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釣りバカ日誌

1988年、松竹、やまさき十三+北見けんいち原作、山田洋次+桃井章脚本、栗山富夫監督作品。

 

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

四国高松の海辺、釣り竿の前に立っていた浜崎伝助(西田敏行)は、腕時計を観て、何だ?又、会社行けってか?とふてくされるが、その時、浮子の変化で来たか?と感じ、少し先の岩場で釣っていた山ちゃんを呼んで、吊り上げた黒鯛をタモで掬ってもらう。

三ヶ月狙っていた獲物がようやく釣れたので、ハマちゃんは黒鯛を大きく掲げて喜ぶ。

タイトル

単車で帰って来たハマちゃんを、朝食の目玉焼きを焼いていた妻のみち子(石田えり)が窓から手を振って迎える。

帰宅したハマちゃんは、朝食はいらないと言い、着ていたジャージを脱ぎ捨てると、その中にはもうワイシャツを着ていたので、スーツだけ羽織って、又単車で宇野行きフェリーに乗り、会社に出社する。

柏木課長(鈴木ヒロミツ)に、得意げに黒鯛の報告をするハマちゃんだったが、所長がお呼びだと課長から言われる。

野口所長(名古屋章)の用件は、何と、ハマちゃんを東京本社に転勤すると言う辞令だった。

訳が分からないハマちゃんは、自分はこの町が好きで、女木島に家まで買ったので、今更ごみごみした東京など行きたくないと固辞する。

栄転を喜ばないハマちゃんに呆れた野口所長は、とうとう癇癪を起こしてしまう。

その日、帰宅したハマちゃんは、みち子さんから、ものは考えようよ。東京も房総半島や三浦半島の根っこみたいなものだし、東京湾も海縁なんだから、イナダ、イカ、ハゼ、カンパチ、ヒラマサ、モロコ…なんかが穫れるそうよと本の知識を披露されると、急に東京に興味を持ってしまう。

そして、良い人だねと言いながら、みち子さんに抱きついたハマちゃんは合体するのだった。

新幹線で上京するハマちゃんとみち子さんは、社内でもべたべたしていた。

ハマちゃんは、東京の家は狭いけど、ものすごい秘密があるんだと謎めかす。

北品川のマンション「南ハイツ」にやって来たハマちゃんは、管理人から鍵を受け取り部屋に入ると、みち子さんに窓を開け、すぐ横を川が流れている事を見せてやるのだった。

釣り船が係留してあり、今も一隻の釣り舟が戻って来ている所だった。

向かいは船宿だった。

正にハマちゃん向けの場所だったことが分かったみち子さんは、我が事のように喜ぶ。

ハマちゃんは上機嫌になり、みち子さんを部屋の中に引き込むと、またまた合体するのだった。

その頃、鈴木建設社長鈴木一之肋(三國連太郎)は、会社へ向かう車の中で自動車電話をかけていた。

前原運転手(笹野高史)は、電話が終わった社長に、奥様から預かって来た薬を手渡す。

鈴木建設の本社に到着した社長を、営業三課の佐々木和男課長(谷啓)が出迎える。

エレベーターに乗り込んだ社長は、他の社員が遠慮していたので、一緒に乗りなさいと勧める。

エレベーターの扉が閉まった直後、会社に駆け込んで来たのが遅刻したハマちゃんだった。

エレベーターに間に合わなかったことを知ったハマちゃんは、階段を開け上がるが、空気が悪いと言いながら、途中で音を上げてしまう。

鈴木社長は、朝の会議に出席していたが、秋山専務(前田武彦)の新関西空港計画の話が煮え切らないので、少し苛ついていた。

営業三課でも、ハマちゃんがあくびをすると、それがうつったように、女子社員の恵(戸川純)や久美子(山瀬まみ)もあくびをしたので、それを観ていた佐々木課長から注意される。

その文句を言っている佐々木課長の顔がフグに見えて来たハマちゃんは、気がつくと、佐々木課長の口に鍵型にした自分の指を突っ込んでいた。

他の社員に止められ我に帰ったハマちゃんだったが、鯛と間違えるな!と怒る佐々木課長に、いえ、フグですよと訂正してしまう。

その頃、草森秘書(園田裕久)からその日のスケジュールを聞かされていた鈴木社長は、ますますイライラ度が募っていた。

昼休みは、自分で外に出て食べて来ると鈴木社長は言い出す。

とある食堂で、魚を食べ終えた鈴木社長は、目の前に座って先に食事を終えていたハマちゃんから、食べ残しの魚をくれと言われると、その身をきれいにそぎ落としながら、きちんと食べてやるのが魚への供養だからねと言われてしまう。

釣りが好きなんですか?と聞く鈴木社長に、会社と釣り、どっちを取るかと言われたら、もちろん、釣りしかないんじゃないの!とハマちゃんは嬉しそうに答える。

その後、近くのデパートの屋上遊園地にやって来たハマちゃんは、鈴木社長に、売店のコーヒーをおごってやる。

ハマちゃんは、鈴木社長のことを知らず、おじさん、定年後の第二の人生って奴?などと語りかけ、鈴木社長の方もハマちゃんのことなど全く知らなかったので、適当に話を合わせ始める。

ハマちゃんは、イライラしているみたいだけど、人間年取ると、他人が嫌いになっちゃうんだって。でも、そうすると、他人もあんたのこと嫌いになる訳で、人間、人を好きになると相手も好きになると思うと言いながら、突然、釣りやんない?と誘う。

鈴木社長は、そんなに面白いですか?釣りって?と聞き、機会がありましたら…と答える。

そんな鈴木社長に名刺を渡そうとしたハマちゃんだったが、ちょうど名刺を切らせていたので、タバコの中箱の内側に、自宅の電話番号を書いて寄越す。

鈴木社長の方も、鈴木と名乗って、その場は別れる。

夜仕度に帰り着いた鈴木社長は、妻の久江(丹阿弥谷津子)から、娘の文子がどうしても別れたいと電話をして来たと教えられ、子供はどうするつもりかね?もう勝手なこと言って…と不機嫌になる。

スーツの中身を取り出していた久江は、タバコの中箱が出て来たので、捨てて良いんでしょう?と聞くが、それに気づいた鈴木社長は、その中箱を受け取ると、どんなもんか、いっぺんやってみるか…とつぶやく。

ハマちゃんはみち子さんと自宅でいちゃいちゃしている最中だったが、電話がかかり、その相手が鈴木と言うので、誰のことか一瞬分からなかった。

すぐに、デパートの屋上で一緒だったあのスーさんと気づいたハマちゃんは、釣りをやりたいと言われたので、それなら今度の日曜日7時半でどうですか?と誘う。

日曜日、船宿の主人善吉(江戸家猫八)の船に乗り込むことにしたハマちゃんとスーさんは、東京湾に出る。

海から観る東京のビル群の姿が珍しかったのか、スーさんは、持って来たカメラで写真を撮り始める。

ハマちゃんは、釣り初体験のスーさんに竿の持ち方や動かし方を教え、餌は自分で付けてやる。

スーさんはすぐに何か釣れたと言い出す。

ハマちゃんは驚きながらも、隣の人の糸と絡んだ「お祭り」だと教え、隣のおじさんに謝るように教える。

糸をあげ、隣の糸と絡まったスーさんの糸をほどいてやったハマちゃんは、その後、糸を海に投げ入れたスーさんが、又お祭りですよと言い出したのでちょっと呆れてしまう。

しかし、それは「お祭り」ではなかった。

ヒラメが釣れていたのだ。

その後もビギナーズラックは続き、ハマちゃんが釣れないのを尻目に、スーさんの方だけ面白いようにヒラメが釣れまくる。

都内に戻って来た二人は、ハマちゃんの自宅で、みち子さんの手料理をごちそうになるが、すっかり上機嫌のスーさんは、みち子さんから、釣りが好きになるには二つ資格がいり、一つは気が短いこと。もう一つはスケベなことを言われ、それは私は失格だと照れてしまう。

ハマちゃんと師弟の片目を交わしたスーさんだったが、さすがに疲れが出たのか、その場に寝てしまう。

泊まらせることにしたハマちゃんは、スーさんの自宅に電話をし、今夜は一晩泊めますと伝える。

久江の丁寧語に驚いたハマちゃんは、それをみち子さんに教えながら、スーさんも、昔は良い暮らししていたのかもねなどと言いながら、又又合体するのだった。

翌朝、目覚めたスーさんは、前原運転手にこっそりこのマンションの場所を教え、迎えに来るよう電話をしていた。

その時、みち子さんが起きて来たので、スーさんは礼もそこそこに部屋を出て行く。

その時、帽子を忘れて行ったので、みち子さんが持って行って、マンションの一階付近でスーさんに冠らせてやっている所を、近くで待機していた前原運転手が目撃し、二人の関係を誤解してしまう。

会社へ向かう車の中で、今観たことは忘れますなどと言い出したので、後部座席でスーツに着替えていた鈴木社長は、何言ってるんだと呆れてしまう。

ハマちゃんも出勤し、川で船の手入れをしていた八郎(中本賢)に声をかけると、又振られたんだって?と話しかけ、家の会社に良い女の子がいるんだけど、今行ったら、出勤途中の彼女に出会えるかも知れないななどと言葉巧みに八郎の興味をそそり、そのまま船で会社の近くまで送ってもらうと、知らん顔をして降りて行く。

その日、会社で鈴木社長は、地図に印をつけていた東京湾沿いの工業地帯3万坪を買い取ると言い出す。

草森秘書にヤマト銀行頭取を呼ばせると、あっけにとられていた秋山専務には、プロジェクトを立ち上げるよう命じる。

一方、その日の昼休み、パチンコの景品をたくさん抱えて来たハマちゃんは、それを女子社員や仲間たちに配り始めるが、又、佐々木課長から嫌みを言われる。

しかし、ハマちゃんは、ただパチンコ屋で遊んでいただけではなく、5億円の仕事を取って来たと言い出す。

パチンコ屋で会ったおばあちゃんが、荻窪に土地を持っているので、そこにワンルームマンションを建てたいと自分に任せて来たと言うのだ。

にわかには信じがたい話に、佐々木課長は、ここは四国みたいに甘くないよと嫌味を返すが、そこに当のおばあちゃんから電話が入り、明日、長男の弁護士を連れて来るそうですとハマちゃんが報告すると、暇人同士で良かったねと佐々木課長は受け流す。

その頃、社長室で、昨日の釣り船での写真が出来上がって来た差好き社長は、それを机の上に並べて、みち子さんに電話を入れると、写真ができたので浜崎さんに渡してもらおうと思うので、浜崎さんの電話番号を教えてくれと頼む。

みち子さんは喜んで、273-5421の営業三課だと教える。

そこに草森秘書が来たので、その番号にかけてくれと頼むと、それはうちの社だと言い出す。

はっと気づいた鈴木社長は、すぐに人事部長を呼ぶと、浜崎なる社員のことを聞く。

人事部長はさらに人事課長を呼び、浜崎のことを詳しく尋ねると、協調性があるなだけで、後の評価はオールCの男だと言う。

分かりやすく言うと、職場の雰囲気を明るくするが、逆に言うと、職場の労働意欲をなくさせるような人物だと言う。

鈴木社長は、驚いた…、こりゃ、驚いたと思わずつぶやいてしまう。

その日自宅に帰って来た鈴木社長は、向うが気がつくまでほっときゃ良いだろうと久江に話す。

私は不幸せな老人ですよと鈴木社長が自嘲すると、久江は、でもあなたをあなたの社員が優しくいたわったんでしょう?とからかう。

社員としては問題あるんだが、どうしたら良いんだろう?と鈴木社長は悩むが、その時、当のハマちゃんから電話が入り、今度の日曜日、白ギスやってみないと言って来たので、やりますと答え、行ける所まで行ってみるさとつぶやくのだった。

次の日曜日、電車の駅でスーさんと出会ったハマちゃんは、スーさんが一流の竿を買ってもって来たので驚いてしまう。

浜辺にやって来たハマちゃんは、投げ釣りの要領を教えながら、今度は技術であって、ビギナーズラックはないからねと教えるが、言っている先からスーさんが、良い投げを見せ、あっという間に白ギスを吊り上げたので、道具が良いからね…と呆れるしかなかった。

その後、ハマちゃんの自宅に戻り、ハマちゃんはスーさんのことを釣りの才能あると褒める。

船長の善さんに言われたけど、俺には余裕がないって。その点、スーさんには落ち着きと言うか貫禄がある。それだけに惜しいねと言うので、スーさんは何が?と聞くと、事業かなんか起こしていたら成功して、人の10人や20人くらいは使う人になってたかもよとハマちゃんは惜しがる。

それを聞いたスーさんは、あなたも、釣りへの情熱をもうちょっと仕事につぎ込めば…と言い返そうとするが、一生懸命な社員ばかりだったらつまんないでしょう?と言う始末。

みち子さんお手製の天ぷらをごちそうになった後、スーさんは最寄り駅までみち子さんに送ってもらうことになる。

どういうきっかけでハマちゃんとお知り合いになったんですか?とスーさんが聞くと、食堂で魚を食べていたら、そんな食べ方したら、魚が可愛そうだってと話しかけて来て、次に又食堂で会った時、突然、結婚してくれ、僕はあなたを幸せにする自信はないけれど、自分が幸せになる自信はあると言われたので、他に好きな人がいたんだけど、ハマちゃんと一緒になったとみち子さんは答える。

それは良い話ですねとスーさんは言い、そんなスーさんの為に、みち子さんは、自動販売機から煙草を買って渡してくれる。

何かお返しをさせて欲しいんだけど、何が良いですか?とスーさんが聞くと、何も欲しいものはないとみち子さんは答える。

ご主人は仕事は巧く行ってますか?と聞くと、出世はしないと思うけど、私はハマちゃんと一緒にいるだけで嬉しいの。どうしてもって言うなら、一つだけ欲しいものがあり、それは赤ちゃんとみち子さんが言ったので、それは私には無理ですね…とスーさんも諦めるしかなかった。

そんなスーさんに、別れ際、みち子さんは自分が巻いていた赤いマフラーを巻いてやるのだった。

ある日、神経痛が悪化し、船に乗れない善さんの代わりに船を出してやったハマちゃんが帰って来ると、善さんは相談があると言う。

その後、帰宅して来たハマちゃんは、みち子さんに、スーさん確か、税金に詳しいって言ってたよね?と聞き、今善さんが、事務員を欲しいと言ってたので、スーさんどうかと思ってと言い出す。

そして、自宅の温室で植物いじりをしていたスーさんに電話を入れると、今いくら取ってる?10万くらい?15万くらい?と給料の話をし出したハマちゃん、返事をごまかすスーさんに、帳簿をつける人を探しているんだけど。出勤時間も適当で良いし、昼は家で食べれば良いんだしと勧める。

スーさんは、今の所にも義理があるので、前向きに検討させていただきますと答え電話を切るが、久江がどうしたの?と聞いて来ると、私に就職世話してくれるって。15万くれるそうだ…と言いながら、思わず涙ぐんでしまうのだった。

後日、とある葬式に出席することになった佐々木課長は、営業三課の部屋で喪服に着替えている最中、ズボンの尻の部分が避けてしまう。

慌てて、久美子を間仕切りの中に呼び込んだ佐々木課長は、ズボンを降ろそうとして、パンツ一丁になってしまったので、勘違いした久美子が泣き出してしまう。

その声に驚いたハマちゃんや他の社員が飛び込んで来て、佐々木課長に飛びかかるが、課長はあわてて誤解だと言い、事情を説明し出す。

誤解だったと知ったハマちゃんは、みんなをなだめ部屋の外に出すと、自分も一緒に葬式に行く事を思い出したので、喪服を着ようとするが、自分の分がないことに気づく。

連絡を受けたみち子さんが、急いで喪服を持って会社に駆けつけて来る。

受付の所で待っていたハマちゃんと抱き合い、無事、喪服を受け取ったハマちゃんは出かけて行くが、受付前のベンチで息を整えていたみち子さんは、ちょうど車から降りて会社に入って来たスーさんを観かけ声をかける。

スーさんはちょっと驚いたようだったが、みち子さんを手招くと、一緒にエレベーターに乗り込む。

後から乗り込んで来た社員たちが、みんなスーさんに頭を下げるのを観ていたみち子さんは、不思議そうにスーさんの顔を見る。

社長室にみち子さんを案内したスーさんは、秘書からメモを受け取ると、鈴木建設の社長ですと正体を明かす。

もっと早くお話ししたかったのですが、なれそめは、あなたのご主人が、惨めな老人に声をかけてくれたことで…とスーさんが説明し出したので、あなた社長さんでしょう?私たちが仕事を世話した時、あなたはからかっていたんですか?とみち子さんは怒り出す。

スーさんは、息子は外国へ言ったまま行方知れず、娘は私の菜を使って好き勝手に生きている。今の私は妻と寂しい二人暮らしなのですと弁解するが、みち子さんは、私帰ります!ハマちゃん、首になるんですか?魚ばっかり釣って、ダメな社員と思ったでしょう。さようなら!と言い残して部屋を出て行く。

止めようとしたスーさんだったが、社長室に戻って来ると、一人思い悩むのだった。

その日、善さんの所へ来たハマちゃんは、スーさん、ダメだって。今つとめている所に義理があって…。又、他の人当たってみるよ。ごめんね、善さんと伝えて帰る。

自宅に戻って来たハマちゃんは、社内報に、ちゃんとスーさんの写真載っているじゃないとみち子さんから見せられ、何か悪いことしちゃったな〜と言いながら、がっくり力を落とすのだった。

翌日、スーさんが先に乗り込んだエレベーターに、又遅刻したハマちゃんがあわてて乗り込んで来る。

スーさんは、そんなハマちゃんの肩を叩き、親しげに手を挙げてみせるが、ハマちゃんは気恥ずかしそうに頭を下げ、「おはようございます。どうも、色々と…」と他人行儀な挨拶をするだけだった。

その後、佐々木課長から、鈴木と言う爺さんから電話だと言われたハマちゃんは、これまで通り、公私を別にして、私と付き合ってもらえんかねと頼まれるが、スーさん、俺も辛いんだけど、この付き合いはスーさんのためにならないから…と断り、電話を切る。

その後、ハマちゃんは想いにふけり、メバルの仕掛けを作ろうと引き出しを開けるが、それを観ていた佐々木課長が邪魔をしに来て、引き出しに入っていた釣りの仕掛け類をゴミ箱に捨てて足で踏みつける。

しかし、その佐々木課長の足が抜けなくなってしまう。

その年のクリスマス。

スーさんは、草森秘書が持って来た人事表を観て、ハマちゃんが高松に帰ることを知る。

訳を聞くと、コンピューターの混乱で、間違って本社勤務になっていたので、この際戻すことになったのだと言う。

浜崎は何と言っている?と聞くと、本人は高松に戻りたいと言っていると言う。

せめて、役付で、戻せなかったのか?と聞くスーさんに、変更するなら今からでも…と草森秘書は言いかけるが、スーさんは、瀬戸内海で魚釣りか…、ちくしょー!と言いながら、恨みを込めるような勢いで、ハンコを無理矢理人事表に押し付けるのだった。

営業三課では、久美子や恵が、ハマちゃんの「ひかり」は何時に出発するのかと佐々木課長に聞いていた。

14時24分と教えた佐々木課長も、女子社員たちと一緒に東京駅に向かう。

「ひかり」に乗り込もうとしていたハマちゃんとみち子さんは、恵が持って来た花束を受け取ると感激する。

佐々木課長は、君の机は永久欠番にしておこう。魚臭くて誰も座らんからなと冗談を言い、ハマちゃんも大笑いをする。

ハマちゃん、いつ帰って来る?と聞く久美子らを残し、二人は「ひかり」に乗り込むと、そのまま出発する。

車中、何か思い悩んでいたみち子さんは、何を考えているのとハマちゃんから聞かれ、ハマちゃんと同じこと。スーさんのこと、いくら何でも、あんなこと言わなきゃ良かったと後悔し、その場から電話を入れてみることにする。

社長室にいたスーさんは、新幹線のみち子さんから電話をもらい、私、ずーっと後悔していたの。スーさん、怒ってない?と言われると、そんなことはありませんと答える。

私たち、これから四国へ帰る所。この人、魚さえ釣れれば良い、釣りバカだからと、横にいたハマちゃん共々、電話口のスーさんに伝えるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気コミック「釣りバカ日誌」の映画化で、「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」の併映作として公開されたシリーズ第一作である。

まだ、西田敏行も三國連太郎も若々しいことに驚かされる。

ストーリーもシンプルだが、人情ものとしてほろりとする部分もあり、さすがに脚本に山田洋次監督が参加しているだけのことはある。

この時点から既にシリーズ化を念頭に作られていたのかどうかは不明だが、ハマちゃん、みち子さん、スーさんら、レギュラー陣のキャラクターはしっかりできており、それぞれに親しみやすさが備わっている。

又、プログラムピクチャーとして、低予算ながらも、一画面一画面丁寧に撮られていることもあり、安心して観ていられる。

今となっては、他界された鈴木ヒロミツさん、名古屋章さん、江戸家猫八さん、谷啓さん、前田武彦さんなどの姿が無性に懐かしい。

皆さん、安定した存在感がある。

戸川純、山瀬まみや笹野高史らも出ていたのにも驚かされる。

まだ宴会芸などのシーンはなく、後半、寂しげでやや急展開な印象があるが、それはそれで、心に染みる何かを残してくれるような作品になっている。