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戦争と人間 完結篇

大河映画の第3部に当たる。

この回では、戦争の残酷さ、軍隊の理不尽さが描かれているが、そのエピソードの多くは、同じ原作者で小林正樹監督が描いた大作「人間の條件」(1959)の内容とだぶっている。

出来の悪い初年兵小島正一が行軍で遅れをとったり、週番や古参兵達から徹底的にいじめ抜かれ、それに主人公が理屈で対抗しようとする部分などは、ほとんど一緒と言って良い。

田中邦衛と仲代達矢コンビが、小島と耕平に代わっただけ。

メガネをかけた弱々しいキャラクターと言う見た目も、田中邦衛と小島は瓜二つである。

原作者が、同じアイデアを使ったと言うことだろう。

クライマックスの戦車戦のシーンは、一部、「樺太1945年夏 氷雪の門」(1974)のソ連戦車進行のシーンと同じように見える。

両方とも、自衛隊の戦車が使われたようだ。

とは言え、戦車戦を描いた作品自体が少ないので、このクライマックスシーンは貴重である。

本作で新たに登場する人物は、苫と言う貧しい生まれながら積極的に我が道を行く明るく情熱的な女性で、第二部で登場した狩野温子とは対称的な性格。

こちらも、もう少し掘り下げれば感情移入出来たのかもしれないが、何しろ登場シーンが少なし、俊介との接触も表面的なものだけなので、その個性的なキャタクターが印象に残るだけである。

政略結婚を選んだ伍代由紀子は、むなしい人生を予感させる終わり方になっている。

全編を観終わって感じたことは、この手の大河ドラマと言うのは、「幕の内弁当」のようなものではないかと言うこと。

一品一品は特別おいしい訳でもまずい訳でもないが、あれこれ盛りだくさん並んでいるので、一見豪華に感じさせ、大衆に一時の贅沢感を与えてくれるもの…と言う感じがする。

この作品も、一つ一つのエピソードを思い返してみると、そんなに感動的とか、格段に面白かった訳でもなかったような気がするが、全部を一挙に思い出してみると、さすがに圧倒されるものがある。

この作品を一言で言ってしまうと、共産主義者側の視点から描いた戦争の話である。

彼らは戦前から労働者や貧しい民衆の為に戦い、侵略戦争に反対し、特高の拷問に耐えながら民衆の為に戦った正義と真実の人…みたいな描き方である。

「人間の條件」にしても、この「戦争と人間」にしても、主人公が「アカ」呼ばわりされている人物、ないしは、その理解者と設定してあることから、必然的に読者や観客はその主人公の考えに共鳴するよう描かれている。

敗戦後、戦争に反省の気持ちと疑問を持っていた当時の庶民が、こうした反戦思想に熱狂するのは当然だったと思う。

今観ても、戦後の教育を受けた大半の人たちは、この映画に大きな抵抗感はないと思うが、中には、中国への侵略描写の部分などに不快感や疑問を感じる人もいるかもしれない。

これほどの大作の製作費を、当時一体どこが出したのだろうか?と言うのも気になる所である。

その歴史解釈が客観的に観て正しいのかどうかはさておき、太平洋戦争に比べ、あまり描かれることがない日中戦争の発端から対ソ戦辺りまでが描かれている本作は、当時を想像する一つのきっかけにはなるのではないだろうか。

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1973年、日活、五味川純平原作、山田信夫+武田敦脚本、山本薩夫監督作品。

昭和3年

関東軍は満蒙を中国から奪うと、虎視眈々と狙っていた。

第一部、第二部のあらすじが紹介される。

オゼロフ監督とモスフィルムに感謝すると言う謝辞

日活の会社クレジット

日中全面戦争が開始された。

8月13日 上海に戦火上がる。

上海占領

松川兵団長の部隊、南京進行

南京占領

大量大虐殺の犠牲者は30万人を超えると言われる。

タイトル

東京の伍代家では、長女の由紀子(浅丘ルリ子)がウェディングドレスを着ていた。

長男英介(高橋悦史)は、南京占領したら中国は降参するでしょうねと浮かれていたが、叔父の喬介(芦田伸介)が、その甘い見通しに反論しながら、兄の由介(滝沢修)に、ここらで一つむちを当ててみたらどうかね?と勧めていた。

次男俊介(北大路欣也)も帰国しており、由紀子と次女順子(吉永小百合)のいる部屋にやって来る。

由紀子は、俊介と順子に、二人とも私のことを怒っているみたいねと言う。

由紀子は、愛する柘植を捨て、伍代家が銀行資本と結びつくための政略結婚を選んだからだった。

終わったんだわ。夢中になれるものを探し求めていた時代は…と、由紀子は自らに言い聞かせるようにつぶやく。

東亜銀行頭取雨宮公一郎(加藤嘉)一家と結びついたことで、伍代家はトップレベルになったと、結婚披露宴の客達は噂し合う。

標耕平(山本圭)は工場で又働いていたが、危険分子として、その素行調査は工場内部でも厳しく実行されていた。

そんな耕平の元に、仙台市役所から封書が届いていた。

順子(よりこ)と俊介は、一緒に旅に出ると屋敷を後にしていたが、やって来たのは耕平の下宿で、耕平が取り寄せていた結婚届に、俊介が父由介の名前を書いてやる。

そして、俊介は、順子と耕平に、用意してきた金と列車の切符を手渡し、耕平に死ぬなよと伝える。

耕平は後1週間後に兵隊になる。

その前に2人を結婚させ、1週間仙台に用意した宿で水入らずで悔いのない日々を過ごさせようとする俊介からの計らいだった。

3人だけの結婚式、俊介は「妻を娶らば~♩」と歌い出す。

外で子供達が遊んでいる、雪の積もる宿で、順子と耕平は過ごすことになる。

順子は、英介がアメリカに行く伍代家の送迎会で、はじめて耕平と出会った日のことを思い出していた。

俊介の方は、兄拓郎と最後に一緒に布団で寝た夜のことを夢に観ていた。

思わず、兄ちゃんと叫び目覚めた耕平に、一緒に目覚めた順子は、約束して!帰って来るってと迫り、耕平は大丈夫だよと答え、2人はしっかり抱き合うのだった。

俊介は、山道の途中でスケッチをしていたが、そこに馬車で通りかかった農民の娘が俊介を邪魔扱いして去って行く。

苫(夏純子)と言うその娘は、地元の工場で働いていたが、もうすぐ女郎に売られるんだろうなどと男達からからかわれても負けずに言い返す気の強い娘だった。

その苫は、工場長をやっていた灰山(江原真二郎)に呼ばれて部屋に行くと、そこに先ほどスケッチを描いていた俊介がいたので驚く。

俊介をこの地に呼んだのは灰山だったのだ。

灰山は、苫が日当55銭をもらいながら、その全てが家族の生活費になる苦しい状況であることを俊介に話し、伍代家で救ってやってくれないかと頼む。

その後、苫の家に向かい、父親(藤原釜足)を説得してみると、小作料を払わないと、来年の作作りも出来ないし、今町の方で苫に200円出すと言う所があると言う。女郎屋のことだった。

灰山は、まとまった金を前借りしたいと言うことだと気づき、俊介に頼む。

陸軍省軍務局員伊藤賢了中佐が、軍需製品のうち25%は陸軍関係工場で、その他を民間で作ると計画を発表する。

伍代家の女中として働くことになった苫だが、夕食の席で、喬介は兄由介に、バカとはさみは使い用と言うくらいだから、軍人さんも使い用だと話していた。

俊介は戦争に批判的な発言をしながらも、甲種合格だったが、戦争嫌さに叔父達の後ろに隠れた自らのふがいなさを反省していた。

そこに、順子がふらりと帰って来る。

順子は話があると、由介を二階に呼ぶと、耕平と結婚したことを打ち明ける。

俊介も同席し、届けは自分がやったと説明する。

順子が、自分は姉さんのような生き方、出来ないと言うと、標(しめぎ)は、この社会を破壊する側に立っているのだから、それを許すことは出来ない。今夜ここに泊まって、明日出て行きなさい。標順子として生きていきなさいと由介は告げる。

それを聞いていたお滝(水戸光子)は止めようとするが、順子は素直にその指示に従うと言う。

その後、雨宮公一郎がやって来て、全ての資本、労働力、経済が国家の統制下になる国家総動員法の要項を由介や喬介に見せる。

対ソ、対英米を想定したもので、政府も腹を固めたな…と由介はつぶやき、すぐさま秘書の武居弘通(波多野憲)にスケジュールを全部キャンセルさせると、これから会いたい数名の人物に連絡をつけるよう命じる。

翌朝、俊介と荷物を持った苫が、順子を途中まで送って行き、俊介は順子に頑張れよと声をかける。

自室に戻って来た俊介は、満州へ戻る準備を苫にさせていたが、いつ帰って来るんですか?おら、付いて行っちゃ行けないですか?と突然、苫が言い出す。

俊介は断り、幾ばくかの金を渡そうとするが、苫は俊介に抱きつく。

すぐに振り払われるが、苫は女子の気持ち分からないとふくれる。

昭和13年1月15日

秘書の武居からの電話を受けた英介は、肝心の由介が不在だったのでいら立つ。

近衛文麿首相が和平案に反対したと言う知らせだった。

その頃、由介は軍人と会っており、民間に軍需を作らせるには政府の保護が必要だと説得していた。

1月16日

近衛文麿首相によって日中和平はついえ去り、国家総動員法が提出された。

伍代由介は新工場を起業すると伍代産業本社で発表する。

東北地方

30km強行軍演習

初年兵小島正一()は行軍について行けず脱落しかけていた。

同行していた兵長が、誰か小島の荷物を持ってやる奴はいないか?と聞くが、全員へばっているので誰も名乗りを上げない。

兵長は、俺に持たせる気か?とわざとらしく声を張り上げたので、仕方なく、同じ大学生同士と言うこともあり耕平が持ってやることにする。

小島は感謝しながらも、軍隊でやっていることは、何から何まで無意味だ…とつぶやく。

その後、小島は倒れ、兵長から足蹴にされる。

夜、兵舎の寝床で小島は忍び泣いていたが、そこに柿沼週番上等兵が観回りに来て、初年兵を全員起こすと、その場に整列させ、一人一人にビンタして行く。

ストーブの中にタバコの吸い殻が入っていたと指摘した柿沼週番上等兵は、室内当番に出るよう命じる。

小島二等兵が前に出ると、いきなり殴りつけられる。

それを観た耕平は、小島はちゃんとストーブの掃除をしていたと証言する。

すると、ベッドの上で聞いていた古参兵達が、俺たちの責任にする気か?と声をかける。

小島の怠慢ではなかったと言っていると耕平は弁解するが、古参兵は、小島と耕平に対抗ビンタ50回をするよう命じる。

他の古参兵達も、二人をはやし立て、二人がまともに殴り合わないことに業を煮やした9年兵唐川が小島を殴りつける。

俊介は、兵隊間の争いは禁じられている。例え上等兵であろうと私的制裁は許されていないと法律を盾にし唐川の行為に抗議し、小島はひたすら上等兵に謝罪するが、唐川は今度は執拗に耕平を殴り続ける。

やがて、隣室から班長が出てきて、もういい加減寝かせてくれと唐川上等兵を諌め、顔が腫れ上がった耕平には顔を洗って寝ろと命じる。

面会日

順子は、持ってきた弁当を、耕平がほとんど噛まずに飲み込んでいるのを観て驚く。

耕平は、何でも人より早くするんだと言う。

傷だらけの顔を見て、殴られたのねと悲しむ順子に、君の方が辛いだろう。近々、戦地に出発するかもしれないと耕平は告げる。

もう会えないのねの沈む順子に、僕は必ず帰って来ると約束する耕平だった。

4月 新京

伍代産業満州支社

俊介は、戦争に勝ち進んでいると信じている同僚達の雑談に、データを示しながら、勝ってますか?と反論していた。

それを聞いた同僚が、まさか負けていると言うんじゃないでしょうね?と聞くと、蒋介石は後退作戦を取っており、英米が出て来るのを待っていると俊介は持論を披露する。

そんな俊介は、社長室に呼ばれ、そこに来ていた見知らぬ男(下川辰平)から、俊介が書いた「支那人労務者の賃金を上げた方が良い」と言う趣旨の論文に眼を通してもらったが、活字にしたらどうか?「興亜経済」の同人だろう?と勧める。

返してもらった自分の文章には、徹底的にチェックがしてあった。男は特高の人間のようだった。

後刻、それを俊介から聞いた「興亜経済」編集長田島(鈴木瑞穂)は、脅しも含めた警告だよと言う。

自分も、関東軍から、支那戦略の分析を頼まれているんだが、引き受けようと思う。支那の力を軍部に示そうと思ってねと田島は続ける。

それを聞いた俊介は、数字は無力ですからね…と嘆息する。

参謀に報告する時、自分と一緒に来ないかと田島は俊介を誘う。

その後、下宿に戻った俊介は、そこに苫がいるので驚く。

聞けば、東京の伍代家を辞めてきた。故郷から又まとまった金が欲しいと言われたと言う。

俊介は、君の宿を探そうと答えるが、今夜はここに置いてくれと苫は言い、自ら電気を消す。

そして俊介に抱きついてきた苫は、最初に会ったときから好きだった。そんなに私が嫌いですか?と迫って来るが、俊介は、いけない!と戸惑うだけだった。

翌朝、俊介が目覚めると、もう苫の姿は消えていた。

その頃、屋台で揚げパンを買い、それを食べながら朝の街を一人歩いて行く苫の姿があった。

関東軍令部

参謀 辻政信少佐(山本麟一)の元に伍代喬介がやって来て、あなた達の考えを聞きに来た。火遊び程度でソ連と戦うのは辞めておいた方が良い。叩くなら今なんだよと言う。

辻少佐は、自分は死刑になりたくないと苦笑する。

その時、階上で歩く足跡が聞こえて来る。

今にあの人が、軍中央に来る。そうすれば、あなたの思う通りになるかも…と辻少佐は喬介に教える。

階上にいたのは、東条英機中将であった。

その関東軍参謀たちを前に、支那軍の分析を「興亜経済」編集長田島が説明していた。

俊介も田島の隣に座っていた。

毛沢東が山西省で八路軍が勝利したと言ったと記者バートラムが報告していると述べると、不愉快そうに聞いてた参謀の一人が、外国の史料を信じると謀略に陥ると反論する。

すると、それまで黙っていた俊介が、数字に外国産、国産の別があるんですか?と突然発言し、アメリカと日本との生産量比較の数字をあげる。

部屋の隅で話を聞いていた辻少佐は、勝負はそれまで!と話を打ち切り、数字も事実かもしれんが、日清日露で勝利した皇軍の伝統も歴史的事実なんだよと俊介に告げる。

関東軍相手に、敗戦論をぶったのはあんたがはじめてだよと、辻中佐は修介に呆れたようだった。

その帰り、小料理屋で一緒に酒を飲むことにした俊介は、出過ぎた真似をしたことを田島に詫びるが、田島の方は、自分が言いたかったことを言ってくれた。

自分は2年前に特高の拷問に屈したときから、僕は僕でなくなった。頑張り続けるべきだったと、後退してしまった今の自分を反省する。

そんな小料理屋に、特高の刑事がこっそり客を装い入ってきて、俊介らの会話を盗み聞いていた。

客達が軍歌など歌い始めたので、俊介は小島を促し店を競る。

昭和13年4月

中国 徐州作戦が結構されたが、目指す中国軍はいなかった。

5月19日 徐州占領

華北山西省駐屯部隊

共産ゲリラの捕虜を杭に縛り付け、それを標的にして、初年兵たちに銃剣訓練をしていた。

真っ先に指名を受けた耕平は、捕虜の直前まで駈けて行くが、銃剣を捕虜に突き刺すことは出来なかった。

羽田上等兵は、そんな俊介をその場で腰抜けとして殴られる。

他の捕虜達は、本当に銃剣で突かれて死んで行く。

その様を目の当たりにした耕平は、やがて気絶してしまう。

気がつくと、兵舎の自分のベッドに寝かされていたが、初年兵仲間達は、羽田上等兵は、出が出だから無茶をすると噂し合っていた。

その直後、その羽田上等兵はまだ病み上がりの耕平を鉄道見張りに連れて行く。

初年兵仲間は、又、羽田のいじめが始まったと気の毒がるが、耕平は、あのまま兵舎にいれば、古参兵達から何をされるか分からないので、羽田上等兵が気を聞かして外に連れ出してくれたことを知っていたので感謝する。

羽田上等兵から、俺の噂を聞いているかと聞かれた耕平は、上等兵殿は何を気にしておられるのですか?自分は赤の弟と言われましたと答える。

羽田は、俺は監獄の匂いがすると言った一等兵がいた。俺が伍長勤務上等兵だからだと打ち明ける。

その時、二人は、鉄道脇にばらまかれている「中日党争同盟」なる檄文を書いたビラを拾い上げる。

羽田は、この辺には共産ゲリラがうようよいるなと警戒するのだった。

7月13日 張頭峰事件

俊介は田島と共に特高に捕まり、牢に入れられていた。

以前、論文を読んだと言い、伍代産業で会った男が牢の前に来て、自局認識が欠けているからこういうことになると説明する。

最初に牢から出されて取調室に向かったのは田島だったが、田島は俊介に眼で頑張ると合図する。

その頃、伍代公司行き列車には、大勢の中国人労務者が詰め込まれていた。

駅に着き、そこから降りた労務者の中には逃げ出すものもいたが、銃殺されたり、電流が通った鉄条網で感電死したりする。

田島は拷問されたらしく、血まみれになって戻って来る。

牢に入れられた田島は、畜生!と悔しがる。

伍代公司は閻魔殿、消された者は数知れず…そんな噂が立つほど、中国人労務者達は徹底的に働かされ、死んだ者の遺体は穴の中に捨てられていた。

俊介は突然、釈放を言い渡される。

伍代一族の人間だったからだ。

俊介は呆然として、後に残された田島を観るが、田島は何も言うな。今度は頑張れそうだと言いながら見送る。

………………………………… 休憩 …………………………………

11月28日 軍人会館

東条英機は、民間企業の代表者達を前に、対ソ対策の話をしていた。

その席には、伍代由介、英介親子の姿もあった。

屋敷に戻った二人は、雨宮公一郎も交え、今後の対策を打ち合わせしていた。

英介は、南方に行けば物資はいくらでも手に入ると父親に話していた。

日独が手を組んでソ連を叩くのだと言う。

話を聞いていた雨宮は、俊介くんのデータですか?と興味を持ったようだが、英介は、伍代の為にはならないと吐き捨てる。

そして、父由介に対し、少し疲れているようだが、あなたの思想は日本人として失格だ。欧米的です。一日も早く引退して、僕に任せませんか?と迫る。

その頃、いつものように鉄道見回りをしていた耕平は、草むらに隠れていた共産ゲリラを発見、その場で戦いになり、思わず銃剣で突き殺してしまう。

負傷した大杉上等兵は、もう一人の遠藤を探させるが、遠藤は死んでいた。

耕平は、大杉上等兵を背負って部隊に帰ろうとするが、背中の上等兵は、何の為に戦争をやってんのかな?一体、国って何なんだ?と言い、俺が死んだら、通帳を田舎に送ってやってくれと耕平に頼んだ直後息絶える。

その頃、順子の方は、他の組合仲間達共に、育児所兼病院で働いていた。

ある日、そこに姉の由紀子が訪ねて来る。

その時、学生の一人が刑事に連行されて行く所だったのが、順子は、私はもう伍代の人間ではありませんと姉に言う。

由紀子は自らの結婚に対する判断を反省するように、幸せは目の前にある時に捕まえないといけない。帰って来てくれるわね、お滝さんが待ってるわと説得しようとするが、順子は遊んでと自分に甘えてきた一人の子供を指し、あの子のお父さんは工場で働いている時、機会に挟まれて死んだそうだけど、その会社は、自己の責任は本人にあると言い、何も金を出さなかったそうだ。その会社と言うのは伍代産業なの。私、ここで働きます。私、毎日耕平のことをばかり考えてるんですと伝える。

その頃、戦地に出された耕平の部隊は、満州の農村を襲撃、家に火を放ち、逃げ出す娘は裸にし、上等兵は小島と耕平に老人を撃てと命じる。

その老人は孫らしき少女をかばっている。

小島はやむを得ず、その老人を撃ち、倒れた老人にすがって孫娘が泣き出す。

今度は、その孫娘を撃てと命じられた耕平だったが、撃てないと拒絶したため、上等兵から銃尻で殴りつけられる。

その時、班長が撃たれる。

八路軍がやって来たのだった。

小島は倒れて動かなくなった耕平を何とか連れて逃げようとするが、死んだ奴なんか放っておけと上等兵から言われ、やむなくその場に捨て去って行くしかなかった。

日本では、雨の中、子供を送って帰って来た順子は、仲間達の様子がおかしいことに気づく。

どうしたの?と聞く順子に、医者の青年が一通の封書を手渡す。

耕平の戦死報だった。

仲間達には心配しないでと気丈に答え、二階の自室に上がった順子だったが、机の上に立てていた耕平の写真立てを観て泣き出すのだった。

昭和14年4月

ハイラル 23師団駐屯地

俊介は、そこで銃の訓練を受けていた。

その手並みを監視していた上官は、伍代は見込みがある。明日から狙撃手訓練だと部下に伝える。

そんな修介に、中隊長が呼んでいると知らされたので、部屋に行ってみると、柘植少佐(高橋英樹)が待ち受けていた。

ソ満国境に配属になったので、こっちに来てみたと言う。

東條が支那と対ソの二面作戦を言ったと言うのは本当ですか?と俊介が聞くと、絵に描いた餅のような者だと柘植は答える。

勢いのある奴が中心になる。近々時間が案を出すようだと言うのを聞いた俊介は、北支で耕平が死んだと教える。

柘植は、東京で議論していた頃が懐かしいな…と、3人が伍代家で出会った頃のことを思い出すのだった。

その頃、東京の伍代家では、ピアノを弾きながら由紀子が父由介に、自分は伍代家に戻って来て良いかと聞いていた。

昔、お父さんから聞かれました。お前は男に何を求めているのか?と。今、順ちゃんを観ているとうらやましい。自分の何かを賭けるなんかが欲しいだけ。あまりにも無意味なんですわ、今の生活…とつぶやく。

そこに秘書の武居が、満州の喬介からの手紙を持って来る。

それを読んだ由介は、近々、ソ満国境で何かありそうだと雨宮さんに伝えてくれ。帰りなさいと由紀子に言い渡すが、由紀子は又ピアノを弾き始めるのだった。

順子の部屋には憲兵二人がやって来て、耕平から来た手紙を探しまわる。検閲した手紙しかなかったので、手紙以外に連絡してきた者はないかと憲兵は順子に聞く。

順子は不思議がり、耕平さん、そうかしたんですか?と聞き返す。

とっくに死んでしまった人間を今頃調べている意味が分からなかったのだ。

その時、順子が隠し持っていた無検閲の手紙が一通発見される。

これをこの場で読んでみろ!と迫られた順子だったが、順子はその手紙を暗記していた。

罪のない支那人を前に銃を向けなければならなくなった今、後悔しています。侵略軍に身を置いてしまった…と順子が暗唱すると、憲兵は止めんか!と制止する。

しかし、順子は止めなかった。

この愚かしい戦争を終わらせたい。

憲兵は順子に、この手紙を投函したのは誰だ?と聞く。

それを聞いた順子は、耕平さん、生きているんですね?それで耕平さんを捜しているんですね?と問いかける。

憲兵は、敵に投降した。お前の亭主は国賊になったんだと怒鳴りつけ、耕平の写真を持って行く。

一人になった順子は、物干し台に出て空を見上げながら、嬉しそうに「耕平さ〜〜ん!」」と呼びかけるのだった。

ノモンハン 昭和14年5月15日

満ソモンゴル守備隊攻撃

関東軍司令部では、幕僚会議が行われていた。

辻中佐は伍代喬介に、自分達の軍需兵力を打ち明けていた。

それを聞いた喬介 は、第七精鋭部隊置いた方が良くないか?物資のトラック輸送が必要だと説いていた。

首脳会議は紛糾していたが、陸軍大臣板垣は、ソ連が何かやったら潰すのが良い。関東軍の隙にさせたら良いじゃないかと発言する。

兵舎にいた俊介は、街で女を抱いた話をしている仲間の一人が、相手は東京の大金持ちの家にいたそうだと話すのを聞いているうちに、それは苫のことではないかと思いつく。

しかし、その直後、俊介は明日の狙撃手を言い渡される。

戦車相手に狙撃が役に立つかどうか疑問だったが、翌朝、俊介の部隊は出発する。

その行進を見送る女郎の中に、苫の姿もあった。

7月1日 安岡中将 敵陣急襲

7月2日 師団主力は、ハルビン 3日 ハラ高地を占領

小松原道太郎中将

18戦車ではソ連戦車を貫徹できないことが分かり、俊介は火炎瓶を敵船者のエンジン部に投げつけ爆発させる。

しかし、ソ連軍はそれ以上責めて来なかった。

ソ連軍は国境紛争であって全面戦争をする気はなかったからだった。

ハイラル陸軍病院

苫はそこで「大日本国防婦人会」の一員として働いていた。

星野二郎と言う重傷患者の名札で部隊名を確認した苫は、伍代俊介と言う人がいなかったかと尋ねる。

重傷者は、口も満足に聞けないくらいだったが、それでも必死に何かを伝えようとしてくれ、伍代さん、僕を助けてくれた…と何とか言い切る。

それを聞いた苫は喜色を浮かべ、生きてるのね!と叫ぶのだった。

辻少佐は、この戦いは引き分けだと、負けたのでは?と問う柘植少尉に答えていた。

野戦砲兵第3旅団、独立野戦重砲兵第7連隊、第6軍がノモンハンに向かう。

司令官は 荻洲立兵中将

その列車には、灰山も乗っており、スケッチを描いていた。

塹壕作りをしていた俊介達は、8月決戦に供えていたが、満足に食料もなく、昼間は灼熱の太陽に焼かれ、夜は蚊やハエやアブに悩まされ死を待っていた。

司令部ではソ連放送を傍受していたが、相手側は数日間擬音を流し続けた。

電話を使った疑似通信も行われた。

辻中佐は、ノモンハン一帯の寒さが厳しいので、ソ連側は撤退を始めたようだと聞き、停戦への淡い期待を持った。

その後、第7師団から連絡が届く。

虫除けの網を頭からすっぽりかぶって監視していた俊介の元に、柘植少佐が陣中見舞いに訪れ、苦労しているな。出来れば又、東京の伍代邸で会いたいものだな。死ぬなよと声をかけて去って行く。

その頃、ソ連はドイツと独ソ不可侵条約を結んでいたが、日本は全く察知していなかった。

8月28日5時40分

ソ連軍の攻撃が始まる。

俊介は、遠くから近づいて来る戦車部隊に、穴の中から銃撃していたが、全く歯が立つはずもなかった。

隣の穴に入っていた日本兵は、恐怖のあまり既に正気を失っていた。

穴から這い出ると、敵が銃撃して来る中、俊介の穴の方に近づき、撃たれたその日本兵は、俊介の身体の上に落ちて来る。

穴の所に来たソ連兵達は、上から覗き込み、死んだ日本兵の下敷きになっていた俊介を見逃して進行を続ける。

その頃、前線本部に戻って来ていた柘植少尉は辻少佐に、死守するんだ!と命じていた。

8月26日 森田大佐自決

染谷大佐自殺

伊勢大佐自決

柘植少尉は自ら突撃し、その途中に撃たれて息絶える。

その頃、東京の伍代邸では、由紀子が相変わらずピアノを弾いていた。

指揮官達は、この作戦の失敗の責任を取り、次々に自決して行く。

俊介は、自分の部隊で生き残っていた沢田と巡り会うと、自分達は取り残されたらしいと話し合う。

お前の眼、怖くなったなと言う沢田に、俺は戦争と戦ったんだと俊介は言う。

二人は水を探しながら、俺たちは負けるんかな?と言う沢田に、俊介は、負けたじゃないかと言いながら、マキセ機関銃を見つけると、その銃身に詰めてあった水を飲む。

これからどうなる?と聞く沢田に、天皇に聞けよと不機嫌そうに答える俊介。

その後、沢田は死亡する。

一人歩き続け、川を見つけた俊介はその中に飛び込むと、思い切り水を飲む。

俊介はその後も、戦地をさまよい歩き、まだ息がある日本兵を見つける。

それは片腕を失った灰山だった。

そんな灰山を背負い後退していると、サイドカーに乗った上官が近づいてきたので、自分の部隊は全滅しましたと俊介が報告すると、貴様、生きているではないか、雑兵どもが!元の部隊に戻って最後まで戦えと言うので、俊介は、御聞きしますが、自分の中隊、大隊、連隊はどこにいますか?全滅した所属部隊はどこにいるのか教えていただけますかと、反論する。

中佐はしらけたらしく又サイドカーに乗り込むが、その運転手は走る直前、持っていた水筒を俊介に投げ与え、片手で謝るような仕草をする。

俊介はその水筒の水を灰山に飲ませながら、灰山さん、死ぬなよ。俺だって死なない。こんな馬鹿な戦争で殺されてたまるか!と叫ぶのだった。

昭和14年9月16日

モスクワで停戦協定が締結される。

この戦いでの犠牲者1万8000余名

傷つき疲れながらも、歩いて戻って来る日本兵たち

街では、女性達が、帰って来た兵隊達に茶が入った湯のみを手渡していた。

街に戻って来た俊介に、湯のみを差し出したのは苫だった。

苫は俊介に、兵隊さん、あたしの所へ遊びにおいでよ。うんと可愛がってやるからさと伝える。

無数の犠牲者が荼毘に付される。

9月1日 ヒトラー ポーランド侵略

9月3日 第二次世界大戦始まる。

日中戦争の泥沼にあえぐ日本は、さらにその戦いを太平洋に広げて行く。


戦争と人間 第三部「完結篇」 【DVD】

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