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お父さんはお人好し 家に五男七女あり

1958年、宝塚映画、長沖一原作、新井一脚色、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

小さな店で、焼き芋と果物を売っている藤本阿茶太郎(花菱アチャコ)は、画面に向かい、1ダースで何でも安くなると言うが、あれは噓でっせ。家には1ダース以上子供がおり、上の5人は何とか片付いたが、後はまだまだ苦労してます。普通ならわしなんか、焼き芋やの社長やと思うとります…と挨拶する。

タイトル

その日も、朝から、焼き芋の釜の前には子供たちが順番を待っており、果物台の上に並んだみかんを選り分けする主婦の相手もしなければならない阿茶太郎は目の回るような忙しさだったが、妻のちえ(浪花千栄子)を呼んでも、ちえは下の子供たち相手に食事を取らせている最中だった。

給仕の手伝いをしていた五女静子(夏亜矢子)は、食べ盛りで、何杯もお代わりする弟たちに呆れていた。

そこに、三男浜三(山田彰)が帰って来て、これから六甲に行くと言うので、それを聞いたちえは、手塚社長さんの所やないの、よろしく言うといてねと言い聞かす。

その会話を聞いていた六女品子(二木むつみ)と七女新子(竹野マリ)が、静子に、自分たちも宝塚公園に連れて行ってくれとせがみ出す。

そこに、今度は四女豊子(環三千世)が帰って来たので、品子と新子は、とよ子にどこかへ連れて行ってとせがみ出すが、そんな藤本家にやって来たのが、豊子の同僚のオカチンこと岡野(石田茂樹)だった。

四男沼吉(頭師正明)、五男横之助(鳥貝隆史)、品子、新子らは二階から、オカチンと豊子姉ちゃんの会話を興味深そうに覗き込んで聞いていた。

ちよが焼き芋を差し出すが、なかなか幼児を言い出せない内気なオカチンは、今日は土曜日なので、明日、どっかへ行きませんかと豊子を誘う。

豊子は行っても良いけど、妹たちも連れて行ってくれるかと頼む。

オカチンはそれを快諾するのだった。

翌日の日曜日、品子、新子、横之助は、オカチンの到着を未だ遅しと店の前で待っていた。

オカチンが到着していざ出発と言う時になって、豊子に電報が来る。

それを読んだ豊子は、富岡はんが来るとちよに教える。

ちよは阿茶太郎に、子供たちの電車賃を出させると、それをオカチンに渡し、豊子には急用ができたので、すまないが子供たちだけを連れて行ってくれないかと頼み込む。

人の良いオカチンが承知し、子供たちを連れて出かけると、富岡はんが、今朝の電車で来るので、豊子は出迎えに大阪駅に行くと阿茶太郎に説明する。

その頃、社長の手塚邸で、社長令嬢の眉子(安西郷子)と会っていた浜三は、ゲストでやって来た沖山(ウィリー沖山)が得意のヨーデルを歌うのに合わせ、踊っていたが、真由子は話があるので、後で門の所で待っていると話しかけて来る。

家で留守番をしていた静子は、富岡はんってハンサムやね。東京の健作義兄さんの所へ行った時、見合いで大げんかしたけど、良いもん拾ってきたねなどと、豊子の恋人のことを母のちよに論評して聞かす。

二階で豊子と会ってた富岡(太刀川洋一)は、騒々しいと聞いて来たが意外に静かですねと問いかけると、同席した阿茶太郎が、今、下の子供たちは遊園地へ行っており、上の坊主は山に行っているからと説明する。

その時、下にいた静子がオカチンたちが帰って来たと言うので、降りて子供たちを出迎えた阿茶太郎は、豊子に会いたがっていたオカチンに、つい早く帰れと言ってしまう。

静子が来客中と説明すると、オカチンは素直に帰る。

そんなオカチンを見送る阿茶太郎は、ちょっとぼさーっとしているけど、ええ男やなと感心するのだった。

その頃、六甲の手塚邸の門の側に来た浜三は、眉子から、両親が乗り気な相手と結婚して良いか?と聞かれ、自分には言う権利がない。自分は焼き芋屋の息子だし、眉ちゃんは社長令嬢や…と返事をし、眉子を怒らせてしまう。

豊岡と会ったことで、すっかり機嫌が良くなった豊子は、両親の手伝いなど進んでやるようになるが、その様子を見た阿茶太郎は、女と言うものは、家を出ることを喜びよる。何で育てて来たか分からんと嘆くのだった。

帰宅した浜三が、二階で寝転んだまま起きて来ないので、両親は、風邪でも引いたのか?と心配する。

そこに、静子が、浜兄ちゃんに速達やと持って来たので、受け取った豊子は、北野と書かれた差出人を見て首を傾げながらも、二階に持っていってやる。

それを受け取り手紙を読んだ浜三は、富岡さんを追って北海道まで行った豊子に意見を聞かせてくれと頼む。

手紙の内容は、眉子からのもので、今、白浜に来ているので来て頂戴。来てくれなかったら、私、死にますと言うものだったからだ。

豊子は、あんた、本当に眉子さんのことが好きなの?お嬢はんの恋愛遊戯に振り回されているだけじゃないの?遊ばれているんや。あんたがバカ見るだけやと忠告するが、姉さんは、自分のことは好き勝手にやるくせに、僕のことになると封建的になる。姉さんはエゴイストやと浜三から反論されてしまう。

そのまま、浜三は家を飛び出して行ってしまい、先ほどから階段の下で聞き耳を立てていたちえは、夜中になるまで、帰って来ない浜三のことを案じていた。

阿茶太郎は、布団の中で寝言を言っているような状態で相談相手にならず、ちえは家の外に出てみる。

すると、豊子も心配して顔をのぞかせたので、ちえは、心配はお母さん一人でたくさんや。あんたは寝なさいとなだめると、近所を探しに行く。

すると、間もなく、戻って来た浜三と出会ったので、ちえは、男は進む時と止まる時は、はっきりせんとあきまへん。本当に、手塚さんが好きなのなら、私と父さんが、先方に頭を下げに行きます。一時の興奮から逃げ出すようでは、なるものもならん。豊ちゃんなどは、好き勝手な事しているようでも、いつもちゃんと相談してくれた。あんたが相談してくれんと言うのは、心にやましいことがあるからやときつく叱ると、謝る浜三をなだめて一緒に家に帰るのだった。

ある日、リンゴの唄を歌いながら、売り物のリンゴを磨いていた阿茶太郎の元にやって来たオカチンは、先日、豊子さんから、お父さんが漬けものが好きと聞いたので、自分が漬けた漬け物を持って来たと樽を渡して帰って行く。

そこへ、自動車が乗り付け、中から降りて来たのは、手塚社長夫人(藤間紫)だった。

六甲の別荘からいなくなった眉子をどこに隠した?浜三は会社に来ていないし、眉子はこの春、結婚させることになっているのだと言うではないか。

今朝も普段通り、出社したと思い込んでいた阿茶太郎とおちえは驚くが、10人子供はいるが、恩人の娘さんを誘惑するような曲がった根性の子供はいまへんと阿茶太郎は啖呵を切る。

それを聞いた社長夫人は、渋々帰って行くが、それを見送ったおちえは、浜ちゃんは、白浜に行ったに違いないと阿茶太郎に教える。

そんな裏事情を知らなかった阿茶太郎は、怒り出す。

その頃、白浜海岸で、浜三は、一緒に死んでと迫る眉子に、駆け落ちや心中などするのがいかん。誰にも言えるような仲になるんやと諭していた。

その夜、藤本家では、両親や家族が、帰りの遅い浜三を待ち受けていた。

すっかり浜三を観損なった阿茶太郎は、勘当言うたる!と興奮していた。

そこに、又、オカチンがやって来たので、困った阿茶太郎は、あのこと言うたらどうや?と豊子に促す。

しかし、それを聞いたオカチンは、豊子さんの結婚のことですか?それなら僕は、薄々感じていました。今日は、品ちゃんと新ちゃんと約束したハイキングのことで来たんですと言うので、おちえは、今日は取り込み中なのでと恐縮し、オカチンも素直に帰って行く。

それを観ていた阿茶太郎は、気のええ男やな…と、又、感心するのだった。

わし、白浜まで行ってくるわと阿茶太郎が立ち上がりかけたとき、浜三が帰って来る。

その顔を観た阿茶太郎は、お父さんはお前を信用していたが、恥ずかしい。今頃、どのツラ下げて帰って来たんや!と叱り、おちえも、手塚さんの家に、お父さんと二人で謝りに行ったのよ。手塚さんと言えば、ご主人やないか!と諭す。

それを脇で聞いていた静子は、浜三兄さんが可哀想すぎる。あんまりやと泣き出し、豊子に連れられ二階に上がる。

沼吉と横之助は、大人たちの会話を興味深そうに聞き耳を立てていた。

そんな藤本家にやって来たのが、手塚社長(柳家金語楼)と夫人だった。

夫人が、浜三さんはいますか?と尋ねたので、阿茶太郎は、たった今、勘当しましたと答える。

すると、困った表情になった手塚社長は、私は謝りに来ました。浜三君には礼を言います。彼が眉子を説得して、家に連れて帰って来たんです。お母さん、あなたがよく言ってくれたお陰だ。今日の事件では、浜三君も被害者のようなものです。眉子に対する、金井のしつけが悪かったせいですと頭を下げる。

そして、改めて、出て来た浜三に対し、うちの眉子と結婚してくれないかと手塚社長は頼む。

浜三は、一つ条件があると言い出し、眉子さんから、社長令嬢と言う肩書きを取っていただきたいと頼む。

経済的援助をして欲しくないと言うことだねと了解した手塚社長は、自分も最初は、一介の職工から成り上がったのだと理解を示す。

横で、呆然と話を聞いていた阿茶太郎は、どうやら、話がうまい方向へ進みつつあると感じたので、売り物の焼き芋を手塚夫妻に手渡す。

社長夫婦は、渡された焼き芋を、困惑しながら頬張るのだった。

その夜、寝床に入った阿茶太郎は、浜三も男を上げたもんだと感心し、それを聞いたおちえは、お父さんの子やさかい、褒めてくれるんですわ…と返事をするが、もう、阿茶太郎は寝息を立てていた。

翌朝、品子と新子を連れ、ハイキングに出かけるオカチンを、両親と豊子が見送っていた。

一人になった阿茶太郎は、画面に向かい、まだ未解決なのがたくさんいます。せいぜい元気に働きますでと語りかけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

NHKの人気ラジオドラマの映画化で、1955年から数本作られた大映版とは異なり、本作は宝塚映画が製作している。

主人公の阿茶太郎とおちえ夫婦には、同じ、花菱アチャコと浪花千栄子が扮している。

上映時間55分程度の中編で、話も、子だくさんな子供の中の一人の結婚までをまとめるシンプルな構成になっている。

核家族が多くなった今では珍しくなった、大家族の日常がおもしろおかしく描かれている。

花菱アチャコ独特のおっとりしたユーモアキャラを、芸達者の浪花千栄子がかいがいしく支えている感じがして好ましい。