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金環蝕

1975年、大映映画、石川達三原作、田坂啓脚本、山本薩夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

周りは金色の栄光に輝いてみえるが
中の方は真っ黒に腐っている

タイトル

昭和39年5月12日

第14回民政党臨時大会が行われていた。

最大派閥の酒井和明(神田隆)と現総理の寺田政臣(久米明)との間で、総裁選が行われるが、次期総理を狙う建設相広野大悟(河村弘二)は寺田派を応援することになった為、党は二分されることになる。

選挙の様子を取材に来ていた新聞記者の小野(鈴木瑞穂)と島田(前田武彦)は、さぞかし党員間で金が飛び交っただろうと噂していた。

ちょうど投票箱の前にやって来ていた神谷直吉(三國連太郎)は、前の議員に「いくらもらったんだ?」と冗談を言い、自分で爆笑していた。

選挙の結果は、33票の僅差で、寺田現総裁の続投が決まる。

小野と島田も、酒井からもらった金のライターを互いに見せ合い苦笑いしていた。

そんな中、闇金業者の石原商事にやって来たのは、幹事長星野の秘書官西尾貞一郎(山本學)だった。

西尾は、はじめて会った金融王石原参吉(宇野重吉)に名刺を渡すと、2億円融資していただきたいと申し込む。

石原は、国有地を担保にできないか?と唐突なことを言い出したので、危険を感じた西尾は名刺を取り戻そうとするが、石原はその名刺を持って部屋を出て行ってしまう。

同じビルの中にある自宅に戻って来た石原は、電気代がかかりすぎると、TVを観ていた妻を叱りつけると、飯粒を持って来させ、事務所から荒井と脇田を呼んで来させる。

石原は、飯粒で「2億円の融資を申し込みに来たが断った」とその場で書いた紙にその名刺を貼付ける。

そこに、やってきた荒井(矢野宣)と脇田(早川雄三)に、いくらかかってもかまわんから星野を徹底的に調べ、三日ごとに報告書を出してくれと命じると、自分はタクシーでどこかへ出かける。

赤坂の料亭「春友」で働いている小坂老人(吉田義夫)は、店を抜け出すと、近所にある芸者荻乃(中村玉緒)の家の郵便受けに、いつものようにこっそりメモを投げ入れる。

家の中で、その萩乃と抱き合っていたのが石原だった。

事を終えた石原はブザー音をいぶかしがるが、萩乃は、小坂老人がメモを入れてくれた合図だと教え、そのメモを取って来ると石原に見せる。

メモには、ここ数日の間に、料亭を訪れた政治家たちのことが記されていた。

萩乃自身が書いた手帳を読んでいた石原は、竹田建設の朝倉の名前があったので、お前のお得意さんんだろう?と確認すると、朝倉は土建屋丸出しで皆に嫌われている…と萩乃は顔をしかめる。

電力開発株式会社は、通産省から95%の政府出資で成り立っている会社だった。

これまで6年間、その総裁であった財部賢三(永井智雄)は、後三ヶ月後に迫った自分の在任期間中に、九州の福竜川ダム建設工事の準備を何としてでも仕上げたいと、理事会で発言していた。

正岡理事(高城淳一)、小島理事(根上淳)らは、後3ヶ月では到底無理ではないかと発言するが、副総裁の若松圭吉(神山繁)は、何とかお手伝いしましょうとまとめる。

財部総裁は、現在候補に挙がっている11社の業者の中から、5社を決めたいと発言し、中村理事()は、何とか大丈夫だと答える。

会議後、財部総裁は、腹心の中村理事と計画に付いて打ち合わせをしながら廊下を歩いていたが、そんな財部総裁に近づき、次の総裁も留任のようですよと声をかけて来たのは、いつも総裁をよいしょし、賛助金を得ていた三流紙「日本政治新聞」の社長古垣常太郎(高橋悦史)だった。

古垣のお世辞に気を良くした財部総裁は、賛助金を受付で受け取ってくれと言い残しエレベーターに乗り込む。

場末の会社に戻って来た古垣は、ラジオの音楽に合わせ踊り狂っていた社員たちを目撃するが、何も言わないで社長室に入る。

社員として雇っていた腹違いの弟欣二郎(峰岸徹)がやっていることだったからだ。

その欣二郎の愛人だった遠藤滝子(夏純子)が、今や古垣の愛人のようになっていたことも弟の行動を黙認する一因だった。

欣二郎の方も、そんな兄の弱みを知っているので、絶えず金をせびってばかりいた。

しかし、古垣は、欣二郎が広告料を勝手に使ったことを責める。

ふてくされた欣二郎が会社を出て行くと、石原から古垣に電話があり、福竜川のダム建設の請け負い業者についての意見を聞かれる。

古垣は、駒井ダムを手がけた青山建設が有望で、以前水漏れ事故があった竹田建設は財部総裁と馬が合わずダメでしょうなと答えるが、石原から星野を調べるよう命じられる。

その石原の元に帰って来た荒井と脇田は、これまで判明したことを報告する。

星野は、昨年の暮れに、時価4000万の別荘を手に入れたが、それは山瀬ミツと言う66歳の老婆の名義になっていると言うのだ。

別荘の前の持ち主は、日東電工の原本社長で、山瀬ミツの名で贈与税も払っていると聞いた石原は、日東電工の親会社は竹田建設だと二人に教え、面白くなって来たとほくそ笑む。

静岡の貧乏な漁師の子として生まれ、中学にも満足に行けず、前科四犯の石原は、長野県の名門中学から一校に進学、外交感の娘を妻にもらい、当選3回と言う星野と言う男に俄然興味を示す。

首相官邸に来た若松電力開発副総裁は、応対した官房長官星野康雄(仲代達矢)に、それとなく福竜川のことに付いて…と話を始めるが、星野は何の話かといぶかしげな様子。

竹田建設の朝倉が政治献金の準備があると言っていると伝えても、星野がはっきりした態度を取らないので、この前の総裁選の時、ご自身で竹田組に献金を頼まれたとか?と嫌みを言った若松は、その後、料亭「春友」にいた朝倉(西村晃)に電話を入れ、あの星野と言う男はどう言う人間なんだ、不愉快だったと文句を言う。

その電話を受ける朝倉の様子を、近くにいた小坂老人は、こっそり又メモしていた。

朝倉は、財部総裁を招いて接待していたのだった。

電話を終え、財部総裁の元に戻って来た朝倉は、何とか財部総裁に取り入ろうとするが、財部総裁は、今回は筋を通したいし、お宅に頼むと、他社より5億高くなるので…と断る。

朝倉は、青山組にやらせるんでしょうとかまをかけながら、用意した芸者衆を呼ぶが、その芸者の中には萩乃も混ざっていた。

さらに朝倉は、自ら幇間のように踊りを始めるが、財部総裁は全く相手にしなかった。

荒井は、化粧品のセールスマンに化け、別荘の女中に近づくと、金を握らせ、屋敷にいる奥さんに近づけるよう頼む。

屋敷に潜り込んだ荒井は、「オバQ」を読んでいた女(大楠道代)に化粧品を無料で置いて行くと誘いをかけ、その様子を観察すると、帰り際に女中から、屋敷にいたのは、前に熱海で君千代と言う名前で芸者をしていた女だと聞かされる。

その報告を聞いた石原は、朝倉は賄賂として、別荘と自分の妾を星野にやったのさと解説してみせるのだった。

東京温泉のサウナに来ていた神谷直吉は、珍しく石原と再会したので昔話に花を咲かせる。

正解の爆弾男の異名を取る神谷は、かつての「造船疑獄」事件のとき、機密の取材メモを持っていた石原と組んで、滝田内閣を倒した仲だったのだ。

互いに女自慢などしていたとき、石原が呼び寄せた古垣がやって来たので、神谷は何かを感じ、こっちも噛ませてくれと頼む。

場所を芸者の置屋に変え、古垣と飲み始めた石原は、竹田建設が政界の大番頭である星野官房長官に入り込んでいると言う報告を受けるが、もう知っていたので、汚職だよと教える。

その頃、大川通産大臣(北村和夫)は、呼び寄せた財部総裁に、竹田組を選んでくれないかと頼んでいたが、財部が断ると、君は総裁とは遠縁に当たるそうだが、君の留任問題もあるし、ダムの件よろしく頼むよと遠回しに説得される。

電力開発に戻って来た財部総裁は、理事会で、竹田建設は見積もりが出せないのではないか?と疑問を口にするが、横に座っていた若松副総裁は、9月までにすべてを整えるのは無理ではないかと苦言を呈し、業者たちも、うちが駆け込み決定しようとしているのではないかと噂し合っていると発言する。

ある日、総裁室の財部総裁を訪ねて来た西尾書記官は、星野官房長官からの伝言として「竹田建設に請け負わせて欲しい」と伝言を伝えると、一通の封筒を渡して部屋を後にする。

財部総裁が封筒の中を確かめると、「竹田建設をよろしく頼む」と書かれた寺田峯子の名刺が入っていた。

財部総裁は、秘書室を出かかっていた西尾を呼び止めると、これは首相夫人ではないか?夫人はたびたびこういうことをされるのか?と聞くが、西尾は、自分は使いとして来ただけで存じませんと答えるだけだった。

その後、財部総裁は、青山組の青山社長()に電話を入れ、会いに来てくれと頼むが、金丸専務()らと共に見積もりの真っ最中だった社長は時間が取れないと断る。

日本政治新聞の社長室では、博打で負けた欣二郎が、古垣に10万ばかり都合してくれと頼んでいた。

博打は止めたはずじゃなかったのかと嫌みを言う兄に対し、俺から奪った女の手切れ金さえ出せば諦めてやると脅しつける。

その後、呼ばれて料亭「末広」に向かった古垣は、珍しく酔った財部総裁から多めの協賛金を受け取る。

これが最後になるからなと言う財部総裁は、今日は君に話を聞いてもらいたいと言い出すと、首相夫人の名刺を見せる。

そこに書かれた文言を読んだ古垣は、以前にもこの夫人は、防衛庁長官にも渡したことがあり、リベートをもらったはずなので、今回も桁違いの額のリベートを手にしてることだろうと教える。

腐ったリンゴは隣のリンゴも腐らせると嘆く財部総裁は、そう言う自分も青山組からもらっているがね…と自嘲しながらトイレに立つ。

その隙に、古垣は、隠し持って来たカメラで、首相夫人の名刺をその場で撮影する。

その後、大川通産大臣に再び会いに出向いた財部総裁は、自分が辞めることにしたことと、後任には若松副総裁が良いのでは?と進言するが、大川通産大臣は、準備の為に必要と、財部総裁の任期満了前の早期退陣を迫って来る。

結局、財部総裁は、8月21日に辞職することになり、後任には、総理とは同郷で旧知の仲と言われる松尾芳之助(内藤武敏)が選任される。

さっそく、若松副総裁を伴いゴルフに出かけた松尾新総裁は、手続きは念入りにやるんだと若松に命じ、若松の方も、正岡理事に任せるのが良いと思うと進言する。

石原商事の石原に会いに来た古垣は、15万ほど用立てしてもらえないか?と相談を持ちかける。

石原は、早くそのバッグの中身を見せろと迫り、首相夫人の名刺を写した写真を確認すると、金庫から50万出して、ネガごと寄越せと言う。

社に戻って来た古垣は、欣二郎に15万手渡すと退職金だと告げる。

欣二郎は、まだ、滝子との手切れ金が残っているぜと捨て台詞を残して会社を出るが。ちょうど帰って来た滝子と出会うと、お払い箱になったと教え、これでかえって会いやすくなったじゃないと甘えて来る滝子のスカートをまくり上げると笑いながら去って行く。

信州の温泉郷で張っていた荒井と脇田は、次々とバスでこの地に集結して来た竹田建設の社員たちの姿を確認していた。

さらに、東京への直通電話を通す工事も行われていた。

社員たちを迎えた旅館は、女中たちもいない、外界から遮断された状態になっており、出迎えた正岡理事が、今日から一週間、特別作業班として見積もりに没頭してくれと発破をかける。

その後、各部屋に分かれ、徹夜作業に明け暮れる社員たちを見て回っていた正岡理事は、社員の一人宗像(福田豊土)が見せた見積もり金額に対し、もっと増やせと命じる。

そんな正岡に電話で事情を聞き出した朝倉は、一緒にいた若松副総裁に、予定額は大体45億前後にんるだろう。ロアリミット(値引き)が気になるが、普通は予算の7%前後の数字を出して来るでしょうな…とそれとなく伝える。

その後、その話を若松から伝え聞いた松尾新総裁は、正岡理事に電話をして、ロアリミットの数字は本社で決めることにしたと通達する。

理事会が行われ、若松副総裁は、ロアミリットは、通常、6.5~8.5%の間になることが多いので、今、それぞれ別の数字を書いた紙を入れた封筒を用意しているので、その中から総裁に選んでもらって決めようと提案する。

それを聞いた小島らはすぐに賛同するが、中村理事だけは、いつものように、予定額を確かめてから決めないといけないのではないかと提案するが、味方する人間がいなくなった理事会でそれ以上意見を押し通すことはできなかった。

5通用意された封筒の中から松尾新総裁が選んだ紙には「7%」と書かれてあり、若松は、7%に決まったと報告しながら、その場で他の封筒は焼き捨てるのだった。

その後、東京に戻って来た正岡理事は、上手くいきましたなと、松尾新総裁と若松副総裁と話し合っていた。

選定された5社から提出された見積もりは大金庫に保管され、9月30日の午後1時半から発表されることになる。

若松副総裁は、その場で予定額の48億1000万、ロアリミット7%と告げた後、各社から提出された見積額を発表する。

結果、ロアリミットの額に達していたのは竹田建設だけであり、入札は竹田建設に決定する。

出席していた青山組の金丸専務は、帰り際、朝倉に、うまくやりましたねと小声で話しかける。

後日、朝倉は、星野官房長官の元に来て挨拶をする。

そこには、寺田派幹部黒尾重次郎(外野村晋)と平川の二人待ち構えており、朝倉に握手して挨拶すると部屋を出て行く。

残った星野も、寺田派全体が君に感謝しているよと謝意を述べ、朝倉は、五つに分けた金額を書いた小切手を差し出す。

総額5億の献金だった。

その時、電話が鳴り、受話器を取った星野は、君の会社の社長だと渡しかけるが、すぐに「誰だ?君は!」と言い、顔が緊張する。

電話の相手は、竹田の名前を騙った石原参吉だった。

石原は、以前、2億の闇融資を頼まれた石原だが、一度会う時間を作ってもらえないかと告げる。

電話を切った石原は、奴は必ず時間と場所を指定して来るはずだと、荒井と脇田に予告し、この目でどんな男か確かめてみたいとつぶやく。

予想通り、石原は星野から「春友」に呼び出される。

はじめて、星野と対峙した石原は、福竜川の一件はなかなかうまくおやりになったようですなと笑いかけ、今回の融資を検討するためあなたの信用調査をさせてもらったが、葉山の別荘を担保にしてお貸ししても良いと切り出す。

山瀬ミツの名や、17億も出して買った総理の座などと言う言葉を聞いていた星野は、少し苛ついたように、条件は何ですと聞いて来る。

竹田建設が渡した5億と言いたい所だが、恐喝罪で捕まっちゃまずいので止めとこうと冗談で返した石原は、昔なら乱世の英雄だったかもしれんが、今では俗にいう火事場泥棒、止めておきなさいと言い残して座を立ちかけた星野に、もう一つ罪状を持っていると告げる。

一瞬立ち止まった星野だったが、名刺の一件ですか?と聞き、大体出所は見当がついている。年寄りの冷や水はそろそろお止めになることですなと釘を刺して去って行く。

それにはさすがの石原もぐうの音も出なかった。

朝倉を乗せた星野は、石原との出会いを「食うか食われるかの戦い」と例え、いつか始末しなければならぬ奴だと吐き捨てる。

途中、朝倉を遅した星野は、そのまま葉山の別荘に向かう。

出迎えた君千代に、前の旦那とさっきまで会って来た。又明日から朝倉君が君を抱くことになる。君を抱くのは今夜が最後と言うことだと冷静に告げた星野だったが、それを聞いた君千代の方は興奮し、その後ベッドで待っていた星野にむしゃぶりついて行くのだった。

後日、西尾書記官は石原に会いに行き、名刺の返還を頼む。

星野が怖いのかね?と笑った石原は、朝倉専務の件はお知らせしたんだからと困惑する西尾の目の前で、名刺を焼いてみせる。

そして、あなたには、もう少し星野の側にいて欲しい。特に私の名が出たら気をつけて欲しいと頼みながら、土産として木箱を女に渡させるが、帰りのタクシーの中で、その中身を確認した西尾は、入っていた札束を抜き取ると、突然笑い出すのだった。

だが、翌日から、西尾は何かに怯え仕事も手に付かない様子になる。

電話が鳴っても取らないので、近くにいた他の事務官が取り、西尾に手渡す。

電話の相手は、西の廊下の奥まで来てくれと言うだけだった。

議事堂の中の西廊下の端の部屋の前まで来た西尾は、警視庁警備課の男から中に招き入れられる。

そこで待っていたのは、首相夫人寺田峯子(京マチ子)だった。

峯子は、そうして私の顔に泥を塗ってくれた。総理の名誉は?あなた、誰かに買収されているの?と一方的に西尾を責めて来る。

極秘だったはずの名刺の一件が、世間で噂されているのは、あなたがしゃべったとしか考えられないと言うのだ。

どう責任を取るつもりか?自分で考えて一番良い方法をとるべきねなどと意味深なことまで峯子が告げていたとき、突然、警護の刑事二人が飛び込んで来て、総理が箱根の別荘で倒れたと知らせる。

北海道遊説から別荘に戻って来た寺田総理は、10月6日、朝食直後頭痛を訴え、そのまま病院へ搬送される。

星野官房長官は、その病名を「軽度の脳軟化症で、2、3週間の治療で、相当回復する」と記者発表する。

聞いていた記者の島田は、首相代理は誰だろう?と小野と噂し合う。

その日帰宅した西尾は、酒をかなり飲んだ後、いつものように、マンションの屋上へきれいな空気を吸いに上がる。

しかし、金網の所で息を整えていた西尾は背後の人の気配を感じ振り向くと、驚いたような表情になる。

翌朝、西尾の転落死体が発見され、まだ幼い赤ん坊を抱いて現場に連れて来られた妻は絶叫する。

しかし、西尾の死因は過失死とされ解剖されなかった。

一方、寺田首相の病状の方も思わしくなかった。

病院に見舞いに来る政治家たちを監視するように控え室に陣取っていた島田と小野は、酒井派の幹部である斉藤荘造(中谷一郎)が来たのを目撃する。

11月9日、寺田首相に代わり、酒井和明が新首相、斉藤は新幹事長になる。

広野大悟は野に下り、星野は党総務課副会長に任じられる。

斉藤幹事長に呼ばれた神谷と星野は、少し待たされるが、その間、星野は決算委員会で爆弾発言するんだって?と神谷に確認し、それとなく、止めるように勧めるが、神谷はそれを聞かず、そこに斉藤幹事長がやって来る。

斉藤は、星野の説得が上手くいかなかった様子なのを観てとると、自分からも、党の為に質問を止めてもらいたいと説得する。

しかし、神谷は、あんたも「辰野門事件」とか、問題がありましたなと言い放ち笑って相手にしなかった。

その後、キャバレーに石原を呼び出した神谷は、福竜川に関する資料を提供してもらえないかと頼む。

石原は、党を除名になっても良いのか?と問いかけるが、神谷は、もう二度も除名されたことがあるが、そのうち何となく戻って来たんだと笑う。

そんな神谷を呆れたように観ながら、あんたをけしかけているには広野大悟だろう?と言い当ててみせ、少し考えるが、資料を渡すことを承知する。

あんたを信用している訳ではなく、最後のチャンスになりそうな気がするのだとつぶやく。

昭和40年2月23日

第45回通常国会が始まる。

決算委員会では、議長の早川義信(嵯峨善兵)が議事を進める中、神谷が質問に立つ。

自己宣伝めいた長ゼリフをさんざんしゃべる神谷に、記者や野党の議員たちから野次が飛ぶ。

記者の中には、古垣の姿もあった。

その国会中継を観ながら、石原は、小坂老人相手に酒を飲んでいた。

参考人として呼ばれていた松尾や若松が答えるが、通り一遍の答えで何の実もなかった。

ロアリミット選択の時、焼き捨てた他の封筒の中身も、同じ7%と書いてあったのではないかと神谷は追求するが、書類を会議後消却するのは良くあることだと言われるだけ。

星野への5億の政治献金に付いて尋ねても、朝倉は全く知らないことだと突っぱねる。

らちがあかないことを悟った神谷は、次の委員会に承認として、記者の古垣と財部前総裁を招致する。

それを部屋の後ろで聞いていた古垣は驚く。

その後、神原新法務大臣(大滝秀治)を訪ねた滝井検事総長(加藤嘉)は、今回の疑獄事件に付いて意見を聞くが、現総理が全総理の罪を暴くのは避けたいとの返事を聞く。

次の委員会が始まり、財部前総裁と古垣は、証人の宣誓をする。

神谷に問われるまま、古垣は、半蔵門にある末広旅館に財部前総裁から呼ばれたので出むき、そこで、首相夫人直筆の名刺の実物を自分は観たと証言する。

続いて証言をした財部前総裁は、古垣は知っているが、呼び出したこともないし、そんな名刺を見せるなどするはずがないと真っ向から否定する。

退職金を聞かれた財部前総裁は、2500万だと答える。

多額の退職金は何か意味があるのではないか?あなたもどこかからか賄賂をもらっているのではないかと追求する神谷の言葉に、財部前総裁は、朝倉から電話を受け、7000万の小切手を受け取った時のことを回想するだけだった。

何も答えない財部前総裁の態度に切れた神谷は、他の政治家だって皆賄賂をもらっているじゃないか!とわめき出し、議長から注意されても止めなかったので、他の議員たちが神谷に詰め寄り場内が騒然となる。

収拾がつかなくなった早川議長は、休憩を宣言する。

廊下に出て帰ろうとする財部前総裁に、古垣はつかみかかり、裏切り者!恥ずかしくないのか!と罵倒するが、衛視に取り押さえられただけだった。

古垣は、周囲にいた大新聞の記者たちにも、何故書かないんだ?と叫ぶが、それを観ていた島田たちは苦笑するだけだった。

星野はその後、神原幹事長を訪ね、委員会での神谷の追求を押さえてくれた礼を言い、資料を渡した石原参吉と言う男は馬鹿なので、いつか始末を付けたいと付け加える。

一方、古垣の日本政治新聞社にやって来た石原は、10万の現金と首相夫人の名刺の写真のネガを渡すと、派手に書き立てて騒ぎを大きくしろ。財部を呼び戻すんだと命じる。

そこに、滝子がふてくされた態度で紅茶を運んで来る。

滝子が部屋を出ると、石原は、夕べ、星野が赤坂の「春友」で神原に会った。私を捕まえる相談さと教えると、福竜川ダムの話を知っているのは私だと、はっきり書いてくれとも付け加える。

石原が帰ると古垣は張り切り、すぐに原稿を書き始めるが、そこに滝子が入って来て抱きついて来る。

それを振り払い、又仕事に戻った古垣だったが、怒った滝子を階段下に隠れて見送ったのは、古垣欣二郎だった。

欣二郎は、誰もいなくなった新聞社に入ると、必死に原稿を書いていた兄、古垣の部屋に入ると、千枚通しで背後から刺す。

さらに、正面からも心臓を貫き殺害する。

同時に新聞社に入り込んだ二人の男が、名刺を写したネガと原稿を奪って逃げる。

その男らに頼まれ、兄を殺した欣二郎は、古垣欣二郎の死体の前で嗚咽していた。

翌朝、萩乃の自宅で古垣が殺された記事を読んだ石原は唖然とする。

そこに萩乃が帰って来て、小坂老人から聞いたが、妙な男たちがうろうろしていると知らせる。

玄関をノックする音と同時に、電話が鳴り、受話器を取った石原は、石原商事横の自宅にいた荒井から、今、家宅捜索が入ったとの知らせを受ける。

玄関では、相変わらず刑事らしき男がノックを続けていた。

覚悟を決めた石原は、俺には石原メモがあるとつぶやきながら着替えを始める。

斉藤幹事長は神谷を呼び出すと、委員会での追求は党のためにならないから、この辺で休暇を取り、海外視察へでも出かけないかと勧める。

国会開催中の今そんなことはできないと突っぱねる神谷に対し、斉藤幹事長はふろしき包みを差し出し、2000万入っている。広野さんの了解も得たと告げ、政治家にとって金は潤滑油だ。政治家から金を取り上げたら成り立たないと言う。

神谷は、俺が2000万なら、広野はいくらもらったんだと笑いながら受け取ることにする。

やがて、酒井総理が委員会で、今回の一件への個人的感想を述べ、神谷はさっさと愛人を連れ海外へ飛び立って行く。

病室の寺田前総理を見舞った星野は、意識がない寺田の耳元に、これであなたが被告の立場になることはなくなりましたと報告する。

その2日後の3月8日、寺田前総理は死去する。

3月11日、寺田前総理の党葬が執り行われ、仏前に立った酒井首相は、前総理の功績を褒めたたえる弔辞を読み上げるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

話の大きな骨格となっている要素は、学がなく前科まで持つ町の闇金業者とエリート中のエリートのような政治家との対決であろう。

金の力で、そのエリートに迫ろうとする石原を演ずる宇野重吉は、この映画の主人公と言って良く、乱くい歯の入れ歯を入れて、見た目的にも教養も何もない醜男として熱演している。

福竜川ダム工事の入札をめぐる裏取引の辺りは興味深いが、政治家や公共事業の暗部に関しては、大体庶民が想像する通りの中身であり、特に意外性はなく、かと言って、対決ものとして面白いかと言われると、これも弱いと言うしかない。

いみじくも劇中で星野が漏らしたように、石原はバカであり、両者の技量に差がありすぎるので、対決ものとしての緊張感が希薄なためだ。

特に後半、学がない石原は、星野を責めあぐね、後手後手に回る哀れな老人に成り下がっている。

ミステリ仕立てでもないので、真相を追求する詰めが甘いのだ。

石原同様、不遇な環境の中で、世の中の不正に立ち向かおうとする小者、古垣の方も哀れな末路を迎えることになる。

結局、青臭い正義を振り回すものはバカだと言う風に描かれているところが、大人の映画のようにも受け止められるが、そう言う冷めた視線で描かれてしまうと、観ている側としても、何も救いがないまま放り出されたようなむなしさだけが残る。

小説としては、こういう結末でも成り立つのだろうが、映画としてはどうだろうか?

政治の裏側主体の話なので、女性が活躍する場も少なく、登場する女優たちの大半は、男の性欲を満たすだけの存在のように扱われている。

女性向けの映画が主流となった今では考えられないような「男中心の映画」になっているのだ。

見応えが全くない内容でもないが、手に汗を握ると言うような感じでもなく、割りと常識的な展開のような気がする。

役者たちが、実在した政治家たちそっくりにメイクしている辺りは興味深い。


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