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ノンちゃん雲に乗る

1955年、新東宝、石井桃子原作、村山節子脚本、倉田文人脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「この映画をよい子の皆さんにお贈りします。
 製作 芸研株式会社 熊谷久虎 中田博二
    後援 雪印乳業株式会社」(テロップ)

女の子が泣く声が聞こえて来る。

泣きじゃくりながら歩くノンちゃん(鰐淵晴子)

タイトル

麦畑を通り過ぎ、ひょうたん池の側までやって来たノンちゃんは、お空を見上げると雲が見えました。

川の中をのぞくと、その雲が写っています。

愛犬のエスが、心配そうにノンちゃんの側に付いて来ていました。

ノンちゃんは、スカートの左ポケットからちり紙を取り出すと鼻をかみ、右のポケットから出したハンカチで涙を吹くと、池の上に張り出した大きな木によじ上り、枝にまたがると、バレエのような真似をし始めました。

その内、バランスを崩して、ノンちゃんは池の中に落ちてしまいました。

ノンちゃんは、いつの間にか、空の中を泳いでいました。

すると、どこからか、お~いと呼ぶ声が聞こえて来ます。

大きな熊手が雲の下から出て来て、ノンちゃんの身体を雲の上に引き上げてくれました。

その熊手でノンちゃんを救ってくれたのは、翁のおじいさん(徳川夢声)でした。

翁はノンちゃんに、お前はさっき変な真似をしとったな?と聞いて来たので、ノンちゃんは、飛び込みよ。最初がスワンダイブで、次がジャックナイフと教える。

そこへ、クラス仲間の野村長吉(石井秀明)がやって来て、ノンちゃんに、飛び込みなんかできないくせにと意地悪を言う。

ノンちゃんは、お布団の上でよと言い返し、翁が、良かったな、二人とも友達でと言うので、友達じゃないわとノンちゃんは、長吉をにらむ。

小学校では、山口先生(臼井正明)がツバメのお話をしていました。

すると、いつも集中力がない長吉がきょろきょろし出したので、それに気づいた山口先生が注意すると、長吉は田代君の方を観ていたと答える。

何故観ていたのかと先生から聞かれると、僕のことを笑ったからだと言うので、後ろで聞いていたノンちゃんはびっくりしてしまい、笑ってなどいませんと否定する。

それでも、長吉は笑ったと繰り返し、その度にノンちゃんは、笑ってませんと否定するのだった。

その後、今度は、お遊戯の時間に、踊っていたノンちゃんに、長吉が又、嘘つき!と言い出したので、ノンちゃんも大嫌い!と言い返し口喧嘩を始めてしまったので、オルガンを弾いていた川本先生(倉田マユミ)が、笛を吹いて注意する。

学校からの帰り道、ノンちゃんが金山橋を一人で渡っていると、石が投げられて来て、その一つがノンちゃんのお尻に当たりました。

ノンちゃんは痛いのを我慢してそのまま歩いて行きましたが、橋の下に隠れていた長吉が追いかけて来て、「ノンちゃん、のが付く、ノンざえもん♩」とおかしな歌ではやし立てます。

それを聞いていた翁は、どんな歌か聞かせてくれと言うので、ノンちゃんは仕方なく、翁の耳元で、小さく歌ってみます。

すると、どこからか「長吉、ちょが付く、ちょうざえもん♩」などと長吉をはやす歌も聞こえて来て、翁は、愉快、愉快、わしも子供の頃を思い出したと喜ぶ。

どこからか、久しぶりに良い気持ちですわなどと言う声も聞こえて来る。

翁が言うには、ここは、哀しくなって落ちて来た人がいる所なのだと言う。

長吉が、親父と喧嘩して叱られた話も聞かせてもらったから、今度はお前の身の上話を聞かせてくれと翁が言うので、ノンちゃんはちょっと困ってしまいます。

ノンちゃんはそれでも、お家の話をします。

ノンちゃんは、田代のぶ子と言い、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと、犬のエス、そして鳥小屋の鶏と暮らしています。

麦畑の中にあるノンちゃんのお家が見えて来ました。

朝、寝床の中で歌っているノンちゃん、それに答えて、お掃除中のお母さん(原節子)も歌で答えます。

隣で寝ていた、お兄ちゃんのタケシ(高崎敦生)を起こすと、お兄ちゃんはボクシングの真似をしながらノンちゃんを追いかけ始めます。

ノンちゃんがおひな様の所へ行くと、お母さんは、おひな様を片付けましょう。もう一ヶ月経ったわ。おひな様たちも疲れたって言ってるわよ。お人形に聞いてご覧なさいと言うので、本当?と聞くと、翁の人形が頷くのだった。

お父さん(藤田進)は、何かにつけて「主義」と良く言います。

それを言われると、お母さんは何も言えなくなります。

そのお父さんとお兄ちゃんと一緒に学校へ出かけるノンちゃんは、周囲に見える木の名前をお父さんに聞き、皆きれいと感動します。

お兄ちゃんが、ノンちゃんがきれいばかり言うんでからかうと、お父さんは、どの木も芽を吹き出したばかりで、お前たちのようにきれいだと教えます。

それを聞いたノンちゃんは、お兄ちゃんは、時々汚れているけどねと仕返しをしました。

すると、お兄ちゃんは怒ったのか、少し先を急ぎながら歌を歌い始めます。

ノンちゃんも、そのお兄ちゃんと合わせて歌を一緒に歌い始めました。

話を聞き終えた翁は、今度はどんな話を聞かせてくれる?と、又ノンちゃんに話を催促します。

ノンちゃんは、お母さんの話をすることにします。

ノンちゃんはお母さんが大好きです。もし、お母さんがいなくなってしまったらどうしたら良いだろうと心配してしまうくらいです。

そのお母さんは、ノンちゃんとおひな様を仕舞いながら、これは、東京のおばあちゃんのお母さんのもので、ちょうど、おばあちゃんのお母さんが今のノンちゃんくらいのことがあったの。その今がすぐに昔になるのねと言うので、それを聞いていたノンちゃんは、今って何?って聞いてみました。

今もやがて昔になるなんて不思議です。

ノンちゃんは、いつかお母さんがどこかに行きそうで不安なのでした。

それを聞き終えた長吉は、ノン子の甘ったれ!と意地悪を言いますが、翁は、良いんだよ、子供だからと言ってくれました。

ちょっと風が出て来たので、翁は、ノンちゃんと長吉に雲の中に隠れようと言ってくれました。

翁は、お母さんの話の続きがあるのではないかな?と聞いて来ましたが、お母さんの話ならいくらでもできるのですが、ノンちゃんはお母さんが大好きだと言う以外はおまけのような気がします。

それで、お兄ちゃんの話をすることにしました。

翁は、お前はお兄ちゃんに意地悪したことはないか?と聞くので、ノンちゃんは、ないわ。意地悪するのはお兄ちゃんの方よと答えると、聞いていた長吉が、お前も意地悪するじゃないか。この前先生に、俺の悪口言ったじゃないかと言い出しました。

最近麦が伸びて来たけど、麦畑に入って麦を抜くような子はこの組にいませんね?と先生が聞いた時、お前、俺が抜いたって言ったじゃないかと言います。

ノンちゃんは、それは意地悪ではないわと反論しますが、翁は、相手の気持ちを考えず言うようなら、それは「杓子定規」だと言うのだと教えてくれました。

すると、長吉は「さようなら」と言って、どこかに帰って行ってしまいました。

それで、ノンちゃんは、お兄ちゃんの話をすることにしました。

お兄ちゃんは「源氏」が大好きです。

源義経や弁慶も好きですが、中でも一番「那須与一」が好きなのです。

その日も、自分が那須与一に扮し、友達が作った扇目がけ、矢を撃つ遊びをしていましたが、全く当たりませんでした。

二回目に放った矢は、ガンマンごっこをしていた長吉の後頭部に当たってしまいました。

インディアンとガンマンの扮装をしていた長吉たちは、ちょうど、買い物帰りで通りかかったノンちゃんを、酋長の娘だ!と言いながら襲撃しました。

それを見たお兄ちゃんは、ノンちゃんを助けてくれましたが、買い物かごの中をのぞいても、すぐに食べるものがなかったので、今晩は何だい?と聞くと、ノンちゃんは、天ぷらよと教えます。

その日の夕方、お家では、お母さんが天ぷらを作っています。

そのお手伝いをしていたノンちゃんが、今度、いつ東京に行くの?と聞くと、あなたの健康診断してからねと答えます。

その時、お母さんが、エスが側にいることに気づき、よだれを垂らすのを観たくないのでお外に連れて行ってと頼んだので、ノンちゃんは、エスを台所の外へ追い出しますが、その時うっかり、エスの尻尾が扉に挟まってしまいました。

痛かったのか、エスは悲鳴を上げ、ノンちゃんはすぐに、ごめんねと繰り返しました。

ところが、それを観ていたお兄ちゃんが、何をするんだ!と言いながら、いきなりノンちゃんの頬をぶって来ました。

ノンちゃんは、謝ったじゃない。それにわざとやった訳でもないのにと言いました。

お母さんも乱暴はいけないわとお兄ちゃんを止めます。

翁はノンちゃんに、お兄ちゃんは好き?好きだな?と聞きます。

ノンちゃんが、お兄ちゃんは、とっても欲張り、何でも欲しがるのと答えると、子供には良くあることだと翁は笑いながら、お前には欲しいものはないのかい?子供らしくないぞと言います。

何だろうな?お前の欲しいもの?翁はまだ首を傾げています。

ノンちゃんたちは、村に現れた不思議な人物の後を付いて行ったことがありました。

その人は、色んな荷物を背負い旅をしているようでした。

途中で立ち止まり、片方の靴を脱ぐと、中に入っていた石を捨てましたが、その靴には大きな穴が開いていました。

子供たちがどこに行くの?と聞くと、お空を指しながら、わしはさすらい人だからとその人は答えました。

男は持っていた袋を開け、中に入っていたたくさんの「青空詩集」を見せてくれました。

その人は詩人(大泉滉)だったのです。

もう一つの袋には何が入っているの?とノンちゃんが聞くと、詩人は袋の中からバイオリンを取り出し、一曲弾いてくれました。

その話を聞いた翁は、分かった!お前が欲しくてたまらないのはバイオリンじゃろう?と言います。

ノンちゃんは、又、お兄ちゃんの話に戻りました。

お兄ちゃんは、嘘つきの上に欲張りなの。私とは全然違うの。

ある日、外から帰って来たお兄ちゃんは、ドロだらけの手でおやつを要求したので、座布団を縫っていたお母さんは、手を洗うよう命じました。

すると、お母さんがおやつを取りに行った隙に、お兄ちゃんは、側にあった金魚鉢で手を洗ってごまかしました。

お母さんは、お兄ちゃんと、その後戻って来たノンちゃんに、バナナを一本ずつ下さいました。

すると、お兄ちゃんは、ノンちゃんのバナナもくれと言い出したので、ノンちゃんが断ると、お母さんの姿が見えなくなった隙に、汚れた足のまま座敷に上がり込み、果物籠のバナナを勝手にもう一本ちぎって外に逃げてしまいました。

その直後、部屋に戻って来たお母さんは、完成したばかりの座布団が、お兄ちゃんの汚れた足跡で汚されているのを発見しました。

その夜、ノンちゃんは、お父さんにバイオリンを勝手とおねだりしました。

そして、私なら上手に弾けるわと言いながら、詩人のように一曲弾く真似をし始めます。

すると、お兄ちゃんが、自分にはいつ万年筆を買ってくれるの?とお父さんに甘えます。

お父さんは、お前がものを壊さなくなるまでダメだと答えたので、じゃあ、僕がお父さんくらいになったら買ってくれる?と言います。

それを聞いたお父さんは、お前はお父さんの年になるまで買ってもらうのか?と呆れると、お兄ちゃんは、その時まだお父さん元気でしょう?と答えるのででした。

そうした会話中、編み物をしていたお母さんが何も話に加わらなかったので、お兄ちゃんが、何か怒っているの?と聞くと、怒っていませんよ、哀しいんですとお母さんは答えました。

お母さんのお仕事が、お前のドロ足で台無しになったのだからと言うと、お兄ちゃんは、僕、そんなことはしないと否定します。

お母さんは、本当にそんなことしないと思っているの?と呆れたように聞き返しますが、お兄ちゃんが否定し続けるので、お父さんが、持って来てみせたら分かるじゃないかと言い出しました。

お母さんが座布団を持って来て、東京のお母さんの還暦祝いのために作ったのにと言ながら見せると、そこにはべっとりドロの足跡がついていました。

それを見たお兄ちゃんは、急に泣き出してしまいました。

それを観ていたノンちゃんは、お兄ちゃんのことを可哀想に思っていましたが、その時のお兄ちゃんは、東京から来た晴雄さんからの手紙のことを考えていたのです。

又ある日、お兄ちゃんが友達と野球をしていると、ボールがそれて、ちょうど走って来たトラックの下の方に転がって行きました。

すると、お兄ちゃんは道路に飛び出し、トラックに「ストップ!」と両手を広げて止めてしまいました。

トラックの運転手(名古屋章)は、危ないじゃないか!と怒り立ち去りましたが、それに味をしめたのか、お兄ちゃんは、その後も、道路を走って来るトラックやバスの前に飛び出しては、ストップと言って止める遊びを始めます。

とうとう頭に来た運転手は、お兄ちゃんを連れて自宅に来ると、ノンちゃんと一緒に外にいたお母さんに事情を話し、危ないので止めさせて欲しいと頼みました。

お母さんは驚いて、タケシ!謝りなさい!とお兄ちゃんを叱りました。

その夜は、何か、怖いようなことが起こりそうな気がします。

帰宅して着替えたお父さんは、縁側にいたお兄ちゃんに来るように呼びました。

事情は全部お母さんから聞いた。お前は本当にそんなことをしたのか?どうしてそんなことをしたんだと聞くと、お兄ちゃんは、したかったから、面白いから、したかったんだい!と答えたので、お父さんは「バカ!」と言いながら、お兄ちゃんの頭をぶちました。

お兄ちゃんははじめてお父さんに殴られたので泣き出しましたが、お父さんはこれまで子供を叱らないつもりだったが、これからは違う。お父さんが叩きたくなったら叩く。そうなったら、お前は困らないか?お前が面白いからやったとしても、運転手さんや警察が困る。事故が起きて誰かが怪我をしたら、それを治療するお医者さんも困る。お母さんも、車がこない所へ引っ越そうかと言っている。お前はどっちが良いんだ?と聞くのでした。

翁にお話ししていたノンちゃんは、その後は、お兄ちゃんはトラックを止めなくなったけど、トラックの方が止まるようになった。お父さんが運転手さんに謝ったら、すっかり、お兄ちゃんと運転手さんは仲良しになり、お兄ちゃんも、大きくなったら運転手になりたいと言うようになったのだと説明する。

翁は面白そうに、今度はお前の話だと言い出しました。

お前は良い子か?悪い子か?と聞くので、ノンちゃんは、私は悪い子じゃないわ。親を大切にします。友達に親切で、先生の言いつけも守りますと答えると、それじゃあ、本に書いてあるみたいじゃないかと翁は笑います。

「そうだ!」と、どこからか長吉の声も聞こえました。

ノンちゃんは、とってもうれしいことがあるのと、お話を続けました。

ある日、山口先生が、級長の橋本君が、お父さんの転勤の為、東京に引っ越すことになったと言い、橋本君がお別れの挨拶をしました。

その後、山口先生は、橋本君の代わりに、ノンちゃんに新しい級長をやってもらいますと言い出したので、ノンちゃんは前に出て、橋本君の思い出とお別れの挨拶をしました。

そして最後に、私もその内東京に行くのよ。3年になったら連れて行ってくれるって、お母さんが言っていたのと橋本君に伝えるのでした。

その日帰宅したノンちゃんは、お母さんに、級長になったことを報告しました。

お兄ちゃんも帰って来ましたが、宿題をしながらも、なぜか、雨が降っていることをひどく気にしているようでした。

ノンちゃんがお風呂から上がったとき、親戚のとし子おばさんがやって来ました。

お父さんが帰って来ると、お母さんは、ノンちゃんが級長になったことを伝えました。

お父さんはうれしそうでしたが、お兄ちゃんは、外の雨が止み、星が出たことをうれしそうにお母さんに教える、明日はお天気だねと言うのでした。

ノンちゃんは、おばさんが持って来てくれた雪印のお菓子のお土産を開けてみて喜びました。

その日は、とっても楽しい晩でした。

その話を聞いていた翁は、急にノンちゃんが泣き出したので、どうしたんだい?雲に酔ったのかい?と心配します。

お兄ちゃんが…、お母さんが…、私を騙して、東京に言ったのよ!とノンちゃんは答えました。

翌朝、ノンちゃんは、いつものように布団の中で目覚めると歌を歌い始めました。

横を見ると、お兄ちゃんの布団には、もうお兄ちゃんの姿が見えません。

おばちゃんが朝ご飯の準備をしていて、お父さんは、釣りに出かける準備をしていました。

朝食の席に座ったノンちゃんは、お母さんの姿が見えないことに気づき、おばさんに尋ねました。

おばさんは辛そうに、お母さんは、ちょっと用事があって東京に行ったの。一晩泊まったらすぐに帰って来るのよと教えてくれました。

それを聞いたノンちゃんは、ご飯を食べながらぽろぽろと涙を流し始めたのです。

みんな嘘つきだ!お兄ちゃんは連れて行った!とノンちゃんが言い出したので、お父さんは、お兄ちゃんは、晴雄さんから、箱根の美術展を観に行こうと手紙が来たからなんだとなだめるが、ノンちゃんは、お父さん、嘘つきだ。お母さんも嘘つきだ。お兄ちゃんのバカ!バカ!とぐずります。

お父さんは困ったように、お前が東京に行くと、又病気にならないかと心配したからだと説明しますが、ノンちゃんは、大丈夫ですよ~、大丈夫ですよ~と、泣きながら抗議し、お父さんのバカと言いながら、運動靴を履いて外に飛び出してしまいました。

そして、麦畑を通り抜け、ひょうたん池の畔に着いたノンちゃんは、木に登り、白鳥の真似をした後、池に落ちたのです。

話を聞き終えた翁は、泣くなとノンちゃんを慰めます。

ノンちゃんは、おじいさん、私帰りたいのと言い出しました。

それを聞いた翁は、帰りたいなら返さなければいかん。哀しい人を慰めて返すのがわしの仕事だからなと言いました。

そして翁は、帰る為には試験を受けねばならんと考え出し、お前には、うまい嘘をついてもらおうと言い出しました。

お前はお話がうまいから、嘘もつけるに違いない。

噓も使い方次第で悪いこととは言えないものだから、30秒以内で言いなさいと言うのです。

大変なことになりました。

みんなが、ノンちゃんが嘘をつくようけしかけているのです。

でも、時間が過ぎても、ノンちゃんは嘘をつくことができませんでした。

翁は、何じゃダメか…、おかしいな…、お前は、嘘をつくのは嫌だと思っとるんじゃないか?一つ付けば良いのだ。一つで家に帰れるぞ。誰かが、噓を言ってはいかんとバカなことを言ったのか?先生か?お父さんか?と聞くので、ノンちゃんは思わず、誰も言いやしない!私が嫌なんだ!私が噓が嫌いなんだ!と泣きながら叫びました。

すると翁は、それで良いんだとノンちゃんを慰め、お~い!みんな、出て来い!出て来て送ってやるのじゃ!と叫びました。

すると、たくさんの小さなバレリーナが雲の中から出て来て踊り始めました。

ノンちゃんは、その中に混じり、気がつくとバイオリンを持っていました。

それで、ノンちゃんは一曲弾き始めました。

長吉もやって来て、そんなノンちゃんたちの様子をまねて、ちょっと踊っています。

いつの間にか、バレリーナの姿になっていたノンちゃんは、バレエを踊ってみます。

翁が手招いたので、ノンちゃんは、翁が乗った雲に乗り込みます。

それを、可愛いバレリーナたちや長吉が手を振って見送ります。

やがて、皆は歌を歌い始めました。

雲に乗って地上に降りるノンちゃんも一緒に歌っています。

翁が、お母さんが待っとるぞと言うと、ノンちゃんは待ってないのと哀しそうに答えます。

翁はそんなノンちゃんに、いつも、お母さんが離れたことはないだろう?と聞きます。

ノンちゃんは、夜空に輝いていた星が欲しいと言い出したので、翁は、北斗七星の折った柄の先にあるアルクトゥルス(麦星)をあげよう。春から夏に輝く星だと言い、熊手で引っ掛けた星をノンちゃんにプレゼントしました。

ノンちゃんは、布団の中で目が覚めました。

側には、心配そうに見つめるお母さんがいました。

お母さん、どうしたの?とノンちゃんが聞くと、お母さんは、ノンちゃん、苦しくない?と言います。

ちっとも苦しくないと答えると、ちゃんと目を開けてごらんとお母さんは言います。

ノンちゃんは、でもくたびれちゃったと答えました。

反対側には、お医者さん(木崎豊)が座っています。

私、今ね、雲に乗ってたのとノンちゃんが言うと、お医者さんは、それは面白い所にいたねと感心しました。

おばさんがやって来たので、ノンちゃんは今朝のことを謝りました。

そしてあの後、すぐになくのを止めて、ひょうたん池に行ったのと説明します。

雲って、とってもでこぼこしてたけど、とっても楽よと言うと、お母さんは、そんな話は止めて、怖いわと言い出します。

そこに、お父さんとお兄ちゃんも来て、お父さんは、エスが近所の人に知らせてくれたのでよかったけど…とノンちゃんの枕元に座ります。

ノンちゃんがお兄ちゃんに、東京面白かった?と聞くと、うんと答えたお兄ちゃんは、電報来たから、すぐ帰って来たんだと教える。

隣の部屋に来たイサムは、お母さんに、のぶ子は口をきいてるよ。死なないよね?死ぬ?と聞くので、お母さんは、バカなことを言うんじゃありませんと叱ります。

ノンちゃんは、2日続きのお休みの後、学校に行きました。

長吉もちゃんと前の席に座っていたので、うれしくなったノンちゃんは、心の中で長吉を呼んでみました。

長吉は、そんなノンちゃんの方を振り向きました。

ノンちゃんの主義で言うと、こうでしょう。

長吉「田代くんが笑いました」

ノンちゃん「おととい、雲の上で…」

雲の上の話は難しゅうございます。

しかし、山口先生から「野村、どこを向いているんだ?」と聞かれた長吉は、何も答えませんでした。

ノンちゃんが大きくなって、話が上手になるまで、長吉は黙っていてくれた方が良いのです。

もうあの雲はありませんでした。

おじいさん、星をありがとう…

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

石井桃子の原作の映画化

可愛らしい鰐淵晴子が演じるノンちゃんに、いつしか感情移入して行くファンタジーだが、よく考えると、これは「臨死体験」を描いたちょっと怖い話でもある。

お澄ましでまじめなノンちゃんは、女の子の理想かもしれない。

一方、常に、面白いことばかりにどん欲なイサムの方は、男の子そのものといった感じ。

お母さんは優しいし、お父さんも包容力があり優しい。

まさに理想の家庭像である。

そんな家庭の中に起こったちょっとしたすれ違い。

親たちの思いやりを「嘘つき」と思い込んだノンちゃんは幼い心を痛め、それが騒動のきっかけになる。

犬や鶏と暮らし、麦畑の中に断つノンちゃんの家は、まさに、自然に囲まれたノスタルジックな田舎の風景である。

いかにも好々爺といった感じの徳川夢声と、太っちょのいたずら小僧長吉を演じている石井秀明のキャラクターが秀逸で、いつしか観るものの心を幼い頃に戻してくれる暖かい作品である。

藤田進、原節子と言う豪華な両親が、作品の贅沢感を醸し出している。


原節子/ノンちゃん雲に乗る

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