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東海道篭抜け珍道中

1960年、宝塚映画、北谷隆夫原案+脚本、竹前重吉監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

北畠藩年譜

大 院正重様御時世

文政6年

大変あり

御世継ぎのこと、これあり…

馬が城下町を走り抜ける。

篭かきの寅松(渡辺篤)と菊次(山田周平)は、このところ毎日のように早馬が走っていると言うことは、江戸屋敷の殿さまの病気が思わしくないらしい。若様はまだ幼いのに…と噂し合う。

城代、貝原六太夫(内田朝雄)は、この機に乗じて、若君万之助様を亡き者にしようと画策していた。

お方の貝原お梅(千原万紀子)は千葉五十鈴(野辺小百合)を座敷に招くと、奥方様の御子である万之助に対し、自分のようなものの子である武丸などが御世継ぎになることはないと愚痴をこぼしていた。

五十鈴は、御城代様のお力を持ってもダメでしょうかなどと話を合わせていたが、その時、渡辺右膳(江並隆)が顔を見せたので自分は辞去することにする。

右膳はお梅に近づくと、五十鈴をうまく手名付けましたななどと囁き、富田兵部の命により、万之助が江戸に向かうので、その道中で片付けることにする。これで武丸も大丈夫だろうと我が子を呼び捨てにしたので、お梅はしっと黙らせる。

しかし、この二人の密談は、となりの部屋に残っていた五十鈴が、ふすま越しにしっかり盗み聞いていた。

五十鈴は、城代の動きにかねてより警戒していたのだった。

宿「井筒屋」の前で、辰んべこと半造(安達国晴)と半んここと半助(楠義孝)が担ぐ籠を降りたのは、一つの籠に二人乗りをしていた久兵衛(夢路いとし)と平兵衛(喜味こいし)だった。

宿に入りかけた久兵衛は、ちょうど道を通りかかった年増の姿に見惚れるが、平兵衛に促され、宿の中に入る。

その年増女またかのお仙(北川町子)は、相棒の伝九郎(三木のり平)に会うと、カモだよと耳打ちし、先ほどの二人に続いて井筒屋に客として入って行く。

飲み屋「だるま屋」に昼間から入って来たのは、看板娘のお光(環三千世)目当てで通い詰めている篭かきの辰んべと半んこコンビだった。

二人は、まだ明るいのにお銚子を一本頼むと、今、お光ちゃんがおいらに笑った、否、おいらにだよと口喧嘩を始める。

夜、井筒屋の一室では、久兵衛がお仙相手に酒を飲んでいた。

そこに平兵衛も顔を見せるが、お仙が一緒に飲もうと誘うと、自分の部屋に置いて来た胴巻きを念のため持って来ると言い出す。

すると、お仙は、そんな心配はいらないよと、無理矢理、平兵衛を押し止めようとする。

それでも、やっぱり心配だからと平兵衛が部屋に戻ると、ちょうど胴巻きを盗もうとしていた伝九郎と鉢会い、捕まえようとした所に、お仙がやって来て、言葉巧みに邪魔をする。

伝九郎は逃げてしまったので、平兵衛は、自分を邪魔したお仙もグルだと気づき今度はお仙を捕まえようとするが、そこに久兵衛がやって来て、そんなはずがないと平兵衛を止めようとする。

しかし、そこに乗り込んで来たのが目明かしの文七(柳家金語楼)で、またかのお仙の顔を見るなり、又お前か…と言いながら、お縄をかけようとする。

ところが、久兵衛がぼーっとして、二人の間に身体を寄せて来たものだから、文七は間違って、久兵衛の手に縄をかけようとする。

その隙に逃げかかっていたお仙は、平兵衛や客たちに邪魔され、すぐに文七に引き立てられて行く。

それを見送る久兵衛は、まだ、自分がカモになったことを信じられない様子だった。

井筒屋を出てしばらく歩いた所で、お仙は身体をもじもじさせ、何事かを文七に耳打ちする。

それは仕方ないな…とつぶやいた文七は、綱を伸ばして、お仙を塀の暗がりの奥に送り込んでやる。

そして、これで報奨金が出るので、女房や子供たちを喜ばせてやれると捕らぬ狸の皮算用を始めるが、その様子を離れた所で監視していた伝九郎が、ドスを懐から抜いて、暗闇の中に入って行く。

小用にしては長いと感じた文七が紐を引っ張ってみると、その先には、狸の置物がくくり付けてあったので、又、逃げられた!と怒った文七は、置物を地面に叩き付け悔しがる。

すぐに、逃げる二人を見つけたので、後を追った文七だったが、出会った新内流し(夏目俊二)に、二人の男女を見かけなかったかと聞くと知らないと言うので、そのまま追って行く。

しかし、お仙と伝九郎は、その背後に隠れており、自分たちを逃がしてくれた新内流しにお仙は礼を言う。

番所に戻った文七は、同心から大目玉を食らう。

今回のことだけではなく、これまでにも下手人を逃がすへまが多過ぎたのだ。

お役御免で、十手を返せとまで言われた文七は、その場に跪き、何とか勘弁してくれと頼む。

同心は、お仙ともう一人の男を捕まえることだけが、お前が助かる道だと言い聞かせる。

「だるま屋」にやって来た大食いの勘てき(有木山太)は、すでに店内で飲んでいた篭かき仲間を見ながら、お光に飯を注文する。

おかずは何にする?と聞くお光が言う品物を、次々に、目の前の仲間が先に食っているのを見つけると、それを味見のようにつまみ食いをして行き、自分は飯と茶だけで良いと言い出す。

お光が、寅松ら篭かき連中に愛想を振りまき酌を始めた所に、入って来たのが、やはり、お光が目当てらしい聖天の熊三(男城輝)親分と子分二人。

子分たちは、横柄な態度で酒を注文すると、安酒を飲んでいる篭かき連中を露骨にバカにし、篭かき連中が怒ろうとすると刀を抜いて脅して来る。

熊三がお光の手を掴んだとき、店に入って来たのが新内流しで、あっという間に熊三の手をひねると、子分たち共々店からたたき出してしまう。

その頃、五十鈴は、富田兵部(松本徳二)の屋敷にやって来ると、貝原六太夫や渡辺右膳が、明後日、江戸の出立することになった万之助様を、道中暗殺する計画を立てているらしきことを報告していた。

兵部は、その場で一緒に話を聞いていた娘の浪路(高千穂佑子)に、これから江戸へ発ち、千葉三左衛門様に会い、手を貸してもらえと頼むのだった。

一方、貝原六太夫の方は、渡辺右膳から、千葉三左衛門がすでに、萩銀之助なる人物を出国させたと言う知らせを聞き、おそらく、富田兵部が千葉へ使いを出したのだろう、斬ってしまえと命じていた。

翌日、再び「だるま屋」にやって来た聖天の熊三と子分たちは、昨年、見せが火事になったと聞かしてやった20両を返せ、さもないと、お光を代わりにかわいがってやろうと、父親とお光を脅し付けていた。

それを表で盗み聞いていた辰んべと半んこは、何とかしてやりたかったが、とても金など用立てできなかった。

そんな二人に、足りない金を用立てしてやろうか?と話しかけて来たのが、夕べ助けてくれた新内流しの銀七だった。

その直後、店に入って来た辰んべと半んこは、何事かと怪訝そうだった熊三たちに、今、銀八からもらった20両の小判を叩き付けて渡す。

溜飲を下げた二人は、近くの川で釣り竿を垂らしていた銀八に会いに行くと礼を言い、今後、旦那の為なら、空天竺までだって行ってみせますと啖呵を切る。

すると、なら江戸まで付き合ってもらおうかと銀八が言い出したので、辰んべと半んこは唖然としてしまう。

今、唐天竺まで行くと言ったではないかと追求されると、それは言葉のあやで…と尻込みする。

すると、銀八は、江戸まで行ってくれたら、お光への土産物に加え10両ずつ払うと言ったらどうすると言い出す。

「だるま屋」に集結した篭かきたちは、改めて、銀八の依頼を検討していた。

寅松と菊次は話に乗ると言う。

留ッコこと留吉(渋谷辰雄)と片吉()も乗ると言う。

勘てきこと勘助(有木山太)が、もう少しはずんでもらえないか?と銀八にねだっていると、助三を連れて女房が乗り込んで来て、うちの人も連れて行ってくれと頼み込む。

安っぺこと安三(早崎文司)は、危ないことありまへんやろな?と臆病風を吹かせるが、結局、その場にいた全員が、この話に乗ることにし、その場で手を締める。

いよいよ、万之助が向かうことになり、渡辺右膳や五十鈴も同行する。

その背後から、銀八率いる篭かきが7丁付いて行くことになる。

寅松は、どうせ篭には誰も乗せていないんだから乗ってくれと、一緒に歩いていた銀八に勧めるが、銀八は、その内、嫌でも乗せてもらいてえものがあるんだと言って断る。

その万之助一行と空の篭かきの行列を、次の宿場の宿「辰己屋」の二階から興味深そうに眺めていたお仙と伝九郎だったが、誰かを見つけたらしいお仙は、急に嬉しそうな表情になると部屋を飛び出して行く。

五十鈴に連れられ本陣に入る万之助の様子をそれとなく監視していた銀八に近づいて声をかけようとしたお仙だったが、あの目明しの文七が近づいて来たので、その場は宿に戻ることにする。

そして、辰己屋の従業員佐助(佐々十郎)と茶吉(茶川一郎)に、嫌らしい親父が付けて来ているので何とか追い払ってくれと頼む。

宿場の宿を一軒一軒訪ねて歩いていた文七は、辰己屋に来て、女と男の二人連れが泊まっていないかと聞くが、お仙に言い含められていた佐助と茶吉は、文七を追い出そうとする。

文七は、自分は目明しで奴らは泥棒なんだと説明するが、その時、泥棒!と叫ぶ声がして、逃げる男女が見えたので、すぐさま文七は後を追い、途中で転んだ女の方を捕まえる。

ところが、それは全くの別人だったので、手を離して逃がしてしまった文七だったが、そこに被害者の男がやって来て文句を言う。

文七は、今のは俺が追っかけている泥棒じゃなく偽者だったからなどと説明して去って行く。

佐助と茶吉もやって来て、被害者の男から事情を聞こうとするが、今の目明しが、本当の泥棒を噓の泥棒と言って逃がしてしまったなどとややこしい言い方をするので、頭が混乱してしまう。

その夜、銀八は、新内流しの振りをして本陣の裏口から中に入ろうとしていたが、そこに声をかけたのがお仙だった。

こんな内職があったのかい?本陣の中に新内など聞く人はいないよねと聞くお仙に、バレちゃ仕方がない。いかにもあっしは盗人だと銀八が開き直ると、盗人なら、こっちが本職だよとお仙は笑う。

本陣の中にいた五十鈴は、突如、現れたお仙から、萩銀之助様って知っている?と声をかけられる。

知っていると言うと、手紙を預かって来たけど、惚れた男の恋文を人に渡すほどおせっかいでもないと言いながら、お仙は帰ろうとする。

五十鈴は、恋文じゃない。噓だと思うなら、その場で中を読んでみてくれと言うので、お仙は諦めて、その手紙を五十鈴に渡すと、外に人の気配を感じたらしく、泥棒と大声を出してくれと言う。

五十鈴がその言葉に従い、泥棒!盗賊でございますと声を上げると、集まって来た侍たちの隙を見て裏口から逃げ出したお仙は、待ち受けていた銀八と共に、闇の中に姿をくらませてしまう。

追って来た侍たちを、橋の下でやり過ごしたお仙だったが、怖いと言いながら、銀八にしなだれかかるのだった。

賊が侵入したことを、渡辺右膳に報告した五十鈴だったが、その五十鈴が部屋を出た後、右膳は家臣の片平を呼ぶと、五十鈴の監視を命じる。

自分の部屋に戻り、手紙を読み出した五十鈴だったが、その部屋の障子の外には、片平が身を潜めて、中の様子をうかがっていた。

辰己屋に戻って来たお仙は、カモを見つけたので仕事に取りかかろうと言う伝九郎に、私ゃもう辞めたよ。盗人家業から足を洗うよ。伝さん、お別れしようと突然言い出したので、伝九郎は、姉御、男に惚れたね?相手はあの新内流しだなと言い当てる。

翌日、万之助一行は出立するが、すっかり安心した表情をしている五十鈴の顔を馬上から見ていた渡辺右膳は、片平を呼び寄せると、手紙を探れと命じる。

一方、同じく道中で別れたお仙に呆れた伝九郎は、「不真面目だな〜」と落胆するのだった。

その日の本陣で、万之助を入浴させていた五十鈴だったが、その脱衣所に忍び込んだ片平は、五十鈴が脱いでいた着物の中から手紙を見つけ出し、中をそっと改めた後、「敵の道中は危険 今夜迎えに来る 萩銀之助」と書かれていた内容を渡辺右膳に報告していた。

それを聞いた右膳は、万之助を渡してやろう。腰抜けの腰元が男と逃げ出し、山賊に斬られたとしても知ったことではないと言い出す。

その夜、外から聞こえて来る新内の三味線の音色に気づいた五十鈴は、寝ていた万之助を起こし、逃げ出す準備をする。

ふすまを開けたのは、銀八の命で忍び込んで来たお仙だった。

お仙の先導で、五十鈴と万之助は裏庭から逃げ出そうとするが、右膳の手下たちも、その様子を庭の物陰から監視していた。

本陣の裏口付近には、銀八と籠かきたちが集結しており、五十鈴と万之助がお仙に連れられて外に出て来ると、一斉にバラバラの方向に向けて走り出す。

後を追おうとした侍たちは、どの篭に万之助が乗ったのか分からず、皆手分けして追うが、やっと篭を見つけたかと思うと、中はもぬけの殻だったりする。

その近くの木の上には寅松と菊次が登っており、笑いながら下の様子を観ていた。

結局、篭かき作戦に引っかかり、万之助を見失ったことを知った右膳は、手下たちを叱りつけていた。

とあるお堂の側に集まっていた篭かき連中だったが、そんな中、大食いの勘てきだけが握り飯を食っていた。

今や、万之助は汚い農民の着物を着て顔も汚され、どう見ても若様には見えなかった。

さらに、お堂の中からは、若様に変装させられた見知らぬ子供が、お仙と五十鈴を従えて出て来る。

銀八が考えた替え玉作戦だった。

翌日、右膳らの検問箇所に近づいた篭かきは、素直にお調べに従う振りをして、この中の人は怪しい人ではありませんなどと言いながら、ちらり、覆いをめくってみせると、中に乗っていた贅沢な着物の下の部分が見えたので、侍たちは、若様だ!と興奮し、逃げ出したその篭を全員で追って行く。

その様子を、少し離れた所から観察していた銀八は、待ち受けていた他の篭たち全員に出発させる。

逃げた篭を追っていた右膳は、今の取り調べ場所を次々と通過して反対方向に逃げて行く多数の篭を発見、すぎに手分けして、あちらも追えと命じる。

最初に逃げた篭は、やがて崖に突き当たり立ち往生するが、乗っていた偽若様が勝手に篭を飛び出し、崖を駆け下りて河原に逃げて行ったので、篭かきも追っ手も、同じように河原まで追って来る。

やがて、若様を追いつめた侍が、斬り殺そうと刀を振りかざすと、偽若様が泣き出したので、侍たちはようやく偽者だと気づく。

一方、本物の万之助を乗せた駕篭を引き連れて進んでいた銀八だったが、いくつかの篭が、途中で道を間違えて二手に別れてしまう。

万之助を乗せた寅松と菊次の駕篭も道に迷っていた。

結局、偽若様として子供を借りた大家族の農家にやって来るが、篭を降りた万之助は、農家の子供たちが食べていた食事を見て指をくわえる。

一緒に同行していたお仙は、子供たちの両親に頼み事をする。

そこに追っ手の侍たちが来るが、寅松たちと空の篭、そして農家から飛び出して来た大勢の子供たちを見て、若様はここにはいないと判断、去って行く。

実は、その子供たちの中に万之助も紛れていたのだが、汚い扮装をしていたので誰も気づかなかったのだ。

銀八やお仙は、トンボ採りをして農家の子供と一緒にかけていた万之助を連れて行こうとするが、万之助は遊びに夢中になっており、旅を続けるのを嫌がる。

それを観ていた寅松は、良いなあ〜…、子供に若様も農民もない。俺たちも子供時代を思い出すぜと、菊次と二人で感傷的になるのだった。

その頃、江戸の北畠藩下屋敷にやって来た富田浪路は、千葉三左衛門に父親富田兵部から預かって来た手紙を渡していた。

それを読んだ千葉に、おじ様、どうか、お出迎えの人数を増やして下さいと頼む浪路。

千葉は承知し、大勢の家臣たちが屋敷を出発する。

一方、万之助が乗った駕篭と一緒に旅を続けていた銀八にぶつかって来た男がいた。

それは伝九郎だったので、同行していたお仙は、何か盗まれませんでしたか?と聞くと、銀八は何か置いて行ったぜと言いながら懐から紙片を取り出すと、宇津谷峠にご用心と書かれていたと教える。

それを知ったお仙は、遠ざかって行く伝九郎に、伝さん、ありがとう!と感謝する。

ところが、その伝九郎が駈け戻って来るではないか。

あの伝七が追って来たのだった。

伝九郎は、俺は関係ないよとこぼしながら、今来た道を戻って行く。

やがて、宇津谷峠にさしかかったので、お仙が一人先行し、様子を見て来ることにする。

お仙は、前方から、太鼓を叩いてやって来る行者の一行だけしか見えなかったので、背後で待機していた銀八に合図をする。

銀八は、篭かきたちに出発を命ずる。

行者たちとすれ違っていた時、突然、太鼓を放り投げた行者たちは、隠し持った刀を振りかざして、篭かきたちを襲撃して来る。

篭かきたちは応戦し、駕篭に乗っていた万之助を抱いて逃げ出そうとするが、侍たちと奪い合いになる。

宿場で待ち受けていた右膳は、行者に化けた片平と落ち合い守備を聞くが、まだ万太郎は見つかっていなかった。

その頃、万太郎は、辰んべと半んこによって無事守り抜かれていた。

万太郎は、鬼ごっこにかくれんぼ、今度は何をして遊ぶんだ?と無邪気なことを言う。

辰んべが、山の中で、誰かいるらしいあばら屋を発見、近づいてみると、バラバラになったと思っていた篭かき仲間が丁半博打をしているではないか。

安堵した二人が中に入ると、博打をしていた連中はあわててサイコロを隠そうとする。

それをめざとく見つけた万太郎は、双六をやっていたんだね?と聞き、思わず、丁半…と口走ってしまったも仁だから、万太郎は、丁半始めようと喜んでしまう。

辰んべと半んこが仲間たちに事情を聞くと、銀八らとは別れてしまい行方が分からないと言うので、篭かきたちは善後策を相談し、とにかく辰んべと半んこに万太郎を任せ、他のものたちは総出で銀八らを探しに行こうと言うことになる。

ところが、そんな中、勘てきだけが、家を出た所で腹痛を起こした苦しみ出し、又、家に戻って行く。

家の中で、万太郎を寝かしつけた所だった辰んべと半んこは戻って来た勘てきを不審がるが、勘てきは、銀八に会えなければ骨折り損のくたびれ儲けになる。俺は諦める。ここは一つ金儲けをしようじゃないかと言い出す。

何のことだと辰んべと半んこが聞くと、万太郎を売るのだと言う。

敵はあれだけ大掛かりに探しているのだから、差し出せば、50両、否、100両は出すぜと笑う勘てきに、辰んべと半んこは、怒っていきなり殴りつけたり足蹴にしたりする。

俺たちは確かに雲助だが、人の気持ちは持っていると言うのだった。

その頃、宿場町に銀八を探しに出て来ていた寅松と菊次は、行者姿の追っ手に見つかってしまい、菊次は左手を斬られてしまう。

しかし、駆けつけて来たおせんに助けられ、何とか、元の隠れ家に戻って治療をするが、直っても、もう篭かきはできないだろうと菊次は気落ちする。

江戸にいる娘と小商いでもするつもりだと寂しい夢を語るので、それを聞いた仲間たちも全員考え込んでしまう。

一人、二人と、藩に帰りたい、菊次の二の舞にはなりたくないと言い出すものが出て来る。

勘てきだけは、金をもらうまで俺は諦めねえと言い張る。

そんな皆の弱音を聞いていた寅松は、俺たち篭かきは、客をかごに乗せて目的地に連れて行くのが仕事だと説得する。

その時、「帰りたいものは帰って良い。約束通り、金は払うよ」と声がする。

銀八、五十鈴たちがこの隠れ家を見つけて来たのだった。

銀八が積んだ小判を前に考え込む篭かきたち。

勘てきだけが、小判を取ると帰ると言いながら出て行く。

翌朝、銀八たちと合流したお仙は、この先の箱根が危なそうだと知らせると、五十鈴とお仙が先行して出立する。

銀八と篭かきたちは、全員炭焼きの姿に変装し、炭俵を積んだ荷車を数台押して箱根音の山道を進み始める。

その頃、箱根の山中では、渡辺右膳が後から参加して来た聖天の熊三一家らと綿密に待ち伏せ作戦を練っていた。

炭焼きに化けしばらく進んでいた篭かきたち一行に、後ろから勘てきが追って来て何か言いかけたので、寅松は、何も言わなくて良い。俺たちゃ仲間だと言い、一緒に荷車を押させる。

案の定、途中で、渡辺右膳らが待ち構えて取り調べをしていたので、先頭を切っていた銀八は、自分たちは小田原の店に品物を届けに行く炭焼きですと丁寧に答え、その場を通り過ぎようとするが、一旦見逃したかに見えた右膳は、急に笑い出したかと思うと、手を見せてみろと言い出す。

銀八が手のひらを差し出してみせると、それが炭焼きの手か?とあざ笑った右膳は、刀を抜きながら、正直に言わないと中身改めをするぞと言い出す。

もはやこれまでと感じた銀八は、荷車に隠していた刀を取ると応戦し始める。

篭かきたちも、棒などで必死に抵抗する。

銀八は、一番後ろの荷車に積んでいた炭俵の一つを、篭かき二人に託す。

炭俵を抱えた二人の篭かきは、斬り合いを避け、その場を逃げ出すと、崖を転げ落ちる。

一緒に転がった炭俵を開けると、中から出て来たのは万之助だった。

そこに、お仙と五十鈴が駆け寄って来て若様と合流するが、崖下を警戒していた聖天の熊三一家が迫って来る。

それを崖の上から見た篭かきたちは、炭俵を積んだ荷車ごと崖下に突き落とす。

聖天の熊三一家は、落ちて来た炭俵や荷車の下敷きになり、集団は散り散りになる。

それを見下ろしていた篭かきたちは、これが本当の黒熊や!と嘲る。

その斬り合いに巻き込まれたのが、伝九郎とそれを追って来た目明しの伝七で、崖下でピンチになっているおせんを発見した伝九郎は、伝医師に協力させ、近くにあった荷車を落としてやる。

そして、文七さん、恩に着るよと礼を言った伝九郎は、すっかり気を良くして油断していた伝七から逃げる。

銀八が孤軍奮闘している所に逃げ込む伝九郎とそれを追う伝七が紛れ込み、現場は混乱。

隻眼の片吉が、万太郎を助けに来るが、五十鈴が逃げる途中で転んでしまう。

そこに迫り来る追っ手の一団。

万太郎を守るお仙、五十鈴らは崖に追いつめられてしまう。

二人の女は、懐剣で立ち向かい、銀八も参加して応戦するが、ようやくそこに、江戸表より千葉三左衛門が送った出迎え隊の一行が到着して加勢し始める。

形勢が逆転した銀八は、斬り掛かって来た渡辺右膳を斬って捨てる。

江戸

一同正座し、とある屋敷の庭に勢揃いした篭かきと伝九郎が「面を上げい」の声で頭を上げると、障子を開いた奥から出て来たのは、裃に身を固めた銀八、実は萩銀之助その人であった。

篭かきたちは、その正体を知り愕然とするが、萩銀之助は、このたびの皆の功労を褒め、伝九郎には正業に付けと勧めると、聞いた全員破顔する。

その時、庭先に潜んでいた文七が伝九郎を捕まえようと出て来たので、ここを何処と心得る!と叱った銀之助は、もう良いではないかとなだめるが、こいつを捕まえないと御役ご免になってしまいますと文七が泣きつくと、目明しなど止めてしまえば良い。その代わり、今回の若君救出に協力した功労に報いるため捕り方取締を申し付けるがどうだ?と言うので、文七も大喜びする。

江戸からの帰り道、江戸に残った相方を思い出しながら寅松は、菊次のやつ、今頃どうしているかな?とつぶやいていたが、代わりの相棒が見つかったから良いかと自ら納得する。

その相棒とは、篭かきになった伝九郎だった。

走ることだけは自信があると伝九郎は言う。

辰んべと半んこは、故郷で待っているお光ちゃんのことを話しながら歩いていたが、その内、勘てきが、何となく歩きにくいと言い出す。

やはり、篭かきは篭を持ってないといけないと言うので、全員、篭を担ぐ振りをして歩き始める。

寅松も、伝九郎に一緒にやってみろと篭かきのポーズをさせてみるが、勘の悪い伝九郎の動きと全く合わず、先が思いやられるぜと寅松は愚痴る。

そんな中、二つの篭がすれ違い、先に乗った主人らしき男に嬉しそうに呼びかけるお光が通り過ぎて行くが、篭かきたちは誰もそれに気づかず、えっさ、ほいさと歩いて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

典型的な通俗時代劇だが、篭かきがメインになっていると言う着想が面白い。

特に誰が主人公と言うこともなく、篭かき全員が主人公なのだが、今でも顔が知られている俳優が渡辺篤以外にはほとんどいないので、印象に残りにくいのがちょっと残念。

キャストを見回した限り、三木のり平や柳家金語楼辺りが主人公のポジションのような気もするが、内容を観ると、二人は狂言回しですらなく、あくまでもゲスト的な扱い。

あえて主人公を捜すと、銀八こと萩銀之助を演じている夏目俊二だろう。

昔風のイケメンだが、特に人気俳優と言うほどでもないような気がする。

つまり、この作品は、当時の人気者をゲスト的な扱いで登場させ、大半は、あまり有名でない脇役タイプの人が固めている低予算発想作品と言うことだと思う。

女優陣も、自分が知っていたのは北川町子と環三千世くらいで、後は全く見覚えすらない人たち。

それだけに、あまり華はないが、何となく時間は潰せるタイプの通俗娯楽にはなっている。

悪の首謀者貝原六太夫こと内田朝雄の結末が不明だったり、のり平や金語楼があまり面白くないと言う不満点もないではないが、ものすごく若い夢路いとし、喜味こいしが観れたりする楽しさも味わえる。

クライマックスのチャンバラは、明るい音楽をバックに、銀八が何十人もの敵を一本の刀で延々と斬って行き、血などは一滴も流れないと言う、古い時代の東映パターン。

リアリズム発想で観ているとバカバカしいだけなのだが、当時のお約束の一つだったと思えば、そう言う表現も気軽に楽しめないでもない。