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事件記者 拳銃貸します

NHKの人気ドラマの映画化シリーズ第9弾。

67分と言う中編だが、これだけシリーズが続いたのも頷ける快作に仕上がっている。

何しろ、尺が短いだけ話のテンポが速い。

屋台のおばさんが実は…などと言う部分は、母子ものとか下町人情ものなどの通俗性も兼ね備えている一方、意外性もあり、全体的に小粒な印象の割りに、退屈することはない。

山田吾一演ずるガンちゃんこと岩見などは、キャラクターが生き生きしており魅力的である。

シリーズ後半だからか、馴染みのレギュラー陣で登場しないような顔ぶれもいるが、若き滝田裕介や美貌の園井啓介など、懐かしい面々は健在である。

浦瀬キャップを演じている高城淳一などは、「事件記者」の時は覚えていないが、そのうるさ型のキャラクターは、後年の「西部警察」の佐川係長を彷彿とさせる。

テレビドラマの方はうる覚えだが、記者クラブのセット中心の会話劇だったように思う。

しかし、映画版の方では、劇場版らしくロケも多用しており、話に広がりが出ている。

白タクなどの風俗ネタも懐かしい。

他のシリーズ作を観ていないので、大勢登場するレギュラー記者たちやキャップたちの区別が付きにくいのが難だが、だからと言って、特に話の展開が分かりにくいと言うことはない。

益田喜頓主演の日活版「刑事物語」もそうだが、この時期の日活刑事物は手慣れた感じで、どの作品を観ても失望させられることがない。

ぜひとも、全シリーズ作品が観てみたいと思わせる作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、日活、島田一男原作、山口純一郎脚色、山崎徳次郎監督作品。

バッグを手にした男が、ビル横の非常階段を上りながら、地上に向かって拳銃を発砲する。

彼は銀行強盗で、地上に追ってきた警官隊に向かって応戦していたのだった。

やがて、警官に撃たれた犯人は、札束と共に地上に落下してくる。

現場に集結していたガンちゃんこと岩見(山田吾一)ら記者連中が、その現場に近づこうとすると、一人の刑事が中に入るなと止める。

ガンちゃんは、死体の側で検証をしていた村長こと山村部長刑事(宮阪将嘉)に声をかけると、山長は入れてやれと、その新顔の刑事に伝え、記者たちはようやく死体の側に詰めかけて、写真を撮ったりし始める。

記者を止めていた新入りの遠藤刑事(玉村駿太郎)は、捜査一課一課長(松下達夫)に、何ですかあいつら?と聞き、警視庁記者クラブの連中さと説明を聞くと、事件記者と言う訳ですねと納得するのだった。

記者クラブ内の東京日報の部屋では、キャップ相沢(永井智雄)が現場からの報告を受けていた。

夕刊のトップは決まりだね。これは組み替えだなと言いながら、本社に「銀行ギャング射殺される」と言う記事を送る。

午後1時、関東銀行丸の内支所に押し入ったギャングは、230万の現金を奪って逃走中、警官隊に射殺されたと言う扇情的な記事を知った本社は、動き始めていた輪転機を止めて、トップ記事の組み替えを命じる。

クラブ内では、各社のキャップたちが、銀行ギャングは闇のピストルでやったらしいと話し当ている所へ、取材先からガンちゃんたちが戻ってくるが、中央日日の浦瀬キャップ(高城淳一)は、いつも食い意地ばかりはっているガンちゃんを叱りつける。

クラブ内では、現場で、記者たちを中に入れなかった新米刑事がいたらしいとの噂で持ち切りだった。

それを聞いたガンちゃんも、あんな刑事は、八丈島へでも飛ばした方が良いなどと大声で演説している所に、その遠藤刑事を連れた村長が入ってきて、八丈島から来た新米なので、又、八丈島へ送り返せなどと言わないで、今後ともお手柔らかに頼むと記者やデスクたちに紹介する。

今の演説を聴かれていたことを知ったガンちゃんは恐縮することしきり。

その後、日報の山崎(園井啓介)たちは、池袋で行われる白タクの一斉検挙の取材に出かけて行く。

池袋の白タクの中では、運転手の川村克二(野村隆)が、銀座から乗ってきた女性客に、1000円寄越せと迫っていた。

通常、360円くらいなのに…と女性が憤慨すると、これは白タクだと川村は開き直るが、そこに、張っていた警視庁交通課の刑事たちが近づいてきて川村を検挙してしまう。

川村が使っていた車は、暴力団関東組が影でやっている「桜ドライビングクラブ」の車と判明。

乗客の女は、怖がって、事情を聞く前に逃げてしまったと、クラブに戻って来た山崎らは報告する。

そこへ、刷り上がったばかりの各社の夕刊が運び込まれ、各キャップたちは、自社だけが抜かれていないかチャックを始めるが、ガンちゃんが銀行ギャング事件で非常ベルをならした女性銀行員へのインタビューを一社だけ落としていた事を知った浦瀬キャップが怒鳴りつけ、すぐに取材に行かせる。

面目を潰したガンちゃんは汚名返上とばかり、捜査一課の前に来ると、溝口刑事(鴨田喜由)は帰る所だった。

部屋の中に入ると村長と遠藤刑事の二人だけだったので、ちょっとこの遠藤刑事を貸してもらえないかと村長に頼み込む。

記者クラブでは、八田(大森義夫)が甥っ子の結婚式に出席する為出かけており、明後日までいないとキャップたちが話し合っていた。

馴染みの小料理屋「ひさご」に遠藤刑事を誘ったガンちゃんは、今度とも協力し合いましょうと言いながら酒を勧める。

まじめな遠藤刑事は頷いていたが、強力と言っても僕だけにネタを教えてくれと言われると、この酒は賄賂ですかといきり立つ。

そんな二人の会話を、カウンター席で先に飲んでいたサブちゃん()が、笑いながら聞いていた。

その頃、釈放された川村は、五反田近辺で、友人で愚連隊の小松(市村博)に2万貸してくれ。組に3万上納しないと、次の仕事がもらえないんだと泣きついていた。

しかし、小松に金の持ち合わせなどあるはずもなく、近くにあった屋台に入ると、酒を飲み始めた川村に、ヤマザキカリフォルニアレーズン食うか?と勧めながら、自分だけ食べ始める。

その時、この近辺で稼いでいる売春婦が、その日のカモの質屋の主人を連れてやってきて、コップ酒を一杯あおって行く。

その時、酒代を払わされた質屋の主人の財布を観ていた小松と川村は、たたきでもやるか!と冗談を言い合う。

「ひさご」には、各社のキャップたちが、村長を伴ってどっとやってくる。

先に飲んでいたサブちゃんから、ガンちゃんが遠藤刑事を買収しようとしていたと聞かされたみんなは笑い、ガンちゃんは又しても面目を潰すのだった。

屋台で飲んでいた小松と川村に、一晩1万でどう?必要なんじゃないの?と言いながら、拳銃を差し出して来たのは、屋台のおばさんお鶴(新井麗子)だった。

小松と川村は仰天するが、隣でさっきから寝ていた客(山田禅二)のことを気にしていた。

しかし、お鶴は、その人は一旦眠ったら、雷が落ちても起きないから大樹部だよと二人を安心させる。

小松と川村は決心し、その拳銃を受け取る。

お鶴は、一晩1万だから、今日は後4時間だよ。私の口を塞ごうと考えても無駄で、自分には後ろにおっかない人が付いている。ここで銃を手に入れたなんて絶対言ってはいけない。もうあんたらの指紋は取ってあるからねと言いながら、今まで二人が飲んでいた酒のコップを回収する。

二人が屋台を出て行くと、今まで端で寝ていたはずの客が起き上がり、巧く行ったなとお鶴に笑いかける。

小松と川村は、すぐに「ヒロセ質店」に侵入する。

記者クラブでは、残っていた記者たちがボクシングのテレビ中継などを観ていたが、そこに戻って来た菅(沢本忠雄)は、岡記者が一人で何かを熱心に書いているのを観て気にする。

自分が何か抜かれているのではないかと心配したのだ。

しかし、それは、妹から頼まれて書いている「闇拳銃」に関する週刊誌用の記事だと言う。

その頃、「ヒロセ質店」から走り出てきた小松と川村は、表に用意していた車に乗り込み逃走する。

その直後、後ろ手に縛られていた店の主人が飛び出してきて、「強盗だ!」と叫ぶ。

江東区要町3丁目で強盗事件が発生したことを知った警視庁司令部は、直ちに現場にパトカーを急行させるが、そのパトカーをやり過ごした小松と川村は、巧く行ったと喜んでいた。

「ひさご」の女将お近(相馬千恵子)は電話が鳴ったので受話器を取り、村長さんへと知らせる。

村長は遠藤に電話に出るように頼み、受話器を受け取った遠藤は本部からの連絡に緊張する。

しかし、周囲にはデスク連中が集まっているので、村長に連絡しにくかったが、仕方がないと村長に言われたので、要町で強盗事件発生ですと伝える。

村長は警視庁に向かい、相沢も記者クラブから電話が入ったので、色々指示を出す。

川村たちが奪った金は4万4千円だったが、これでは足りない。もう一軒やらないかと相談し合っていた。

屋台では、お鶴の娘のよう子が一升瓶を持ってきていた。

よう子は、今日も又、眠っている客に気づくが、お鶴は早く帰るよう促す。

よう子が帰ると、眠っていた客が起き、1日で良いからよう子を貸してくれと頼むが、お鶴は、冗談じゃない。あの子には父親は死んだと言ってあるんだ。今さら、人殺しの子だなんて言えるかい!と気色ばむのだった。

その頃、小松と川村は、まだ開いていた古谷質店を発見する。

その店内では、古参の古川刑事(小泉郁之助)が主人に、今日発生した拳銃強盗に気をつけるように注意しに来ていたが、そこに顔にハンカチで覆面をした小松と川村が裏から入ってきて、拳銃を突きつけながら金を出せと迫る。

古川は、言うことを聞きなさいと主人を説得し、主人は仕方なく金庫を差し出す。

小松らが、その金庫から現金を抜き出していたとき、突然古川刑事が飛びかかってきたので、刑事と悟った二人は、その場で銃を発砲する。

表に逃げ出した所で、通りかかった学生に、強盗だ!捕まえてくれと、瀕死の古川警部が追って出てきたので、学生は二人を捕まえようとするが、やはり銃で撃たれてしまう。

記者クラブでは、鼻をぐずつかせている菅(沢本忠雄)に風邪か?と心配しながらも、拳銃って、そんなに簡単に手に入るものか?とデスク連中が話し合っていた。

そこに電話が入り、受話器を取った菅は、二件目がやられたとみんなに知らせる。

日報のデスクでは、伊那からの電話を受けた相沢が、一人即死、学生が一人が重傷と聞かされる。

早速、山崎と菅が現場に急行する事にするが、相沢は風邪気味の菅に、風邪薬「ルピット」を手渡す。

他社デスクから、殺された古川刑事と言うのは八田さんの友達の老刑事だと聞かされた相沢は声を失う。

山崎たちが現場に到着すると、逃げ去る車のナンバーを観たと言う風呂帰りの女が「は-2913」と言うナンバーを記者や刑事たちに教える。

質屋の中から銃弾も見つかり、32口径の拳銃が凶器だと判明する。

その頃、歩道橋の上に逃げてきていた小松は川村に、何故撃った?と責めていた。

川村は、あの女を殺せば俺たちは安全だ。借りた車もあいつのものだと言い、小松に、今度はお前の番だとばかり拳銃を渡す。

しかし、小松はどうしてもできないと拒否する。

二人は、その拳銃を持って屋台に戻ってくる。

二人は、人を殺してしまったと言いながらお鶴に銃を向けるが、驚きながらもお鶴は、自分にはボスがいるんだと虚勢を張り、それまで寝ていた客が二人の前に立ち上がる。

小松は引き金に手をかけるが弾が出ない。

客は、最初から弾は三発しか入れていないんだと言い、お鶴に、指紋がついているからエプロンを使ってその拳銃を受け取れと命じる。

料金を払えと言われた二人が、奪ってきた金を取り出し、1万円出そうとすると、横にいた客がその札束を全部横取りしてしまい、二人には、小遣いとして1枚だけ紙幣を返す。

今日は、木賃宿にでも泊まれ。お前らのデカ殺しの証拠はこっちが握っているんだから言うことを聞けと迫る。

その頃、病院では、重傷を負った大学生の手術が行われていた。

患者はB型なので、一人輸血をさせて欲しいと看護婦が頼むと、すぐに菅が手を挙げるが、他の記者たちが、お前は風邪を引いているんだからダメだろうと口を挟み、結局、島津(天野研)が輸血を協力すると言うことで病室に入ることが許される。

記者クラブでは、学生の身元が分からないらしい。上着に、橋本と言う名前があるだけなんだと話し合っていた。

その頃、病院にいた捜査一課長に村長が、今回使用された拳銃は、向島の若妻殺しで使用されたのと同じもので、その時の犯人は50くらいの男だったと報告していた。

その報告を、輸血を終え、まだ病室内にいた島津がカーテン越しに聞いていた。

その殺しで10年ムショに入っていた男は、屋台にいた小松と川村に、明日の晩9時に又ここへ来いと命じていた。

そのボスは、お鶴に1万円札を渡そうとしたので、飲み代は980円だよとお鶴が断ると、分け前だ。お前だって拳銃屋の手先なんだと笑いかける。

ガンちゃんたちは、取材先からクラブに戻ってくるが、そこには徹夜の為に、浦瀬が食堂を叩き起こして作らせたおにぎりが用意されていたので、ガンちゃんは喜んでいくつも手に取って食べ始めるが、他の人の分が足りるか心配だと言う浦瀬から又叱られてしまう。

そんな中、甥の結婚式に出席していた八田から電話がかかるが、こちらは心配いらないから、ゆっくりして来いと安心させ、とりあえず、全員仮眠を取ることにする。

翌朝、ガンちゃんの花嫁になる光子(葵真木子)がクラブに来て、お茶汲みなど手伝ってくれていた。

朝刊をチェックし始めた浦瀬は、毎朝だけが「拳銃に前がある」のを抜いていたのを発見、まだ眠りこけていたガンちゃんを怒鳴り起こす。

その記事は、島津が拾ったのだと判明する。

その時、共盟通信のデスク(二木草之助)に信濃町の販売店から、撃たれた橋本と言う学生はうちの販売員ではないかとの知らせが入る。

共盟の岡記者が、そっとクラブ室を出て行ったのに気づいたガンちゃんは、そっと自分も部屋を抜け出す。

その頃、木賃宿に泊まっていた川村の元に、朝食を買って戻って来た小松が、あの拳銃には前が会ったらしいと朝刊に載っていた記事のことを教える。

ビビった二人は高飛びしようと相談し合うが先立つものがない。

その時、すぐ横のベッドの上から声をかけて来たのは、屋台にいたボスだった。

お前たちだけを二人きりにさせると危ないので、真夜中からここで見張っていたのだと言う。

ボスは、向島の事件をやったのは俺だと告白する。

信濃町の販売店にやって来た共盟の岡記者に、店主は、橋本は千葉に住んでいる母親と二人暮らしの苦学生だと教えていたが、気がつくと、ガンちゃんが付いてきていたことに岡は気づく。

警視庁では、捜査一課長と村長たちが、橋本の母親は、とりあえず小岩霊園まで千葉県警に送ってもらい、そこでこちらに受け継ごうと計画し合っていた。

小岩霊園には、捜査一課長、村長、そして岡とガンちゃんが来ていたが、どこで嗅ぎ付けたのか、東京日報の伊那たちも全員駆けつけてくる。

そこへ、千葉県警のパトカーに乗った橋本の母親が到着し、警視庁のパトカーに乗り換えたので、記者たちは、その間、写真を撮りまくるのだった。

その母親は、ヤクザな父親から逃げ、行商をしながら息子を育てたのだと分かる。

記者クラブでその話を聞いていた光子は、そんな人の息子を撃つなんて許せませんわと憤るのだった。

よう子が買い物から帰ってくると、母親のお鶴がうかない顔で待っていた。

頭が痛く食欲もないと言うお鶴の言葉を聞いたよう子は、おかゆを作ってやると言いながら、準備を始める。

その娘の優しさを喜びながらも、新聞を読んでいたお鶴は、そこに書かれていた大学生橋本と母親の記事を読んで衝撃を受ける。

急に出かけると言い出したお鶴は、心配するよう子を残して、家を出る。

大崎警察署では、一課長と村長が集まった記者連中に色々判明していることを教えていたが、一応モンタージュも作ってみたと言いながら取り出して見せていた。

しかし、二人とも覆面をしていたため、顔半分しかはっきりせず、使い物にはなりそうになかった。

その頃、お鶴は、橋本母子がいる三輪病院の前に来ていた。

見舞客と思った刑事が、橋本の部屋に案内すると、中にいた母親は、見知らぬ見舞客に戸惑ったようだった。

お鶴の方も何も言い出せず、あの…、私…、すみません!お大事にと言い残し、見舞い品を置いてさっさと帰ってしまうのだった。

母親が戻って来るまで、屋台の店番をよう子がしていると、そこに菅やガンちゃんが入ってきておでんを注文しようとする。

11歳だと言うよう子から、もうすぐお母さんが戻って来て煮るからと聞いたガンちゃんは、それじゃあ間に合わないよと文句を言い、自分だけ屋台を後にする。

そこにお鶴が戻って来て、よう子を帰すと準備を始めるが、残っていた菅たちは、未だ意識が戻らない大学生の話をし始める。

その話を聞いていたお鶴は、突然、旦那、自首すれば、罪は軽くなるんでしょうか?と聞いてくる。

菅たちは何事かと驚くが、お鶴が、拳銃を貸したのは私ですと告白すると、すぐに同行を求めるのだった。

村長はお鶴から事情を聞くことにする。

夫とは10年前に別れたと話したお鶴は、村長から見せられたモンタージュ写真の二枚を、小松と川村だと教える。

しかし、村長から、元の亭主の名前は?と聞かれると、もし捕まって、それをよう子が知ったら…と案じながらも、最後には、大牟田源吉です。今夜9時、又店に来るんですと教える。

直ちに、鑑識課手口係で前科がないかどうか調査し、3人の身元が判明する。

大牟田源吉は前科4犯だった。

一課長は、相沢を呼び出し、事情を話す。

相沢は、菅ちゃんには泣いてもらいましょうと答え、不承不承承知する。

東京日報の部屋に張り切って戻って来た菅は、自分が書いた記事を相沢キャップに手渡すが、キャップは、この原稿は載せられない。一課長と相談したんだ。真実を伝えて、罪もない少女を傷つけて良いのだろうか?と説得する。

愕然とする菅だったが、新聞は人間の為にあるのであって、新聞の為に人間があるんじゃないんだと説き伏せられると、今度は握りつぶされないような記事を取ってきますと言い残して部屋を飛び出して行く。

その頃、川村は小松に、あの二人を一緒にやっつけてしまおうと、屋台に向かいながら相談していた。

しかし、次の瞬間、二人は待ち構えていた刑事たちにあっという間に逮捕されてしまう。

いつもの売春婦が、今日はしけているから早く店を閉めた方が良いよとお鶴に言い残して立ち去った後、屋台に一人残っていた客を装った村長は、お鶴に、逮捕の合図は口笛だから、それが聞こえたら身を隠すようにと最後の打ち合わせをして、出て行く。

屋台の近くの物陰には、各社の記者たちが全員集結していた。

ガンちゃんなどは、防弾チョッキを着て用意周到振りを自慢していた。

そこに、何も知らない大牟田源吉が屋台に入ってくる。

あの二人はまだかと、お鶴に聞く源吉は、何も気づいていなかった。

その時、遠藤刑事が屋台に近づきながら口笛を吹き始める。

それを聞いたお鶴は、思わず源吉に顔を近づけると、お前さん、逃げておくれ!と告げる。

それを聞いた源吉は、すぐに屋台を飛び出すと、ちくしょう!指しやがったな!と叫びながら、拳銃を取り出しながら逃げ始める。

警官隊に向かって発砲を始めた源吉に、大牟田!無益な抵抗は止めろ!お前はすっかり包囲されているんだと警官の呼びかけがある。

しかし、往生際が悪い源吉は、何とか逃げ延びようと、陸橋を渡るが、降りる時に足を滑らせ階段から転がり落ちたとき、拳銃を落としてしまう。

暗がりで、拳銃を手探りしているうちに、駆けつけた警官によって身柄を確保されてしまう。

屋台に駆け込んだ菅は、おばさん、大学生は助かります!と報告し、騒ぎを聞きつけてやってきたよう子も、今、殺人犯がそこで捕まったよ。怖いわと言いながらお鶴と抱き合う。

記者クラブの東京日報の部屋に戻って来た菅は、僕が間違っていましたと相沢キャップに謝り、お鶴はどうなるんでしょう?と心配する。

相沢は、罪は免れないだろうけど、法律だって人間の為にあるんであって、法律の為に人間があるんじゃないからねと励ます。

それを聞いた菅は、僕もあれが記事にならなくて良かったと思いますよ…と、考え深げにつぶやくのだった。

各新聞社では、強盗事件解決の記事を載せた新聞記事が、今正に刷り出されている所だった。