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拳銃野郎

一本気な高橋英樹とすっとぼけた伊藤雄之助がコンビを組んだ痛快ギャング活劇

二人の腐れ縁振りが物語を最後まで引っ張って行く。

巷で噂の殺し屋、キラー・ジョーをめぐる話だが、冒頭部分から、勘の良い客なら、すぐにオチは分かるような展開になっている。

意外性があるのは、冒頭部分か挿入される信子とその恋人ヒロシのエピソード。

信子を演じているのは新人伊藤るり子であり、ヒロシを演じているのは、後の「ウルトラマンエース」で活躍したTACの山中隊員こと沖田駿一郎(当時は吉田毅名義)である。

一見、本筋とは無関係そうに描かれていて、最後に本筋としっかり結びつくのは見事。

ヤクザから足を洗いたがっている名古屋章や、始終、すっとぼけた発言をしている頭が良いのか悪いのか分からない十朱幸代など、ユーモラスで憎めないキャラクターが、話を軽やかでユーモラスなものにしている。

高品格ら、北村組の幹部クラスが、全員、パイプ愛好者などと言う設定もバカバカしくておかしいし、野呂圭介ら下っ端も間抜け風に描かれており、全体的にヤクザものと言う暗さはない。

藤村有弘、佐山俊二、由利徹、桂小金治、大泉滉などのゲスト出演も楽しい。

郷英治までゲスト的な扱いと言うのも珍しい。

とぼけたキャラクターが多い中、しっかり悪役を務めている滝沢修の存在感にも注目したい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、日活、斎藤耕一+中野顕彰脚本、井田探監督作品。

工場の昼休み、近くの川縁に二人やって来た工員ヒロシ(吉田毅)は恋人の女工員(伊藤るり子)に愚痴をこぼしていた。

世の中不公平だな。俺たちと同じくらいの年で何千万ももらえる野球選手も入れば、俺たちみたいに毎日こき使われている奴もいる。今、歌で流行っている殺し屋のキラー・ジョーは、東京中の葬儀屋たちから感謝されているそうだ。

そんな殺し屋の話をするヒロシに、そんなのただの伝説よ。あんたの話はいつも幼稚とバカにするが。

午後の始業サイレンが聞こえて来る。

ヒロシは、キラー・ジョー…、生きてりゃ、刑務所の中よ…と海を見ながらつぶやく。

刑務所の壁のバックにタイトル

刑務所の壁の横を歩くくたびれたオヤジ(伊藤雄之助)と、若く意気の良い青年(高橋英樹)

青年は5年、オヤジは10年の刑期を終え、今一緒に出て来たムショ仲間だった。

オヤジには一人娘がいるらしかったが、青年の方は天涯孤独な身の上だと証し、面会に来そうな奴もいないのか?とオヤジに聞かれると、いねえ訳でもないが…と言葉を濁す。

オヤジは右足に神経痛が出てきたと言い出し、足を引きずり出したので、年取ると身体だけは大事にしろよと優しい言葉をかけてくれた青年の言葉に甘えるどころか、自ら背中におんぶされる。

都心部に来た二人は、頭の上を塞いでいる橋のようなものに驚き、ちょっと歩いてみてみようと言い出す。

そこは高速道路だったので、すぐにパトカーがきて二人は注意されてしまう。

世間に付いて行くには時間がかかりそうだった。

その後、神社に詣ったオヤジに付き合い、その場で別れを告げようとした青年だったが、オヤジが又神経痛を痛がり、背中に乗ってきたので、仕方なく、もう少し付き合うことにし、横断歩道を渡ろうと、その場にいた交通警官の言葉に従い、黄色い旗を手に取るが、側にいた小学生から、横断歩道を渡るのが一番危ないよと注意されたので、青年もオヤジも警官もあっけにとられてしまう。

高級ブティックにやって来たオヤジは、あれこれ新製品を説明する店長(藤村有弘)に、18になる娘に送りたいのでと言い、赤いツーピースを購入したいと言い出す。

1万8850円と値段を言われると、その場でズボンをずり下げたオヤジは、腹巻きの中から、貯金していた金を取り出す。

その後、オヤジは、大橋家と書かれた大きな墓に詣る。

誰の墓か青年が聞くと、この世で一番尊敬していた人の墓だとオヤジは言う。

それじゃあ俺はここで…と、青年が去ろうとすると、オヤジは又神経痛が痛いと言い出し、青年の背中に負ぶさって来る。

深川近辺に来たオヤジは、そこにいた主婦(新井麗子)に、この辺に花村と言う家がないかと尋ねるが、天神下の源さんなら、親方が亡くなって1年もしないうちに、信子と言う女の子を連れ引っ越してしまったと言うではないか。

それを聞いたオヤジががっくり肩を落とし、10年間の俺の夢も水の泡になったと嘆く。

川縁に来たオヤジを慰めようと、青年は、これからはずっと自分が力になってやると励ます。

感謝したオヤジだったが、まだ、青年の名前を知らないんだと言う。

その時、どこからともなく聞こえていた歌を聴きながら、青年は、今から俺を、キラー・ジョーと呼んでくれと言い出す。

目の前の青年が伝説の殺し屋キラー・ジョーだったと聞いたオヤジは驚き、キツネに騙されているみてえだ…とつぶやく。

朝、博打をし終わって帰って来た地元のチンピラ数人(野呂圭介、武田賢一、沢美鶴、倉田栄三)は、足下に転がってきたゴミかご2個の中に人が入っていたのを発見する。

それは、一晩ゴミクズの中に入って夜を明かしたジョーとオヤジだったが、面白がって手を出して来たチンピラたちを、起き抜けのジョーは次々と倒してしまう。

そして、朝飯をチンピラたちにおごらせると、博打で儲けていた金も全部巻き上げてしまう。

やはり、手っ取り早く金を手に入れるにはこれしかないなと考えたジョーは、オヤジを背負って、あちこちを回りながら次々と喧嘩を繰り返すと、かつあげで金を増やして行く。

やがて、ジョーは、ばりっとした黒スーツを仕立ててそれを着るようになる。

工場近くの昼休み、ヒロシは女子工員に、仕事を辞めたと打ち明けていた。

自分も、キラー・ジョーのように、肩で風を切って町を歩きたいと言うのだ。

そんなの弱虫よと女子工員は指摘するが、俺は弱虫じゃない!とヒロシはムキになる。

北村組の組員洋次(名古屋章)は、妻の可奈子(十朱幸代)が言うことがいつも信用できず、たまには本当にことを言ってみろとマンションの一室でぼやくが、すると、可奈子が、じゃあ、お金が欲しいわと言い出したので呆れる。

事務所のある北村興行ビルにやって来た洋次は、社長はいないかと、麻雀をしていた大熊(高品格)菊(弘松三郎)若松(河野弘)原島(玉村駿太郎)らに聞くが、親分は留守だが、最近、うちのシマに妙な二人組が入り込んでおり、若い連中が金を奪われたらしい。お前は社長に会う前に、そう言う奴を始末する方が先じゃないかと説教されてしまう。

洋次が出て行くと、全員パイプでタバコを吸いながら麻雀を続ける4人組は、洋次も変わった。社長が甘やかしたのがいけなかったななどと噂し合う。

その頃、ジョーとオヤジは、「平和荘」と言う安アパートに部屋を借りることにしていた。

管理人(由利徹)は、1万3800円と言う家賃を告げる。

オヤジは、ムショを出て一ヶ月で、こういう所に住めるようになったとジョーに小声でつぶやく。

カツアゲで集めた所持金は、今や18万4500円になっていたが、ジョーは、そんな程度じゃ満足できないと言う。

そんな二人の会話を小耳に挟んだ管理人は、二人を怪しんで職業を聞いて来るが、ジョーは実業家だと答える。

これでも銀行に行けば、下にも置かない身分だと威張る。

その日、銀行へ出かけた二人は口座を作りたいと申し込み、15万を入金する。

通帳の名義は、花村信子にしてくれとオヤジが言い出したので、応対した銀行員(井田武)が、その方の住所は?と聞くと、それが分かれば苦労はしない!とオヤジが興奮したのでずっこっけてしまう。

その後、一緒に床屋に出かけたオヤジは、昔、本所深川には大橋一家と言う香具師一家があり、花村はそこの代貸しだったが、俺もずいぶん親分には世話になった。

かすりの着物が似合う可愛い子だったと信子のことを話す。

そんなジョーとオヤジののど元にいきなりカミソリを当ててきたのは、以前、金をカツアゲしたチンピラたちと洋次だった。

洋次は、二人が持っていた有り金と預金通帳を奪い取ると、アパートもうちの若いのが始末してきたと話し、俺はお前たちを始末するのが面倒なので、二人とも黙って町を出て行って欲しいと言う。

カミソリを突きつけられたジョーは、仕方ないだろうと答えるしかなかった。

しかし、洋次たちが引き上げた後、急いで平和荘へ帰るが、既に部屋の中は荒らされており、オヤジが信子の為に買った赤いツーピースもなくなっていた。

そこに管理人が姿を現し、やはり想像した通りだった。契約違反なのですぐに出て行って欲しいと言い出したので、敷金くらいは返して欲しい。ねこばばする気か?とオヤジが抗議すると、俺は長万部の鉄って言うんだ!と、急に管理人はドスを利かせて来る。

住む所を失ったジョーたちだったが、ジョーはオヤジを、都内でも有名なニュートウキョウホテルに連れて来る。

金がないオヤジは何をする気だとビビりまくるが、ジョーは受付で1泊8500円の401号室を取ると、親父を連れその部屋に向かう。

二人の後から受け付けに来た紳士風の男(佐山俊二)は、7号室と言われたので、「007ね」と満足そうに部屋へ向かう。

部屋に入ってもビビっているオヤジは、ここの支払いはどうするんだ?と怯えるが、ジョーはしらっと、こういう所は全部付けよ。サインで済むんだと教える。

その後、ジョーは親父を連れ、ホテル内のレストランやバーで贅沢に飲み食いするが、全て、ボーイが持ってきたレシートにサインをして済ませる。

部屋に戻ってマッサージを呼んだジョーだったが、そのマッサージ師は、仕事を終え、大きな大福帳にサインをもらうと、付け髭を付け、手品用のステッキを伸ばし部屋を出て行く。

7号室の紳士風客だったのだ。

ホテルに泊まり続けて5日目、いら立っていたオヤジが、俺は人を騙す詐欺は嫌だと言い出す。

それを聞いたジョーは、心配するな。俺を信じろよとオヤジを説得する。

その日、ロビーで二人がくつろいでいると、どちらの組の方でしょうと声をかけてきた法被を着た男がいた。

そちらはどちらさんで?とジョーが聞くと、自分たちは秋田の大島組のものですとその男(桂小金治)は名乗り、連れていた若い男は三代目大島竜二(市川好朗)と名乗り、二人は他の客たちと共に、一斉に大広間の方へ向かう。

そのただならぬ気配に気づいたオヤジは、こんな所にいるとろくなことがないから逃げようと言い出すが、ジョーは、これはチャンスだと喜び、嫌がる親父を連れて、その客たちと一緒に「日本遊侠連合会会場」と書かれた大広間に入り込む。

しかし、二人の顔を見ていた受付の男たちは、急に招待者名簿をチャックし出す。

全員、テーブルにそろうと、司会者(郷英治)が発会式を宣言し、初代会長に選ばれた北村松五郎(滝沢修)に挨拶を依頼する。

立ち上がりかけた北村に、受付が駆け寄り、変な奴が紛れ込んでいますと耳打ちする。

北村は慌てず、そのまま挨拶に立つと、東京、ホノルルで仕事をさせてもらっている北村と申しますと自己紹介すると、このような場所でご挨拶するのは失礼なので、お一方づつの前で挨拶させていただきますと言い出し、皆様には、クラブ「夕顔」の美人が挨拶いたしますと言う。

すると、二階席の楽団がファンファーレを鳴らし、その下のいくつもの入口が開くと、大勢のホステスたちが会場になだれ込んで来る。

その中には可奈子も混じっていた。

オヤジはびびり、逃げようと言い出すが、ジョーは、いざとなればキラー・ジョーと名乗れば良いんだと平気な様子。

しかし、オヤジは、あいつはただ者じゃねえ。相手は大物だと言い残し、その場から一人だけ逃げ出す。

その時、北村がジョーの前に来て、どちら様ですか?と聞いたので、ジョーは山口の浅野興行の浅野ですとでまかせを言う。

北村は、弟さんは元気ですか?と聞いてきたので、ええと答えると、騙りだ!つまみ出せ!と北村は子分たちに命じる。

ジョーは開き直り、俺は、キラー…と言いかけるが、その時、「ジョー!」と呼びかける声が聞こえる。

加奈子だった。

その時、部屋の明かりが急に消えてしまう。

電源室に侵入したオヤジが、大広間の電源スイッチを全部落としてしまったのだった。

暗闇の中、大島組の男がテーブルの下で、芸者に抱きついていた。

その間、加奈子を別室に連れ出したジョーは、いきなりビンタすると、俺が5年間も臭い飯を食ったのはお前のせいだ。なぜ、一度も面会にも来ず、手紙も寄越さなかったのか!と叱る。

二人は5年前、恋人同士だったのだ。

加奈子は申し訳なさそうに、忙しかったのよとしらっと言い、今でも一番あんたを愛しているとも言う。

ジョーは、そんな加奈子の家に今から行くと言い出し、受付から401号室のオヤジに、ちょっと出かけて来ると連絡すると、ホテルを後にする。

嫌がる加奈子を促し、マンションにやって来たジョーは、お前、男がいるんだな?と言い、用心しながら、加奈子の部屋に侵入する。

そこにいたのは、トマトジュースを飲みかけていた洋次だった。

ジョーは、お前が加奈子の男か!と驚くが、洋次は、こいつは俺の女房だと言う。

加奈子は、二人が知りあいだったとは知らなかったわと言いながら、二人の間に入るが、洋次はベッドの下から銃を取り出すと、ジョーを撃とうとする。

その時、洋次は何者かに左腕を撃たれる。

入口に銃を持ってたっていたのはオヤジだった。

オヤジはジョーに逃げろと言い、二人でマンションを逃げ出す。

加奈子は警察に呼び出され、大泉刑事(大泉晃)に事情を聞かれる。

二人の男はどういう関係だと聞くので、5年前に好きだった人と今好きな人と加奈子が答えると、君の男が君の男を売った訳だな?と確認した大泉刑事は、どっちが好きなんだ?と確認する。

加奈子は、ジョーは、私の為に刑務所に入ってくれたし、洋次は私に冷蔵庫を買ってくれたし…と迷う。

すると、大泉刑事は、三角関係を清算しようとしてあんたが仕組んだんだな?と言い出す。

加奈子は呆れて、どうしてみんな悪く言うのかしら?と不思議がるのだった。

工場脇の川縁では、又、ヒロシが女子工員に、キラー・ジョーのことを話していた。

俺だって、拳銃を持ったらジョーみたいに人を殺してみせると、妙な見栄を張っていた。

北村は、大熊たちに、キラーが出てきたそうだ。洋次もジョーにやられたそうだ。消すんだジョーを。居場所は分かっている。ニュートウキョウホテルの401号室と教える。

大熊は、自分に良いアイデアがありますと答える。

ニュートウキョウホテルの401号室では、オヤジがホテル代16万以上の明細を観て仰天していた。

ジョーも、10日払いとは思わなかったなとちょっと苦りきっていた。

オヤジは、この前会った加奈子とか言う女はダメだとジョーに言っていたが、そこに当の加奈子がやって来て、社長の北村さんが会いたいと言っているの。あんたキラー・ジョーって呼ばれているのね、素敵…と言いながら、ジョーの胸毛をむしったりする。

加奈子と一緒に、近くの公園まで来たジョーだったが、そこに待ち受けていたのは、北村組の子分たちだった。

加奈子はそんなことは知らないで利用されただけのようだったが、ジョーは、その場で格闘をせざるを得なくなる。

それを止めたのは、荒熊に連れられて様子を見に来た北村社長だった。

キラー・ジョーはこんな奴じゃないと言うのだ。

北村は大熊に、この始末はお前が付けろと命じる。

その時、左腕を吊った洋次が進みでて、その男だけは俺に始末させてくれと申し出、車でジョーを多摩堤の方まで連れて行く。

ジョーと二人きりに鳴った洋次は、銃を取り出し、ジョーの周囲を撃ち尽くす。

やらねえのかい?と不思議がるジョーに、俺はつくづくこの商売が嫌になった。

うちの社長は、キラー・ジョーを殺したがっている。

それと言うのも、昔、自分の野心の為にジョーを使って何人も人を殺させたりしてきており、言わば、ジョーは、社長の昔の悪事を一番知っている男だからだと言う。

人殺しなんて、いつかは誰かに殺される…。あの晩、この腕を撃たれた時に、心底俺は怖かった。今日限り辞めるんだと言いながら、拳銃を投げ捨てると、俺は逃げるから、俺をやったと言って、俺の後がまに座るが良い。その際、10万以下で雇われるなよ。今は物価高だからなと言い残し、一人去ってしまう。

そんな洋次を見送ったジョーは、とぼけた野郎だぜと苦笑する。

北村が経営するクラブでは、円形のステージ上で、歌手(アントニオ古賀)が「キラー・ジョーの歌」を歌っていた。

それを客に混じって北村や子分たち、加奈子も混ざって聞いていた。

そこに現れたジョーは、洋次は自分が始末してきたと言うと、北村は急にジョーに興味を持ったようで、話しをしないかと社長室に招く。

札束をジョーに握らせた北村は、仕事をしてくれたら、別に30万やると言い出す。

その仕事とは、本物のキラー・ジョーをやることだと言う。

居場所は、ニュートウキョウホテルの401号室と北村が言うのを聞いたジョーは、そこにはしょぼくれたオヤジしかいないと教えるが、そのしょぼくれたオヤジこそ、本物のキラー・ジョーだと言うではないか。

まさか!…とジョーは愕然とするが、北村は、どうだ?やってくれるんだろうな?まさか嫌だとは言わないだろうね?やるのか?やらねえのか?と詰めよりながら、拳銃を渡そうとする。

ホテルに戻って来たジョーは、オヤジに拳銃を向けると、良くも今まで俺を騙しやがったな!と責める。

それを聞いたオヤジは、北村の奴、しゃべりやがったなと事情を察しながら、俺は、お前がキラー・ジョーを名乗ってくれた時、正直ほっとしたと打ち明ける。

俺はこの名前から縁を切りたかった。

俺をダシに使いやがったなと怒るジョーに対し、オヤジは、最初はお前といるとあぶく銭が手に入るので重宝していたが、今の俺は本当にお前って男が好きでたまらないんだとオヤジは言う。

ジョーは、俺は加奈子のために兄貴分を殺したのを、ずっとムショの中で責め続けてきた。いつかきっと、一流の親分の下で一流の仕事をしてみたい。でも、天涯孤独のおれに何が出来る?持っているのは負けん気と度胸だけだ。俺が今、この引き金を引けば、30万になるんだ…と話す。

それを聞いていたオヤジは、撃ちなよ。どうせ殺し屋なんかいつかな他の殺し屋に殺される運命なんだ。娘にはあの世から詫びるぜ…と覚悟を決めたようだった。

しかし、そんな弱気なオヤジの姿を観ていたジョーはいら立ち、オヤジのバカやろう!一緒に逃げようと誘う。

しかし、オヤジは、俺なあ…、娘に会いたいんだよ!と言葉を絞り出す。

その頃、一人川縁を歩いていたヒロシは、草むらに落ちていた一丁の銃を発見し、立ちすくんでいた。

翌朝、ホテルのベッドで目覚めたジョーは、隣のベッドがもぬけの殻であるのに気づき飛び降りる。

テーブルには置き手紙が置いてあり、お前にはずいぶん世話になったが、これ以上迷惑はかけられない。今日は天気も良いことだし、墓参りに行って旅に出る…と書かれてあった。

急いで身支度を済ませたジョーは、ホテルを飛び出すと、以前行った大橋家の墓がある寺に向かう。

墓の前には、一人の男が立っていたので、老人を見かけなかったか?と聞くが、姿は観てないが、線香が上がっていたので30分くらい前に誰か来たんじゃないかと言う。

帰りかけたジョーだったが、気になって、その男に名前を聞くと花村(浜村純)だと言う。

この人物こそ、オヤジが探し求めていた花村源吉だったのだ。

では、オヤジさんの娘の信子さんと言う娘さんが一緒にいますね?と確認すると、信子のオヤジはその墓に入っているぜとと大橋は怪訝そうに答える。

キラー・ジョーには娘なんかいないと言うのだ。

信子は、ジョーが殺した大橋親分の一人娘で、ジョーはその後変わったと言う。

刑務所から信子に色々送ってくれたが、川崎に引っ越してからは連絡も途絶えた。今は、峰岸興行と言いますと教えてくれた花村に、ジョーは、娘さんに会わせてやって下さいと頼み、その場を去る。

一人になった花村は、そうか…、ジョーが出てきたか…とつぶやくが、そこに近づいてきたのは、ヒロシの恋人の女子工員だった。

彼女こそ、オヤジが探し求めていた信子だったのだ。

信子は花村から事情を聞くと、ジョーさんに会いたいとつぶやく。

ジョーは、北村組の事務所に乗り込み、社長はどこだ!と聞くが、社長ならトルコ風呂だと言う。

そのトルコ風呂に一足先に来ていたオヤジは、北村がスチーム風呂に入っている部屋に入り込むと、トルコ嬢二人を外に出し、北村と一対一で対峙する。

俺はムショを出たら、真っ先にあんたに会いに来なくちゃいけなかった。あんたと話、付けなきゃいけなかった。

ムショに入ったのは、みんな、あんたの為なんだぜ。罪は十分償われたと思っていた。それが何故、消さなければいけないんだ?

俺は、殺し屋が観てはいけない、殺しの結果を観てしまった。

大橋組は散り散りになりみんないなくなってしまい、あんたはその縄張りを取ってしまった。

俺はムショを出たら、まっすぐあんたの所へ来て、俺の手で裁くべきだったんだ…と言いながら、オヤジは隠し持ってきた包丁を振りかざす。

そのオヤジを背後から撃ったのは、駆けつけてきた大熊だった。

スチームバスから出てきた北村は、イスで、オヤジの頭をめった打ちにする。

そんなトルコ風呂にジョーが駆けつけた時、店内は警察が入り、騒然としていた。

ジョーが、すれ違った大橋刑事に事情を聞くと、北村を狙った殺し屋が、逆にやられたと言う。

そこに、瀕死のオヤジが運ばれてきたので、死ぬなよ!とすがりついたジョーは、娘さんって、大橋親分の娘さんだろ?と聞く。

オヤジは、祭りの日に殺した大橋親分にすがりつき、真っ赤になったかすりの着物を着ていた娘のことが、10年間、眼に焼き付いて離れなかった。頼む…とつぶやいて息絶える。

ジョーは、オヤジ!と抱きついて泣き出す。

トルコ風呂内の電話の前には、新聞記者たちが次々に本社に事件の報告をしていた。

北村は正当防衛になるだろうし、殺し屋なんてどうせクズだろうなどと、偏見に満ちた記事を送っていた。

そこにやって来たジョーは、違うんだと、貴社の電話をもぎ取り、殺し屋にだって、良い奴とそうじゃない奴の区別が出来る奴だっているんだ。と力説すると、観てろ!と言い残して店を後にする。

北村のキャバレーにやって来たジョーは、オヤジは死んだ。でも、キラー・ジョーは死なないんだ。今日から俺が、キラー・ジョーなんだと告げる。

北村は、円形ステージに逃げ込むが、その中央部でジョーは射殺する。

これであいこだぜ…と言い残したジョーは、その場を逃げ出す。

加奈子のマンションにやって来たジョーは、驚く加奈子に、北村を殺って来た。お前に別れを言いに来たんだと告げるが、加奈子は、ねえ、私も連れてってと言い出す。

ジョーは、俺は今日からお尋ね者なんだと教えるが、いつも男に面倒をかけるには私の方よ、早く逃げましょうとあっけらかんと答えた加奈子は、荷物をまとめ始める。

その時、壁にかかった赤いツーピースを見つけたジョーは、これは?と聞くと、洋次が持ってきたのもだと言う。

それはオヤジが娘の為に買った品物だった。

ジョーは、その服を川崎に届ける決心をする。

マンションの裏側から出た二人は、そこを見張っていた子分を叩きのめすと、工事現場の方に逃げる。

それに気づいた他の子分たちが追ってきて、マシンガンを乱射し始めるが、その銃弾は、工事事務所の土台を破壊してしまい、崩れた事務所の下敷きになって子分たちは自滅してしまう。

川崎で、加奈子が浜村に服を手渡すが、ジョーの元にやって来た花村は、これはあんたの手から信子に渡してやってくれと頼む。

ジョーは、川縁で信子に会うと、赤い服を手渡し、自分がジョーだと名乗る。

喜んだ信子は、後ろにいたヒロシにその服を見せようとする。

その時、一発の銃声が轟き、ジョーは苦しげな表情になる。

銃を拾って持っていたヒロシが、ジョーを撃ったのだった。

花村は驚いてヒロシを殴りつけるが、ヒロシは興奮したように、やったぞ!俺は、キラー・ジョーをやったんだ!と叫びながら走り去って行く。

それを追いかける信子は泣きながら、バカ!ヒロシのバカ!とつぶやいていた。

加奈子は、その場にうずくまるジョーを支えながら、せっかく逃げられたのに…、こんなことになるのだったら、ここに来なければ良かった…とつぶやき、ジョーも頷く。

その横では、花村が呆然と下表情のまま地面に跪いてしまう。

加奈子は、苦しがるジョーを支えて、その場を立ち去ろうとする。

しかし、ジョーは、力尽きたのか、がっくり膝をついてしまう。

加奈子はそんなジョーを支えながら叫ぶ。ジョー!キラー・ジョー!