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POV~呪われたフィルム~

※2011年10月12日、この映画に関するマスコミ発表があったので記載しますが(試写会の時、発表後はどしどし宣伝してくれと言われたので)、まだ公開前の作品ですので、事前に詳しい情報を知りたくない方は読まないようにお願いします。また、スニーク試写会で観た作品であり、公開時には再編集され内容が一部変わっている可能性があることを最初にお断りしておきます。

 

「学校の怪談」を描く前半部分は、得体が知れないだけに怖い。(びっくりさせられるのは、大きな音響のせいなのだが)

ところが、桑田の告白で、何となく事態の背景が見えて来ると急速に怖さは薄れて行く。

霊界に興味を持ち、霊感が強く、怪奇現象の撮影によって霊界との交友を深めて行った奇妙な少女と言う、何やら「ラブクラフト風」の設定が、ファンタジーに思えてしまうからだ。

だから、フィルムにおぞましいものが映っていて、それを観たものは気が狂ったなどと言うセリフを聞いても、どうせ、そのおぞましいビジュアルは観れないのだろうと最初から分かってしまう。

前半は、低予算を巧く利用し、音とビデオ映像でそれなりに予測不能の恐怖感をあおっていたが、ファンタジー設定が明らかになると、その低予算が仇になり、ビジュアル化の限界が見えてしまうため、観ている側の予想を裏切るような展開にならないので若干興ざめしてしまうのだ。

また、試写会の会場で観ていた劇中にも試写会のシーンが出てきたので、現実と映画の中身が連動していることに気づき、何か、そこを突いた仕掛け(例えば、実際の試写会場でも映画の中と同じような現象が起こる)でもあるのかとも期待したが、そうしたトリック性もなかった。

この作品で一番怖い要素を持っているのは、いつもディレクターに怒鳴られているADの北川だと思う。

女性と言うこともあり、その内面はうかがい知れないだけに、霊感が強かった女生徒などと言う平凡なキャラクターより、工夫次第で数倍面白い展開があり得たのではないかと言う気がする。

病院で意識不明になり、ずっとその生霊が主要人物につきまとうと言う風にした方が、映画ものとしては怖かったのではないだろうか?

個人的にADの存在が一番リアルに感じたのも、撮影現場を何度か見たことがあるからなのだが、ADなどに会う機会がない一般の観客にとっては、そう言う部分は逆にピンと来ない部分かも知れない。

主人公の女の子達に近い中高生くらいが怖がるツボは、大人とは又違う部分だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、鶴田法男監督作品。

※この作品はまだ公開前です。内容を知りたくない方は読まないようにお願いします。

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携帯向けビデオ「志田未来のそれだけは見ラいで」メイキング

女子高生の制服を来た出演者、志田未来と川口春菜の二人が、撮影現場である某ビルに到着する所を待ちかねていたディレクターの橘直紀は、そのままビデオを回していたので、未来と春菜は、もう撮っているんですか?と驚く。

現場の部屋で準備をしていたのは、ADの北川朱美。

マネージャーの桑田に話しかけた島津部長が帰って行く。

準備中の未来と春菜の姿に、両者の経歴を書いたテロップが流れる。

二人のメイクをしていた女性がさっさと帰ってしまったので、もう帰るんですか?と驚いた未来だったが、マネージャーの桑田透は、これの関係ですと、親指と人差し指で丸を描いてみせる。

二人がセットの席に付き、携帯向けバラエティ番組「志田未来のそれだけは見ラいで」の撮影が始まる。

司会の未来が、ゲストの春菜を紹介すると、春菜は「春色ワルツ」以来二度目の共演ですと未来との関係を話す。

春菜が、今日は電車で一緒に来たんだけど、未来ちゃん、憂鬱そうだったねと話しを振るが、何故か未来は話しをはぐらかせて違う方向へ持って行こうとする。

それに気づいた春菜が、今日の仕事、嫌なんじゃない?とからかうが、未来はそんなことないときっぱり否定し、いよいよ本題の「真霊動画特集」と書かれた背後のタイトル文字を読む。

春菜は、字が違っているよね。本当は「心霊」なのに…と指摘するが、未来はこれで良いのだと言う。

いよいよDVDを観る事になり、春菜がテーブル上のDVD再生機にDVDをセットすると、背後のモニターに、女子トイレのようなものが写る。

未来は、その映像だけで嫌そうだったが、何か聞こえる?と聞き、春菜は、風の音のようなものが聞こえると答え、何だかここ、私が卒業した中学のトイレに似ていると言い出すが、未来は、トイレなんてどこでも同じようなものでしょう?と突っ込む。

ビデオを撮影していた橘の「指示していた動画と違う」と言う声が入り、AD北川の、用意しておいた動画と違いますと言う戸惑いの声に、橘はいら立ったように、「とりあえず続けろ」と言い、撮影を続行する。

未来と春菜は、動画を凝視していたが、その時、画面左奥の扉がゆっくり開く。

動画のカメラは、その開いたドアの方に進み、トイレの中を写すが、中には洋式便座があるだけで誰のいなかった。

未来は、誰もいないのにドアが開いたと怯えるが、春菜がもう一回観てみようと言い出したので、AD北川が、恐縮したように、あの…その動画…と言い訳をする。

橘は、せっかく面白くなって来たのに何やってんだ!とAD北川を叱りつける。

再び背後のモニターにトイレの画像が映り、しばらくすると、やはり左奥の個室のドアが開くが、そのドアには指が写っていたので、未来と春菜は、さっきの動画と違う!と驚き、DVDの一時停止で確認してみようとするが、スイッチが効かなかった。

カメラは、やはり左奥の個室に近づき、中を写すが、やはり中には便器がある以外、誰もいなかったので、未来と春菜は恐怖に怯える。

春菜は未来を慰める為か、今の動画はインチキだよ。ネットなどにアップされた心霊動画もほとんどは偽物。私も、中学のとき、放送部にいて、心霊動画を撮ろうとしたけど全然撮れなくて…、3階で首を吊った女性教師の噂が、階段の発端じゃないかって…と、色々、自分の中学にあった怪談話を披露するが、結局、何も写らなかったものと教える。

現場の背後に控えていたマネージャーの桑田は、カメラを回し続ける橘に、未来が凄く怖がっているみたいだから、そろそろ撮影を止めませんか?と口を挟み、橘も、今日の週力は中止にしようと言い出す。

しかし、それを聞いた未来は、どうしてですか?私のせいですか?大丈夫ですから、次の動画を観ましょうと空元気を出し、春菜に、次のDVDをセットするよう頼む。

新しい動画に写っていたのは、どこかのシャワールームだった。

誰もいないシャワーから、突然水が飛び出す。

それを観ていた春菜は、何これ?ここ、私の中学ですと言い出す。

続いて、学校の廊下が写り、その窓ガラスに人影のようなものが写っていた。

橘は北川に止めるよう指示を出すが、北川はこんなフィルムさっきはなかったと戸惑うだけ。

春菜が、DVDのスイッチを停めようとした時、ドーンと言う大きな音が響き、モニター映像は消えない。

女の笑い声が聞こえ、未来と春菜はすっかり怯える。

未来は恐怖を通り越して怒り出し、いくら人気番組にしたいからと言ってやりすぎです!と橘に抗議する。

橘は、説明できるように全部記録に撮っているから、仕組んだんじゃないってことは分かるはずだと、必死に弁解し、今撮ったDVDを再生して二人に見せる。

合成なんかできないと言うことだった。

リピート

ほんの数分前、怯える未来と春菜が写っているこの部屋。

その窓には、セーラー服の女学生らしき人影が映っていた。

事態の異常さを心配した桑田は、会社のツテを使って、霊能者の岡崎亮子と言う人物を呼び、撮影した部屋を観てもらうことにする。

部屋で待っていた未来と春菜に出会った岡崎は、春菜さんと言うのはあなた?と言い当てたので、一緒にいた桑田は驚くが、映画やテレビは一切観ないと言う岡崎は、一応、先に問題のビデオは見せてもらっていると教える。

部屋や窓の様子を見て回った岡崎は、部屋に清め塩を盛り、テーブル上のろうそくを付けた後、春菜の背中に、「臨 兵 闘 者 皆 陳 烈 在 前」と九字を切り、この部屋にも春菜さんにも、何も悪いものは憑いていませんと言う。

それを聞いた桑田は、これで終わったと安心するが、岡崎は、これで終わったとは言っていません。これは「しかん憑依」と言う現象ですから、中学に行って浄霊しないと解決しませんと言う。

しかし、桑田は、それは無理です。中学の方は、そんなバカバカしいことって、受け付けてくれないのでと断ろうとするが、岡崎は、そんな桑田に、何か隠していませんか?と問いかける。

未来は、このまま放っておくと、春菜ちゃんに何か起きるって事ですか?と岡崎に聞く。

橘が撮った映像をもう一度観てみると、確かに春菜と未来が怯えて抱き合っている背後の窓に、セーラー服の女の姿が写っていた。

その時、突然、携帯の呼び出し音がなり、電話に出たADの北川は、春菜の中学から、取材許可が降りたと、その場にいた全員に伝える。

岡崎は、モニターに映っているガラス戸に写った人影に向かって手をかざしながら近づけていた。

数日後、橘は春菜の卒業した中学を訪れる、早速カメラのセッティングを始めるが、ADの北川が来ていないので、不機嫌そうに携帯をかけてみる。

すると、岡崎を乗せて向かっているが、渋滞で遅れていると言うので、又。橘は切れる。

そこに、桑田の車で、未来と春菜が到着したので、岡崎先生が遅れている事情を話す橘。

その時、中学校の玄関から一人の中年女性が出て来て近づいて来る。

春菜は知っている先生だったようで挨拶する。

一応、最上佳代(仮名)先生とテロップが出る。

今日は、午前中で授業が終わったので、もう校内には誰も残っていないので取材を許可したと最上先生は説明する。

しかし、春菜はこっそり未来たちたちに、あの先生は自分が入っていた放送部の顧問だが、頭が固いことで有名な先生で、階段や幽霊など一切信じない人なだけに、良くこんな取材を許可してくれたものだと不思議がる。

全員が校舎内に入ると、最上先生が玄関の鍵を施錠し、まずは放送室へと案内する。

最上先生は、なぜ今回の取材に応じたかを知りたくないですか?と言い、事前に準備しておいたと言うビデオ映像を未来と春菜に見せる。

それは、校内のプール脇で、去年の夏、放送部員が撮影した水泳部員へのインタビュー映像だった。

男子学生へのインタビューを終えた女子放送部員池谷が、マイクを、隣の斉藤と言う女学生へ向け、カメラが右に移動した際、男の子と斉藤との間に黒い影のようなものが写っていた。

それは、位置的に、プールの上に立っているように見えたので、未来と春菜は怯える。

春菜は、こんなものを見せた最上におかしいと言い出す。

元々、先生はこんなものを信用していなかったじゃないですかと言うんだ。

すると、最上先生は、この映像を作った子が精神に異常を来たし入院してしまった。祟りじゃないかと言うので、きちんと調べたら、変な風説が収まるだろうと思って…と言う。

放送室を出ようとした春菜は、天井に貼ってあるたくさんの自分の写真に気づく。

部員たちは、春菜のことを応援しているからだと説明した最上先生だったが、そう言えば、春菜がテレビに出るようになってから、この学校の怪談が増えたような気がすると言い出す。

その時、突然、ノックの音がしたので全員固まってしまう。

今、放送室内にいる人間以外には学校には誰もいないはずだったからだ。

恐る恐る最上先生がドアを開くと、誰もいない。

しかし、次の瞬間、ADの北川が立っていたのでカメラを回していた橘は、何やってるんだと叱る。

北川が言うには、先に行ってしっかり取材して来て欲しいと岡崎さんから言われて来たらしい。

その時、最上先生が、あなた、一体どこから入って来たの?と北川に聞く。

玄関から入って来たと言う北川に、さっき鍵をちゃんとかけたはずなのにと、最上先生は戸惑う。

北川と一緒に玄関に降りてみると、確かに玄関は開いていた。

最上先生は、私がかけたつもりだったのでしょうと自らを納得させる。

橘は、プールが観たいと言い出す。

最初に、シャワー室に到着した未来は、この前の動画に写っていた部屋だと怯える。

春菜は、シャワーのコックをひねって水を出すと、やっぱり、水が勝手に出るようなことはないと確認する。

最上先生は、未来たちが前に観たと言う映像は、誰が撮ったものかと聞いて来るが、誰も分かるはずがなかった。

やがて全員でプールへ向かい、先ほど、最上先生が見せてくれた水泳部のインタビュー映像と同じような位置に銘々立ってくれと橘が指示を出し、北川には、黒い影が映っていた位置に立たせる。

すると、普通に立つことができたので、水に浮かんでいるように見えることが分かる。

次に、ガラス窓に謎の顔が写っていた廊下に来るが、特に変わったことはなかったので、全員、やはりあの動画は何かの勘違いだったのかも知れないと思い出す。

そして、3階の女子トイレに向かう。

カメラを回していた橘は、未来と春菜に、入ってみてと指示を出すが、桑田は、いい加減に撮影して早く帰りましょうと言い出したので、橘は、トイレの中に入り、左奥の扉の中を開け、誰もいないことを確認する。

その後、屋上に上がるが、やはり何も異常はなかった。

その時、春菜が、昔、放送部にいた女子学生が部長に振られてここから飛び降り自殺し、その霊が、この屋上をさまよっていると言う噂があるのだと言う話をし出す。

すると、それを聞いていた最上先生が、自分がこの中学に入った1年生の時、実際にそう言うことが起きたけど、その女生徒の霊が屋上をうろついているとか、悪霊を呼び寄せているなどと言うのは噓だと否定する。

橘は、薄暗くなって来た中、もう少し撮影させてくれと桑田を説得する。

3階に降りて来たとき、未来が、女性が笑う声が聞こえると言い出す。

桑田は、もう終わりにして帰ろうと言い出すが、全員が耳をすませていると、確かに女性の笑い声が聞こえて来た。

その時、橘が写していたカメラの中に、手持ちビデオを持った北川がインして来て、私が撮影しますと言い、そのままビデオを構えたまま女子トイレの中に入って行く。

その直後、大きな音が響き、校内が停電したので、驚いた全員は、北川の名を呼ぶが返事がない。

女子トイレの中だけが明るく点灯していた。

意を決した未来は、北川の名を呼びかけながら、恐る恐る女子トイレに入ってみることにする。

橘のカメラをその後を追うが、トイレの中には誰もおらず、ビデオカメラだけが床においてあった。

その時、携帯が鳴り響き、橘が受けると、それは霊能者の岡崎からで、北川の運転する車でそちらに向かっていた所、事故に会い、北川は重傷を負い、今二人とも病院にいるのだと言う。

じゃあ、今トイレに入って行った北川は何だったのか?

それを橘から聞いた最上先生が突然笑い出す。

あのトイレには何もいないし、この学校には何もいないと言うのだ。

橘は、トイレに落ちていた北川のビデオカメラを再生して、みんなに観てみろと言う。

北川のビデオにはトイレが映っており、突如、手から離れたように床が写る。

しかし、最上先生は、みんなで私を怖がらせようとしているんでしょうと抵抗する。

ビデオには再び女子トイレが写り、左奥の個室のドアが開く。

続いて、シャワー室のシャワーが写り、水が流れ出す。

そして屋上が写り、歩く女生徒の下半身が写る。

その後、又女子トイレが写り、左奥の個室から、女生徒が一人出て来る。

これは録画じゃない!今起きていることだ!と橘が叫ぶ。

女の笑い声が校内に響く。

早く逃げろ!全員、階段を降り玄関に向かう。

玄関は鍵がかかっていたので、桑田がガラス戸を割ろうとすると、外に黒い人影が立っていた。

驚いて、全員校内の教室に逃げ込むが、男のうめき声が聞こえ、廊下を誰かが歩いているらしく、教室のドアの磨りガラスに影が映っている。

玄関以外に逃げ道はないのか?と桑田が聞くと、春菜が、教室を出て左手に裏門があると言うが、最上先生は恐怖に怯えてしまい、分からないを繰り返しているだけだった。

春菜は、私のせいだ…、私が面白がって学校の怪談、たくさん撮ったから…と自分を責め始める。

その時、ようやく最上先生が学校の鍵を取り出す。

春菜は最上先生に、何か事件に関係していたのでは?と聞くが、自分は入ったばかりの1年生だった。もう当時の部長の名前さえ覚えてないと言う。

春菜は、教室を一人飛び出し、放送室にあるはずの名簿を探しに行く。

それを追うように、全員も教室を出て灯りの消えた廊下に出るが、又、ドーン!と大きな音が響く。

うろたえながら、桑田や最上先生が階段を上ろうとした時、上から降りて来た未来とぶつかる。

未来は、迷子になったのだと言う。

放送室に来ると、春菜が名簿を前に呆然と立っていた。

最上先生は、当時の名簿を確認し、そんなバカな!と驚きの声を上げる。

名簿に記されていた当時の放送部の部長の名は、桑田透だった。

マネージャーの桑田は、夕子のことも学校のこともすっかり忘れていた…と話し出す。

未来は驚きながらも、なんで、その人を振ったんですか?と聞く。

酷く怖くなったんだと桑田は答える。

互いの家庭環境がに通っていたことから親しくなったのだが、互いに、テレビや映画が一番の現実逃避だったので、ここのカメラを持ち出しては色々撮るようになった。

あの時の8mmビデオカメラ、まだあったんだね…と言いながら、桑田は部室においてあった古いカメラを手に撮る。

夕子が3階のトイレを撮ったのもこのカメラだったと桑田は話す。

あの頃、夕子はこの学校の取材に夢中になっていたと言う桑田の話を聞いていた春菜は、楽しい?私みたいに?とつぶやく。

その内に夕子は、この世界は間違っている。彼らの世界が真実だって言うようになり、夕子を手伝っていた俺も、徐々に、夕子が交流していた連中が恐ろしくなっていた、それがまさか、自殺するなんて…。俺は20年間も苦しみ続けて来たんだと桑田は続ける。

彼女は、俺の為に死んだんじゃない。

あちらの世界をこちらに知らせる為にあれこれ写していたのではなかったか?

夕子が屋上から落ちた時、頭が地面に叩き付けられる瞬間も写っていたそうだが、それよりももっとおぞましいものが写っていたそうで、それを見た警察関係者は狂ってしまったそうだ。

楽しいって?…と春菜はいつの間にか笑い出していた。

何かに取り憑かれているようだった。

そして、突然放送室を飛び出したので、桑田は思わず「夕子!」と叫びその後を追う。

未来たちもその後を追い、屋上に上がって来ていた春菜を、桑田と共に必死に止めようとする。

屋上の端で春菜ともみ合う形になった桑田が、足を滑らせ、橘が持っていたカメラと共に地上へ落下してしまう。

割れたレンズに、動かなくなった桑田の足が写っている。

その間、ずっと女の笑い声が聞こえていた。

その時、正気付いた春菜の、私、なんでこんな所へ?と戸惑った声がする。

橘が玄関から外に出て、倒れていた桑田に近づくと、まだ意識がある!と叫ぶ。

恐る恐る春菜と未来も近づいて来て、春菜は、私のせいだ…と落ち込んでいる。

最上先生も出て来たので、橘が救急車を!と頼むと、未来と春菜には、後者に戻るように促す。

これで終わりだよ。この学校もこれで満足しただろう…と、桑田に付き添っていた橘はつぶやく。

それまでの映像を試写室で観終わった島津部長は、これ、良いんじゃない?と隣にいた橘に話しかける。

エンディングにかかっている歌は?と聞いた部長に、タイアップらしいですよと橘が答える。

関係者試写を終えた橘は、ロビーで控えていた未来と春菜に、メイキングとCM撮りには協力してくれと頼む。

しかし、未来は、北川さんには後遺症が残ってしまったし、岡崎先生も怪我をした。鍬さんは直った後連絡が取れなくなった。

ひょとしたら、夕子は、春菜とメディアを使って何かしようとしているんじゃないかと心配で…と意見を述べるが、島津部長は、今度の配給会社は家と関係が深い会社なんだから頼むよ!ヒット間違いなし!と太鼓判を押す。

橘は、これから未来と春菜の二人だけの為の試写会をすると言い、二人を試写室の一番前列中央に案内する。

二人の表情を捉えるカメラも用意されていた。

「第三」の会社ロゴが映り、メイキング部分から映画は始まる。

あれからまだ四ヶ月しか経ってないんだと未来がつぶやくと、何か寒気がしませんか?と春菜が身をすくめる。

ロビーにいた橘の携帯が鳴り、霊能者の岡崎からのもので、その映画は呪われている。上映を中止しないと大変なことになると言う突飛な内容だった。

映画は、未来と春菜が「志田未来のそれだけは見ラいで」の録画で、最初のトイレの動画を観ているシーンだった。

トイレの左奥の個室ドアが開き、そこからセーラー服の女生徒が出て来た。

明らかに、あの時観た動画とは違っていたので、試写室で観ていた未来と春菜は怯える。

その時、映写室にいた映写技師が、何かに怯えたように部屋を飛び出すと逃げて行ってしまう。

試写室の未来はもう止めようとと言い出すが、隣に座っていた春菜は、じっと画面を見つめたまま、前に、仕事を投げ出す方が無理と言ってたじゃないですかと未来を責める。

画面にはシャワー室のシャワーが映っており、そこから水が流れ出す。

カメラがゆっくりそのシャワーの下に移動すると、何かが映っていた。

春菜は、映画だから、何か加工したんじゃないですか?と主張するが、未来は、橘さんに確認して来る。逃げるんじゃなくて、すぐに戻って来るから…と春菜をなだめ、一人試写室の外に出ようとする。

その時、ロビーにいた橘は、何だ!これ!と叫びロビーを逃げ出していた。

未来は、画面に釘付けになり異常に見えた春菜の手を引っ張ろうとするが、春菜は、楽しいと笑いながら、画面から目を離そうとはしなかった。

仕方なく、未来は春菜の頬を叩き正気付かせる。

そして、春菜を外に連れ出そうと引っ張るが、春菜の足には何者かがしがみついていた。

いつの間にか、試写室の席には、見覚えのない人影が何人か座っていた。

気がつくと、春菜の横にセーラー服の女がビデオカメラを持って立っていたので、未来は思わず、あんた夕子?と問いかけるが、夕子はカメラを持ったまま空中に浮き上がる。

春菜は未来に、この映画を止めて!と頼み、試写室を飛び出した未来は、無人のロビーに気づき、試写室に入るが、そこにも誰もいなかった。

機械の止め方が分からない未来が部屋の中で戸惑っていると、空中をカメラを持った夕子が追って来る。

ようやく、映写機のスイッチを見つけた未来は、あんた、これで終わりよと言いながらスイッチを切る。

映像は「POV 呪われたフィルム」と言う文字を残して静止する。

未来はすぐに試写室に戻ると、一番前で倒れていた春菜を助け起こし、試写室を出る。

その背後に、赤いセーラー服を着た夕子が立っていることに二人は気づかなかった。