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最後の審判

1965年、東京映画、W・P・マッキーヴァーン原作、松山善三+池田一朗脚本、堀川弘通監督作品。

※この作品は、サスペンスミステリですので、オチがありますが、最期まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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羽田空港に立ちサングラス姿の男、金井次郎(仲代達矢)

今日2月3日は、彼の従兄弟に当たる小寺利一郎(須賀不二男)が、2年ぶりに、出張していたベトナムから帰国すると言うので、小寺の妻の正子(淡島千景)と共に、出迎えに来ていたのだった。

しかし、利一郎は、親の望む大学を出、美しい妻をもらい、その後も順風満帆な出世コースをひた走るエリートであったのに対し、次郎の方は、競馬のノミ屋をやりながら、パチンコ屋の二階のビリヤード屋のマスターを任されているしがない男に過ぎなかったので、正子や会社の偉いさん連中の出迎えに鷹揚に答えている利一郎の顔を離れた所から観察しながら、ずたずたに引き裂いて、犬でも食わしてやったら、さぞ…などと、物騒なことを考えていた。

しかし、サングラスを外した次郎は、造り笑顔になると利一郎の荷物を持ち、自分の車に乗せると、一足先に、利一郎夫婦の住まいである「芝パークハイツ」に向かう。

部屋に荷物を運び込んだ次郎は、利一郎と正子の寝室を開けて、ベッドルームを覗き込むと、何故かかんしゃくを起こす。

利一郎愛用のパイプをわざと吸い、くつろいでいた次郎だったが、窓から二人の乗った車が到着したのを観ると、慌てて、タバコをゴミ箱に捨て、煙も窓を開け、外へ追い出す。

ゴミ箱の中から煙が出ているのに気づくと、水をぶっかける慌てぶりだった。

部屋のドアを開け、二人を招き入れた次郎は、不機嫌そうな利一郎から、まだやってんのか?あの仕事?とノミ屋のことを当てこすられたり、正子に金を借りに来たそうだな?と嫌みを言われるが、ヘコヘコごまかすと、利一郎のご相伴に預かり、ビールを一緒にごちそうになる。

ビリヤード場奥の自室に戻って来た次郎が、ベッドに横になり、酒を飲んでいると、向井の喫茶店「白馬」のウエイトレス猿渡美代子(吉村実子)がやって来て、世話女房気取りで、身の回りの世話をし始める。

そこに、女店員のユリ(桧よしえ)が、賭け玉をしていると言いに来たので、次郎は、賭けビリヤードをやっていた学生たちに注意をする。

学生たちは反抗的だったが、警察を呼びましょうか?と次郎が笑いかけると、捨て台詞を残して帰って行くが、常連客たちは、良いとこ見せたねと次郎をからかう。

そこに、下のパチンコ屋の主人の浅井(三島雅夫)がやって来て話があると言う。

聞いてみると、浅井の妻が、もうこの仕事は心が疲れるから辞めて、田舎に帰りたいたいと言っており、店を売ろうと思うのだが、どこから嗅ぎ付けて来たのか、広池会の連中がどうしても買いたいと言って来たと言う。

どうやら、次郎にパチンコ屋を買ってもらいたい様子だったが、金などない次郎はあっさり断る。

下から一日中聞こえて来る「松の木小唄」はどうにかならないのか?と次郎が苛つくと、あれは家の女房!と浅井は笑いながら帰って行く。

勤務先である福田病院の眼科で診察をしていた正子に電話が入り、出てみると次郎で会いたくてたまらないと言う。

正子は困ると断るが、そんな正子の様子を、同じ眼科で治療中だった担当医上野(松村達雄)が興味深そうに視線を送っていた。

帰宅した正子は、家でも書類仕事を続けており、利一郎を苛つかせる。

今まで、家に仕事を持って来たことなどなかったので、自分が留守中に誰か来たのか?何かあったのか?と、急に他人行儀になった妻の態度の変化に気づき、しつこく聞いて来る。

そのとき、電話が鳴ったので利一郎が出るが、かけて来たのは次郎で、利一郎が出るとは予想をしていなかったのか、驚いて無言のまま切ってしまう。

翌日、次郎は、患者として正子に会いに来る。

正子は迷惑顔で、夕べ電話して来たのあなたでしょう?あれから大変だったのよ。どうしてあんなことしたの?と責めるが、次郎は会いたいので、6時に「ボン」で待っていると一方的に言い残して帰って行く。

喫茶店「ボン」で待っていた次郎は、雨の中、傘もささずにやって来た正子に気づくと、すぐに自分のアパートの連れて行き、そのまま抱き合う。

ことがすんだ正子は、早く帰らないと、又いじめられるわと身を起こす。

ある日、常連の一人、留さん(田中邦衛)らがビリヤードをしているとき、突然、強面の男が子分連れでやって来て、その場にいた次郎に、広池会の大原(加藤武)だと名乗る。

子分の一人が、パチンコ屋を買うらしいな?と絡んで来たので、誰がそんなことを言っているんです?と次郎が困惑すると、親父が言ったと言う。

そこに、常連のノミ客の山さん(矢野亘)が当たったと喜びながらやって来るが、場の雰囲気に気づき黙り込む。

大原は、次郎がそんな話は知らないと否定した言葉を一応聞き、その日は黙って帰って行く。

次郎は、利一郎に、6万円借りに行くが、猟銃をいじっていた利一郎からあっさり断られる。

利一郎が席を外したとき、何でここに来たの?仮名なら明日用立ててあげると正子は小声で叱責するが、次郎は愉快そうに、そのくらいの金は持っている。あいつのツラが何となく観たくなったんだと笑う。

その後、電話がかかって来たので、利一郎が出ると、それは上野医師からで、正子を呼んでくれと言う。

正子が出ると、毎フェアレディの切符があるので、一緒に行かないかと言う内容だった。

正子は断るが、後ろで様子をうかがっていた利一郎は、持っていた猟銃を正子の方に向けながら、この間の電話もあいつじゃないか?上野先生って、女癖が悪いそうじゃないかと疑り深いまなざしで睨みつけて来る。

正子は、急に頭痛がするので、今日はあなた一人で言って頂戴と言い出したので、利一郎は、僕一人だと、専務に失礼だと怒り出すが、正子は言うことを聞かなかった。

店に帰って来た次郎は、一階のパチンコ屋の浅井に会い、何で広池会に俺の名前を出したんだ?と詰め寄る。

それでも、浅井はへらへらしながら、1100万するこの店を、あんたにだったら900万で良いんだと持ちかけて来る。

そのとき、次郎は、店の外に立っていた正子の姿に気づき、慌てて外に飛び出すと、彼女を近くのホテルに連れて行く。

しかし、その様子を、美代子は窓からこっそり目撃していた。

抱き合った後、次郎は、結婚しよう!あんな奴、別れちゃえよと言い出すが、正子は、自分はあなたより年上であり、あの人は別れてくれないと言う。

いら立った次郎が、飛び出しちゃえよと勧めると、正子は、あなたのパチンコ屋の二階に?と笑い、バカにされたと感じた次郎はむくれる。

正子は、自分の金はある、あの人が私の為に貯めており、もう2000万以上あるはずだと言うと、急に、次郎の目の色が変わった。

ブラインドを開け、帰ると言い出した正子と別れ、店に戻って来た次郎の頭には、先ほど聞いた、浅井の店の値段の話と正子の金の話が渦巻いていた。

電気シェーバーでひげを剃りながら、店の外を眺めていた次郎は、下の通りを掃いている美代子の姿を見つける。

そのとき次郎は、そうだ!この女を使って…と、あるアイデアを思いつく。

福田病院の正子に電話をかけた次郎は、離婚できる手が見つかったので、5時に迎えに行くと知らせる。

その後、喫茶「白馬」に出かけた次郎は、美代子にデートを誘いかける。

美代子は喜び、今日は早番だから7時に終わると言うと、次郎は、7時10分前に迎えに来ると約束する。

その日の夕方、正子を車に乗せ、人気のない港にやって来た次郎は、あんたと上野先生が二人きりになっている所を利一郎に見せるのだと計画を打ち明ける。

正子は乗り気ではなく、家の人は何をするか分からないと心配するが、利一郎さんは乱暴なんかしない。そもそも、猟銃をやる人は気の小さい人が多いんだなどと説得し、上野先生とあんたが一緒にいても不自然ではなく、それを自然に利一郎が目撃する状況が何かないかと考え始める。

その後、今度は、美代子を誘って高級レストランに連れて来た次郎は、歯の浮くようなお世辞を良いながら、彼女をホテルに誘うと、男経験はないらしい彼女と寝る。

次郎と美代子が出来たらしいと言う噂は、すぐに留さんらが知ることになり、その日もビリヤード場にやって来た美代子と次郎をからかう。

そのとき、電話が鳴ったので、美代子が出ると、それは正子からだった。

次郎が電話を代わり、美代子がいる手前、適当に言葉を選びながら正子の報告を聞く。

正子は、これから上野先生と、リリー・クラウスの演奏会に行く所だと教える。

電話を切ると、美代子が今の人は誰?と聞いて来たので、競馬にのめり込んでいる人だと次郎はごまかす。

その夜、利一郎のマンションに金を借りる名目で出向いた次郎は、それとなく、正子のことを聞く。

利一郎が、正子から聞いた通り、病院の会合で出かけたと答えると、戸惑ったような表情をしてみせる。

それに気づいた利一郎は、一旦渡した金を取り上げ、何か知っているな?と問いかけて来る。

次郎は、いかにも困ったような表情で、実は、さっき都立劇場に入る正子さんを観かけたので…と、教える。

一人だったか?と猜疑心丸出しで聞いて来る利一郎に、次郎は、それは確かでしたと答え、自分がしゃべったと正子さんに言わないで下さいよと頭を下げながら、手にした金を持って帰って行く。

ある日、店の奥で、ノミ屋の電話を受けていた次郎の元に、突然、美代子が顔を出す。

そのとき、又、子分を連れた大原がやって来たので、美代子を帰らせた次郎が用向きを尋ねると、お前やっぱりパチンコ屋を買うそうじゃないかと子分が突っかかって来る。

すると次郎は、この際身を固め、ここを大衆食堂に改装しようと思っているのだと平然と言い出す。

それを黙って聞いていた大原は、きれいなことを言っているが、しょせんお前はヤクザだ。ショバ荒らしをしていると言い出す。

ノミ屋と言うのは、俺たちの仕事に入っていると言うのだ。

しかし、次郎は、確かに客から頼まれて馬券を買っているが、それは、自分が車を持っているからで、いわばサービスだとごまかす。

その後、美代子を連れ、競馬場に出かけると、自分も普通の競馬ファンの一人だと言うことを、付けて来た大原の子分に印象づける次郎だった。

その後、次郎と会った正子は、利一郎が一週間ほど雲仙に行こうと言い出したと教える。

それを聞いた次郎は、少し考え、行くんだ!これが、僕たちが待っていたチャンスなんだと言い出し、出かける前に、急用が出来たと言うんだと提案する。

しかし正子は、あの人は、そう言ったら、用事が済むまで待つと言うに違いないわと拒否する。

何か、あいつを乗せる手はないのか?と次郎がいら立つと、正子は、喜ばせる手が一つある。明日の朝には承知するわと言い出す。

次郎は、二人が九州に発つ日の夕方5時50分、羽田空港で福岡行きのチケットをカウンターで購入していた。

6時20分、マンションにいた正子は、利一郎がその日着て行くスーツから財布を抜くと、ベッドの下に放り込み、やって来た利一郎にスーツを着せる。

利一郎は、先に一人で車に乗り込み羽田に向かう。

その頃、空港内のバーに来ていた次郎は、カウンターに座り、航空チケットをさりげなくバーテンに見せながら、連れが来なくて困っている。今、6時45分だから、もう一時間も待たされているんだと愚痴をこぼしていた。

内心、次郎は、上手くいくと、これで20分ごまかせると計算していた。

その場から、正子に電話を入れた次郎は、部長の方は?と小声で聞く。

正子は、まだだと答えていたが、そのときチャイムの音が聞こえ、今来たと言う。

上野は、今、ご主人でかけましたな?ちょっとスリルがありますねなどと言いながら、正子に迎えられる。

次郎は、ちょっとロビーを探して来るから、ここに金井って誰か来たら、呼び出しをしてくれとバーテンにチップを渡し、店を出て行く。

そのとき、羽田に到着し、車を降りた利一郎は、内ポケットに財布が入っていないことに気づき、あわてて去りかけたハイヤーを呼び止めると、再びそれに乗り込んでマンションに戻る。

一方、空港の外に出た次郎は、車に乗り込もうとするが、駐車違反の呼び出し状がフロントガラスに置いてあるのに気づき、それをはぎ取ると、正子の待つマンションに向かう。

次郎は、20分で往復することが出来れば、自分は羽田にいたことになると計算していた。

マンションに戻った利一郎は、チャイムを押して、正子が出て来ると、財布を忘れたと言いながら、寝室に入ると、そこにいた上野と鉢合わせになる。

逆上した利一郎は、書斎の壁から猟銃を外すと、それに弾を込め始めたので、驚いた正子が止めようとすると、台尻で殴られ気を失ってしまう。

寝室に戻った利一郎は、呆然としていた上野に向かって猟銃を突きつけ、引き金に指をかける。

轟音が響いた!と思われたが、それは、外で工事をする杭打ち機の音だった。

利一郎は、引き金を引くことが出来ず、上野につかみかかると、その場で足蹴にし出す。

その後、利一郎はマンションの外に出るが、その様子を車から観ていた次郎は、こっそりマンションの部屋に入る。

観ると、寝室の上野は生きており、書斎では、正子が気絶したままだった。

外からは、絶え間なく、杭打ち機の音が聞こえていた。

寝室に向かった次郎は、落ちていた猟銃を拾い上げると、ためらうことなく、起き上がりかけた上野に銃を向け発砲する。

そして、指紋を拭き取ると、俺の勝ちだぜ、利一さん、これであんたもお終いだとほくそ笑む。

すぐに、部屋を出た次郎は、車を飛ばし羽田に向かう。

結局、飛行機に乗り損ねたとぼやきながらバーに戻って来た次郎は、そこからマンションに電話を入れる。

電話に出たのは警官だった。

すぐに電話を代わったのは、部屋を捜査中だった菊池刑事(伴淳三郎)だった。

次郎に、事故があったので、こっちに来て欲しいと頼んだ菊池刑事は、その場にいた正子に、旦那さん、九州に行ったと言っていたが、乗り遅れたらしいと教える。

正子から利一郎の服装を聞き出した刑事は、すぐに捜査かの主任に電話を入れ、容疑者の服として連絡を入れる。

捕まった利一郎は、菊池刑事らの尋問を受けることになるが、確かに猟銃は持ったが、自分は引き金を引いていないと否定するだけだった。

捜査課に菊池刑事らが戻って日野主任(永井智雄)に報告していると、外回りの刑事から、妻の正子と上野は全く関係なかったらしいが、ヤクザっぽい良い男と喫茶店で会っていたのを観た看護婦がいるらしいと報告が入る。

それは、夏の終わり頃だったらしい。

鑑識から電話を受けた日野主任は、小寺利一郎の服には、硝煙反応が見当たらないとの報告を受ける。

それを聞いた菊池刑事は、このヤマはどうもおかしい。猟銃の指紋はきれいに拭き取られていたが、小寺がそんなことする必要はないはずだと言う。

「芝パークハイツ殺人事件」と扇情的に書かれた新聞を買い求めた次郎は、マンションにいた正子に会いに行くと、これで確実に離婚が出来ると喜ぶ。

しかし、正子が、鑑識の人が服をたくさん持っていったと言い、硝煙反応を調べる為らしいと言うのを聞くと、表情が変わる。

次郎は、銃の発射ガスの痕跡が発射した者の服に残る硝煙反応を知らなかったのだ。

焦った次郎は、そそくさとその場を立ち去ると、ビリヤード屋の奥の部屋のタンスに、それまで来ていたコートを隠そうとする。

そのとき、突然、美代子が顔をのぞかせたので、肝をつぶした次郎だったが、すぐに気を取り直すが、美代子は、父親にあなたのことを話したので、一遍会ってくれる?と言う。

次郎は、ちょっと考え、不安がる美代子に笑顔を向けると、会って、きちんと話をするよと答えると、さりげなく、君んちの近くに良い洗濯屋はないか?と聞く。

正子に話を聞きに来た菊池刑事と同僚は、病院と言うのは、色んな人と出会える場所らしく、ご主人も治療に来て、先生と知り合われたようですね?と話を切り出すと、ご主人が2年間もベトナムに行っていらした間、恋人はいらっしゃらなかったのですかと切り込んで来る。

しかし、正子は平然と、そう言うセックス面に関しては興味ないとあけすけに答え、聞いた菊池刑事の方が慌てる。

その直後、8月26日午後3時頃、品川の「ヤマ」と言う喫茶店で会ったのは誰です?と問いつめる。

話を終え、帰りのエレベーターに乗り込んだ菊池刑事は、今名前が出た金井がホシなら、今頃、正子が電話をしており話を合わせているはずだから、脇から責めようと、同僚に告げる。

その頃、駐車違反の呼び出し状を眺めていた次郎は、そこに6時55分と自分で書き込み。これで、俺は、ずっと空港にいたことになるとほくそ笑んでいた。

その頃、羽田空港ないのバーにやって来た菊池刑事らは、バーテンから、当夜の次郎のアリバイを確認していた。

バーテンは、店を帰ったのが7時8分だったのは覚えていたが、来た時間ははっきりしないと悩んでいた。

すると、店のボーイが、あのとき、今、6時45分だから、1時間待ったと言っていたじゃないかと助け舟を出す。

それを思い出したバーテンは、店を一旦出てロビーに向かったのは、そのちょっと後の6時50分ですと答える。

後日、車を洗っていた次郎の所にやって来た菊池刑事と同僚は、話を聞きたいと切り出し、ビリヤード場に招かれる。

そこには、次郎の学生時代の写真などが貼られていたので感心してみせると、一度だけチャンピオンになったことがあると、まんざらでもなさそうに次郎は答える。

油断させた所で、菊池刑事は、ノミ屋をやっているだろう?小寺の細君から金を借りただろう?と動揺させるが、次郎は少しも動揺せず、夏の終わり頃、8月の末頃正子と会ったと自分から話す。

事件当夜のアリバイを聞かれると、5時半に羽田に着き、利一さんとはバーで会う約束だったが、来なかったので、6時50分頃、時計を観て店を出たと次郎は答え、引き出しにしまっていた駐車違反の呼び出し状を取り出してみせる。

金は返したのか?ともう一人の刑事が聞き、良い女だな。惚れたんだろ?と正子のことを追求すると、次郎はその場から「白馬」にコーヒーを三つ注文する。

若い刑事は、コーヒーなんかいらんと断るが、次郎はそのまま持って来させると、刑事たちには、カーテンの奥の部屋に移動してくれと頼む。

やがて、美代子がコーヒーを持って来たので、その場でキスをしながら、次郎は、自らカーテンを開けて、刑事にその姿を見せつける。

美代子は、人がいることに気づき恥ずかしがるが、刑事たちの方は、次郎の企みに気づき、苦虫をかみつぶしたような顔になる。

次郎は、僕たちが婚約したのを、承知してくれないんだと、刑事のことを当てこするように美代子に謝る。

まんまと次郎にはめられた結果となった菊池刑事たちは帰ろうとするが、その彼らに次郎は、利一さん、元気にしてます?と声をかける。

菊池刑事は、元気なはずないだろう!と返事する。

その直後、電話が鳴り、出てみると、山さんだった。

次郎は、いつものように賭けの対象を聞き始めるが、途中で相手が代わり、それが広池会の大原で、これでもうノミ屋をやっていることをとぼけられないなと言われると、相手の罠に引っかかったことに次郎は気づく。

山さんは大原らに捕まり、脅迫されてここへ電話して来たのだった。

そこに、先ほど帰った美代子が又戻って来て、お店にさっきの人たちが来た。あの人たち刑事でしょう?一体何をやったの?と心配げに聞いて来る。

何を聞かれたと次郎が聞くと、あんたに前に女がいなかったかどうかを聞かれたと答えた美代子は、自分は、新聞に出ていた容疑者の奥さんとあんたが会っているのを観たことがある。あんた、私に優しくなったの、あの事件のちょっと前からだったわね?と、鋭いまなざしで次郎を観ながら言い出す。

川崎のクリーング屋にわざわざコートを洗濯に出したのは、血でも付いていたんじゃないの?と責めて来る美代子に、思わず、ビンタをしてしまった次郎だったが、美代子は、結婚しよう。妻は夫に不利な証言はしなくても良いと本で読んだと迫る。

そこに、大原らが乗り込んで来る。

次郎は、美代子を帰らせると、大原から突きつけられた立ち退き承諾書に判を付けと言う脅しをきっぱりはねつける。

子分はドスを抜き、ビリヤード台のフェルトを切り裂いたので、かっとなった次郎は、やくざたちと乱闘を始める。

大原を階段から突き落とした次郎を、その場にいた客たちが必死に止める。

その夜、浅井がやって来て、なぜ奴らに逆らうようなまねをしたんだ。奴らは今外でうろついていると教える。

窓の外を見ると、誰もいないようだったが、浅いに教えられ、裏の窓の方を観ると、確かに、エンジンを吹かした車に乗った子分たちの姿が見えた。

轢き殺すつもりかもしれない、警察に連絡しようと怯える浅井を止めその場を帰らせた次郎は、自分が車に轢き殺されるイメージに襲われる。

そこに美代子がやって来て、今、大原が店に来て、あんたを呼んでいる。謝っちゃいなさいよと勧める。

次郎は、美代子も轢き殺されるイメージを思い浮かべるが、そのとき、どっちみち、この女は始末しなくちゃいけないんだと言うささやきがわき起こる。

窓から見える大原は捕まり、美代子は死ぬ…、こんな巧い話はなかった。

雨が降る中、次郎は美代子の手を取り、わざとヤクザの車が待つ裏口から逃げ出す。

案の定、ヤクザは車を発進させ、逃げる二人の背後に迫って来る。

次郎は必死に逃げる振りをし、途中で、美代子を道に押し倒す。

ヤクザの車は美代子を轢いた後、塀にぶつかり停まる。

予定通り、美代子は死亡し、妻と共にその死体を安置所に確認しに来た美代子の父親吉造(東野英治郎)は、こんな男と付き合うからこんな目に遭うんだ!叩き殺してやりてえや!とその場でうなだれていた次郎を罵倒する。

一人、ビリヤード場に戻って来た次郎は、電気も付けない部屋の中で、いつしか高笑いを始める。

そのとき電話がかかって来る。

正子からだった。

正子に会いに行った次郎は、彼女をベッドで抱くと、互いに愛を確認し、愛しているから上野を撃ったんだと突然告白する。

利一はダメだった。だから僕が撃ったんだ。確実に君を手にしたかった。それで今日も一人殺したよ、危ない女を。もう僕が捕まっても、君も共犯だ!別れられないんだ、二人は!と言いながら、又キスをするのだった。

後日、ビリヤード場を業者に修理させていた次郎の元に、菊池刑事らがやって来て、その場で逮捕状を差し出すと、次郎の手に手錠をかける。

警察の取調室に連れて来られた次郎に、菊池刑事は、上野が殺されたのは6時50分前後、この時間のあんたのアリバイはしっかりしていると言いながら、駐車違反の呼び出し状を取り出すと、警察では、ここに書き込んだ時間の控えも取っているんだと教える。

なぜ、駐車違反なんか出したんだ?と問いつめる菊池に、次郎は怖かったんです。ノミ屋をやってたからと殊勝に答える。

しかし、他に証拠はないんでしょう?と次郎が聞き返すと、若い刑事は部屋を出て行き、連れて来たのは、何と正子だった。

日野主任が、先ほどと同じ話をしてくれと頼むと、あの夜、自分は、夫の猟銃の台尻で殴られ気絶していたが、気がついて寝室の方を観ると、金井の背中が見えたと、次郎の目の前で平然と証言する。

正子が出て行くと、菊池刑事は、次郎が洗濯屋に出したコートを取り出し、お前のだな?空港のバーでも確認した。川崎のクリーニング屋をやっていた美代子の親父さんが持って来てくれたと話し、硝煙反応と言うのは洗ったくらいでは落ちないんだ。袖口の所にべっとり付いていたと明かす。

それを聞いていた次郎は突然笑い出し、やりました。僕一人でやりましたと告白する。

日野主任が、お前一人で出来るはずがない。正子も共犯だろう?と問いつめるが、次郎は頑として、一人でやったと繰り返すだけだった。

それを聞いていた菊池刑事は、普通、女に裏切られたホシは、女も巻き添えにするものだが…と、妙な感心をする。

そのとき、小寺がどうしても会いたい、生死に関わることだと言っていると刑事が知らせに来る。

何事かと、菊池刑事や日野主任が、手錠をかけた次郎を連れて利一郎の待つ部屋に来ると、利一郎は次郎に、本当に正子と出来ていたのか?共謀して俺を殺そうとしたのか?お前のような虫けらが、本当に正子と寝たのか?言ってくれ!と聞いて来る。

それを聞いていた次郎は、いつしか又、笑い出していた。利一郎の方を観ながら、何度も…

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

翻訳物の原作だけに、ストーリー自体はしっかりしている。

白黒の画面に、彫りの深い仲代達矢の美貌が写ると、まるで、アラン・ドロンの犯罪ものを観ているような錯覚さえ覚える。

対する淡島千景の方も、落ち着いたインテリ女性らしい仕草が板についており、安心して観ることが出来る展開となっている。

良くある「犯罪は割りにあわない」と言うパターンであるが、ラストのツイストは、ちょっと弱いかな?と言う気もしないでもない。

他に証拠はないでしょう?と次郎が聞いた後の展開が、薄々読める部分があるからだ。

こちらの読み誤りでなければ、美代子に頼んだクリーニング屋と言うのが、実は美代子の実家だったなどと言うのも、かなりご都合主義に思えなくもないが、全くあり得ない設定でもない。

「飢餓海峡」でもお馴染みの、伴淳のシリアスな老刑事も頼もしい。

吉村実子や須賀不二男の存在も大きい。

決して派手さはないサスペンスものだが、今観ても、その面白さは全く色あせていない秀作だと思う。