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喜劇 急行列車

「男がつらいよ」で人気が定着するまでの間、渥美清は松竹以外でも色々な作品にでている。

本作は、東映に世話になっていた頃作られた列車シリーズの第一作である。

寅さんと根本的に違うのは妻帯者であるというくらいで、後は大体同じと考えて良い。
一応、車掌の長である立場上、仕事は真面目一筋で後輩の心配もする良き兄貴分という感じなのだが、この辺も寅さんと大差はなく、ちゃらんぽらんさがないくらいである。

マドンナ役に恋いこがれているところなど、全く一緒と言うしかない。

寅さんの盟友ポンシュウこと関敬六とコンビのシーンが多いのも同じ。
同じ浅草出身同士だから、この頃から共演していたのだろう。

物語後半は、夫の浮気を感じ取った敏ちゃん(楠敏江)が、夫の乗車する鹿児島行き「急行ふじ」に同乗してくるエピソードが描かれていく。

そこに、心臓病の手術のため、別府の専門医を訪ねる途中の列車マニアの少年家族とか、突然の出産騒ぎなどが重なっていく。

当時の人気者たち、漫才のWけんじや落語の三遊亭歌奴(現:円歌)が顔を見せているのにも注目。

この作品も「喜劇〜」と謳ってあるが、基本的には「明朗人情劇」といった感じの作品で、いわゆる爆笑コメディを期待して観ると、肩透かしを食うかも。

前半がどちらかといえばドタバタ調、後半が、じんわり感動編といった構成になっており、特に、心臓病の少年に、青木が列車を人間に例えて励ます姿は感動的。

渥美清=寅さんのイメージしかない世代の方には、ぜひ観て欲しい隠れた秀作の一本だと思う。

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、東映東京、舟橋和郎脚本、瀬川昌治監督作品。

国鉄に勤める専務車掌、青木吾一(渥美清)は、古女房のきぬ子(楠敏江)と長男特急(加藤順一)、長女さくら(丸山紀美子)、次女つばめ(大森不二香)、三女ふじ(坂本香織)の4人の子供を持つ働き盛り。

今日も、しびれ節などを歌って朝から浮かれている若手乗客係、古川(鈴木ヤスシ)に軽く注意を与えながら、東京発、佐世保、長崎行き寝台特急さくらに乗務するのであった。

そんな青木、横浜から乗車してきた女性客を見てビックリ!

かつて、青木が横須賀線に勤務していた時、鎌倉、東京間を通学していた女子高生時代に出会って以来、秘かな恋心を抱いていた鞠子(佐久間良子)だったからだ。

しかし彼女は、昭和39年に、夫らしき塚田(江原慎二郎)と仲睦まじそうに乗車しているのを目撃して以来、遠い存在になった人だったのである。

久々の再会に興奮し、気持を落ち着けようとアナウンス室に籠り、独りそんな気持を切々と呟いていた青木の独り言は、全部、スイッチが入ったままのマイクを通して列車中に響き渡ってしまう。

そんな青木の元に、当の鞠子が電報を打ってくれとやってくる。

文面を確認すると、何と、塚田と別れようと言う内容ではないか。

二人の結婚生活が破綻しかけているのだと気付いた青木は、鞠子に気持を翻すようにそれとなく勧めてみるのだが、鞠子の気持は変わらないようだった。

サービス係の遠藤洋子(大原麗子)といちゃいちゃして、仕事に身の入ってない古川の怠慢もあって、夜間、盗難事件が発生。

偶然にも、その犯行現場を目撃していた鞠子の証言のおかげで無事に犯人は逮捕、列車も終着駅の長崎に到着する。

後輩の車掌(関敬六)とぶらり訪れたグラバー亭で、青木は再び鞠子と再会、ここでも、二人きりで結婚生活の維持の大切さを説く青木であったが、心の中ではどこか、独身になった鞠子と交際する夢を捨てきれないところがあった。

翌朝、一泊した宿舎の青木宛に、そんな鞠子から手紙が届き、6月5日、自分は鹿児島にいるので「特急ふじ」でお越しの折にはお会いしましょうと意味深な内容が記されていた…。