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お父さんはお人好し 花嫁善哉

1958年、宝塚映画、長沖一原作、新井一脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪のとある結婚式場では「藤本家 富岡家 手塚家 結婚披露宴」と書かれた案内板が立っていた。

その部屋の中では、藤本豊子 (環三千世)と富岡(太刀川洋一)、藤本浜三(山田彰)と手塚眉子(安西郷子)と言う、藤本兄弟二組の結婚披露宴が一緒に行われていた。

司会進行役をやっていたんは、手塚の友人で仲人を務めた田村(丘寵児)であった。

田村は二組の花嫁花婿の名前を言い終えた所で、藤本家は子だくさんなので、とても紹介しきれない、後は、藤本阿茶太郎(花菱アチャコ)から家族全員を紹介してもらいますと締めくくって両花嫁花婿と一緒に席に着く。

代わりに立ち上がった阿茶太郎は、焼き芋屋をやっておりますと自己紹介し、それを恥ずかしそうに制した隣に座る妻のおちえ(浪花千栄子)をまず紹介した後、その日出席していた子供たちを上から紹介して行く。

それを眉子の父の手塚社長(柳家金語楼)と夫人(藤間紫)も、複雑な表情で観ている。

まずは、次女の乙子 (上田節子)を紹介し、長女の京子は東京に嫁に行っている為今日は欠席させてもらったと言うと、名前の由来を説明する。

京子は、阿茶太郎が京都にいた時に生まれたので「京子」と名付け、その後は、東海道を順に東へ向かう駅名にちなんでつけて行ったのだと言う。

「乙子」は「大津」を縮めたもの。

長男米太郎、次男清二(早川恭二)は清洲から付けた名前。

妊娠中なので欠席した三女熱子は熱田から。

浜三は浜松、五女静子(夏亜矢子)は静岡、四男沼吉(頭師正明)は沼津、五男横之助(鳥貝隆史)は横浜、六女品子(二木むつみ)は品川、七女新子(竹野まり)は新橋…と、途中からちえが紹介していたが、下の二人の娘たちの姿が見えないのに気づく。

まだ小学生の品子と新子は、新郎新婦席に置かれた二つのウエディングケーキのクリームを早くも嘗めていたので、新郎新婦たちは思わず笑ってしまうのだった。

浜三と眉子は、結婚のきっかけとなった思い出の地白浜に新婚旅行で再びやって来ていた。

その後、熊野を回って、伊勢神宮、二見浦で朝日を観た…と絵はがきを送って来たので、それを阿茶太郎とちえはうれしそうに読んでいた。

豊子の方からは、何の連絡もなかった。

そこに、豊子に振られたオカチンこと岡野(石田茂樹)がふらりとやって来る。

岡野は、豊子に振られたことで、自分はむしろ、お宅の空気が好きだったことに気づいたと言い出す。

自分には、九州に叔母がいるだけで他に縁者がいない境遇なので、ここに来ると、自分の家に帰って来たような気がする。これからも時々お邪魔しても良いかと浜像の結婚祝いまで差し出して言うので、阿茶太郎とちえは喜んで快諾する。

さっそく、浜三の部屋の片付けを手伝ってくれないかと頼んだ阿茶太郎は、離れの二階にある浜三の部屋にオカチンを連れて行くが、そこには沼吉と横之助が、勝手に、眉子が持って来たコーヒーサイフォンでコーヒーをいれている所だった。

阿茶太郎は、部屋の片付けは後回しにし、岡野と共に、コーヒーをよばれることにするが、そこにやって来たちえが、のんきにコーヒーなど飲もうとしている阿茶太郎を叱りつけ、そのコーヒーを自分が飲もうとしたので、阿茶太郎も必死にカップを奪い返そうとする。

その夜、浜三と眉子が新婚旅行から帰って来る。

浜三が結婚すると、この家を自由にできると目論んでいた静子は、兄夫婦が同居することになったので面白くないらしく、眉子さんはこんな家で生活できるかしら?などと心配めかして、小姑のようなことを言い始めたので、阿茶太郎は叱りつけるのだった。

何とか片付いていた部屋に戻って来た浜三に、コーヒーでも入れましょうとコーヒーセットをテーブルに置いた眉子だったが、コーヒー豆の缶は空だった。

浜三は、薄々、誰がやったか想像がつくので、眉子と二人で苦笑するしかなかった。

その犯人である沼吉と横之助は、調子に乗って大量にコーヒーを飲んだので、その日は少しも眠くならず、二人で深夜まで将棋を指して時間を潰すしかなく、コーヒーを飲んだことをちょっと後悔するのだった。

翌朝、眉子はかいがいしく、焼き芋用の芋を井戸水で洗っていたので、それを見たちえは驚きながらも感謝する。

さらに、子供たちに焼き芋を売っていた阿茶太郎の手伝いまで始めるが、そこに、眉子の母親の手塚夫人がやって来る。

夫人は、愛娘の眉子が焼き芋まで売らされていると感じたらしく不機嫌な表情だった。

出迎えた阿茶太郎とちえは、上がって行って下さいと中に招くが、ちょっと近くまで来る用が会ったので、眉子の顔を見るだけで良いですと言い、すぐに車に乗り込んで帰ろうとするが、眉子を側に呼ぶと、小声で、あんた、痩せたんじゃない?あんた、辛くない?姑小姑が多い所に行くのは無理なんじゃない?一度病院へ言ってみてもらったら?などと言い出したので、側で聞いていた阿茶太郎は、ちゃんと食べさせていますし、病気になったらこちらで病院へ行かします!と不機嫌そうに声をかける。

夫人が帰ると、ちえは眉子に、明日から店の手伝いはしないでくれ。私たちがやらせているように見えると釘を刺す。

その夜、眉子が家に来てから、毎日、寝る時間が遅くなった新子と品子を二階に上げた静子は、眉子にあれこれ小姑めいた言葉をかけるので、阿茶太郎は、親しい仲にも礼儀ありやと注意する。

そこに浜三が帰って来て、明日は社長とゴルフなので朝早く出発すると眉子に告げる。

自室に戻った眉子は、今日はココアを飲みましょうと入れ始めるが、又、匂いを嗅ぎ付けてくるんじゃないか?と浜三は笑う。

その頃、母屋の方では、ちえが売上表を書きながら、今月は果物の売上が減ったとため息をつく。

阿茶太郎は、三丁目の下の方に新しい果物屋ができたからやと言うが、今月は、二組も一緒に結婚式を出したので、家計はピンチ状態だった。

ちえが渋い顔をしている時、阿茶太郎は、何かに引きつけられるように部屋を出ると、浜三の部屋にやって来る。

眉子が自分用に入れていたココアを勧めると、うまそうに飲み干しながら、阿茶太郎は、これを飲みに来ただけやないんや。相談があるんやと浜三に切り出し、三丁目の下に果物屋ができたので家は厳しくなって来た。何か打開策に頭を絞ってくれないかと頼んで戻って行く。

翌早朝、眉子がゴルフに出かける浜三を見送り、握手をしていると、寝ぼけた阿茶太郎がやって来て、二人にお休みと言って戻って行く。

朝、眉子が店の前を掃いていると、それを見たちえが止めてくれと言いながら箒を取り上げ、阿茶太郎に渡すと、自分は乙子の所に言って来ると出かけて行く。

その後、阿茶太郎は、客からの依頼を、人手が足りないので…と断っていたので、訳を眉子が聞くと、高台のアパートからリンゴの注文が会ったのだが、自分は自転車に乗れないので、配達ができないので断ったと言う。

それを聞いた眉子は、夕べのお義父さんの話を聞いて考えたのだが、金をかけなくても商売を大きくする手はあります。私は自転車が得意なので、配達をしたらどうかと言い出す。

しかし、それを聞いた阿茶太郎は、瞬時にそれはいけません!と断る。

ちえ同様、手塚夫人の目を気にして、眉子には、店柄の手伝いを何もさせないことに決めていたからだった。

一方、ゴルフ場に来た浜三を待っていたのは、手塚社長ではなく田村一人だった。

田村は浜三をレストランに招くと、手塚社長から頼まれたのだが、夫人が眉子さんのことを心配していると言いながら、封筒に入った札束を差し出す。

手塚社長から預かって来たのだが20万入っている。夫人は、浜三と眉子が住むアパートを予約したので、その引っ越し費用としてこれを使ってくれと言っていると田村は説明する。

浜三は、眉子との結婚の条件として、お嬢さん扱いしないので、経済的援助はしないでくれと言う約束だったので、金を受け取るのを拒むが、手塚社長も夫人から頼まれて困っているので、今日帰ったら、眉ちゃんと良く相談して欲しいと田村は頼む。

その頃、眉子は、まだ阿茶太郎を説得していたが、どうしても許可されないらしいと分かると、ほな、諦めますわ…と言い、ちょっと市場まで買い物に行って来ると言って自転車に乗って行く。

その後、高台の団地にやって来た眉子は、集まっていた主婦たちに、果物や焼き芋はいりませんか?と声をかける。

すると、思いのほか反応が良く、すぐに注文が殺到し始める。

店に戻って来た眉子は、8軒も注文を取って来たと阿茶太郎に報告する。

さすがに、その話を聞くと喜ぶしかなく、阿茶太郎はすぐに注文品を包み始める。

それを再び自転車に積み、配達に出かけた眉子だったが、ちょうど帰って来たちえとすれ違ったので、あわてて角を曲がって逃げ去る。

ちえもすぐに気づき、角を遠ざかって行く自転車の後ろ姿を確認するが、何となく眉子の着ているセーターに見覚えがあったので、家に帰って来て眉子さんは?と阿茶太郎に聞く。

阿茶太郎は、ちょっと買い物に…と言葉を濁すが、その時、眉子が奥から顔を出したので、阿茶太郎は安心するが、ちえは複雑な表情になり、果物がたくさん売れているのを怪しむ。

阿茶太郎は、たった今、学生の集団が来て買って行ったとごまかすが、ちえの表情は浮かないままだった。

その後、浜三が帰って来るが、その表情も冴えなかった。

二人きりになった眉子は、今日、自分がご用聞きに行って注文を取った話を聞かせるが、浜三は、そんなことしなくてええのに…、と言いながら、相談したいことがあるやと続ける。

しかし、そこに阿茶太郎がやって来て、今日の特別収入の計算をしたいので眉子に来てくれと頼んだので、相談は後回しにすることになる。

浜三は、白浜での眉子の言葉を思い出していた。

眉子は、自分はもうお嬢さんじゃなく、これからは商売の手伝いもしてみたいと自分から申し出ていたのだった。

翌朝、又、ちえが乙子の所に言って来ると言い出したので、阿茶太郎と眉子は、みかんを土産に渡して送り出すと、今日は三丁目の方を回って来ると言い出した眉子は自転車で出かけて行く。

張り切って芋を焼き出した阿茶太郎だったが、その途中、三丁目と言うたら、乙子の家のすぐ裏だと気づき、眉子がちえと出くわす危険があることに気づく。

そうすると、叱られるのは自分だと言うことが分かっていたので、阿茶太郎はちえにあれこれ弁解する真似をし始める。

ふと気づくと、近所の子供が笑いながら観ていたので、芋を買うのか?と聞くと、おっちゃんが面白かったからみていただけだと言うので、阿茶太郎は呆れて追い払うのだった。

そこにオカチンがやって来て、眉子も自転車で帰って来るし、小学生の弟妹らも全員帰って来る。

オカチンは品子や新子に、今度どっかに行こうなどと話しながら店の奥へ向かう。

そんな中、横之助だけ残り、眉子に向かって、密輸は成功してる?ボクは知っているんやと言い出したので、眉子は10円渡して秘密にさせる。

阿茶太郎も、ちえが帰って来んうちに…などと噂しながら、配達の品を集めようとしていると、目の前にちえが立っており、さっきから帰ってまっせと言いながらにらんでいるのに気づく。

ちえは、何をしているのか?と眉子に聞くが、側に立っている阿茶太郎があれこれ説明しようとするので、ちえは黙っていてくれと止める。

岡野が奥から顔をのぞかせ、今度の休日にハイキングに下の子供たちを連れて行きたいのですが…と挨拶をする。

その夜、母屋に眉子を呼んだちえは、まだ早いのに、阿茶太郎に寝ろと命じ、隣の部屋に押し込んでしまう。

そして、最近、こそこそ注文とって回っているやろ?と眉子に聞く。

眉子は、黙っていたことは謝る。

そこに、浜三も帰って来たので一緒に座らせると、眉子さんが自分でしていることでも、里のお母さんから見れば、私らが無理にさせてることになる。

お母さんの立場も考えてくれんとあかんやろ?と言い含める。

すると、浜三が父さんたちに相談があると言い出したので、奥の部屋に押し込められ、口出しができなかった阿茶太郎が、うれしそうに起きて来て座に加わる。

浜三は、やはり、自分たちが同居したんが無理やったんやないか?田村さんからそうことを言われたと打ち明ける。

先方のお母さんも、アパートの予約をしてくれたらしいので、この際移って見ようと思う。そうすれば、お父はん、お母はんらも、余計な気を使わんで住むやろ?と言うので、ちえも阿茶太郎も賛成する。

ところが、話を聞いていた眉子だけは嫌やと言い出す。

家の父に、経済的な援助は受けないと言ったのではあなたではないか?

私は、お父はんが夢見ているような煙突が三本立つ店にしてみたい。実家の母には自分から良く言いますから…と浜三に頼む。

それを聞いたちえは、良う言うてくれました。お母さんが間違ってました。嬉しゅうて、嬉しゅうて…と感謝する。

阿茶太郎も又、そやとも、そやとも…、ほんまええ嫁じゃ。わしゃ、嬉しゅうて、泣きとおますと顔をくしゃくしゃにするのだった。

二階の階段付近で下の様子をずっと聞いていた横之助と沼吉は、良かったな。まさに感激に瞬間やと喜び合う。

次の休みの日、静子は朝から井戸端で芋を洗っていた。

オカチンは、約束通り、品子と新子を連れてハイキングへ出かける。

そこに、眉子と沼吉が注文取りから帰って来たので、注文の品物を摘んで、沼吉が出ようとすると、横之助も付いて行くと一緒に出かける。

眉子は、近所の注文品を駆け足で届けに行く。

その後ろ姿を観た阿茶太郎とちえは、嬉しそうに、やっぱり、ええ子はええ子を連れて来ますなと喜び合う。

浜三はお母ちゃんの子やと阿茶太郎が褒めると、何言うてますねん、お父さんの子ですわとちえも褒め返す。

そして、今は一本しかない店の煙突を見上げながら、早よ、煙突を三本にしたいもんやな…と笑顔で話し合うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前作「お父さんはお人好し 家に五男七女あり」の後から話が始まっており、正式な続編とも言うべき作品になっている。

冒頭の結婚式で藤本家全員の紹介があるが、そこで子供たちの名前の由来が語られている。

原作となったNHKラジオドラマでは、すでに知られていた設定なのかもしれないが、映画だけをみているこちらとしては、今回はじめて知った事実である。

東海道の駅名から来ていたとはさすがに知らなかった。

手塚家の父親を演じている柳家金語楼や豊子役の環三千世らは、冒頭の結婚式に出ているだけで、今回、物語の方には絡んで来ない。

話自体は、新婚早々、大人数の藤本家で同居を始めた眉子を心配した手塚夫人の横やりで、家族間に波風が立ってしまうと言う他愛無いものだが、こういうシリーズは、何作か観ているうちに、こちらも家族の一員のような感覚になってしまい、大きな事件が起きなくても興味深く観てしまうから不思議である。

ほのぼのとしたホームドラマ特有の魅力なのだろう。

原作のラジオドラマが愛されたと言うのも分かるような気がする。

1時間程度の中編だし、内容も地味そのものといった感じで、今の映画のような派手さは全くない展開だが、妙にはまってしまう魅力を持った作品である。

人の良い花菱アチャコとしっかり者の浪花千栄子両人の味わい深い両親キャラクターが、その魅力の大きな要因であることは明らかだと思う。

許されるなら、ずっとこの家族のドラマを観続けていたいと思わせるくらい、引きつけるものがあるのが凄い。