、私もう結婚なんかしないと言い出した姉の態度から、この前、車に乗っていたきれいなお嬢さんだな?と気づき、小森さんを愛しているなら戦うべきだな。この世は弱肉強食、弱い奴は負けちゃうんだ。ファイト!頑張れよ、姉さんと力づける。

翌朝、悠子は田代の家に泊まっている未知子を訪問する。

何事かと応対した未知子に、個人的な問題でお聞きしたいのですと切り出した悠子だが、何故か洋服をいじっているうちにボタンが取れてしまう。

未知子は、小野田の真似をしてタバコを勧め、胃が悪くなって痩せるんですってよなどと言いながら、自ら吸ってみるが、吸いなれていないのですぐむせてしまう。

今日はちょっと暖か過ぎますねなどと言いながら、又、小野田の真似をして窓を開けるが、開けた本人がくしゃみをしてしまう。

小森さんとはどういう関係なんです?と聞く未知子に、私たち結婚を約束しているんですと悠子が答えると、自分は、小森さんは兄さんの秘書だと思って気安く使っていただけだと弁解し、これからは口をきかないようにすると約束する。

そして、あんた気に入ったから、これからは仲良くしましょうと言いながら手を差し出す。

悠子は面食らいながらも、握手するしかなかった。

悠子が帰ったあと、朝食の準備をしていた厚子の元に来た未知子は、急に大阪に帰ると言い出す。

お婿はんのこと、お母はんに話さないかんし、今しがた決まりました。うち、小野田はんと結婚しようと思う。自分の欲しい物は必ず手に入れる。それが福原家のしきたりやもんと言い出したのだ。

それを聞いた厚子は驚き、まだベッドで寝ていた田代を起こすと、未知子さんが、大株主の小野田さんと結婚すると言い出した。2人が結婚したら、あなた、社長、辞めさせられるかも知れない。今や、食うか食われるかの瀬戸際じゃないですか!と発破をかけ、無理矢理ベッドから引きづり出すのだった。

その日、出社してタイプ室をのぞいた小森は、悠子の姿がないのでがっかりする。

一方、出社した田代社長もがっくり肩を落としていた。

社長室に入ると、「仕事に惚れろ 金に惚れろ 女房に惚れろ」と言う先代の教えを細々と読み上げる。

そこに、こちらもしょんぼりした小森が入ってきて、落胆した二人がようやく顔を合わせる。

田代は、どうして今朝は出迎えに来なかったと叱ると、忘れましたと小森はあっさり答える。

今日の予定は?と聞いても、さあ?と答えるだけ。

あげくの果てに、今日限り、僕はこんな仕事辞めさせていただきますと言い出すと、田代から預かっていたへそくりの残り、4万5千円を返す。

がっくりして自分の机に戻った小森を案じた田代が訳を聞くと、僕は社長秘書と言う仕事のために、自分自身も恋人もなくした。もうむちゃくちゃですよと嘆く。

それを聞いた田代も、君が会社を辞めることはない。その前に、わしの方が辞めさせられるから。これまで会社の為に頑張ってきたつもりだったが、結局、僕の方が会社に使われていただけなんだ。どうだ?今夜は、この金で、2人の慰労会をやろうじゃないかと勧める。

その夜、二人は芸者を上げて大騒ぎをすると、一緒にタクシーに乗り、互いに歌を歌って慰め合うのだった。

酔った小森が自宅アパートに戻って来ると、部屋の鍵が開いていることに気づく。

不思議に思って中に入ってみると、そこに待っていたのは悠子だった。

夕方から待っていたと言う。

小森が何か言おうとすると、何も言わないで!私が悪かったわ。あなたとは一生離れないと悠子が言い出したので、感極まった小森は悠子をだき、その場でキスをするのだった。

一方、酔って自宅に帰って来た田代の方は、厚子に抱えられてベッドルームまで来るが、文句を言う厚子に対し、たまに酒を飲んで帰って来て何が悪いんだ!大体お前さんは、社長の地位が好きなのか?それとも田代善之助のどっちが好きなんだ?毎日、パンばかり食わせやがって!大株主が何だ!豚に食われて死んでしまえ!明日からわしは、飯は腹一杯食うんだ!どじょうすくいも踊る!お前なんか怖くない!とわめき散らす。

そんな田代の様子をしみじみと観ていた厚子は、私、あなたの怒鳴る声をはじめて聞きましたわとつぶやく。

すると、田代は急に、すみませんといつものように低姿勢になる。

私、見直しましたわと言う厚子に、何故か田代は、厚子、そういじめないでくれよと哀願し出す。

そんな田代を愛おしそうに観ながら、お洋服を脱ぐのよ、大きな坊や…と言いながら、厚子は田代の頭をなでてやるのだった。

後日、厚子は、再び上京した未知子を羽田に迎えに行く。

明和商会の株式総会がいよいよ明日に迫ったからだった。

しかし、未知子は車を日本橋に向かわせる。

小野田から手紙をもらったからだと言う。

今日自分を呼び出した用事が、小野田からの結婚の申し込みだったら良いのに…と未知子は夢見、車に同乗した厚子も、そうなるようにお祈りしていますと伝えるのだった。

しかし、小野田の会社にやって来た未知子は、今夜、アメリカからヨーロッパへの旅行に出かけるので、これを渡しておきたかったからだと言いながら、小野田から一通の封筒を手渡たされる。

それは、株式総会の委任状だった。

小野田は最初から野心なんか持っていなかった。あなたのお父様なら、こんな私を軽蔑なさるだろうと言う。

しかし、それを聞いた未知子は、あなたを見損なっていました。軽蔑はしませんと答える。

そんな未知子の洋服の胸に、小野田は花を飾ってやるのだった。

明和商事にやって来た未知子は、その委任状を田代に手渡すと、これで、赤倉はんが何を言っても、あかんようになったわと告げる。

そして、すぐに帰りかけた未知子は、小森に、自分がつけていたブローチを手渡し、あんたの未来に花嫁はんにやと言って出て行く。

田代は、何をもらったんだ?と聞くが、小森はブローチを手の中に隠すと、いや…と答えただけだった。

羽田では、小野田が飛行機に乗り込もうとしていた。

未知子は羽田に駆けつけると、小野田の姿を探す。

ようやく見つけて声をかけると、振り向いた小野田の胸には、さっき、未知子に付けてやったののと同じ花が飾られていた。

それを観た未知子は、小野田さんと一緒に連れて行って欲しかった。帰りをお待ちしています…と心の中で考えるのだった。

その後、小森と悠子の結婚式が無事行われる。

仲人を務めた田代は、まっすぐ帰るのは寂しいわねと言う厚子に、僕に付き合ってくれないかと言葉をかける。

田代が厚子を連れてきたのは寿司屋だった。

二人は久々に、米を腹一杯食べる。

田代は、新婚旅行に出かけた小森達は、汽車の中で腹を空かせているぞとつぶやくが、その頃、走る列車の中では、悠子と小森が、仲良くサンドイッチをつまんでいる所だった。