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百万ドルの明星 陽気な天国

歌手の近江俊郎が、自ら主演、製作した自主音楽映画。

普通、こうしたスターが作った自主映画のようなものは、自分を美化する自己満足映画のようなものになりそうなのだが、近江俊郎の凄い所は、自己満足すらシャレと言うか、冗談になっている所である。

以前、テレビで聞いた話だが、近江俊郎は、スタジオで俳優に出会うと、その場で札束を取り出し、自分の映画への出演依頼の直談判を始めたらしい。

いわば「一本釣り」のような感じで出演者やスタッフを集め、映画を作っていたらしい。

しかも、その映画と言うのは冗談映画のようなものばかり。

同じく歌手のバタヤンこと田端義夫なども、若い頃、喜劇映画に出ていたりしていたが、近江俊郎ほど喜劇映画に徹底していた歌手と言うのも珍しい。

元々、面白いこと、シャレが好きな人だったのだろう。

喜劇を「歌手としてのイメージを落とす」と言う風に考えていなかったことは、この時代凄いことである。

劇中のヒロシは、一見、悲劇の主人公のように見えるが、最後に海に落ちて溺れそうになるなどと言うギャグを入れている所などから観ても、普通の意味の自己美化ではない。

一方で、本物の近江俊郎として登場し、その模倣者としての主人公を演じていることからして、自己パロディと言うか、自分で自分を茶化しているのである。

映画としては、古賀政男門下たちのPRと、後は、安っぽいメロドラマとおふざけを組み合わせたようなチープな内容で、コメディ映画としても、どうと言うことはない出来なのだが、さすがに、近江俊郎先生が一本釣りをしたらしき豪華出演者を観るだけでも貴重な映像資料になっている。

若い森繁の悪のり芸も楽しいし、東郷青児の娘、東郷たまみが、この当時、歌を歌っていたことも今回はじめて知った。

森繁が「ビビディバビディブゥ」を歌いながら、森の石松の真似をするのは、東宝の「次郎長三国志」(1952〜1954)で、自分が人気を得た当たり役を意識したものだろう。

又、古賀政男と一緒に、ヒロシのテストを聞いていた栗川社長が、「わしも、声帯模写は大嫌いです」と言うのもギャグである。

そもそも「声帯模写」なる言葉を作ったのは、栗川社長を演じている古川緑波その人であり、ロッパの得意芸が物まねだったからである。

他に登場している歌手たちは、ほとんど馴染みのない人たちだが、菅原都々子や神楽坂はん子辺りは、懐メロ番組で観た記憶がある。

菅原通済は、小津作品などにも出演している有名人。

ゲスト出演者たちに、名前のテロップが入るのは、当時はまだテレビが普及しておらず、レコード歌手なども、素顔がほとんど一般に知られてなかったことに対する配慮だろう。

今の、歌唱力よりも見た目優先と言う風潮とは違い、歌唱力優先だった時代の人たちだけに、今観ると、かなり歌手に対するイメージが違っている。

宮田東峰と言う一見堅物そうに見える人物も、この映画ではじめて知ったが、ハモニカ奏者のようで、劇中、冗談を言う宮田のことを、ロッパが「又、宮田先生のハモニカがはじまった」と言うのは、職業にかけたシャレだったのだろう。

ヒロシを熱愛するおテルが、急に歌い出したりする所は何となくミュージカル風だが、全体的にミュージカル風ではないのは、踊りの要素が全くないからだと思う。

おテルの部分は多少動きが入っているが、他の歌手のシーンは、ただマイクの前に立って歌っているか、せいぜい少し歩きながら歌う程度で、踊りが入る要素がない。

だから、何となく、歌手のPR映画にしか見えないのだと思う。

コメディとしても音楽映画としても、特に褒めるような作品ではないと思うが、この手の「偉い人が冗談で作ったような映画」自体はかなり好きである。

どこか、自分の中にある「何に対しても心底まじめになりきれない」部分をくすぐるのだと思う。

まじめ一本やりの社会派映画や芸術映画よりは、ずっと「心をほっとさせてくれる」種類の作品ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1955年、近江プロ、近江俊郎原案、古川緑波脚本、古川緑波監督作品。

とある温泉街を臨む海辺の突堤で、一人の青年がギター片手に歌を歌っていた。

歌手志望の水原ヒロシ(近江俊郎)であった。

夜、その温泉街にある一軒の宿「清水荘」の部屋の中で、ピアノを怪しげに弾いている男(森繁久彌)がいた。

男は、そこへ茶を持ってきた仲居のおテル(暁テル子)に、ここは雑音が多いねと苦情を言う。

夜の歓楽街から聞こえてくる音のことを言っているのだった。

仲居は、お客さんは音楽家ですか?と聞くと、ま、作曲家のようなもので、「湯の町エレジー」などを作っていると言う。

それを聞いたおテルは驚き、それではあんたは古賀政男先生ねと聞いてきたので、「知っていたか…」と顔をしかめた男だったが、すぐに、そうだ古賀政男だと名乗る。

その頃、歓楽街で流しをやっていたのがヒロシとアコーディオン弾きの三平(三木のり平)だった。

おテルは、古賀政男と名乗る男に、歌のうまい、歌い手になりたがっている人がいるので会って、レコードの歌い手にして欲しいと言い出す。

ちょうど、ヒロシたちが「清水荘」の前を通りかかった時、おテルが玄関から出て呼び止めると、うちに古賀政男先生がいるのと言いながら招き入れる。

庭から入ってきたヒロシと三平に会った古賀政男は興味なさそうだったが、おテルが、神様ありがとう。私、おごっちゃうわと言い出すと、急に態度を変え、酒は焼酎でも良いぞなどと注文し始める。

古賀政男と名乗る男は、ヒデコマら芸者たちを侍らせ、踊り出す始末。

一緒に同席した三平も売り込んで来たので、古賀政男と名乗る男は、色々自慢話を始め、ベートーベンにも会ったことがあるなどと言い出す。

ベートーベンは死んだのでは?と三平が不思議がると、子孫はいるんだよと開き直る古賀政男。

山田耕筰先生にも会ったなどと言い出した古賀政男は、世界レコード会社に行って及第したら歌い手になれるとヒロシに助言する。

その後、突堤にやって来たおテルは、私のこと忘れないでねと、上京するヒロシにすがっていた。

その近くにいた三平は、二人のムードを高めるため、ウエディングマーチなどを弾きながら、ヒロシを連れて帰って行く。

繁華街に戻って来た三平は、馴染みのおでんやの女将に、こんな所で歌う人じゃないよとヒロシを持ち上げる。

翌日、車に乗り込んで帰る古賀政男と名乗る男から、おテルは名刺を下さいと申し出る。

古賀政男なる男は、世界レコード社の社長を紹介してやるとその場で名刺に揮毫して渡す。

駅に見送りに来たおテルは、工場勤めをしている妹の家に厄介になるつもりだと言うヒロシと三平に手作りの弁当を手渡すが、三平の弁当箱は、ヒロシの半分以下の大きさだった。

列車が出発し、弁当を広げた三平は、隣で東京に思いを馳せているヒロシに、胸が一杯で弁当食えないだろう?と聞き、弁当を取り替えてしまう。

東京に着いた三平とヒロシは、ヒロシの妹アキ子(城美保子)の住むぼろアパートへやってくる。

1階には、男女二人の子供のいる下宿のおばさん(丹下キヨ子)が住んでいた。

二階のアキ子の部屋は狭かったが、何と、この部屋は友達のミネ子(姫路和子)と自分が同居しているので、兄さんたちには物干し台にいていただきたいと言う。

さすがに三平とヒロシは唖然とする。

翌日、世界レコード会社の栗川社長(古川緑波)は、社長室に呼んだ部下たちに、君たちはいつも用件をはっきり言いたまえと説教していた。

そこに、古賀政男(本人)がやって来たので、応対した栗川社長は呼んだ用件を言おうとするが、そこへ社長に面会したいとこんな人が来ていると、社員が名刺を持って入ってくる。

その名刺を観ると、古賀政男と書いてあったので、これは先生の名刺ではないですか?と古賀政男に見せると、確かにこれは僕の名刺だが、こんな推薦文を書いた覚えはないと言う。

それを聞いた栗川社長は、それじゃあ偽者に違いないから返しなさいと社員に命じる。

古賀政男は、その名刺をもらって帰ることにするが、肝心の栗川社長は、古賀を呼び出した用件をとうとう思い出せずじまいだった。

下宿に帰って来たヒロシと三平から、自分たちを紹介してくれた古賀政男は偽者だったと聞いたアキ子とミネ子も憤慨していた。

名刺も取られてしまった今、ヒロシたちに売り込むチャンスなどないに等しかった。

帰宅した古賀政男は、書生の久森繁也を呼ぶと、これはお前の仕業ではないか?と持って来た名刺を見せる。

静かな所で勉強がしたいなどと言うので、あの温泉地を紹介したのに、お前は何をやっていたんだ?としかる古賀に、久森は、しどろもどろに弁解をしていたが、その時、玄関ブザーが聞こえる。

久森が出てみると、そこにいたのはヒロシの妹アキ子だった。

久森は追い返そうとするが、そこに出てきた古賀本人が、名刺の件ですか?と聞き、中に招き入れる。

その頃、三平とヒロシは、物干し台に壁と屋根を作り、とりあえず雨露を凌ぎ寝れるようにしていた。

古賀政男はアキ子に、明日会社に兄さんと一緒に来なさい。テストしてあげますと伝える。

翌日、世界レコード社の録音ステージでは、宮田東峰が指揮をし、真木不二夫が歌っていた。

その後、新人テストが始まる。

ヒロシは、歌い始めるが、別室で聞いていた古賀政男は、栗田社長に感想を聞かれ、近江俊郎の物まねですと断定する。

それを聞いた栗田社長も、わしも声帯模写は大嫌いですと同意する。

古賀政男はアキ子を手招くと、お兄さんは近江俊郎の声帯模写をやっているだけですと告げた後、がっかりしていたアキ子に、あなたも歌えるんじゃないですか?僕はあなたをテストしてみたいんですと言い出す。

驚いたアキ子だったが、仕方なくマイクの前に立ち、「お土産〜はな〜に♩」と、古賀政男作曲の「南の花嫁さん」を歌うと、聞いていた久我と栗川社長はにっこり微笑み合う。

宮田東峰も、大イケのコンコンチキだ!などと賞賛し、栗川社長から、又、宮田先生のハモニカが始まったなどとからかわれる。

下宿に戻って来たアキ子は、おかしなことになって、私の方が及第しちゃったのとおばさんに報告する。

その頃、温泉宿の廊下掃除をしていたおテルは、東京に行ったヒロシのことを思い出していた。

夜、一緒に床についたミネ子から、幸運ねとうらやましがられたアキ子だったが、兄さんのことを思うと…と、素直に喜べなかった。

ヒロシと三平は、雨漏りのする物干し台を改造した部屋の中で寝ていたが、おテルちゃんがな〜…と案ずる三平に対し、独創的なものがないと言うことだから、この東京で勉強し直そうとヒロシが言うので、又、流しに逆戻りかと三平は気落ちする。

翌日、ミネ子が働いている「バー モンロー」にやって来たヒロシと三平だったが、客は誰も見向きもしなかったので、すごすごと帰るしかなかった。

一方、妹のアキ子の方は、栗川社長の勧めでレコードを吹き込み、水原アキ子が歌った「青春の明星」は大ヒットする。

三平は、東京都内のレコード店をめぐり、アキ子のレコードを売って下さいと店員に売り込んでいた。

ダンスホールで客と踊っていたアキ子は、家まで送ると言う客を断って、「バー モンロー」に来ると、ミネ子と二人で帰る。

アキ子は、みんな車で送ると言うので困るのだと悩みを打ち明ける。

ミネ子も、確かに一流のスターがあんな所に住んでいたのではねと理解を示し、引っ越しちゃいなさいよと勧めるが、アキ子は兄のことが気になって決心できなかった。

その頃、ヒロシの方は、温泉街で待つおテルのことを思い出していた。

やがて、アキ子の「青春の明星」がヒットした記念に、栗川社長が自宅庭園でパーティを開いてくれることになり、ヒロシや三平も招待してもらう。

各界から招かれた客を前にして、庭では白根一男がギター片手に歌を披露していた。

栗川社長が挨拶にたち、今度「百万ドルの明星 大音楽会」を開くと宣言した後、娘のたまみを紹介し、たまみ(東郷たまみ)が歌を披露する。

そんな中、アキ子に親しげに近づいてきた久森は、しつこく話しかけるので、三平が近づいてにらみを利かせる。

それでも、僕がいたからこそ、あんたは古賀先生に会えたんじゃないかと言う久森の言葉は、まんざら噓でもなかった。

久森は、ヒロシも来ていたことを知ると、スターの兄貴が流しじゃみっともないよなと聞こえよがしに嫌みを言う。

その後、久森は、洋画家の東郷青児と書家の町春草が座っていたテーブルにやってくると、親しげに話しかけ、東郷青児からタバコをもらって去るが、春草が、ご存知の方ですか?と聞くと、東郷青児は知らないんだと首を傾げる。

そんな中、三平はヒロシに、やっぱり流しはまずいよなと話し合っていた。

久森は、続いて、実業家の菅原通済に声をかける。

歌舞伎の大家だなどとアキ子に紹介するが、菅原通済は歌舞伎じゃないよと呆れ、君は誰だね?と不思議がる。

久森が、僕は古賀に作曲を教えたりしているものだが…などとでたらめを言い始めたので、近くで聞いていた古賀政男が仁王立ちになり、又、君のバカが始まったね。バカは止めなさいと叱る。

その叱責に首をすくめた久森だったが、すぐに気を取り直し、楽団の方に向かうと、私バカ♩あなたバカ♩ビビディバビディブウ♩などと歌い出す。

最後には、片目をつぶり、森の石松の真似をしながら「バカは死ななきゃ直らない♩」などと締める。

その歌を聴いていたヒロシは、俺はバカだと自己嫌悪に陥る。

パーティの後、三平と娘のたまみを連れ、栗川社長が車でアキ子の自宅アパートまで送ってくれるが、あまりのオンボロアパートにたまみは呆れ、あなたのお兄さんは何をしていらっしゃるの?とアキ子に聞く。

先に帰っていたヒロシは、二階の部屋で一人考え事をしていた。

その後、温泉街から単身、おテルが上京し、アキ子のアパートを探し当て二階に上がると、そこにいた三平、アキ子、ミネ子らは、ヒロシは黙って出て行ってしまい、いなくなったと言う。

それを聞いたおテルは逆上し、薄情者!あんたら探しに行かないのかい?あんた、ずいぶん偉いんだってね?アキ子さん、威張ったんでしょう?畜生!ヒロシさん、いじめたな。私は分かっているんだ。お前たちみんなグルになって追い出したな?みんな、みんな、覚えてろ!兄さんは私が引き取るとまくしたてると、ヒロシからもらったと言う手紙をその場で読んでみせる。

そこには、妹は僕の為に、汚いうちに辛抱してくれると書かれてあった。

これで、きっぱりきれいな家に引っ越せるだろう。きっとヒロシさんは探すぞ!覚えてろ!と捨て台詞を残して、おテルはアパートを去って行く。

おテルはそれから東京中を歩き始める。

その頃、ヒロシは靴磨きをしていた。

公園のベンチで、新聞紙を顔にかぶせて寝ていた男たちを片っ端からのぞいていたおテルだったが、その内の一人が三平だったことを知る。

三平はアパートに帰ってくると、今日も一日探したけどヒロシは見つからなかったけど、おテルに会った。まだ探していたんだなと、おばさんに報告する。

下宿のおばさんは、執念深いんだねと感心し、横で聞いていたアキ子が、兄さん、きっとここへ戻ってくると思うわと言うので、分かったよ。いつか帰ってくると信じて、こんな汚い家にいてくれるんだね。可愛いこと言ってくれるじゃないか。あたしゃ、人様に涙を観られるのが嫌いだから、ちょっと一人で泣いて来らぁと言い、外に出て泣き始める。

ヒロシは、ポラカード持ちもやっていたが、町中でおテルとすれ違ったことにも気づかなかった。

おテルは、町子巻きをして日本橋まで来ると、小説ならここで会えるんだけどね…とつぶやく。

そんなおテルが、道を歩いていると、走ってきたトラックとぶつかりそうになる。

危ないじゃないか!とおテルが怒鳴りつけると、そのトラックの助手席に乗っていたのはヒロシだった。

かくして、ようやく再会した二人は、そのトラックの荷台に乗って戻って行く。

二人が町中を歩いていると「百万ドルの明星 大音楽会」のポスターが貼ってあったので、ついヒロシは観てしまう。

雨が降る中、おテルはヒロシを連れ流しを再開するが、入ったキャバレーでは、曾根史郎が歌っており、すぐに追い出されてしまう。

外に出た二人は、車に乗って走りすぎるアキ子の姿を目にする。

おテルは、次に「バー モンロー」に入ろうと勧めるが、ヒロシはここはまずいんだと尻込みする。

ミネ子の店と知っていたおテルは、構わず、ヒロシを連れて中に入ると、ヒロシに歌わせる。

聞いていた客たちは、近江俊郎そっくりだとからかい、お前は歌わないのか?とおテルに絡む。

すると、おテルは、その場で歌い始め、客たちから喝采を受ける。

それを観ていたヒロシはいたたまれなくなり、そっと店を出て行ってしまう。

客から金を受け取った後、ヒロシがいなくなったことに気づいたおテルは、慌てて外に飛び出すと周囲を探すが、気がつくと、ヒロシが呆然と立ち尽くしており、その足下には、たたき壊したギターが落ちていた。

それを観たおテルは、ヒロシを抱きしめると、うん、良いわ、帰りましょう、国に帰りましょう、酷いよ東京は…と同情する。

東京駅の前に来た二人だったが、そこに「百万ドルの明星 新人 水原アキ子」と書かれたポスターが貼ってあったので、その切符を取り出したヒロシは、これだけ聞いて帰りたいんだと言う。

それを聞いたおテルは、行ってらっしゃい、水臭い…と素直に送り出すのだった。

会場では、古賀政男直々に指揮をしていた。

奈良光枝が歌い始める。

客席からそれを観ていた久森が、隣の客に、あれは、私が教えたんだと話しかけると、しっと制せられる。

しらけた久森がタバコに火を付けようとすると、マッチの火を隣の客に吹き消されたので、頭に来た久森は、タバコをちぎって口の中に入れると、立ち上がって帰ってしまう。

舞台では、津村謙が、タバコ片手に歌っていた。

続いて、アキ子が歌い始める。

舞台そでには、栗川社長や三平、ミネ子が観ており、客席後方の立ち見席にはヒロシも来ていた。

続いて、菅原都々子が登場する。

花束を渡す練習をしていた三平は、つい栗川社長に渡そうとしてしまい、睨まれたので身をすくめる。

舞台では、コロンビアトップ・ライトと神楽坂はん子が「こんなベッピン見たことない」を披露し、客席は大盛り上がり。

トリを勤めるのは近江俊郎の「湯の町エレジー」だった。

それを観たヒロシは、あいつがいたばかりに、歌い手になれなかったとつぶやき、舌打ちする。

国に戻ったヒロシは、突堤で、おテルと歌っていた。

おテルから、日本一!とおだてられたヒロシは照れ、その途端、バランスを崩して、海に落ちるのだった。

オワリ