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ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘

1966年、東宝、関沢新一脚本、福田純監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

青森県下北半島にある霊山恐山…

海難事故で息子の弥太を失ったことがどうしても信じられぬ母カネ(中北千枝子)は、イタコの口寄せを聞きに来たのだが、そのイタコが「弥太は死んでおらん!冥土をいくら探してもおらんのだ!」と言うので、近づいて来た組合長(池田生二)と村民(佐田豊)に、やっぱり、弥太は死んでいないと訴えるが、組合長は、南方海域で遭難したんだ…と、現実を知らせるしかなかった。

わしらにはどうしようもできんと言う組合長にカネは、弟の良太が、今掛け合いに行っていると言うので、驚いた村民が、掛け合いって、どこに?と聞くと、カネは御上にですだ…とそっぽを向く。

東京、警視庁

青森から単身上京した良太(渡辺徹)は、応対した警備課の巡査警官(渋谷英男)に、警視総監に会わせてくれと訴えるが、ここは管轄が違うと追い返される。

続いて、興味を持った記者に新聞社に連れて来られた良太は、待合室に貼られていた、優勝者には豪華ヨットがもらえると言う「耐久ラリーダンスコンクール」のポスターに目をつけ、海上の山枝ホールに向かう。

そこでは、大勢の若者がテレビカメラの前で踊り続けていたが、必死に辛さに耐えていた参加者の二人、仁田(砂塚秀夫)と市野(当銀長太郎)が、とうとうギブアップして戦列から離れてしまう。

会場脇のイスにへたり込んだ二人に話しかけたのが良太だったが、今から参加したいと言う良太に、それはできないと説明した二人は、どうしてもヨットが欲しいと言う良太を誘い、車でヨットハーバーまで連れて行ってやる。

そこには「YAHLEN号」と言うイカすヨットが係留しており、キャビンの中に入ると、食料などもふんだんに備蓄してあり、太平洋横断でもできそうな装備だった。

その時、奥のベッドから猟銃を突き出して顔を出した男がいた。

吉村(宝田明)だった。

仁田と市野は、ヨットの所有者と思い怯えると、良太がヨットマニアで観たいと言ったので…と弁解するが、不法侵入に代わりはない。さっさと今日は寝て、朝になったら出て行けと男は言う。

翌朝目覚めた吉村は、ベッドの下に隠していたはずの猟銃がなくなっているのに気づき慌てるが、良太が観ていたら壊れただと言いながら、バラバラになった部品を差し出したのでがっかりする。

キャビンから外に出てみた吉村は、ヨットが既に外海に出て走っていることを知り唖然とする。

またもや、良太が自分が動かしたと言い出す。

怒って、すぐに戻せと怒鳴る吉村だったが、神様の思し召しだからダメだ。この兄ちゃん、船のことを何も知らないと指摘し、仁田と市野は、吉村がこのヨットの所有者ではないことを知る。

キャビンで休んでいた仁田と市野は、ラジオのニュースで、今朝6時、ジェイムズ・コンウェイ氏所有のヨットが盗まれたことと、16日未明、新橋の大黒パチンコ会館の金庫室から400万が盗み出されたと流れた所で、吉村がスイッチを切ってしまったことを怪しむ。

あんたは、今言っていた銀行強盗じゃないのか?鞄には何が入っているんだと仁田が聞くが、吉村は、騒ぐと承知しないぞとすごむだけだった。

操縦から戻って来た良太にどこへ行くのかと聞くと、「27人乗りマグロ漁船遭難」のニュースが載った新聞記事の断片を見せながら兄ちゃんを捜しに行くと言うので、他の3人は愕然となる。

備蓄してあった缶詰類が徐々に減少し、日にちだけが過ぎ去って行った。

吉村は暇つぶしに、針金を加工し、合鍵を作っていたが、仁田たちに、今後は積極的に良太に協力し、それとなく操縦の仕方を覚えた方が良い。そうすれば自分たちだけで逃げられると打ち合わせしていたが、その良太がキャビン内に降りて来て、おかしな雲が出て来たと危険を知らせる。

やがて、ヨットは嵐に遭遇、吉村のアタッシュケースは、ベッドから落ちて蓋が明き、中に入っていた大量の札束が、浸水した水に浮かんでしまう。

やがて、折れたマストが舵を直撃、航行不能になった「YAHLEN号」の前に、巨大な爪が海中から出現する。

その後、気がついた4人は、見知らぬ島に漂着していた。

立ち上がった吉村は、足下に落ちていたアタッシュケースの蓋を発見し、悔し紛れに叩き付けたので、何が入っていたんだと仁田は聞くが、ここでは役に立たないものだと答えるしかなかった。

崖を登っていた仁田は、現住民が使っているらしき刀を見つけ、人食い人種だ!と怯えるが、やがて、バナナやみかんが生えた場所を見つけたので、一同腹ごしらえをする。

その後ジャングルを歩いていたとき、良太が近づいて来る船を見つける。

船は、謎めいた基地のような施設に近づき接岸する。

全体が白く塗られた不思議な船で、黄色い液体を周囲に撒きながら近づいていた。

その輸送船を、現住民を従え出迎えた竜尉隊長(平田昭彦)は、船長(天本英世)から荷物を受け取る手続きをしていたが、その時、現住民の数名が逃げ出したので、基地の機銃が背後から撃ち始める。

逃亡者のうち数名が銃弾に倒れるが、二名の現住民(広瀬正一、鈴木和夫)だけがカヌーを使い、海に乗り出して行く。

そのどさくさに皆の注目が集まっていたとき、もう一人の現住民の娘ダヨ(水野久美)が反対方向に逃げ出すが、誰にも気づかれなかった。

竜尉隊長は、逃亡者を追っていた部下たちに引き上げるように命じる。

その直後、逃げていたカヌーの前に、巨大な爪が出現し、カヌーから海に落下した二人の現住民を串刺しにすると、口に運び食べてしまう。

他の原住民たちの元に戻って来た竜尉隊長は、観たか?逃げようと思っても、エビラの餌になるだけだと威嚇する。

その時、基地内にいた司令官(田崎潤)が、竜尉隊長に、強制作業員の女が一人逃げたことを放送で知らせたので、竜尉隊長は慌てて部下を連れ、ダヨを追跡し始める。

ジャングルを逃げていたダヨは、良太らと出会う。

警戒するダヨに、刀を持っていた仁田は、刀を地面に指し、僕たち友達と説明しようして、言葉分からないか…と諦めかけると、ダヨは、分かります。友達でしょう?と日本語で返事をしたので、男たちは驚いてしまう。

竜尉隊長ら追跡部隊が近づいて来たので、一行は山の中に逃げ込むが、やがて崖に追いつめられてしまう。

吉村は飛び降りようと言い出し、全員その言葉に従う。

崖のすぐ下に、細い出っ張り部分があったのだ。

その出っ張り部分に一行が身を潜めたとき、上に到着した竜尉隊長が崖の下を確認するが、一行の姿は死角になって発見できなかったので、海に落ちたと判断、そのまま引き上げて行く。

吉村らは、出っ張り部分を進んで行くうちに洞窟を発見する。

洞窟内には風が吹いており、どこかに逃げられると直感した吉村は、その中に入ってみるが、その時、外は、急な雷雨に襲われる。

崖の上の木に落雷したショックで、崖の一部が崩壊し、洞窟の一部も崩落してしまう。

ダヨは、何かに祈りを捧げていたが、モスラに聞こえなかったようだと言うので、彼女がインファント島の住民であることを知った良太は、日本人が島にいないか?と聞くと、2ヶ月前に漂着した弥太と言う日本人が一人いるとダヨは教える。

謎の敵は「赤イ竹」と言う秘密結社であること以外には何も分からない。その刀は、逃げようとして失敗した仲間のものだとダヨは言う。

その頃、インファント島では、眠りについているモスラの前で島民たちが踊っていた。

石碑の上に立った小美人(ペア・バンビ)の二人も歌っていたが、モスラは目覚めようとはしなかった。

洞窟の中で吉村は、このまま逃げ回っているより、気勢を制してこちらから敵の基地に乗り込もうじゃないかと提案していたが、仁田と市野は反対する。

その時、仁田は、近くの石を洞窟の穴の下に落としてしまうが、それを目で追って行くうちに、俺も行くよと言い出す。

穴の下に眠っているゴジラを発見したのだった。

夜、切った木の枝に身を隠しながら、基地に近づいていた吉村たちだったが、仁田がつまずいて音を立ててしまい、監視塔からサーチライトが当てられる。

ダヨは、そうした用意の為に持って来ていた鳩を手から放す。

物音の原因が鳩だと思ったのか、サーチライトは消える。

扉に近づいた吉村は、かねてから用意していた合鍵であっという間に扉を開いてみせる。

さらに、基地の中に入り、回転式の中扉も開けた吉村だったが、白衣を来た科学者らしき二人が近くを通りかかったので身を隠す。

市田は実験室でもあるのかな?と不思議がるが、一行が入った備品室のような場所では、ボウリングのピン御のようなものを大量に発見する。

仁田がいじっていると、黄色い煙を出したので、煙幕に使えるかもしれないと、吉村は全員にそのピンを持たせる。

そんな中、ダヨは、導線を巻いた束をネックレスのつもりで持ち出してしまう。

その頃、司令官は、呼び出した科学者二人に、もっと実験の数値を限度まで上げろと命じていた。

その実験室のような所に侵入した吉村は、金庫のような扉を見つけたので興奮し、鍵を回し始めるが、科学者二人が戻って来たので、他のものたちは物陰に身を潜める。

幸いなことに、科学者たちは吉村に気づいていないようで、鍵を開けた吉村は、全員中に入るように誘う。

しかし、金庫に中に入りかけた市田たちはすぐに出て来て、ここはダメだ、核融合室だと吉村に教える。

それを聞いた吉村は、この場所が核爆弾の元になる重水工場だと気づく。

そこから逃げ出そうとしていた吉村らだったが、竜尉隊長に見つかってしまう。

吉村は降参するように立ち上がりながら、ジャンパーの中から先ほど盗んだ煙幕団を取り出し、他のメンバーたちに合図する。

全員、一斉に煙幕弾を投げつけ、皆逃げ出す。

建物の外に出た吉村と仁田は、盗んだ白衣を着て科学者に化けると、金属扉を二枚運んでいるように装いながら、他の3人をその中に隠して近くの建物に入ろうとするが、鍵に手を触れた瞬間警報が鳴り出したので、皆、バラバラに逃げる。

途中、良太は、気球の紐に足を引っかけ、上昇する気球と共に浮上して行く。

それを助けようとした仁田は、捕まってしまう。

吉村、市田、ダヨの3人は、何とかあの洞窟に逃げ帰るが、その周囲にも「赤い竹」の捜査は伸びて来ていた。

その時、市田は、洞窟のそこから響いて来るゴジラの心臓音に気づく。

一方、「赤イ竹」に捕まった仁田は、黄色い汁を石臼で作らされていたインファント島の住民たちの元に放り込まれる。

仁田は、自分はダヨの友達だと話しかけ、老人(沢村いき雄)や島民たちと意思の疎通を図る。

老人は、この黄色い汁は、エビラが苦手なものだと説明する。

その頃、相変わらずモスラの眠りを覚ます為にインファントの島民たちが踊っていたちょうどその場所に、良太の気球が落ちて来る。

良太の姿を見つけた弥太(伊吹徹)が姿を現し、二人は抱き合い、感激の対面を果たす。

良太が、「赤い竹」に追われて来たのだと説明すると、それを聞いた小美人は、あの島は私たちには悪魔の島ですと教える。

一方、洞窟に潜んでいた吉村たちは、追っ手が近づいていることで焦っていた。

その時、市田が、ゴジラを生き返らせようと言い出す。

雷を落として、ショックを与えたらどうだろう?と言うのだ。

すぐさま、刀を避雷針にして崖の上に設置すると、ダヨがいじっていた導線を引っ張り、ゴジラの上に垂らす。

その頃、黄色い汁を作っていた仁田は、この汁を全部捨ててしまえ!別のを作るんだ!と言い出し、その意図を悟った老人も、黄色い木の実を捨て、葉っぱで汁を作るんだと全員に促す。

インファント島では、どうしても仲間たちを救出に行くと言い出した弥太と良太の為に、小美人は、黄色い汁の入った樽を用意させ、大きな網を作って待っていて下さいと二人に告げる。

訳を聞いても、その内に分かりますと言うだけ。

その後、四日をかけ、良太と弥太はカヌーで、「赤イ竹」のいるレッチ島に近づいていた。

良太は、嫌な雲が出て来たと弥太に教えるが、やがて海が荒れ出し、積んでいたエビラよけの黄色い汁が入った樽が流されてしまう。

そこに、巨大なエビラの爪が出現したので、二人は海に飛び込む。

一方、避雷針代わりの刀に落ちた雷は、導線を伝ってゴジラの身体に電流を流し、ゴジラは目を覚ます。

洞窟の外に出たゴジラは、海に上半身を現したエビラに向かって行く。

ゴジラは岩を投げ、エビラは巨大爪でそれを打ち返すが、その岩が、「赤イ竹」の監視塔を破壊、基地内に警報が鳴り響き出す。

外に出て来た司令官は、竜尉隊長に、すぐに本部へ連絡しろ!革命的怪物現る!と叫ぶ。

ゴジラは、エビラに引っ張られ海の中に沈む。

海底に沈んだゴジラは、手にした岩でエビラの頭を殴りつけるが、固い甲羅のせいか、効果はない。

その頃山の中にいた吉村は、市田たちに、洞窟の周囲に、「赤イ竹」の追っ手を防ぐ為にもっと罠を仕掛けようと指示していた。

その時、近くの草むらが大きく動いたので、警戒しながら近づいてみると、そこには、彼らが作っていた罠に引っかかった弥太と良太の二人が、逆さまにぶら下がっていた。

すぐさま二人を助けた吉村と市田は、良太から兄の弥太を紹介されるが、その弥太が、すぐに仲間たちを助けに行こうとしたので、あわてて止める。

良太が言うには、兄は村では「浪花節の弥太」と言われていたのだと言う。

呆れた吉村たちだったが、とにかく、兄弟とダヨと共に基地に近づき様子を見てみることにする。

草むらから基地の様子を眺めていた弥太だったが、すぐに飛び込もうとするので、それを慌てるなと落ち着かせようと説得する吉村だったが、側の木に仕掛けられていた「赤イ竹」の監視マイクに声を拾われてしまう。

竜尉隊長たちが近づいて来たので、全員逃げ出すが、逃げ遅れたダヨは崖に追いつめられる。

その時、ゴジラが出現したので、「赤イ竹」は一旦退却する。

ゴジラは、岩場に身を寄せたダヨに近づき見つめるが、ダヨが助けを求めると、それ以上何もせず、その場に座り込んで居眠りを始める。

その隙に、ダヨは岩場から脱出するが、大きなコンドルが飛来したことに気づくと、悲鳴を上げてゴジラに危険を知らせる。

目を覚ましたゴジラは、尻尾を大コンドルに噛まれるが、放射能火炎で焼き落とす。

その瞬間、鼻の横を若大将のようにこすって自慢するゴジラ。

しかし、さらに「赤イ竹」の戦闘機が飛んで来る。

その隙に、吉村たちはダヨを救出、ゴジラは戦闘機を次々に破壊して行く。

「赤イ竹」の基地に警報が鳴り響き、接近したゴジラに対し、竜尉隊長は10万ボルトの電流を流して待ち受けるが、基地の側で様子を観ていた弥太が一人飛び出して行く。

それを吉村が追いかける。

基地はゴジラに蹂躙され、地下で働かされていたインファント島民たちの部屋の天井が崩れ始める。

竜尉隊長は、核爆発の時限装置を準備させ。「赤イ竹」の部下たちは、地下から用意されていた黄色い汁を運び出すと、仁田や島民たちを牢に閉じ込めたまま出て行ってしまう。

そこに、弥太と吉村がやって来て、得意の金庫破りの技でロウの鍵を開けて全員を外に逃がす。

実験室では、科学者(伊藤久哉)が時限装置のスイッチを入れるが、そこに弥太と吉村が駆けつけたとき、天井が崩れて、科学者は下敷きになってしまい、後2時間でこの島は地球から消えると教えられる。

港からは、竜尉隊長や司令官が乗った白い輸送船が出港していた。

基地の外に逃げ出した島民や仁田たちは、外で待っていた良太やダヨたちと合流、弥太は、みんなで大きな網をこしらえるんだと指示する。

その時、白い船の前方にエビラの巨大な爪が出現するが、仁田が、あの黄色い汁は偽物なんだと愉快そうに打ち明ける。

それを知らない竜尉隊長は、エビラを前にして、黄色い汁を大量に散布させるが、その効果もなく、白い輸送船は、エビラの爪に挟まれ破壊されてしまう。

ゴジラは、海に入ると再びエビラと戦い始める。

その頃、研究室に一人残っていた吉村は、懸命に時限装置のスイッチを止めようとしていたが、落下した大きなパイプに阻まれ、手が届かなかった。

そこに、弥太と共に良太も戻って来て、代わって手を伸ばすが、スイッチは自動的に引っ込んで行き、結局、良太の手にも届かなかった。

諦めた3人は、外の仁田たちと合流、残された時間は後20分しかなく、モスラを待つしかなかった。

ゴジラはエビラと水中で戦いを繰り広げていた。

インファント島では、小美人と島民たちが、モスラを覚醒させる祈りを捧げていた。

その時、ようやくモスラの目が光り、目覚めたモスラはゆっくり羽ばたき始めると、レッチ島に向かって飛び立って行く。

海中では、ゴジラがエビラの爪をへし折っていた。

折った爪をぱちぱちゴジラが動かしていたとき、レッチ島にモスラが接近して来る。

ゴジラは、モスラが目指していたインファント島民や仁田、良太らがいる場所に接近して来る。

モスラの頭に乗っていた小美人は、地上のインファント島民たちに、ただちに巨大な網に乗るように指示する。

全員が網に乗ると、それを掴んだモスラが飛び立つ。

モスラの駕篭に乗ってレッチ島から遠ざかって行くダヨは、ゴジラ、可愛そうね…と同情する。

それを聞いた全員は、ゴジラに向かい、逃げろ〜!と叫ぶ。

吉村は、奴も。悪気があった訳じゃないからな…とつぶやく。

その声が届いたのか、動物的本能からか、ゴジラは、核爆弾が爆発する直前に海に飛び込む。

次の瞬間、実験室は大爆発を起こし、レッチ島は海の中に崩壊して行く。

それを観ていた市田は、原水爆の火は消えない。これからは、扱う人間の良心の問題だな…と言う。

その時、ダヨが、レッチ島を遠ざかって行くゴジラの姿を確認し、助かったんだわ!と喜ぶのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「怪獣大戦争」に次ぐシリーズ7作目の作品だが、元々「ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ」と言う企画だった物が変更されたことで知られている。

つまり、このストーリーは、元々、キングコング主演で用意されていた物を、そっくりゴジラに置き換えて作られた作品と言うことだ。

ここでのゴジラが、あまりゴジラらしくないのはその為である。

ただ、では、当初の予定通り、キングコング主演でこの作品を撮っていたとしたら成功していたかと言うと、それもやや疑問がある。

このストーリー、冒頭の恐山のシーンから、東京、葉山辺りのヨットハーバー、レッチ島…と、めまぐるしく舞台は移動し、冒険活劇としてはなかなか面白い展開になっていると思う。

銀行強盗が主役になるなどと言うアイデアも面白い。

しかし、モンスター映画、怪獣映画としてはどうかと言うと、かなり魅力を欠いた展開になっていると言わざるを得ない。

もちろん、一口に怪獣映画と言っても色んなパターンがあり、怪獣映画のフォーマットではないからつまらないと言う訳ではないが、「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964)に似て、他のドラマの方に重点が置かれすぎで、怪獣物としては何か食いたらなさが残る作品になっているような気がする。

一番の不満点は、主役怪獣が、物語中盤を過ぎても動き出さない点にある。

洞窟の中で眠っているゴジラを発見するのが映画開始約30分後、落雷でゴジラが目覚めるのは約52分後、本編87分の映画で主役が動き出すのがこんなに遅くては、モンスター映画としてはかなり物足りないと言うしかない。

なぜ、ゴジラがずっと眠っているのかと言えば、秘密結社「赤イ竹」が、レッチ島にそんな怪獣がいることを知らずに、核兵器工場を建設していると言う設定があるからだ。

レッチ島内陸部に、色々危険な猛獣や巨大生物などがいる怪獣島だと分かっていれば、そんな基地を作るはずがないのである。

海に外敵からの守り神のエビラがいて、島から逃げ出すインファント島民も処分してくれると言う、「赤イ竹」にとって都合の良い島だったと言うことになっているので、島の中の怪獣がなかなか姿を現せないのである。

こういう設定だと、キングコングが主役だったとしても、結果は同じだったと思う。

コングはなかなか姿を見せられなかったはずなのだ。

姿を見せたとしても、周囲は満足に戦う相手がいない平和な島なのだ。

島の中でゴジラと戦う相手が、大コンドルと言う怪獣と言うには中途半端な存在だけなのもその為だろう。

肝心のエビラとの戦いも、水中戦メインでやるしかなく、破壊する物がないのであまり迫力がない。

ダヨとゴジラが接近するシーンも、コングを前提に作られたものだろうが、ゴジラが女性を観て、攻撃することなく座り込んで居眠りを始めると言うのも唐突で、ゴジラの行動パターンとしては若干違和感が残る。

とは言え、こうした要素も、公開時の子供たちにとっては、前作「怪獣大戦争」でのゴジラーのシェーと共に、ゴジラを親しみやすい優しい怪獣に感じたに違いなく、ゴジラのキャラクターの転換期の作品としては重要な部分だとも思う。

「赤イ竹」による核兵器製造工場と言う設定も、ゴジラが主役だからと言うことではなく、コングの時からこの設定だったのだろう。

ここでのゴジラは、特に核工場と知って破壊しているとも思えないし、あくまでも人間文明を島に持ち込むのを拒絶すると言うコング風の動物的本能のように見えるからだ。

この頃のゴジラは、特に人間文明から「核」だけを抽出して憎悪していると言う風には描かれていない。

この作品でも、核のことを口にするのはラストの市田だが、核とゴジラの関連性などには特に触れていないし、その発言はまるで取って付けたかのようである。

ゴジラはあくまでも偶然この島に眠っていたのであり、「赤イ竹」の基地などは、あくまでも「建物破壊スペクタクル」用に作られているだけのように思える。

核を取り入れているのは、あくまでも「反核」の建前と、ラストのサスペンス要素の為だけと言うのが本当の所ではないだろうか。

重水製造工場の中をアロハシャツ姿の吉村たちがうろつき回ったり、核融合室に、何の防護服も着ていない市田たちが、一瞬とは言え入り込むなどと言う描写も、今観ると、核に対する当時の認識の甘さがうかがえる。

仮にキングコングを主役とした映画にするのなら、次の「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」のゾルゲル島を舞台にした方が、遥かに面白くなったような気がする。


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