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怪盗X 首のない男

1965年、日活、都筑道夫原作、山崎巌脚本、小杉勇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「ネパール美術工芸展示会」の会場前に停まった一台の乗用車から、インド人らしきターバンを巻いた男とサリーを着た女性が降りて、並んで入口に向かう。

車に残っていた運転手岡田(深江章喜)たちは、後部トランクの中にあったテープレコーダーのような装置を素早くセットする。

会場内で、カトマンズで1620年に発見されたと言う「ネパールの鳥」と言う工芸品を熱心に写真に収めていたのは、若き女性記者相川玲子(山本陽子)だったが、一緒に会場内にいたボーイフレンドの大里浩次(川地民夫)は、玲子の熱心さについて行けず、ロビーに向かうが、インド人が鉢植えの根元に何やら金属製の棒のようなものを置き忘れていたのに気づいたので、後ろから話しかけ、それを渡してやる。

感謝して受け取ったインド人は、浩次が立ち去った後、「畜生!余計なことをしやがって…」と日本語でつぶやくと、その金属棒を、別の鉢植えの根元に差し込む。

サリーを着た女性の方は、化粧を直す振りをしてコンパクト型発信器を広げると、自動車に残っていた岡田に、30秒後にセットするよう連絡する。

車のトランクの中のテープが回り始め、展示場内には突然、「火事だ!」と言う叫び声が聞こえて来る。

同時に、先ほどインド人が鉢植えの根元に差し込んだ金属棒から白煙が立ち上ったので、場内にいた見物客たちは驚いて会場を逃げ出し始める。

そんな中、特殊なマスクを口に装着し、「ネパールの鳥」のガラスケースに近づいたインド人カップルは、ガラスケースの上に自動式のガラス切りを設置する。

逃げ惑う客や係員の中、素早く、鉢植えの中から煙を発している金属棒を見つけ、火事じゃない!と声を上げたのは、会場内に戻って来た浩次だった。

駆けつけた係員と鳥の工芸品の場所に来た浩次は、ガラスケースの上が丸く切り取られており、中にあった「ネパールの鳥」がなくなっていることに気づくと、やっぱりあいつだ!インド人男女を捕まえてくれ!と叫びながら入口に向かう。

入口にいたボーイに聞くと、今出発した車にインド人男女は乗り込んだと言う。

車を追おうとした浩次と係員たちに、何枚のも紙片が車からばらまかれる。

それを拾い上げて観てみると、「X」の浮き彫りの上に「Black Joh(ブラック ジョー)」と印刷されていた。

走り去る車の中で、インド人の変装を取ったのが、その怪盗ブラックジョー(宍戸錠)で、同じくメイクを落とした女は梨花(松原智恵子)だった。

後日、馴染みの「女性ジャーナル」の編集室に来た玲子は、編集長(伊藤寿章)に、怪盗事件を追いたいので契約してくれと迫っていたが、乗り気ではない編集長は、「各大臣の内助の功」と言う特集をやらないかと勧める。

同じ頃、「トヨタの練馬サービス工場」で車を磨いていた浩次は、やって来た叔父の大里警部(宍戸錠-二役)から声をかけられる。

定年間際の大里警部は、フランス留学中に、ネコと言う泥棒女を捕まえたお前なら、きっとブラックジョーの正体を見破ると思っていると、甥の浩次をおだてて、捜査への協力を頼み、発売されたばかりの週刊誌を見せる。

そこには、相川氏に脅迫状!と言う記事が大きく載っていた。

玲子の父、相川徳三(明石潮)が、ロマノフ王朝の遺産「ブラックダリア」と言う宝を持っており、それを盗むと怪盗から脅迫されたと言う内容だった。

それを秘密基地で読んでいたブラックジョーは、梨花や部下たちに、「ブラックダリア」のことを調べさせていた。

梨花は、辞典にはそのような財宝は載っていないと答える。

白塗りのような顔になっていたブラックジョーは、壁にかかった肖像画を観ながら、これが、一生をかけて貯めた全財産を軍の命令で没収された為、精神を病んだまま死んで行った顔だ。今、日銀の金庫の中には1000億ものダイヤが入っているそうだが、大仕事を始める前のトレーニングとしてやってみようと言いながら、「アラブ連合美術展」のパンフレットを見つめていた。

相川家には、週刊誌で知ったマスコミ各社の記者たちが殺到していた。

父の相川徳三と共に、記者たちを迎えた玲子は、父がオーストラリア大使をやっていた時手に入れたものだと「ブラックダリア」のことを説明する。

玲子は、記者の中に、「女性ジャーナル」の編集長まで混ざっていたので驚くが、編集長は、こんなネタを持っているんだったら教えてよと憮然としていた。

その記者会見に同席していた浩次は、相川玲子さんに協力すると宣言するが、実は、この「ブラックダリア」は、玲子が怪盗Xをおびき寄せる為に勝手に作り上げた偽物だった。

父の相川徳三は、そのことを気にしており、大里警部に対して、もし噓がバレたら、家名に傷がつくとうろたえていた。

その時、宝石デザイナーの大里浩次に告ぐ!ブラックジョーが「ブラック・ダリア」を頂戴する!後4日!という声が庭から聞こえて来たので、大里警部らと共に窓から外を見ると、庭の木にスピーカーが設置されており、声はそこから聞こえていた。

室内にいた刑事や玲子、浩次たちは外に飛び出すが、一人のひげの記者だけが室内に残り、「ブラック・ダリア」を手に取っていたのを徳三が目撃する。

ひげの男は、誰か残っていなと不用心ですねと笑顔で答えるだけだった。

浩次と玲子は、スピーカーが付いた「日通航空」のトラックを車で追跡する。

助手席に乗った玲子は、上手くいったわねとブラックジョーが作戦に引っかかったのを喜ぶが、間もなく、停止していたトラックを発見するが、運転席は無人だった。

後ろの荷台を覗くと、テープレコーダーが置いてあったので、玲子と浩次は乗り込んで良く調べようとするが、その時、扉を閉じられてしまう。

さらに、テープレコーダーからガスが噴出し、二人はその場に気絶してしまう。

浩次が気づくと、周囲に、盗まれた「ネパールの鳥」や他の工芸品のような物が置いてある暗い部屋の中だった。

立ち上がって少し歩き回っていると、どんでん返しの扉につまずき、隣の部屋に入ると、そこには、裸体の女性がうつぶせになっていた。

さらに、どんでん返しの扉の向こうの部屋に入ると、そこには、白塗り風のブラックジョーが待ち構えていたので、玲子さんを裸にするなんて!と浩次が怒ると、あれは玲子ではなく、女には用がないので、無事送り返したとブラックジョーは言う。

ブラックジョーは、移動式のボックスを呼び寄せると、そこに乗った酒を浩次に勧めるが、毒を警戒した浩次は拒絶する。

すると、ブラックジョーは、俺は挑戦者を殺したと思われたくないし、個人の物には手を出さない主義だが、世間体もある。盗む物の値段にこだわるんじゃなく、奪うことに意義があるんだと自説を披露する。

浩次は、その言葉に押されるように、差し出されたグラスの酒をあおる。

すると、チャイナドレスを着た梨花がバッグが乗った台を押して来ながら、「いらっしゃい」と挨拶する。

バッグの中には札束が詰まっており、その中から400万分を取り出したブラックジョーは、200万を掴んで、浩次に受け取れと言う。

これから始まる、お前との攻防戦の準備金だと言うのだ。

ホテルの客を観たまえ。せいぜい2、3カラットの宝石を身に着けたザアマスばばあや政治献金にしか興味がない成金ばかり。そんな連中にとっては「ネパールの鳥」なども単なるアクセサリーに過ぎない。この鳥の価値を知っている物こそ、これを所有する権利があるのだなどと主張するブラックジョーの言葉を聞いていた浩次は、だんだんふらふらし出す。

やはり、飲まされた酒に睡眠薬を仕込まれていたと気づいた浩次は、残っていた力を振り絞ってブラックジョーに飛びつくが、すぐに梨花が柱のブザーを押し、駆けつけた子分たちに取り押さえられてしまう。

白塗り風のブラックジョーが柱の背後を通り過ぎると、黒いマスクのような物をかぶった姿に変身していたので、浩次は殴り掛かるが、すると、黒いマスクが割れ、中から出て来たのは、叔父の大里警部の顔だった。

その大里警部が笑う顔を最後に意識が途絶えた浩次は、自宅のベッドで目を覚ます。

気がつくと、自分の腕枕の中で寝ていたのは玲子だった。

やがて気づいた玲子は、自分がネグリジェ姿で浩次と寝ていることに気づくと、ベッドを飛び出し、何かしたのね?と身体をこわばらせ浩次を睨みつけると、いきなりビンタして、浩次さんなんて、もう嫌い!と叫ぶのだった。

その後「トヨタの練馬サービス工場」に、玲子と二人で車でやって来た浩次は、そこで落ち合った大里警部に、ジョーはおじさんにそっくりなんだと教えながら、ジョーの地下室で拾った「アラブ連合美術展」のパンフレットを見せる。

浩次は、「ブラック・ダリア」を用意した魔法瓶の中に入れると、この底には発信器が付いているのだと大里警部に教える。

大里警部は玲子に、この浩次は、昔、ネコと言う女泥棒とホテルで取っ組み合って捕まえたことがあると自慢話をするが、それを聞いた玲子の心は揺れ始める。

「アラブ連合美術展」最大の呼び物「ファラオのネコ」を観に行った大里警部らは、それが、最新鋭の赤外線感知装置で寸分漏らさず守られていると係員から説明を受ける。

しかし、その感知装置も一日一回だけ止まり、全警備員監視の中、ガラスケースを掃除するのだと言う。

どう考えても難攻不落の安全装置に見えたが、浩次は、ジョーならやる!と確信するのだった。

その会場には、ブラックジョーの手下の一人も紛れ込んでおり、玲子だけ会場から出て来たとブラックジョーに連絡する。

ブラックジョーは、こうなったら、全部のデカをご招待だとつぶやく。

警視庁に戻った大里警部は、大臣から、くたばれと言う叱責の電話を受け、「ブラック・ダリア」と「ファラオのネコ」に二分していた捜査員を再編成することにし、偽物である「ブラック・ダリア」の方に警備は、薄のろの山中刑事(小柴隆)一人だけにする。

相川邸で一人警備していた山中刑事は、水音を聞き、怪しみやし着ないを見回り始めるが、浴室を覗くと、玲子が入浴中だったので慌てて逃げ出すが、父の徳三に見つかりこっぴどく叱りつけられる。

その時、湯船につかっていた玲子は、大里警部が口にした、浩次が昔、ヨーロッパのホテルで、ネコと言う女泥棒と取っ組み合って退治したと言う言葉を思い出し苛ついていたが、そこに突然、窓から模型飛行機が飛び込んで来る。

床に落ちた模型飛行機から、突如ガスが噴出する。

気絶した玲子の浴室に一人の男が侵入して来るが、山中刑事は、ちょうど係長からかかって来た電話に出ていたので、玲子を連れ去られたことに気づかなかった。

「アラブ連合美術展会場」では、浩次が盗聴器を会場前の鉄柵部分に仕掛け、外からの侵入者に供えていたが、何か物音が聞こえたので目覚め、展示場内で寝ていた他の刑事たちを全員揺り起こす。

全員で鉄柵部分に行って、盗聴器に近づいていた影に飛びつくと、それは、盗聴器を浩次が仕掛けたことを聞いていなかった大里警部だった。

全員で会場に戻ると部屋の隅に人影がいたので、捕らえてみると刑事だった。

その刑事が言うには、相川さんから電話があり、お嬢さんがさらわれたと言う。

急いで、相川邸に向かった浩次は、浴室にあった模型飛行機に付いていたテープレコーダーを見つけ、大里警部の前で再生してみる。

すると、「浩次君、ブラック・ダリアは君が隠しているのは知っている。東海道新幹線の新横浜駅に午後1時それを持って来い。玲子さんと交換しよう」と言うブラックジョーの声が響いて来た。

その頃、誘拐された玲子は目隠しをされ、梨花とブラックジョーの部下によって、隠れ家から連れ出されていた。

12時半に新横浜駅前に大里警部と二人で車で到着した浩次は、魔法瓶の底にある発信器を確認しながら、どうしてこんな見晴らしが良い場所を選んだのだろうと疑問を口にする。

大里警部は、我々の見張りを警戒しているのだろうと推理するが、浩次は、俺がジョーだったら、こんな場所へは来ないよと断定する。

その頃、相川徳三の元には、ムッシュ・ベルモントと言う外国人を伴って光画廊店主(高品格)が訪ねて来ていた。

その用向きは驚くべきもので、あの何の値打ちもないと思っていたブラック・ダリア像の中に、ロマノフ王朝時代に試し刷りされた幻の切手が隠されていたのが分かったので、ムッシュ・ベルモントの依頼でずっと探していたと言うではないか。

それを聞いた徳三は絶句するが、もう手元にはないと知ったベルモントと光画廊店主も愕然とするのだった。

新横浜のホームに立っていた浩次は、4番線特急「こだま」115号新大阪行きが間もなく到着するアナウンスを聞いていた。

外の車で待機していた大里警部は、怪しい車が近づいて来たので緊張するが、それは部下の刑事で、今、相川さんから電話が入ったと言う連絡に来たのだった。

電話に出た大里警部は、あのブラック・ダリア像の中に、時価1億8000万もの価値がある古い切手が隠されていたことを知る。

ホームでは、浩次に到着した新幹線に乗り込み、熱海で降りて下さいと言う場内アナウンスを聞いて迷っていた。

そこに、大沢警部と刑事たちが駆け寄って来るが、その時、新幹線から降りたチャイナドレスの女に目を留めた浩次は、あれはジョーの仲間だ。この取引は本当だと叫んだので、大沢警部らは一斉に、出発間際だった新幹線に乗り込む。

一方、浩次だけは、階段を降りて行くチャイナドレス姿の梨花を追跡するが、途中で見失ってしまう。

女性用トイレから姿を現した梨花は、駅の外に用意していた車に乗り込むと、コンパクト型発信器で、大沢警部らは全員、熱海へ追っ払ったと報告するが、その時、後部座席に隠れていた浩次が助手席に乗り移って来て、「アラブ連合美術展」会場まで行けと梨花に命じる。

熱海に着いた大里警部は「アラブ連合美術展」会場に電話を入れるが、話し中でなかなか繋がらない。

ところが、その会場内には、もう一人大里警部がおり、不審がる刑事たちに、取引時間が4時間延びたのだと説明し、会場から刑事たちを追い払ってしまう。

そこに、警備員の一人が電話だと知らせに来たので、偽大里警部が出てみると、相手は熱海からかけて来た本物の大沢警部だった。

本物の大沢警部は、正田と名乗った偽大沢警部に、ブラックジョーがそちらに行くかもしれないから警戒を強めろと伝言する。

その電話中、本物の大沢警部は、側に置いてあったブラック・ダリア像が、何者かにすり替えられたことに気づかなかった。

展示場内には、カメラマンに扮したブラックジョーの子分も混じっており、配電室に入り込んだ子分の岡田は、その場にいた係員を殴り倒してしまう。

3時になった時、「ファラオのネコ」の感知装置のスイッチが切れ、フロックコートを着た磨き屋(長尾敏之助)が、ガラスケースに泡状の洗剤を吹き付け始める。

四面すべてに洗剤を吹き付け、ケースの中が見えなくなった時、突然、場内が停電する。

警備員や刑事たちは、なかなか直らない停電に苛つくが、ようやく電気が点いたので、ガラスケースの泡洗剤を拭き取らせるが、中には「Black Joh」のカードが入っているだけで、「ファラオのネコ」は消え失せていた。

展示会場の前に停まった梨花は、助手席に乗っていた浩次から、ここであんたがジョーの仲間だと叫んでやろうかと言われるが、可愛いハートのエースを失いたくなかったら、おかしなまねは止めておくことねと諭される。

梨花はシガレットケースを取り出すと、タバコを一本浩次に勧めるが、次の瞬間、特殊なマスクを口に装着した梨花は、シガレットケースから催眠ガスを噴出させる。

一方、車で逃走中のブラックジョーも、盗んだ「ファラオのネコ」を観ながら、喜ぶ部下たちとは裏腹に、親父が失った遺産の10分の1にもならんと吐き捨てていた。

とある部屋に押し込まれた浩次は、口の中からマイクロフィルターを取り出すと、いつも眠ると思たら大間違いだとつぶやきながら、部屋の外の様子を窓からうかがう。

どうやらそこは、クルーザーの船室の中のようで、デッキには梨花が座っていた。

隣の部屋に、玲子が縛られているのに気づいた浩次は、壁にかかった猟銃をつかい、嗅ぎを壊して隣に入り込むと、玲子を助け出す。

玲子は、こういうことになったのは皆、自分が女のくせに、スクープを狙ったせいだと反省の言葉を吐く。

そこに、車で乗り付けたブラックジョーたちが、クルーザーに乗り込んで来る。

浩次が船室で眠らせてあると聞いたジョーは、コーヒーでも飲ませてやれと部下の山下(平田大三郎)に命じるが、コーヒーをトレイに乗せ、船室に入った山下は、扉にプラスチック爆弾を仕掛けた浩次が爆発させたので、室内に倒れ込む。

せっかくいただいた軍資金、無駄にすると思うか?と言いながら、銃を手にした浩次は、カジモドのような姿になっていたブラックジョーに、ファラオのネコを寄越せと迫る。

部下の岡田が包みを手渡したので、梨花を人質として捕まえた浩次は、玲子と3人でクルーザーを降りて逃げる。

すぐさま、ジョーの子分たちが銃撃を開始し、ブラックジョーはクルーザーを出港させる。

浩次は、銃弾が当たり壊れた「ファラオのネコ」を布から出して確認するが、それは単なるネコ型の石けんだった。

浩次と玲子に伴われ、警視庁に連れて来られた梨花は刑事に尋問される。

玲子と警察で再会した父親の徳三は、あの女とブラック・ダリアを交換したらどうかと提案するが、その時、梨花を調べていた刑事が、彼女が持っていた発信器付きコンパクトを見つけたと、大里警部に渡す。

一方、新しいアジトでは、岡田が、梨花の奴が口を割るかもしれない。ひとまず二本を脱出しましょうとジョーに提案していたが、カジモド風の顔から、又白塗りの顔に戻ったジョーは、梨花は俺の妹だ。どんなことをしても裏切るようなまねはしない。梨花は絶対助け出すと言う。

その時、梨花のコンパクト発信器を使って、浩次のメッセージが受信機に飛び込んで来る。

2回戦の開始だ。明日2時、横浜ドリームランドの観覧車のゴンドラに乗るんだと浩次は伝えるが、実は、一緒に車に乗り来んだ大里警部が逆探知装置で、ブラックジョーのアジトの位置を探そうとしていた。

今彼らは、アジトの1km圏内にまで迫っていた。

その意図に気づいたブラックジョーは、部下に妨害電波を出すよう命じると、浩次たちが、これほど執拗にブラック・ダリア像を取り返そうとしているのは妙だと感じ、この像には何か秘密が隠されているに違いないと察し、像を割ってみると、中に古い紙片が入っていた。

そこには、「幻の切手をいただいた  1895 ルパン」と書かれてあり、あの怪盗ルパンが70年前にすでに盗んでいたことを知ったブラックジョーは笑い出す。

翌日の横浜ドリームランド

浩次は梨花を連れて、観覧車の下で待ち受けていた。

園内には、大里警部以下刑事たちが張り込んでいる。

大里警部は、無線で部下たちに、合図するまで手出しをするなと命じていた。

そうした中、ブラックジョーは園内に現れる。

梨花と浩次に近づくと、一緒に観覧車に乗り込む。

観覧車が回転し始めると、一斉に刑事たちが下に集結して見上げる。

ブラックジョーは、ブラック・ダリア像を出して、あまりお前がこいつにこだわるので調べてみた…と言いながら、像の中から出て来た紙片を見せ、ルパンのサインに間違いないと断定する。

浩次は、ファラオのネコを寄越せと迫る。

しかし、ジョーは銃を取り出すと、梨花を取り戻すと、こいつを渡すことはできない。俺の悲願の第一弾なのだと言う。

さらに、園内に18発のプラスティック爆弾が仕掛けてあると説明したジョーの言葉を証明するように、一発の爆弾が爆発する。

その時、観覧車にヘリが一機近づいて来る。

ジョーは、俺は今日限り、日本を離れると宣言すると、ゴンドラの窓を破り、梨花を屋根の上に押し上げる。

ヘリは、縄梯子を垂らしてゴンドラに接近し、ジョーも屋根の上に上ると、梨花と共にはしごに捕まり、そのままヘリと共に飛び去って行く。

その様子を下で観ていた大里警部たちは、ヘリの後を追跡するが、やがて着陸したヘリを発見し近づいた時には、誰もいなかった。

一方、浩次は、自分で購入した探知機を使い、ブラックジョーのアジトに接近していた。

アジト内には警戒ブザーが鳴り、浩次に気づいたブラックジョーは、部下たちを裏口から先に逃がすと、自分一人その場に残る。

屋敷に入った浩次は、エレベーターに乗り込むが、扉が自動的に閉まり、ジョーの待つ階に停まる。

浩次は、ブラックジョーと対峙すると、軍資金を使い切ったと打ち明けると、ジョー、俺は君を真の悪党とは思わない。自首してくれと頼むが、言うことを聞きそうもないと分かると、どうしても貴様を捕まえてやる!と言いながらブラックジョーに飛びかかって行く。

しばらく格闘していた浩次だったが、一人部屋に閉じ込められ、壁面に設置された多数の光源から強烈な光を浴びせ付けられる。

ブラックジョーは、そこでゆっくり身体を役んだと言い残して逃亡する。

浩次は、靴のかかとを外し、その中に仕込んでいたプラスチック爆弾を取り出すと、ドアを爆破して脱出する。

屋敷から逃げ出し、部下たちと合流したブラックジョーは、夭死していたセメントのタンクローリーのタンクの中に入る。

屋敷には大里警部らが到着するが、浩次の探知機も故障してしまい、ジョーたちの足取りが掴めない。

そこへ、川野田セメントのタンクローリーが近づいて来たので、道をふさいでいた警察車両はバックして道を譲る。

その時、浩次が、あのタンクローリーだ!と叫ぶ。

車に乗り込んだ大里警部は、無線で応援を要請する。

タンクローリーは、ヨットハーバーに到着し、タンクの中から出て着たジョー、梨花、部下たちは、クルーザーに乗り込む。

一歩遅れて、大里警部ら警察車両も到着するが、すでに、ジョーのクルーザーは出港していた。

なす術もなく、岸壁から遠ざかって行くクルーザーを見つめる大里警部、浩次だったが、その時、突然、クルーザーが大爆発を起こす。

唖然とそれを見つめた大里警部は、とうとう消えちまったか…、俺も首だよと無念の言葉を吐き、パトカーに戻る。

浩次は、車で来ていた玲子を発見、一緒に乗り込むと、大里警部と別れ、帰路につくのだった。

海に浮かぶ豪華客船

テーブルで梨花と向かい合い食事をしていたブラックジョーは、今度日本に来るとき、あの青年と間抜けな警部がどんな顔をするか見物だとほくそ笑みながら、梨花とシャンパンで乾杯をする。

並々と注がれたシャンパンは、グラスからこぼれ、テーブルに置かれたファラオのネコの上に降り注ぐのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

都筑道夫原作で、宍戸錠主演の怪盗もの。

その怪盗を追う若い二人に、川地民夫と山本陽子と言う「大巨獣ガッパ」(1967)コンビが扮している。

この時期の山本陽子は愛らしく、入浴シーンやネグリジェ姿などサービスシーンもあるし、松原智恵子の方も、チャイナドレス姿などでお色気を振りまいているが、残念ながら、二人とも活躍の場が少なく、お飾り的な存在にしかなっていないのが惜しまれる。

全体的に見応え感はあまりなく、色々小粒のアイデアは盛り込まれているものの、それがサスペンスやアクションに結びついていない所が低予算のプログラムピクチャーの宿命と言う所か。

それでも、白塗りで、若い頃のピーター風の顔になったり、カジモド風に醜くメイクした宍戸錠の姿は見物。

定年間際の冴えない大里警部も宍戸錠が演じているのだが、こちらのキャラクターは、ブラックジョーとの対比で抑え気味な演出にしてあるからか、あまり生きているとは思えない。

全編出ずっぱりの宍戸錠と、川地民夫の元気良さだけが目立つ娯楽作品とも言える。