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背広の忍者

産業スパイをテーマにした社会派ミステリ風の内容

田宮二郎や高松英郎が出ていると言うこともあって、前年に作られシリーズ化した「黒シリーズ」(1962~)の第一作「黒の試走車(くろのテストカー)」を連想させる。

社会派ミステリの特長は、探偵や警察関係者が事件を解くのではなく、全くの素人が殺人犯を追いつめて行くと言う所にあり、それは読者が感情移入しやすいと言う利点もある反面、素人が事件の捜査をすること自体に無理があり、不自然でもあるのだが、この作品では、リサーチ会社の社員が探偵役であることから、全くの素人が事件に首を突っ込む不自然さは若干緩和している。

猪突猛進型と言うか、熱血漢風の主人公は、今観ると、ちょっと感情移入しにくい単細胞キャラクターに思えなくもない。

その主人公の姿勢を、絶えず牽制しているヒロイン役の暁子のキャラクターも若干不鮮明で、あまりにも、日沼の事件追及を止めさせようとする言動が多いので、彼女も事件に関わっているのではないかと言う疑念が最後までつきまとった。

観客を惑わす意図的な演出だったのかも知れないが、ラストまで観た感じ、その意図が成功しているのかどうかは微妙な感じがする。

磯村産業調査研究所のメンバーたちも、男たちは全員生き生きと描かれているのに、おばちゃんこと古川起代子は、今ひとつ存在感が弱い。

全体的に、男中心発想の話なので、女性は活躍の場がないと言うことかも知れない。

とは言え、オリジナル脚本だとすると、良くまとまっている内容だと思う。

伊藤雄之助演ずる町田企画室長は、冷静な切れ者と言うイメージで印象的なのだが、日村たちが小型テレビの探りを入れてきた後、完全無視をするのが一番賢い選択だったように思えるのだが、結果的に暴力団などを介入して主人公たちの事務所に殴り込ませたりして、墓穴を掘ってしまっている愚かさが若干気になる。

脚本的には話を進行させる為にそうしたのだろうが、町田はあまり賢くはないなと印象を観客に植え付けてしまっている。

知恵者対知恵者の行き詰まる頭脳合戦と言う知的サスペンスではなく、大衆受けするやや通俗で安易な展開にしているのだ。

でもそれは、娯楽映画としては正しい選択なのかも知れない。

これは、純粋な謎解きミステリ作品を狙っている訳ではなく、あくまでも当時流行っていた社会派ミステリ風に仕上げた大衆向け娯楽映画なのである。

太陽リサーチセンターに乗り込んだ遠藤が最後に見つける謄写版とか、新婚夫婦の心理を利用して工場を探り当てるなど、随所に登場するアイデアも面白い。

前半の伏線(町田が、私だったら無線を使うと言うセリフ)を生かしたラストのひねりも利いており、下手な原作ものより面白いかも知れない。

個人的には、この時代の高松英郎は本当に格好良いと感じた。

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、大映東京、白坂依志夫+江戸川弦脚本、弓削太郎監督作品。

雨が降る中を走るトラックのフロントガラスを背景にタイトル

角を曲がった時、トラックの運転手は道の真ん中に立っている人影を発見、急ブレーキをかけるが、磯村尚平(南方伸夫)をはね飛ばしてしまう。

大阪出張から磯村産業調査研究所に帰って来た日沼隆司(田宮二郎)は、3人の所員たちが全員机に突っ伏して寝ているのを見つけ、徹夜仕事空けだと気づく。

目覚めた半田(竹村洋介)は、今頃扇風機の市場調査などやっても役に立つのだろうかとぼやく。

冬だと言うのに夏の製品の調査をするのが俺たちの仕事さと、これで3万じゃ合わんなと、同じく目覚めた遠藤宏治(高松英郎)が苦笑し、日沼に大阪の成果を聴く。

日沼は、10万円を取り出すと、これは手切れ金だ。大阪にも大きなリサーチ屋が出来たので俺たちは切られたと報告する。

いつまでも、中外電気の仕事を請け負っているだけではダメだなと、金を受け取りながら遠藤がぼやく。

磯村産業調査研究所の収入源は、磯村所長がコネを持つ中外電機しかなく、このところ、給料もきちんと払えていない状況が続いていたのだった。

その時、いまだに結婚できず、「おばちゃん」と呼ばれている古川起代子(響令子)が、半田の前の電話の受話器が外れていると教える。

寝ている間にずれてしまったらしい。

半田が受話器を戻した途端、電話が鳴り出したので、日沼が受け取ると、その電話は、磯村所長が交通事故で死亡したと言う警察から連絡だった。

日沼は驚いて、所員たちに事故があったのは中山道だと教え、古川にすぐ、磯村所長の娘さんに連絡するように頼む。

遠藤が古川に、CMの仕事をしている磯村の娘が今いそうなテレビ局を教える。

磯村産業調査研究所所長、磯村尚平の遺体を確認に行ったのは、日沼と娘の暁子(滝瑛子)だった。

日沼は、遺体の遺留品の中に、一枚の枯れた葉っぱが混じっていたので、不思議に思い手に取ると、担当官は、磯村のコートのポケットに入っていたものだと言う。

日沼は、この葉っぱを調べてみたいので、警察に証拠品として保管しておいてくれと依頼する。

トラックの運転手の話によると、被害者は急に車の前に飛び出してきたと言うが、大体運転手はそう言うものだし、スピードも10kmオーバーしていたと担当官が教えてくれる。

睡眠薬か何かを飲まされて突き飛ばされた可能性は?と日沼が聞くと、アルコール類すら発見できなかったが、身体はかなり衰弱していたと言う。

警察からの帰りのタクシーの中で、日沼は、久しぶりに所長が帰った故郷の熊谷の近くで、雨が降る夜に、あんな所で事故に会うと言うのはおかしい。

シリコンを作る工場の近くの葉っぱは、排気ガスで枯れると言われているので、ひょっとすると所長はテレビ工場の近くに行ったのではないか?でも、熊谷にそう言う工場はない…と暁子に説明するが、父を亡くしたばかりの暁子は、そう言う日沼の事件性追及の姿勢には乗り気ではないようだった。

サンエス電機の本社の中では、新製品に関する会議が執り行われていた。

8インチテレビを打ち切ることが決定すると、企画室長町田英俊(伊藤雄之助)が立ち上がり、世間の眼をごまかす為に、我が社では今、16インチ薄型テレビを開発中と言う噂を現在流していると報告する。

その時、会議室の電話が鳴り、町田が出ると、緊張した表情になり、電話を切ると、室内の観葉植物の鉢を調べ始める。

その内の一つに、テープレコーダーとマイクが仕込まれていたのを発見すると、中外電機の製品と見抜き、自分なら無線を使うと言いながら、逆にこれを利用しましょうと、驚く重役たちに提案する。

後刻、車の中でサンエス電機の金子(夏木章)からそのテープを受け取った中外電機の社員は、同僚の橋爪静夫(杉田波)と共に、16インチの薄型テレビを開発していると言うサンエスの会議の声を聞き、この分野なら中外の方が勝っているとほくそ笑み出す。

翌日、橋爪が、中外電機のTVCMの打ち合わせをする為に暁子の家を訪れると、暁子は、中外電機の宣伝テロップが流れている提供番組を自ら観ながらチェックしている所だった。

橋爪は、この番組は当分続けますと暁子に伝える。

磯村産業調査研究所では、社長亡き後会社をどうするかと言う相談を遠藤と日沼、古川たちがしていたが、日沼はこの際、フリーになろう。社長は生涯、中外の為だけに働いたが、中外にどれだけのことをやってもらえたか?俺は社長は殺されたとしか思えんと言い出す。

大企業が俺たちを利用して生きるなら、こちらも企業を利用するんだと言うのだ。

そこに半田がやって来て、日沼と遠藤を呼び出すと、馴染みの食堂「コダマ」に連れて行く。

そこに待っていたのは、半田の恋人で、サンエス電機の電話交換手をしている久米孝子(大西恭子)だった。

彼女が、専務の電話から断片的に得た情報では、サンエスは今、AH4型と言う革命的な製品を作っているらしいと言う。

日沼は、AH4型?と眼を光らせると、社長の娘と熊谷に付いて行き、社長が中外に、何を伝えようとしていたのか調べてみたいと言い出す。

電車で熊谷へ向かい、暁子と共に、磯村が泊まった兄夫婦の家「磯村卓三酒店」を訪れる。

卓三(宮島健一)に、何か所長に変わったことがなかったか?と日村が聞くと、妻の正枝(耕田久鯉子)が、そう言えば、帰る時、ちょっと様子がおかしかったと言う。

こちらでその間、何かなかったかと聞くと、「2台目のテレビはどんなものが良いか?」と言うテレビの調査が来たのでその分野に詳しそうな弟にアンケートを任せたが、内容は良く覚えてないので、向かいの本屋に聞けば分かるのではないかと卓三は言う。

本屋でアンケートの内容を聞くと、24インチ、21インチ、8インチなど、テレビの大きさが書いてあり、その中のどれが欲しいかと書いてあったので、自分は4インチと言う変わった答えに○を付けたと言う。

4インチと言えば、文庫本くらいの大きさしかないと本屋が言うので、ピンと来た日沼は、続いて、近くのタクシー会社で運転手にアンケートのことを聞く。

すると、車の中でテレビを観たいから、車に取り付けられるような小さなテレビが欲しいと思ったから4インチに○を付けたけど、考えて観たら運転中は観れないななどと言う。

日沼は、サンエスは超小型テレビを作ろうとしていると直感する。

墓参り帰りの暁子に合流した日沼は、少しずつ分かりかけきましたと報告するが、暁子は、父をこのまま、そっとしていただけないでしょうかと頼む。

それでも日沼は、罪の意識がなく、今でもぬくぬくと暮らしている奴がいます。そいつが許せないのですと答える。

空腹のまま東京の研究所に戻って来た日沼は、古川にコダマからラーメンを取ってくれと頼むが、借金がたまり過ぎていて頼めないと言われてしまう。

遠藤は苦笑し、日沼を連れてコダマに行くと、現金払いで一緒にラーメンを頼むが、ツケがたまっていることを知っている女店員は不機嫌そうだった。

遠藤は、トランジスタ4インチテレビか…と、日沼の報告を聞いて驚く。

日沼は、誰が所長を殺したのか?排気ガスのため、枯れた葉っぱがコートに入っていた。いっそのこと、サンエスにはったり噛ました方が早いのでは?と言う。

早速サンエス電機に乗り込んだ二人を出迎えたのは町田英俊だった。

日沼は、今お宅では16インチ薄型テレビを開発中と噂が流れていますが…と切り出すと、町田は、そうですかとポーカーフェイスで答える。

ただこれとは違う情報も流れていて、自動車にも取り付けられる超小型テレビだとも…と遠藤が探りを入れるが、町田は又しても、そうですか…と受け流す。

この情報を、中外電機の方に売っても良いんですが、こちらで買いませんか?と聞くと、町田はきっぱり「いいえ」と答え、夢を売って歩いても、中外さんも相手にせんでしょう。何か確証があるんですか?と言うので、簡単には答えられませんなと日沼がごまかすと、噓を見抜いたらしい町田は退室しようとする。

日沼は、話の続きがしたいなら電話くださいと言いながら、名刺を差し出そうとするが、名刺なら秘書に…と言い残して町田は去ってしまう。

それから4日経っても、サンエス側から何の連絡もなかった。

半田は、やっぱり仕事をもらっていた方が楽でしたねと、フリーになった判断を後悔しているようだった。

そんな事務所に、突然、見知らぬ男たちが5、6名は入り込んで来て、いきなり事務所内で暴れ始める。

古川が襲われそうになったので、日沼が助けようとすると殴られる。

相手は猟銃をちらつかせて、いつまでも甘い汁を吸おうなどと考えるほど、世の中、め○らじゃない!などと日沼たちを脅すので、遠藤は、分かった。仕事を辞めれば良いんだなと承知し、一本タバコを吸わせてくれと言いながら、ライター型のカメラで男たちの写真を隠し撮りする。

男たちが帰ると、日沼は、これがサンエスの答えだと言い、遠藤も、山勘が当たったようだなと苦笑すると、背後関係を調べるんだとライター型カメラを半田に渡すと、やっと俺も決心がついた。企業に腹が立ってきたと言う。

日沼も、これを突き止めれば、獲物はでかいぜと笑う。

数日後、半田が分かりましたと言いながら事務所に来る。

暴れた連中のリーダーは深谷()と言う城北組の奴で、太陽リサーチセンターの植原所長とつるんでいるらしいと言う。

日沼は半田に、この前みたいに友達に頼んで、車を用意できないかと頼む。

翌日から、遠藤、半田と共に、太陽リサーチセンターの窓が見える旅館に張り込んだ日沼は、望遠レンズの付いたカメラで植原健策所長(高村栄一)の動静を監視し始める。

植原が電話をかけたので、レンズをのぞきながら注目した日沼だったが、あれは蕎麦屋にかけそばを頼んだんだと言う。

すると間もなく、深谷がやって来て、植原が金を渡す所が見えたので、これで殴り込みの証拠を掴んだと日沼は喜び、植原が出かけたら誘拐しようと相談する。

その時、カメラの監視を代わっていた半田が、本当に蕎麦屋がきてかけそばを置いて行った。日沼さんの読唇術は凄いと感心する。

遠藤が監視役になった時、植原が出かける所に気づく。

外に出た植原に近づいた日沼と半田は、お迎えに来ました。会社からですと言いながら、植原を用意しておいた車に連れ込む。

その間、遠藤は、太陽リサーチセンターの部屋に乗り込むと、留守番をしていた若者に、植原さんはいるか?サンエスの安岡だと名乗る。

留守番は、所長は今出かけた所ですと詫び、サンエスの方ですかと丁寧に応対したので、遠藤はそのまま待たせてもらうと言って、社長室に居座る。

留守番が茶を入れている間に、机の引き出しや、周囲に、サンエスとのつながりを示す証拠がないかと探すが、留守番がすぐ戻って来たので、タバコを切らしたと言うと、留守番は自分のタバコを差し出そうとする。

仕方がないので、自分がフィルター付きのしかだめなんだと言い、留守番に買いに行かせる。

そして又、室内を物色するが、どこにも証拠らしいものは見つからない。

諦めかけた時、目の前に、謄写版があったので、試しにそれにローラーを走らせ一枚刷ってみると、それは、テレビのアンケート用紙だった。

列車が行き交う人気のない鉄橋の上に植原を連れて来た日沼と半田は、植原の上半身を鉄橋から突き出すように押し付けながら、事務所を襲わせたのはあんただねと追求する。

植原は、サンエスに因縁付けてきたからだ。熊谷の調査したろう?と言うので、所長を殺したな?と追求すると、磯村のことなど知らんと言う。

サンエスの小型テレビのことも知らんと言うので、その内、警察に突き出してやると言い残して、日沼と半田は去る。

植原はその後、喫茶店である人物に会うと、産調研の日沼に今締め付けられたと報告するが、相手は、人殺ししろとは誰も言わん。そっちで処理するんだねと冷たくあしらい、日沼たちの動きは、磯村の娘とも知りあいなので、こっちで探ろうと相手は言う。

日沼はその頃、事務所で、遠藤が持ち帰ったテレビのアンケート用紙を見て、自分たちが真相に近づいていると感じていた。

遠藤は、小型テレビのブラウン管を試作している可能性がある部品向上と、どこかに缶詰にされているに違いない技術者を探ろうと提案する。

日沼は、半田と二人で洗う。所長殺した奴をきっと突き止めてみせると意欲を見せるが、その直後、遠藤に、酒が飲みたい気分なんだが金はないかと聞く。

遠藤が、自分の腕時計を外して渡そうとすると、それなら自分も持っていると日沼は遠慮する。

その後、少し酔った日沼は暁子の自宅を訪れ、サンエスの情報を必ず見つけます。サンエスと対決しますと意欲を見せるが、暁子はそんな日沼を心配し、これ以上危ないことは止めて下さいと頼む。

日沼は、僕も平和に暮らしたいんですけど、世の中にはどす黒い競争をやっています。汚い企業とかが人間を踏みつぶしているのです!と日頃の鬱憤をぶちまけると、そのまま帰って行く。

翌日から、日沼と半田は、ブラウン管の下請け工場を回り、どこかで特殊なブラウン管を作っている所はないだろうかなどと探りを入れるが、実験用だけだったら、小規模の手吹きガラス設備で出来るので、工場内で作っている可能性もあると聞く。

さらに、特許庁に行き、東洋工大の松下と言う個人から小型テレビの特許志願を受けたと聞いた二人は、その足で東洋工大へ向かうと、松下先生は渡米中だと言う。

それでは、他に半導体に詳しい人物はいないかと聞くと、高畑京介と言う人物がおり、サンエスの技師だと言うではないか。

その住所を聞いた二人は、高畑の自宅に向かい、近所の主婦にそれとなく高畑のことを聞くと、高畑の主人も新婚早々の新妻を置いて、研究のためにアメリカに行っていると言うではないか。

しかし、その新妻は、日曜日になると家を空けると言うので、日沼と半田は次の日曜日まで待つことにする。

そして、日曜日、家を出かけた高畑の妻由紀(堀川真智子)を尾行する。

由紀が電車を乗り換えやって来たのは、何と熊谷だった。

熊谷の駅前の旅館の窓から手を振っているのが高畑京介(吉葉司郎)らしかった。

日沼は、若夫婦ありがとう!人間万才だ!と、尾行が成果を上げたことを喜ぶ。

新婚の二人はそのまま「柳水」と言うホテルに入り込んだので、日沼と半田も近くに泊まり込むことにする。

しかし金がないので、半田の腕時計を売ることにする。

翌朝、マスクをして顔を隠した高畑が、新妻由紀に手を振って車で出かけたので、日沼たちもタクシーでその後をつける。

高畑が到着したのは、何かの研究所のような場所だった。

日沼は、その入口脇に、先の方の葉が枯れた椎の木を発見し、ここに間違いないと確信する。

半導体を作るのに必要な塩素の排気ガスが、植物の葉を枯らすのだと半田に説明し、ガラガラ音が聞こえないかと聞く。

清浄装置の音だ。ここで作っているんだと断定した日沼は、ちょっと中に入って様子を見ようとするが、中には何人ものガードマンが立っており、とても侵入できそうになかったので、一旦引き上げて、計画を立て直すことにする。

レストランで打ち合わせの為会った暁子と会った橋爪は、日沼は最近、サンエスの超小型テレビを探っているそうだと聞き、ぼくらも中外の社員として、日沼君たちを手伝いたいななどと話していた。

その後、橋爪は、太陽リサーチセンターの植原所長に会うと、企業防衛の為だ。急いで、工場の観やすい場所があれば固めてもらいたいと依頼する。

産業調査研究所では、日沼が、消防署から取り寄せたと言う、熊谷の工場の見取り図を前に、半田が学生時代から得意だったと言う「偽証明書作り」の技術を使い、消防署員の偽造身分証明書を作っていた。

その時、扉が急に開いて、外から風が吹き込んで来たので、不審に思った日沼が入口の外の様子を見に出るが、誰もいなかった。

中外電機では、企画会議が行われていた。

サンエスでは、16型薄型テレビを開発中らしいが、うちの情報も外に漏れているらしい。産業スパイでも入り込んでいるんではないかと、企画室長の曽我春生(北城寿太郎)に尋ねる。

すると立ち上がった曽我は、スパイはこの中におりますと言い出す。

そして、テーブルの向かい側でタバコを吸っていた橋爪を、サンエスのスパイとして告発する。

橋爪はとぼけるが、金子君に調べてもらった。君はサンエスの町田調査室長と繋がっていると指摘し、植原と親密そうに会っている写真を突きつけられる。

サンエスの金子は、中外側が送り込んでいた産業スパイだったのだ。

翌日、テレビ局にいた暁子は、CMの新しい担当者として中岡と言う社員を、中外電機側から紹介される。

橋爪さんはどうしたのかと聞くと、サンエスのスパイだったので馘首したと言うではないか。

暁子はすぐに、産業調査研究所に向かうと、遠藤に日沼の所在を聞く。

日沼は今、熊谷の研究所にアタックに出かけたと聞くと、自分は日村の動きを中外社員だった橋爪に話してしまったが、まさか橋爪がスパイとは思わなかった。日沼の動きはサンエスに筒抜けであり、今、工場に行くのは危険ですと教える。

その頃、日沼と半田は、偽の消防署員に成り済まして、火災予防週間の検査に来たと熊谷の工場の守衛所でパスを受け取っていた。

ガードマンの一人が案内を申し出るが、良く知っていると断り、工場内に入った二人は、防火装置の点検を装い、万年筆型のカメラで工場内の様子を撮影して行く。

ガードマンの厳しい視線を避けながら、いくつか建物を観て行くうちに、とうとう小型ブラウン管を作っている棟を発見、その時、ガードマンが「その装置は取り替えたばかりだ」と言葉をかけて来る。

二人は、その建物から退去する振りをして、ガードマンに気づかれぬように何とか写真を撮影する。

その頃、守衛室では、ダスターコートを来た二人組は何者だ?とガードマンが聞きに来て、消防署員だと聞くと、消防署に問い合わせた方が良い。本社からの緊急警戒命令を忘れたかと受付に注意する。

やがて、ガードマンに付き添われて建物内を歩いていた日沼と半田は、工場内に響き渡るサイレン音を聞く。

何の音かと聞くと、前を歩いていたガードマンは「スパイ侵入だ」と振り向いたので、二人は、知らん振りをして立ち去ろうとするが、ガードマンがつかみかかって来る。

日沼は、そのガードマンを投げ飛ばし、半田と共に裏口へ走るが、見る間に迫り来るガードマンの数が増えて来る。

日沼は万年筆を半田に託すと、裏門からかろうじて逃がし、自らは脱出できないまま捕まってしまう。

工場長室に連行された日沼だったが、来ることを承知していたと言う工場長(小原利之)を前にしても余裕の笑顔を浮かべていた。

お前だけを押せておけば大丈夫だと言う工場長に、フィルムで工場内を隅々まで撮っていますと日沼は言い、机の電話を取り上げた日沼は、サンエスの町田に電話をかける。

町田も、工場内を撮影したと言う日村の言葉を聞くとさすがに青ざめ、明日1時本社に来てくれと申し出、監禁されていると言う日沼の身柄もその場で釈放してくれる。

町田は早速、重役会議を招集し、情報が漏洩した詫びを言うと、善後策の検討に入る。

会議では、この際、新製品を発表してしまった方が良いのではと言う意見が出る。

しかし、今ある小型テレビの在庫は100台。

当初、4ヶ月後に発売予定だった時点での在庫予定は2000台だったので、今発表すれば他社が追随してきて、市場の独占期間が短くなってしまう。

相手の言いなりに口止め料を支払っても、絶対情報が漏洩しないと言う確証はなかった。

研究所にいた遠藤は、日沼からの電話を受け、無事情報を獲得したことを知り、その場で心配していた暁子もほっとする。

日沼は、電話を代わった暁子にお父さんの犯人が分かるかも知れないと伝えるが、暁子はこれ以上無理をなさらないでと又しても日村のことを案じる。

再び電話を代わった遠藤に、日沼は、橋爪の住所を調べるように伝える。

その頃、橋爪は町田企画室長に、今後の身の振り方を相談していたが、町田はこれまでのスパイ活動は金で補ってきたはずだし、すでに中外社員ではなくなった君に用事はない。今後は関係を絶つと冷たく言い渡されたので、逆上した橋爪は町田につかみかかる。

しかし、すぐに社員が取り押さえに来たので、町田は、橋爪を連れ出す社員に、いくらか包んでやれと最後の温情を見せる。

絶望して自宅アパートに帰って来た橋爪は、そこで待ち受けていた遠藤から、太陽リサーチセンターの植原所長に電話をかけてくれないかと頼まれる。

あんたは、犯人隠匿罪になるのではないかと言われると、やけになっていた橋爪は言うことを聞くしかなかった。

翌日、サンエスの本社受付に来た日沼は、受付嬢が、自分と町田との面会を承知していない様子なのを不思議がっていた。

その時、玄関ホールを通り抜けて行く大勢のマスコミ関係者の姿を見る。

何事かと、記者たちの後を付いて行った日沼は、新製品発表会見の部屋で小型テレビを手にし、カメラに向かってポーズをとっている町田の姿を目撃する。

唖然とする日沼の姿に気づいた町田は、会見場を抜け出して、企画室長室へと日沼を招き入れる。

君の努力には敬意を表するとねぎらいながらも、君の情報は価値がなくなったんだよと言い渡す町田。

日沼は完全に打ちのめされた様子で椅子に腰を降ろしていた。

我々の始めの予定では、向う1年間市場を独占するつもりだったが、今日発表した為に、その独占期間が半年に縮まった。だが、我が社の量産体勢で、その間、市場を独占するよと誇らしげに言い放つ町田。

日沼は、おめでとう…、それだけを言いに来たんだと言い残して、憔悴し切った様子で部屋を出て行く。

その直後、太陽リサーチセンターの植原とヤクザの深谷が入ってきて、橋爪に聞いたが、あんたが呼んでいるっているので来たと言う。

町田は、そんなことを言った覚えはないぞと不審がり、君たちにもちゃんと報酬は渡したはずだと露骨に迷惑がるが、その態度を観ていた植原は、磯村の一件、あんたの差し金と言いふらしてやるといきり立つ。

町田は、磯村が殺されたかどうかなんて知らんよととぼけるが、突き飛ばしたのはこいつだし、命令したのは俺だと植原は、隣に座った深谷を示しながら言うと、でも、我々が捕まれば、あんたも参考人として呼ばれるはずだと詰めより、深谷も必ず巻き添えにしてやるぜとうそぶく。

町田は観念したかのように、月40万でサンエスの専属でどうだ?と交換条件を出す。

植原たちは、最初からそう言ってくれれば良いんだよと笑顔になるが、その時、帰ったはずの日沼が又、部屋に入って来る。

日沼は、町田さん、あんたに、もう一つ買ってもらいたいものがある。今の話、全部無線録音で採らせてもらったと言いながら、テープレコーダーを取り出す。

再生してみると、今の植原、深谷、町田の話がそっくり録音されていた。

そして、産業スパイはあんたの専売特許じゃないぜと言いながら、先ほど座っていたソファの端から、無線マイクを取り出す。

いくら欲しいんだ?と青ざめる町田に、これだけはいくら金を積まれたって売れないんだ。世の中には金で買えないものもあることを知るんだな…と言う日沼は、ポケットから枯れた葉っぱを取り出すと、これは熊谷の工場にあった。磯村所長の遺品として警察にも保管してある。警察は当然、背後関係を調べるだろう。橋爪も、重要参考人として警察に出頭するだろうと言い放つ。

翌日、新聞に掲載されたサンエスの新製品ミクロテレビの発表記事の脇に、植原と深谷が、殺人容疑で逮捕されたと言う記事が載っていた。

磯村産業調査研究所では、半田が、町田も辞めさせられたそうだとつぶやいていた。

窓を開け放った遠藤は、これで仇討ちはすんだけど、あいつも、会社の為にやってたんだ。日沼が帰って来たら、相談して、がっちり儲けるさと半田や古川に言う。

その頃、日沼は、熊谷で暁子と再会していた。

磯村所長の墓前に事件解決の報告にきていたのだった。

今後どうするのですか?と暁子に聞かれた日沼は、関西に行こうと思う。車に付ける無線が出来たと言う情報を聞いたのでと答える。

今後は企業の為ではなく、消費者の為になる経済評論会社にしようと思うと言う日村に、もう磯村の名前を会社名から外したら?と提案した暁子に、日沼は、否、今まで通りの名前でやっていくつもりです。一人くらい古くさい男がいても良いじゃないですかと言う。

暁子は、わたしも古い女なので、関西まで付いて行きたいのですが…と言うが、暁子さん、必ず迎えに来ます。それまで、テレビ局にいて、磯村産業調査研究所のCMを作っていて下さいと、笑顔で頼む日沼だった。