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探偵はBARにいる

2011年、「探偵はBARにいる」製作委員会、東直己「バーにかかってきた電話」原作、古沢良太+須藤泰司脚本、橋本一監督作品。

※この作品は新作でミステリですので、後半謎解きがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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札幌

夜の照明に輝く観覧車の近くで、探偵(大泉洋)は、チンピラ数人に追いかけられ痛めつけられていた。

相手は、探偵が渡した偽札をばらまき、品物を返せと迫る。

探偵は、持っていた封筒を仕方なく返すが、その時、相棒の高田(松田龍平)がようやく駆けつけて来て、チンピラどもを得意の空手で倒し始める。

探偵も、近くにあったシャベルでチンピラのボス格を殴りつけると、再び封筒を取り戻す。

同じ頃、高級クラブ「コンチェルト」の開店パーティでは、「霧島グループ」社長霧島(西田敏行)が、来賓の市長の挨拶に礼を言っていた。

続いて、客席に来ていたマキ(カルメン・マキ)を紹介し、ピアノがあるので、一曲歌ってもらえないかと頼む霧島。

マキは、ただでは歌わないのだけど…と言いながらステージに上がると、愛していますと冗談を言う霧島に、愛しているのはあそこにいる女性だけでしょう?とステージ脇にいた妻の沙織(小雪)を観ながら、そのままピアノの前に座り歌い始める。

バーに来ていた探偵は、奪い返した封筒の中身を依頼人の北海道日報新聞記者松尾(田口トモロヲ)に渡し、30万請求していた。

中身は、松尾と愛人の自衛官との熱いベッドシーンを盗撮した写真だった。

画像データ共々渡し、ネットへの流出も防いだので、30万でも安いだろう?と探偵がとぼけると、値切っていた松尾も諦めて了承する。

横で飲んでいた高田は、敏腕記者がそう言う趣味でも良いと思うなどと、無責任な感想を述べていた。

探偵は、バー「ケラーオオハタ」の名刺を松尾に渡し別れると、高田にはバイト料を渡し、SEカードがまだあったなどと一人とぼけるのだった。

探偵と高田がバーから階段を降りて帰る時、少し遅れて、同じビルの中に入っていた「コンチェルト」からは霧島が、具合が悪くなったと言う妻の沙織を送って帰りかけていたが、沙織は携帯を店に忘れて来たようだからと言い、取りに戻る。

先に外に出て帰りかけていた霧島は、道に止めてあったライトバンに、男たちが少女を拉致して乗せようとしているのを観かけたので止めに入るが、男たちはそんな霧島を袋だたきにする。

ススキノの町にサイレンが鳴り響き、それを耳にした探偵と高田は、ススキノらしいねなどと話しながら、バー「ケラーオオハタ」に戻る。

店のカウンターの奥には、オセロが置いてある二人の定席があった。

マスター(増田徳寿)は黙って、ピース缶と太田胃散を探偵の席に置く。

探偵は、オセロは簡単に黒と白が入れ替わる。人間と同じだなどと蘊蓄を語る。

人口190万の町札幌

俺はこの町のプライベートアイ、つまり探偵なのだ…

タイトル

周囲には人っ子一人いない大雪原の一角から、突如、探偵が這い出て来る。

北海道大学の農学部にいた高田の携帯が鳴るが、研究室で一人寝ていた高田は、面倒くさそうに携帯の呼び出しを止めると、又、寝ようとするが、携帯はしつこく又鳴り始める。

その後、高田は、探偵を車で迎えに行くが、助手席で毛布に包まった探偵は、来るのが遅い!毛布が臭いと文句を言う。

高田は、牛用の毛布だからとこともなげに応える。

探偵は、自分の腕時計が壊れていることに気づくが、高田が全く無関心そうなので、聞けよ!どうして俺がこうなったかを!と苛立たしそうに怒鳴る。

ことの始まりは、昨夜、バーにかかって来た一本の電話だった。

携帯を持たない探偵は、バーテンが差し出した固定電話に出ると、相手は「コンドウキョウコ」と名乗る女性だった。

記憶にない名前だったので戸惑う探偵だったが、相手は、10万振り込んだのだが、入金の確認はしないのか?と言うので、依頼客だと察した探偵は、私のことはどちらでお知りになったのです?と聞く。

すると、コンドウキョウコは、自分で教えたんでしょう?と呆れた風に応える。

探偵は気取って、相手が分からないと動きませんよと言いながら、相手の素性を探ろうとするが、携帯、持ってないの?と聞かれたので、束縛されるので持たないと返事すると、そこで電話は切られてしまった。

その後、再び電話がかかり、さっきはごめんなさいとコンドウキョウコは謝って来る。

依頼内容は、経済法律事務所の南に、去年の2月5日、加藤がどこにいたか?と聞いて欲しい。その時の相手の様子も観察して欲しいと言うものだった。

事務所内にカメレオンを飼っている弁護士の南(中村育二)を訪ねた探偵は、害虫駆除の会社をやっているのだが、事業拡大に伴い、先生に顧問弁護士になってもらえないかと切り出すが、南は、家の取引先は大手ばかりなので…とにべもなく断る。

探偵は、コンドウキョウコさんの紹介でも?とかまをかけてみるが、南は知らんねと言う。

去年の2月5日、加藤がどこにいたかご存知ですか?と本題を切り出した所、南は、君は何を言っているんだ?と相手にしなかったので、探偵は仕方なく帰るしかなかった。

ソープランド「英雄好色」の客引き源ちゃん(マギー)から、ロシア人が入ったから遊んで行かない?などと誘われた探偵だったが、どうせ日本人でしょう?などと軽くかわして別れたのち、地下街へ降りる所で、尾行して来た男に羽交い締めにされ、スタンガンを押し当てられる。

気がつくと、車の後部トランクの中に縛られて詰め込まれ、雪原のただ中に掘られた穴の前に連れて来られた探偵は、鼻と舌にピアスを入れ、始終ガムを噛んでいる男(高嶋政伸)から、人間死ぬ時は、一生がフラッシュバックのようによみがえるそうだ。映画みたいに…、本当かね?などと話しかけられる。

さらに、黙っていると怖いだろうからと、ジンギスカン鍋は、ラムとマトン、どっちが好きかなどとも話しかけて来ると、背後からブルドーザーが近づいたので、自分がどうさせるか悟った探偵は止めろ!と叫ぶが、ガム男から穴の中に蹴落とされてしまう。

さらに、ブルドーザーで上から雪をかけられ、探偵は雪の中に埋められてしまったのである。

探偵の自宅アパートで話を聞き終わった高田は、俺はラムだな…とつぶやいたので、ヘアキャップをかぶり風呂に入っていた探偵は、そう言う話じゃないだろう!と怒る。

良かったな、手の紐がほどけてと高田が言うので、ほどけるようになっていたんだ。どういうことか分かるか?と探偵は答える。

その後「ケラーオオハタ」にいた探偵に、又、コンドウキョウコから電話がかかって来たので、相手は殺そうとしたんだ!と、思わず切れた探偵だったが、南の様子を聞かれると、顔色が変わった。あいつは何か知っていると答え、親父の形見のオメガも潰してしまったと愚痴った探偵は、今回の脅しは、君への警告だと教えるが、相手は電話を切ってしまう。

探偵は、鬱憤を晴らす為に、ギャンブルや女と遊び、泥酔したのち、ビクターの犬の人形を抱えて自宅アパートに戻って来ると、翌朝、馴染みの「喫茶モンテ」で、やたらと色気を振りまくウエイトレス峰子(安藤玉恵)相手に、ナポリタンとコーヒーの朝食を取る。

コーヒーを口にした探偵は、ブレンド変えた?と峰子に聞き、いつもよりまずいと顔をしかめる。

探偵は、自分を怒らせた奴に報復をすることにした。

清和コーポレーションと言う会社を見張っていると、そこに例のガム男がやって来たので、付ける為、高田に車を発進させようとするが車が動かない。

切れかけた探偵だったが、高田が、車にお世辞を言えと言うので、一緒になって車にお愛想を言うと、ようやくエンジンがかかる。

この高田と言う男は北大農学部で、空手の師範もしているが、一日中寝ていたい男でもある。

どうやら、あのガム男は、国衛会花岡組と言う、札幌でも一番下品なヤクザ組織の一人らしい。

車の上にあぐらをかき、望遠鏡で探偵が監視していたのは、「則天道場」と言う怪しげな右翼団体の建物だった。

ススキノに戻って来た探偵は、渡し忘れていたSEチップをネタに、北海道日報松尾を再度スポーツバーに呼び出すと、則天道場のことを聞き出す。

花岡組のファームなのだと松尾は教える。

松尾は、愛人の男が沖縄駐屯になってしまったと嘆いていた。

ススキノ皆楽会館の放火事件のとき、田口なにがしと言う則天道場の一員が出入りしていたと松尾は話を続ける。

そのガキは、その後江別川で死んだ。シンナー中毒と言うことだったと教えると、松尾は資料類を探偵に私、借りなら今夜返せと迫る。

それで、探偵は、その後、松尾がカラオケで3時間歌い続けた松田聖子に付き合うしかなかった。

その後、酔った勢いで、美人の店に連れて行くと言う松尾に、本物の女の所へ連れて行けとふてくされた探偵だったが、連れて来られたのは、高級クラブ「コンチェルト」で、応対に出て来たママの沙織には一目で参ってしまう。

調子づいた探偵は、その場で沙織に結婚を申し込むが、松尾から、ママのご主人は、昨年、暴行事件で亡くなった霧島さんだと教えられ、たしなめられる。

無礼を詫びた探偵は、確か、女の人を助けようとして…と、暴行事件を思い出すが、沙織は、この店を残してくれたから…と亡くなった夫に感謝しているようだった。

翌朝、電話で起きた探偵は、「お嬢さんの報告ないぞ」と言う相手の言葉に返事もせずにすぐさま電話を切ると、又、いつものように「モンテ」でナポリタンの朝食を食う。

夕べ、松尾からもらった資料に目を通すと、「雑居ビル火災で死亡した女性の名は近藤京子」と判明、電話の依頼人と同じ名だったので興味をかき立てられる。

近藤京子が皆楽会館でやっていた「スナック京子」の元ホステスに会い話を聞くと、韓国人らしきそのホステスは、ママは当時地上げ屋にしつこくされており、パトロンのことは足長おじさんと呼んでいたと言うことを知る。

続いて、死んだ田口晃の実家に出向いた探偵は、青少年をシンナーから守る会から来たと噓を言い、母親康子(阿知波悟美)から話を聞くことに成功する。

それによると、アキラは炭坑の町に生まれたが、田口幸平(有薗芳記)が働きもしないどうしようもない父だったこともあり、すぐに不良になり、則天道場に預けたが、事件の二ヶ月前ほどから来なくなったらしく、その翌日死んだと警察から知らされたのだと言う。

気がつくと、家の中には分不相応な50インチテレビがあった。

康子が言うには、夫の競馬が調子が良いのだと言う。

そこに、当の幸平が帰って来て、見知らぬ男を家に入れた康子を殴りつけると、探偵を有無を言わさず追い出してしまう。

「ケラーオオハタ」で高田と会った探偵は、50インチのテレビ、貧乏だと買えないなと聞く。

競馬でガンガン来たら買えるのでは?と言う高田に、ガンガン来るか?と問いかける探偵。

来ないな…と頷く高田に、あのおっさん、どこから金引っ張り出しているんだ?と自問自答する探偵。

そこに、又、コンドウキョウコから電話がかかって来て、新たに10万振り込んでおいたと言う。

新たな依頼は、「シンコウ」と言う会社に電話して加藤を呼び出して欲しいと言うものだった。

俺は加藤と言う人物の顔を知らないんだが?と探偵が言うと、何か目印になるものを持たせたら良いでしょうと女は教えてくれた。

事情を聞こうとする探偵に、いつかすべてをお話ししますからお願いします。あなたの不名誉になるようなことはありませんからと、コンドウキョウコは言うので、探偵は気に入ったと答える。

探偵は、言われた通り「シンコウ」の加藤を呼び出し、「マンガピンキー」を持って来てくれと頼む。

エロ麻雀ゲームをしていた高田は、コンドウキョウコが気になるんだろうと探偵に指摘したので、探偵はゲームの邪魔をしてやる。

近藤京子の実家を訪ねた探偵は、母親百合子(竹下景子)に、娘の名を騙る人物に心当たりはないかと聞くが、百合子はしれっと「私かしら?」と答える。

「足長おじさん」ってご存知ですか?と聞くと、父親だと思うと答えた百合子は、実は、京子の実の父親は、学生運動の活動家をしていた男で、娘が生まれてすぐにいなくなった男だと言う。

しかし、去年亡くなったので会えませんよと言うので、ピンと来た探偵は、霧島としおさん?と聞くと、やはりそうだと言う。

去年の2月、雪祭りの日に亡くなったと聞いた探偵は、それは2月5日だと言うことも知る。

棚に飾ってあった家族写真を見た探偵は、百合子には、今の夫との間にできた妹がおり、姉の京子とはあまり上手くいっていなかったので、今は留学中だと言う。

その後、探偵は、霧島が殺害された現場に向かってみるが、ちょうどそこに、花を手向けに来た沙織と出会う。

探偵は、立ち去りかけた沙織に、近藤京子ってご存知ありませんか?と聞くが、沙織は「は?」と答えただけだった。

アパートに帰って来た探偵は、待ち伏せされている気配を感じ、すぐにその場を逃げ出すが、ラーメン屋の出前の自転車とぶつかってしまう。

待ち伏せしていたのは、生まれた時からヤクザ顔だったに違いない桐原組の若頭、相田(松重豊)とその子分だった。

桐原組の親分の息子を、以前知らずに探偵が家庭教師したことから腐れ縁になり、今では、音大に通っている娘の素行調査を随時連絡することになっていたのだが、ずっとさぼっていたのだった。

相田とサウナに付き合うことになった探偵は、経済法律事務所の南と言う男を知らないか?と聞いてみると、面白そうじゃないかと相田は食いついて来る。

その後、ジンギスカンを食いながら、以前、21世紀プロジェクトと言う都市計画に絡み、しこたま儲けた奴だと、相田は南のことを教えてくれる。

どうやら、皆楽会館地上げにも絡んでいたらしい。

高田を公衆電話から呼び出そうとした探偵だったが、高田は携帯に出ようとしない。

ふてくされて町を歩き出した探偵は、バーからホステスたちに送られ、ご機嫌な様子で出て来た田口幸平を見かけたので、とあるビルの屋上に連れて行き、そこのフェンスから落とそうと持ち上げながら、どうやって金を稼いでいるのか聞く。

幸平は最初、馬だよとシラを切っていたが、探偵が、一昨年の9月、警察から連絡があったろう、皆楽会館放火のことで?それで、則天道場に電話してみたら、晃が出たんだろう?そして、その翌日、晃は死んだ。お前は、警察に電話せずに、則天道場に連絡したんだろう?同情は事実を隠す為に、お前に金を渡すようになったと探偵が仮説を聞かせると、テープがあんだよと幸平は口を割る。

息子売って、買ったテレビは迫力あるか?と嘲ると、幸平は、お前なんかに何が分かると愚痴をこぼし始めたので、泣き言に付き合っているほど暇じゃないよと言い捨てて、探偵は去って行く。

翌日、高田を連れ、則天道場に乗り込むことにした探偵だったが、出迎えたのは、副長の佐山(波岡一喜)と言う男一人だった。

他には、鍛錬中だと言う鼻血を流した塾生(野村周平)が一人正座をしているだけだった。

探偵は、こちらの塾生だった田口晃くんが、亡くなった前日、こちらにいたと言う話がありますが?とかまをかけてみると、狭山は否定するが、その時、窓から帰って来る街宣車が見えたので、高田を促して帰ろうとするが、狭山が拳銃を突きつけて来たので、すぐに倒して玄関から出ることにする。

うさんくさげに、帰る探偵と高田を睨みつける塾生たちの中に、あのガム男がいた。

探偵はヤバいと感じ、その場を逃げ出すが、塾生たちが飛びかかって来たので、高田と共に応戦し始める。

空手で塾生たちを倒していた高田だったが、どこから見つけて来たのか、スノーモービルに乗って、探偵に乗れ!と伝える。

しかし、その時、鼻をへし折られた狭山が血まみれの顔で出て来ると、拳銃をぶっ放し出したので、探偵は身をすくめる。

弾は一発も当たらなかったが、悔し紛れに狭山が投げつけた銃本体が探偵に当たる。

とりあえず、スノーモービルにまたがってその場を脱出した探偵と高田だったが、すぐに街宣車が追って来る。

街宣車はハンドル操作を誤り、転倒するが、スノーモービルの前には、先ほど道場内で鼻血を流していた少年塾生が飛び出して来たので、こちらも転倒してしまう。

少年は、自分も連れて行ってくれと言う。

仕方なく、車に乗せた探偵だったが、又しても車は動かない。

高田、探偵、そして少年の3人は、懸命に車にお世辞を行ってエンジンがかかる。

札幌市内に戻る車の中で、探偵は奥歯が抜けたと嘆き、高田は、鎖骨が折れて右手が動かないので、運転を代わってくれないかと頼む。

中央警察署前に来た探偵は、少年に、警察に行って正直に話す以外に君の生きる道はないと説得し、警察へ向かわせる。

翌日、ボウリング場脇の喫茶ルームで加藤を待っていた探偵と高田だったが、探偵の方が先に、外にやって来た「清和コーポレーション」の車に気づく。

コンドウキョウコが呼び出した「シンワ」と言うのは「清和」の事だったにようやく気づいた探偵は、車から降りて来たあのガム男こそ、加藤だと知る。

加藤は、部下のヤクザを引き連れて乗り込んで来たので、ヤバいと感じた探偵は、高田から携帯を借りる。

やはり加藤だったガム男は、子分から「マンガピンキー」を受け取って喫茶ルームを見渡していたが、そこに高田と探偵の姿はなく、場内アナウンスで、加藤様、ボウリングレーン3番にお越し下さいと言う声が流れたので、加藤たちはボウリング場へ向かう。

その時、喫茶室のテーブルの下に隠れていた探偵は、助かったことを悟る。

もちろん、今の場内アナウンスを携帯で頼んだのは探偵のとっさの機転だった。

その時、加藤と子分らは、3番レーンにいた、無関係で気の毒なハゲ男に絡んでいた。

「ケラーオオハタ」に戻って来た探偵は、かかって来たコンドウキョウコの電話に出ていた。

相手は、コンドウキョウコの妹ではないかとにらんでいた探偵は、あんたは、メガネが似合う美人さんか?とかまをかけてみて、一人で戦える相手じゃないから手を組んでも良いぜと格好付けて見せる。

女は、バーに電話しないといないくせに…とバカにしたので、携帯を買うよ。依頼人を守るのは探偵の仕事だと答える。

あの少年が警察に行けば、後は芋づる式に捕まるんじゃないか?と、隣に座っていた高田は言うが、探偵は、証拠がない…と答えた後、何事かを思いつく。

その頃、晃の両親は、加藤に拷問されていた。

加藤は、テープの在処を吐かない幸平にじれ、これまでの借りを返してもらうと言いながら、康子の足を撃った後、腹を2発撃ち射殺する。

さすがに幸平は怯え、運動靴の中に隠していたテープのことを教えるが、それを再生して本物と知った加藤は、新聞紙を幸平の胸に付けながら、死ぬ時には一生がフラッシュバックのように再生するそうだ。映画のようにな…と言いながら、その場で3発撃ち込む。

探偵と高田が、その家に駆けつけたのは、その直後だった。

探偵は、瀕死の幸平を揺り起こそうとするが、幸平は瀕死の口から、息子の晃を良く動物園のライオンを観に連れて行ったとつぶやき、事切れる。

探偵は、部屋の中で、自分を責めるように暴れ回る。

翌日、探偵は高田を伴い、加藤に会いに出かける。

地下駐車場にやって来た時、発砲音が聞こえたので駆けつけると、加藤は、車を降りた所で何者かに撃たれたらしく、血反吐を大量に吐いて死んでいった。

探偵は、近くのドアから逃げ出した犯人の気配を感じたので追いかけるが、相手の正体は分からなかった。

その後会った相田は、うちの者じゃないと否定し、花岡組の内輪もめか、素人か?と推測を言うが、探偵はあり得ないな…と答え、コンドウキョウコは桐島の娘だったと教える。

霧島は計画的に殺されたのではないか?と探偵は推理を語るが、桐島のことを熟知している奴にしかできないだろうと、一緒にいた高田は言う。

相田は、面白いネタを仕入れたと話し出し、高田と探偵を空港へ向かわせる。

「銀漢興産」と書かれたヘリコプターから降りて来たのは、関西裏社会のドン岩淵恭輔(石橋蓮司)と、その息子、岩淵貢(本宮泰風)だと言う。

車の中からその様子を観ていた探偵は、一番最期にヘリから降りて来るのが沙織だと知り驚く。

相田が言うには、近々、岩淵貢と結婚するらしい。

高田は、さっきの答えが分かった。女房だったら、霧島の性格や行動には詳しいかなと言い出す。

その後、高田と二人で「コンチェルト」にやって来た探偵は、今回の事件の依頼人、あんたじゃないかって最初思っていたと告げる。

その時、南が来店して、沙織と共に二階のVIPルームに向かったのを目撃した探偵は、高田と二人で勝手に自分たちもVIPルームに入り込むと、追い出そうとするボーイに、自分たちは南先生とは友達なんだよと押しのける。

岩淵恭輔が隣のホステスに、最近札幌にも害虫が増えて来たねと冗談を言うのを聞いた探偵は、ここにもたくさんいるなと応戦する。

その時、沙織が探偵の顔にグラスの酒を浴びせかけ、無礼なお客様は、金輪際、店の敷居をまたがないでもらいますと告げる。

探偵はそれから、放火事件と桐島事件のことを徹底的に調べ直した。

関係者は皆、霧島の人格を褒める事を知った探偵は、事件現場に飾られていた沙織の花を投げ捨てると、近藤百合子の家を再度訪れ、亡くなった霧島さんは立派な方だと知り、この前は、あなたのことを霧島から捨てられた女と心の中では思っていたので、それをお詫びしたいと頭を下げる。

その夜、高田と一緒にラーメン屋でラーメンを食っていた探偵は、左手一本で箸を使っているため、食べ方が遅い高田を残し、先に店を出る。

その直後、探偵は何者かに襲撃され気絶する。

遅れてラーメン屋を出て来た高田は、探偵の姿が見えないので戸惑う。

探偵は、映写機の映像が映るスポーツバーのイスに縛られていた。

マスターは、今やっていることから手を引いてくれと頼むが、探偵がとぼけると、店員の方がプロレスのマスクをかぶって近づいて来て、探偵をぼこぼこになぐり始める。

探偵は、あんな連中の仲間だったとは…と呆れるが、マスターは、一人の女に泣きつかれたので仕方ないと言う。

沙織か?あいつがどんな女か知っているのか?と探偵は教えるが、マスターも探偵をなぐり始め、ススキノを捨てるのだと耳元で囁く。

その頃、高田は、近所の連中に、探偵の行方を知らないかと聞いていたが、そこに、スポーツバーにいることを知らせに来た仲間がいた。

スポーツバーにやって来た高田は、半死半生の状態だった探偵を見つけ、おぶって帰ることにする。

探偵は、ススキノのネオンを、もう死ぬ直前の映画を観ているのだと思っていた。

探偵は生きていた。

ススキノの仲間たちが、交代で看病しに来てくれた。

何とか、顔の腫れも引き、出歩けるようになった探偵は、高田と二人で動物園のライオンの前に来ていた。

高田は、今回は手を引け。一人きりの友達をなくしたくないからと言ってくれる。

しかし、一人「コンチェルト」に乗り込んだ探偵は、一人で帳簿の整理をしていた沙織に銃を突きつけると、殴らせ過ぎて、自分が何をするか分からなくなったと言いながら追いつめると、どんな気持ちだ?主人と一人娘を殺して、財産を独り占めするって?と聞く。

沙織は、昔、近所の公園に悪い子がいて、他の子供の玩具を壊したり悪いことばかりしていたが、注意をされると証拠があるかって開き直っていた。でも、その子は成功するわ。特にこんな酷い国では…とつぶやく。

探偵は、俺の依頼人に指一本でも触れてみろ。お前ら全員ぶっ殺してやる!田口のオヤジや、何の罪もない女房まで殺してしまった。霧島としおは立派な人だったんだな。一緒に飲んだら、さぞ楽しい奴だったと思う。このままじゃ、あまりにも可哀想だろう?と言いながら、探偵は拳銃の引き金を引くが、弾は出なかった。

最初から弾は入っていなかったのだ。

いつしか、沙織は泣いていた。

その後、コンドウキョウコから口座に50万振り込まれた夜、最期の電話がかかって来た。

後二日寝ると、沙織と岩淵の結婚だな…。ダスティン・ホフマンにでもなってみようかなと探偵が語りかけると、「コンチェルト」の沙織に電話をして、小樽の美濃部が会いたがっている。小樽港の「ハーバーライト」と言う店に来るよう伝え、明日と明後日、見張っていて欲しいと、コンドウキョウコは言う。

沙織は誰かを連れて来るはずだから、それをカメラで撮ってくれと言う依頼だった。

俺は沙織に面が割れていると言うと、気づかれないようにするのが探偵でしょう?と相手は言う。

探偵は、携帯を買ったので、何かあったら連絡をくれと伝える。

翌日、探偵は小樽港の「ハーバーライト」に向かうと、終日、沙織を待っていた。

しかし、その日は誰もやって来なかった。

近くの小料理屋で酒を飲みながら、明日が勝負かな?と探偵はつぶやいていた。

翌日、再び探偵は「ハーバーライト」に行き、沙織の到着を待ち受けるが、一瞬、やって来たかと思った二人連れのカップルは、良く見ると別人だった。

すでに時間は午後2時を過ぎていた。

沙織の披露宴は4時から始まるはずで、こんな時間まで来ないことはあり得なかった。

3時過ぎ、沙織はすでに結婚式を始めていた。

探偵は何かに気づき、携帯をかける。

相手は沙織だった。

お前がコンドウキョウコなんだろう?探偵はそう話しかけていた。

すでに花嫁衣装に着替えていた沙織は、ベンチの下を観て。観れば分かると答える。

探偵は、お前は人に指図ばっかりで!と苛つくが、沙織は本当にありがとうと感謝する。

探偵は、電話を切りそうな相手に、待て!止めてくれよ。探偵は依頼人を守らなければいけないんだ!と頼むが、沙織はさようならとだけ答えて電話を切ってしまう。

探偵は、ベンチの裏側に貼ってあった手紙を見つける。

それは、沙織が書いたものだった。

探偵は急いで駅へと走り、札幌行きの電車に飛び乗る。

電車のデッキで手紙を読み始める探偵。

私は桐島を愛していました…と沙織は書いていた。

京子さんが亡くなりました。桐島は、事件後、徹底的に調べ上げ、岩淵恭輔にたどり着いたのです。

岩淵恭輔は、かつて、桐島を裏切った男でした。

桐島は、岩淵恭輔を断罪するつもりだったのです。

桐島が殺されたとき、私も死んだのです。

私は復讐をすることにしました。

敵の懐に入ると動けなくなり、あなたに依頼したのです。

私は3年前のクリスマスにあなたに会っています。外で待っていたしつこい客から私を助けてくれました。

結婚式が始まる。

(回想)加藤を射殺したのも沙織だった。

諦める気がないあなたを小樽に追いやったのです。

今の私は清々しい気持ちです。

追伸:あなたが霧島が好きだと言ってくれたとき、本当に嬉しかった。

「スピードを上げてくれ~!」探偵はデッキの窓ガラスを叩きながら叫んでいた。

花嫁衣装を着た沙織は、岩淵貢と共に、招待客の間を笑顔で回っていた。

弁護士の南の前に来た沙織は、持っていた花かごに手を入れると、中に隠していた拳銃を取り出し、笑顔で拍手していた加藤を射殺する。

さらに沙織は、驚く岩淵貢を撃ち殺すと、唖然として席を立ち上がりかけた岩淵恭輔に銃弾を浴びせ、最期は自分の側頭部に銃を押し当て、引き金を引く。

パトカーのサイレンが響く会場前にようやく到着した探偵は、野次馬をかき分け前方に進み出る。

そこには、高田もいた。

探偵には、沙織を乗せたストレッチャーがどれかすぐに分かった。

3年前のクリスマス、しつこい客に絡まれていた沙織が落としたオメガの紙袋を拾うのを観ながら、探偵は気取ったセリフを吐きながら、「ケラーオオハタ」の名刺を彼女に渡した時のことを思い出していた。

「ケラーオオハタ」に一人戻って来た探偵は、マスターが小箱を目の前に置いたので怪訝な表情になる。

ふたを開けてみると、中に入っていたのはオメガの高級時計だった。

手紙が同封されており、あなたに使ってもらえたら、霧島もきっと喜ぶでしょうと書かれてあった。

探偵は無言で、ウィスキーを飲み干した後、オセロのチップを一枚掴み、じっと見つめるのだった。

エンドロール

クラーク博士像の前で待機していた車の中、探偵は出発を命じるが、高田がエンジンをかけた瞬間、ボンネットが跳ね上がり、エンジンが爆発する。

次までに買え変えないか?と探偵は呆れ、高田は考えとく…と答える。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東直己原作のハードボイルドの映画化。

原作を読んでいるので、大泉洋が主人公の探偵を演じると聞いてイメージが違うと思っていたが、実際に観てみると、これは大泉洋の映画になっており、彼は完全にはまり役のように思える。

例えば、イアン・フレミングの「007」が最初に映画化されるとき、主演のジェームズ・ボンドに抜擢されたショーン・コネリーは、原作者を含め、大方のファンのイメージとは違っていたと思うが、いざ映画を観てしまうと、完全にショーン・コネリー=ジェームズ・ボンドになってしまったのと同じかも知れない。

この作品を観ると、大泉洋が、軽妙洒脱な軽さとシリアスさを同時に表現できる、最近では珍しい逸材であることが分かる。

内容も、昨今の主流である、女性向けの甘口映画になっているのではないかと言う危惧も若干あったが、なかなかどうして、久々に大人の男が楽しめる完成度の高い秀作になっていたので驚かされた。

一画面一画面に隙がなく、全体的に丁寧に撮られているのが分かる。

登場人物も、高田役の松田龍平、加藤役の高嶋政伸、相田役の松重豊など、どのキャラクターも魅力的に描かれており、話の展開の面白さもあり、最後まで飽きさせることがない。

地方映画と言ったマイナーさも感じさせないし、むしろ、ローカル色が魅力的に描かれている。

東映が中心となった製作委員会方式らしいが、東映の長年のミステリやクライムものの伝統が生きているような気もする。

近年出色の娯楽作の一本だと思う。

余談だが、劇中登場する「マキ」と言う歌手が、あの「カルメン・マキ」とエンドロールで知って驚いた。

道理で歌が巧いはずだ。